(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者は、電子部品70Aの特性評価をおこなう際に、電子部品70Aを固定する粘着性フィルム50Aに加熱または冷却によりシワ53Aが発生し、このシワ53Aがプローブ端子95Aに接触してしまう場合があることを知見した(
図13参照)。この場合、粘着性フィルム50Aがプローブ端子95Aに干渉してしまうため電子部品70Aの特性を正確に評価できなくなってしまう。
【0007】
すなわち、本発明者は、電子部品の特性評価工程には、電子部品の特性評価を精度よく安定的におこなうという観点において、改善の余地があることを見出した。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、電子部品の特性評価を精度よく安定的におこなうことが可能な電子装置の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を達成するために鋭意検討を重ねた。その結果、電子部品の特性を評価する際に試料台の垂直方向において、粘着性フィルムの端部を固定するフレームの上面を試料台の電子部品搭載領域の上面よりも下方に配置させることにより、電子部品の特性評価をおこなう際に粘着性フィルムがプローブ端子に接触してしまうことを抑制でき、電子部品の特性評価を精度よく安定的におこなうことができることを見出して、本発明を完成させた。
【0010】
本発明によれば、以下に示す電子装置の製造方法、電子装置製造用粘着性フィルムおよび電子部品試験装置が提供される。
【0011】
[1]
粘着性フィルムと、上記粘着性フィルムの粘着面上に貼り付けられた1または2以上の電子部品と、を備える構造体を準備する工程(A)と、
電子部品搭載領域を有する試料台と、上記試料台に対向する位置に設けられ、かつ、プローブ端子を有するプローブカードと、を備える電子部品試験装置における上記試料台の上記電子部品搭載領域上に上記粘着性フィルムを介して上記電子部品が位置するように、上記構造体を上記電子部品試験装置内に配置する工程(B)と、
上記粘着性フィルム上に貼り付けられた状態で、上記プローブ端子を上記電子部品の端子に接触させて上記電子部品の特性を評価する工程(C)と、
上記工程(C)の後に上記粘着性フィルムから上記電子部品をピックアップする工程(D)と、
を備える電子装置の製造方法であって、
少なくとも上記工程(C)において、
上記構造体はフレームの枠内に配置され、かつ、上記粘着性フィルムの端部が上記フレームに固定されており、
上記試料台の垂直方向において、上記フレームの上面を上記試料台の上記電子部品搭載領域の上面よりも下方に配置させる電子装置の製造方法。
[2]
上記[1]に記載の電子装置の製造方法において、
上記工程(C)では、0℃以下または50℃以上200℃以下の温度環境下で上記電子部品の特性評価をおこなう電子装置の製造方法。
[3]
上記[1]または[2]に記載の電子装置の製造方法において、
少なくとも上記工程(C)において、
上記粘着性フィルムのシワが上記プローブカードの上記プローブ端子に接触しないように、上記試料台の垂直方向において上記フレームの上面を上記試料台の上記電子部品搭載領域の上面よりも下方に配置させる電子装置の製造方法。
[4]
上記[1]乃至[3]のいずれか一つに記載の電子装置の製造方法において、
上記工程(D)では、上記粘着性フィルムにおける上記電子部品が貼り付けられた領域をフィルムの面内方向に拡張させて、隣接する上記電子部品間の間隔を拡大させた状態で、上記粘着性フィルムから上記電子部品をピックアップする電子装置の製造方法。
[5]
上記[1]乃至[4]のいずれか一つに記載の電子装置の製造方法において、
上記試料台が少なくとも上記電子部品搭載領域に、真空吸引することにより上記構造体を保持する第1真空吸引手段を有する電子装置の製造方法。
[6]
上記[5]に記載の電子装置の製造方法において、
上記試料台が上記電子部品搭載領域とは異なる外周側の領域に、上記粘着性フィルムの上記電子部品が貼り付けられていない領域を真空吸引する第2真空吸引手段を有する電子装置の製造方法。
[7]
上記[6]に記載の電子装置の製造方法において、
上記第2真空吸引手段が上記試料台の外周にわたって連続的に閉じた真空吸着溝である電子装置の製造方法。
[8]
上記[5]乃至[7]のいずれか一つに記載の電子装置の製造方法において、
上記試料台の外周部に真空シール部が設けられている電子装置の製造方法。
[9]
上記[1]乃至[8]のいずれか一つに記載の電子装置の製造方法において、
上記粘着性フィルムが少なくとも柔軟性樹脂層および粘着性樹脂層を有する電子装置の製造方法。
[10]
上記[9]に記載の電子装置の製造方法において、
上記柔軟性樹脂層を構成する柔軟性樹脂がポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリイミド系エラストマー、およびポリブチレンテレフタレートからなる群から選択される一種または二種以上を含む電子装置の製造方法。
[11]
上記[1]乃至[10]のいずれか一つに記載の電子装置の製造方法で使用する上記粘着性フィルムであって、
少なくとも柔軟性樹脂層および粘着性樹脂層を有する電子装置製造用粘着性フィルム。[12]
上記[11]に記載の電子装置製造用粘着性フィルムにおいて、
上記柔軟性樹脂層の融点が100℃以上250℃以下である電子装置製造用粘着性フィルム。
[13]
上記[11]または[12]に記載の電子装置製造用粘着性フィルムにおいて、
上記柔軟性樹脂層を構成する柔軟性樹脂がポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリイミド系エラストマー、およびポリブチレンテレフタレートからなる群から選択される一種または二種以上を含む電子装置製造用粘着性フィルム。
