(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
樹脂組成物(X)からなる外科用止血材基材(X層)と樹脂組成物(Y)からなる保護シート(Y層)とを積層した構造を有する外科用止血材基材と保護シートとの積層体であって、樹脂組成物(X)が下記ウレタン樹脂形成性組成物(A)の硬化物であり、樹脂組成物(X)の溶解度パラメータと樹脂組成物(Y)の溶解度パラメータとの差の絶対値が1.3〜3.0(cal/cm3)1/2である外科用止血材基材と保護シートとの積層体(I)。
ウレタン樹脂形成性組成物(A):ポリイソシアネート成分(E)と、親水性ポリオール(F1)を必須成分とするポリオール成分(F)との反応物である末端イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(U)を含有する組成物
ポリイソシアネート成分(E)が含フッ素ポリイソシアネート化合物(E1)を含有し、ウレタンプレポリマー(U)中のフッ素の含有量が(U)の重量を基準として1〜30重量%である請求項1に記載の外科用止血材基材と保護シートとの積層体。
ポリオール成分(F)中のオキシエチレン単位の含有量が(F)の重量を基準として30〜79重量%である請求項1又は2に記載の外科用止血材基材と保護シートとの積層体。
ウレタンプレポリマー(U)中のオキシエチレン単位の含有量が(U)の重量を基準として25〜65重量%である請求項1〜3のいずれか1項に記載の外科用止血材基材と保護シートとの積層体。
樹脂組成物(X)からなる外科用止血材基材層(X層)と樹脂組成物(Y)からなる保護シート層(Y層)とを積層した構造を有する外科用止血材基材と保護シートとの積層体の製造方法であって、樹脂組成物(X)が下記ウレタン樹脂形成性組成物(A)の硬化物であり、樹脂組成物(X)の溶解度パラメータと樹脂組成物(Y)の溶解度パラメータとの差の絶対値が1.3〜3.0(cal/cm3)1/2であり、ウレタン樹脂形成性組成物(A)を樹脂組成物(Y)からなるY層上に塗布して硬化させる外科用止血材基材と保護シートとの積層体(I)の製造方法。
ウレタン樹脂形成性組成物(A):ポリイソシアネート成分(E)と、親水性ポリオール(F1)を必須成分とするポリオール成分(F)との反応物である末端イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(U)を含有する組成物
【発明を実施するための形態】
【0009】
[外科用止血材基材と保護シートとの積層体(I)]
本発明の外科用止血材基材と保護シートとの積層体(I)は、樹脂組成物(X)からなる外科用止血材基材(X層)と樹脂組成物(Y)からなる保護シート(Y層)とを積層した構造を有する外科用止血材基材と保護シートとの積層体であって、樹脂組成物(X)が下記ウレタン樹脂形成性組成物(A)の硬化物であり、樹脂組成物(X)の溶解度パラメータと樹脂組成物(Y)の溶解度パラメータとの差の絶対値が1.3〜3.0である外科用止血材基材と保護シートとの積層体である。
ウレタン樹脂形成性組成物(A):ポリイソシアネート成分(E)と、親水性ポリオール(F1)を必須成分とするポリオール成分(F)との反応物である末端イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(U)を含有する組成物
【0010】
本発明においては、外科用止血材基材(X層)を構成する樹脂組成物(X)の溶解度パラメータと、保護シート(Y層)を構成する樹脂組成物(Y)の溶解度パラメータとの差の絶対値が3.0以下であることで、保護シートであるY層上で外科用止血材基材を成形しても、硬化収縮で剥離することなく適度に接着し外科用止血材基材を保護することができる。また、絶対値が1.3以上であることで、接着力が適度となり、使用時に外科用止血材基材が破れることなく保護シートを剥離することができる。
X層及びY層は1層ずつ積層したもの(X−Y)でもよく、X層及び/又はY層を2層以上積層したもの(X−Y−X、Y−X−Y、X−Y−X−Y、X−X−Y−X及びY−X−Y−X−Y等)等でもよい。
【0011】
本発明において、外科用止血材基材(X層)は、樹脂組成物(X)からなり、樹脂組成物(X)は下記ウレタン樹脂形成性組成物(A)の硬化物である。
ウレタン樹脂形成性組成物(A):ポリイソシアネート成分(E)と、親水性ポリオール(F1)を必須成分とするポリオール成分(F)との反応物である末端イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(U)を含有する組成物
【0012】
本発明において、ポリイソシアネート成分(E)としては、公知のポリイソシアネートを制限なく使用でき、好ましいポリイソシアネートとしては、含フッ素ポリイソシアネート(E1)及びフッ素原子を含まないポリイソシアネート(E2)が挙げられる。
【0013】
含フッ素ポリイソシアネート(E1)としては、公知{特開昭62−148666号公報、特開昭62−290465号公報、特開平01−227762号公報、特開2003−552828号公報又は特開2005−312935号公報等に記載}の含フッ素ポリイソシアネートが使用でき、(Y)との適度な接着性及び剥離性の観点から、下記(E11)〜(E13)が好ましい。
(E1)は、1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0014】
(E11)炭素数3〜24の含フッ素脂肪族ジイソシアネート
OCN−Rf−NCOで表されるもの(Rfは炭素数1〜22のパーフルオロアルキレン基を表す。)及びOCN−CH
2−Rf−CH
2−NCOで表されるもの(Rfは炭素数1〜20のパーフルオロアルキレン基を表す。)等が含まれる。
具体的には、OCN−Rf−NCOで表されるもの{ジフルオロメチレンジイソシアネート、パーフルオロジメチレンジイソシアネート、パーフルオロトリメチレンジイソシアネート、パーフルオロオクチレンジイソシアネート及びパーフルオロエイコシレンジイソシアネート等};OCN−CH
2−Rf−CH
