(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド車両などを含む電動車両では、車両駆動用のモータジェネレータが搭載されている。車両を駆動するのは、モータジェネレータのモータ(電動機)の機能であるが、多くの電動車両では、電力を回収するためにモータジェネレータをジェネレータ(発電機)として使用しているので、ここでは車両駆動用のモータジェネレータと称する。この車両駆動用モータジェネレータは、一般に、車両駆動のための駆動用バッテリから電力が供給され、回収した電力は駆動用バッテリに蓄電される。モータジェネレータと駆動用バッテリの間には、一般に、両者を電気的に接続したり遮断したりするためのメインリレー(システムメインリレー)が介装される。
【0003】
車両を駆動するためのモータジェネレータは、例えば十分な駆動力を発生するために、一般に高電圧大電流特性であり、従ってモータジェネレータに電力を供給する駆動用バッテリも高電圧大容量特性である。この駆動用バッテリを、例えば車両停車中に、例えば外部電源に接続して充電する技術が注目されており、ハイブリッド車両では、特にプラグインハイブリッド車両と呼ばれて、広く普及しつつある。なお、車両駆動源としてモータジェネレータのみを搭載する、所謂電気自動車(EV:Electric Vehicle)では、駆動用バッテリを外部電源に接続して充電することが前提である。
【0004】
このように駆動用バッテリを外部電源に接続して充電する電動車両では、例えばAC−DCコンバータやDC−DCコンバータからなる外部接続型充電器を車両に備える。この外部接続型充電器を駆動用バッテリに電気的に接続したり遮断したりするための充電リレーは、例えば上記メインリレーよりも駆動用バッテリ側で、駆動用バッテリと外部接続型充電器との間に介装される。この充電リレーは、例えばジャンクションボックスと呼ばれる同一筐体内にメインリレーと共に収納されることも多く、その筐体内での配線材には、電気抵抗が小さく、放熱に優れ、その結果、大電流を流すことが可能なバスバーが用いられる。即ち、上記充電リレーは、駆動用バッテリ及びモータジェネレータ間のメインバスバーと外部接続型充電器との間の充電バスバー中に介装される。
【0005】
このような電動車両としては、例えば下記特許文献1に記載されるプラグインハイブリッド車両がある。この電動車両では、システム停止時で且つ外部電源接続充電時には、メインリレーの励磁電流を、システム起動時の電流値より小さく且つ固定接点及び可動接点間の接触保持可能な所定電流値としてメインリレーの昇温を抑制している。なお、これ以降、リレーの固定接点と可動接点を接触させて回路を電気的に接続することをオンとし、リレーの固定接点と可動接点を非接触として回路を電気的に遮断することをオフとする。ちなみに、上記電動車両を含め、充電リレーを搭載する電動車両を走行させるためにシステムを起動した場合には、充電リレーはオフされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、例えば上記特許文献1にもあるように、モータジェネレータ及び駆動用バッテリを備えた電動車両では、システム起動時、常時、メインリレーがオンされる。このメインリレーの接点には電気抵抗があり、しかも駆動用バッテリ−モータジェネレータ間の電力が高電圧大電流であることから、オン中のメインリレーの温度が上昇する。このメインリレーが過熱状態になると、接点が溶着するという問題が生じる。そこで、従来は、メインリレーの温度をモニタし、そのメインリレーの温度が溶着回避のための所定温度以上になったら、例えば駆動用バッテリからの電力に制限を設けたり、例えばハイブリッド車両においてはエンジン駆動力の比率を増大する、即ち使用される駆動用バッテリからの電力を減少したりして、メインリレーの温度を低減する対策が講じられている。
【0008】
