(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6726255
(24)【登録日】2020年6月30日
(45)【発行日】2020年7月22日
(54)【発明の名称】作業者選定システム、作業者選定方法及び作業者選定コンピュータ・プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/06 20120101AFI20200713BHJP
【FI】
G06Q10/06
【請求項の数】31
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2018-196660(P2018-196660)
(22)【出願日】2018年10月18日
(65)【公開番号】特開2020-64495(P2020-64495A)
(43)【公開日】2020年4月23日
【審査請求日】2020年1月9日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000316
【氏名又は名称】特許業務法人ピー・エス・ディ
(72)【発明者】
【氏名】矢野 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】▲徳▼岡 拓也
【審査官】
梅岡 信幸
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−178449(JP,A)
【文献】
特開2012−174098(JP,A)
【文献】
特開2018−045059(JP,A)
【文献】
特開2003−256619(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
設備における必要な作業に対応する作業者を複数の作業者の中から自動的に選定するための作業者選定システムであって、
設備における必要な作業に関する情報である作業情報と、複数の作業者の情報と各々の作業者が過去に行った作業に関する情報とを含む作業者情報と、前記作業に対応する前記複数の作業者の当該作業に対する作業スキルに関する情報である作業スキル情報とを格納した記憶部と、
対応が必要な作業の発生時に、前記作業情報と、前記作業者情報と、前記作業スキル情報とを前記記憶部から取得し、複数の作業者間の当該作業に対する作業スキルのばらつきの大きさを求める、作業スキルばらつき算定部と、
前記ばらつきの大きさが所定の基準以上の場合には前記作業スキルの最も低い作業者を抽出し、前記ばらつきの大きさが所定の基準より小さい場合には前記作業スキルの最も高い作業者を抽出する、作業スキル判定部と、
抽出された前記作業者を前記作業への対応作業者として選定し、該対応作業者の作業者情報を出力する、作業者選定部と、
前記作業者選定部によって選定された前記対応作業者が対応した作業の結果に基づいて、前記記憶部の前記作業情報、前記作業者情報、及び前記作業スキル情報のいずれか又はこれらの組み合わせを更新する情報更新部と
を有することを特徴とする作業者選定システム。
【請求項2】
前記記憶部は、設備によって生産される物品の生産関連情報を格納しており、
前記生産関連情報を前記記憶部から取得し、前記作業を行うために設備の稼働を停止しても生産計画を達成することができる許容時間を算出する作業許容時間算出部と、
前記作業スキル判定部によって抽出された前記作業者が、前記許容時間内に当該作業を完了することができるかどうかを判定する、作業完了可能性判定部と、
をさらに有し、
前記作業完了可能性判定部によって前記作業者が当該作業を完了することができると判定された場合には、前記作業者選定部は、前記作業者を前記対応作業者として選定する、
請求項1に記載の作業者選定システム。
【請求項3】
前記作業スキル判定部によって抽出された前記作業者について、前記作業者の前記作業における過去の作業スキルの変化を求め、その変化に基いて作業スキルの向上可能性を判定する、作業スキル向上可能性判定部をさらに有し、
前記作業者選定部は、前記作業スキル向上可能性判定部によって前記作業者の作業スキル向上が可能であると判定された場合には、前記作業者を前記対応作業者として選定する
請求項1に記載の作業者選定システム。
【請求項4】
前記記憶部は、設備によって生産される物品の生産関連情報を格納しており、
前記生産関連情報を前記記憶部から取得し、前記作業を行うために設備の稼働を停止しても生産計画を達成することができる許容時間を算出する作業許容時間算出部と、
前記作業スキル判定部によって抽出された前記作業者が、前記許容時間内に当該作業を完了することができるかどうかを判定する、作業完了可能性判定部と、
前記作業スキル判定部によって抽出された前記作業者について、前記作業者の前記作業に対する過去の作業スキルの変化を求め、その変化に基いて作業スキルの向上可能性を判定する、作業スキル向上可能性判定部と
をさらに有し、
前記作業者選定部は、前記作業完了可能性判定部によって前記作業者が当該作業を完了することができると判定され、かつ、前記作業スキル向上可能性判定部によって前記作業者の作業スキル向上が可能であると判定された場合には、前記作業者を前記対応作業者として選定する、
請求項1に記載の作業者選定システム。
【請求項5】
前記作業スキル判定部によって前記作業スキルの最も低い作業者が抽出され、当該作業者が、前記作業完了可能性判定部よって前記作業を完了することができないと判定された場合には、前記作業スキル判定部は、前記複数の作業者のうち当該作業者を除く他の作業者の中で前記作業スキルの最も低い作業者を抽出する
請求項2に記載の作業者選定システム。
【請求項6】
前記作業スキル判定部によって前記作業スキルの最も低い作業者が抽出され、当該作業者が、前記作業スキル向上可能性判定部によって作業スキル向上が可能ではないと判定された場合には、前記作業スキル判定部は、前記複数の作業者のうち当該作業者を除く他の作業者の中で前記作業スキルの最も低い作業者を抽出する、
請求項4に記載の作業者選定システム。
【請求項7】
前記作業スキル判定部が、前記複数の作業者のうち当該作業者を除く他の作業者を抽出できない場合には、前記作業者選定部は、前記複数の作業者の中から、過去において当該作業に対応した際に要した時間のうち最短の作業時間が最も短い作業者を選定する、請求項5又は請求項6に記載の作業者選定システム。
【請求項8】
前記作業スキル判定部によって前記作業スキルの最も低い作業者が抽出され、当該作業者が、前記作業スキル向上可能性判定部によって作業スキル向上が可能ではないと判定された場合には、前記作業スキル判定部は、前記複数の作業者のうち当該作業者を除く他の作業者の中で前記作業スキルの最も低い作業者を抽出する
請求項3に記載の作業者選定システム。
【請求項9】
前記作業スキル判定部が、前記複数の作業者のうち当該作業者を除く他の作業者を抽出できない場合には、前記作業者選定部は、前記複数の作業者のうち前記作業スキルの最も高い作業者を選定する、
請求項8に記載の作業者選定システム。
【請求項10】
前記作業スキル判定部によって前記作業スキルの最も高い作業者が抽出され、当該作業者が、前記作業完了可能性判定部よって前記作業を完了することができないと判定された場合には、前記作業スキル判定部は、前記複数の作業者のうち当該作業者を除く他の作業者の中で前記作業スキルの最も高い作業者を抽出する、
請求項2に記載の作業者選定システム。
【請求項11】
前記作業スキル判定部によって前記作業スキルの最も高い作業者が抽出され、当該作業者が、前記作業スキル向上可能性判定部によって作業スキル向上が可能ではないと判定された場合には、前記作業スキル判定部は、前記複数の作業者のうち当該作業者を除く他の作業者の中で前記作業スキルの最も高い作業者を抽出する、
請求項4に記載の作業者選定システム。
【請求項12】
