【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、請求項1に記載したバッテリパックによって解決される。本発明の好適な実施形態、変化例および変化実施態様は、従属請求項に記載されている。
【0008】
本発明によれば、手持ち式工作機械のためのバッテリパックが、バッテリパックハウジングと、少なくとも1つのバッテリセルを受ける少なくとも1つのセルホルダと、バッテリパック電子回路とを有しており、この場合、バッテリパック電子回路が、フレキシブルな、特に曲げやすい少なくとも1つのプリント配線板を有していることが意図されている。好適な形式で、フレキシブルなプリント配線板は、少なくとも領域的に、フレキシブルなプリント配線板の曲げ変形部が、組み立てられた状態で形成可能であるように、整えられている曲げ強さを有する。この場合、フレキシブルなプリント配線板の曲げ変形は、プリント配線板の中心平面が曲げ変形の領域内で初期位置に対して角度φだけ変形可能なように、行われると、有利である。このような形式で、フレキシブルなプリント配線板がバッテリパックハウジング若しくはセルホルダの幾何学的形状に可変に適合させられることが保証され得る。さらに、フレキシブルなプリント配線板上に複数の様々な電気部品を位置決めすることができ、これらの電気部品は、通常は位置的に互いに分離されて配置されていて、例えば様々な操作エレメント、発光表示器、電圧タップ、温度センサ、バッテリパック電子回路の多様な機能群、無線モジュールのためのアンテナ、ワイヤレス充電モジュールのための接続部および/または充電コイルとの接続部である。従って、本発明によれば、バッテリパックハウジング内の配線の複雑さおよび/またははんだ付け接続部の数は低減され、これによって組み立て費用およびひいてはコストは削減され、バッテリパックは比較的に頑丈で長持ちする。
【0009】
選択的に、セルホルダは、互いに並列および/または直列接続で接続された複数のバッテリセルを有していてよい。バッテリセルは、好適な実施例では、長手方向軸線に対して平行に延在するそれぞれ1つの外周面を有しており、この場合、この外周面は、長手方向軸線に対して垂直に位置する2つの端面によって仕切られており、この場合、これらの周面および端面がバッテリセルの外側カバーを形成する。
【0010】
バッテリパック電子回路はさらに、バッテリパックと手持ち式工作機械との間の電気的な接続を形成するための接点エレメントを備えた少なくとも1つのプリント配線板を有している。
【0011】
この場合、プリント配線板は、通常は、複数の個別の導電路若しくは接触面を有するベース材料より成っている。導電路は、大抵は、例えば接続接点若しくは接点手段を除いてプリント配線板の全面を覆うはんだレジストを備えた保護層によって保護されている。プリント配線板は電子部品のための担体として適していて、一般的に電子部品を装着する前に、しかも接触面もしくは導電路の製造直後に、自由な接触面および銅めっきされた孔内に保護層が備えられ、この保護層は、装着時に形成されるべきすべての接点手段若しくは接続接点が電気的にもまた機械的にもすべての要求を満たすように保証するものでなければならない。
【0012】
本発明によれば、フレキシブルなプリント配線板に、バッテリセルに対応する少なくとも1つの接点手段が配置されており、この接点手段は、追加的な導線を介しての個別のバッテリセルとバッテリパック電子回路との接触接続を省くことができるように、対応するバッテリセルと電気的に接触接続する。このような形式の接触接続を得るために、バッテリセルのための接点手段は、好適な形式で、フレキシブルなプリント配線板の曲げやすい舌片状接点の形で、好適には、フレキシブルなプリント配線板の、互いに向き合って配置された曲げやすい2つの舌片状接点の形で構成されており、この場合、接点手段は、曲げ変形部の領域で初期位置に対して角度φだけ変形させることができる。この場合、角度φは、10°乃至200°の間の値、好適には30°乃至190°、特に好適には180°の値を有している。