しかしながら、このメインリレー冷却方法では、駆動用バッテリからの電力に制限が設けられる場合には運転者の所望する車両加減速が達成できないとか、ハイブリッド車両においてエンジン駆動力比率を増大する場合には、燃費が悪化したり、排ガス量が増大したりするという問題が生じる。そこで、駆動用バッテリを外部電源に接続して充電する電動車両が普及していることから、外部接続型充電器及び充電リレーを備えた電動車両にあってメインリレーの過熱を確実に防止することが可能なメインリレー保護装置が広く求められている。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、外部接続型充電器及び充電リレーを備えた電動車両のメインリレーの過熱を確実に防止することが可能なメインリレー保護装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため請求項1に記載のメインリレー保護装置は、
車両駆動用のモータジェネレータと、前記モータジェネレータに電力を供給する充電可能な駆動用バッテリと、前記駆動用バッテリを充電するための外部接続型充電器と、前記駆動用バッテリ及び前記モータジェネレータ間のメインバスバー中に介装されたメインリレーと、前記メインバスバー及び前記外部接続型充電器間の充電バスバー中に介装された充電リレーと、前記メインリレーの温度を検出するメインリレー温度センサと、前記メインリレー温度センサで検出されたメインリレーの温度が予め設定された放熱開始閾値以上である場合に該メインリレーをオンした状態で前記充電リレーをオン制御する制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、メインリレーの温度が、放熱が必要と考えられる放熱開始閾値以上になるとメインリレーと共に充電リレーがオンされるので、メインリレーに対する放熱領域が延伸され、メインリレーが冷却される。即ち、この充電リレーオン状態で、メインリレーの熱は、充電バスバーの充電リレーよりもメインバスバー側、即ち駆動用バッテリ側の部分から、充電リレーを経て、充電バスバーの充電リレーよりも外部接続型充電器側の部分へと伝わり、主に、この充電リレーよりも外部接続型充電器側の部分から放熱される。金属棒材(金属板材)で構成されるバスバーは、伝熱及び放熱に優れるので、充電バスバーの充電リレーよりも外部接続型充電器側の部分からメインリレーの熱が速やかに放熱され、これによりメインリレーが速やかに冷却される。しかも、この構成は、新たな装置や構造を必要としない。これらの結果、上記構成のメインリレー保護装置は、外部接続型充電器及び充電リレーを備えた電動車両のメインリレーの過熱を確実に防止することができる。
【0012】
請求項2に記載のメインリレー保護装置は、請求項1に記載のメインリレー保護装置において、前記メインリレー、充電リレー、メインバスバー、及び充電バスバーが同一の筐体内に収納されたことを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、同一の筐体内に収納されるメインリレーと充電リレーは互いに近接して配置され、その結果、メインバスバーと充電バスバーも互いに近接して配置されるので、メインリレーの温度が放熱開始閾値以上になったときにはメインリレーが速やかに冷却され、これによりメインリレーの過熱をより一層確実に防止することが可能となる。
【0014】
請求項3に記載のメインリレー保護装置は、請求項1又は2に記載のメインリレー保護装置において、前記メインリレー、充電リレー、メインバスバー、充電バスバー、メインリレー温度センサの夫々が駆動用バッテリの正極側及び負極側の夫々に対応して設けられ、前記制御手段は、正極側及び負極側の前記メインリレー温度センサの夫々で検出された正極側及び負極側の前記メインリレーの夫々の温度に応じて正極側及び負極側の前記充電リレーの夫々のオン制御を行うことを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、例えば充電バスバーのうち、充電リレーよりも外部接続型充電器側の部分におけるバスバーの放熱量や熱容量が正極側と負極側とで異なるような場合であっても、正極側及び負極側のメインリレーの夫々を夫々の温度に基づいて独立して冷却制御することができ、これによりメインリレーの過熱をより一層確実に防止することが可能となる。
【0016】