2−NCOで表されるもの{ビス(イソシアナトメチル)ジフルオロメタン、ビス(イソシアナトメチル)パーフルオロエタン、ビス(イソシアナトメチル)パーフルオロプロパン、ビス(イソシアナトメチル)パーフルオロブタン、ビス(イソシアナトメチル)パーフルオロペンタン、ビス(イソシアナトメチル)パーフルオロヘキサン及びビス(イソシアナトメチル)パーフルオロエイコサン等}等が挙げられる。
【0015】
(E12)炭素数8〜21の含フッ素脂環式ジイソシアネート
ジイソシアナトパーフルオロシクロヘキサン、ビス(イソシアナトメチル)パーフルオロシクロヘキサン、ビス(イソシアナトメチル)パーフルオロジメチルシクロヘキサン、ビス(イソシアナトパーフルオロシクロヘキシル)パーフルオロプロパン及びビス(イソシアナトメチルパーフルオロシクロヘキシル)パーフルオロプロパン等が挙げられる。
【0016】
(E13)炭素数9〜72の含フッ素ポリ(3〜6価)イソシアネート
(E11)及び(E12)のヌレート体、上記ジイソシアネートのアダクト体及びトリス(イソシアナトテトラフルオロシクロヘキシル)メタン等が挙げられる。
【0017】
含フッ素ポリイソシアネート(E1)としては、変異原性等の安全性の観点等から、含フッ素脂肪族ポリイソシアネート(E11)が好ましく、さらに好ましくはOCN−CH
2−Rf−CH
2−NCOで表される含フッ素脂肪族ポリイソシアネート及びOCN−Rf−NCOで表される含フッ素脂肪族ポリイソシアネートであり、特に好ましくはジフルオロメチレンジイソシアネート、パーフルオロジメチレンジイソシアネート、パーフルオロトリメチレンジイソシアネート、パーフルオロオクチレンジイソシアネート、パーフルオロエイコシレンジイソシアネート、ビス(イソシアナトメチル)パーフルオロプロパン、ビス(イソシアナトメチル)パーフルオロブタン、ビス(イソシアナトメチル)パーフルオロペンタン及びビス(イソシアナトメチル)パーフルオロヘキサンである。
【0018】
また、ウレタンフィルムの吸水性及びイソシアネートの入手しやすさの観点等から、含フッ素ポリイソシアネート(E1)中のフッ素原子の重量の割合(重量%)は、(E1)の重量を基準として、35〜70が好ましく、さらに好ましくは38〜70、特に好ましくは40〜56である。
この範囲であると(E1)を用いて得られた樹脂組成物(X)からなるX層(外科用止血材基材)の吸水性が良好である。
【0019】
フッ素原子を含まないポリイソシアネート(E2)としては、公知{特開昭62−148666号公報、特開昭62−290465号公報、特開平01−227762号公報、特開2003−552828号公報又は特開2005−312935号公報等に記載}のフッ素原子を含まないポリイソシアネートが含まれる。
フッ素原子を含まないポリイソシアネート(E2)は、1種を用いてもよく、2種以上を併用してもいい。
フッ素原子を含まないポリイソシアネート(E2)のうち、ウレタンフィルムの柔軟性の観点から、フッ素原子を含まない芳香族ポリイソシアネート{1,3−又は1,4−フェニレンジイソシアネート(以下においてPDIと略記する)、2,4−又は2,6−トリレンジイソシアネート(以下においてTDIと略記する)、2,4’−又は4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(以下においてMDIと略記する)及びポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(以下において粗製MDIと略記する)等}が好ましく、さらに好ましくはMDI及びTDIである。
【0020】
本発明において、ポリイソシアネート成分(E)としては、(Y)との適度な接着性及び剥離性の観点から、含フッ素ポリイソシアネート化合物(E1)を含有することが好ましい。
【0021】
本発明において、ポリオール成分(F)は親水性ポリオール(F1)を必須成分とする。
本発明における親水性ポリオール(F1)とは、オキシエチレン基を含有してなり、オキシエチレン単位の含有量が(F1)の重量に基づいて30〜100重量%であるポリオールを意味する。
なお、(F1)の重量に基づいて、親水性ポリオール(F1)中のオキシエチレン単位の含有量が100重量%である状態とは、実際には(F1)中のオキシエチレン単位の含有量が99.5重量%以上100.0重量%未満の状態であり、小数点以下第一位を四捨五入して、100重量%になっている状態を示す。
(F)としては1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0022】
(F1)としては、少なくとも2個の活性水素を有する化合物(H)へのエチレンオキサイド(以下、EOと略記する)付加物、(H)へのEOと炭素数3〜8のアルキレンオキサイド{1,2−プロピレンオキサイド(以下、POと略記する)、1,3−プロピレンオキサイド、1,2−、1,3−、2,3−又は1,4−ブチレンオキサイド及びスチレンオキサイド等}との共付加物等が挙げられる。
共付加物の場合、その付加形式はランダム、ブロック及びこれらの組合せのいずれでもよいが、外科用止血材基材の吸水性の観点から、好ましくはランダムである。
また、炭素数3〜8のアルキレンオキサイドとしては、外科用止血材基材の吸水性の観点から、POが好ましい。
【0023】
少なくとも2個の活性水素を有する化合物(H)としては、水、炭素数1〜20のジオール(エチレングリコール及び1,2−プロピレングリコール等)、炭素数2〜20のジカルボン酸(マレイン酸及びコハク酸等)、炭素数6〜20の3〜4価のポリカルボン酸(トリメリット酸及びピロメリット酸等)、炭素数1〜20のモノアミン(メチルアミン及びエチルアミン等)、炭素数1〜20のポリアミン(エチレンジアミン及びプロピレンジアミン等)並びに炭素数1〜20のポリチオール(エタンジチオール等)等が挙げられる。
【0024】
