特許第6726297号(P6726297)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6726297処理装置、サーバ装置、出力方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6726297
(24)【登録日】2020年6月30日
(45)【発行日】2020年7月22日
(54)【発明の名称】処理装置、サーバ装置、出力方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20200713BHJP
   G08G 1/0962 20060101ALI20200713BHJP
   B60R 11/02 20060101ALI20200713BHJP
   H04R 3/00 20060101ALI20200713BHJP
【FI】
   G08G1/16 C
   G08G1/0962
   B60R11/02 M
   H04R3/00 320
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-547733(P2018-547733)
(86)(22)【出願日】2017年10月25日
(86)【国際出願番号】JP2017038572
(87)【国際公開番号】WO2018079623
(87)【国際公開日】20180503
【審査請求日】2019年4月19日
(31)【優先権主張番号】特願2016-208426(P2016-208426)
(32)【優先日】2016年10月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(74)【代理人】
【識別番号】100127236
【弁理士】
【氏名又は名称】天城 聡
(72)【発明者】
【氏名】河内 洋人
(72)【発明者】
【氏名】藤吉 昭光
(72)【発明者】
【氏名】奥山 洋一
【審査官】 田中 将一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−051333(JP,A)
【文献】 特開2001−337694(JP,A)
【文献】 特開2011−233090(JP,A)
【文献】 特開2008−035472(JP,A)
【文献】 特開2008−239099(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 − 99/00
B60R 21/00 − 21/13
B60R 21/34 − 21/38
H04R 3/00
H04R 3/02 − 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両外部の環境音を集音する集音部と、
前記集音部にて集音した環境音のうち、一部の音を強調するためのフィルタ処理を行うフィルタ部と、
前記フィルタ処理された音を含む環境音を車両内部に出力させる処理部と、
自車両の現在位置を検出する検出部と、
を有し、
前記フィルタ部は、前記現在位置に基づき前記一部の音を強調する周波数フィルタを決定し、当該決定された周波数フィルタに基づき前記フィルタ処理を行う処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車載装置において、
前記フィルタ部は、地図情報に基づき特定される前記現在位置の位置属性に対応した前記フィルタ処理を行う処理装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車載装置において、
前記集音部は、複数のマイクで車外の音を集音し、
前記処理部は、前記現在位置に応じて、一部のマイクで集音され、車内に設置されたスピーカに入力される信号の増幅率を、他のマイクで集音され、前記スピーカに入力される信号の増幅率と異ならせる処理装置。
【請求項4】
請求項1から3いずれか一項に記載の車載装置において、
前記フィルタ部は、前記フィルタ処理を行っているときにおける、前記一部の音でなく、かつ前記車両の搭乗者に聴取させる必要のある外部音の前記集音部による集音状況に応じて、前記フィルタ処理を継続するか否かを判断する処理装置。
【請求項5】
複数の車両から、当該車両の位置情報、当該位置情報が示す位置において選択された周波数フィルタの種別情報、並びに、当該位置に置ける周辺の環境及び日時の少なくとも一方を含む条件情報を取得する取得部と、
前記取得部により取得された情報に基づき、所定の位置において選択されるべき周波数フィルタの種別及び当該周波数フィルタを選択する際の条件を含む参照情報を生成する生成部と、
他の車両から送信される位置情報及び条件情報、並びに、前記参照情報に基づき、前記他の車両が選択する周波数フィルタを決定する決定部と、
を有するサーバ装置。
【請求項6】
コンピュータが、
車両外部の環境音を集音する集音工程と、
前記集音部にて集音した環境音のうち、一部の音を強調するためのフィルタ処理を行うフィルタ工程と、
前記フィルタ処理された音を含む環境音を車両内部に出力させる処理工程と、
自車両の現在位置を検出する検出工程と、
を実行し、
前記フィルタ工程では、前記現在位置に基づき前記一部の音を強調する周波数フィルタを決定し、当該決定された周波数フィルタに基づき前記フィルタ処理を行う出力方法。
【請求項7】
コンピュータを、
車両外部の環境音を集音する集音手段、
前記集音部にて集音した環境音のうち、一部の音を強調するためのフィルタ処理を行うフィルタ手段と、
前記フィルタ処理された音を含む環境音を車両内部に出力させる処理手段、
自車両の現在位置を検出する検出手段、
として機能させ、
前記フィルタ手段は、前記現在位置に基づき前記一部の音を強調する周波数フィルタを決定し、当該決定された周波数フィルタに基づき前記フィルタ処理を行うプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理装置、サーバ装置、出力方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車外の周囲音を集音器で収集し、収集した音を提示する装置が開示されている。当該装置は、車両の移動方向の周囲音を抑圧して提示したり、運転手の視線方向の周囲音を抑圧して提示したり、車内の走行雑音の周波数帯域を抑圧して提示したり、車速情報に応じて音圧レベルを調整したり、移動性音源の検出に応じて音の提示を開始したりできる。