請求項4に記載のメインリレー保護装置は、請求項1乃至3の何れか1項に記載のメインリレー保護装置において、前記制御手段は、前記充電リレーのオン制御を前記車両の停車中に行うことを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、駆動用バッテリ及びモータジェネレータ間及びメインバスバー及び外部接続型充電器間の電気的特性が車両の走行中に変化することがないので、システムの故障を確実に抑制することが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明によれば、メインリレーの温度が放熱開始閾値以上になるとメインリレーと充電リレーを同時にオンする簡易な構成で、メインリレーを速やかに冷却することができることから、外部接続型充電器及び充電リレーを備えた電動車両のメインリレーの過熱を確実に防止することができ、所望する加減速が達成できないとか、燃費の悪化や排ガスの増加といった問題を低減することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明のメインリレー保護装置の一実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この実施の形態のメインリレー保護装置が適用された電動車両の概略構成図である。この電動車両は、プラグインハイブリッド車両であり、
図1は、このプラグインハイブリッド車両のパワートレーンの概略を示している。このプラグインハイブリッド車両は、既存のプラグインハイブリッド車両と同様に、車両駆動用にエンジン10とモータジェネレータ12を併載している。エンジン10とモータジェネレータ12は接続装置14によって接続され、それらの合成された駆動力が差動装置16を介して駆動輪18に伝達される。接続装置14には、例えばクラッチ機構などが用いられる。また、接続装置14に遊星歯車機構を用いることも可能であり、その場合、遊星歯車機構を構成する1つの要素にエンジン10が、もう1つの要素にモータジェネレータ12が、残りの1つの要素に図示しない個別のモータジェネレータが接続される。なお、駆動輪18は四輪であってもよい。
【0021】
モータジェネレータ12の駆動系統は、モータジェネレータ12に電力を供給すると共にモータジェネレータ12で回収された電力を蓄電する駆動用バッテリ20と、駆動用バッテリ20からの電力を変換してモータジェネレータ12に供給したり、モータジェネレータ12で回収された電力を変換して駆動用バッテリ20に蓄電したりするためのインバータなどの駆動回路22を備える。更に、この実施の形態の電動車両はプラグインハイブリッド車両であるから、接続された外部電源24からの電力を駆動用バッテリ20に充電するための外部接続型充電器26と、この外部接続型充電器26と駆動用バッテリ20を電気的に断続したり、駆動用バッテリ20とモータジェネレータ12を電気的に断続したりするためのリレー類が内装されたジャンクションボックス28を備える。
【0022】
この実施の形態のハイブリッド車両では、近年の車両と同様に、エンジン10の運転状態はエンジンコントロールユニット30で制御され、モータジェネレータ12の運転状態、例えば力行運転や回生運転はコントロールユニット32で制御される。また、これらを統括して車両の駆動力全体を制御するパワーコントロールユニットを備える場合もある。更に、駆動用バッテリ20を制御するためのバッテリコントロールユニットを備える場合もある。なお、これらのコントロールユニットは、例えば後述のようにコンピュータシステムを備えて構成され、高い演算処理能力を有する。また、一般にハイブリッド車両(プラグインハイブリッド車両を含む)では、エンジン10はモータジェネレータ12と協調制御される。
【0023】
図2は、
