特許第6726192号(P6726192)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6726192アムホテリシンBの尿素誘導体の簡便な合成法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6726192
(24)【登録日】2020年6月30日
(45)【発行日】2020年7月22日
(54)【発明の名称】アムホテリシンBの尿素誘導体の簡便な合成法
(51)【国際特許分類】
   C07H 17/08 20060101AFI20200713BHJP
   A61K 31/7048 20060101ALI20200713BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20200713BHJP
   A01N 43/90 20060101ALN20200713BHJP
   A01N 47/36 20060101ALN20200713BHJP
【FI】
   C07H17/08 KCSP
   A61K31/7048
   A61P31/10
   !A01N43/90 101
   !A01N47/36 101Z
【請求項の数】22
【全頁数】47
(21)【出願番号】特願2017-534309(P2017-534309)
(86)(22)【出願日】2016年1月8日
(65)【公表番号】特表2018-502851(P2018-502851A)
(43)【公表日】2018年2月1日
(86)【国際出願番号】US2016012602
(87)【国際公開番号】WO2016112260
(87)【国際公開日】20160714
【審査請求日】2018年12月17日
(31)【優先権主張番号】62/100,988
(32)【優先日】2015年1月8日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513016884
【氏名又は名称】ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ ユニヴァーシティ オブ イリノイ
【氏名又は名称原語表記】THE BOARD OF TRUSTEES OF THE UNIVERSITY OF ILLINOIS
(74)【代理人】
【識別番号】100139723
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 洋
(72)【発明者】
【氏名】バーク,マーティン ディー
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィス,スティーヴン
【審査官】 水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−208294(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/165676(WO,A1)
【文献】 国際公開第93/016090(WO,A1)
【文献】 特開平04−108797(JP,A)
【文献】 PNAS,2011年,108(17),6733-6738
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07H
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)によって表される化合物、又はその薬学的に許容される塩:
【化1】
式中、
は、存在ごとに独立して、トリアルキルシリル、ジアルキルアリールシリル、アルキルジアリールシリル、トリアリールシリル、(アルキル)OCH−、(アルケニル)OCH−、(アラルキル)OCH−、(アルコキシアルキル)OCH−、(アリール)OCH−、又は((トリアルキルシリル)アルキル)OCH−を表し;
は、(C−C)アルキルを表し;及び
は、(アルキル)OC(O)−、(アラルキル)OC(O)−、(アルケニル)OC(O)−、(シクロアルキル)OC(O)−、又は(ハロアルキル)OC(O)−を表す。
【請求項2】
式(III)に従う化合物、又はその薬学的に許容される塩:
【化2】
式中、
は、存在ごとに独立して、トリアルキルシリル、ジアルキルアリールシリル、アルキルジアリールシリル、トリアリールシリル、(アルキル)OCH−、(アルケニル)OCH−、(アラルキル)OCH−、(アルコキシアルキル)OCH−、(アリール)OCH−、又は((トリアルキルシリル)アルキル)OCH−を表し;
は(C−C)アルキルを表し;
は、(アルキル)OC(O)−、(アラルキル)OC(O)−、(アルケニル)OC(O)−、(シクロアルキル)OC(O)−、又は(ハロアルキル)OC(O)−を表し;及び
は、アルキル、アラルキル、アルケニル、アリール、又はシクロアルキルを表す。
【請求項3】
がイソプロピル又は9−フルオレニルメチルを表す、請求項に記載の化合物。
【請求項4】
がトリアルキルシリルを表す、請求項1からのいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
がトリエチルシリルを表す、請求項1からのいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
がメチルを表す、請求項1からのいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
が(アラルキル)OC(O)−を表す、請求項1からのいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
が(9−フルオレニルメチル)OC(O)−を表す、請求項に記載の化合物。
【請求項9】
AmBCU−アリルエステル、又はその薬学的に許容される塩。
【化3】
【請求項10】
式(IV)の化合物又はその薬学的に許容される塩を調製する方法であって、
【化4】
式(I)の化合物又はそれらの薬学的に許容される塩と、R−XH又はR−X−Mによって表される化合物とを混合し、それによって前記式(IV)の化合物を生成する工程を含み、
前記式(I)の化合物は式によって表され、
【化5】
式中、
は、存在ごとに独立して、トリアルキルシリル、ジアルキルアリールシリル、アルキルジアリールシリル、トリアリールシリル、(アルキル)OCH−、(アルケニル)OCH−、(アラルキル)OCH−、(アルコキシアルキル)OCH−、(アリール)OCH−、又は((トリアルキルシリル)アルキル)OCH−を表し;
は(C−C)アルキルを表し;
は、(アルキル)OC(O)−、(アラルキル)OC(O)−、(アルケニル)OC(O)−、(シクロアルキル)OC(O)−、又は(ハロアルキル)OC(O)−を表し;
Xは、O、NH、又はN(R)を表し;
及びRは、各々独立して、アルキル、アラルキル、アルケニル、アリール、又はシクロアルキルを表し;及び
Mは、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類カチオン、又は遷移金属カチオンである、方法。
【請求項11】
式(II)の化合物とホスホリルアジドとを混合し、それによって前記式(I)の化合物を生成する工程をさらに含み;式(II)の化合物は式によって表される、請求項10に記載の方法。
【化6】
【請求項12】
前記ホスホリルアジドがジフェニルホスホリルアジドである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
式(II)の化合物とホスホリルアジドとを混合する前記工程が、ブレンステッド塩基をさらに含む、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
前記ブレンステッド塩基が第三級アミンである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
XがOであり;MがNa、K、又はTi(ORである、請求項10から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩とR−XH又はR−X−Mによって表される化合物とを混合する前記工程が、ルイス酸をさらに含む、請求項10から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記ルイス酸がチタンアルコキシドである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
がトリアルキルシリルを表す、請求項10から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
がトリエチルシリルを表す、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
がメチルを表す、請求項10から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
が(アラルキル)OC(O)−を表す、請求項10から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
が(9−フルオレニルメチル)OC(O)−を表す、請求項21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2015年1月8日出願の米国仮特許出願第62/100,988号の優先権の利益を主張する。
【政府の支援】
【0002】
本発明は、アメリカ国立衛生研究所によって承認された許可番号第GM080436号の下、米国政府の支援により成された。米国政府は本発明において一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
半世紀以上にわたり、アムホテリシンB(AmB)は、全身性真菌感染の治療のゴールドスタンダードとしての役割を果たしてきた。AmBは、広範囲の活性を有しており、抗真菌性であり、かつ、複数の他の薬剤に対して耐性の真菌株に対してさえも有効である。次世代の抗真菌剤では、臨床導入後、僅か2〜3年以内に、それらに対する耐性が見られたのに対し、意外にも、AmBの臨床的に有意な微生物耐性は、極めて希なままである。残念ながら、AmBは非常に毒性でもある。よって、AmBを用いた全身性真菌感染の効果的な治療は、大抵は、有効性の欠如によってではなく、用量制限性の副作用によって不可能となる。リポソーム送達システムを使用して、ある程度の進歩がなされてきたが、これらの治療は、購入が憚られるほど高価であり、顕著な毒性が依然として残っている。よって、低毒性だが同等の効果を有するAmB誘導体は、人の健康に対し、大きな効果をもたらすであろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明のある態様は、式(I)によって表される化合物、又はそれらの薬学的に許容される塩である:
【化1】
[式中、
は、存在ごとに独立して、トリアルキルシリル、ジアルキルアリールシリル、アルキルジアリールシリル、トリアリールシリル、(アルキル)OCH−、(アルケニル)OCH−、(アラルキル)OCH−、(アルコキシアルキル)OCH−、(アリール)OCH−、又は((トリアルキルシリル)アルキル)OCH−を表し;
は(C−C)アルキルを表し;
は、(アルキル)OC(O)−、(アラルキル)OC(O)−、(アルケニル)OC(O)−、(シクロアルキル)OC(O)−、又は(ハロアルキル)OC(O)−を表す]。
【0005】
本発明のある態様は、式(II)によって表される化合物、又はそれらの薬学的に許容される塩である:
【化2】
[式中、
は、存在ごとに独立して、トリアルキルシリル、ジアルキルアリールシリル、アルキルジアリールシリル、トリアリールシリル、(アルキル)OCH−、(アルケニル)OCH−、(アラルキル)OCH−、(アルコキシアルキル)OCH−、(アリール)OCH−、又は((トリアルキルシリル)アルキル)OCH−を表し;
は(C−C)アルキルを表し;
は、(アルキル)OC(O)−、(アラルキル)OC(O)−、(アルケニル)OC(O)−、(シクロアルキル)OC(O)−、又は(ハロアルキル)OC(O)−を表す]。
【0006】
本発明のある態様は、式(III)によって表される化合物、又はそれらの薬学的に許容される塩である:
【化3】
[式中、
は、存在ごとに独立して、トリアルキルシリル、ジアルキルアリールシリル、アルキルジアリールシリル、トリアリールシリル、(アルキル)OCH−、(アルケニル)OCH−、(アラルキル)OCH−、(アルコキシアルキル)OCH−、(アリール)OCH−、又は((トリアルキルシリル)アルキル)OCH−を表し;
は(C−C)アルキルを表し;
は、(アルキル)OC(O)−、(アラルキル)OC(O)−、(アルケニル)OC(O)−、(シクロアルキル)OC(O)−、又は(ハロアルキル)OC(O)−を表し;
は、アルキル、アラルキル、アルケニル、アリール、又はシクロアルキルを表す]。
【0007】
本発明のある態様は、AmBCU−アリルエステル、又はそれらの薬学的に許容される塩である:
【化4】
【0008】
本発明のある態様は、式(IV)の化合物、又はそれらの薬学的に許容される塩を調製する方法であって、該方法は、式(I)の化合物又はそれらの薬学的に許容される塩と、R−XH又はR−X−Mによって表される化合物とを混合し、それによって式(IV)の化合物を生成する工程を含み、該式(IV)の化合物は以下の式によって表される:
【化5】
[式中、
は、存在ごとに独立して、トリアルキルシリル、ジアルキルアリールシリル、アルキルジアリールシリル、トリアリールシリル、(アルキル)OCH−、(アルケニル)OCH−、(アラルキル)OCH−、(アルコキシアルキル)OCH−、(アリール)OCH−、又は((トリアルキルシリル)アルキル)OCH−を表し;
は、(C−C)アルキルを表し;
は、(アルキル)OC(O)−、(アラルキル)OC(O)−、(アルケニル)OC(O)−、(シクロアルキル)OC(O)−、又は(ハロアルキル)OC(O)−を表し;
Xは、O、NH、又はN(R)を表し;
及びRは、各々独立して、アルキル、アラルキル、アルケニル、アリール、又はシクロアルキルを表し;
Mは、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類カチオン、又は遷移金属カチオンである]。
【0009】
本発明のある態様は、本明細書及び図面に開示される式(IV)の化合物の製造方法である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】AmB及びその特定の誘導体の構造式
図2】2Aは、最小限に保護された中間体1からのAmB尿素誘導体の合成の一般的な合成スキームを示す。2Bは、AmBからのAmBMU及びAmBAUの三段階合成、並びに、AmBからのAmBCUの四段階合成を示す。
図3】オキサゾリジノン2を様々なヘテロ原子求核剤と反応させることによる、C16アミノAmB誘導体を調製するための幾つかの合成スキーム
図4】AmB尿素及びカルバメートの代替的合成。TES基を用いたC15アルコールの保護により、イソシアナート5の単離が可能となる。5からルイス酸介在性のカルバメート形成が可能である。
図5】カンジダ・アルビカンス(C. albicans)を静脈内接種され、次に、2時間後に、ビヒクル対照、AmB、AmBMU、又はAmBAUの単回腹腔内投与処置された好中球減少マウスにおける腎臓の真菌負荷(コロニー形成単位、cfu)を示す3つのグラフ群。パネルA、1mg/kgのAmB、AmBMU、又はAmBAU。パネルB、4mg/kgのAmB、AmBMU、又はAmBAU。パネルC、16mg/kgのAmB、AmBMU、又はAmBAU。
図6】AmB、AmBMU、又はAmBAUを提示された用量で単回静脈内投与された健康なマウスにおける致死率を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0011】
