特許第6726277号(P6726277)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6726277抄紙機用カレンダーロールのためのポリウレタンロールカバー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6726277
(24)【登録日】2020年6月30日
(45)【発行日】2020年7月22日
(54)【発明の名称】抄紙機用カレンダーロールのためのポリウレタンロールカバー
(51)【国際特許分類】
   D21G 1/02 20060101AFI20200713BHJP
   C08G 18/48 20060101ALI20200713BHJP
【FI】
   D21G1/02
   C08G18/48 054
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-519687(P2018-519687)
(86)(22)【出願日】2016年11月1日
(65)【公表番号】特表2018-533676(P2018-533676A)
(43)【公表日】2018年11月15日
(86)【国際出願番号】US2016059815
(87)【国際公開番号】WO2017087152
(87)【国際公開日】20170526
【審査請求日】2018年4月16日
(31)【優先権主張番号】62/256,312
(32)【優先日】2015年11月17日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】511136119
【氏名又は名称】ストウ・ウッドワード・ライセンスコ,リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】シュー,ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ヒル,クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】タイソン,クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】ハンター,チャールズ
【審査官】 堀内 建吾
(56)【参考文献】
【文献】 特表2002−521579(JP,A)
【文献】 国際公開第2003/056195(WO,A1)
【文献】 特開平06−173190(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0312926(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0190624(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21B1/00−D21J7/00
C08G18/48
F16C13/00− 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抄紙機用カレンダーロールであって、
実質的に円筒状のコアと、
前記コアを周方向に囲むカバーと、
を備え、前記カバーは、
前記コアを周方向に覆う基層と、
前記基層を周方向に覆うポリウレタンを含む上側紙料層であって、前記上側紙料層は、繊維強化されており、前記ポリウレタンは、イソシアネート、触媒、及び硬化剤を含む混合物から調製されており、前記イソシアネートは、約70から85重量%含まれており、前記触媒は、約10から20重量%含まれており、前記ポリウレタンは、約120から150℃のガラス転移温度及び約7から12%の破断点歪を有しており、前記上側紙料層は、70から90のショアD硬度を有している、上側紙料層と、
を備えている、カレンダーロール。
【請求項2】
前記上側紙料層は、ガラス、炭素、ポリエステル、ナイロン、アラミド、及びそれらの組合せからなる群から選択された繊維によって強化されている、請求項に記載のカレンダーロール。
【請求項3】
前記繊維は、フィラメント又はテープを成している、請求項に記載のカレンダーロール。
【請求項4】
前記カレンダーロールは、抄紙機のカレンダ区域に取り付けられる、前記抄紙機と組み合わされた請求項に記載のカレンダーロール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願]