【0013】
好適な形式で、バッテリパック電子回路は、マイクロコントローラまたは個別電池電圧監視のための選択的な切換回路を有しており、この場合、マイクロコントローラは接点手段に電気的に接続されていて、このために、個別のバッテリセルの少なくとも1つの運転パラメータが少なくとも1つの接点手段を介して検出されるように構成されている。この接続は、そのまま直に製作されるか、または信号評価のための別の素子を介して製作されてもよい。バッテリパック電子回路のマイクロコントローラによって、特に充電状態が個別のバッテリセルの電圧を介して監視され、相応の制御によって制御され得る。個別電圧監視によって、バッテリセルとフレキシブルなプリント配線板との間の接続に基づいて、すべてのバッテリセルが規定通りに充電されるかどうか、若しくは場合によってはバッテリセルが処理できない充電電圧に達するかどうかが確認され得る。このような形式で長時間にわたって相応のバッテリパックの良好な使用可能性が得られる。
【0014】
好適な変化実施例によれば、セルホルダが、このセルホルダ内に舌片状接点を挿入するための少なくとも1つの開口を有しており、この場合、個別のバッテリセルは舌片状接点を介してフレキシブルなプリント配線板に直接接続される。好適な形式で、舌片状接点は、工具を用いてセルホルダの開口を通してセル通路内に挿入され、バッテリセルの挿入時に、約180°折り曲げられる。この作業時に、舌片状接点における接触面、特に銅面の形成が重要となる。大きい接触面は、曲げ変形作業中により強い塑性変形を生ぜしめ、この場合、舌片状接点は、端部がセル通路壁の方向を向くように丸くなるが、これはバッテリセルを後で挿入する際に不都合に作用し得る。塑性変形が弱すぎると、舌片状接点は挿入後に再びその初期位置にばね弾性的に戻り、これによって、接点手段は同様にセル通路壁の近傍に位置し、かつ/または先端の領域だけが変形したままとなる。
【0015】
その対策として、接触面が形成され、この接触面は少なくとも領域的に、特に舌片状接点が曲げられるべき箇所が金属面によって形成されており、この場合、接触面は少なくとも曲げ変形部の領域内で保護層によって少なくとも十分に電気的に絶縁されている。本発明によれば、フレキシブルなプリント配線板の舌片状接点は、一方ではフレキシブルなプリント配線板の弾性変形が可能であり、他方では舌片状接点が曲げ変形部の領域内に、十分に電気的に絶縁された保護層を備えた金属面の形の接触面を有しているように構成されており、この保護層は、特に曲げ変形部の領域内における接触面の横断面減少部によって、フレキシブルなプリント配線板の機械的な弱い箇所を規定するように構成されている。相応に、曲げ変形部の領域内で、接触面はまず横断面増大部、次いで横断面減少部、次いで横断面増大部と連続するように意図されている。幅の広い接触面は、より高い弾性的な変形予備部を有していて、これに対して横断面減少部は、曲げ変形の領域を規定する機械的な弱い箇所として役立つ。舌片状接点の接触面は、このような形式で、曲げ変形部の領域内で塑性変形可能であり、これに対して、舌片状接点およびフレキシブルなプリント配線板のその他の領域内では十分に弾性的なままである。
【0016】
さらに、接触面が保護層を有していない舌片状接点の領域と、保護層を備えている舌片状接点の領域との間の移行部は、保護層の端部と舌片状接点の接触面の横断面増大部とが同時に設けられているのではなく、保護層が舌片状接点の接触面と部分的に重なるように、構成されていることが意図されていてよい。さらに、保護層の輪郭が舌片状接点の長手方向に対して垂直な真っすぐなラインを描くのではなく、湾曲していれば、有利である。このような形式で、曲げ強さの鋭角な移行部が発生することはなく、ひいては剥き出しの機械的な弱い箇所が生じることもない。同じ理由から、保護層の下にある接触面が舌片状接点の長手方向に対して垂直に延在するラインに沿って終わるのではなく、湾曲して延在するラインに沿って終わっていれば、有利である。このような形式で、舌片状接点の長手方向で、一方では接触面の緩やかな増大、他方では保護層の緩やかな減少が得られる。