図1のモータジェネレータ12の駆動系統を示すブロック図である。上記ジャンクションボックス28の筐体34内では、配線材としてバスバーが用いられている。前述のように、金属棒材(金属板材)で構成されるバスバーは、電流直交方向の断面積が大きいことから電気抵抗が小さく、また被覆のない分だけ放熱に優れていることから、大電流の通電に適する。この実施の形態では、モータジェネレータ12に三相交流モータが用いられ、一方、駆動用バッテリ20の電力は直流電力であるから、駆動回路22は、この直流電力を三相交流電力に変換してモータジェネレータ12に供給する。モータジェネレータ12を回生運転する場合には逆に作用する。また、この実施の形態の外部接続型充電器26は、外部電源24の交流電力を直流電力に変換して駆動用バッテリ20を充電する。従って、外部接続型充電器26は、例えばAC−DCコンバータやDC−DCコンバータを備えて構成される。
【0024】
従って、ジャンクションボックス28の筐体34内には、駆動用バッテリ20の正極と駆動回路22の正極とを接続するための正極側メインバスバー(以下、正極メインバスバーと記す)36及び駆動用バッテリ20の負極と駆動回路22の負極とを接続するための負極側メインバスバー(以下、負極メインバスバーと記す)38が設けられている。そして、正極メインバスバー36中には、駆動用バッテリ20の正極と駆動回路22の正極、即ちモータジェネレータ12とを電気的に断続するための正極側メインリレー(以下、正極メインリレーと記す)37が介装される。また、負極メインバスバー38中には、駆動用バッテリ20の負極と駆動回路22の負極、即ちモータジェネレータ12とを電気的に断続するための負極側メインリレー(以下、負極メインリレーと記す)39が介装される。
【0025】
また、ジャンクションボックス28の筐体34内には、上記正極メインリレー37よりも駆動用バッテリ20側で正極メインバスバー36と外部接続型充電器26の正極とを接続するための正極側充電バスバー(以下、正極充電バスバーと記す)40と、上記負極メインリレー39よりも駆動用バッテリ20側で負極メインバスバー38と外部接続型充電器26の負極とを接続するための負極側充電バスバー(以下、負極充電バスバーと記す)42が設けられている。そして、正極充電バスバー40中には、駆動用バッテリ20の正極と外部接続型充電器26の正極とを電気的に断続するための正極側充電リレー(以下、正極充電リレーと記す)41が介装される。また、負極充電バスバー42中には、駆動用バッテリ20の負極と外部接続型充電器26の負極とを電気的に断続するための負極側充電リレー(以下、負極充電リレーと記す)43が介装される。
【0026】
正極メインリレー37には、正極メインリレー温度T
Pを検出するための正極側メインリレー温度センサ(以下、正極メインリレー温度センサと記す)44が設けられている。また、負極メインリレー39には、負極メインリレー温度T
Nを検出するための負極側メインリレー温度センサ(以下、負極メインリレー温度センサと記す)46が設けられている。これら正極メインリレー温度センサ44で検出される正極メインリレー温度T
P及び負極メインリレー温度センサ46で検出される負極メインリレー温度T
Nはコントロールユニット32に読込まれる。また、正極メインリレー37、負極メインリレー39、正極充電リレー41、負極充電リレー43は、コントロールユニット32によってオン・オフ制御される。なお、これらリレーのオン・オフ制御は、例えば車両の駆動力全体を制御するパワーコントロールユニットによって行われるようにしてもよい。
【0027】
コントロールユニット32やエンジンコントロールユニット30などのコントロールユニットは、マイクロコンピュータのようなコンピュータシステムを搭載して構成される。このコンピュータシステムは、周知のコンピュータシステムと同様に、高度な演算処理機能を有する演算処理装置に加え、例えばプログラムを記憶する記憶装置や、センサ信号を読込んだり、他のコントロールユニットと相互通信を行ったりするための入出力装置を備えて構成される。
【0028】
このコントロールユニット32によってオン・オフ制御される正極メインリレー37、負極メインリレー39、正極充電リレー41、負極充電リレー43の代表的な動作を
図3及び
図4に示す。
図3は、車両としてのシステムを起動した状態、即ち走行可能な状態を示しており、こうしたシステム起動状態では、正極メインリレー37及び負極メインリレー39がオンされ、正極充電リレー41及び負極充電リレー43はオフされる。一方、