本願は、2106年11月17日に出願された米国仮特許出願第62/256,312号の優先権及び利得を主張するものであり、その開示内容の全体が、ここに含まれるものとする。
【0002】
[発明の分野]
本発明は、概して、工業用ロール用カバーに関し、さらに詳細には、工業用ロール用ポリウレタンカバーに関する。
【背景技術】
【0003】
典型的な抄紙プロセスでは、(紙料(paper stock)として知られる)セルロース繊維の水スラリー又は懸濁液は、2つ以上のロール間で走行する織ワイヤ及び/又は合成材料のエンドレスベルトの上側ランの上面に送給される。「フォーミング織布(forming fabric)」と呼ばれることが多いベルトは、その上側ランの上面にフィルターとして機能する抄紙面をもたらし、紙料のセルロース繊維を水性媒体から分離し、これによって、湿紙ウエブを形成する。水性媒体は、重力によって又は織布の上側ランの下面(すなわち、「マシン側」)に配置された真空装置によって、排水孔として知られるフォーミング織布のメッシュ開口を通って排水される。
【0004】
フォーミング区域を出た後、紙ウエブは、抄紙機のプレス区域に移送され、該区域において、一般的に「プレスフェルト(press felt)」と呼ばれる別の織布によって被覆された1つ又は複数のプレス(多くの場合、ローラプレス)のニップ間を通過する。プレスからの圧力によって、ウエブから湿分がさらに除去される。この湿分の除去は、多くの場合、プレスフェルトの「バット(batt)」層の存在によって促進される。次いで、この紙は、さらなる湿分除去のために、ドライヤー区域に移送される。乾燥の後、この紙は、(多くの場合、抄紙機のカレンダー区域における)二次処理及び包装の準備が整ったことになる。
【0005】
抄紙機の種々の区域において、通常、円筒ロールが利用される。このようなロールは、高動荷重及び高温並びに侵食性又は腐食性の化学薬品に晒される可能性がある厳しい環境下に配置され、かつ作動される。一例を挙げると、典型的な製紙工場において、ロールは、繊維性ウエブシートを処理ステーション間で移送するために用いられるのみならず、プレス区域及びカレンダーロールの場合、該ウエブシート自体を紙に処理するためにも用いられる。
【0006】
典型的には、抄紙に用いられるロールは、抄紙機内の位置を考慮して建造される。何故なら、抄紙機内の種々の位置に配置されるロールは、種々の機能を果たすことが必要とされるからである。抄紙ロールが多くの異なる性能要求を有すること及び金属ロールの全体の交換が極めて高価であることによって、多くの抄紙ロールは、一般的に金属製のコアの周面を囲むポリマーカバーを備えている。カバーに用いられる材料を変化させることによって、カバー設計者は、ロールに抄紙用途が要求するような種々の性能特性をもたらすことができる。また、金属ロールを覆うカバーを補修、再研磨、又は交換することによって、金属ロールの全体を交換するよりも著しくコストを低減させることができる。カバー用の例示的なポリマー材料の例として、天然ゴム;合成ゴム、例えば、ネオプレン、スチレンブ・ブタジエン(SBR)、ニトリルゴム、クロロスルホン化ポリエチレン(DePontのHYPALON(登録商標)の商品名でも知られる「CSPE」);EDPM(この名称は、エチレン・プロピレン・ジエンモノマーから生成されるエチレン・プロピレン・ターポリマーに由来する);ポリウレタン;熱硬化性複合材料;及び熱可塑性複合材料が挙げられる。
【0007】
多くの場合、ロールカバーは、少なくとも2つの異なる層、すなわち、コアを覆い、コアに対する接合部をもたらす基層と、基層を覆い、かつ基層に接合し、ロールの外面として機能する上側紙料層と、を備えている(ロールによっては、基層と上側紙料層との間に挟まれた中間繋ぎ(tie-in)層を備えることもある)。これらの材料の層は、典型的には、カバーに予め定められた一連の物理的作動特性をもたらすように選択される。これらの物理的作動特性の例として、抄紙環境に耐えるための必要な強度、弾性係数、及び高温、水、及び刺激の強い化学薬品に対する耐性が挙げられる。加えて、カバーは、一般的に、該カバーが果たすべき処理に適する所定の表面硬度を有するように設計され、かつ一般的に、紙シートが該紙シートに傷を与えることなくカバーから離脱(release)することが必要とされる。また、安価なものとするために、カバーは、耐擦過性及び耐摩耗性を有するべきである。