(F1)の好適な例としては、炭素数1〜20のジオールへのEO付加物(エチレングリコールへのEO付加物及びプロピレングリコールへのEO付加物等)、並びに炭素数1〜20のジオールへのEOと炭素数3〜8のアルキレンオキサイドとの共付加物(エチレングリコールへのEOとPOとのランダム及び/又はブロック共付加物、並びに、エチレングリコールへのEOとブチレンオキサイドとのランダム及び/又はブロック共付加物等)等が挙げられる。
(F1)としては、外科用止血材基材の吸水性の観点から、炭素数1〜20のジオールへのEO付加物、及び炭素数1〜20のジオールへのEOとPOとの共付加物が好ましく、特に好ましくはジオールへのEOとPOとの共付加物である。
(F1)としては、1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0025】
親水性ポリオール(F1)中のオキシエチレン単位の含有量(重量%)は、外科用止血材基材の吸水性の観点から、(F1)の重量に基づいて、40〜95が好ましく、さらに好ましくは50〜90である。
(F1)のヒドロキシル基当量(ヒドロキシル基1個あたりの数平均分子量)は、外科用止血材基材の作成し易さ及び外科用止血材基材の吸水性の観点から、50〜5,000が好ましく、さらに好ましくは100〜4,000、特に好ましくは200〜3,000である。
なお、ヒドロキシル基当量は、JIS K1557−1:2007に準拠して水酸基価を測定し、下記式に当てはめることにより求めることができる。
ヒドロキシル基当量=1,000×56.1/水酸基価の値
【0026】
親水性ポリオール(F1)の数平均分子量(Mn)は、ウレタンフィルムの作成し易さの観点等から、600〜10,000が好ましい。
なお、本発明において、数平均分子量(Mn)は、ポリエチレングリコールを標準物質として検量線を作成し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される。
【0027】
ポリオール成分(F)としては、親水性ポリオール(F1)を必須成分とするが、親水性の低い他のポリオール(F2)[即ち、オキシエチレン単位の含有量が(F2)の重量に基づいて30重量%未満であるポリオール]を含んでもよい。(F2)としては、特に限定なく、(F1)以外の公知のものが含まれる。
(F2)のうち、外科用止血材基材の吸水性の観点等から、オキシエチレン単位の含有量がオキシアルキレン単位の重量に基づいて30重量%未満であるポリエーテルポリオールが好ましく、さらに好ましくは、オキシエチレン単位の含有量がオキシエチレン単位及びオキシプロピレン単位の合計重量に基づいて30重量%未満であるポリオキシプロピレンポリオキシエチレンポリオール及びポリプロピレングリコールである。
上記ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンポリオールとしては、ポリプロピレングリコールへのEO付加物(オキシアルキレン単位の重量に基づいてEO単位の含有量5〜30重量%)が好ましく、さらに好ましくはポリプロピレングリコールへのEO付加物(オキシアルキレン基の重量に基づいてEOの含有量15〜30重量%)である。
ポリエーテルポリオール(F2)は、1種でも2種以上の混合物でもよい。
(F2)のヒドロキシル基1個あたりの数平均分子量(ヒドロキシル基当量)及びMnの好ましい範囲は、(F1)と同様である。
【0028】
親水性の低い他のポリオール(F2)を使用する場合、親水性ポリオール(F1)の含有量(重量%)は、外科用止血材基材の吸水性の観点から、ポリオール成分(F)の重量に基づいて、30〜99が好ましく、さらに好ましくは50〜98、特に好ましくは70〜95である。
親水性の低いポリオール(F2)を使用する場合、ポリオール(F2)の含有量(重量%)は、外科用止血材基材の吸水性の観点から、ポリオール成分(F)の重量に基づいて、1〜70が好ましく、さらに好ましくは2〜50、特に好ましくは5〜30である。
【0029】
また、ウレタン樹脂形成性組成物(A)において、ポリオール成分(F)中のオキシエチレン単位の含有量(重量%)は、外科用止血材基材の吸水性の観点から、(F)の重量に基づいて、30〜79が好ましく、さらに好ましくは40〜78、特に好ましくは45〜77である。
【0030】
ウレタン樹脂形成性組成物(A)において、ポリオール成分(F)全体の平均のヒドロキシル基当量は、外科用止血材基材の吸水性及び作成し易さの観点から、50〜5,000が好ましく、さらに好ましくは100〜4,000、特に好ましくは200〜3,000、最も好ましくは500〜2,000である。
【0031】
本発明において、ウレタン樹脂形成性組成物(A)は上記ポリイソシアネート成分(E)とポリオール成分(F)との反応物である末端イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(U)を含有する組成物である。
ウレタンプレポリマー(U)において、(E)のイソシアネート基と(F)のヒドロキシル基との当量比(NCO基/OH基)は、1.5〜3が好ましく、さらに好ましくは1.8〜2.3、特に好ましくは1.9〜2.1である。
ウレタンプレポリマー(U)中のフッ素の含有量は、(U)の重量を基準として、(Y)との適度な接着性及び剥離性の観点から、1〜30重量%が好ましく、さらに好ましくは1〜29重量%である。
ウレタンプレポリマー(U)中のオキシエチレン単位の含有量は、(U)の重量を基準として、反応性の観点から、25〜65重量%が好ましく、さらに好ましくは27〜63重量%である。
【0032】
ウレタンプレポリマー(U)を製造する方法としては、従来公知の方法{国際公開WO03/051952パンフレット(米国特許出願10/499,331の開示内容を参照により本出願に取り込む)等}でよく、例えば、ポリイソシアネート成分(E)とポリオール成分(F)とを50〜100℃で、1〜10時間反応させる方法等が挙げられる。この場合、ポリイソシアネート成分(E)とポリオール成分(F)との投入方法としては、最初から加えておく方法でも徐々に滴下する方法でもよい。