図4は、車両としてのシステムを停止し、且つ外部電源24に駆動用バッテリ20が接続され、外部接続型充電器26を経て駆動用バッテリ20が充電されている状態を示している。このような外部電源接続状態では、正極充電リレー41及び負極充電リレー43がオンされ、正極メインリレー37及び負極メインリレー39はオフされる。なお、上記特許文献1に記載されるように、外部電源接続状態で、例えばコントロールユニット32や各リレーをオン制御するために図示しない補機バッテリの電力が消費され、その消費電力分を駆動用バッテリ20から補うような場合には、正極メインリレー37及び負極メインリレー39をオン制御してもよい。
【0029】
図5は、正極メインリレー37及び負極メインリレー39の過熱を防止するために、コントロールユニット32で実行される演算処理のフローチャートである。この演算処理は、例えば所定サンプリング周期で実行されるタイマ割込み処理であり、まずステップS1で、正極メインリレー温度センサ44及び負極メインリレー温度センサ46で検出された正極メインリレー温度T
P及び負極メインリレー温度T
Nを読込む。
【0030】
次にステップS2に移行して、正極メインリレー冷却フラグF
Pが0のリセット状態であるか否かを判定し、正極メインリレー冷却フラグF
Pがリセット状態である場合にはステップS3に移行し、そうでない場合にはステップS5に移行する。
【0031】
ステップS3では、ステップS1で読込まれた正極メインリレー温度T
Pが放熱開始閾値T
S以上であるか否かを判定し、正極メインリレー温度T
Pが放熱開始閾値T
S以上である場合にはステップS4に移行し、そうでない場合にはステップS5に移行する。
【0032】
ステップS4では、正極充電リレー41をオン制御すると共に、正極メインリレー冷却フラグF
Pを1のセット状態としてからステップS5に移行する。
【0033】
ステップS5では、負極メインリレー冷却フラグF
Nが0のリセット状態であるか否かを判定し、負極メインリレー冷却フラグF
Nがリセット状態である場合にはステップS6に移行し、そうでない場合にはステップS8に移行する。
【0034】
ステップS6では、ステップS1で読込まれた負極メインリレー温度T
Nが放熱開始閾値T
S以上であるか否かを判定し、負極メインリレー温度T
Nが放熱開始閾値T
S以上である場合にはステップS7に移行し、そうでない場合にはステップS8に移行する。
【0035】
ステップS7では、負極充電リレー43をオン制御すると共に、負極メインリレー冷却フラグF
Nを1のセット状態としてからステップS8に移行する。
【0036】
ステップS8では、正極メインリレー冷却フラグF
Pが1のセット状態であるか否かを判定し、正極メインリレー冷却フラグF
Pがセット状態である場合にはステップS9に移行し、そうでない場合にはステップS11に移行する。
【0037】
ステップS9では、ステップS1で読込まれた正極メインリレー温度T
Pが放熱終了閾値T
F以下であるか否かを判定し、正極メインリレー温度T
Pが放熱終了閾値T
F以下である場合にはステップS10に移行し、そうでない場合にはステップS11に移行する。
【0038】
ステップS10では、正極充電リレー41をオフ制御すると共に、正極メインリレー冷却フラグF
Pを0のリセット状態としてからステップS11に移行する。
【0039】
ステップS11では、負極メインリレー冷却フラグF
Nが1のセット状態であるか否かを判定し、負極メインリレー冷却フラグF
Nがセット状態である場合にはステップS12に移行し、そうでない場合には復帰する。
【0040】
ステップS12では、ステップS1で読込まれた負極メインリレー温度T
Nが放熱終了閾値T
F以下であるか否かを判定し、負極メインリレー温度T
Nが放熱終了閾値T
F以下である場合にはステップS13に移行し、そうでない場合には復帰する。
【0041】
ステップS13では、負極充電リレー43をオフ制御すると共に、負極メインリレー冷却フラグF
Nを0のリセット状態としてから復帰する。
【0042】
この演算処理によれば、正極メインリレー37の正極メインリレー温度T
Pが放熱開始閾値T