[14]
上記[11]乃至[13]のいずれか一つに記載の電子装置製造用粘着性フィルムにおいて、
上記粘着性樹脂層を構成する粘着剤が(メタ)アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、オレフィン系粘着剤、およびスチレン系粘着剤から選択される一種または二種以上を含む電子装置製造用粘着性フィルム。
[15]
電子部品の特性を評価するために使用する電子部品試験装置であって、
電子部品搭載領域を有する試料台と、
上記試料台に対向する位置に設けられ、かつ、プローブ端子を有するプローブカードと、
枠内に試験体である上記電子部品および上記電子部品を保持する粘着性フィルムを配置し、かつ、上記粘着性フィルムの端部を固定するフレームと、
を備え、
上記プローブ端子を上記電子部品の端子に接触させて上記電子部品の特性を評価する際に、上記試料台の垂直方向において、上記フレームの上面が上記試料台の上記電子部品搭載領域の上面よりも下方に配置している電子部品試験装置。
[16]
上記[15]に記載の電子部品試験装置において、
上記試料台が少なくとも上記電子部品搭載領域に、真空吸引することにより上記電子部品および上記粘着性フィルムを保持する第1真空吸引手段を有する電子部品試験装置。
[17]
上記[16]に記載の電子部品試験装置において、
上記試料台が上記電子部品搭載領域とは異なる外周側の領域に、上記粘着性フィルムの上記電子部品が貼り付けられていない領域を真空吸引する第2真空吸引手段を有する電子部品試験装置。
[18]
上記[17]に記載の電子部品試験装置において、
上記第2真空吸引手段が上記試料台の外周にわたって連続的に閉じた真空吸着溝である電子部品試験装置。
[19]
上記[16]乃至[18]のいずれか一つに記載の電子部品試験装置において、
上記試料台の外周部に真空シール部が設けられている電子部品試験装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、電子部品の特性評価を精度よく安定的におこなうことが可能な電子装置の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には共通の符号を付し、適宜説明を省略する。また、図は概略図であり、実際の寸法比率とは一致していない。また、数値範囲の「A〜B」は特に断りがなければ、A以上B以下を表す。また、本実施形態において、「(メタ)アクリル」とは、アクリルおよびメタクリルの一方または両方を意味する。
【0016】
1.電子装置の製造方法および電子部品試験装置
はじめに、本実施形態に係る電子装置の製造方法および電子部品試験装置について説明する。
図1は、本発明に係る実施形態の電子装置の製造方法の一例を示すフロー図である。
図2および4は、本発明に係る実施形態の電子部品試験装置200および構造体100の構造の一例を模式的に示した断面図であり、(a)は電子部品試験装置200内に構造体100を配置した状態を示し、(b)は電子部品70の特性を評価している状態を示す。
図3は、本発明に係る実施形態の構造体100の構造の一例を模式的に示した平面図である。
【0017】
本実施形態に係る電子装置の製造方法は、以下の4つの工程を少なくとも備えている。
(A)粘着性フィルム50と、粘着性フィルム50の粘着面上に貼り付けられた1または2以上の電子部品70と、を備える構造体100を準備する工程
(B)電子部品搭載領域85を有する試料台80と、試料台80に対向する位置に設けられ、かつ、プローブ端子95を有するプローブカード90と、を備える電子部品試験装置200における試料台80の電子部品搭載領域85上に粘着性フィルム50を介して電子部品70が位置するように、構造体100を電子部品試験装置200内に配置する工程
(C)粘着性フィルム50上に貼り付けられた状態で、プローブ端子95を電子部品70の端子75に接触させて電子部品70の特性を評価する工程
(D)工程(C)の後に粘着性フィルム50から電子部品70をピックアップする工程
そして、少なくとも工程(C)において、構造体100はフレーム150の枠内に配置され、かつ、粘着性フィルム50の端部55がフレーム150に固定されており、試料台80の垂直方向Xにおいて、フレーム150の上面155を試料台80の電子部品搭載領域85の上面88よりも下方に配置させる。
【0018】
本発明者は、電子部品70Aの特性評価をおこなう際に、電子部品70Aを固定する粘着性フィルム50Aが加熱または冷却によりシワ53Aが発生し、このシワ53Aがプローブ端子95Aに接触してしまう場合があることを知見した(
図13参照)。この場合、粘着性フィルム50Aがプローブ端子95Aに干渉してしまうため電子部品70Aの特性を正確に評価できなくなってしまう。
すなわち、本発明者は、電子部品の特性評価工程には、電子部品の特性評価を精度よく安定的におこなうという観点において、改善の余地があることを見出した。
【0019】
本発明者は、上記課題を達成するために鋭意検討を重ねた。その結果、電子部品70の特性を評価する際に試料台80の垂直方向Xにおいて、粘着性フィルム50の端部55を固定するフレーム150の上面155を試料台80の電子部品搭載領域85の上面88よりも下方に配置させることにより、電子部品70の特性評価をおこなう際に粘着性フィルム50がプローブ端子95に接触してしまうことを抑制でき、電子部品70の特性評価を精度よく安定的におこなうことができることを見出した。
すなわち、少なくとも工程(C)において、フレーム150の上面155を試料台80の電子部品搭載領域85の上面88よりも下方に配置させることで、粘着性フィルム50が加熱または冷却によりシワ53が生じても、そのシワ53がプローブ端子95に接触してしまうことを抑制でき、その結果、粘着性フィルム50がプローブ端子95に干渉してしまうことを抑制でき、電子部品70の特性評価を精度よく安定的におこなうことができる。