AmBが酵母及びヒト細胞に対して毒性となる機構の理解の欠如により、これまで、臨床的に成功した誘導体の合理的開発が妨げられてきた。長年にわたり受け入れられてきたAmBの作用機構は、電気化学勾配の混乱及び最終的には細胞死につながる、細胞膜内におけるイオンチャンネルの形成であった。このモデルは、低毒性の誘導体の開発が、ヒト細胞と対比して、酵母における選択的イオンチャンネルの形成を要件とすることを示唆している。この長年にわたるモデルに反して、我々のグループは、最近、AmBの主要な作用機構が、イオンチャンネルの形成ではなく、単純なエルゴステロール結合であることを発見した。酵母細胞とヒト細胞は、異なるステロール、すなわち、エルゴステロールとコレステロールをそれぞれ有する。したがって、この新しいモデルは、改善された治療指数へのより単純かつより実用的なロードマップを示唆している;すなわち、低毒性のAmB誘導体は、強力なエルゴステロール結合能を保持するが、コレステロール結合能を欠いているであろう。誘導体に関して、最近、マイコサミン糖(mycosamine sugar)からC2’ヒドロキシル基を除去すると、驚くべきことにエルゴステロール結合能を保持するが、コレステロールに対する結合を示さない誘導体C2’deOAmB(図1)が生じることが報告された。Wilcock, BC et al., J Am Chem Soc 135:8488(2013)。優先的なステロール結合の仮説と一致して、インビトロでの研究により、C2’deOAmBは、酵母に対しては毒性であるが、ヒト細胞に対しては毒性ではないことが実証された。
【0012】
C2’アルコールの除去により、効率的なエルゴステロール結合を維持しつつ、コレステロール結合能の喪失が何故生じるかについて説明するため、我々は、AmB構造が、両方のステロールと結合可能な、基底状態の立体配座で存在するという仮説を立てた。C2’アルコールを除去すると、エルゴステロール結合能を保持するが、コレステロールとは結合不能なAmB構造の立体配座の変化を生じる可能性がある。一般的な分子は、共通の結合部位において、2つの異なる配位子と結合することができる。結合ポケットに対して遠位の部位での修飾は、結合部位の立体配座を変化させる。アロステリック修飾のこの原理により、一方の配位子の他方のものよりも優先的な結合が生じる。このような配位子選択的なアロステリック効果は、小分子−小分子相互作用において、以前には観察されていない。勇気づけるように、配位子選択的なアロステリック修飾は、共通の結合部位で複数の配位子と結合するタンパク質において観察されている。C2’アルコールの除去が、ステロール結合ポケットをアロステリックに修飾し、これがコレステロール結合能の低下の原因であるという仮説を立てた。
【0013】
N−ヨードアシルAmBの以前に得られたX線結晶構造は、C2’アルコールをC13ヘミケタールに結合する顕著な水架橋水素結合を示唆した。このような水架橋水素結合がAmBの基底状態の立体配座の剛性化を手伝っているのであれば、C2’アルコールの除去は、この相互作用を消失させ、それによって、コレステロール及びエルゴステロールに対する親和性が変化した代替的な基底状態配座異性体の選択を潜在的に可能にするであろう。この結晶構造は、エルゴステロールとコレステロールの両方に結合可能なAmBの基底状態の立体配座を表している可能性がある。本発明は、少なくとも一部には、N−ヨードアシルAmBの結晶構造に見られる剛性化特徴の発見に基づいている。本明細書に記載される発明は、代替的な基底状態の立体配座にアクセスし、それによって、AmBステロール結合プロファイルを変化させるために、このような剛性化特徴の崩壊又は除去について研究するものである。AmBの基底状態を安定化させる能力を有する、3つの追加的な分子内の剛性化特徴が特定された:1)C41カルボキシレートとC3’アンモニウムとの間の塩架橋、2)C1カルボニルO、C3アルコール及びC5アルコール間の1,3,5水素結合ネットワーク、及び3)C9アルコール、C11アルコール、及びC13アルコール間の1,3,5水素結合ネットワーク。
【0014】
新規アロステリック部位:C41−C3’カルボキシレート
塩架橋相互作用は、提案された剛性化特徴のうち、エネルギー的に最も強い。よって、C16炭素に結合する基の系統的な修飾は、このアロステリック修飾モデルをさらに詳しく調べるための第1の一連の誘導体として標的とされた。とりわけ、エステル及びアミドを含む、C41カルボキシレートを修飾する複数のAmB誘導体が報告されている。しかしながら、以前のAmB誘導体はすべて、C16炭素に付加された炭素原子を維持している。
【0015】
本発明は、少なくとも一部には、C16炭素へのヘテロ原子の付加が塩架橋相互作用に大きな影響を有するという発見に基づいている。したがって、このような誘導体にアクセスするために、効率的な化学選択的合成戦略が探求された。このような目標の複雑化により、AmBは、複雑な感受性官能基の高密アレイを有し、誘導体の直接合成が困難となる。
【0016】
C16にヘテロ原子置換を有するAmB誘導体への可能性のあるルートの1つは、Fmoc保護、メチルケタール形成、及びクルチウス転位(Curtius rearrangement)(例えば、ジフェニルホスホリルアジドによって促進される)を含む3段階合成である。この合成計画は、中間体イソシアナートを提供し、これが分子内に捕捉されて、オキサゾリジノン2を生成する(スキーム1)。
【化6】
【0017】
最小限に保護されたAmBのジフェニルホスホリルアジド(DPPA)での処理は、立体特異的クルチウス転位を手際よく促進し、ここで、C16−C41結合が開裂し、得られたイソシアナートが、隣接したC15アルコールによって分子内に捕捉され、オキサゾリジノン2を形成する。この特定のオキサゾリジノンは、今度は、驚くべきことに、穏和な条件下での第一級アミンを用いた開環に対して反応性であり、C16−窒素結合を有する新種の尿素含有アムホテリシン(AmBAU、AmBMU、及びAmBCU)を生成する。興味深いことに、親ヘテロ環である2−オキサゾリジノンは、同一条件下で非反応性である。
【0018】
最小限に保護されたAmB誘導体1は、ジフェニルホスホリルアジド(DPPA)、アミン、及び水性酸の連続添加を含む、規模変更可能なワンポット操作で、3へと直接変換されうる(図2B)。1gの発酵させたAmBから開始して、求核剤としてメチルアミンを使用して、この3段階手順全体で、264mgのAmBメチル尿素(AmBMU)が得られる。エチレンジアミンを用いると、236mgのAmBアミノ尿素(AmBAU)が生成し、4段階の変型では、β−アラニンアリルエステルとの反応に続いて脱アリル化して、124mgのAmBカルボキシラトエチル尿素(AmBCU)が得られる。よって、この化学は、メートルトンスケールで、すでに発酵させた天然物から出発して、これらの新しい誘導体への、迅速かつ効率的な、規模変更可能なアクセスを提供する。
【0019】
この新規のAmB化学種に対する効率的なアクセスを用いて、尿素AmBAU、AmBMU、及びAmBCUを、インビトロでの抗真菌性及びヒト細胞毒性のスクリーニングにおいて、AmB、及び、ある範囲の先に報告されたAmB誘導体と比較した。酵母毒性を、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)に対する微量液体希釈アッセイ(MIC)で測定した。ヒト赤血球の90%溶血を生じるのに必要とされる化合物の量(EH90)を決定することによって、ヒト細胞毒性を調べた。これらの結果を表1にまとめる。アムホテリシンBは、僅か10.4μMで90%赤血球溶解を引き起こすとともに、0.5μMでS.セレビシエの増殖を阻害した。マイコサミン(AmdeB)の除去により、酵母とヒトの両方の細胞アッセイにおいて、細胞致死活性は完全になくなる。メチルエステル化(AmBME)は、溶血濃度を、AmBで見られた濃度の3分の1に低下させるとともに、S.セレビシエに対して0.25μMにおける抗真菌活性を保持する。C41メチルAmBは、AmBMEと同様に、22.0μMで溶血を引き起こすとともに、0.5μMのMICを示す。以前に観察されたように、単純なアミド化による、アミノアミドAmB誘導体AmBAA又はメチルアミドAmBMAの形成により、酵母に対する有効性が、それぞれ、0.03μM及び0.25μMまで高められた。溶血活性は、AmBME及びC41MeAmBと同様に保持された。ビス−アミノアルキル化アミド誘導体AmBNRが治療指数を適度に改善することは、以前に示されている。先例と一致して、AmBNRは、48.5μMで溶血を引き起こすために高濃度を必要とするとともに、AmBと比較して高められた抗真菌活性を示した。
【表1-1】
【表1-2】
【0020】
尿素誘導体AmBAU、AmBMU、及びAmBCUは、S.セレビシエに対し、0.125μM〜3μMの範囲で強力な抗真菌活性を維持する。驚くべきことに、AmBAU、AmBMU、及びAmBCUは、赤血球に対する毒性が劇的に低減していた。AmBMU及びAmBAUは、AmBで観察された量の45倍を超える500μMにおいてさえも、EH90に達しなかった。AmBCUは、赤血球に90%溶血を引き起こすのに、AmBが必要とする量の30倍を超える324μMを必要とした。この初期の治療指数のスクリーニングに後押しされ、尿素類について、臨床的に関連する真菌細胞株カンジダ・アルビカンスに対してさらに試験した。C.アルビカンスは、最も一般的なヒト真菌感染である。AmBは、0.25μMでC.アルビカンスの酵母増殖を阻害する。S.セレビシエで見られる傾向と同様に、尿素誘導体の有効性は、カチオン特性の量の増加に伴って増加した。AmBAU、AmBMU、及びAmBCUは、それぞれ、0.25、0.5、及び1μMを必要とした(表2)。
【表2】
【0021】
アロステリック修飾モデルに従い、尿素AmBAU、AmBMU、及びAmBCUは、強力なエルゴステロール結合能を維持するが、コレステロールに結合する能力は喪失している。
【0022】
AmB尿素及び他の誘導体への合成経路
アムホテリシンB(AmB)尿素誘導体AmBAU、AmBMU、及びAmBCUは、すべて、コレステロールに対する検出可能な結合を示さず、毒性の劇的な低減を示したことから、さらなるAmB尿素誘導体もこれらの重要な特徴を共有すると予測することは妥当である。可能な利用できる誘導体のほんの一部について図3に概説する。オキサゾリジノン2を第一級アミンで遮断して第一級尿素を生成し、第二級アミンで第二級尿素を生成し、アルファ分岐を有する第一級アミンで、α位に立体化学が導入された尿素を生成することができた。加えて、オキサゾリジノン2を、アニリンで開環してアリール尿素を生成し、フェノールで開環してアリールカルバメートを生成し、又はアルコールで開環してアルキルカルバメートを生成することができた。よって、この低毒性アムホテリシンの新しいファミリーの薬理学的特性を広範囲に最適化するための実質的な機会がもたらされる。オキサゾリジノンへのある特定の求核付加は、一部には、求核剤又はオキサゾリジノン求電子剤の反応性を原因とする合成課題をもたらしうる。よって、AmB類似体のより幅広いファミリーへのアクセスを供与可能な、より反応性の求電子剤を遮断することは有益であろう。例えば、1のクルチウス転位の際に、推定ではイソシアナートが生成される(スキーム1、図2A)。このようなイソシアナートは、多様化のための有望な反応性中間体であろう。
【化7】
【0023】
単離可能なイソシアナートの形成は、C15ヒドロキシル基が保護された場合に達成可能である。AmBから出発して、Fmocカルバメート形成、メチルケタール形成、及び全体的なシリル化を含む、3段階の保護手順によってパーシリルAmB4が形成される、例示的な反応がスキーム2に示されている。高温での4のDPPAへの曝露により、クルチウス転位が達成される。隣接するC15アルコールが保護されているために、所望のイソシアナート5を単離することができる。イソシアナート5は、オキサゾリジノン2と同様に、遮断されてさまざまなAmB誘導体を形成できる多用途の中間体である(図4)。ルイス酸であるチタンイソプロポキシドへの5の曝露により、イソプロポキシ基がイソシアナートに転移し、イソプロピルカルバメート6が形成される。同様に、チタンt−ブトキシドとFmocアルコールとの間の配位子交換は、Fmocカルバメート7の形成を促進する。さらには、この手順は、AmB尿素の代替的な合成経路を提供する。例えば、メチルアミンへの5の曝露と、それに続く脱保護により、AmBMUの代替的合成が完了するであろう。
【0024】
C15ヒドロキシル基を保護するのに使用できる例示的な保護基として、シリル基(例えば、トリアルキルシリル基、ジアルキルアリールシリル基、アルキルジアリールシリル基、及びトリアリールシリル基)、並びに(ヒドロカルビルオキシ)メチルエーテル(例えば、(アルコキシ)メチルエーテル、(アルケニルオキシ)メチルエーテル、(アラルコキシ)メチルエーテル、(アリールオキシ)メチルエーテル、及び((トリアルキルシリル)アルコキシ)メチルエーテル)が挙げられる。このような保護基のさらに特定の例としては、限定されることなく、メトキシメチルエーテル、(フェニルジメチルシリル)メトキシメチルエーテル、ベンジルオキシメチルエーテル、p−メトキシベンジルオキシメチルエーテル、p−ニトロベンジルオキシメチルエーテル、tert−ブトキシメチルエーテル、シロキシメチルエーテル、2−メトキシエトキシメチルエーテル、2,2,2−トリクロロエトキシメチルエーテル、2−(トリメチルシリル)エトキシメチルエーテル、テトラヒドロピラニルエーテル、トリメチルシリルエーテル、トリエチルシリルエーテル、トリイソプロピルシリルエーテル、ジエチルイソプロピルシリルエーテル、ジメチルヘキシルシリルエーテル、tert−ブチルジメチルシリルエーテル、tert−ブチルジフェニルシリルエーテル、トリフェニルシリルエーテル、及びジフェニルメチルシリルエーテルが挙げられる。
【0025】
イソシアナート求電子剤に加えることができる求核剤としては、アルコール及びそれらの対応するアルコキシド、チオール及びそれらの対応するチオラート、及びアミンが挙げられる。
【0026】
アミンの例としては、限定されることなく、1−(1−ナフチル)エチルアミン;1−(2−ナフチル)エチルアミン;1−(4−ブロモフェニル)エチルアミン;1,1−ジフェニル−2−アミノプロパン;1,2,2−トリフェニルエチルアミン;1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフチルアミン;1,2−ビス(2−ヒドロキシフェニル)エチレンジアミン;1−アミノ−2−ベンジルオキシシクロペンタン;1−アミノインダン;1−ベンジル−2,2−ジフェニルエチルアミン;1−シクロプロピルエチルアミン;1−フェニルブチルアミン;2−(3−クロロ−2,2−ジメチル−プロピオニルアミノ)−3−メチルブタノール;2−(ジベンジルアミノ)プロピオンアルデヒド;2,2−ジメチル−5−メチルアミノ−4−フェニル−1,3−ジオキサン;2−アミノ−1−フルオロ−4−メチル−1,1−ジフェニルペンタン;2−アミノ−3,3−ジメチル−1,1−ジフェニルブタン;2−アミノ−3−メチル−1,1−ジフェニルブタン;2−アミノ−3−メチルブタン;2−アミノ−4−メチル−1,1−ジフェニルペンタン;2−アミノヘプタン;2−アミノヘキサン;2−アミノノナン;2−アミノオクタン;2−クロロ−6−フルオロベンジルアミン;2−メトキシ−α−メチルベンジルアミン;2−メチル−1−ブチルアミン;2−メチルブチルアミン;3,3−ジメチル−2−ブチルアミン;3,4−Diメトキシ−α−メチルベンジルアミン;3−アミノ−2−(ヒドロキシメチル)プロピオン酸;3−ブロモ−α−メチルベンジルアミン;3−クロロ−α−メチルベンジルアミン;4−クロロ−α−メチルベンジルアミン;4−シクロヘキセン−1,2−ジアミン;4−フルオロ−α−メチルベンジルアミン;4−メトキシ−α−メチルベンジルアミン;7−アミノ−5,6,7,8−テトラヒドロ−2−ナフトール;ビス[1−フェニルエチル]アミン;ボルニルアミン;cis−2−アミノシクロペンタノールヒドロクロリド;cis−ミルタニルアミン;cis−N−Boc−2−アミノシクロペンタノール;イソピノカンフェニルアミン;L−アリシンエチレンアセタール;メチル3−アミノブチラートp−トルエンスルホン酸塩;N,N’−ジメチル−1,1’−ビナフチルジアミン;N,N−ジメチル−1−(1−ナフチル)エチルアミン;N,N−ジメチル−1−フェニルエチルアミン;N,α−ジメチルベンジルアミン;N−アリル−α−メチルベンジルアミン;N−ベンジル−α−メチルベンジルアミン;sec−ブチルアミン;trans−2−(アミノメチル)シクロヘキサノール;trans−2−アミノ−1,2−ジヒドロ−1−ナフトールヒドロクロリド;trans−2−ベンジルオキシシクロヘキシルアミン;α,4−ジメチルベンジルアミン;α−エチルベンジルアミン;α−メチルベンジルアミン;及びβ−メチルフェネチルアミンが挙げられる。