【0008】
一般的に抄紙機のドライヤー区域の下流に位置するカレンダー区域に用いられるカレンダーロールは、紙を所望の平滑度及び仕上がりに処理するために用いられる。カレンダーロールは、典型的には、高弾性係数(すなわち、高剛性)、耐擦過性、高靭性、高ガラス転移温度(Tg)、及びバーリング耐性(barring resistance)を有することが必要とされる。カレンダーロールカバーのための典型的な化合物は、高弾性係数及び高Tgを考慮すれば、エポキシである。しかし、これらの化合物は、多くの場合、靭性に欠ける。このような理由から、カレンダー用途に用いられる代替的な材料が望まれている。
【発明の概要】
【0009】
第1の態様として、本発明の実施形態は、実質的に円筒状のコアとコアを周方向に囲むカバーとを備える抄紙機用カレンダーロールに関する。カバーは、コアを周方向に覆う基層と基層を周方向に覆うポリウレタンを含む上側紙料層とを備えている。上側紙料層は、繊維強化されており、ポリウレタンは、約120―150℃のガラス転移温度を有しており、上側紙料層は、70−90のショアD硬度を有している。
【0010】
第2の態様として、本発明の実施形態は、実質的に円筒状のコアとコアを周方向に囲むカバーとを備える抄紙機用カレンダーロールに関する。カバーは、コアを周方向に覆う基層と基層を周方向に覆うポリウレタンを含む上側紙料層とを備えている。上側紙料層は、繊維強化されており、ポリウレタンは、約7−12%の破断点歪を有しており、上側紙料層は、70−90のショアD硬度を有している。
【0011】
第3の態様として、本発明の実施形態は、実質的に円筒状のコアとコアを周方向に囲むカバーとを備える抄紙機用カレンダーロールに関する。カバーは、コアを周方向に覆う基層と基層を周方向に覆うポリウレタンを含む上側紙料層とを備えている。上側紙料層は、繊維強化されている。ポリウレタンは、イソシアネート、触媒、及び硬化剤を含む混合物から調製されており、イソシアネートは、約70−85重量%含まれており、触媒は、約10−20重量%含まれている。ポリウレタンは、約120−150℃のガラス転移温度及び約7−12%の破断点歪を有しており、上側紙料層は、70−90のショアD硬度を有している。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態による工業用ロールの斜視破断図である。
図2図1の線2−2に沿った図1のロールの拡大部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付の図面を参照して、本発明をさらに詳細に説明する。本発明は、図示される実施形態に制限されるように意図されておらず、むしろ、これらの実施形態は、本発明を当業者に十分かつ完全に開示するように意図されている。図面において、同様の番号は、全体を通して同様の要素を指すものとする。いくつかの構成要素の厚み及び寸法が、明瞭化のために誇張されることがある。周知の機能又は構成は、簡素化及び/又は明瞭化のために詳細に説明しないことがある。
【0014】
加えて、「〜の下に」、「〜の下方に」、「〜の下側に」、「〜の上方に」、「〜の上側に」、等の空間的な相対用語が、図面に示される1つの要素又は特徴部と他の1つ又は複数の要素又は特徴部との関係を説明するための記述を容易にするために、本明細書に用いられることがある。これらの空間的な相対的用語は、図面に描かれる方位に加えて、使用時又は操作時における装置の異なる方位を含むことが意図されていることを理解されたい。例えば、もし図面における装置が上下反転されたなら、他の要素又は特徴部の「下方」又は「直下」に位置すると記載された要素は、該他の要素又は特徴部の「上方」に配向されるだろう。従って、「〜の下方」という例示的な用語は、「〜の上方」及び「〜の下方」の両方の方位を含むことになる。装置は、別の方位(90°又は他の方位)に回転されることもあるが、この場合、本明細書に用いられる空間的な相対的記述用語も、それに応じて解釈されるとよい。
【0015】