以上のように、本実施形態に係る電子装置の製造方法によれば、上記工程(A)〜(D)を備えることで、電子部品70の特性評価を精度よく安定的におこなうことが可能となる。
以下、本実施形態に係る電子装置の製造方法の各工程について説明する。
【0020】
(工程(A))
はじめに、粘着性フィルム50と、粘着性フィルム50の粘着面上に貼り付けられた1または2以上の電子部品70と、を備える構造体100を準備する。
【0021】
このような構造体は、例えば、粘着性フィルム50の粘着面(例えば、後述の粘着性樹脂層10の表面)に電子部品70を貼り付け、必要に応じて粘着性フィルム50上の電子部品70を個片化することにより作製することができる。
以下、電子部品70が半導体基板および半導体チップである場合を例にして、構造体100の製造方法について具体的に説明する。
【0022】
はじめに、粘着性フィルム50の粘着面に半導体基板を貼り付ける。
粘着性フィルム50に貼り付ける半導体基板としては、例えば、シリコン、ゲルマニウム、ガリウム−ヒ素、ガリウム−リン、ガリウム−ヒ素−アルミニウム等の基板(例えば、ウェハ)が挙げられる。
また、半導体基板としては、表面に回路が形成された半導体基板を用いることが好ましい。
【0023】
粘着性フィルム50の粘着面に電子部品70を貼り付ける際は、粘着性フィルム50をフレーム150に貼り付け、その後、粘着性フィルム50の粘着面に電子部品50を貼り付けてもよいし、フレーム150と電子部品50を粘着性フィルム50に同時に貼り付けてもよい。
粘着性フィルム50の貼り付けは、人の手で行なってもよいが、通常、ロール状の表面保護フィルムを取り付けた自動貼り機によって行なう。
貼り付け時の粘着性フィルム50および半導体基板の温度には特に制限はないが、25℃〜80℃が好ましい。
また、貼り付け時の粘着性フィルム50と半導体基板との圧力については特に制限はないが、0.3MPa〜0.5MPaが好ましい。
【0024】
次いで、粘着性フィルム50上の半導体基板を半導体チップにダイシングする。
ここでいう「ダイシング」には、
(a)半導体基板に対してこの半導体基板の厚さと同じ深さの切れ込みを設けることによって半導体基板を分断し、複数の分断された半導体チップを得る操作(以下、「フルカットダイシング」ともいう)、および、
(b)レーザー光やプラズマを照射することにより、半導体基板に対し、半導体基板の切断までには至らない変質領域を設け、複数の半導体チップを得る操作(以下、「ステルスダイシング」ともいう)が含まれる。
上記ダイシングは、ダイシングブレード(ダイシングソー)、レーザー光、プラズマ等を用いて行うことができる。
【0025】
ダイシングがフルカットダイシングである場合には、ダイシングによって半導体基板が複数の半導体チップに分断される。
一方、ダイシングがステルスダイシングである場合には、ダイシングのみによっては半導体基板が複数の半導体チップに分断されるまでには至らず、ダイシング後の粘着性フィルム50の拡張によって半導体基板が分断されて複数の分断された半導体チップが得られる。なお、ステルスダイシングである場合の粘着性フィルム50の拡張は、工程(C)の前におこなってもよいし、工程(C)の後におこなってもよい。
なお、工程(A)における電子部品70には、フルカットダイシングにより得られる分断された複数の半導体チップと、ステルスダイシングにより得られる分断される前の複数の半導体チップの両方を含む。
【0026】
(工程(B))
次に、電子部品試験装置200における試料台80の電子部品搭載領域85上に粘着性フィルム50を介して電子部品70が位置するように、構造体100を電子部品試験装置200内に配置する。
【0027】
以下、本実施形態に係る電子部品試験装置200について説明する。
本実施形態に係る電子部品試験装置200は、電子部品70の特性を評価するために使用する電子部品試験装置であって、電子部品搭載領域85を有する試料台80と、試料台80に対向する位置に設けられ、かつ、プローブ端子95を有するプローブカード90と、枠内に試験体である電子部品70および電子部品70を保持する粘着性フィルム50を配置し、かつ、粘着性フィルム50の端部55を固定するフレーム150と、を備える。そして、プローブ端子95を電子部品70の端子75に接触させて電子部品70の特性を評価する際に、試料台80の垂直方向Xにおいて、フレーム150の上面155が試料台80の電子部品搭載領域85の上面88よりも下方に配置できるように構成されている。
【0028】
プローブ端子95を有するプローブカード90は特に限定されず、一般的に公知のプローブカードを用いることができる。
フレーム150の形状は特に限定されず、円形状、楕円形上、矩形状等が挙げられる。フレーム150としては、例えば、リングフレームが挙げられる。
【0029】
フレーム150の上面155を試料台80の電子部品搭載領域85の上面88よりも下方に配置する構成としては、例えば、フレーム150または試料台80を垂直方向に自由に移動できるようにする機構や、
図4に示すような試料台80の電子部品搭載領域85における段差87等が挙げられる。
【0030】
ここで、
図5および6は、本発明に係る実施形態の第1真空吸引手段210の構造の一例を模式的に示した断面図である。
図5および6に示すように、本実施形態に係る電子部品試験装置200において、試料台80が少なくとも電子部品搭載領域85に第1真空吸引手段210を有することが好ましい。