ポリイソシアネート成分(E)は、水分と極めて反応しやすいため、反応装置や原材料中の水分は極力除去しておく必要がある。特に、水分を含みやすいポリオール成分(F)は、脱水処理することが好ましい。脱水処理としては、50〜150℃、0.001hPa〜大気圧で、必要により不活性ガス(窒素ガス等)を通気しながら、0.5〜10時間、脱水する方法等が適用できる。
ポリイソシアネート成分(E)とポリオール成分(F)との混合方法としては、(1)一度に混合する方法、(2)(F)を(E)に徐々に滴下する方法、(3)(E)を(F)に徐々に滴下する方法、(4)(E)と(F)の一部とを混合して反応させた後、残りの(F)を滴下又は一度に混合する方法等のいずれでもよい。
これらのうち、反応操作の簡便性の観点等から、(1)の方法及び(2)の方法が好ましく、さらに好ましくは(1)の方法である。
反応は、触媒[有機金属化合物(ジブチル錫オキサイド及びジブチル錫ジラウレート等)及び有機酸金属塩(酢酸ジルコニウム等)等]の存在下で行なってもよい。
【0033】
本発明において、ウレタン樹脂形成性組成物(A)は、上記ウレタンプレポリマー(U)を含有する組成物であるが、必要によりその他の成分を含有してもよい。
その他の成分としては、生理活性を有する薬物(中枢神経用薬、アレルギー用薬、循環器官用薬、呼吸器官用薬、消化器官用薬、ホルモン剤、代謝性医薬品、抗悪性腫瘍剤、抗生物質製剤及び化学療法剤等)、充填剤(カーボンブラック、ベンガラ、ケイ酸カルシウム、ケイ酸ナトリウム、酸化チタン、アクリル系樹脂粉末及び各種セラミック粉末等)、及び可塑剤(フタル酸ジブチル(DBP)、フタル酸ジオクチル(DOP)、リン酸トリクレシル(TCP)、トリブトキシエチルホスフェート及びその他各種エステル等)等が含まれる。
その他の成分を含む場合、これらの含有量は用途等によって適宜決定される。
【0034】
ウレタン樹脂形成性組成物(A)には、さらに、公知{特開昭62−148666号公報、特開昭62−290465号公報、特開平01−227762号公報、特開2003−552828号公報又は特開2005−312935号公報等に記載}のフェノール性水酸基含有ラジカル捕捉剤(PRS)を含んでいてもよい。フェノール性水酸基含有ラジカル捕捉剤(PRS)が含まれていると、作成した外科用止血材基材の経時劣化分解を抑制し、物性(強度及び止血性等)の低下を防止することができるため好ましい。
【0035】
フェノール性水酸基含有ラジカル捕捉剤(PRS)のうち、外科用止血材基材の経時劣化分解の抑制の観点等から好ましいのは、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、1,3,5−トリス(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)−sec−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)トリオン及び1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]である。
【0036】
ウレタン樹脂形成性組成物(A)中のフェノール性水酸基含有ラジカル捕捉剤(PRS)の含有量(重量%)は、ウレタン樹脂形成性組成物(A)の重量に基づいて、0.01〜3が好ましく、さらに好ましくは0.02〜1、特に好ましくは0.05〜0.5である。この範囲であると、外科用止血材基材の経時劣化を抑制することができる。
【0037】
X層の厚さは、止血性の観点及び硬化物作成時の気泡の発生量抑制の観点から、2〜3,000μmが好ましく、さらに好ましくは5〜2,000μmであり、特に好ましくは10〜1,000μmである。
【0038】
本発明において、樹脂組成物(X)からなるX層は、樹脂組成物(Y)からなるY層上で湿気硬化させたものであることが好ましい。
【0039】
本発明において、樹脂組成物(X)の溶解度パラメータと樹脂組成物(Y)の溶解度パラメータとの差の絶対値が1.3〜3.0であり、接着性及び剥離性の観点から、1.3〜2.5が好ましい。
溶解度パラメータ(以下においてSP値と略記する)は、ロバートエフフェイダース(Robert F Fadors)らの著によるポリマーエンジニアリングアンドサイエンス(Polymerengineering and science)第14巻、151〜154ページに記載されている方法で計算したものである。
なお、上記の文献から分かるように、SP値の単位は、「(cal/cm3)1/2」である。
【0040】
樹脂組成物(X)においては、ポリオール成分の含有量を増加することによりSP値を高くすることができる。また、フッ素含有量を増加することによりSP値を低くすることができる。
【0041】
樹脂組成物(Y)は、樹脂組成物(X)のSP値がどの程度であるかによって選択される。樹脂組成物(Y)としては、シート状に成形可能であり、保護シートとして使用でき、樹脂組成物(X)のSP値と樹脂組成物(Y)のSP値との差の絶対値が上記範囲を満たすものであれば制限なく使用できる。
例えば、樹脂組成物(X)のSP値が9.5である場合、好ましい樹脂組成物(Y)の具体例としては、ポリエチレン樹脂(SP値8.1)、ポリプロピレン樹脂(SP値7.9)、ブチルゴム(SP値7.7)及びシリコーンゴム(SP値7.0)等が挙げられる。
【0042】
Y層の厚さは、(X)との適度な接着性及び剥離性の観点から、1〜5,000μmが好ましく、さらに好ましくは5〜4,000μmであり、特に好ましくは10〜3,000μmである。
【0043】
本発明の外科用止血材基材と保護シートとの積層体(I)の製造方法は、樹脂組成物(X)からなる外科用止血材基材層(X層)と樹脂組成物(Y)からなる保護シート層(Y層)とを積層した構造を有する外科用止血材基材と保護シートとの積層体の製造方法であって、樹脂組成物(X)が下記ウレタン樹脂形成性組成物(A)の硬化物であり、樹脂組成物(X)の溶解度パラメータと樹脂組成物(Y)の溶解度パラメータとの差の絶対値が1.3〜3.0であり、ウレタン樹脂形成性組成物(A)を樹脂組成物(Y)からなるY層上に塗布して湿気硬化させる外科用止血材基材と保護シートとの積層体(I)の製造方法である。