前記作業スキル判定部が、前記複数の作業者のうち当該作業者を除く他の作業者を抽出できない場合には、前記作業者選定部は、前記複数の作業者の中から、過去において当該作業に対応した際に要した時間のうち最短の作業時間が最も短い作業者を選定する、請求項10又は請求項11に記載の作業者選定システム。
【請求項13】
前記作業スキル判定部によって前記作業スキルの最も高い作業者が抽出され、当該作業者が、前記作業スキル向上可能性判定部によって作業スキル向上が可能ではないと判定された場合には、前記作業スキル判定部は、前記複数の作業者のうち当該作業者を除く他の作業者の中で前記作業スキルの最も高い作業者を抽出する、
請求項3に記載の作業者選定システム。
【請求項14】
前記作業スキル判定部が、前記複数の作業者のうち当該作業者を除く他の作業者を抽出できない場合には、前記作業者選定部は、前記複数の作業者のうち前記作業スキルの最も高い作業者を選定する、
請求項13に記載の作業者選定システム。
【請求項15】
前記複数の作業者の中に前記作業を行った経験のない作業者がいるかどうかを判定し、当該作業者がいる場合にはその作業者に前記作業に対する仮作業スキルを設定する、作業未経験者判定部をさらに含む、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の作業者選定システム。
【請求項16】
設備における必要な作業に対応する作業者を複数の作業者の中から自動的に選定するための作業者選定方法であって、
対応が必要な作業が発生したときに、設備における必要な作業に関する情報である作業情報と、複数の作業者の情報とその作業者が過去に行った作業の情報とを含む作業者情報と、前記複数の作業者の当該作業に対する作業スキルに関する情報である作業スキル情報とを取得し、作業スキルのばらつきの大きさを求める、作業スキルばらつき算定ステップと、
前記ばらつきの大きさが所定の基準以上の場合には前記作業スキルの最も低い作業者を抽出し、前記ばらつきの大きさが所定の基準より小さい場合には前記作業スキルの最も高い作業者を抽出する、作業スキル判定ステップと、
抽出された前記作業者を前記作業への対応作業者として選定し、該対応作業者の作業者情報を出力する、作業者選定ステップと、
前記作業者選定ステップによって選定された前記対応作業者が対応した作業の結果に基づいて、前記作業情報、前記作業者情報、及び前記作業スキル情報のいずれか又はこれらの組み合わせを更新する情報更新ステップと
を含むことを特徴とする作業者選定方法。
【請求項17】
設備によって生産される物品の生産関連情報を取得し、該生産関連情報を用いて、前記作業を行うために設備の稼働を停止しても生産計画を達成することができる許容時間を算出する許容時間算出ステップと、
前記作業スキル判定ステップにおいて抽出された前記作業者が、前記許容時間内に当該作業を完了することができるかどうかを判定する、作業完了可能性判定ステップと、
をさらに含み、
前記作業完了可能性判定ステップにおいて前記作業者が当該作業を完了することができると判定された場合には、前記作業者選定ステップにおいて、前記作業者を前記対応作業者として選定する、
請求項16に記載の作業者選定方法。
【請求項18】
前記作業スキル判定ステップにおいて抽出された前記作業者について、前記作業者の前記作業に対する過去の作業スキルの変化を求め、その変化に基いて作業スキルの向上可能性を判定する、作業スキル向上可能性判定ステップをさらに含み、
前記作業スキル向上可能性判定ステップにおいて前記作業者の作業スキル向上が可能であると判定された場合には、前記作業者選定ステップにおいて、前記作業者を前記対応作業者として選定する
請求項16に記載の作業者選定方法。
【請求項19】
設備によって生産される物品の生産関連情報を取得し、該生産関連情報を用いて、前記作業を行うために設備の稼働を停止しても生産計画を達成することができる許容時間を算出する許容時間算出ステップと、
前記作業スキル判定ステップにおいて抽出された前記作業者が、前記許容時間内に当該作業を完了することができるかどうかを判定する、作業完了可能性判定ステップと、
前記作業スキル判定ステップにおいて抽出された前記作業者について、前記作業者の前記作業に対する過去の作業スキルの変遷情報に基いて作業スキルの向上可能性を判定する、作業スキル向上可能性判定ステップと
をさらに含み、
前記作業完了可能性判定ステップにおいて前記作業者が当該作業を完了することができると判定され、かつ、前記作業スキル向上可能性判定ステップにおいて前記作業者の作業スキル向上が可能であると判定された場合には、前記作業者選定ステップにおいて、前記作業者を前記対応作業者として選定する、
請求項16に記載の作業者選定方法。
【請求項20】
前記作業スキル判定ステップにおいて前記作業スキルの最も低い作業者が抽出され、当該作業者が、前記作業完了可能性判定ステップにおいて前記作業を完了することができないと判定された場合には、前記作業スキル判定ステップにおいて、前記複数の作業者のうち当該作業者を除く他の作業者のうち前記作業スキルの最も低い作業者を抽出する、
請求項17に記載の作業者選定方法。
【請求項21】
前記作業スキル判定ステップにおいて前記作業スキルの最も低い作業者が抽出され、当該作業者が、前記作業スキル向上可能性判定ステップにおいて作業スキル向上が可能ではないと判定された場合には、前記作業スキル判定ステップにおいて、前記複数の作業者のうち当該作業者を除く他の作業者のうち前記作業スキルの最も低い作業者を抽出する、
請求項19に記載の作業者選定方法。
【請求項22】
前記作業スキル判定ステップにおいて前記複数の作業者のうち当該作業者を除く他の作業者を抽出できない場合には、前記作業者選定ステップにおいて、前記複数の作業者の中から、過去において当該作業に対応した際に要した時間のうち最短の作業時間が最も短い作業者を選定する、請求項20又は請求項21に記載の作業者選定方法。
【請求項23】
前記作業スキル判定ステップにおいて前記作業スキルの最も低い作業者が抽出され、当該作業者が、前記作業スキル向上可能性判定ステップにおいて作業スキル向上が可能ではないと判定された場合には、前記作業スキル判定ステップにおいて、前記複数の作業者のうち当該作業者を除く他の作業者のうち前記作業スキルの最も低い作業者を抽出する
請求項18に記載の作業者選定方法。
【請求項24】
前記作業スキル判定ステップにおいて前記複数の作業者のうち当該作業者を除く他の作業者を抽出できない場合には、前記作業者選定ステップにおいて、前記複数の作業者のうち前記作業スキルの最も高い作業者を選定する、
請求項23に記載の作業者選定方法。
【請求項25】
前記作業スキル判定ステップにおいて前記作業スキルの最も高い作業者が抽出され、当該作業者が、前記作業完了可能性判定ステップにおいて前記作業を完了することができないと判定された場合には、前記作業スキル判定ステップにおいて、前記複数の作業者のうち当該作業者を除く他の作業者のうち前記作業スキルの最も高い作業者を抽出する、
請求項17に記載の作業者選定方法。
【請求項26】
前記作業スキル判定ステップにおいて前記作業スキルの最も高い作業者が抽出され、当該作業者が、前記作業スキル向上可能性判定ステップにおいて作業スキル向上が可能ではないと判定された場合には、前記作業スキル判定ステップにおいて、前記複数の作業者のうち当該作業者を除く他の作業者のうち前記作業スキルの最も高い作業者を抽出する、
請求項19に記載の作業者選定方法。
【請求項27】
前記作業スキル判定ステップにおいて前記複数の作業者のうち当該作業者を除く他の作業者を抽出できない場合には、前記作業者選定ステップにおいて、前記複数の作業者の中から、過去において当該作業に対応した際に要した時間のうち最短の作業時間が最も短い作業者を選定する、請求項25又は請求項26に記載の作業者選定方法。
【請求項28】
前記作業スキル判定ステップにおいて前記作業スキルの最も高い作業者が抽出され、当該作業者が、前記作業スキル向上可能性判定ステップにおいて作業スキル向上が可能ではないと判定された場合には、前記作業スキル判定ステップにおいて、前記複数の作業者のうち当該作業者を除く他の作業者のうち前記作業スキルの最も高い作業者を抽出する、