第1真空吸引手段210は真空吸引することにより電子部品70および粘着性フィルム50(構造体100)を保持する。電子部品試験装置200が第1真空吸引手段210をさらに備えることで、電子部品70の特性を評価する際に電子部品70および粘着性フィルム50(構造体100)をより安定的に試料台80に保持することができる。
【0031】
ここで、
図7および8は、本発明に係る実施形態の第1真空吸引手段210および第2真空吸引手段220の構造の一例を模式的に示した断面図である。
図9は、本発明に係る実施形態の第1真空吸引手段210および第2真空吸引手段220の構造の一例を模式的に示した平面図である。
図7および8に示すように、本実施形態に係る電子部品試験装置200において、試料台80が電子部品搭載領域85とは異なる外周側の領域89に、粘着性フィルム50の電子部品70が貼り付けられていない領域58を真空吸引する第2真空吸引手段220を有することが好ましい。
電子部品試験装置200が第2真空吸引手段220をさらに備えることで、粘着性フィルム50の加熱または冷却により発生するシワ53をより引伸ばすことができ、シワ53の高低差をより低減させることができる。これにより、電子部品70の特性評価をおこなう際に粘着性フィルム50がプローブ端子95に接触してしまうことをより一層抑制でき、電子部品70の特性評価をより一層精度よくおこなうことができる。
第1真空吸引手段210および第2真空吸引手段220は特に限定されず、公知の真空吸引手段を用いることができる。例えば、真空吸引するポンプ(例えば、真空ポンプ)と、真空ポンプに接続する吸着孔から構成される真空吸引手段等が挙げられる。ここで、第1真空吸引手段210および第2真空吸引手段220の真空ラインはそれぞれ独立していてもよいし、つながっていてもよい。ここで、
図5〜10では、第1真空吸引手段210および第2真空吸引手段220としては吸着孔のみを示し、真空ポンプは図示していない。この吸着孔に真空ポンプが接続され、真空ポンプを用いて吸着孔から電子部品70および粘着性フィルム50(構造体100)を真空吸引することができる。
【0032】
また、
図9に示すように、第2真空吸引手段220は試料台80の外周にわたって連続的に閉じた真空吸着溝であることが好ましい。
こうすることで、連続的に閉じた真空吸着溝の内側の領域に気体が流入することを抑制でき、粘着性フィルム50をより一層効果的に吸引することができる。その結果、粘着性フィルム50の加熱または冷却により発生するシワ53をより一層抑制することができる。
【0033】
ここで、
図10は、本発明に係る実施形態の真空シール部230の構造の一例を模式的に示した平面図である。
本実施形態に係る電子部品試験装置200において、試料台80の外周部に真空シール部230が設けられていることが好ましい。これにより、真空シール部230の内側の領域の真空度をより良好にすることができるため、粘着性フィルム50をより一層効果的に吸引することができる。その結果、粘着性フィルム50の加熱または冷却により発生するシワ53をより一層抑制することができる。真空シール部230の材質は特に限定されないが、シリコーンゴム等の耐熱エラストマーが好ましい。
【0034】
(工程(C))
次に、粘着性フィルム50上に貼り付けられた状態で、プローブ端子95を電子部品70の端子75に接触させて電子部品70の特性を評価する。
電子部品70の特性評価は、例えば、電子部品70の動作確認テストであり、
図2(b)および
図4(b)に示すように、プローブ端子95を有するプローブカード90を用いておこなうことができる。
例えば、電子部品70の端子75に対して、プローブカード90を介してテスタに接続されたプローブ端子95を接触させる。これにより、電子部品70とテスタとの間で、動作電力や動作試験信号等の授受を行い、電子部品70の動作特性の良否等を判別することができる。
【0035】
工程(C)において、構造体100は、
図2〜4に示すように、フレーム150の枠内に配置され、かつ、粘着性フィルム50の端部55がフレーム150に固定されている。
そして、
図2(a)および
図4(a)に示すように、試料台80の垂直方向Xにおいて、フレーム150の上面155を試料台80の電子部品搭載領域85の上面88よりも下方に配置させる。
ここで、フレーム150の上面155を試料台80の電子部品搭載領域85の上面88よりも下方に配置する方法としては、例えば、
図2(a)に示すように、フレーム150を垂直方向Xの下方に移動させる方法;試料台80を垂直方向Xの上方に移動させる方法等が挙げられる。
また、フレーム150の上面155を試料台80の電子部品搭載領域85の上面88よりも下方に配置する方法としては、例えば、
図4(a)に示すように、試料台80の電子部品搭載領域85に段差87をつける方法も採用することができる。ここで、段差87はフレーム150の上面155が試料台80の電子部品搭載領域85の上面88よりも下方に配置できるような構成であれば特に限定されず、試料台80と一体化していてもよいし、一体化していなくてもよい。
また、段差87の高さは、例えば、電子部品搭載領域85の上面88とフレーム150の上面155との高低差+電子部品70の高さ>シワ53の高さになるような高さである。
【0036】
また、少なくとも工程(C)において、
図2(b)および
図4(b)に示すように、粘着性フィルム50の加熱または冷却により発生するシワ53がプローブカード90のプローブ端子95に接触しないように、試料台80の垂直方向Xにおいてフレーム150の上面155を試料台80の電子部品搭載領域85の上面88よりも下方に配置させることが好ましい。
これにより、電子部品70の特性評価をおこなう際に粘着性フィルム50がプローブ端子95に接触してしまうことをより確実に抑制することができる。