ウレタン樹脂形成性組成物(A):ポリイソシアネート成分(E)と、親水性ポリオール(F1)を必須成分とするポリオール成分(F)との反応物である末端イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(U)を含有する組成物
【0044】
本発明において、湿気硬化の条件としては、気泡発泡量の低減の観点から絶対湿度は、0.2〜100g/m
3が好ましく、さらに好ましくは0.3〜85g/m
3であり、特に好ましくは0.5〜60g/m
3である。
ウレタン樹脂形成性組成物(A)の温度は、硬化性の観点から、−20〜40℃であることが好ましく、さらに好ましくは−15〜35℃であり、特に好ましくは−10〜30℃である。
相対湿度は、硬化被膜の均一性及び硬化時間の観点から、0〜15%RHが好ましく、さらに好ましくは1〜10%RHである。
なお、湿度0%RHでも、硬化するまでの時間は長くなるものの、ウレタン樹脂形成性組成物(A)中の水分等で硬化することは可能である。
Y層上に塗布するウレタン樹脂形成性組成物(A)の厚みは、剥離性及び樹脂強度の観点から、1〜5,000μmが好ましく、さらに好ましくは5〜4,000μmであり、特に好ましくは10〜3,000μmである。
なお、前記の絶対湿度は、Tetensの式から求める飽和水蒸気圧eと、相対湿度RH(単位:%RH)と、温度t(単位:℃)から、下記式を計算して求めることができる。
<絶対湿度>
絶対湿度(g/m
3)=[RH×217×e/(t+273.15)]/100
<Tetensの式から求める飽和蒸気圧e>
e=6.11×10
{7.5t/(237.3+t)}
なお、tは温度(℃)である。
【0045】
本発明の外科用止血材基材と保護シートとの積層体(I)の患部への適用方法としては、外科用止血材基材と保護シートとの積層体(I)において両端の面がY層{(Y−・・・−Y)}である場合は、保護シートに相当するY層を剥離して、少なくとも1方の面をX層{(X−・・・−X)又は(X−・・・−Y)}とし、X層の少なくとも一部に後述する医療用接着剤(B)を塗布して外科用止血材として止血部に貼付し、該X層から一番近いY層との界面でY層を剥離することにより適用してもよく、止血部に医療用接着剤(B)を塗布した後、外科用止血材基材積層体のX層の面を貼付し、該X層から一番近いY層との界面でY層を剥離することにより適用してもよい。
【0046】
[保護シートと外科用止血材との積層体(II)]
本発明の保護シートと外科用止血材との積層体(II)は、外科用止血材基材と保護シートとの積層体(I)が有する外科用止血材基材の面の少なくとも一部に医療用接着剤(B)を付着させた保護シートと外科用止血材との積層体であって、外科用止血材が外科用止血材基材及び医療用接着剤(B)から構成される積層体である。
本発明において、医療用接着剤(B)は、器官(呼吸器及び消化器等)、内臓(心臓等)、粘膜及び血管(動脈等)における外科手術で、縫合、吻合等の外科的処置を実施しても出血が収まらない場合に、止血を目的として用いられる接着剤であり、ウレタン接着剤組成物(B1)及び/又はシアノアクリレート接着剤(B2)が含まれる。
【0047】
ウレタン接着剤組成物(B1)としては、外科用止血材基材及び患部への接着性の観点から、上記ウレタンプレポリマー(U)を含有する組成物が好ましい。
ウレタン接着剤組成物(B1)において、ウレタンプレポリマー(U)として好ましい範囲は、上記ウレタン樹脂形成性組成物(A)と同様である。
【0048】
シアノアクリレート接着剤(B2)としては、公知のシアノアクリレート接着剤組成物が使用でき、特に限定されないが、例えば、特開2007−61658号公報及び特開平6−145606号公報等に記載されているシアノアクリレート接着剤組成物等が挙げられる。
【0049】
医療用接着剤(B)の25℃における粘度は、1,000〜5,000,000mPa・sが好ましく、さらに好ましくは3,000〜1,000,000mPa・s、特に好ましくは5,000〜500,000mPa・sである。この範囲であることで、ウレタンフィルムに容易に塗布することができ、被接着物である患部に薄く適当な厚みに塗布することができる。
【0050】
医療用接着剤(B)の厚みは、気泡の発生量の観点から1〜5,000μmが好ましく、さらに好ましくは5〜4,000μm、特に好ましくは10〜3,000μmである。
【0051】
保護シートと外科用止血材との積層体(II)は、外科用止血材基材と保護シートとの積層体(I)において両端の面がY層{(Y−・・・−Y)}である場合は、保護シートに相当するY層を剥離して、少なくとも1方の面をX層{(X−・・・−X)又は(X−・・・−Y)}とし、X層において患部に貼付する面の少なくとも一部に医療用接着剤(B)を付着させることにより製造することができる。
積層体(II)を患部に適用する方法としては、医療用接着剤(B)が付着する面を患部に貼付した後、少なくとも一部に医療用接着剤(B)が付着するX層から一番近いY層との界面で剥離して適用してもよく、患部に貼付する前に該X層から一番近いY層との界面で剥離した後、医療用接着剤(B)が付着する面を患部に貼付して適用してもよい。
【実施例】
【0052】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。なお、実施例及び比較例中において、部は特にことわりのない限り、重量部を示す。
【0053】
<製造例1>
オートクレーブにエチレングリコール15.5部、水酸化カリウム3.8部を仕込み、窒素置換後(気相部の酸素濃度450ppm)120℃にて60分間真空脱水した。
ついで、100〜130℃でEO784.5部とPO200部との混合物を約10時間で圧入した後、揮発分0.1体積%以下になるまで130℃で3時間反応を続け、液状粗ポリエーテルを得た。
この液状粗ポリエーテル1,000部をオートクレーブに入れ、窒素置換(気相部の酸素濃度450ppm)を行い、30部のイオン交換水を加え、その後、合成ケイ酸マグネシウム(ナトリウム含有量0.2重量%)を10部加え、再度窒素置換した後、90℃にて45分間、攪拌速度300rpmで攪拌した。次いで、ガラスフィルタ−(GF−75:東洋濾紙製)を用い、窒素下で濾過を行い、EO/POランダム共付加体(f1)を得た。この(f1)の数平均分子量は4,000、オキシエチレン単位の含有量は80重量%であった。