【0027】
アルコールの例としては、限定されることなく、メタノール、エタノール、2−ブトキシエタノール、プロパノール、アリルアルコール、メタリルアルコール、プレノール、イソプロパノール、2,2−ジメチルプロパン−1−オール、2−メチル−2−フェニルプロパン−1−オール、ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、2−ブテン−1−オール、ペンタノール、2−シクロペンテン−1−オール、4−シクロペンテン−1−オール、シクロペンタノール、3−シクロペンテン−1−オール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、3−シクロヘキセン−1−オール、フェノール、1−ナフトール、2−ナフトール、ベンジルアルコール、メントール、1,2−エタンジオール、9−フルオレニルメタノール、レゾルシノール、m−クレゾール、シンナミルアルコール、及びゲラニオールが挙げられる。アルコールに対応するアルコキシドも、イソシアナートとの反応における求核剤として使用できることが理解されよう。
【0028】
本発明の化合物
本発明のある態様は、式(I)によって表される化合物、又はそれらの薬学的に許容される塩である:
【化8】
[式中、
は、存在ごとに独立して、トリアルキルシリル、ジアルキルアリールシリル、アルキルジアリールシリル、トリアリールシリル、(アルキル)OCH−、(アルケニル)OCH−、(アラルキル)OCH−、(アルコキシアルキル)OCH−、(アリール)OCH−、又は((トリアルキルシリル)アルキル)OCH−を表し;
は、(C−C)アルキルを表し;及び
は、(アルキル)OC(O)−、(アラルキル)OC(O)−、(アルケニル)OC(O)−、(シクロアルキル)OC(O)−、又は(ハロアルキル)OC(O)−を表す]。
【0029】
ある特定の実施形態では、式(I)の化合物において、Rは、例えばトリエチルシリルなどのトリアルキルシリルを表す。
【0030】
ある特定の実施形態では、Rはメチルを表す。
【0031】
ある特定の実施形態では、Rは、例えば(9−フルオレニルメチル)OC(O)−(すなわち、Fmoc)などの(アラルキル)OC(O)−を表す。
【0032】
本発明のある態様は、式(II)によって表される化合物、又はそれらの薬学的に許容される塩である:
【化9】
[式中、
は、存在ごとに独立して、トリアルキルシリル、ジアルキルアリールシリル、アルキルジアリールシリル、トリアリールシリル、(アルキル)OCH−、(アルケニル)OCH−、(アラルキル)OCH−、(アルコキシアルキル)OCH−、(アリール)OCH−、又は((トリアルキルシリル)アルキル)OCH−を表し;
は(C−C)アルキルを表し;
は、(アルキル)OC(O)−、(アラルキル)OC(O)−、(アルケニル)OC(O)−、(シクロアルキル)OC(O)−、又は(ハロアルキル)OC(O)−を表す]。
【0033】
ある特定の実施形態では、式(II)の化合物において、Rは、例えばトリエチルシリルなどのトリアルキルシリルを表す。
【0034】
ある特定の実施形態では、Rはメチルを表す。
【0035】
ある特定の実施形態では、Rは、例えば(9−フルオレニルメチル)OC(O)−(すなわち、Fmoc)などの(アラルキル)OC(O)−を表す。
【0036】
本発明のある態様は、式(III)によって表される化合物、又はそれらの薬学的に許容される塩である:
【化10】
[式中、
は、存在ごとに独立して、トリアルキルシリル、ジアルキルアリールシリル、アルキルジアリールシリル、トリアリールシリル、(アルキル)OCH−、(アルケニル)OCH−、(アラルキル)OCH−、(アルコキシアルキル)OCH−、(アリール)OCH−、又は((トリアルキルシリル)アルキル)OCH−を表し;
は(C−C)アルキルを表し;
は、(アルキル)OC(O)−、(アラルキル)OC(O)−、(アルケニル)OC(O)−、(シクロアルキル)OC(O)−、又は(ハロアルキル)OC(O)−を表し;
は、アルキル、アラルキル、アルケニル、アリール、又はシクロアルキルを表す]。
【0037】
ある特定の実施形態では、式(III)の化合物において、Rは、例えばトリエチルシリルなどのトリアルキルシリルを表す。
【0038】
ある特定の実施形態では、Rはメチルを表す。
【0039】
ある特定の実施形態では、Rは、例えば(9−フルオレニルメチル)OC(O)−(すなわち、Fmoc)などの(アラルキル)OC(O)−を表す。
【0040】
本発明のある態様は、AmBCU−アリルエステル、又はそれらの薬学的に許容される塩である:
【化11】
【0041】
AmB誘導体の製造方法
本発明のある態様は、式(IV)の化合物、又はそれらの薬学的に許容される塩の製造方法であり、
【化12】
式(I)の化合物又はそれらの薬学的に許容される塩とR−XH又はR−X−Mによって表される化合物とを混合し、それによって式(IV)の化合物を生成する工程を含み;
[式中、
は、存在ごとに独立して、トリアルキルシリル、ジアルキルアリールシリル、アルキルジアリールシリル、トリアリールシリル、(アルキル)OCH−、(アルケニル)OCH−、(アラルキル)OCH−、(アルコキシアルキル)OCH−、(アリール)OCH−、又は((トリアルキルシリル)アルキル)OCH−を表し;
は(C−C)アルキルを表し;
は、(アルキル)OC(O)−、(アラルキル)OC(O)−、(アルケニル)OC(O)−、(シクロアルキル)OC(O)−、又は(ハロアルキル)OC(O)−を表し;
Xは、O、NH、又はN(R)を表し;
及びRは、各々独立して、アルキル、アラルキル、アルケニル、アリール、又はシクロアルキルを表す]
式(I)の化合物は、以下の式によって表される:
【化13】
[式中、Mは、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類カチオン、又は遷移金属カチオンである]。
【0042】
ある特定の実施形態では、式(I)の化合物、又はそれらの薬学的に許容される塩は、R−XHによって表される化合物と混合され、該R−XHによって表される化合物は、第一級アミン、第二級アミン、又はアルコールである。
【0043】
ある特定の実施形態では、式(I)の化合物、又はそれらの薬学的に許容される塩は、R−X−Mによって表される化合物と混合され、該R−X−Mによって表される化合物は、ナトリウムアミド、カリウムアミド、又はリチウムジイソプロピルアミドなどの金属アミドである。ある特定の実施形態では、R−X−Mによって表される化合物は、ナトリウムイソプロポキシド、カリウムメトキシド、又はチタンt−ブトキシドなどの金属アルコキシドである。ある特定の実施形態では、Mは、Na、K、又は、例えばTi(ORなどのTi(O(ヒドロカルビル))である。
【0044】
ある特定の実施形態では、式(IV)の化合物の製造方法は、式(II)の化合物とホスホリルアジドとを混合し、それによって式(I)の化合物を生成する工程をさらに含む。式(II)の化合物は、以下の式によって表される:
【化14】
【0045】
ある特定の実施形態では、ホスホリルアジドはジフェニルホスホリルアジドである。
【0046】
ある特定の実施形態では、式(I)の化合物又はそれらの薬学的に許容される塩とR−XH又はR−X−Mによって表される化合物とを混合する工程は、例えばチタンアルコキシドなどのルイス酸をさらに含む。
【0047】
ある特定の実施形態では、式(I)の化合物又はそれらの薬学的に許容される塩とR−XH又はR−X−Mによって表される化合物とを混合する工程は、極性非プロトン性溶媒又は非極性溶媒などの溶媒をさらに含む。
【0048】
ある特定の実施形態では、式(II)の化合物とホスホリルアジドとを混合する工程は、ブレンステッド塩基をさらに含む。ある特定の実施形態では、ブレンステッド塩基は第三級アミンである。
【0049】
ある特定の実施形態では、式(II)の化合物とホスホリルアジドとを混合する工程は、極性非プロトン性溶媒又は非極性溶媒などの溶媒をさらに含む。
【0050】
本方法のある特定の実施形態では、Rは、例えばトリエチルシリルなどのトリアルキルシリルを表す。
【0051】
ある特定の実施形態では、Rはメチルを表す。
【0052】
ある特定の実施形態では、Rは、例えば(9−フルオレニルメチル)OC(O)−(すなわち、Fmoc)などの(アラルキル)OC(O)−を表す。
【0053】
定義
用語「アルキル」は、当技術分野で認識されており、直鎖アルキル基、分岐鎖アルキル基、シクロアルキル(脂環式)基、アルキル置換されたシクロアルキル基、及びシクロアルキル置換されたアルキル基を含めた、飽和脂肪族基を含む。ある特定の実施形態では、直鎖又は分岐鎖アルキルは、その主鎖に約30以下の炭素原子(例えば、直鎖についてはC−C30、分岐鎖についてはC−C30)、あるいは、約20以下の炭素原子を有する。同様に、シクロアルキルは、それらの環構造内に約3〜約10個の炭素原子、あるいは環構造内に約5、約6、又は約7個の炭素原子を有する。
【0054】
用語「アルケニル」及び「アルキニル」は、当技術分野で認識されており、上述したアルキルに対して長さ及び可能な置換については同様であるが、それぞれ、少なくとも1つの二重又は三重結合を含む、不飽和脂肪族基のことを指す。
【0055】
炭素の数が別に明記されない限り、「低級アルキル」とは、その主鎖構造内に1〜約10個の炭素を有する、あるいは1〜約6個の炭素原子を有する、上記定義されたアルキル基を指す。同様に、「低級アルケニル」及び「低級アルキニル」は、同様の鎖長を有する。
【0056】
用語「アラルキル」は、当技術分野で認識されており、アリール基(すなわち、芳香族又はヘテロ芳香族基)で置換されたアルキル基を指す。
【0057】
用語「アリール」は、当技術分野で認識されており、0〜4個のヘテロ原子を含みうる、5−、6−及び7−員の単環芳香族基を指し、例えば、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ピレン、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、トリアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン及びピリミジンなどが挙げられうる。環構造内にヘテロ原子を有するアリール基は、「アリールヘテロ環」又は「ヘテロ芳香族」とも称されうる。芳香族環は、1つ以上の環位置において、例えば、ハロゲン、アジド、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アルコキシル、アミノ、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、ホスホナート、ホスフィナート、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、スルホンアミド、ケトン、アルデヒド、エステル、ヘテロシクリル、芳香族又はヘテロ芳香族部分、−CF、−CNなどの置換基で置換されうる。用語「アリール」には、2つ以上の炭素を2つの隣接する環で共有する(環は「縮合環」である)、2つ以上の環式環を有する多環式環系も含まれ、ここで、環のうちの少なくとも1つは芳香族であり、例えば、他の環式環は、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール及び/又はヘテロシクリルでありうる。
【0058】
用語「ヘテロ原子」は、当技術分野で認識されており、炭素又は水素以外の任意の元素の原子を指す。例示的なヘテロ原子としては、ホウ素、窒素、酸素、リン、硫黄及びセレンが挙げられる。
【0059】
用語「ニトロ」は、当技術分野で認識されており、−NOを指す。
【0060】
用語「ハロゲン」は、当技術分野で認識されており、−F、−Cl、−Br又は−Iを指す。
【0061】
用語「スルフヒドリル」は、当技術分野で認識されており、−SHを指す。
【0062】
用語「ヒドロキシル」は、当技術分野で認識されており、−OHを指す。
【0063】
用語「スルホニル」は、当技術分野で認識されており、−SOを指す。
【0064】
用語「ハロアルキル」とは、本明細書で定義されるアルキル基を通じて親分子部分に付加する、本明細書で定義される少なくとも1つのハロゲンを意味する。ハロアルキルの代表的な例としては、クロロメチル、2−フルオロエチル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、及び2−クロロ−3−フルオロペンチルが挙げられるが、それらに限定されない。
【0065】
用語「アミン」及び「アミノ」は、当技術分野で認識されており、非置換及び置換アミンの両方、例えば、以下の一般式によって表されうる部分などを指す:
【化15】
ここで、R50、R51及びR52は、各々独立して、水素、アルキル、アルケニル、−(CH−R61を表し、又は、R50及びR51は、それらが結合するN原子と一緒に環構造内に4〜8個の原子を有するヘテロ環を完成し;R61は、アリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロ環又は多環を表し;mは、ゼロ又は1〜8の範囲の整数である。他の実施形態では、R50及びR51(及び、必要に応じてR52)は、各々独立して、水素、アルキル、アルケニル、又は−(CH−R61を表す。よって、用語「アルキルアミン」には、置換又は非置換アルキルが結合した、上記定義されたアミン基が含まれる、すなわち、R50及びR51のうちの少なくとも1つはアルキル基である。
【0066】
用語「アミド」は、アミノ置換されたカルボニルとして当技術分野で認識されており、以下の一般式によって表されうる部分を含む:
【化16】
ここで、R50及びR51は、上述の通りである。本発明におけるアミドのある特定の実施形態は、不安定でありうるイミドを含まない。
【0067】
用語「アルコキシル」又は「アルコキシ」は、当技術分野で認識されており、そこに結合した酸素ラジカルを有する、上記定義されたアルキル基のことを指す。代表的なアルコキシル基としては、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、tert−ブトキシなどが挙げられる。
【0068】
本明細書で用いられる「極性プロトン性溶媒」は、約1.4〜4.0Dの双極子モーメントを有し、かつO−H結合又はN−H結合などの水素結合に関与する化学部分を含む、溶媒である。例となる極性プロトン性溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、アンモニア、水、及び酢酸が挙げられる。
【0069】
本明細書で用いられる「極性非プロトン性溶媒」とは、O−H又はN−Hなどの水素結合性基を欠いている、約1.4〜4.0Dの双極子モーメントを有する溶媒を意味する。例となる極性非プロトン性溶媒としては、アセトン、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、酢酸エチル、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、及びジメチルスルホキシドが挙げられる。
【0070】
本明細書で用いられる「非極性溶媒」とは、低い比誘電率(dialectric constant)(<5)及び、約0.0〜約1.2の低い双極子モーメントを有する溶媒を意味する。例となる非極性溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、クロロホルム、及びジエチルエーテルが挙げられる。
【0071】
本発明の目的では、化学元素は、CAS version, Handbook of Chemistry and Physics, 67th Ed., 1986-87の裏表紙の元素周期表に従って特定される。
【0072】
本発明の化合物又はそれらの薬学的に許容される塩と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物もまた提供される。このような医薬組成物の製造方法もまた提供される。本方法は、本発明の化合物、又はそれらの薬学的に許容される塩を、薬学的に許容される担体中に配置する工程を含む。
【0073】