ここで、電子部品搭載領域85の上面88とフレーム150の上面155との高低差は、例えば3〜20mm、好ましくは3〜15mm程度である。上記高低差が上記下限値以上であると、粘着性フィルム50のシワがより一層解消されるので好ましい。上記高低差が上記上限値以下であると、粘着性フィルム50が拡張して電子部品70の間隔が変化しプローブ端子95と電子部品70の位置関係がズレてしまうことを抑制することができる。
【0037】
工程(C)では、0℃以下または50℃以上200℃以下の温度環境下で電子部品70の特性評価をおこなうことが好ましく、60℃以上180℃以下の温度環境下で電子部品70の特性評価をおこなうことがより好ましく、80℃以上160℃以下の温度環境下で電子部品70の特性評価をおこなうことがさらに好ましい。こうすることで、不良発生の要因が内在している電子部品70の劣化を加速でき、電子部品70の初期不良を早期に発生させ、その不良品を除去することができる。これにより、信頼性に優れた電子部品70を歩留りよく得ることができる。
例えば、構造体100を恒温槽やオーブンに入れるか、または試料台80に設けられたヒーターで加熱することによって、上記の温度環境下とすることができる。
【0038】
(工程(D))
次いで、工程(C)の後に粘着性フィルム50から電子部品70をピックアップする。
このピックアップにより、粘着性フィルム50から電子部品70を剥離することができる。
電子部品70のピックアップは、公知の方法で行うことができる。
【0039】
工程(D)では、粘着性フィルム50における電子部品70が貼り付けられた領域をフィルムの面内方向に拡張させて、隣接する電子部品70間の間隔を拡大させた状態で、粘着性フィルム50から電子部品70をピックアップすることが好ましい。
こうすることにより、隣接する電子部品70間の間隔が拡大するため、粘着性フィルム50から電子部品70をピックアップし易くなる。さらに、粘着性フィルム50の面内方向の拡張によって生じる、電子部品70と粘着性フィルム50とのずり応力により、電子部品70と粘着性フィルム50との粘着力が低下するため、粘着性フィルム50から電子部品70をピックアップし易くなる。
【0040】
また、粘着性フィルム50として、後述の耐熱性樹脂層30、柔軟性樹脂層20および粘着性樹脂層10をこの順番に有するフィルムを使用する場合、工程(C)の後に耐熱性樹脂層30を粘着性フィルム50から剥離し、工程(D)を行うことが好ましい。これにより、粘着性フィルム50の面内方向の拡張をより容易におこなうことができる。耐熱性樹脂層30の剥離は手により行われる場合もあるが、一般には自動剥がし機と称される装置によって行うことができる。
【0041】
(工程(E))
本実施形態に係る電子装置の製造方法において、工程(D)の前に粘着性フィルム50に対して放射線を照射し、粘着性フィルム50を架橋させることで、電子部品70に対する粘着性フィルム50の粘着力を低下させる工程(E)をさらに備えてもよい。
工程(E)をおこなうことで、粘着性フィルム50から電子部品70を容易にピックアップすることができる。また、粘着性フィルム50を構成する粘着成分により電子部品70の表面が汚染されることを抑制することができる。
放射線は、例えば、粘着性フィルム50の粘着面とは反対側の面から照射される。
放射線として紫外線を用いる場合、粘着性フィルム50に対して照射する紫外線の線量は、100mJ/cm
2以上が好ましく、350mJ/cm
2以上がより好ましい。
紫外線の線量が上記下限値以上であると、粘着性フィルム50の粘着力を十分に低下させることができ、その結果、電子部品70表面に糊残りが発生することをより抑制することができる。
また、粘着性フィルム50に対して照射する紫外線の線量の上限は特に限定されないが、生産性の観点から、例えば、1500mJ/cm
2以下であり、好ましくは1200mJ/cm
2以下である。
紫外線照射は、例えば、高圧水銀ランプを用いておこなうことができる。
工程(E)を行うタイミングは特に制限されず、工程(A)と工程(B)との間、工程(B)と工程(C)との間あるいは工程(C)と工程(D)との間いずれでもよいが、電子部品搭載領域85が予め加熱されている場合は工程(A)と工程(B)との間に行うことが好ましい。構造体100を電子部品搭載領域85に配置後に昇温する場合は、工程(B)と工程(C)との間あるいは工程(C)と工程(D)との間におこなってもよい。
【0042】
(その他の工程)
本実施形態に係る電子装置の製造方法は、上記以外のその他の工程を有していてもよい。その他の工程としては、電子装置の製造方法において公知の工程を用いることができる。
【0043】
例えば、工程(D)を行った後、得られた半導体チップ等の電子部品70を回路基板に実装する工程や、ワイヤボンディング工程、封止工程等の電子部品の製造工程において一般的におこなわれている任意の工程をさらに行ってもよい。
【0044】
また、電子部品70として回路面を有する半導体基板を用いる場合、例えば、半導体基板の回路形成面に通常用いられる方法で電極形成および非回路面に保護膜形成を行う工程をさらに有してもよい。この電極形成および樹脂封止を行う工程が設けられた製造方法は、WLP(Wafer Level Package)とも呼ばれている。
また、電子部品の回路面に再配線層を形成する工程をさらに有してもよい。
半導体チップ面積を超える広い領域に再配線層を形成することにより得られる電子装置は、ファンアウトパッケージ(Fan−out Package)とも呼ばれている。
【0045】
2.粘着性フィルム
次に、本実施形態に係る電子装置の製造方法で用いる粘着性フィルム50(電子装置製造用粘着性フィルムとも呼ぶ。)について説明する。
図11および12は、本発明に係る実施形態の粘着性フィルム50の構造の一例を模式的に示した断面図である。