請求項18に記載の作業者選定方法。
【請求項29】
前記作業スキル判定ステップにおいて前記複数の作業者のうち当該作業者を除く他の作業者を抽出できない場合には、前記作業者選定ステップにおいて、前記複数の作業者のうち前記作業スキルの最も高い作業者を選定する、
請求項28に記載の作業者選定方法。
【請求項30】
前記複数の作業者の中に前記作業を行った経験のない作業者がいるかどうかを判定し、当該作業者がいる場合にはその作業者に前記作業に対する仮作業スキルを設定する、作業未経験者判定ステップをさらに含む、請求項16から請求項19までのいずれか1項に記載の作業者選定方法。
【請求項31】
コンピュータ・システム上で実行可能なコンピュータ・プログラムであって、請求項16から請求項30までのいずれか1項に記載の方法のステップを前記コンピュータ・システムに実行させるための命令を含む、コンピュータ・プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設備における必要な作業に対応する作業者を自動的に選定するためのシステムに関し、より具体的には、複数の作業者の作業スキル情報に基づいて当該作業に対応すべき作業者を自動的に選定する作業者選定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
物品の生産設備においては、設備の運転時に、対応を必要とする種々の作業が発生する場合がある。対応を必要とする作業として、物品の生産を停止することなく行うことができる作業だけでなく、生産を停止しなければ行うことができない作業がある。対応を必要とする作業が発生した場合には、その作業の発生箇所を探索し、発生原因を調査し、作業を行うための対策を講じなければならない。対応を必要とする作業の中でも、物品の生産を停止しなければならない作業、例えば設備に生じたトラブルを解決するための作業や材料の交換及び補充のための作業などが発生した場合に、作業終了までの時間が長いと、物品の生産が計画どおりに行われず、必要な期日までに必要な量及び質の物品を生産できなくなったり、生産計画を達成するために設備及び作業者の稼働に無理が生じたりするおそれがある。
【0003】
物品の生産設備においては、複数の作業者がチームを組んで設備の運転を行うことが多い。複数の作業者からなるチームにおいては、通常、設備の運転に必要となる作業について高いスキルを有するベテラン作業者から、経験の乏しい低スキルの新人作業者までが、バランスよく配置される。同じ作業でも、ベテラン作業者であれば短時間かつ高精度で終えることができるものであっても、新人作業者の場合には時間がかかったり精度が低い作業結果となったりする場合が多い。また、同じ作業者でも、習熟している作業もあれば、経験の乏しい作業もある。設備において対応を要する作業が発生した場合に、その作業に対応させる作業者は、種々の状況を勘案して選定される。例えば、短時間で対応可能となるような簡単な作業であれば、新人作業者やその作業に対するスキルの低い作業者に対応させ、長時間の対応が必要な難しい作業には、その作業に対するスキルの高いベテラン作業者に対応させるといった対応が考えられる。
【0004】
設備において対応すべき何らかの作業が必要となった場合に、当該作業に対応させる作業者を自動的に選定するとともに、作業者に適正な教育を施すという観点で提案された技術として、特許文献1〜特許文献4に開示されたものがある。
特許文献1は、生産ラインの計画にあたり、作業者を短期間で教育し、適正な技能レベルを持った作業者を適正にラインに配置できるようにするための作業者教育システムに関する。このシステムでは、生産ラインの作業工程ごとに標準化された習熟度を示すスキルに基づいて、適正な技能レベルを持った作業者を検索し、ラインに配置するともに、各作業者の技能ランクを判定して必要なときにトレーニングを実施することができる。トレーニングは、作業者自身が自己学習できる教育ツールやシステムによって提供されたスケジュールに基づいて行われる。
【0005】
特許文献2は、作業者のスキルレベル、作業工程への作業者の配置状況、作業者の教育実績をリアルタイムに反映させ、これらのデータを一元的に把握できるようにすることにより、生産効率の向上や、作業者の育成計画支援を行うことができる支援システムに関する。このシステムでは、製造実績及び教育実績から作業者のスキルレベルが評価され、スキルレベルを考慮して人員配置が行われる。システムは、スキルレベルに達していない作業者がいれば抽出し、当該作業者の教育計画を作成する。低スキルの作業者に対する教育は、作業工程に割り当てられない非稼働時間行われるように計画される。
【0006】
特許文献3は、製品の製造ラインにおいて、適切な作業者を自動的に抽出して作業を行わせることができるようにするとともに、作業者に対して適切な時期に適切な教育を受けさせることにより作業者のスキル向上を図るシステムに関する。このシステムでは、新たな作業が行われるときに、作業者が作業に従事したときの正確性及び速度のいずれか一方を含む処理レベルと、作業者が受験した試験の成績レベルとに基づいて、作業に従事すべき適切なスキルを持つ作業者を抽出することができる。
【0007】
特許文献4は、保守作業やエンジニアリング業務などのプロジェクト実行計画の作成にあたり、作業者のスキルの変化を考慮して、プロジェクトへの作業者割り当てを行うことができるようにするシステムに関する。このシステムでは、プロジェクトを構成するワークフローの各ワークに対して作業者のスキルレベルに応じた標準推定作業時間と、すでに実施された各ワークの担当作業者の実作業時間とに基づいて、作業者の現在のスキルレベルを算出及び更新し、各ワークに割り当てられた作業者の更新されたスキルレベルに基づいて、各ワークの推定作業時間を算出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−279019号公報
【特許文献2】特開2010−244176号公報
【特許文献3】特開2013−254241号公報
【特許文献4】特開2016−194736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1〜4に提案されるような考え方に基づいて構築されたシステムは、設備において対応を必要とする作業が発生した場合に、各作業者のスキルに基づいて当該作業を適切に行うことができる作業者を自動的に選定することができるようにするものである。しかし、作業発生時にこれらのシステムによって作業者を選定すると、例えば、簡単な作業に対しては常に新人作業員が割り当てられ、困難な作業には常にベテラン作業員が割り当てられることになり、このような割り当てが続けられると、新人作業員の作業スキルの早期向上が難しいという問題がある。また、設備の運転は、一般に、複数の作業者がチームを組んで行われることが多いが、低スキル作業者のスキルが向上しなければチーム全体としての設備運転スキルの向上が望めず、ひいては物品生産のさらなる効率化が難しくなる。
【0010】
さらに、特許文献1〜3に提案されるシステムでは、作業者のスキルを向上させるための教育に関しても考慮されているものの、いずれの技術においても、当該作業に対するスキルが低い作業者に当該作業を実際に経験させることによってスキルを向上させるという考え方を採用するものではない。これらのシステムにおいて実現される作業者教育は、設備の運転とは別に行われ、その教育の結果として技能レベルが向上した作業員が、その技能レベルに応じた作業に対応できるようにするものである。したがって、実際の設備運転時に発生する難しい作業に対しても新人作業員が対応する機会を設けることによって、より実際の状況に即した効率的な教育が行われるようにすることが望ましい。
【0011】