本発明の化合物及び本発明の医薬組成物は、真菌の増殖の阻害にとって有用である。一実施形態では、有効量の本発明の化合物を真菌と接触させ、それによって、真菌の増殖を阻害する。一実施形態では、本発明の化合物、又はそれらの薬学的に許容される塩は、組織培養培地に添加されるか、組織培養培地内に含まれる。
【0074】
本発明の化合物及び本発明の医薬組成物は、対象における真菌感染の治療にとって有用である。一実施形態では、治療的有効量の本発明の化合物、又はそれらの薬学的に許容される塩が、それらを必要とする対象に投与され、それによって真菌感染を治療する。
【0075】
真菌は、菌界に分類される真核生物である。菌界には、酵母、カビ、及び、キノコなどを含む、さらに大きな有機体が含まれる。酵母及びカビは、感染因子と臨床的関連性のあるものである。
【0076】
酵母は、菌界に分類される真核生物である。酵母は、典型的には、真菌の出芽形態として説明される。本発明に関連して特に重要なのは、哺乳動物宿主に感染を引き起こしうる酵母の種類である。このような感染は、感染に対するバリア機能が低下した宿主(例えば、やけど患者)及び免疫系機能が低下した宿主(例えば、化学療法又は免疫抑制療法を受けている宿主、及びHIVに感染した宿主)を含めた、易感染性宿主に最もよく起こる。病原性酵母には、限定されることなく、カンジダ属、並びにクリプトコッカス属のさまざまな種が含まれる。カンジダ属の病原性酵母の中でも特に注目すべきなのは、C.アルビカンス、C.トロピカリス(C. tropicalis)、C.ステラトイデア(C. stellatoidea)、C.グラブラータ(C. glabrata)、C.クルセイ(C. krusei)、C.パラプシローシス(C. parapsilosis)、C.ギリエルモンジイ(C. guilliermondii)、C.ビスワナチー(C. viswanathii)、及びC.ルシタニエ(C. lusitaniae)である。クリプトコッカス属としては、特に、クリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)が挙げられる。酵母は、例えば、ヒトにおける経口、食道、及び膣感染などの粘膜感染、並びに、骨、血液、尿生殖路、及び中枢神経系の感染を引き起こしうる。このリストは、例示的であり、多少なりとも限定されるものではない。
【0077】
多くの真菌(酵母は別として)は、哺乳動物宿主に感染を引き起こしうる。このような感染は、感染に対するバリア機能が低下した宿主(例えば、やけど患者)及び免疫系機能が低下した宿主(例えば、化学療法又は免疫抑制療法を受けている宿主、及びHIVに感染した宿主)を含めた、易感染性宿主に最もよく起こる。病原性真菌(酵母は別として)には、限定されることなく、アスペルギルス属、リゾプス属、ケカビ属、ヒストプラズマ属、コクシジオイデス属、ブラストミセス属、トリコフィトン属、ミクロスポルム属、及びエピデルモフィトン属の種が含まれる。前述の中でも特に注目すべきなのは、アスペルギルス・フミガーツス(A. fumigatus)、アスペルギルス・フラブス(A. flavus)、アスペルギルス・ニガー(A. niger)、ヒストプラズマ・カプスラーツム(H. capsulatum)、コクシジオイデス・イミチス(C. immitis)、及びブラストミセス・デルマティティディス(B. dermatitidis)である。菌界は、全身性の感染、及び、2,3の例を挙げれば、肺、骨、血液、尿生殖路、及び中枢神経系などの深部組織感染を引き起こしうる。一部の真菌は、皮膚及び爪の感染の原因となる。
【0078】
本明細書で用いられる場合、「阻害」又は「阻害する」とは、対照と比較して、客観的に測定可能な量又は程度だけ低下することを意味する。一実施形態では、阻害又は阻害するとは、対照と比較して、少なくとも統計的に有意な量だけ低下することを意味する。一実施形態では、阻害又は阻害するとは、対照と比較して、少なくとも5パーセントの低下を意味する。さまざまな個々の実施形態において、阻害又は阻害するとは、対照と比較して、少なくとも10、15、20、25、30、33、40、50、60、67、70、75、80、90、又は95パーセント(%)の低下を意味する。
【0079】
本明細書で用いられる場合、用語「治療」及び「治療する」とは、(a)状態又は疾患を発症する危険性がありうる、若しくは、状態又は疾患を有する状態になりやすいが、まだ状態又は疾患を有しているとは診断されていない対象において、状態又は疾患が生じることを予防する;(b)例えばその発症の遅延又は阻止など、状態又は疾患を抑止する;若しくは、(c)例えば状態又は疾患の退縮を生じるなど、状態又は疾患を軽減又は改善する、という結果を生じる介入を行うことを指す。一実施形態において、用語「治療する」及び「治療」は、(a)例えばその発症の遅延又は阻止など、状態又は疾患を抑止する;又は、(b)例えば状態又は疾患の退縮を生じるなど、状態又は疾患を軽減又は改善する、という結果を生じる介入を行うことを指す。
【0080】
本明細書で用いられる「真菌感染」とは、本明細書で定義される真菌に対する対象の感染又は感染症を指す。一実施形態では、用語「真菌感染」には、酵母感染が含まれる。本明細書で用いられる「酵母感染」とは、本明細書で定義される酵母に対する対象の感染又は感染症を指す。
【0081】
本明細書で用いられる場合、「対象」とは、生きている哺乳動物を指す。さまざまな実施形態において、対象は、限定されることなく、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ、ヒツジ、ヤギ、ネコ、イヌ、ブタ、ウマ、ウシ、又は非ヒト霊長類を含めた、非ヒト哺乳類である。一実施形態では、対象はヒトである。
【0082】
本明細書で用いられる場合、「酵母又は真菌感染を有する対象」とは、酵母又は真菌感染の少なくとも1つの客観的兆候を示す対象を指す。一実施形態では、酵母又は真菌感染を有する対象は、酵母又は真菌感染を有すると診断され、かつ、その治療を必要とする対象である。酵母又は真菌感染を診断する方法は、よく知られており、本明細書で詳細を説明する必要はない。
【0083】
本明細書で用いられる場合、「投与する」は、その通常の意味を有し、限定されることなく、静脈内、筋肉内、腹腔内、髄腔内、眼球内(例えば、硝子体内)、皮下、直接注入(例えば、腫瘍内)、粘膜、吸入、経口、及び局所を含めた、適切な投与経路で投与することを包含する。
【0084】
一実施形態では、投与は静脈内である。
【0085】
一実施形態では、投与は経口である。
【0086】
本明細書で用いられる場合、語句「有効量」とは、所望の生物学的効果を達成するのに十分な量を指す。
【0087】
本明細書で用いられる場合、語句「治療的有効量」とは、例えば、酵母又は真菌感染を治療するためなどの、所望の治療効果を達成するのに十分な量を指す。
【0088】
本発明の化合物は、他の治療剤と併用することができる。本発明の化合物と他の治療剤を同時に又は連続的に投与してもよい。他の治療剤が同時に投与される場合、それらは、同一又は別々の調剤で投与することができるが、それらは実質的に同時に投与される。他の治療剤と本発明の化合物との投与が時間的に分離している場合には、他の治療剤は、互いに、及び本発明の化合物と、連続的に投与される。これらの化合物の投与間の時間の分離は、数分程度であってもよいし、あるいは、それより長くてもよい。
【0089】
他の治療剤の例としては、AmBを含めた他の抗真菌剤、並びに、他の抗生物質、抗ウィルス剤、抗炎症剤、免疫抑制剤、及び抗癌剤が挙げられる。
【0090】
上記のように、「有効量」とは、所望の生物学的効果を達成するのに十分な量を指す。本明細書に提供される教示と併せて、さまざまな活性化合物の中から選択し、かつ、有効性、相対的バイオアベイラビリティ、患者の体重、有害な副作用の重症度、及び、好ましい投与方式などの因子に重み付けすることによって、有効な予防的又は治療的処方計画を、実質的に望ましくない毒性を生じさせず、かつ、なお特定の対象の治療に有効となるように、計画することができる。特定の用途のための有効量は、治療される疾患又は状態、投与される本発明の特定の化合物、対象のサイズ、又は、疾患又は状態の重症度などの因子に応じて変動しうる。当業者は、本発明の特定の化合物及び/又は他の治療剤の有効量を、過度の実験を必要とすることなく、経験的に決定することができる。概して、最大用量、すなわち、幾つかの医学的判断に従った最大安全用量が用いられることが好ましい。化合物の適切な全身濃度を実現するために、1日当たり複数回の投与が予定されてもよい。適切な全身濃度は、例えば、患者における薬物のピーク又は持続細胞質濃度の測定によって、決定されうる。「投与量」及び「用量」は、本明細書では同じ意味で用いられる。
【0091】
概して、活性化合物の1日の経口投与量は、ヒト対象では、1日当たり約0.01mg/kgから1日当たり1000mg/kgであろう。1日当たり1回又は数回の投与において、0.5〜50mg/kgの範囲の経口投与量が、所望の結果を生じると予想される。用量は、投与形態に応じて、局所又は全身の所望の薬物濃度を達成するために適切に調整されうる。例えば、静脈内投与量は、1日当たり1桁から数桁少ない投与量であろうと予想される。このような投与量で対象における応答が不十分な場合には、さらに高い投与量(又は、異なる、より局所的な送達経路による、効果的なより高い投与量)を、患者の耐容性が許容する程度まで用いてもよい。化合物の適切な全身濃度を達成するために、1日当たり複数回の投与が予定されている。
【0092】
一実施形態において、本発明の化合物の静脈内投与は、典型的には、0.1mg/kg/日〜20mg/kg/日でありうる。よって、静脈内投与は、AmBの最大耐用量と同様であるか、又は有利には、AmBの最大耐用量を超えうる。
【0093】
本明細書に記載される化合物については、治療有効量は、初めに、動物モデルから決定されうる。治療に有効な投与量はまた、ヒトにおいて試験されている本発明の化合物について、及び、他の関連した活性薬剤などの同様の薬理学的活性を示すことが知られている化合物についてのヒトデータから決定されてもよい。非経口の投与には、投与量がより多く必要とされうる。適用される投与量は、相対的バイオアベイラビリティ及び投与される化合物の有効性に基づいて調整されうる。上述の方法及び当技術分野で周知の他の方法に基づき、投与量を調整して、最大効果を達成することは、十分に当業者の能力でできる範囲内である。
【0094】
本発明の調剤は、通常は、薬学的に許容される濃度の塩、緩衝剤、保存料、相容性の担体、アジュバント、及び必要に応じて他の治療成分を含みうる、薬学的に許容される溶液で投与される。
【0095】
アムホテリシンBは、デオキシコラート系調剤及び脂質系(リポソーム製剤を含む)調剤を含む、多くの調剤で市販されている。本発明のアムホテリシンB誘導体化合物も同様に、例えば、及び限定されることなく、デオキシコラート系調剤及び脂質系(リポソーム製剤を含む)調剤として、処方されうる。
【0096】
治療での使用に関して、有効量の本発明の化合物は、所望の表面に本発明の化合物を送達する任意の用法で対象に投与されうる。本発明の医薬組成物の投与は、当業者に知られた任意の手段によって達成されうる。投与経路としては、経口、静脈内、筋肉内、腹腔内、皮下、直接注入(例えば、腫瘍内又は膿瘍内)、粘膜、吸入、及び局所を含むがこれらに限られない。
【0097】
経口投与では、化合物(すなわち、本発明の化合物、及び他の治療剤)は、活性化合物を当技術分野で周知の薬学的に許容される担体と合わせることによって、容易に調合されうる。このような担体は、本発明の化合物を、治療対象による経口摂取のために、錠剤、丸薬、糖衣錠、カプセル、液体、ゲル、シロップ剤、スラリー、懸濁液等として調合することを可能にする。経口用途の医薬製剤は、固体状の賦形剤として得ることができ、必要に応じて、得られた混合物を粉砕し、顆粒の混合物を加工し、必要に応じて適切な助剤を加えた後、錠剤又は糖衣錠のコアを得る。適切な賦形剤としては、特に、ラクトース、スクロース、マンニトール、又はソルビトールを含む、糖類などの充填剤;例えば、トウモロコシデンプン、小麦デンプン、米デンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントガム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル−セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、及び/又はポリビニルピロリドン(PVP)などのセルロース調製物などがある。必要に応じて、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、若しくは、アルギン酸又はその塩(例えばアルギン酸ナトリウム)などの崩壊剤を加えてもよい。必要に応じて、経口調剤はまた、生理食塩水又は、例えば、体内の酸性状態を中和するためのEDTAなどの緩衝液中で調合されてよく、あるいは、担体を使用せずに投与してもよい。
【0098】
上記の1種類以上の成分の経口の投与剤形もまた、特に予定されている。1種類以上の成分は、誘導体の経口送達が有効になるように化学的に修飾されうる。概して、予定される化学的修飾は、成分分子自体への少なくとも1つの部分の付加であり、その部分は、(a)酸加水分解の抑制;及び、(b)胃又は腸から血流への取り込みを可能にする。1種類以上の成分の全体的な安定性の向上、及び、体内における循環時間の増加もまた所望される。このような部分の例としては、次のものが挙げられる:ポリエチレングリコール、エチレングリコールとプロピレングリコールの共重合体、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン及びポリプロリン。Abuchowski and Davis, “Soluble Polymer-Enzyme Adducts”, In: Enzymes as Drugs、Hocenberg and Roberts, eds., Wiley-Interscience, New York, N.Y., pp. 367-383(1981); Newmark et al., J Appl Biochem 4:185-9(1982)。使用可能な他のポリマーは、ポリ−1,3−ジオキソラン及びポリ−1,3,6−チオキソカン(tioxocane)である。前述の通り、ポリエチレングリコール部分が薬学的利用にとって好ましい。
【0099】
成分(又は誘導体)について、放出場所は、胃、小腸(十二指腸、空腸、又は回腸)、又は大腸でありうる。当業者は、胃内では溶解せず、十二指腸又は腸の他の場所において物質を放出する、利用可能な調剤を有している。好ましくは、放出は、本発明の化合物(又は誘導体)の保護、又は、例えば腸など、胃内環境を過ぎてからの生物活性物質の放出のいずれかによって、胃内環境の有害な影響を回避する。
【0100】
十分な胃耐性を確実にするために、少なくともpH5.0に対して非浸透性のコーティングが望ましい。腸溶性コーティングとして用いられる、より一般的な不活性成分の例は、トリメリト酸酢酸セルロース(CAT)、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCP)、HPMCP 50、HPMCP 55、ポリビニルアセテートフタレート(PVAP)、Eudragit L30D、Aquateric、酢酸フタル酸セルロース(CAP)、Eudragit L、Eudragit S、及びシェラックである。これらのコーティングは、混合膜として使用してもよい。
【0101】
コーティング又はコーティング混合物は、胃に対する保護が意図されていない錠剤においても使用することができる。このコーティングには、糖衣、あるいは、錠剤をより飲み込み易くするコーティングが含まれうる。カプセルは、乾燥治療薬(例えば粉末)の送達用の硬質シェル(ゼラチンなど)で構成されうる;液体形態については、軟質ゼラチンシェルが使用されうる。カシェ剤のシェル材料は、濃デンプン又は他の食用紙でありうる。丸薬、トローチ剤、成形錠剤又は粉薬錠剤については、湿式塊化法(moist massing techniques)が使用されうる。
【0102】
治療薬は、粒径約1mmの顆粒又はペレットの形態の細かい多微粒子として、調剤中に含まれうる。カプセル投与用の物質の調剤は、粉末、軽度に圧縮されたプラグ(lightly compressed plugs)、又は錠剤でさえありうる。治療薬は、圧縮によって調製されうる。
【0103】