【0017】
特に、フレキシブルなプリント配線板が各バッテリセルのために2つの舌片状接点を有していて、この場合、これらの舌片状接点が好適にはセルホルダの互いに向き合う開口を通してセル通路の互いに向き合う側に挿入され、それによってバッテリセルの挿入時にフレキシブルなプリント配線板の両方向に均一な引張力が発生するようになっていれば、有利である。好適な形式で、2つの舌片状接点の一方が接触面を有していない場合も、対称的な引張力の利点が得られる。好適な変化実施例によれば、舌片状接点はバッテリセルと電気的に接触接続するために、挟み込まれているか、溶接されているかまたははんだ付けされている。選択的に、バッテリセルとの圧着コンタクトで冷間溶接またはこれと類似の素材結合を行う形式で、舌片状接点の接触面を被覆することも可能である。一般的に、このような、開口を通してガイドされた舌片状接点としての接点手段の構成、およびこの舌片状接点のバッテリセルとの機械的な結合並びに電気的な結合は、舌片状接点がセル通路の領域内でバッテリセルによって挟み込まれて支持され、それによって、特に振動、例えば手持ち式電動工具、特に打撃穿孔機またはハンマドリルにおいて運転中に発生するような振動を補正することができる、という利点を有している。
【0018】
選択的に、フレキシブルなプリント配線板の少なくとも1つの接点手段が開口を通してセルホルダのセル通路内に挿入され、ここでバッテリセルに適合させられるのではなく、セルホルダ内のセル通路の範囲内にそれぞれ1つの破断部を配置し、この破断部を通して接点手段が、バッテリセルと接触接続させるために、セル通路内の完全に中央に挿入されるようにすることも可能である。特に好適な実施形態では、少なくとも1つのバッテリセルが概ね絶縁被覆を有していないか若しくは領域的にのみ絶縁被覆を有していて、この場合、絶縁被覆は、少なくとも接点手段がバッテリセルと接触接続する領域内に少なくとも1つの切欠を有している。
【0019】
好適な実施形態によれば、複数のバッテリセル間の接触接続は上記方法および形式で行われ、この場合、セル接続部材が、片側で溶接接続と組み合わせてバッテリセルのプラス極に配置されているかまたは両側に配置されている。
【0020】
特に好適な実施例では、フレキシブルなプリント配線板は片側がプリントされたプリント配線板である。何故ならば、片側がプリントされたプリント配線板は、両側がプリントされたプリント配線板よりも、大抵は製作するのに好都合だからである。片側がプリントされたフレキシブルなプリント配線板においては、接点手段若しくはセル接続部材および/または表示器および操作エレメントを備えた領域が必要とされる。
【0021】
好適な変化実施例では、フレキシブルなプリント配線板が少なくとも1つの切欠、好適には複数の切欠を有しており、この場合、セルホルダが少なくとも1つの対応する位置決め部材、好適には複数の対応する位置決め部材を有しており、この場合、位置決め部材は組み立てられた状態で、セルホルダにおけるフレキシブルなプリント配線板の位置が固定されるように、フレキシブルなプリント配線板の切欠内に係合する。
【0022】
好適な形式で、フレキシブルなプリント配線板は複数の電気部品、特に少なくとも1つの操作エレメント、少なくとも1つの発光表示器、少なくとも1つの温度センサおよび/またはその他の表面実装されたデバイスを有している。表面実装されたデバイス(Surface Mounted Devices、短縮してSMD)は、プリント配線板上の装着密度を高め、例えば誘導式充電モジュールを追加的な電流および信号ラインで接続することによって、装着密度をいわば任意に拡張することができる。
【0023】
さらに、個別電圧監視装置が、通常は、電気抵抗を含有する入力フィルタを介してバッテリパック電子回路に接続される。バッテリセルは、その高いキャパシタンスおよび低い内部抵抗に基づいて、大きい電流を提供することができる。例えばメタルダストの汚れによる故障時に機能不良が発生しないようにするために、この電流を同時に減衰する複数の入力フィルタ抵抗を、セルタップのできるだけ近くにもってくれば、好適である。フレキシブルなプリント配線板は、例えば前記抵抗、操作エレメントとしてのボタンスイッチおよび/または例えばLEDの形の発光表示器等の、様々な表面実装されたデバイスの装着を可能にする。