上記の課題を解決するため、本発明は、低スキル作業者のスキルを早期に向上させることができるようにするとともに、設備の運用に関わる複数の作業員からなるチーム全体のスキルの向上も可能となる、設備における作業者自動選定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の態様においては、設備における必要な作業に対応する作業者を複数の作業者の中から自動的に選定するための作業者選定システムを提供する。作業者選定システムは、設備における必要な作業に関する情報である作業情報と、複数の作業者の情報と各々の作業者が過去に行った作業に関する情報とを含む作業者情報と、作業に対応する複数の作業者の当該作業に対する作業スキルに関する情報である作業スキル情報とを格納した記憶部とを備える。記憶部は、設備によって生産される物品の生産関連情報を格納することもできる。
【0013】
作業者選定システムは、作業スキルばらつき算定部と、作業スキル判定部と、作業者選定部と、情報更新部とを備える。作業スキルばらつき算定部は、対応が必要な作業の発生時に、作業情報と、作業者情報と、作業スキル情報とを記憶部から取得し、複数の作業者間の当該作業に対する作業スキルのばらつきの大きさを求める。作業スキル判定部は、ばらつきの大きさが所定の基準以上の場合には作業スキルの最も低い作業者を抽出し、ばらつきの大きさが所定の基準より小さい場合には作業スキルの最も高い作業者を抽出する。作業者選定部は、抽出された作業者を作業への対応作業者として選定し、該対応作業者の作業者情報を出力する。情報更新部は、作業者選定部によって選定された対応作業者が対応した作業の結果に基づいて、記憶部の作業情報、作業者情報、及び作業者スキル情報のいずれか又はこれらの組み合わせを更新する。
【0014】
一実施形態においては、作業者選定システムは、生産関連情報を記憶部から取得し、作業を行うために設備の稼働を停止しても生産計画を達成することができる許容時間を算出する作業許容時間算出部と、作業スキル判定部によって抽出された作業者が、許容時間内に当該作業を完了することができるかどうかを判定する、作業完了可能性判定部とを備えるものとすることもできる。さらに、作業者選定システムは、作業スキル判定部によって抽出された作業者について、作業者の当該作業に対する過去の作業スキルの変化を求め、その変化に基づいて作業スキルの向上可能性を判定する作業スキル向上可能性判定部をさらに備えるものとすることもできる。さらに、作業者選定システムは、複数の作業者の中に当該作業を行った経験のない作業者がいるかどうかを判定し、当該作業者がいる場合にはその作業者に当該作業に対する仮作業スキルを設定する、作業未経験者判定部をさらに含むものとすることもできる。
【0015】
本発明の第2の態様においては、設備における必要な作業に対応する作業者を複数の作業者の中から自動的に選定するための作業者選定方法を提供する。また、本発明の第3の態様においては、作業者選定方法の各ステップをコンピュータ・システムに実行させるための命令を含む、コンピュータ・システム上で実行可能なコンピュータ・プログラムを提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、設備において必要となる種々の作業について、低スキル者の作業スキルを早期に向上させることができるだけでなく、高スキル者も作業スキルをさらに向上させることができる。また、設備の運転に当たる複数の作業者からなる作業チーム全体としての作業スキルを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態による作業者選定システムの概略的な構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の一実施形態による作業者選定システムの概略的なハードウェア構成例を示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態による作業者選定処理を示す処理フローである。
【
図4】作業の分類判断において用いられる、設備における必要な作業に関する作業情報の例を示す。
【
図5】技能レベル値を重み付けして合計した値を作業スキルとする例を示す。
【
図6】複数の作業者間の作業スキルのばらつきの例を示す。
【
図7】作業スキルのばらつきの大きさに応じて低スキル作業者及び高スキル作業者のいずれか一方を選定するパターンの例を示す。
【
図8】
図3の処理フローに示される作業者選定処理において、さらに作業の許容時間を考慮した場合の処理フローである。
【
図10】
図3の処理フローに示される作業者選定処理において、さらに作業者の作業スキル向上の可能性を考慮した場合の処理フローである。
【
図11】
図3の処理フローに示される作業者選定処理において、作業の許容時間と作業者の作業スキル向上の可能性とをいずれも考慮した場合の処理フローである。
【
図12】
図11の処理フローに示される作業者選定処理を実行した場合の作業スキル向上の具体例である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明に係る作業者選定システムの実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態による作業者選定システム100の概略的な構成を示すブロック図である。作業者選定システム100は、設備Pにおいて対応が必要な作業が発生したことの通知(作業発生通知)を受けて、その作業に対応すべき作業者の情報(対応作業者情報)を出力することができるものであり、作業発生通知の情報に基づいて種々の判断や計算等を実行する機能部と、当該機能を実行するために用いられる各種の情報を記憶する記憶部とを含む。
【0020】
作業者選定システム100は、作業情報記憶部102、作業者情報記憶部104、作業スキル情報記憶部106及び生産関連情報記憶部108を含む。作業情報記憶部102には、設備における必要な作業に関する情報が格納されている。作業者情報記憶部104には、作業者の情報とその作業者の過去の作業に関する情報とが格納されている。作業スキル情報記憶部106には、設備において発生する作業に対応する各作業者の作業スキルに関する情報が格納されている。生産関連情報記憶部108には、設備によって生産される物品の生産関連情報が格納されている。
【0021】
それぞれの記憶部に格納される情報について、作業情報、作業者情報、作業スキル情報、及び生産関連情報は、それぞれが物理的にまとまったものである必要はない。例えば、作業スキル情報に相当するデータと作業者情報の相当するデータとが混在した状態で、いずれかのハードウェアに一括して格納されていることに限定されず、これらのデータが複数のハードウェアに分散した状態で格納されていてもよく、その場合には、作業スキル情報以外の作業者情報に相当するデータが記憶されている領域が作業者情報記憶部104に該当し、作業スキル情報に相当するデータが記憶されている領域が作業スキル情報記憶部106に該当する。
【0022】
作業情報記憶部102に記憶される作業情報は、設備における必要な作業に関する情報であり、例えば
図4に示されるような情報とすることができる。
図4に示される情報は、例えば、設備の状態と、その状態が生じる原因、設備の状態に対応するための必要な作業を判断する根拠、必要な作業の内容、作業に要する時間、作業を行うタイミングなどが含まれるテーブルである。
【0023】
作業者情報記憶部104に記憶される作業者情報は、設備における必要な作業に従事することができる作業者の情報と、その作業者の過去の作業に関する情報とを含む。作業者情報は、例えば、作業者の氏名、ID番号、所属部署などに加えて、当該作業者が過去に行った作業の内容とその作業への対応に要した時間、作業を行った日時、行った作業の結果などが含まれる。
【0024】
作業スキル情報記憶部106に記憶される作業スキル情報は、設備において発生する作業に対応する各作業者の作業スキルに関する情報を含む。作業スキルの例は後述される。
【0025】