着色剤及び香味剤は、すべて、含まれうる。例えば、本発明の化合物(又は誘導体)は、調合されてよく(リポソーム又はマイクロスフィアのカプセル化などによる)、次いで、さらに、着色剤及び香味剤を含む冷蔵された飲料などの可食性の製品内に含まれてもよい。
【0104】
不活性な物質を用いて、治療薬を希釈し又はその容積を増加させてもよい。これらの希釈剤としては、特に、マンニトール、α−ラクトース、無水乳糖、セルロース、スクロース、改質デキストラン及びデンプンなどの炭水化物を挙げることができる。ある特定の無機塩を、充填剤として使用してもよく、例えば三リン酸カルシウム、炭酸マグネシウム及び塩化ナトリウムが挙げられる。幾つかの市販される希釈剤としては、ファスト−フロ(Fast-Fro)、エムデックス(Emdex)、STA−Rx 1500、エンコンプレス(Emcompress)及びアビセル(Avicell)がある。
【0105】
崩壊剤は、治療薬を固体投与剤形に処方する際に含まれうる。崩壊剤として使用される物質としては、限定はされないがデンプンが挙げられ、デンプンをベースとした市販の崩壊剤であるエキスプロタブを含む。デンプングリコール酸ナトリウム、アンバーライト、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ウルトラミロペクチン、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、オレンジピール、酸型カルボキシメチルセルロース、天然のスポンジ及びベントナイトは、すべて使用されうる。崩壊剤の別の形態は、不溶性の陽イオン交換樹脂である。粉末状ガムは、崩壊剤及び結合剤として使用してもよく、これらには、寒天、カラヤ又はトラガカントなどの粉末状ガムが含まれうる。アルギン酸及びそのナトリウム塩は、崩壊剤としても有用である。
【0106】
結合剤は、治療剤を結合させて堅い錠剤を形成するために使用してもよく、アカシア、トラガカント、デンプン及びゼラチンなどの天然物由来の物質を含む。他のものとしては、メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)及びカルボキシメチルセルロース(CMC)が挙げられる。ポリビニルピロリドン(PVP)及びヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)はいずれも、治療薬を粒状にするためにアルコール溶液において使用することができる。
【0107】
抗摩擦剤(anti-frictional agent)は、調剤プロセスの間の接着を防止するために治療薬の調剤に含まれうる。潤滑剤は、治療薬とダイ壁との間の層として使用してもよく、これらには、ステアリン酸並びにそのマグネシウム及びカルシウム塩、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、液体パラフィン、植物油及びワックスが含まれうるが、これらに限られない。ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム、さまざまな分子量のポリエチレングリコール、Carbowax 4000及び6000などの可溶性の潤滑剤も使用されうる。
【0108】
調合の際の薬物の流動特性を改善し、圧縮の際の再配列を補助しうる滑剤を添加してもよい。滑剤としては、デンプン、タルク、焼成シリカ及び水和シリコアルミネート(hydrated silicoaluminate)が挙げられうる。
【0109】
水性環境内への治療薬の溶解を補助するために、サーファクタントを湿潤剤として添加してもよい。サーファクタントとしては、ラウリル硫酸ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム及びスルホン酸ジオクチルナトリウムなどのアニオン性洗浄剤が挙げられうる。使用可能なカチオン性洗浄剤としては、塩化ベンザルコニウム及び塩化ベンゼトニウムが挙げられうる。調剤にサーファクタントとして含まれる可能性のある非イオン性洗浄剤としては、ラウロマクロゴール400、ステアリン酸ポリオキシル40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油10、50及び60、モノステアリン酸グリセロール、ポリソルベート40、60、65及び80、スクロース脂肪酸エステル、メチルセルロース、並びにカルボキシメチルセルロースが挙げられる。これらのサーファクタントは、本発明の化合物又は誘導体の調剤中に、単独で、又はさまざまな比率の混合物として、存在しうる。
【0110】
経口的に用いることができる医薬製剤は、ゼラチンで作られた押し込み式(push-fit)カプセル、並びに、ゼラチンで作られた軟質の密封カプセル、及び、グリセロール又はソルビトールなどの可塑剤を含む。押し込み式カプセルは、ラクトースなどの充填剤、デンプンなどの結合剤、及び/又は、タルク又はステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤、並びに、必要に応じて安定剤と混合した、活性成分を含みうる。軟質カプセルでは、活性化合物は、脂肪油、液体パラフィン、又は液体ポリエチレングリコールなどの適切な液体に溶解又は懸濁されうる。さらに、安定剤を添加してもよい。経口投与用に調合されたマイクロスフィアもまた、使用されうる。このようなマイクロスフィアは、当技術分野で十分に定義されている。経口投与用のすべての調剤は、このような投与に適した用量であろう。
【0111】
口腔内投与については、組成物は、通常の態様で配合された錠剤又はトローチ剤の形態をとりうる。
【0112】
吸入による投与については、本発明に従った使用のための化合物は、適切な推進剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素又は他の適切なガスの使用とともに、加圧式容器又はネブライザからエアロゾルスプレーの形態で便利に送達されうる。加圧式エアロゾルの場合には、用量単位は、計量された量を送達するための弁を設けることによって決定されうる。吸入器又は注入器での使用のための、例えばゼラチンの、カプセル及びカートリッジは、化合物と、ラクトース又はデンプンなどの適切な粉末基剤との粉末混合物を含むように調合されうる。
【0113】
本発明の化合物(又はそれらの誘導体)の肺送達もまた、本願において予定されている。本発明の化合物(又は誘導体)は、吸入と同時に哺乳動物の肺に送達され、肺上皮内層を横断して血流に入る。吸入分子の他の報告としては、Adjei et al., Pharm Res 7:565-569(1990);Adjei et al., Int J Pharmaceutics 63:135-144(1990)(酢酸リュープロリド);Braquet et al., J Cardiovasc Pharmacol 13(suppl. 5):143-146(1989)(エンドセリン−1);Hubbard et al., Annal Int Med 3:206-212(1989)(α1−アンチトリプシン);Smith et al., 1989, J Clin Invest 84:1145-1146(a−1−プロテイナーゼ);Oswein et al., 1990, “Aerosolization of Proteins”, Proceedings of Symposium on Respiratory Drug Delivery II, Keystone, Colorado, March(組換えヒト成長ホルモン);Debs et al., 1988, J Immunol 140:3482-3488(インターフェロン−γ及び腫瘍壊死因子α)及びPlatzらの米国特許第5,284,656号明細書(顆粒球コロニー刺激因子)が挙げられる。全身的な効果のための薬物の肺送達のための方法及び組成物は、Wongらに1995年9月19日に発行された米国特許第5,451,569号明細書(参照することによって取り込まれる)に記載されている。
【0114】
ネブライザ、定量吸入器、及び粉末吸入器を含むが、これらに限られない、治療薬の肺送達のために設計されたさまざまな機械装置が、本発明の実施における使用に予定されており、これらの装置はすべて、当業者によく知られている。
【0115】
本発明の実施に適した市販の装置の幾つかの特定の例としては、米国ミズーリ州セントルイス所在のMallinckrodt、Inc.社製造のUltravent ネブライザ;米国コロラド州エングルウッド所在のMarquest Medical Products社製造のAcorn IIネブライザ;米国ノースカロライナ州リサーチトライアングルパーク所在のGlaxo Inc.社製造のVentolin定量吸入器;及び、米国マサチューセッツ州ベッドフォード所在のFisons Corp.社製造のSpinhaler粉末吸入器がある。
【0116】
このような装置はすべて、本発明の化合物(又は誘導体)の分配に適した調剤の使用を必要とする。典型的には、各調剤は、採用する装置の種類に特有であり、治療に有用な通常の希釈剤、アジュバント及び/又は担体に加えて、適切な推進剤材料の使用も包含しうる。また、リポソーム、マイクロカプセル又はミクロスフェア、包接体、又は他の種類の担体の使用も予定されている。化学的に修飾された本発明の化合物はまた、化学修飾の種類又は採用する装置の種類に応じて、異なる調剤で調製されてもよい。
【0117】
ジェット又は超音波のいずれかでネブライザとともに使用するのに適した調剤は、典型的には、本発明の生物活性化合物を溶液1mLあたり約0.1〜25mgの濃度で、水に溶解した本発明の化合物(又は誘導体)を含む。調剤はまた、緩衝剤及び単糖を含んでいてもよい(例えば、本発明の化合物の安定化及び浸透圧の調節のため)。ネブライザ調剤は、エアロゾルを形成する溶液の噴霧化によって引き起こされる本発明の化合物の表面誘導凝集を低減又は防止するためのサーファクタントも含みうる。
【0118】
定量吸入装置とともに使用するための調剤は、概ね、サーファクタントの助けを借りて推進剤に懸濁された本発明の化合物(又は誘導体)を含有する微粉末を含む。推進剤は、クロロフルオロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボン、又は、トリクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタノール、及び1,1,1,2−テトラフルオロエタンを含めた炭化水素、又はそれらの組合せなど、この目的で用いられる通常の材料でありうる。適切なサーファクタントとしては、ソルビタントリオレエート及び大豆レシチンが挙げられる。オレイン酸もまた、サーファクタントとして有用でありうる。
【0119】
粉末吸入装置から分配するための調剤は、本発明の化合物(又は誘導体)を含有する乾燥微粉末を含み、かつ、例えばラクトース、ソルビトール、スクロース、又はマンニトールなどの増量剤を、例えば、調剤の質量の50〜90%など、装置からの粉末の分散を促進する量で含みうる。本発明の化合物(又は誘導体)は、有利には、肺深部への最も効果的な送達のために、10マイクロメートル(μm)未満、最も好ましくは0.5〜5μmの平均粒径を有する微粒子形態で調製すべきである。
【0120】
本発明の医薬組成物の経鼻送達もまた予定されている。経鼻送達は、肺における治療薬の堆積の必要なしに、鼻への治療薬の投与直後に、血流への本発明の医薬組成物の通過を可能にする。経鼻送達のための調剤としては、デキストラン又はシクロデキストランを用いたものが挙げられる。
【0121】
経鼻投与にとって有用な装置は、定量噴霧器が取り付けられた小さい硬質のボトルである。一実施形態では、本発明の液体の医薬組成物を容積が画定されたチャンバ内へと引き込むことによって定量が送達され、このチャンバは、該チャンバ内の液体が圧縮されたときに噴霧を形成することによってエアロゾル調剤をエアロゾル化するように寸法化されたアパーチャを有する。チャンバは圧縮されて本発明の医薬組成物を投与する。特定の実施形態では、チャンバはピストン構成である。このような装置は市販されている。
【0122】
あるいは、スクイズされたときに噴霧を形成することによってエアロゾル調剤をエアロゾル化するように寸法化されたアパーチャ又は開口部を備えたプラスチックのスクイズボトルが用いられる。開口部は、通常、ボトルの頂部に設けられ、この頂部は、概して、エアロゾル調剤の効率的な投与のために、鼻道に部分的に適合するようにテーパ状になっている。好ましくは、鼻吸入器は、薬物の定量投与のために、定量のエアロゾル調剤を供給する。
【0123】
化合物は、それらを全身的に送達することが望ましい場合には、例えばボーラス注入又は持続注入などの注入による非経口投与用に調合されうる。注入用の調剤は、添加した保存料とともに、例えば、アンプル内又は多回投与用容器内に単位投与剤形で提示されうる。組成物は、油性又は水性のビヒクル中で懸濁液、溶液、又はエマルションなどの形態をとってよく、懸濁、安定化及び/又は分散剤などの製剤化剤(formulatory agents)を含みうる。
【0124】
非経口投与のための医薬調剤には、水溶性の形態の活性化合物の水溶液が含まれる。加えて、活性化合物の懸濁液は、適切な油性注入懸濁液として調製されうる。適切な親油性溶媒又はビヒクルとしては、ゴマ油などの脂肪油、又はオレイン酸エチル又はトリグリセリドなどの合成脂肪酸エステル、又はリポソームが挙げられる。水性注入懸濁液は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、又はデキストランなどの懸濁液の粘性を増加させる物質を含みうる。必要に応じて、懸濁液は、適切な安定剤又は、高濃度溶液の製剤を可能にするために化合物の溶解性を高める薬剤も含みうる。
【0125】
あるいは、活性化合物は、使用前に、例えば滅菌した発熱性物質非含有水などの適切なビヒクルで構成するための粉末の形態でありうる。
【0126】
化合物はまた、例えば、カカオバター又は他のグリセリドなどの通常の坐剤用基剤を含む坐剤又は停留浣腸など、直腸又は膣用組成物中に調合されうる。
【0127】
上述の調剤に加えて、化合物は、デポ製剤としても調合されうる。このような長時間作用型調剤は、適切なポリマー性又は疎水性の材料(例えば、許容される油中のエマルションとして)又はイオン交換樹脂、又は、例えば難溶性塩などの難溶性誘導体とともに調合されうる。
【0128】
医薬組成物は、適切な固体又はゲル相の担体又は賦形剤も含みうる。このような担体又は賦形剤の例としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、さまざまな糖類、デンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、及びポリエチレングリコールなどのポリマーが挙げられるが、これらに限られない。
【0129】
適切な液体又は固体の医薬製剤の剤形は、例えば、吸入のための水溶液又は食塩水、マイクロカプセル化、渦巻形に内包化(encochleated)、微細な金粒子上のコーティング、リポソームに内包、ネブライザ投与、エアロゾル、皮膚への移植用ペレット、又は、皮膚を引っ掻くための鋭器上の乾燥形態などである。医薬組成物としては、顆粒、粉末、錠剤、コーティング錠、(マイクロ)カプセル、坐剤、シロップ剤、エマルション、懸濁液、クリーム、ドロップ又は活性化合物が徐放される製剤も挙げられ、該製剤において、賦形剤及び添加剤、及び/又は、例えば、崩壊剤、結合剤、コーティング剤、膨潤剤、潤滑剤、香味剤、甘味剤又は可溶化剤などの助剤が、上述のように慣用的に用いられる。医薬組成物は、さまざまな薬物送達システムにおける使用に適している。薬物送達のための方法の簡単な見直しについては、ここに参照することによって本明細書に取り込まれる、Langer R., Science 249:1527-33(1990)を参照されたい。
【0130】
本発明の化合物及び必要に応じて他の治療薬は、そのまま(ストレート)で、又は薬学的に許容される塩の形態で投与されうる。医薬に用いられる場合、塩は薬学的に許容されるべきであるが、薬学的に許容されない塩は、それらの薬学的に許容される塩の調製に便利に用いられうる。このような塩としては、次の酸から調製されるものが挙げられるが、それらに限られない:塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酢酸、サリチル酸、p−トルエンスルホン酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、ギ酸、マロン酸、コハク酸、ナフタレン−2−スルホン酸、及びベンゼンスルホン酸。また、このような塩は、カルボン酸基のナトリウム、カリウム又はカルシウム塩など、アルカリ金属塩又はアルカリ土類塩として調製されうる。