S以上になると正極充電リレー41がオン制御され、正極メインリレー温度T
Pが放熱終了閾値T
F以下になると正極充電リレー41がオフ制御される。また、負極メインリレー39の負極メインリレー温度T
Nが放熱開始閾値T
S以上になると負極充電リレー43がオン制御され、負極メインリレー温度T
Nが放熱終了閾値T
F以下になると負極充電リレー43がオフ制御される。
【0043】
図6は、
図5の演算処理によって、正極メインリレー37及び負極メインリレー39がオンされている状態で、正極充電リレー41及び負極充電リレー43がオン制御されている状態を示す。この実施の形態では、放熱開始閾値T
Sを例えば110℃、放熱終了閾値T
Fを例えば100℃に設定した。即ち、正極メインリレー温度T
Pが放熱終了閾値T
Fと放熱開始閾値T
Sの間で正極充電リレー41がオンされ、負極メインリレー温度T
Nが放熱終了閾値T
Fと放熱開始閾値T
Sの間で負極充電リレー43がオンされる。これにより、正極充電バスバー40及び負極充電バスバー42が正極メインリレー37及び負極メインリレー39に対する放熱領域として延伸され、これらメインリレーが冷却される。なお、放熱開始閾値T
S及び放熱終了閾値T
Fは適宜に設定される。
【0044】
前述のように、正極メインリレー37及び負極メインリレー39は接点が電気抵抗を有する(言うまでもなく、その余の部分も電気抵抗を有するが、接点の電気抵抗は、その余の部分よりも大きいという意味である)。これにより、オン状態の正極メインリレー37及び負極メインリレー39が通電されると、それらの接点部分にジュール熱が生じ、正極メインリレー37及び負極メインリレー39が昇温する。この昇温傾向は、モータジェネレータ12の負荷が大きいほど、大きい。更に、接点部分の温度が過熱すると、接点が溶着する。この実施の形態では、正極メインリレー温度T
P及び負極メインリレー温度T
Nは、例えば、何れも100℃以下、好ましくは90℃以下であることが望ましい。
【0045】
前述のように、正極メインリレー温度T
Pが放熱開始閾値T
S以上になると正極充電リレー41がオン制御され、負極メインリレー温度T
Nが放熱開始閾値T
S以上になると負極充電リレー43がオン制御される。正極充電リレー41がオンされると、正極メインリレー37の熱は、正極メインバスバー36から、正極充電バスバー40の正極充電リレーよりも正極メインバスバー36側、即ち駆動用バッテリ20側の部分(以下、バッテリ側部と記す)40aを通じ、正極充電リレー41(の接点)を経て、正極充電バスバー40の正極充電リレー41よりも外部接続型充電器26側の部分(以下、充電器側部と記す)40bに伝わる。正極メインリレー37が昇温しても、正極充電リレー41がオフである状態では、正極充電バスバー40の充電器側部40bは、例えば正極メインバスバー36から熱的に切り離されており、例えば車両内部における常温程度である。この正極充電バスバー40の冷たい充電器側部40bが正極メインバスバー36に接続されると、正極メインリレー37の熱は速やかに正極充電バスバー40の充電器側部40bに伝わる。しかも、バスバーは放熱に優れ、伝熱性もよいことから、正極メインリレー37は速やかに放熱されて過熱そのものを防止することができる。
【0046】
負極側も同様に、負極充電リレー43がオンされると、負極メインリレー39の熱は、負極メインバスバー38から、負極充電バスバー42の負極充電リレー43よりも負極メインバスバー38側、即ち駆動用バッテリ20側の部分(以下、バッテリ側部と記す)42aを通じ、負極充電リレー43(の接点)を経て、負極充電バスバー42の負極充電リレー43よりも外部接続型充電器26側の部分(以下、充電器側部と記す)42bに伝わる。負極メインリレー39が昇温しても、負極充電リレー43がオフである状態では、負極充電バスバー42の充電器側部42bは、例えば負極メインバスバー38から熱的に切り離されており、例えば車両内部における常温程度である。この負極充電バスバー42の冷たい充電器側部42bが負極メインバスバー38に接続されると、負極メインリレー39の熱は速やかに負極充電バスバー42の充電器側部42bに伝わり、その結果、負極メインリレー39は速やかに放熱されて過熱そのものを防止することができる。こうした正極メインリレー37及び負極メインリレー39の放熱は、例えば10秒当たり1℃以上の降温効果が期待できる。