生産関連情報記憶部108に記憶される物品の生産関連情報は、例えば、装置の生産能力、物品の生産計画(生産量、生産日数、生産締日、生産安全度、生産余裕度など)、物品の生産実績などとすることができる。
【0026】
作業者選定システム100は、設備Pの各部分の状態を監視するセンサなどによるセンシングデータを記憶するセンシングデータ記憶部109をさらに含むことが好ましい。センシングデータは、例えば、作業情報とともに用いられて、必要な作業を判断するためのデータとして利用することができる。
【0027】
作業者選定システム100は、
図1に示されるように、作業分類部110、作業未経験者判定部112、作業スキルばらつき算定部114、作業スキル判定部116、作業許容時間算出部118、作業完了可能性判定部120、作業スキル向上可能性判定部122、作業者選定部124、及び情報更新部126を含むものとすることができる。各機能部110〜126の機能は、以下に順次説明する。
【0028】
記憶部102〜109は、1つのハードウェア・データベースとして構成されても、分散型データベースとして構成されてもよい。同様に、作業者選定システム100の各機能部110〜126は、1つのコンピュータ・ハードウェア内に構築されていてもよく、分散された複数のコンピュータ・ハードウェア内に構築され、それぞれのコンピュータ・ハードウェアが協働することにより各部の機能を発揮するように構成されてもよい。
【0029】
作業者選定システム100は、例えば、RTP方式の装置において、装置の運転の際に必要な作業に対応する作業者を自動的に選定するために用いることができる。RTP方式は、液晶表示装置などの製造工程において、帯状の離型フィルム上に粘着剤層を介して複数のシート状光学フィルムが支持された帯状光学フィルム積層体から、欠点の存在しない正常なシート状機能フィルムのみを粘着剤層と共に離型フィルムから順次剥離し、粘着剤層を介して矩形パネルと貼り合わせることによって、液晶表示装置を連続的に製造する方式である。こうした方式を実現する液晶表示装置の連続製造システムは、予め切り出された光学フィルムのシートを矩形パネルに貼り合わせる従来の個別貼り方式を実現する装置と区別して、「連続貼り(RTP;ロール・ツー・パネル)」装置といわれる。
【0030】
図2は、本発明の一実施形態による作業者選定システム100の例示的なコンピュータ・ハードウェア構成を示す。作業者選定システム100は、中央処理装置(CPU)と、中央処理装置が実行する各種のプログラムやデータなどを格納するRAM、ROM、ハードディスクドライブ(HDD)などの記憶装置と、これらの装置を互いに接続するバスとを有する汎用コンピュータを用いて実現することができる。さらに、作業者選定システム100には、必要に応じて、CD−ROM又はDVD−ROMなどの外部記録媒体との間でデータの入出力を行うドライブ装置と、キーボード又はマウスなどの入力装置と、CRT、液晶ディスプレイ又はプリンタなどの出力装置と、他のコンピュータ又はネットワークと通信するための通信インターフェースとを接続するようにしてもよい。
【0031】
図3は、作業者選定システム100において、作業を行う作業者を選定するために実行される処理フロー300を示す。例えばRTP装置などの設備Pにおいて、作業を必要とする何らかの事象が発生したとき、設備Pは、作業者選定システム100に対して、対応すべき事象が発生したことを通知する(S301)。設備Pにおいて対応すべき事象が発生したことは、例えば、設備Pの複数箇所に取り付けられたセンサなどの各種の計測機器において検出することができる。例えば、RTP装置において、液晶パネルに光学フィルムを貼り合わせる工程で、光学フィルムの貼合位置の精度が悪化した場合には、装置の運転を停止した上で、作業者が状況を探り、必要に応じて例えば貼合パラメータの修正やフィードローラの交換等を行わなければならない。このような場合には、貼合位置検出システムが異常を検知し、例えば異常情報を一元的に収集する機能を有する情報処理端末から、作業者選定システム100に対して、貼合精度が悪化したしたことが通知される。
【0032】
対応すべき事象が発生したことが通知されると、作業者選定システム100は、通知された情報に基づいて、当該事象に関連する作業の作業情報を、設備における必要な作業に関する情報が格納された作業情報記憶部102から取得する。作業情報の例は
図4に示したとおりである。作業者選定システム100の作業分類部110は、取得した作業情報に基づいて、作業の分類判断を行い、対応すべき作業内容を特定する(S302)。
【0033】
例えば、貼合精度が悪化したことが通知されると、作業者選定システム100は、作業情報記憶部120から、当該状態が生じる原因、必要な作業を判断するための根拠、必要な作業、作業に要する時間、作業を行うタイミングなどの情報を取得する。作業分類部110は、これらの情報と設備Pの各部分からのセンシングデータとに基づいて、精度劣化の原因が貼合ローラの劣化であり、貼合ローラの交換が一定期間行われていない場合には、必要な作業が「貼合ローラの交換」であることを特定する。作業分類部110は、必要に応じて、作業に要する時間や作業を行うべきタイミングについても特定することができる。
【0034】
なお、対象作業の分類判断は、作業者選定システム100によって、例えば予め定められた異常コードや
図4に示されるデータなどを用いることにより自動的に行われることが望ましいが、例えば貼合精度劣化が通知されたときに、その原因を、各種センシングデータや過去の経験、作業マニュアル等に基づいて作業者が判断し、必要な作業を特定し、特定された作業内容を入力部から作業者選定システム100に与えることによって行うこともできる。また、例えば異常コードなどが設定されていない事象が発生した場合に、作業者選定システム100が、作業情報記憶部120に格納された情報から類推して作業内容を決定するようにしてもよい。
【0035】
次に、対応すべき作業が特定されると、作業者選定システム100は、設備Pの運転に関わっており、当該作業に対応可能な複数の作業者について、作業者の情報とその作業者が過去に行った作業に関する情報とを含む作業者情報を、これらの情報が格納された作業者情報記憶部104から取得する。作業者選定システム100は、作業者情報を取得すると、作業未経験者判定部112において、S302で特定された作業について未経験者がいるかどうか判定する(S303)。未経験者がいない場合には、作業者選定システム100は、次に、複数の作業者の作業者情報に基づいて、当該作業に対応する作業スキルに関する情報である作業スキル情報を、この情報が格納された作業スキル情報記憶部106から取得する。
【0036】
作業スキルは、設備に関する何らかの作業が必要であるときに、当該設備において当該作業を遂行する作業員の作業遂行能力である。作業スキルを表す指標は、作業者が当該作業を遂行する能力を表すことができるものであれば特に限定されるものではなく、種々の指標が考えられる。作業スキルは、定量的な指標であることが望ましいが、定性的な指標であってもよい。作業スキルとして定性的な指標が用いられる場合は、その指標をなんらかの数値に換算した値をシステムが自動的に利用できるようにされていることが好ましい。本発明による作業者選定システム100においては、個々の作業者の作業遂行能力を表す定量的な数値を、作業スキルとして利用することが好ましい。
【0037】
作業スキルとして、例えば、過去において当該作業に対応した際に作業に要した時間の平均値、過去において当該作業に対応した際に要した時間のうち最短の作業時間、過去に当該作業を行った回数、当該作業を行う際の移動距離・移動時間などの数値を用いることができる。後述される
図7には、過去において当該作業に対応した際に要した時間のうち最短の作業時間を作業スキルとする例を示す。
【0038】
あるいは、作業スキルとして、過去において当該作業を行った結果の精度や、別途定められた技能レベルに基づいて算出された値を用いることもできる。