【0131】
適切な緩衝剤としては、次のものが挙げられる:酢酸及び塩(1〜2%w/v);クエン酸及び塩(1〜3%w/v);ホウ酸及び塩(0.5〜2.5%w/v);並びに、リン酸及び塩(0.8〜2%w/v)。適切な保存料としては、塩化ベンザルコニウム(0.003〜0.03%w/v);クロロブタノール(0.3〜0.9%w/v);パラベン(0.01〜0.25%w/v)及びチメロサール(0.004〜0.02%w/v)が挙げられる。
【0132】
本発明の医薬組成物は、薬学的に許容される担体中に含まれる、有効量の本発明の化合物、及び、必要に応じて治療剤を含む。用語「薬学的に許容される担体」とは、ヒト又は他の脊椎動物への投与に適した1種類以上の相容性の固体又は液体の充填剤、希釈剤又は内包用物質を意味する。用語「担体」は、適用を容易にするために活性成分と組み合わせる、天然又は合成の有機又は無機の成分を意味する。医薬組成物の成分はまた、実質的に所望の薬剤効率を損なうような相互作用が存在しない態様で、本発明の化合物と、及び、互いに、混合可能である。
【0133】
本発明の化合物を特に含むがそれに限られない治療剤は、粒子内に提供されてもよい。本明細書で用いられる粒子は、ナノ粒子又はマイクロ粒子(又は、場合によっては、より大きい粒子)を意味し、該粒子は、本明細書に記載される本発明の化合物又は他の治療剤の全部又は一部で構成することができる。粒子は、腸溶性コーティングを含むがそれに限られないコーティングによって取り囲まれたコア内に、治療剤を含みうる。治療剤はまた、粒子全体に分散されてもよい。治療剤はまた、粒子内に吸着されていてもよい。粒子は、ゼロ次放出、一次放出、二次放出、遅延放出、徐放、即時放出、及びそれらのいずれかの組合せ等を含む、任意の次数の放出速度論を示しうる。粒子は、治療剤に加えて、崩壊性(erodible)、非崩壊性、生分解性、又は非生分解性の物質又はそれらの組合せを含むがそれらに限られない薬学及び医学の分野で、日常的に使用される物質を含みうる。粒子は、溶液中又は半固体状態内に本発明の化合物を含む、マイクロカプセルでありうる。粒子は、事実上、どのような形状であってもよい。
【0134】
非生分解性及び生分解性の両方のポリマー物質を、治療剤の送達のための粒子の製造に使用することができる。このようなポリマーは、天然のポリマーであっても合成のポリマーであってもよい。ポリマーは、放出が望まれる期間に基づいて選択される。特に注目される生体接着性のポリマーとしては、その教示が本明細書に援用される、Sawhney H S et al. (1993) Macromolecules 26:581-7に記載される生体内分解性のハイドロゲルが挙げられる。これらには、ポリヒアルロン酸、カゼイン、ゼラチン、グルチン、ポリ無水物、ポリアクリル酸、アルギン酸塩、キトサン、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(メタクリル酸エチル)、ポリ(メタクリル酸ブチル)、ポリ(メタクリル酸イソブチル)、ポリ(メタクリル酸ヘキシル)、ポリ(メタクリル酸イソデシル)、ポリ(メタクリル酸ラウリル)、ポリ(メタクリル酸フェニル)、ポリ(アクリル酸メチル)、ポリ(アクリル酸イソプロピル)、ポリ(アクリル酸イソブチル)、及びポリ(アクリル酸オクタデシル)が含まれる。
【0135】
治療剤は、制御放出システム内に含まれうる。用語「制御放出」は、調剤からの薬物放出の態様及びプロファイルが制御された、いずれかの薬物含有調剤を指すことが意図されている。これは、即時放出性の調剤並びに即時放出性ではない調剤のことを指し、即時放出性ではない調剤には、徐放性及び遅延放出性の調剤が含まれるがこれらに限られない。用語「徐放性」(「持続放出」とも称される)は、長期間にわたって薬物の逐次放出をもたらし、かつ、好ましくは、必ずというわけではないが、長期間にわたり薬物の実質的に一定の血中濃度を生じる、製剤のことを指す、通常の意味で用いられる。用語「遅延放出性」は、調剤の投与と、調剤からの薬物の放出との間に時間の遅延が存在する製剤のことを指す、通常の意味で用いられる。「遅延放出性」は、長期間にわたる薬物の逐次の放出を含んでも含まなくてもよく、したがって、「徐放性」であってもなくてもよい。
【0136】
長期徐放性インプラントの使用は、慢性的な状態の治療に特に適しうる。「長期」放出は、本明細書で用いられる場合、インプラントが、少なくとも7日間、好ましくは30〜60日間、治療濃度の活性成分を送達するように構成かつ配置されることを意味する。長期徐放性インプラントは、当業者に広く知られており、上述の放出システムの幾つかを含む。
【0137】
本明細書に記載される組成物及び方法への他の適切な修正及び適合は、当業者に知られた情報の観点から、本明細書に含まれる本発明の説明から容易に明らかとなり、また、本発明又はそれらの実施形態の範囲から逸脱することなくなされうることが、当業者に理解されよう。
【実施例】
【0138】
本発明を詳細に説明してきたが、本発明は、単に例証の目的で本明細書に含まれ、本発明を限定することは意図されていない、以下の実施例を参照することによってより明確に理解されよう。
【0139】
実施例1.最小限に保護されたAmBからのAmBMUの合成
【化17】
丸底フラスコにアムホテリシンB(1g、計算値1.082mmol、1当量)及びFmoc−スクシンイミド(0.55g、1.62mmol、1.5当量)を入れ、室温でDMF:MeOHの2:1混合液(33.8mL)に溶解させた。その後、ピリジン(0.5mL、6.21mmol、5.74当量)を加え、反応を、室温で12時間、攪拌した。次に、反応混合物をジエチルエーテル(1.0L)に注いだ。30分間の攪拌後、得られた黄色沈殿物を、Whatman#50フィルタ紙を使用してBuchner濾過によって単離し、黄色固体を得た。濾過ケーキをフィルタ上で10分間、乾燥させ、次に、真空下で1時間、保管した。
【0140】
得られた粉末を、THF:MeOH 1:1(35mL)に溶解し、0℃まで冷却した。この溶液にカンファースルホン酸(138mg、0.59mmol、0.55当量)を加え、得られた混合物を0℃で1時間、攪拌した。次に、反応を、トリエチルアミン(0.14mL、0.59mmol、0.55当量)を用いて0℃でクエンチした。反応を真空下で濃縮し、溶媒のおよそ半分を除去した。得られた飽和溶液を、ヘキサン:ジエチルエーテル1:1(1.0L)に注ぎ、黄色沈殿物を、Whatman#50フィルタ紙を使用してBuchner濾過によって回収し、ジエチルエーテル(200mL)で洗浄して黄色固体を得た。
【0141】
得られた固体を、THF(54mL、0.02M)に溶解させた。この溶液に、トリエチルアミン(0.15mL、1.08mmol、1当量)を加え、次に、ジフェニルホスホリルアジド(0.70mL、3.25mmol、3当量)を加えた。反応を50℃まで加熱し、12時間、攪拌した。12時間後、反応を室温まで冷却し、メチルアミン(THF中、2.0M溶液、4.33mL、8.8mmol、8当量)を加えた。次に、反応を室温で8時間、攪拌し、黄色沈殿物をゆっくりと成長させた(evolving)。次に、反応混合物をジエチルエーテル(1.0L)に注ぎ、得られた黄色沈殿物を、Whatman#50フィルタ紙を使用してBuchner濾過によって単離し、黄色固体を得た。固体をDMSO(およそ100mg/mL)に溶解し、単一の分取用HPLC精製(C18、5μm、50×250mm、75mL/分、9分間にわたり80:20〜59:41 0.3% HCOH(aq):MeCN)によって精製した。同様に、単一のHPLC精製のみを必要とする、世界的供給の抗真菌剤カスポファンギンが供給される。HPLC精製の後に、真空下、40℃で溶媒を除去した。溶媒の除去の完了後、milliQ水(10mL)及びトルエン(50mL)と共沸することによって残留ギ酸を除去した。このプロセスを3回繰り返し、AmBMUを黄色固体として得た(264.3mg、0.278mmol、工程あたりの平均収率64%)。
1H NMR(750 MHz, 1:1 ピリジン d-5: メタノール d-4) δ 6.64(dd, J=14.7, 11.2 Hz, 1H), 6.60(dd, J=14.8, 10.0 Hz, 1H), 6.52(t, J=12.1 Hz, 1H), 6.48 - 6.37(m, 6H), 6.36 - 6.25(m, 4H), 5.69 - 5.63(m, 1H), 5.53 - 5.47(dd, J=14.3, 9.8 Hz, 1H), 4.97(s, 1H), 4.82-4.76(m, 1H), 4.65(app t, J=10.3 Hz, 1H), 4.53(bs, 1H), 4.49(app tt, J=9.8, 2.9 Hz, 1H), 4.42(app t, J=9.1 Hz, 1H), 4.29 - 4.23(m, 1H), 3.98(app t, J=10.0 Hz, 1H), 3.90 - 3.84(m, 2H), 3.80 - 3.72(m, 1H), 3.62 - 3.56(m, 1H), 3.56 - 3.51(m, 1H), 3.47 - 3.44(m, 1H), 3.38(app d, J=9.5 Hz, 1H), 2.79(s, 3H), 2.71 - 2.65(m, 1H), 2.61 - 2.55(m, 1H), 2.51(dd, J=16.7, 9.8 Hz, 1H), 2.39 - 2.34(m, 2H), 2.21 - 2.14(m, 1H), 2.06 - 1.99(m, 2H), 1.96(dd, J=14.8, 7.3 Hz, 1H), 1.85(dd, J=13.9, 10.9 Hz, 1H), 1.84-1.79(m, 1H), 1.73 - 1.65(m, 3H), 1.66 - 1.61(m, 1H), 1.61 - 1.56(m, 1H), 1.53(app dt, J=14.0, 3.0 Hz, 1H), 1.47-1.45(m, 1H), 1.46(d, J=6.2 Hz, 3H), 1.37(d, J=6.5 Hz, 3H), 1.25(d, J=6.4 Hz, 3H), 1.18(d, J=7.1 Hz, 3H)。
13C NMR(125 MHz, 1:1 ピリジン d-5: メタノール d-4) δ 172.31, 161.63, 137.57, 137.33, 134.82, 134.20, 134.17, 133.99, 133.91, 133.67, 133.59, 133.28, 132.98, 131.04, 129.73, 128.99, 98.04, 98.26, 79.10, 77.44, 76.32, 75.24, 74.64, 72.32, 70.92, 70.45, 69.98, 69.26, 68.97, 68.69, 68.46, 58.35, 57.35, 47.22, 45.74, 44.90, 44.06, 42.89, 41.28, 40.80, 36.72, 36.38, 31.53, 27.02, 19.11, 18.10, 17.35, 12.64。
HRMS(ESI):計算値(C48H77N3O16+H)+ 952.5382;観測値952.5385
分析用HPLC(Zorbax Eclipse C18、1.8μm、2.1×50mm、0.4mL/分、8分間にわたりH2O:MeCN 95:5〜5:95(両方とも0.1% HCO2Hを含む))、保持時間=5.7分間。
【0142】
実施例2.最小限に保護されたAmBからのAmBAUの合成
【化18】
丸底フラスコに、DMF:MeOHの2:1混合物(33.8mL)に溶解した、アムホテリシンB(1g、計算値1.082mmol、1当量)及びFmoc−スクシンイミド(0.55g、1.62mmol、1.5当量)を、室温で充填した。その後、ピリジン(0.5mL、6.21mmol、5.74当量)を添加し、反応を室温で12時間、攪拌した。次に、反応混合物をジエチルエーテル(1.0L)に注いだ。30分間の攪拌後、得られた黄色沈殿物を、Whatman#50フィルタ紙を使用してBuchner濾過によって単離し、黄色固体を得た。濾過ケーキをフィルタ上で10分間、乾燥させ、次に、真空下で1時間、保管した。
【0143】
得られた粉末を、THF:MeOH 1:1(35mL)に溶解し、0℃まで冷却した。この溶液にカンファースルホン酸(138mg、0.59mmol、0.55当量)を加え、得られた混合物を0℃で1時間、攪拌した。次に、反応を、トリエチルアミンを用いて0℃でクエンチした(0.14mL、0.59mmol、0.55当量)。反応を真空下で濃縮し、溶媒のおよそ半分を除去した。得られた飽和溶液を、ヘキサン:ジエチルエーテル1:1(1.0L)に注ぎ、黄色沈殿物を、Whatman#50フィルタ紙を使用してBuchner濾過によって回収し、ジエチルエーテル(200mL)で洗浄し、黄色固体を得た。
【0144】
得られた固体を、THF(54mL、0.02M)に溶解させた。この溶液に、トリエチルアミン(0.15mL、1.08mmol、1当量)を加え、次に、ジフェニルホスホリルアジド(0.70mL、3.25mmol、3当量)を加えた。反応を50℃まで加熱し、12時間、攪拌した。12時間後、エチレンジアミン(0.29mL、4.33mmol、4当量)を加え、50℃で3時間、攪拌下で反応を継続し、黄色沈殿物をゆっくりと成長させた(evolving)。次に、反応混合物をジエチルエーテル(1.0L)に注ぎ、得られた黄色沈殿物を、Whatman#50フィルタ紙を使用してBuchner濾過によって単離し、黄色固体を得て、これをDMSO(およそ66mg/mL)に溶解し、分取用HPLC(C18、5μm、50×250mm、75mL/分、9分間にわたりHCOH(aq):MeCN 80:20〜50:50、0.3%)で精製した。HPLC精製の後、真空下、40℃で溶媒を除去した。溶媒の除去の完了後、milliQ水(10mL)及びトルエン(50mL)と共沸することによって残留ギ酸を除去した。このプロセスを3回繰り返し、AmBAUを黄色固体として得た(236.2mg、0.241mmol、工程あたりの平均収率61%)。
1H NMR(750 MHz, 1:1 ピリジン d-5: メタノール d-4) δ 6.64(dd, J=14.7, 11.2 Hz, 1H), 6.60(dd, J=15.2, 8.8 Hz, 1H), 6.55 - 6.47(m, 1H), 6.47 - 6.35(m, 7H), 6.35 - 6.25(m, 3H), 5.68 - 5.61(m, 1H), 5.49(dd, J=15.0, 10.2 Hz, 1H), 4.91(s, 1H), 4.79 - 4.73(m, 1H), 4.64(app t, J=10.7 Hz, 1H), 4.49 - 4.42(m, 3H), 4.28 - 4.23(m, 1H), 3.96(app t, J=10.4 Hz, 1H), 3.88 - 3.82(m, 1H), 3.82 - 3.73(m, 3H), 3.55 - 3.50(m, 1H), 3.51 - 3.46(m, 1H), 3.47 - 3.43(m, 1H), 3.39(app d, J=8.8 Hz, 1H), 3.36(app d, J=9.2 Hz, 1H), 3.32 - 3.26(m, 1H), 3.23 - 3.16(m, 1H), 2.66(dd, J=15.4, 4.9 Hz, 1H), 2.59 - 2.53(m, 1H), 2.49(dd, J=16.8, 9.8 Hz, 1H), 2.38 - 2.33(m, 2H), 2.18 - 2.12(m, 1H), 2.04 - 1.97(m, 2H), 1.90(dd, J=14.9, 7.8 Hz, 1H), 1.84(dd, J=14.0, 11.0 Hz, 1H), 1.82 - 1.75(m, 1H), 1.71-1.65(m, 3H), 1.65 - 1.60(m, 1H), 1.60 - 1.55(m, 1H), 1.52(app dt, J=13.8, 2.9 Hz, 1H), 1.48 - 1.44(m, 1H), 1.44(d, J=6.2 Hz, 3H), 1.36(d, J=6.5 Hz, 3H), 1.24(d, J=6.4 Hz, 3H), 1.17(d, J=7.1 Hz, 3H)。