【0054】
<製造例2>
オートクレーブにプロレングリコール362部、水酸化カリウム3.8部を仕込み、窒素置換後(気相部の酸素濃度450ppm)120℃にて60分間真空脱水した。
ついで、100〜130℃でPO632部を約10時間で圧入した後、揮発分0.1体積%以下になるまで130℃で反応を続け、液状粗ポリエーテルを得た。
この液状粗ポリエーテルを前記の製造例1と同様の方法で、合成ケイ酸マグネシウムを用いて処理し、PO付加体(f2)を得た。この(f2)の数平均分子量は210、オキシエチレン単位の含有量は0重量%であった。
【0055】
<製造例3>
オートクレーブにプロレングリコール141.8部、水酸化カリウム3.8部を仕込み、窒素置換後(気相部の酸素濃度450ppm)120℃にて60分間真空脱水した。
ついで、100〜130℃でEO781部とPO193部との混合物を約10時間で圧入した後、揮発分0.1体積%以下になるまで130℃で反応を続け、液状粗ポリエーテルを得た。
この液状粗ポリエーテルを前記の製造例1と同様の方法で、合成ケイ酸マグネシウムを用いて処理し、PO付加体(f3)を得た。この(f3)の数平均分子量は600、オキシエチレン単位の含有量は70重量%であった。
【0056】
<製造例4>
ポリオール成分(F)として製造例1で得たEO/POランダム共付加体(f1)90部と製造例2で得たPO付加体(f2)10部の混合物を用いて、窒素雰囲気下、100℃にて2時間減圧下脱水した後、50℃に冷却し、フェノール性水酸基含有ラジカル捕捉剤(PRS)として0.5部のテトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(イルガノックス1010、BASF社製)を添加し、30分間均一に攪拌した。さらに40℃に冷却した後、ポリイソシアネート成分(E)として含フッ素ポリイソシアネート化合物(E1)であるビス(イソシアナトメチル)パーフルオロブタン{OCN−CH
2−(CF
2)
4−CH
2−NCO}45.6部(NCO基/OH基比=2/1)を加え、均一に撹拌した後、80℃に昇温し、80℃で6時間反応させて、ウレタンプレポリマー(U1)を含有するウレタン樹脂形成性組成物(A1)を得た。この(U1)のイソシアネート基含有量は4.0重量%であった。なお、(F)中のオキシエチレン単位の含有量は72重量%、(U1)中のオキシエチレン単位含有量は49重量%、(E)中のフッ素含有量は49重量%、(U1)中のフッ素含有量は15重量%である。
【0057】
<製造例5>
ポリオール成分(F)として、製造例1で得たEO/POランダム共付加体(f1)70部と製造例2で得たPO付加体(f2)30部の混合物、含フッ素イソシアネート成分(E)としてビス(イソシアナトメチル)パーフルオロブタン100部(NCO基/OH基比=2/1)を使用すること以外は製造例4と同様にしてウレタンプレポリマー(U2)を含有するウレタン樹脂形成性組成物(A2)を得た。この(U2)のイソシアネート基含有量は6.7重量%であった。なお、ポリオール成分(F)中のオキシエチレン単位の含有量は56重量%、(U2)中のオキシエチレン単位含有量は28重量%、(E)中のフッ素含有量は49重量%、(U2)中のフッ素含有量は25重量%である。
【0058】
<製造例6>
ポリオール成分(F)として製造例3で得たEO/POランダム共付加体(f3)90部、含フッ素イソシアネート成分(E)としてビス(イソシアナトメチル)パーフルオロブタン123部(NCO基/OH基比=2/1)を使用すること以外は製造例4と同様にしてウレタンプレポリマー(U3)を含有するウレタン樹脂形成性組成物(A3)を得た。この(U3)のイソシアネート基含有量は7.4重量%であった。なお、(F)中のオキシエチレン単位含有量は70重量%、(U3)中のオキシエチレン単位含有量は29重量%、(E)中のフッ素含有量は49重量%、(U3)中のフッ素含有量は28重量%である。
【0059】
<製造例7>
ポリオール成分(F)として、製造例1で得たEO/POランダム共付加体(f1)95部と製造例2で得たPO付加体(f2)5部の混合物、含フッ素イソシアネート成分(E)としてビス(イソシアナトメチル)パーフルオロブタン29.7部(NCO基/OH基比=2/1)を使用すること以外は製造例4と同様にしてウレタンプレポリマー(U4)を含有するウレタン樹脂形成性組成物(A4)を得た。この(U4)のイソシアネート基含有量は3.0重量%であった。なお、(F)中のオキシエチレン単位含有量は76重量%、(U)中のオキシエチレン単位含有量は59重量%、(E)中のフッ素含有量は49重量%、(U4)中のフッ素含有量は11重量%である。
【0060】
<製造例8>
含フッ素ポリイソシアネート成分(E)としてビス(イソシアナトメチル)パーフルオロブタン65.6部(NCO基/OH基比=3/1)を使用すること以外は製造例4と同様にしてウレタンプレポリマー(U5)を含有するウレタン樹脂形成性組成物(A5)を得た。この(U5)のイソシアネート基含有量は5.3重量%であった。なお、(F)中のオキシエチレン単位含有量は72重量%、(U)中のオキシエチレン単位含有量は43重量%、(E)中のフッ素含有量は49重量%、(U5)中のフッ素含有量は19重量%である。
【0061】
<製造例9>
ポリオール成分(F)として、製造例1で得たEO/POランダム共付加体(f1)90部と製造例2で得たPO付加体(f2)10部の混合物、ポリイソシアネート成分(E)として2,4−トリレンジイソシアネート(TDI)25.4部(NCO基/OH基比=2/1)を使用すること以外は製造例4と同様にしてウレタンプレポリマー(U6)を含有するウレタン樹脂形成性組成物(A6)を得た。この(U6)のイソシアネート基含有量は4.8重量%であった。なお、(F)中のオキシエチレン単位含有量は72重量%、(U6)中のオキシエチレン単位含有量は57重量%、(E)中のフッ素含有量は0重量%、(U6)中のフッ素含有量は0重量%である。