図5は、技能レベル値を重み付けして合計した値を作業スキルとする例を示す。
図5は、個々の作業に関して各作業者に対する別途の評価(例えば、作業練磨表など)に基づいて付与された技能レベル値を用い、対応を要するとして特定された作業を行うのに必要な技能の組み合わせから、それぞれの技能レベル値を重み付けして合計又は平均した値を、作業スキルとして用いるものである。
図5の例では、例えばNo.3の作業が発生した場合に、作業錬磨表の「RTP基礎」及び「品質異常処置」の項目におけるウェイトに基づいて、各作業者のスキルを算出する。作業者A、作業者B、作業者C及び作業者Dの作業スキル値は、それぞれ、2.4、3.3、1.9及び1.0となる。したがって、最もスキルが高い作業者は作業者Bであり、最もスキルが低い作業者は作業者Dである。
【0039】
本明細書の以下の説明においては、各々の作業者が過去において当該作業に対応した際に要した作業時間のうち最短の作業時間を作業スキルとして用いる場合を例として説明する。
図3に戻ると、S303において未経験者がいないと判定され、複数の作業者の作業スキル情報を取得した後、作業者選定システム100は、作業スキルばらつき算定部114において、複数の作業者間における作業スキルのばらつきの大きさを求める(S305)。なお、S303において未経験者がいると判定された場合の処理(S304)については後述する。
【0040】
図6は、複数の作業者間における作業スキルのばらつきの大きさを計算する場合の例である。例えば、作業者A〜作業者Eが当該作業に対応可能な作業者である場合に、作業スキルばらつき算定部114は、すべての作業者の過去の当該作業における最短作業時間を取得する。取得した最短作業時間のうち最短時間(
図6の(1))と最長時間(同(2))との差(同(3))を求め、その差を最短作業時間で割る(同(4))ことによって、当該作業における作業者A〜作業者Eの作業スキルのばらつきの大きさを求める。
図6の例の場合では、作業スキルのばらつきの大きさは「2.0」と計算される。
【0041】
次に、作業者選定システム100の作業スキル判定部116は、作業スキルばらつき算定部114において算定されたばらつきの大きさと、ばらつきの大きさに関する所定の基準値とを比較する(S306)。作業スキルのばらつきの大きさが所定の基準以上であると判定された場合には、作業スキル判定部116は、作業スキルの最も低い作業者を抽出する(S306のYes)。一方、作業スキルのばらつきの大きさが所定の基準より小さいと判定された場合には、作業スキル判定部116は、作業スキルの最も高い作業者を抽出する(S306のNo)。
【0042】
図7は、作業スキルのばらつきの大きさに応じて、低スキル作業者及び高スキル作業者のいずれか一方が選択されるパターンの例を示す。
図7(a)及び(b)は、対応すべき作業が簡単な作業の場合の例であり、
図7(c)及び(d)は、対応すべき作業が難しい作業の場合の例である。例えば、設備の運転開始時において当該作業の作業者間の作業レベルに差がある場合に、対応すべき簡単な作業が生じたとき(
図7(a)のケース)の例を説明する。当該作業の発生回数が多い時期(初期)において当該作業が生じ、作業スキルのばらつきの大きさが2.0と計算された場合、所定の基準を1.0とすると、抽出される作業者は作業者E(すなわち、低スキル作業者)となる。設備の稼働が続き、当該作業の発生回数が徐々に減少するいずれかの時点(中期及び後期)で同じ作業が生じたときに、同様に作業スキルのばらつきが計算され、ばらつきが9.0及び2.0と計算されたため、いずれも作業者Eが抽出される。
【0043】
ここで、所定の基準は任意に設定されるが、一例として、以下の考え方で所定の基準を設定することができる。すなわち、所定の基準を1.0とし、S305で計算されたばらつきの大きさが1.0以上の場合は、高スキル作業者の作業時間(最短時間)と低スキル作業者の作業時間(最長時間)との間に2倍以上の差があることになるため、低スキル作業者の作業スキルの向上を図るものとする。一方、ばらつきの大きさが1.0未満の場合は、作業者間の作業スキルに大きな差がないものとみなし、高スキル作業者のさらなるスキル向上を図るものとする。
【0044】
設備の運転開始時において当該作業の作業者間の作業レベルに差がない場合に、対応すべき簡単な作業が生じたとき(
図7(b)のケース)の例では、同様の計算及び判断により、初期及び中期の各々においては作業者A又は作業者B(すなわち、高スキル作業者)が抽出され、後期においては作業者E(すなわち、低スキル作業者)が抽出される。対応すべき難しい作業が生じたときにおいて、設備の運転開始時において当該作業の作業者間の作業レベルに差がある場合(
図7(c)のケース)及び作業レベルに差がない場合(
図7(d)のケース)においても、ばらつきの大きさに応じて、各々の時点で低スキル作業者又は高スキル作業者が適宜抽出される。
【0045】
図3に戻り、作業スキル判定部116によって低スキル作業者又は高スキル作業者が抽出されると、作業者選定部124は、いずれかの作業者を、当該作業に対応する対応作業者として選定し、その作業者情報を出力する(S307又はS308)。出力された作業者情報は、例えば、各作業者が保持する携帯型情報端末や、設備Pに設けられたモニタなどに、表示することができる。これらの情報端末に出力された作業者は、設備Pにおいて発生した事象に対応して、必要な作業を行う(S309)。
【0046】
作業を終えると、作業を行った対応作業者又はその管理者は、作業の詳細、作業時間等を含む作業完了情報を、例えば携帯型情報端末又は設備Pに設けられた入力端末から入力する(S310)。作業者選定システム100の情報更新部126は、入力された作業完了情報を取得すると、この情報を用いて、記憶部に格納された作業情報、作業者情報、作業スキル情報のいずれか又はこれらの組み合わせを、必要に応じて更新する(S311)。あるいは、情報更新部126が、当該作業の開始時間及び終了時間、作業の詳細などを自動的に取得し、これらの情報を用いて、記憶部に格納された作業情報、作業者情報、作業スキル情報のいずれか又はこれらの組み合わせを更新するようにしてもよい。
【0047】
作業未経験者判定部112が、S302で特定された作業について未経験者がいると判定した場合(S303)には、作業スキルばらつき算定部114が、当該未経験者に予め設定された仮作業スキルを作業者情報記憶部104から取得する。仮作業スキルとして設定される情報は、作業スキルとして用いられる指標に応じて設定することができる。例えば、過去において当該作業に対応した際に要した時間のうち最短の作業時間を作業スキルとして用いている場合には、当該未経験者の仮作業スキルとして、他の作業者が過去に当該作業を行ったときの作業時間のうち最も長い作業時間を設定することができる。あるいは、仮作業スキルとして、他の作業者が過去に最初に当該作業を行ったときの作業時間の平均値を設定することもできる。
【0048】
未経験者の仮作業スキルは、上記のように予め設定しておき、作業スキル情報として作業スキル情報記憶部106に格納しておくこともできるが、作業者選定システム100が自動的に設定することもできる。例えば、作業スキルとして最短時間が用いられる場合であれば、作業未経験者判定部112が、必要な作業について未経験者がいると判定したことに応答して、作業者選定システム100が、作業者情報記憶部104から他の作業者が過去に当該作業を行ったときの作業時間を取得して比較し、最も長い作業時間を仮作業スキルとして設定、作業スキル情報記憶部106に格納することができる。
【0049】
次に、作業に対応する作業者の選定に際して、その作業の実施に許容される時間を考慮する場合の作業者選定処理を説明する。
図8は、作業者選定処理において、作業に許容される時間を考慮した場合の処理フロー800を示す。以下の説明においては、
図3のフローと異なる部分について主に説明する。
【0050】