別段の定めがない限り、本明細書に用いられる技術用語及び科学用語は、いずれも本発明が属する技術分野における当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有している。本発明の詳細な説明に用いられる専門用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的とし、本発明を制限することを意図するものではない。本発明の詳細な説明及び添付の請求項に用いられる単数形の「a 」、「an 」、及び「the」は、文脈が明らかに他のことを指定しない限り、複数形も含むことを意図している。本明細書に用いられる「及び/又は」という用語は、1つ又は複数の互いに関連して記載される事項のいずれか又は全ての組合せを含んでいる。本明細書に用いられる「付着される」、「接続される」、「相互接続される」、「接触する」、「連結される」、「取り付けられる」、「覆う」、等の用語は、いずれも、特に他の規定がない限り、要素間の直越的又は間接的な付着又は接触を意味している。
【0016】
本明細書において測定可能な値、例えば、測定可能な量又は濃度に関して用いられる「約」という用語は、特定の測定可能な値のみならず、該特定の値のバラツキ、例えば、±10%、±5%、±1%、±0.5%。±0.1%、等のバラツキを含んでいる。例えば、(「約X」、但し、Xは、測定可能な値である)は、Xのみならず、±10%、±5%、±1%、±0.5%。±0.1%、等を含むXのバラツキを含むことを意味している。測定可能な値の範囲は、任意の他の範囲及び/又は任意の個々の値を含むことがある。
【0017】
以下、図面を参照すると、10で総称的に表されるカレンダーロールが、図1,2に示されている。ロール10は、互いに重なった関係にある(一般的には金属製の)コア12、接着層14、及びカバー16を備えている。以下、これらの構成要素の各々について詳細に説明する。
【0018】
コア12は、一般的に鋼、他のいくつかの金属、又は複合材料から形成された実質的に円筒状の中空構造体である。コア12は、典型的には、約1.5−400インチの長さ及び約1−70インチの直径を有しており、抄紙目的では、約100−400インチの長さ及び約20−70インチの直径が一般的である。さらに一般的な長さ及び直径の範囲では、コア12は、典型的には、約1−5インチの厚みの壁を有している。通常、(図示されない)ジャーナル及び軸受のような構成要素が、抄紙機におけるコア12の取付け及び回転を容易にするためにコア12に設けられている。コア12の表面は、接着層14への接合表面をもたらすために、ブラスト、紙ヤスリ研磨、サンドブラスト、等によって処理されるとよい。
【0019】
図1,2を再び参照すると、接着層14は、コア12をカバー16に付着させることができる接着剤(通常、エポキシ接着剤)からなっている。勿論、接着層14をなす接着剤は、コア12の材料及びカバー16の基層18の材料に適合するように選択されるべである(すなわち、該接着剤は、いずれかの材料を不当に傷つけることなくこれらの構造間に信頼性の高い接合をもたらすべきである)。好ましくは、この接合は、約1,200−5,000psiの引張接合強度を有している。接着剤は、硬化特性及び物理的特性を促進する硬化剤のような添加剤を含んでいてもよい。例示的な接着剤の例として、ノースカロライナ州ローリのLord Corporationから市販されているエポキシ接着剤であるChemlok220X及びChemlok205が挙げられる。
【0020】
接着層14は、薄い材料層の付着に適することが当業者に知られているどのような方法によって、コア12に付着されてもよい。例示的な付着技術の例として、噴霧、刷毛塗り、浸漬、擦り塗り、等が挙げられる。もし溶媒型接着剤が用いられるなら、硬化プロセス中に吹出し(blow)を生じることがある溶媒の閉込めを低減させるために、接着層14を溶媒がカバー16の付着前に蒸発するように付着させると好ましい。当業者であれば、接着層14は、多数の接着剤被膜であってもよいことを理解するだろう。これらの接着剤は、互いに異なっていてもよい。例えば、いくらか異なる特性を有する2つの異なるエポキシ接着剤が用いられてもよい。いくつかの実施形態では、接着層が完全に省略されてもよく、この場合、カバー16がコアに直接接合されることに留意されたい。
【0021】
さらに図1,2を参照すると、カバー16は、互いに重なる関係にある基層18及び上側紙料層22を備えている。図示される実施形態では、基層18は、接着層14に接着されている。基層18は、一般的に充填材及び他の添加物を含むポリマー化合物(典型的には、エポキシのような熱硬化性複合材料)から構成されている。