粘着性フィルム50は粘着性樹脂層10を少なくとも有する。また、粘着性フィルム50の柔軟性を向上させ、電子部品70のピックアップ性をより向上させる観点から、粘着性フィルム50は粘着性樹脂層10に加えて、柔軟性樹脂層20をさらに有することが好ましい。
【0046】
また、粘着性フィルム50は柔軟性および耐熱性のバランスをより良好にする観点から、粘着性樹脂層10に加えて、柔軟性樹脂層20および耐熱性樹脂層30の両方をさらに有することが好ましい。
粘着性フィルム50が粘着性樹脂層10、柔軟性樹脂層20および耐熱性樹脂層30を含む場合、粘着性フィルム50は耐熱性樹脂層30、柔軟性樹脂層20および粘着性樹脂層10をこの順番に有することが好ましい。
こうすることで、耐熱性樹脂層30により粘着性樹脂層10の変形や溶融が抑制されて電子部品70の位置ズレを抑制でき、その結果、上記工程(D)での電子部品70のピックアップをより正確におこなうことができる。すなわち、粘着性フィルム50の粘着性、耐熱性および柔軟性のバランスをより良好にすることができる。
【0047】
ここで、本実施形態において、耐熱性とは高温または低温におけるフィルムや樹脂層の寸法安定性を意味する。すなわち、耐熱性に優れるフィルムや樹脂層ほど、高温または低温における膨張や収縮、軟化等の変形や溶融等が起き難いことを意味する。
【0048】
(粘着性樹脂層)
粘着性樹脂層10は粘着性フィルム50を電子部品70に貼り付ける際に、電子部品70の表面に接触して粘着する層である。
【0049】
粘着性樹脂層10を構成する粘着剤は、(メタ)アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、オレフィン系粘着剤、スチレン系粘着剤等が挙げられる。これらの中でも、接着力の調整を容易にできる点等から、(メタ)アクリル系重合体をベースポリマーとする(メタ)アクリル系粘着剤が好ましい。
【0050】
粘着性樹脂層10を構成する粘着剤としては、放射線により粘着力を低下させる放射線架橋型粘着剤を用いることができる。放射線架橋型粘着剤により構成された粘着性樹脂層10は、放射線の照射により架橋して粘着力が著しく減少するため、電子部品70のピックアップ工程において、粘着性樹脂層10から電子部品70をピックアップし易くなる。放射線としては、紫外線、電子線、赤外線等が挙げられる。
放射線架橋型粘着剤としては、紫外線架橋型粘着剤が好ましい。
【0051】
(メタ)アクリル系粘着剤に含まれる(メタ)アクリル系重合体としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル化合物の単独重合体、(メタ)アクリル酸エステル化合物とコモノマーとの共重合体等が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの(メタ)アクリル酸エステル化合物は一種単独で用いてもよく、二種以上を併用して用いてもよい。
また、(メタ)アクリル系共重合体を構成するコモノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、(メタ)アクリルニトリル、(メタ)アクリルアマイド、スチレン、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、(メタ)アクリルアマイド、メチロール(メタ)アクリルアマイド、無水マレイン酸等が挙げられる。これらのコモノマーは一種単独で用いてもよく、二種以上を併用して用いてもよい。
【0052】
放射線架橋型粘着剤は、例えば、上記(メタ)アクリル系粘着剤等の粘着剤と、架橋性化合物(炭素−炭素二重結合を有する成分)と、光重合開始剤または熱重合開始剤と、を含む。
【0053】
架橋性化合物としては、例えば、分子中に炭素−炭素二重結合を有し、ラジカル重合により架橋可能なモノマー、オリゴマーまたはポリマー等が挙げられる。このような架橋性化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と多価アルコールとのエステル;エステル(メタ)アクリレートオリゴマー;2−プロペニルジ−3−ブテニルシアヌレート、2−ヒドロキシエチルビス(2−(メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2−メタクリロキシエチル)イソシアヌレート等のイソシアヌレートまたはイソシアヌレート化合物等が挙げられる。
なお、粘着剤が、ポリマーの側鎖に炭素−炭素二重結合を有する放射線架橋型ポリマーである場合は、架橋性化合物を加えなくてもよい。
【0054】
架橋性化合物の含有量は、粘着剤100質量部に対して5〜900質量部が好ましく、20〜200質量部がより好ましい。架橋性化合物の含有量が上記範囲であることにより、上記範囲よりも少ない場合に比べて粘着力の調整がし易くなり、上記範囲よりも多い場合に比べて、熱や光に対する感度が高すぎることによる保存安定性の低下が起こりにくい。
【0055】
光重合開始剤としては、放射線を照射することにより開裂しラジカルを生成する化合物であればよく、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインアルキルエーテル類;ベンジル、ベンゾイン、ベンゾフェノン、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等の芳香族ケトン類;ベンジルジメチルケタール等の芳香族ケタール類;ポリビニルベンゾフェノン;クロロチオキサントン、ドデシルチオキサントン、ジメチルチオキサントン、ジエチルチオキサントン等のチオキサントン類等が挙げられる。
【0056】
熱重合開始剤としては、例えば、有機過酸化物誘導体やアゾ系重合開始剤等が挙げられる。加熱時に窒素が発生しない点から、好ましくは有機過酸化物誘導体である。熱重合開始剤としては、例えば、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステルおよびパーオキシジカーボネート等が挙げられる。