図3の処理フロー300では、作業を必要とする事象が発生したときに、当該作業について複数の作業者の作業スキルのばらつきを計算し、ばらつきの大きさが所定の基準以上のときには作業スキルの最も低い作業者を、当該作業を行う作業者として抽出する。しかしながら、作業を行うことが必要な何らかの事象が発生したときには、設備Pの稼働停止を要する場合があり、稼働が停止している間は物品の生産が停止することになる。したがって、作業スキルの低い作業者が当該作業を完了するまでに時間がかかるために必要な生産量の未達成が生じる可能性がある場合には、その作業者に当該作業を行わせることはできず、より短時間で作業を行うことができる作業者に作業を行わせる必要がある。そこで、処理フロー800では、設備Pの稼働を停止しても必要な生産計画を達成する事が可能な許容時間と、抽出された作業者が当該作業を行うのに必要な作業時間とを比較して、当該作業者が、許容時間内に作業を完了することができるかどうかを判定し、当該作業者の作業時間が許容時間(作業を行うために許容される停止可能時間)を上回る場合には、別の作業者を抽出するようにする。
【0051】
処理フロー800のステップS803において、S802で特定された作業について未経験者がいないと判定された場合に、作業者選定システム100の作業許容時間算出部118は、作業のための許容時間を算出する(S805)。なお、許容時間の算出は、この時点で行われることに限定されるものではなく、例えば、S808において作業スキルの最も低い作業者が抽出された後に算出してもよい。
【0052】
図9は、許容時間の算出の考え方の一例を示す。
図9において、横軸は時間を表し、縦軸は物品の生産量を表す。例えば、設備において必要な作業が発生した時点で設備の稼働を停止し、一定の停止時間後に生産を再開し、その後、停止前の生産状況と同じ状況で生産を行えば生産締日までに生産計画を達成可能であると想定される場合は、その一定の停止時間を「許容時間」とすることができる。許容時間は、作業発生時にそれまでの生産実績が生産計画において規定される生産量を上回っていれば、より長くすることができる。また、許容時間として算出される時間は、例えば、作業再開後における生産量の予想推移を作業開始前の生産量の推移に対してどの程度に設定するか、生産の安全度をどの程度見込むか、設備の生産能力に対して生産計画がどの程度の余裕度を有するかなどの条件に応じて、変化することになる。
【0053】
例えば
図9に示される考え方に基づいて算出された許容時間は、作業完了可能性判定部120に渡され、作業完了可能性判定部120は、S808で抽出された低スキル作業者の当該作業についての最短作業時間と許容時間とを比較する(S810)。比較の結果、最短作業時間が許容時間より短い場合には、作業完了可能性判定部120は、低スキル作業者が当該作業を完了することができるものと判定し、作業者選定部124は、その低スキル作業者を、当該作業に対応する対応作業者として選定する。
【0054】
一方、許容時間が低スキル作業者の当該作業についての最短作業時間と比較された(S810)結果、最短作業時間が許容時間以上の場合には、作業完了可能性判定部120は、当該作業者では許容時間内に作業を完了することができないと判断する。この場合には、作業スキル判定部116が、複数の作業者のうち当該作業者を除く他の作業者の中で作業スキルの最も低い作業者を抽出する(S811、S812、S808)。この作業者についても同様に、作業完了可能性判定部120が、許容時間と最短作業時間との比較を行う。
【0055】
S808からS812のステップを繰り返した結果、S812において作業候補者が残っていないと判定された場合には、可能な限り短い時間で作業を完了させることができるように、作業者選定部124は、すべての作業者の中で最も作業時間の短い作業者を当該作業の対応作業者として選定する(S813)。
【0056】
S807及びS808において、低作業スキル者が抽出された場合は以上のとおりであるが、高スキル作業者が抽出された場合においても、同様の処理が行われる(S807、S809、S814〜S817)。
【0057】
次に、作業に対応する作業者の選定に際して、その作業を実施する作業者の作業スキル向上可能性を考慮する場合の作業者選定処理を説明する。
図10は、作業者選定処理において、作業者の作業スキル向上可能性を考慮した場合の処理フロー1000を示す。以下の説明においては、
図3のフローと異なる部分について主に説明する。
【0058】
本システムにおいては、複数の作業者の作業スキルのばらつきを計算し、ばらつきの大きさが所定の基準以上の場合には、当該作業を行う作業者として低スキル作業者を抽出する。ここで、複数の作業者からなるチーム全体のスキルの向上を考えれば、例えば同程度の作業スキルを有する複数の作業者がいる場合には、当該作業を行わせることによって作業スキルの向上が見込める作業者を選択することが望ましい。そこで、処理フロー1000では、抽出された作業者の当該作業における過去の作業スキルの変化を考慮して、作業スキル向上が可能であると判定される場合には当該作業者をそのまま抽出し、作業スキル向上が可能ではないと判定される場合には別の作業者を抽出するようにする。
【0059】
処理フロー1000のステップS1009において、作業スキル向上可能性判定部122は、S1007で選ばれた作業者の作業スキル向上可能性を判定する。作業スキルの向上可能性は、例えば当該作業者の過去における当該作業の作業時間(例えば、過去の複数回の作業にわたる作業時間や前回の作業の作業時間)の変化を求めることによって判定することができる。作業スキル向上可能性判定部122は、抽出された作業者の過去の複数回の作業時間を作業情報記憶部102から取得し、それらの作業時間を比較し、作業実施ごとに作業時間が短縮する傾向があれば、当該作業者のその作業における作業スキル向上が可能であると判定する。
【0060】
一方、作業スキル向上可能性判定部122は、抽出された作業者の過去の複数回の作業時間を比較し、作業実施ごとに作業時間が短縮する傾向がなければ、当該作業者のその作業における作業スキル向上が可能ではないと判定する。この場合には、作業スキル判定部116が、複数の作業者のうち当該作業者を除く他の作業者の中で作業スキルの最も低い作業者を抽出する(S1010、S1011、S1007)。この作業者についても同様に、作業スキル向上可能性判定部122が、作業スキルの向上可能性の判定を行う。
【0061】
S1007からS1011のステップを繰り返した結果、S1011において作業候補者が残っていないと判定された場合には、作業者選定部124は、すべての作業者の中で最も作業スキルの高い作業者を当該作業に対応する対応作業者として選定する(S1012)。
【0062】
S1006及びS1007において、低作業スキル者が抽出された場合は以上のとおりであるが、高スキル作業者が抽出された場合においても、同様の処理が行われる(S1006、S1008、S1013〜S1016)。
【0063】
次に、作業に対応する作業者の選定に際して、その作業の実施に許容される時間と、その作業を実施する作業者の作業スキル向上可能性とを考慮する場合の作業者選定処理を説明する。
図11は、作業者選定処理において、作業の許容時間と作業スキル向上可能性とをいずれも考慮した場合の処理フロー1100を示す。以下の説明においては、
図3のフローと異なる部分について主に説明する。
【0064】
処理フロー1100のステップS1103において、S1102で特定された作業について未経験者がいないと判定された場合に、作業者選定システム100の作業許容時間算出部118は、S1105で作業許容時間を算出する。作業許容時間の算出は、この時点で行われることに限定されるものではなく、例えば、S1108において作業スキルの最も低い作業者が抽出された後に算出してもよい。作業許容時間の算出の考え方は、
図8の処理フロー800の説明において上述されている。
【0065】