【0022】
上記のポリマー化合物の物理的な特性を改変し、及び/又はそのコストを低減するために、一般的に、充填材が基層18に添加される。例示的な充填材料の例として、制限されるものではないが、酸化アルミニウム(Al)、二酸化珪素(SiO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化亜鉛(ZnO)、及び二酸化チタン(TiO)のような無機酸化物;(ファーネスブラックとしても知られる)カーボンブラック;粘土、タルク、珪灰石(CaSiO)、珪酸マグネシウム(MgSiO)、無水珪酸アルミニウム、及び長石(KAlSi)のような珪酸塩;硫酸バリウム及び硫酸カルシウムのような硫酸塩;アルミニウム、鉄、銅、ステンレス鋼、及びニッケルのような金属の粉末;炭酸カルシウム(CaCO)及び炭酸マグネシウム(MgCO)のような炭酸塩;マイカ;シリカ(天然シリカ、フュームドシリカ、珪酸、無水シリカ、又は沈降シリカ);及び炭化珪素(SiC)及び窒化アルミニウム(AlN)のような窒化物及び炭化物が挙げられる。これらの充填材は、実質的にどのような形態、例えば、粉末、ペレット、繊維、又は球の形態で存在してもよい。
【0023】
また、基層18は、処理を促進して物理的特性を向上させることができる他の添加物、例えば、重合開始剤、活性剤及び促進剤、硬化剤又は加硫剤、可塑剤、熱安定剤、抗酸化剤、オゾン劣化防止剤、カップリング剤、色素、等を任意選択的に含んでいてもよい。これらの成分は、一般的に、接着層14への基層18の付着の前又はコア12への直接的な付着の前にポリマー内に混合される。当業者であれば、基層におけるこれらの作用物質の性質及び量並びにそれらの使用が一般的に知られていることを理解するだろう。従って、ここでは詳細に説明しないことにする。
【0024】
基層18は、ポリマーをその下の表面に付着させるのに適することが当業者に知られているどのような方法によって、付着されてもよい。基層18の厚みは、典型的には、約0.0625−約1インチであり、いくつかの実施形態では、約0.1−約0.5インチであり、さらなる実施形態では、約0.1−約0.25インチである。当業者であれば、いくつかの実施形態において、基層18が省略されてもよく、この場合、上側紙料層22が接着層14に直接接着されるとよく、又は接着層を設けることなくコア12に接着されてもよいことを理解するだろう。
【0025】
図1,2を再び参照すると、工業的な実施形態において、1つ又は複数の繋ぎ層が設けられない限り、以下に述べるように、上側紙料層22が基層18を周方向に覆い、かつ基層18に接着されることになる。上側紙料層22は、以下に詳細に述べるように、高Tgを有してかつ繊維強化されたポリウレタン化合物から構成されている。
【0026】
上側紙料層22のポリウレタン化合物は、典型的には、イソシアネート(例えば、メチレン・ジフェニル・ジイソシアネート(MDI)、ポリオール触媒(例えば、ポリテトラメチレン・エーテル・グリコール)、及び硬化剤(例えば、4,4’−メチレンビス(3−クロロ−2,6−ジエチルアニリン)から構成され、かつ調製される。いくつかの実施形態では、イソシアネートの含量は、約70−85重量%であり、触媒の含量は、約10−20重量%であり、硬化剤の含量は、約2−10重量%である。一実施形態では、このポリウレタンは、純樹脂として型成形される時、表1に挙げられる特性を有する化合物からなっている。
【0027】
【表1】
【0028】
例示的なポリウレタン化合物は、Huntsman Polyurethane (テキサス州、ザウッドランズ)によって提供されるEXP393/394/395である。この化合物は、略80/15/5重量%のイソシアネート/触媒/硬化剤の比率を有している。この化合物の物理的特性は、以下の表2に示される通りである。
【0029】
【表2】
【0030】
上側紙料層22のポリウレタン化合物は、典型的には、強化繊維によって強化されている。強化繊維は、ガラス繊維、カーボン繊維、ポリエステル、ナイロン、アラミド、又はこれらの材料の組合せであるとよい。強化繊維は、多くの形態、例えば、フィラメント又はテープであってもよく、織布であってもよいし、又は不織布であってもよい。
【0031】