【0062】
製造例4〜9の仕込み量、生成したウレタン樹脂形成性組成物中の各含有量を下記表1にまとめて記載する。
【表1】
【0063】
<実施例1>
製造例4で得たウレタン樹脂形成性組成物(A1)1.0gをポリプロピレン(以下PPと略記する)の保護シート(Y1)(東レ(株)製、「トレファンフィルム」、SP値7.9)に100μmの厚みで延ばし、絶対湿度1.2g/m
3環境下(25℃、5%RH)で24時間静置し、湿気硬化させ、(A1)の硬化物からなる外科用止血材基材(X1)とPPからなる保護シート(Y1)との積層体(1)を得た。外科用止血材基材(X1)の厚みは100μmであった。外科用止血材基材(X1)のSP値は9.5、保護シート(Y1)のSP値は7.9、(X1)のSP値と(Y1)のSP値との差の絶対値は1.6であった。
【0064】
<実施例2>
製造例5で得たウレタン樹脂形成性組成物(A2)1.0gをPPの保護シート(Y1)に150μmの厚みで延ばし、絶対湿度1.2g/m
3環境下(25℃、5%RH)で24時間静置し、湿気硬化させ、(A2)の硬化物からなる外科用止血材基材(X2)とPPからなる保護シート(Y1)との積層体(2)を得た。外科用止血材基材(X2)の厚みは150μmであった。外科用止血材基材(X2)のSP値は9.7、保護シート(Y1)のSP値は7.9、(X2)のSP値と(Y1)のSP値との差の絶対値が1.8であった。
【0065】
<実施例3>
製造例6で得たウレタン樹脂形成性組成物(A3)1.0gをPPの保護シート(Y1)に50μmの厚みで延ばし、絶対湿度1.2g/m
3環境下(25℃、5%RH)で24時間静置し、湿気硬化させ、(A3)の硬化物からなる外科用止血材基材(X3)とPPからなる保護シート(Y1)との積層体(3)を得た。外科用止血材基材(X3)の厚みは50μmであった。外科用止血材基材(X3)のSP値は9.7、保護シート(Y1)のSP値は7.9、(X3)のSP値と(Y1)のSP値との差の絶対値が1.8であった。
【0066】
<実施例4>
製造例7で得たウレタン樹脂形成性組成物(A4)1.0gをPPの保護シート(Y1)に100μmの厚みで延ばし、絶対湿度1.2g/m
3環境下(25℃、5%RH)で24時間静置し、湿気硬化させ、(A4)の硬化物からなる外科用止血材基材(X4)とPPからなる保護シート(Y1)との積層体(4)を得た。外科用止血材基材(X4)の厚みは100μmであった。外科用止血材基材(X4)のSP値は9.4、保護シート(Y1)のSP値は7.9、(X4)のSP値と(Y1)のSP値との差の絶対値が1.5であった。
【0067】
<実施例5>
製造例8で得たウレタン樹脂形成性組成物(A5)1.0gをPPの保護シート(Y1)に100μmの厚みで延ばし、絶対湿度1.2g/m
3環境下(25℃、5%RH)で24時間静置し、湿気硬化させ(A5)の硬化物からなる外科用止血材基材(X5)とPPからなる保護シート(Y1)との積層体(5)を得た。外科用止血材基材(X5)の厚みは100μmであった。外科用止血材基材(X5)のSP値は9.6、保護シート(Y1)のSP値は7.9、(X5)のSP値と(Y1)のSP値との差の絶対値が1.7であった。
【0068】
<実施例6>
製造例4で得たウレタン樹脂形成性組成物(A1)1.0gをポリエチレン(以下においてPEと略記)の保護シート(Y2)(積水成型(株)製、「低密度PE」、SP値8.1)に100μmの厚みで延ばし、絶対湿度1.2g/m
3環境下(25℃、5%RH)で24時間静置し、湿気硬化させ(A1)の硬化物からなる外科用止血材基材(X1)とPEからなる保護シート(Y2)との積層体(6)を得た。外科用止血材基材(X1)の厚みは100μmであった。外科用止血材基材(X1)のSP値は9.5、保護シート(Y2)のSP値は8.1、(X1)のSP値と(Y2)のSP値との差の絶対値が1.4であった。
【0069】
<実施例7>
製造例4で得たウレタン樹脂形成性組成物(A1)1.0gをブチルゴムの保護シート(Y3)(クレハエラストマー(株)製、「VB260N」、SP値7.7)に100μmの厚みで延ばし、絶対湿度1.2g/m
3環境下(25℃、5%RH)で24時間静置し、湿気硬化させ(A1)の硬化物からなる外科用止血材基材(X1)とブチルゴムからなる保護シート(Y3)との積層体(7)を得た。外科用止血材基材(X1)の厚みは100μmであった。外科用止血材基材(X1)のSP値は9.5、保護シート(Y3)のSP値は7.7、(X1)のSP値と(Y3)のSP値との差の絶対値が1.8であった。
【0070】
<実施例8>
製造例4で得たウレタン樹脂形成性組成物(A1)1.0gをシリコーンゴムの保護シート(Y4)(三菱樹脂(株)製、「珪樹 CE3−300−5C」、SP値7.0)に100μmの厚みで延ばし、絶対湿度1.2g/m
3環境下(25℃、5%RH)で24時間静置し、湿気硬化させ(A1)の硬化物からなる外科用止血材基材(X1)とシリコーンゴムからなる保護シート(Y4)との積層体(7)を得た。外科用止血材基材(X1)の厚みは100μmであった。外科用止血材基材(X1)のSP値は9.5、保護シート(Y4)のSP値は7.0、(X1)のSP値と(Y4)のSP値との差の絶対値が2.5であった。
【0071】
<実施例9>
製造例4で得たウレタン樹脂形成性組成物(A1)1.0gをPPの保護シート(Y1)(東レ(株)製、「トレファンフィルム」、SP値7.9)に20μmの厚みで延ばし、絶対湿度20.4g/m
3環境下(28℃、75%RH)で24時間静置し、湿気硬化させ、(A1)の硬化物からなる外科用止血材基材(X6)とPPからなる保護シート(Y1)との積層体(1)を得た。外科用止血材基材(X6)の厚みは22μmであった。外科用止血材基材(X6)のSP値は9.5、保護シート(Y1)のSP値は7.9、(X6)のSP値と(Y1)のSP値との差の絶対値は1.6であった。
【0072】
<実施例10>