13C NMR(150 HMz, 1:1 ピリジン d-5: メタノール d-4) δ 172.34, 161.35, 137.58, 137.08, 134.78, 134.16, 134.11, 134.02, 133.93, 133.71, 133.62, 133.26, 133.00, 130.85, 130.62, 98.26, 98.07, 79.12, 77.60, 76.37, 75.24, 74.63, 72.28, 71.43, 70.47, 70.00, 69.23, 69.23, 68.69, 68.62, 58.16, 57.32, 47.18, 45.77, 44.93, 44.05, 42.86, 41.67, 40.80, 40.49, 39.31, 36.73, 36.35, 31.56, 19.08, 18.08, 17.32, 12.63。
HRMS(ESI):計算値(C49H80N4O16+H)+ 981.5648;観測値981.5641
分析用HPLC(Zorbax Eclipse C18、1.8μm、2.1×50mm、0.4mL/分、8分間にわたりH2O:MeCN 95:5〜5:95(両方とも0.1% HCO2Hを含む))、保持時間=5.2分間。
【0145】
実施例3.最小限に保護されたAmBからのAmBCU−アリルエステルの合成
【化19】
丸底フラスコに、DMF:MeOHの2:1混合物(33.8mL)に溶解した、アムホテリシンB(1g、計算値1.08mmol、1当量)及びFmoc−スクシンイミド(0.55g、1.62mmol、1.5当量)を、室温で充填した。その後、ピリジン(0.5mL、6.21mmol、5.74当量)を添加し、反応を室温で12時間、攪拌した。次に、反応混合物をジエチルエーテル(1.0L)に注いだ。30分間の攪拌後、得られた黄色沈殿物を、Whatman#50フィルタ紙を使用してBuchner濾過によって単離し、黄色固体を得た。濾過ケーキをフィルタ上で10分間、乾燥させ、次に、真空下で1時間、保管した。
【0146】
得られた粉末を、THF:MeOH 1:1(35mL)に溶解し、0℃まで冷却した。この溶液にカンファースルホン酸(138mg、0.60mmol、0.55当量)を加え、得られた混合物を0℃で1時間、攪拌した。次に、反応を、トリエチルアミンを用いて0℃でクエンチした(0.14mL)。反応を真空下で濃縮し、溶媒のおよそ半分を除去した。得られた飽和溶液を、ヘキサン:ジエチルエーテル1:1(1.0L)に注ぎ、黄色沈殿物を、Whatman#50フィルタ紙を使用してBuchner濾過によって回収し、ジエチルエーテル(20mL)で洗浄し、黄色固体を得た。
【0147】
得られた固体(1.06g、計算値1.08mmol、1当量)を、40mLバイアルに加え、その後、THF(54mL、0.02M)、トリエチルアミン(0.16mL、1.14mmol、1.05当量)、最後に、ジフェニルホスホリルアジド(0.70mL、3.25mmol、3当量)を加えた。次に、反応を50℃まで加熱し、15時間、攪拌した。
【0148】
別の40mLバイアルに、β−アラニンアリルエステル塩酸塩(7.16g、43.3mmol、40当量)、炭酸ナトリウム(13.75g、129.8mmol、120当量)、及びTHF(14mL)を加えた。得られた懸濁液を、次に、室温で20分間、攪拌した。次に、懸濁液をCeliteで濾過し、続いて、0.2μmのシリンジチップフィルタに通して濾過した。次に、得られたβ−アラニンアリルエステル遊離塩基を50℃の反応混合物に加え、8時間、攪拌した。8時間後、揮発性物質を真空下で除去し、赤色油を得た。これをDMSOに溶解させ、分取用HPLCで直接精製した(C18、5μm、50×250mm、80mL/分、9分間にわたり80:20〜40:60 0.3% HCOH(aq):MeCN)。アセトニトリルとギ酸水溶液を真空下、35℃で除去する際に、C−13メチルケタールがヘミケタールに変換され、AmBCU−アリルエステルを黄色固体として得る(370mg、0.352mmol、ステップあたりの平均収率68%)。
1H NMR(500 MHz, 10:1 ピリジン d-5: メタノール d-4) δ 6.71 - 6.25(m, 13H), 6.01 - 5.89(m, 1H), 5.70 - 5.64(m, 1H), 5.54 - 5.48(m, 1H), 5.33(m, 1H), 5.20(m, 1H), 4.97(s, 1H), 4.79(bs, 1H), 4.70 - 4.59(m, 4H), 4.50(app t, J=10.0 Hz ,1H), 4.43(app t, J=8.8 Hz, 1H), 4.26 - 4.20(m, 1H), 3.99(app t, J=10.0 Hz, 1H), 3.88(app d, J=10.8 Hz, 1H), 3.82-3.77(m, 2H), 3.65-3.60(m, 3H), 3.47(m, 1H), 3.42 - 3.35(m, 1H), 3.35 - 3.31(m, 1H), 2.71 - 2.62(m, 3H), 2.58(m, 1H), 2.52(dd, J=16.8, 9.7 Hz, 1H), 2.41 - 2.33(m, 2H), 2.23-2.13(m, 1H), 2.07 - 1.91(m, 3H), 1.91 - 1.77(m, 2H), 1.75 - 1.57(m, 5H), 1.57 - 1.51(m, 1H), 1.48 - 1.44(m, 4H), 1.37(d, J=6.3 Hz, 3H), 1.26(d, J=6.3 Hz, 3H), 1.18(d, J=7.1 Hz, 3H)。
13C NMR(125 MHz, 10:1 ピリジン-d5 : MeOH-d4) δ 172.31, 171.92, 160.41, 136.83, 136.75, 134.46, 133.84, 133.57, 133.47, 133.45, 133.20, 133.03, 132.91, 132.61, 130.57, 129.55, 117.73, 98.06, 97.90, 77.08, 75.96, 74.89, 74.31, 71.92, 71.61, 70.08, 69.59, 68.65, 68.29, 68.19, 65.31, 57.96, 57.09, 46.84, 45.53, 44.62, 42.59, 40.89, 40.48, 36.41, 36.07, 35.42, 31.22, 18.74, 17.89, 17.02, 12.32。
HRMS(ESI):計算値(C53H83N3O18+H)+ 1050.570;観測値 1050.5756
分析用HPLC(Zorbax Eclipse C18、1.8μm、2.1×50mm、0.4mL/分、8分間にわたりH2O:MeCN 95:5〜5:95(両方とも0.1% HCO2Hを含む))、保持時間=6.4分間。
【0149】
実施例4.AmBCU−アリルエステルの脱アリル化によるAmBCUの合成
【化20】
40mLバイアルに、AmBCU−アリルエステル(370mg、352.3μmol、1当量)、及びチオサリチル酸(203.4mg、1.76mmol、5当量)を加えた。次に、バイアルをグローブボックス内に運び入れ、Pd(PPh(205mg、0.18mmol、0.5当量)を加えた。バイアルをセプタムキャップで密封し、グローブボックスから取り出し、シリンジによってDMF(17.6mL、0.2M)を加えた。次に、反応を室温で1時間、攪拌した。次に、反応を、複数の50mL遠心分離管内のEtO(370mL)に注いだ。得られた懸濁液を、次に、3700Gで5分間、遠心分離にかけた。淡赤色の上清をデカンテーションし、得られた黄色/橙色固体をDMSOに溶解させ、分取用HPLCで精製し(C18、5μm、50×250mm、80mL/分、9分間にわたり80:20〜40:60 0.3% HCOH(aq):MeCN)、AmBCUを黄色固体として得た(124.4mg、0.123mmol、収率35%、1gのAmBからのステップあたりの平均収率58%)。
1H NMR(500 MHz, 1:1 ピリジン d-5: メタノール d-4) δ 6.69 - 6.23(m, 13H), 5.70 - 5.64(m, 1H), 5.54-5.50(m, 1H), 5.00(s, 1H), 4.76(bs, 1H), 4.65(app t, J=10.4 Hz, 1H), 4.57(app bs, 1H), 4.49(app t, J=9.0 Hz, 1H), 4.45 - 4.39(m, 1H), 4.30-4.23(m, 1H), 4.01-3.95(m, 1H), 3.92-3.84(m, 2H), 3.82-3.77(m, 1H), 3.73-3.67(m, 2H), 3.67-3.63(m, 2H), 3.57-3.51(m, 2H), 3.49-3.45(m, 1H), 3.38(app d, J=9.8 Hz, 1H), 2.74-2.63(m, 2H), 2.51(dd, J=17.0, 9.5 Hz 1H), 2.43 - 2.34(m, 2H), 2.23 - 2.14(m, 1H), 2.05-1.98(m, 2H), 2.94-1.89(m, 1H), 1.88-1.80(m, 2H), 1.73-1.59(m, 5H), 1.57 - 1.51(m, 1H), 1.46(d, J=6.1 Hz, 4H), 1.44 - 1.40(m, 1H), 1.38(d, J=6.3 Hz, 3H), 1.26(d, J=6.3 Hz, 3H), 1.19(d, J=7.1 Hz, 3H)。
13C NMR(150 MHz, DMSO-d6) δ 175.38, 170.58, 158.41, 136.81, 136.33, 133.92, 133.76, 133.64, 133.25, 133.16, 132.57, 132.40, 132.25, 132.17, 131.87, 131.23, 130.28, 129.00, 97.04, 96.87, 77.20, 76.06, 73.86, 73.48, 73.05, 69.50, 69.16, 68.80, 67.98, 67.79, 67.44, 66.84, 66.20, 59.75, 56.23, 55.25, 45.84, 44.88, 44.80, 42.52, 42.01, 40.43, 39.52, 35.11, 30.96, 29.05, 18.52, 17.80, 16.96, 12.10。
HRMS(ESI):計算値(C50H79N3O18+H)+ 1010.5437;実測値 1010.5449
分析用HPLC(Zorbax Eclipse C18、1.8μm、2.1×50mm、0.4mL/分、8分間にわたりH2O:MeCN 95:5〜5:95(両方とも0.1% HCO2Hを含む))、保持時間=6.07分間。
【0150】
実施例5.パーシリルAmB中間体4
【化21】
図4に示すように、以下に見られるプロトコルに従って、パーシリル中間体4を合成した:Palacios, D. S., Anderson, T. M. & Burke, M. D. A Post-PKS Oxidation of the Amphotericin B Skeleton Predicted to be Critical for Channel Formation Is Not Required for Potent Antifungal Activity. J. Am. Chem. Soc. 129, 13804-13805, (2007)。
【0151】
実施例6.イソシアナート5の合成
【化22】
40mLバイアルに、4(602.6mg、275.3μmol、1当量)、及びベンゼン(13.7mL)を加えた。トリエチルアミン(115μL、0.822mmol、3当量)を加え、続いてDPPA(71μL、33.0mmol、1.2当量)を加えた。反応を、80℃で予熱した加熱ブロック内に設置し、3.5時間、攪拌した。次に、反応を、水(25mL)及びジエチルエーテル(50mL)とともに、125mLの分液漏斗に移した。層を分離し、有機層を、ブライン(25mL)で洗浄し、NaSOで乾燥し、濾過し、真空下で濃縮した。得られた赤色/橙色の油を、次に、SiOクロマトグラフィ(ヘキサン:EtO 100:0〜0:100)によって精製し、橙色固体として5を得た(168.7mg、0.077mmol、28%収率)。
1H NMR(500 MHz, アセトン-d6) δ 7.87(d, J=7.5 Hz, 2H), 7.70(d, J=7.5 Hz, 2H), 7.42(t, J=7.4 Hz, 2H), 7.37 - 7.29(m, 2H), 6.59 - 6.11(m, 12H), 6.06(dd, J=15.6, 5.9 Hz, 1H), 5.51(dd, J=14.8, 9.4 Hz, 1H), 5.36(d, J=9.7 Hz, 1H), 4.70(s, 1H), 4.69 - 4.64(m, 2H), 4.48(dd, J=10.5, 6.5 Hz, 1H), 4.35(dd, J=10.5, 6.6 Hz, 1H), 4.24(app t, J=6.6 Hz, 1H), 4.18(s, 1H), 4.16 - 4.05(m, 2H), 4.04 - 3.98(m, 1H), 3.97(app d, J=3.1 Hz, 1H), 3.86(app dd, J=9.0, 2.9 Hz, 1H), 3.80(app t, J=9.4 Hz, 1H), 3.73 - 3.60(m, 2H), 3.48(app t, J=9.0 Hz, 1H), 3.38 - 3.31(m, 1H), 3.29(app t, J=9.7 Hz, 1H), 3.16(s, 3H), 2.48 - 2.41(m, 1H), 2.38(dd, J=14.8, 6.2 Hz, 1H), 2.20 - 2.14(m, 1H), 1.96 - 1.87(m, 2H), 1.87 - 1.81(m, 4H), 1.69 - 1.60(m, 3H), 1.57 - 1.47(m, 1H), 1.29(s, 4H), 1.25(d, J=6.2 Hz, 3H), 1.18(d, J=6.0 Hz, 3H), 1.10 - 0.88(m, 89H), 0.80 - 0.50(m, 54H)。
IR(薄膜, cm-1) 2956.35, 2912.00, 2877.29, 2250.53, 1731.77, 1590.99, 1488.78, 1457.93, 1415.50, 1378.86, 1303.65, 1272.79, 1238.08, 1205.29, 1184.08, 1160.94, 1108.87, 1076.09, 1008.59, 966.16, 738.60。
TLC(ヘキサン:Et2O 7:3、CAM染色):Rf=0.64
HRMS(ESI):計算値(C117H210N2O18Si9+Na)+ 2206.3400;実測値 2206.3413
【0152】
別の合成では、50mLの丸底フラスコにベンゼン(18mL)中、4(781mg、357.2μmol、1当量)を加えた。トリエチルアミン(150μL、1.07mmol、3当量)をゆっくりと加え、続いて、DPPA(92μL、0.429mmol、1.2当量)を滴下添加した。次に、反応を、油浴中、85℃で加熱し、反応の進行をTLCでモニタリングした。5時間後、出発材料が完全に消費され、反応を0℃に冷却し、0℃に冷却した水(25mL)とジエチルエーテル(50mL)の混合液にゆっくりと注いだ。次に、混合物を分液漏斗に移し、水層をジエチルエーテルで抽出した(25mL×3)。合わせた有機層をブライン(50mL)で洗浄し、MgSOで乾燥し、濾過し、真空下で濃縮した。得られた赤色油を、ベンゼン中の溶液として順相シリカカラム上に負荷し、SiOクロマトグラフィ(ヘプタン:EtO 19:1〜3:1)で精製し、黄色固体として5を得た(158mg、0.0724mmol、収率20%)。