【0024】
基本的に、バッテリパック内に様々な実施例のセルホルダを使用することができるので、様々な直径および長さを有するバッテリセルを受けることができ、様々なバッテリパック内でのセルホルダの使用が保証され得る。
【0025】
バッテリパックのためのバッテリセルとして、例えばLithium−Ionen(Li−Ion)「リチウムイオン」、Nickel−Cadmium(NiCd)「ニッケルカドミウム」、Nickel−Metallhydrid(NiMH)「ニッケル金属水素化物」またはLithium−Polymer(LiPo)「リチウムポリマー」等の様々な材料を有する様々なバッテリ形式が、例えば円形、角柱形または角形の様々な構造形式で、またはその他の選択的なシステム、例えば燃料電池に使用されてよい。好適には特にリチウムイオン電池が使用される。何故ならば、特にリチウムイオン電池において、複数のバッテリセルを、複数のバッテリセルが並列接続で接続されているバッテリセルブロックに統合することができるからである。この場合、セルホルダが、様々な直径および長さを有するバッテリセルを受けることができれば、特に有利である。これによって、セルホルダ若しくはセル支持体を様々なバッテリパックに使用することができる。
【0026】
本発明によるフレキシブルなプリント配線板を有するバッテリパックの前記最適化された実施形態によって、特にバッテリパック若しくはセルホルダの組み立て、並びに様々な構成部材、特にセルホルダ、プリント配線板、ケーブルガイド、セル接続部材および/またはバッテリパックハウジング内の電子回路固定部の位置決めおよび組み立てが著しく改善される。
【0027】
本発明によるバッテリパックは、工具システムに設けられてもよい。相応に、手持ち式工作機械に解除可能に接続可能なバッテリパックを有する手持ち式工作機械は、本発明の別の対象も形成し、この場合、手持ち式工作機械は、バッテリパックのインターフェースと電気的および/または機械的に接続するために、少なくとも1つの対応する対向接点エレメントを有していて、バッテリパックは取り付けられた状態で、手持ち式工作機械に電気的に接続されている。
【0028】
手持ち式工作機械とは、運動例えば回転運動および/または振動運動せしめられる、駆動モータによって駆動可能な、工具支持体を有する一般的なすべての手持ち式工作機械、例えばロッドドライバ、バッテリ式ドリル、ハンマドリル、多機能工具、ハンディクリーナ、攪拌機および/またはドライバトリルであると解釈されるべきである。電気エネルギの伝達とは、この関連性において特に、手持ち式工作機械にバッテリを介しておよび/または電気ケーブル接続を介してエネルギが供給される、と解釈されるべきである。
【0029】
電動機とは、全く一般的にすべての形式の電力消費装置、例えばECモータ、リニア駆動装置、ランプ、ポンプ、ファン、コンプレッサ等であると解釈されるべきである。ブラシレスECモータの利点は特に、一方ではほぼメンテナンスフリーであり、バッテリ運転中のその高い効率によってバッテリ充電毎のより長い作業時間が可能であり、それによって特に効果的である、という点にある。さらに、ECモータを有する手持ち式工作機械は非常にコンパクトで組み立てが容易であり、この場合、特に好適には熱損失の発生も少なく、それによって、機器は、比較可能な機器のように熱くなることはなく、従って長持ちする。
【0030】
本発明のその他の特徴、使用可能性および利点は、図面に示された本発明の実施例の、以下の説明から得られる。この場合、図示の特徴は記載された特性だけを有するものであって、上記その他の改良形の特徴と組み合わせて使用することもでき、本発明をいずれかの形に限定することは想定されていない、ということに注意されたい。