典型的には、上側紙料層22は、充填材及び他の添加物を含んでいる。例示的な充填材の例として、制限されるものではないが、粘度、及び他の無機充填材、例えば、二酸化珪素、カーボンブラック、粘度、及び二酸化チタン(TiO)、並びに基層18に関連して前述した他の充填材が挙げられる。他の例示的な充填材の例として、カーボン繊維、カーボンナノチューブ、グラフェン、及び金属酸化物又は金属炭化物が挙げられる。典型的には、充填材は、上側紙料層22の約3−70重量%含有される。充填材は、実質的にどのような形態、例えば、粉末、ペレット、ビーズ、繊維、球、粒子、ナノ粒子、等の形態を取ることができる。充填材は、耐擦過性、熱膨張係数、熱伝導率、導電率、及び誘電率のような特性を高めるために含まれるとよい。一実施形態では、ポリウレタンの100重量部に対して30−60重量部の粘度のような充填材が添加されるとよい。
【0032】
例示的な添加物の例として、制限されるものではないが、処理を促進し、物理的特性を向上させることができる重合開始剤、活性剤及び促進剤、硬化剤又は加硫剤、可塑剤、熱安定剤、抗酸化剤、オゾン劣化防止剤、カップリング剤、色素、等が挙げられる。当業者であれば、上側紙料層22内に含まれるのに適する添加物の種類及び濃度を理解するだろう。従って、ここでは詳細に説明しないことにする。
【0033】
上側紙料層22の例示的な組成は、表3に示される成分を含んでいる。
【0034】
【表3】
【0035】
上側紙料層22は、エラストマー材料を円筒表面上に付着させるのに適することが当業者に知られているどのような技術、例えば、型成形、押出成形、ディップコーティング、樹脂移送成形(RTM)、真空支援樹脂移送成形(VARTM)、反応射出成形(RIM)、真空注入、及び引抜成形によって、基層18上に付着されてもよい。
【0036】
いくつかの実施形態では、上側紙料層22は、約0.25−約2.5インチの厚みが得られるように付着される(厚みが大きくなると、多くの材料被膜が必要になる)。いくつかの実施形態では、上側紙料層22は、約0,5−約1.5インチの厚み、いくつかの実施形態では、約1−約1.5インチの厚みを有している。上側紙料層22の厚みが全カバー厚み(すなわち、組み合された基層18及び上側紙料層22の全厚み)の約50−90%であると好適である。
【0037】
基層18及び上側紙料層22のそれぞれの化合物は、基層18が上側紙料層22の硬度値よりも高い硬度値を有するように選択されるとよい。一例を挙げると、基層18は、約80−95のショアD硬度(いくつかのの実施形態では、約80−90のショアD硬度、他の実施形態では、約80−85のショアD硬度)を有しているとよく、上側紙料層22は、約70−90のショアD硬度(いくつかの実施形態では、約75−85のショアD硬度)を有しているとよい。この漸次的な硬度の概念によって、カバー構造における種々の層の弾性特性(例えば、弾性係数及びポアソン比)の不一致によって生じることがある接合線のせん断応力を低減させることができる。界面せん断応力のこの低下は、カバーの完全性を維持する上で重要である。
【0038】
また、当業者であれば、基層18と上側紙料層22との間に繋ぎ層を介在させ、これによって、繋ぎ層が上側紙料理層22の直下に位置するように、ロール10が構成されてもよいことを理解するだろう。繋ぎ層のこの典型的な特性は、当業者によってよく知られているので、ここでは詳細に説明しないことにする。
【0039】
上側紙料層22への前述のポリウレタン化合物の使用によって、多くの利点をもたらすことができる。ポリウレタン化合物は、一般的に用いられるエポキシ化合物よりも大きい靭性及び/又は大きい損傷許容性を有することができる。エポキシと比較して、硬化時間が短縮される。ポリウレタンの樹脂粘性は、通常、エポキシの樹脂粘性よりも低く、これによって、充填材の分散を促進し、より多くの充填材を含有させることができ、処理の一貫性及び処理速度を改良することができる。
【0040】
以上の説明は、本発明の例示であり、本発明を制限すると解釈されるべきではない。本発明の例示的な実施形態を説明してきたが、当業者であれば、本発明の新規の示唆及び利点から実質的に逸脱することなく、これらの例示的な実施形態に対して多くの修正を行うことが可能であることを容易に理解するだろう。従って、このような修正の全てが、請求項に規定される本発明の範囲内に含まれることが意図されている。本発明は、以下の請求項によって規定されており、請求項の等価物も、請求項に含まれることになる。
図1
図2