【0047】
図7は、
図5の演算処理によるメインリレー放熱制御の作用を説明するタイミングチャートである。このタイミングチャートの説明では、例えば正極メインリレー37及び負極メインリレー39の温度が上記放熱開始閾値T
S以上になるとエンジン10を強制運転させる、従来のハイブリッド車両(プラグインハイブリッド車両を含む)のメインリレー保護制御が行われるものとした。このようにすることで、駆動用バッテリ20から正極メインリレー37及び負極メインリレー39に流れる電流が低減され、これにより正極メインリレー37及び負極メインリレー39の温度を低下することができる。なお、このタイミングチャートに示される時間中、本来はモータジェネレータ12の駆動力だけで車両を駆動することができ、エンジン10は停止状態に維持できたものとする。
【0048】
このタイミングチャートでは、時刻t
1で、例えば図示しないスタートスイッチがオン操作され、これにより車両としてのシステムが起動され、それに伴って正極メインリレー37及び負極メインリレー39がオンされる。その後の車両の走行に伴って、正極メインリレー37及び負極メインリレー39の温度が上昇する。このタイミングチャートでは、正極メインリレー37の温度と負極メインリレー39の温度は同等に推移したものとし、以下、単にメインリレー温度と記す。ちなみに、システム上の故障や異常がなければ、正極メインリレー37の温度と負極メインリレー39の温度は略同等に推移する。
【0049】
その後も昇温を続けるメインリレー温度は、時刻t
2で放熱開始閾値T
S以上になったので、上記エンジン強制運転制御が開始されると共に、正極充電リレー41及び負極充電リレー43がオン制御された。これにより、メインリレー温度の上昇が速やかに緩和され、間もなく最大値を経て下降に転じた。このメインリレー温度は、その後の時刻t
3で放熱開始閾値T
S以下となったので、上記エンジン強制運転制御が終了された。その後も降温を続けるメインリレー温度は時刻t
4で放熱終了閾値T
F以下となったので、正極充電リレー41及び負極充電リレー43がオフ制御された。従って、上記実施の形態によるメインリレー保護装置では、時刻t
2から時刻t
3までの比較的短時間でエンジン強制運転制御が終了された。
【0050】
一方、
図5の演算処理による充電リレーオン制御を行わず、上記エンジン強制運転制御だけでメインリレー温度の降温を図る従来のメインリレー保護方法では、
図7に二点鎖線で示すように、時刻t
2以降もメインリレー温度が上昇し続け、時刻t
3よりも相応に時間が経過した時刻t
5で放熱開始閾値T
S以下となり、その時点でエンジン強制運転制御が終了された。本来、モータジェネレータ12の駆動力だけで車両を駆動できる場合に、エンジン10が強制的に運転されれば、その分だけ、燃費も悪化するし、排ガス量も増大する。このエンジン強制運転制御時間が長い従来のメインリレー保護方法に対し、大幅にエンジン強制運転制御時間を短縮することが可能な実施の形態のメインリレー保護装置では、燃費悪化や排ガス量増大の問題を大幅に低減することができる。
【0051】
このように、この実施の形態のメインリレー保護装置では、メインリレー温度が放熱開始閾値T
S以上になると正極メインリレー37及び負極メインリレー39と共に正極充電リレー41及び負極充電リレー43がオンされるので、正極メインリレー37及び負極メインリレー39の熱は、正極充電バスバー40のバッテリ側部40a及び負極充電バスバー42のバッテリ側部42aから、正極充電リレー41及び負極充電リレー43を経て、正極充電バス場40の充電器側部40b及び負極充電バスバー42の充電器側部42bへと伝わり、主に、この正極充電バスバー40の充電器側部40b及び負極充電バスバー42の充電器側部42bから放熱される。金属棒材(金属板材)で構成されるバスバーは、伝熱及び放熱に優れるので、正極メインリレー37及び負極メインリレー39の熱は正極充電バスバー40の充電器側部40b及び負極充電バスバー42の充電器側部42bから速やかに放熱され、これにより正極メインリレー37及び負極メインリレー39が速やかに冷却される。従って、上記実施の形態のメインリレー保護装置では、外部接続型充電器26及び充電リレーを備えた電動車両のメインリレーの過熱を確実に防止することができる。