【0057】
粘着剤には架橋剤を添加してもよい。架橋剤としては、例えば、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリストールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル等のエポキシ系化合物;テトラメチロールメタン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、トリメチロールプロパン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、N,N'−ジフェニルメタン−4,4'−ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)、N,N'−ヘキサメチレン−1,6−ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)等のアジリジン系化合物;テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ポリイソシアネート等のイソシアネート系化合物等が挙げられる。
【0058】
粘着性樹脂層10の厚みは特に制限されないが、例えば、1μm以上100μm以下であることが好ましく、3μm以上50μm以下であることがより好ましい。
【0059】
粘着性樹脂層10は、例えば、基材層や柔軟性樹脂層20上に粘着剤塗布液を塗布することにより形成することができる。
粘着剤塗布液を塗布する方法としては、従来公知の塗布方法、例えば、ロールコーター法、リバースロールコーター法、グラビアロール法、バーコート法、コンマコーター法、ダイコーター法等が採用できる。塗布された粘着剤の乾燥条件には特に制限はないが、一般的には、80〜200℃の温度範囲において、10秒〜10分間乾燥することが好ましい。更に好ましくは、80〜170℃において、15秒〜5分間乾燥する。架橋剤と粘着剤との架橋反応を十分に促進させるために、粘着剤塗布液の乾燥が終了した後、40〜80℃において5〜300時間程度加熱してもよい。
【0060】
(柔軟性樹脂層)
柔軟性樹脂層20は、粘着性フィルム50の柔軟性や伸縮性等の特性を良好にすることを目的として設けられる層である。
柔軟性樹脂層20を設けることにより、粘着性フィルム50の伸縮性や柔軟性が向上し、電子部品70をピックアップする工程(D)において粘着性フィルム50を面内方向に拡張させることがより容易にできる。
【0061】
柔軟性樹脂層20は面内方向に拡張できるものであれば特に限定されないが、柔軟性や伸縮性等の特性に優れ、かつ、高温または低温で電子部品70の特性評価をおこなう際に粘着性樹脂層10との接着性を維持できる程度の耐熱性があるものが好ましい。
上記柔軟性樹脂層20を構成する柔軟性樹脂としては、例えば、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリイミド系エラストマー、およびポリブチレンテレフタレート等から選択される一種または二種以上が挙げられる。
【0062】
柔軟性樹脂層20の融点は100℃以上250℃以下であることが好ましい。
このような柔軟性樹脂層20を用いると、高温または低温で電子部品70の特性評価をおこなう際の粘着性フィルム50の熱膨張をより一層抑制することができる。
【0063】
柔軟性樹脂層20の厚みは特に制限されないが、例えば、10μm以上500μm以下であることが好ましく、20μm以上300μm以下であることがより好ましく、30μm以上250μm以下であることがさらに好ましく、50μm以上200μm以下であることが特に好ましい。
【0064】
(耐熱性樹脂層)
耐熱性樹脂層30は、粘着性フィルム50の取り扱い性や機械的特性、耐熱性等の特性をより良好にすることを目的として設けられる層である。
耐熱性樹脂層30は、高温または低温で電子部品70の特性評価をおこなう際に、電子部品70の位置ズレが起きるほどの変形や溶融が起きない程度の耐熱性があれば特に限定されないが、例えば、耐熱性樹脂フィルムを用いることができる。
【0065】
上記耐熱性樹脂フィルムを構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ナイロン−6、ナイロン−66、ポリメタキシレンアジパミド等のポリアミド;ポリイミド;ポリエーテルイミド;ポリアミドイミド;ポリカーボネート;変性ポリフェニレンエーテル;ポリアセタール;ポリアリレート;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリフェニレンスルフィド;ポリエーテルエーテルケトン;フッ素系樹脂;液晶ポリマー;塩化ビニリデン樹脂;ポリベンゾイミダゾール;ポリベンゾオキサゾール;ポリメチルペンテン等から選択される一種または二種以上を挙げることができる。
【0066】
これらの中でも、耐熱性や機械的強度、透明性、価格等のバランスに優れる観点から、ポリイミド、ポリアミド、およびポリエステルから選択される一種または二種以上が好ましい。
【0067】
耐熱性樹脂層30の融点は200℃以上であることが好ましく、220℃以上であることがより好ましい。あるいは、耐熱性樹脂層30は融点を示さないものであることが好ましく、分解温度が200℃以上であることがより好ましく、分解温度が220℃以上であることがさらに好ましい。
このような耐熱性樹脂層30を用いると、高温または低温で電子部品70の特性評価をおこなう際の粘着性フィルム50の変形をより一層抑制することができる。
【0068】
耐熱性樹脂層30は、単層であっても、二種以上の層であってもよい。