製造例4で得たウレタン樹脂形成性組成物(A1)1.0gをPPの保護シート(Y1)(東レ(株)製、「トレファンフィルム」、SP値7.9)に1000μmの厚みで延ばし、絶対湿度93.2g/m
3環境下(65℃、58%RH)で24時間静置し、湿気硬化させ、(A1)の硬化物からなる外科用止血材基材(X7)とPPからなる保護シート(Y1)との積層体(1)を得た。外科用止血材基材(X7)の厚みは1200μmであった。外科用止血材基材(X7)のSP値は9.5、保護シート(Y1)のSP値は7.9、(X7)のSP値と(Y1)のSP値との差の絶対値は1.6であった。
【0073】
<実施例11>
製造例4で得たウレタン樹脂形成性組成物(A1)1.0gをPPの保護シート(Y1)(東レ(株)製、「トレファンフィルム」、SP値7.9)に2800μmの厚みで延ばし、絶対湿度0.6g/m
3環境下(5℃、9%RH)で72時間静置し、湿気硬化させ、(A1)の硬化物からなる外科用止血材基材(X8)とPPからなる保護シート(Y1)との積層体(1)を得た。外科用止血材基材(X8)の厚みは2900μmであった。外科用止血材基材(X8)のSP値は9.5、保護シート(Y1)のSP値は7.9、(X8)のSP値と(Y1)のSP値との差の絶対値は1.6であった。
【0074】
<比較例1>
製造例9で得たウレタン樹脂形成性組成物(A6)1.0gをシリコーンゴムの保護シート(Y4)に100μmの厚みで延ばし、絶対湿度1.2g/m
3環境下(25℃、5%RH)で24時間静置し、湿気硬化させ(A6)の硬化物からなる外科用止血材基材(X9)とシリコーンゴムからなる保護シート(Y4)との積層体(1’)を得た。外科用止血材基材(X9)の厚みは100μmであった。外科用止血材基材(X9)のSP値は10.1、保護シート(Y4)のSP値は7.0、(X9)のSP値と(Y4)のSP値との差の絶対値が3.1であった。
【0075】
<比較例2>
製造例4で得たウレタン樹脂形成性組成物(A1)1.0gをポリテトラフルオロエチレン(以下においてPTFEと略記)の保護シート(Y5)(ニチアス製、「ナフロン」、SP値6.2)に100μmの厚みで延ばしたが、湿気硬化途中で油滴状に所々玉になって固まり、(A1)をシート状に成形することができず、積層体を作製することができなかった。
【0076】
<比較例3>
製造例4で得たウレタン樹脂形成性組成物(A1)1.0gをポリエチレンテレフタレート(以下においてPETと略記)の保護シート(Y6)(東レ(株)製、「ルミラー」、SP値10.7)に100μmの厚みで延ばし、絶対湿度1.2g/m
3環境下(25℃、5%RH)で24時間静置し、湿気硬化させ、(A1)の硬化物からなる外科用止血材基材(X1)とPETからなる保護シート(Y6)との積層体(3’)を得た。外科用止血材基材(X1)の厚みは、100μmであった。外科用止血材基材(X1)のSP値は9.5、保護シート(Y6)のSP値は10.7、(X1)のSP値と(Y6)のSP値との差の絶対値が1.2であった。
【0077】
<評価>
実施例1〜11及び比較例1〜3で得られた積層体について、以下の評価を行った。結果を表2に示す。
【0078】
(外観)
湿気硬化した硬化物について、被膜の外観を以下の評価方法で目視にて評価した。
<外観評価方法>
被膜中1cm
2あたりの直径1mm以上の気泡の数を、目視で計測。
起泡が多いと(上記評価で50個以上)、止血剤からの出血のリスクが生じるため好ましくない。
【0079】
(接着性試験及び剥離性試験)
実施例1〜11及び比較例1〜3で作製した積層体を横1cm×縦7cmに切断する。外科用止血基材X層から保護シートY層を縦方向に3.5cm剥離し、試験片とした。剥離したX層の端1cm及びY層1cmを、それぞれ引張試験機(オートグラフAGS−500D(株)島津製作所社製)に固定して、300mm/分の引張速度で引張り、以下の接着性及び剥離性の評価を行った。
<接着性の評価>
接着強度の最大値測定し、接着性を評価した。
接着強度が0.5kgf/cm
2以上であれば、科用止血基材X層が、ウレタン樹脂形成性組成物(A)硬化後も、保護シートY層と十分な接着力で接着できていることを示す。
【0080】
<剥離性の評価>
外科用止血材基材X層と保護シートY層との剥離性を、接着性試験後(即ち、外科用止血材基材X層と保護シートY層とが完全に剥離した後)、外科用止血基材(X)の破断の有無確認することで、以下の評価基準で評価した。
外科用止血基材(X)の破断なし・・・○
外科用止血基材(X)の破断あり・・・×
【0081】
(止血性試験)
<縫合モデル血管の作製>
ブタ血管とPTFE製の人工血管を3−0縫合糸(品名:プロリーン、ジョンソン・アンド・ジョンソン株式会社製)で外周を縫合することにより
図1に示す縫合モデル血管を作製した。
<止血判定>
この縫合モデル血管の両端を圧負荷試験装置(有限会社安久工機製)ラインに接続し(圧負荷試験装置の装置接続概略は
図2を参照)、ヘパリン化されたウマの血液を充液させた。圧負荷試験装置ラインの下流側を遮断し、周期1秒で120/60mmHg(16,000Pa/8,000Pa)の脈圧をかけ、縫合部から出血があることを確認した。一度縫合モデル血管内の血液を除き、縫合部及びその周辺に付着した血液を拭き取った。
1cm×5cmに裁断した実施例1〜11及び比較例1〜3の積層体のX層側に、医療用接着剤(B)として製造例4で作製したウレタン樹脂組成物(A1)を、50μmの厚みで伸ばした。その後、医療用接着剤(B)が存在する面を縫合部に貼付し、0.9重量%生理食塩水をかけ、指で外科用止血材全体を上から3分間押さえて硬化させた。
再度、ヘパリン化されたウマの血液を縫合モデル血管に充液させ、圧負荷試験装置ラインの下流側を遮断し、周期1秒で120/60mmHg(16,000Pa/8,000Pa)の脈圧をかけた。脈圧をかけてから、5分間観察し、その間、出血がないものを「止血」、出血があるものは「出血」とした。
【0082】
【表2】
【0083】
表1の結果から、外科用止血材基材のSP値と保護シートのSP値との差の絶対値が1.3〜3.0であることで、外科用止血材基材と保護シートとの接着性及び剥離性を両立することができることがわかる。