【0052】
また、ジャンクションボックス28の筐体34内に収納される正極メインリレー37及び負極メインリレー39と正極充電リレー41及び負極充電リレー43は互いに近接して配置され、その結果、正極メインバスバー36及び負極メインバスバー38と正極充電バスバー40及び負極充電バスバー42も互いに近接して配置されるので、メインリレー温度が放熱開始閾値T
S以上になったときには正極メインリレー37及び負極メインリレー39が速やかに冷却され、これによりメインリレーの過熱をより一層確実に防止することが可能となる。
【0053】
また、正極メインリレー37及び負極メインリレー39、正極充電リレー41及び負極充電リレー43、正極メインバスバー36及び負極メインバスバー38、正極充電バスバー40及び負極充電バスバー42、正極メインリレー温度センサ44及び負極メインリレー温度センサ46の夫々が駆動用バッテリ20の正極側及び負極側の夫々に対応して設けられ、正極メインリレー温度T
P及び負極メインリレー温度T
Nの夫々に応じて正極充電リレー41及び負極充電リレー43の夫々のオン制御を行う。これにより、例えば正極充電バスバー40の充電器側部40b及び負極充電バスバー42の充電器側部42bの放熱量や熱容量が異なるような場合であっても、正極メインリレー温度T
P及び負極メインリレー温度T
Nの夫々に基づいて正極メインリレー37及び負極メインリレー39を独立して冷却制御することができ、これによりメインリレーの過熱をより一層確実に防止することが可能となる。
【0054】
以上、実施の形態に係る車両用連結部材について説明したが、本件発明は、上記実施の形態で述べた構成に限定されるものではなく、本件発明の要旨の範囲内で種々変更が可能である。例えば、上記実施の形態では、メインリレーのオン・オフ制御を駆動用バッテリの正極側と負極側で個別に行うと共に、充電リレーのオン・オフ制御も駆動用バッテリの正極側と負極側で個別に行うようにしたが、これらリレーのオン・オフ制御態様は、これに限定されない。例えば、正極メインリレーと負極メインリレーを同時にオン・オフ制御してもよく、その場合、正極メインリレーと負極メインリレーのみを同一の筐体内に収納してもよい。同様に、正極充電リレーと負極充電リレーを同時にオン・オフ制御してもよく、その場合、正極充電リレーと負極充電リレーのみを同一の筐体内に収納してもよい。
【0055】
また、上記実施の形態では、正極充電リレー及び負極充電リレーのオン・オフ制御に異なる放熱開始閾値T
S及び放熱終了閾値T
Fを設定しているが、これは、周知のように、制御のハンチングを防止するためのヒステリシスであり、例えば単一の閾値でオン・オフ制御することも可能である。
【0056】
また、上記実施の形態における充電リレーのオン・オフ制御は、例えば車両駆動源としてモータジェネレータのみを搭載する、所謂EVにも同様に適用可能である。その場合、
図7のタイミングチャートにおけるエンジンの強制運転制御は、例えば駆動用バッテリの使用電力制限制御に置換すればよい。なお、EVにおいて駆動バッテリの使用電力制限制御が行われると、運転者が要求する駆動力をモータジェネレータが発揮できない可能性があり、そうした場合には、十分な車両加減速が達成されない。これに対し、駆動バッテリ使用電力制限制御時間を短縮できる実施の形態のメインリレー保護装置では、運転者の所望する車両加減速を実現し易い。
【0057】
また、上記実施の形態における充電リレー41、43のオン・オフ制御は、例えば車両の停車中にのみ行うようにしてもよい。そして、そのようにすることで、駆動用バッテリ20及びモータジェネレータ12間及びメインバスバー36、38及び外部接続型充電器26間の電気的特性が車両の走行中に変化することがないので、システムの故障を確実に抑制することが可能となる。