また、耐熱性樹脂層30を形成するために使用する樹脂フィルムの形態としては、延伸フィルムであってもよいし、一軸方向または二軸方向に延伸したフィルムであってもよいが、耐熱性樹脂層30の耐熱性および機械的強度を向上させる観点から、一軸方向または二軸方向に延伸したフィルムであることが好ましい。
【0069】
耐熱性樹脂層30の厚さは、良好なフィルム特性を得る観点から、好ましくは10μm以上1000μm以下、より好ましくは10μm以上500μm以下、さらに好ましくは20μm以上300μm以下である。
耐熱性樹脂層30は他の層との接着性を改良するために、表面処理を行ってもよい。具体的には、コロナ処理、プラズマ処理、アンダーコート処理、プライマーコート処理等を行ってもよい。
【0070】
耐熱性樹脂層30は柔軟性樹脂層20に対して剥離可能なように積層されていることが好ましい。
剥離可能に積層する方法は特に限定されないが、例えば、剥離可能な接着層(図示しない)を介して積層する方法が挙げられる。剥離可能な接着層とは、剥離の際に放射線や熱等の何らかの刺激を加えることによって容易に剥離することが可能な層をいう。
【0071】
このような剥離可能な接着層としては、例えば、(1)放射線照射により粘着力を低減できる放射線架橋型粘着剤により構成された接着層、(2)加熱により膨張して粘着力を低減できる加熱膨張型粘着剤により構成された接着層、(3)加熱により収縮して粘着力を低減できる、収縮性フィルムを基材とした両面粘着性フィルムにより構成された接着層等が挙げられる。
【0072】
放射線架橋型粘着剤は、放射線照射前には耐熱性樹脂層30および柔軟性樹脂層20に対して十分な接着力を有し、放射線照射後には接着力が著しく減少するものである。すなわち、放射線照射前には耐熱性樹脂層30および柔軟性樹脂層20を接着でき、放射線照射後には柔軟性樹脂層20から耐熱性樹脂層30を容易に剥離することができる。
放射線架橋型粘着剤としては、一般的に公知の紫外線架橋型粘着剤等の放射線架橋型粘着剤を用いることができる。
【0073】
加熱膨張型粘着剤は粘着剤中に熱膨張性微粒子や発泡剤等が分散している粘着剤をいう。粘着剤としては、一般的に公知の粘着剤を用いることができ、例えば、(メタ)アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤、ポリウレタン系粘着剤、ポリビニルエーテル系粘着剤等が挙げられる。
熱膨張性微粒子としては、例えば、イソブタン、プロパン、ペンタン等の加熱によって容易にガス化して膨張する物質を、弾性を有する殻内に内包させた微粒子が挙げられる。
発泡剤としては、例えば、熱分解して、水、炭酸ガス、窒素を発生させる能力を有する化学物質等挙げられる。
加熱により、熱膨張性微粒子や発泡剤が膨張すると、接着層の表面状態が変化し、柔軟性樹脂層20と耐熱性樹脂層30との接着力を低下させることができ、その結果、柔軟性樹脂層20から耐熱性樹脂層30を容易に剥離することができる。
【0074】
収縮性フィルムを基材とした両面粘着性フィルムに使用される収縮フィルムとしては、加熱により収縮する熱収縮フィルムが挙げられる。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等の一軸または二軸延伸フィルム等を挙げることができる。
収縮性フィルムの両面に設けられる粘着剤としては、一般的に公知の粘着剤を用いることができ、例えば、(メタ)アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤、ポリウレタン系粘着剤、ポリビニルエーテル系粘着剤等が挙げられる。
加熱により、基材の収縮性フィルムが収縮すると、接着層の表面状態が変化し、柔軟性樹脂層20と耐熱性樹脂層30との接着力を低下させることができ、その結果、柔軟性樹脂層20から耐熱性樹脂層30を容易に剥離することができる。
【0075】
本実施形態に係る粘着性フィルム50は、粘着性樹脂層10上に離型フィルムをさらに積層させてもよい。離型フィルムとしては、例えば、離型処理が施されたポリエステルフィルム等が挙げられる。
【0076】
本実施形態に係る粘着性フィルム50の全光線透過率は、好ましくは80%以上であり、より好ましくは85%以上である。こうすることで、粘着性フィルム50に透明性を付与することができる。そして、粘着性フィルム50の全光線透過率を上記下限値以上とすることにより、粘着性樹脂層10へより効果的に放射線を照射することができ、放射線照射効率を向上させることができる。なお、粘着性フィルム50の全光線透過率は、JIS
K7105(1981)に準じて測定することが可能である。
【0077】
次に、本実施形態に係る粘着性フィルム50の製造方法の一例について説明する。
本実施形態に係る粘着性フィルム50は、基材層や柔軟性樹脂層20上に粘着剤塗布液を塗布し乾燥させることによって、粘着性樹脂層10を形成することにより得ることができる。
柔軟性樹脂層20は、例えば、基材層や耐熱性樹脂層30の一方の面に押出しラミネート法によって形成することができる。また、耐熱性樹脂層30と柔軟性樹脂層20とは共押出成形によって形成してもよいし、フィルム状の耐熱性樹脂層30とフィルム状の柔軟性樹脂層20とをラミネート(積層)して形成してもよい。
【0078】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0079】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0080】
この出願は、2016年10月27日に出願された日本出願特願2016−210616号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。