1H NMR(500 MHz, アセトン-d6) δ 7.88(d, J=7.6 Hz, 2H), 7.70(d, J=7.5 Hz, 2H), 7.43(t, J=7.5 Hz, 2H), 7.38 - 7.28(m, 2H), 6.61 - 5.99(m, 11H), 4.69(d, J=15.2 Hz, 2H), 4.24(t, J=6.6 Hz, 2H), 4.09(s, 2H), 4.01(s, 1H), 3.86(d, J=7.4 Hz, 1H), 3.80(t, J=9.4 Hz, 1H), 3.74 - 3.55(m, 3H), 3.35(t, J=7.2 Hz, 1H), 3.32 - 3.21(m, 1H), 3.16(s, 2H), 2.60(d, J=6.5 Hz, 2H), 2.43(dt, J=15.1, 7.7 Hz, 2H), 1.87 - 1.60(m, 7H), 1.27(dq, J=14.2, 7.9 Hz, 5H), 1.18(d, J=6.1 Hz, 3H), 1.12 - 0.82(m, 73H), 0.82 - 0.50(m, 46H)。
IR(薄膜): ν 2955, 2911, 2877, 2248, 1736, 1460, 1110, 1005 cm-1
【0153】
実施例7.カーボネート6の合成
【化23】
1.5mLのバイアルに、5(原液(1.5mLのベンゼン中、150mgを100μL)として、10mg、4.57μmol、1当量)、及びチタンイソプロポキシド(原液(4.6mLのベンゼン中、25μLを50μL)として、0.27μL、0.914μmol、0.2当量)及びTHF(80μL)を加えた。次に、反応を室温で1時間、攪拌した。次に、反応を水(1.5mL)及びジエチルエーテル(1.5mL)で希釈した。層を分離し、有機層を、NaSOで乾燥し、濾過し、真空下で濃縮した。得られた赤色/橙色の油を、次に、SiOクロマトグラフィ(ヘキサン:EtO 100:0〜80:20)によって精製し、橙色固体として5を得た。
1H NMR(500 MHz, アセトン-d6) δ 7.88(d, J=7.5 Hz, 2H), 7.70(d, J=7.5 Hz, 2H), 7.43(t, J=7.3 Hz, 2H), 7.36 - 7.32(m, 2H), 6.59 - 6.08(m, 12H), 6.03(dd, J=15.5, 6.1 Hz, 1H), 5.51(dd, J=14.9, 9.5 Hz, 1H), 5.35(d, J=9.9 Hz, 1H), 4.87(p, J=6.3 Hz, 1H), 4.77 - 4.73(m, 1H), 4.71 - 4.67(m, 1H), 4.65(s, 1H), 4.48(dd, J=10.5, 6.5 Hz, 1H), 4.37(dd, J=10.4, 6.5 Hz, 1H), 4.25(app t, J=6.3 Hz, 2H), 4.18 - 4.09(m, 1H 4.07 - 3.97(m, 2H), 3.87 - 3.84(m, 1H), 3.76(app dd, J=11.8, 6.9 Hz, 1H), 3.70(d, J=8.9 Hz, 1H), 3.74 - 3.66(m, 2H), 3.47 - 3.34(m, 2H), 3.35 - 3.28(m, 1H), 3.15(s, 3H), 2.58(d, J=6.6 Hz, 1H), 2.47 - 2.40(m, 2H), 2.26(app dd, J=15.6, 7.4 Hz, 2H), 2.20 - 2.15(m, 1H), 1.94 - 1.85(m, 4H), 1.84 - 1.80(d, J=13.1 Hz, 3H), 1.79 - 1.68(m, 4H), 1.68 - 1.61(d, J=9.3 Hz, 2H), 1.54 - 1.56(s, 1H), 1.26(app dd, J=6.2, 3.2 Hz, 6H), 1.22(d, J=6.2 Hz, 3H), 1.18(d, J=6.0 Hz, 3H), 1.14 - 0.83(m, 87H), 0.81 - 0.53(m, 54H)。
LRMS(ESI):計算値(C120H218N2O19Si9+Na)+ 2266.4;実測値 2266.6
TLC(ヘキサン:Et2O 7:3、CAM染色):Rf=0.51
【0154】
実施例8.カーボネート7の合成
【化24】
1.5mLのバイアルに、5(原液(1.5mLベンゼン中150mgを100μL)として、10mg、4.57μmol、1当量)、チタンt−ブトキシド(原液(3.5mLベンゼン中25μLを50μL)として、0.35μL、0.914μmol、0.2当量)、及びFmoc−アルコール(原液(1.58mL中、21.1mg)として、1.33mg、9.15μmol、2当量)を加えた。次に、反応を室温で1時間、攪拌した。次に、反応を水(1.5mL)及びジエチルエーテル(1.5mL)で希釈した。層を分離し、有機層を、NaSOで乾燥し、濾過し、真空下で濃縮した。得られた赤色/橙色の油を、次に、SiOクロマトグラフィ(ヘキサン:EtO 100:0〜80:20)によって精製し、橙色固体として7を得た。
LRMS(ESI):計算値(C120H218N2O19Si9+Na)+ 2402.4;実測値2402.5
TLC(7:3 ヘキサン:Et2O、CAM染色):Rf=0.53
【0155】
実施例9.アミド8の合成
【化25】
乾燥した20mLバイアルに、THF(2.3mL)中の5(100mg、45.8mmol、1当量)を加えた。反応容器を0℃まで冷却し、MeZn(48μLのTHF中、0.85M溶液、0.041mmol、0.9当量)を反応に滴下して加えた。反応を、0℃で1時間、攪拌し、次に、追加のMeZn(48μLのTHF中、0.85M溶液、0.041mmol、0.9当量)を加えた。反応を、0℃で1時間、攪拌し、次に、HO(5mL)の滴下添加によって0℃でクエンチした。混合液を室温まで温め、分液漏斗に移し、ジエチルエーテルで抽出した(10mL×3)。合わせた有機層をブライン(10mL)で洗浄し、MgSOで乾燥し、濾過し、真空下で濃縮した。得られた油を、ベンゼン中の溶液として順相シリカカラム上に負荷し、SiOクロマトグラフィ(ヘキサン:EtO 100:0〜3:2)で精製し、黄色固体として8を得た(40mg、0.018mmol、40%)。
1H NMR(500 MHz, アセトン-d6) δ 7.90(d, J=7.6 Hz, 2H), 7.72(d, J=7.5 Hz, 2H), 7.45(t, J=7.5 Hz, 2H), 7.38(s, 6H), 6.55(td, J=17.4, 16.3, 9.9 Hz, 3H), 6.49 - 5.96(m, 11H), 5.64(s, 5H), 4.71(d, J=16.1 Hz, 3H), 4.26(q, J=7.5, 7.0 Hz, 2H), 4.20 - 4.07(m, 2H), 3.88(dd, J=9.0, 2.8 Hz, 1H), 3.82(t, J=9.4 Hz, 1H), 3.77 - 3.60(m, 3H), 3.50(t, J=8.9 Hz, 1H), 3.43(q, J=7.0 Hz, 4H), 3.40 - 3.35(m, 1H), 3.33(d, J=5.4 Hz, 2H), 3.31(s, 1H), 3.19(s, 3H), 2.62(d, J=6.5 Hz, 2H), 1.98 - 1.92(m, 2H), 1.85(s, 2H), 1.84 - 1.72(m, 5H), 1.72 - 1.61(m, 2H), 1.38 - 1.23(m, 13H), 1.20(d, J=6.0 Hz, 4H), 1.13(t, J=7.0 Hz, 7H), 1.11 - 0.85(m, 110H), 0.85 - 0.54(m, 66H)。
【0156】
実施例10.生物活性のインビトロ評価
本明細書で提案される各誘導体を、その治療指数を決定するために、酵母及びヒト細胞の両方に対する生物活性について試験する。微量液体希釈実験は、S.セレビシエ及び臨床的に関連するC.アルビカンスに対する各誘導体のMIC(最小発育阻止濃度)を決定し、それによって、各新規誘導体の抗真菌活性を確立する。ヒト細胞に対する毒性を試験するため、各化合物を、ヒト赤血球の90%溶解を生じるのに必要とされる濃度(EH90)を決定する、赤血球に対する溶血アッセイにかける。加えて、腎細胞に対する各化合物の毒性を決定するために、各化合物を、ヒト初代腎細管細胞に接触させる。これらのアッセイは、同一細胞株に対するAmBの既知の値と比較した場合に、各化合物の治療指数の改善を決定する。
【0157】
実施例11.生物活性のインビボ評価
AmBMU及びAmBAUの抗真菌剤の有効性を、播種性カンジダ症のマウスモデルにおいて試験した。この実験では、好中球減少マウスに、尾静脈を介してC.アルビカンスを感染させ、次に、感染2時間後、マウスに、AmB、AmBMU、又はAmBAUの単回の腹腔内注入の処置をした。感染の2、6、12、及び24時間後に、マウスを殺処置し、該マウスの腎臓に存在する真菌量を定量した。結果を図5に示す。AmBMU及びAmBAUはいずれも、3つの試験量(すなわち、1、4、及び16mg/kg)のすべてにおいて、腎臓に存在する真菌量の低減においてAmBよりも実質的により効果的であった。接種24時間後、差異は、16mg/kg用量において最も顕著であった。AmBと比較して、AmBMUは、真菌量を1.2log単位(p≦0.001)低減し、AmBAUは、真菌量を、ほぼ3log単位(p≦0.0001)低減した。我々は、水溶性の大幅な増加に起因して薬理学的プロファイルが改善されることにより、新しい化合物のインビボでの抗真菌活性における予期しない劇的な改善に寄与しうる可能性があると推測している。
【0158】
実験の別のセットでは、急性毒性を、1、2、4、8、16、32、又は64mg/kgのAmB又はその誘導体の健康なマウスへの単回静脈内投与によって評価し、続いて、致死率についてモニタリングした。結果を図6に示す。4mg/kgのAmB用量群のマウスはすべて、数秒内に死亡した。AmBAUは、劇的に低毒性であり、64mg/kg用量群に至るまで、>50%の致死率に達しなかった。際立って、64mg/kgのAmBMUを投与されたすべてのマウスが観測可能な毒性なく、生存した。
他の実施形態
1.式(I)によって表される化合物、又はその薬学的に許容される塩:
【化26】
[式中、
は、存在ごとに独立して、トリアルキルシリル、ジアルキルアリールシリル、アルキルジアリールシリル、トリアリールシリル、(アルキル)OCH−、(アルケニル)OCH−、(アラルキル)OCH−、(アルコキシアルキル)OCH−、(アリール)OCH−、又は((トリアルキルシリル)アルキル)OCH−を表し;
は、(C−C)アルキルを表し;
は、(アルキル)OC(O)−、(アラルキル)OC(O)−、(アルケニル)OC(O)−、(シクロアルキル)OC(O)−、又は(ハロアルキル)OC(O)−を表す]。
2.Rがトリアルキルシリルを表す、実施形態1に記載の化合物。
3.Rがトリエチルシリルを表す、実施形態1に記載の化合物。
4.Rがメチルを表す、実施形態1から3のいずれかに記載の化合物。
5.Rが(アラルキル)OC(O)−を表す、実施形態1から4のいずれかに記載の化合物。
6.Rが(9−フルオレニルメチル)OC(O)−を表す、実施形態5に記載の化合物。
7.式(II)によって表される化合物、又はその薬学的に許容される塩:
【化27】
[式中、
は、存在ごとに独立して、トリアルキルシリル、ジアルキルアリールシリル、アルキルジアリールシリル、トリアリールシリル、(アルキル)OCH−、(アルケニル)OCH−、(アラルキル)OCH−、(アルコキシアルキル)OCH−、(アリール)OCH−、又は((トリアルキルシリル)アルキル)OCH−を表し;
は(C−C)アルキルを表し;
は(アルキル)OC(O)−、(アラルキル)OC(O)−、(アルケニル)OC(O)−、(シクロアルキル)OC(O)−、又は(ハロアルキル)OC(O)−を表す]。
8.Rがトリアルキルシリルを表す、実施形態7に記載の化合物。
9.Rがトリエチルシリルを表す、実施形態7に記載の化合物。
10.Rがメチルを表す、実施形態7から9のいずれかに記載の化合物。
11.Rが(アラルキル)OC(O)−を表す、実施形態7から10のいずれかに記載の化合物。
12.Rが(9−フルオレニルメチル)OC(O)−を表す、実施形態11に記載の化合物。
13.式(III)に従った化合物、又はその薬学的に許容される塩:
【化28】
[式中、
は、存在ごとに独立して、トリアルキルシリル、ジアルキルアリールシリル、アルキルジアリールシリル、トリアリールシリル、(アルキル)OCH−、(アルケニル)OCH−、(アラルキル)OCH−、(アルコキシアルキル)OCH−、(アリール)OCH−、又は((トリアルキルシリル)アルキル)OCH−を表し;
は(C−C)アルキルを表し;
は、(アルキル)OC(O)−、(アラルキル)OC(O)−、(アルケニル)OC(O)−、(シクロアルキル)OC(O)−、又は(ハロアルキル)OC(O)−を表し;
は、アルキル、アラルキル、アルケニル、アリール、又はシクロアルキルを表す]。
14.Rがトリアルキルシリルを表す、実施形態13に記載の化合物。
15.Rがトリエチルシリルを表す、実施形態13に記載の化合物。
16.Rがメチルを表す、実施形態13から15のいずれかに記載の化合物。
17.Rが(アラルキル)OC(O)−を表す、実施形態13から16のいずれかに記載の化合物。
18.Rが(9−フルオレニルメチル)OC(O)−を表す、実施形態17に記載の化合物。
19.Rがイソプロピル又は9−フルオレニルメチルを表す、実施形態13から18のいずれかに記載の化合物。
20.AmBCU−アリルエステル、又はその薬学的に許容される塩:
【化29】
21.式(IV)の化合物、又はその薬学的に許容される塩を調製する方法であって:
【化30】
[式中、
は、存在ごとに独立して、トリアルキルシリル、ジアルキルアリールシリル、アルキルジアリールシリル、トリアリールシリル、(アルキル)OCH−、(アルケニル)OCH−、(アラルキル)OCH−、(アルコキシアルキル)OCH−、(アリール)OCH−、又は((トリアルキルシリル)アルキル)OCH−を表し;
は(C−C)アルキルを表し;
は、(アルキル)OC(O)−、(アラルキル)OC(O)−、(アルケニル)OC(O)−、(シクロアルキル)OC(O)−、又は(ハロアルキル)OC(O)−を表し;
Xは、O、NH、又はN(R)を表し;及び
及びRは、各々独立して、アルキル、アラルキル、アルケニル、アリール、又はシクロアルキルを表す];
式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩と、R−XH又はR−X−Mによって表される化合物とを混合し、それによって前記式(IV)の化合物を生成する工程を含み;
前記式(I)の化合物は、下記式によって表され:
【化31】
ここで、
Mは、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類カチオン、又は遷移金属カチオンである、
方法。
22.式(II)の化合物とホスホリルアジドとを混合し、それによって前記式(I)の化合物を生成する工程をさらに含み;該式(II)の化合物は、下記式によって表される、実施形態21に記載の方法:
【化32】
23.前記ホスホリルアジドがジフェニルホスホリルアジドである、実施形態22に記載の方法。
24.XがOであり;MがNa、K、又はTi(ORである、実施形態21から23のいずれかに記載の方法。
25.式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩とR−XH又はR−X−Mによって表される化合物とを混合する前記工程が、ルイス酸をさらに含む、実施形態21から24のいずれかに記載の方法。
26.前記ルイス酸がチタンアルコキシドである、実施形態25に記載の方法。
27.式(II)の化合物とホスホリルアジドとを混合する前記工程が、ブレンステッド塩基をさらに含む、実施形態22から26のいずれかに記載の方法。
28.前記ブレンステッド塩基が第三級アミンである、実施形態27に記載の方法。
29.Rがトリアルキルシリルを表す、実施形態21から28のいずれかに記載の方法。
30.Rがトリエチルシリルを表す、実施形態29に記載の方法。
31.Rがメチルを表す、実施形態21から30のいずれかに記載の方法。
32.Rが(アラルキル)OC(O)−を表す、実施形態21から31のいずれかに記載の方法。
33.Rが(9−フルオレニルメチル)OC(O)−を表す、実施形態32に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6