次に、ステップS1110において、作業スキル向上可能性判定部122は、S1108で選ばれた作業者の作業スキル向上可能性を判定する。作業スキル向上可能性については、
図10の処理フロー1000の説明において上述されている。作業スキル向上可能性判定部122は、抽出された作業者の過去の複数回の作業時間を作業情報記憶部102から取得し、それらの作業時間を比較し、作業実施ごとに作業時間が短縮する傾向があれば、当該作業者のその作業における作業スキルの向上可能性が高いと判定する。
【0066】
次に、ステップS1111において、作業完了可能性判定部120は、S1110において作業スキルの向上可能性が高いと判定された低スキル作業者について、当該作業の最短作業時間と作業許容時間とを比較する。比較の結果、最短作業時間が作業許容時間より短い場合には、作業完了可能性判定部120は、低スキル作業者が当該作業を完了することができるものと判定し、作業者選定部124は、その低スキル作業者を、当該作業に対応する対応作業者として選定する。
【0067】
ステップS1110において当該作業者の作業スキル向上が可能ではないと判定された場合、又は、S1111において低スキル作業者が当該作業を終えられないと判定された場合には、作業スキル判定部116が、複数の作業者のうち当該作業者を除く他の作業者の中で作業スキルの最も低い作業者を抽出する(S1112、S1113、S1108)。この作業者についても同様に、作業スキル向上可能性判定部122が作業スキル向上可能性を判定し、作業完了可能性判定部120が作業完了可能性の判定を行う。
【0068】
なお、処理フロー1100においては、S1108において抽出された低スキル作業者について、S1110で作業スキルの向上可能性を判定し、S1111で作業完了可能性の判定をしているが、これらの判定を行う順序は逆であってもよい。
【0069】
S1108からS1113のステップを繰り返した結果、S1113において作業候補者が残っていないと判定された場合には、可能な限り短い時間で作業を完了させることができるように、作業者選定部124は、すべての作業者の中で最も作業時間の短い作業者を当該作業に対応する対応作業者として選定する(S1114)。
【0070】
S1007及びS1008において低作業スキル者が抽出された場合は以上のとおりであるが、高スキル作業者が抽出された場合においても、同様の処理が行われる(S1107、S1109、S1115〜S1119)。
【0071】
図12は、
図11に示される作業者選定処理フロー1110を実行した場合の作業スキル向上の具体例を示す。
図12(a)は、簡単な作業(すなわち、作業を行う時間が比較的短い作業)についての作業スキル向上の具体例であり、
図12(b)は、より複雑な作業(すなわち、作業を行う時間が比較的長い作業)についての作業スキル向上の具体例である。いずれも、5名の作業者A〜Eから構成されるチームにおいていずれかの作業者が当該作業を行う場合を想定しており、当該作業の最短作業時間を作業スキルとする。
【0072】
図12(a)の1回目の作業について、最も作業時間の短い作業者A又は作業者Bの作業時間(当初の設定値を5分とする)と最も長い作業者Eの作業時間(当初の設定値を15分とする)とを用いて、作業スキルのばらつきの大きさを計算すると、(4)の欄に示されるように「2.0」となる。所定の基準値が1.0に設定されていれば、ばらつきの大きさは所定の基準値以上であるため、作業者Eが抽出される。抽出された作業者Eについて、最短作業時間(15分)と、例えば
図9の考え方に基づいて算出された作業許容時間(100分)とを比較すると、作業者Eは、作業許容時間内に作業を終えられると判断されるため、ここでは作業者E(新人)が当該作業を行う対応作業者として選定される。作業者Eが当該作業を行った結果、12分で作業を終えたとすると、作業者Eの当該作業の最短作業時間が12分に更新される。
【0073】
2回目の作業が発生したときには、ばらつきの大きさが所定の基準値より大きく、作業時間の最も長い作業者Eでも作業許容時間内に作業を終えることができると判断され、さらに、作業者Eは、1回目の作業が当初設定されていた最短作業時間(15分)より短い時間(12分)で終了したことから作業スキル向上可能性もあると判断されるため、ここでは作業者Eが対応作業者として選定される。3回目、4回目の作業が発生したときも同様に、それぞれ、作業者D、作業者Cが対応作業者として選定される。
【0074】
5回目の作業が発生したときは、最も作業時間の短い作業者A又は作業者Bの作業時間(5分)と、最も長い作業者Eの作業時間(9分)とを用いて、作業スキルのばらつきの大きさが計算される。ばらつきの大きさは「0.8」となり、これは所定の基準値より小さい値であるため、ここでは作業者A又は作業者Bが抽出される。これらの作業者は、最短作業時間内に作業を終えられると判断されるため、ここでは作業者A又は作業者Bが当該作業を行う作業者として選定される。なお、作業者A及び作業者Bのうちどちらを最終的に対応作業者として選定するかに関して、作業スキル向上可能性の判断結果に従うことが望ましいが、成長可能性が同程度の場合(
図12(a)の例では両者の過去の作業時間推移が同じ)には、他の任意の基準を用いて選定することができる。ここでは、作業者A(ベテラン)が対応作業者として選定されるものとする。
【0075】
以下、6回目〜10回目の作業が発生した場合も同様に対応作業者が選定される。このように、10回の作業において順次作業者が選定されたことによって、作業スキルが低かった作業者Eのスキルが向上し、結果としてチーム全体のスキルも向上させることができる。
【0076】
図12(b)に示される例を説明すると、まず、1回目の作業発生時に、上記と同様に作業スキルのばらつきの大きさが計算される。ばらつきの大きさが「0.7」であるため、所定の基準値が1.0に設定されていれば、最も作業スキルの高い作業者Aが抽出される。この作業者の最短作業時間は60分に設定されており、作業許容時間95分より短いため、この作業者は時間内に作業を終えられると判断され、作業者A(ベテラン)が対応作業者として選定される。
【0077】
次に、2回目の作業が発生したときには、作業スキルのばらつきの大きさは1.0以上であるため、最も作業スキルの低い作業者Eが抽出される。しかし、作業者Eは、当該作業の最短作業時間が100分に設定されており、作業許容時間95分より長いため、作業者Eでは作業許容時間内に作業を終えられないと判断される。この場合には、作業者Eを除いた他の作業者のうち作業スキルの最も低い作業者である作業者Dが対応作業者として選定される(なお、作業者C及び作業者Dのうち作業者Dを選定する根拠については、任意の基準に基づくものとすることができる)。以下、3回目〜7回目の作業が発生した場合も同様に対応作業者が選定される。
【0078】
8回目の作業が発生したときには、ばらつきの大きさが0.9であり、作業者Aの作業最短時間が作業許容時間以内であるため、作業者Aが抽出されるはずである。しかし、作業者Aは、7回目の作業への対応作業者として選定されて作業を行った結果、作業時間の短縮効果がないことから、作業スキル向上が可能ではないと判断される。したがって、ここでは、残りの作業者B〜作業者Eについて、ばらつきの大きさ、作業完了可能性が判断され、結果として作業者Bが対応作業者として選定されることになる。このように、10回の作業において順次作業者が選定されたことによって、作業スキルが低かった作業者C〜作業者Eだけでなく作業者A及び作業者Bの作業スキルも向上し、結果としてチーム全体のスキルも向上させることができる。
【0079】
以上、詳細に説明したとおり、本発明によれば、設備において必要となる種々の作業について、低スキル者の作業スキルを早期に向上させることができるだけでなく、高スキル者も作業スキルをさらに向上させることができる。また、設備の運転に当たる複数の作業者からなる作業チーム全体としての作業スキルを向上させることができる。