【0003】
特許文献2には、救急車、消防車、踏切等が備える音声発生装置と、車外で発生した音を車内に通知する車載音声通知装置とを有するシステムが開示されている。音声発生装置は、音声信号の種別を示す識別情報を音声信号に重畳させた信号に基づき、所定の音を出力する。車載音声通知装置は、収集した音声信号から上記識別情報を抽出する。そして、車載音声通知装置は、抽出した識別情報に基づき、車内に通知すべきか判断する。
【0004】
特許文献3には、車外の周囲音を集音器で収集し、収集した音を提示する装置が開示されている。当該装置は、自車両周囲に存在する物体を検出する。そして、物体が検出された場合には、所定の音を提示し、物体が検出されていない場合には、当該所定の音を提示しない。所定の音は、マイクで集音された音と、当該装置で生成された仮想音とを合成した音である。検出された物体が音を発する物体である場合、マイクで集音された音により当該物体の検出が通知される。検出された物体が音を発しない物体である場合、仮想音により当該物体の検出が通知される。
【0005】
特許文献4には、集音した車外の音に基づき、自車両に接近する接近車両を検出する装置が開示されている。当該装置は、自車両が走行する走行路の形状や、接近車両が走行する走行路の路面種類等を検出し、検出結果に基づいて、集音特性を調整する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−258802号公報
【特許文献2】特開2015−32155号公報
【特許文献3】特開2009−251799号公報
【特許文献4】特開2011−232293号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1乃至4に記載の技術によれば、自車両の周囲の音を運転手に通知することができる。しかし、自車両の周囲には様々な音が混在する。混在する音の中には、運転手への通知が望まれる音、及び、運転手への通知が不要な音が混在する。単に、車外の音を集音し、車内のスピーカから出力させる場合、運転手に通知される音の中に、運転手への通知が望まれる音、及び、運転手への通知が不要な音が混在する。結果、運転手への通知が望まれる音を運転手が聞き逃す等の不都合が発生し得る。
【0008】
本発明の課題の一例は、自車両の周囲の音を運転手に通知するシステムにおいて発生し得る上述のような不都合を軽減する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、
車両外部の環境音を集音する集音部と、
前記集音部にて集音した環境音のうち、一部の音を強調するためのフィルタ処理を行うフィルタ部と、
前記フィルタ処理された音を含む環境音を車両内部に出力させる処理部と、
自車両の現在位置を検出する検出部と、
を有し、
前記フィルタ部は、前記現在位置に基づき前記一部の音を強調する周波数フィルタを決定し、当該決定された周波数フィルタに基づき前記フィルタ処理を行う処理装置である。
【0010】
請求項5に記載の発明は、
複数の車両から、当該車両の位置情報、当該位置情報が示す位置において選択された周波数フィルタの種別情報、並びに、当該位置に置ける周辺の環境及び日時の少なくとも一方を含む条件情報を取得する取得部と、
前記取得部により取得された情報に基づき、所定の位置において選択されるべき周波数フィルタの種別及び当該周波数フィルタを選択する際の条件を含む参照情報を生成する生成部と、
他の車両から送信される位置情報及び条件情報、並びに、前記参照情報に基づき、前記他の車両が選択する周波数フィルタを決定する決定部と、
を有するサーバ装置である。
【0011】
請求項6に記載の発明は、
コンピュータが、
車両外部の環境音を集音する集音工程と、
前記集音部にて集音した環境音のうち、一部の音を強調するためのフィルタ処理を行うフィルタ工程と、
前記フィルタ処理された音を含む環境音を車両内部に出力させる処理工程と、
自車両の現在位置を検出する検出工程と、
を実行し、
前記フィルタ工程では、前記現在位置に基づき前記一部の音を強調する周波数フィルタを決定し、当該決定された周波数フィルタに基づき前記フィルタ処理を行う出力方法である。
【0012】
請求項7に記載の発明は、
コンピュータを、
車両外部の環境音を集音する集音手段、
前記集音部にて集音した環境音のうち、一部の音を強調するためのフィルタ処理を行うフィルタ手段と、
前記フィルタ処理された音を含む環境音を車両内部に出力させる処理手段、
自車両の現在位置を検出する検出手段、
として機能させ、
前記フィルタ手段は、前記現在位置に基づき前記一部の音を強調する周波数フィルタを決定し、当該決定された周波数フィルタに基づき前記フィルタ処理を行うプログラムである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
上述した目的、およびその他の目的、特徴および利点は、以下に述べる好適な実施の形態、およびそれに付随する以下の図面によってさらに明らかになる。
【0014】
図1】本実施形態の処理装置の機能ブロック図の一例を示す図である。
図2】本実施形態の処理装置のハードウエア構成の一例を示すブロック図である。
図3】本実施形態の処理装置が処理する情報の一例を模式的に示す図である。
図4】本実施形態の処理装置の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図5】本実施形態の処理装置の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図6】本実施形態の処理装置の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図7】サーバ装置に蓄積される情報の一例を模式的に示す図である。
図8】本実施形態の処理装置の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0016】
<本実施形態の概要>
本実施形態の処理装置は、例えば車両に搭載される車載装置であってもよいし、車両内に持ち込まれる携帯端末(例:スマートフォン、タブレット、携帯電話など)であってもよい。処理装置は、集音部と、フィルタ部と、処理部とを有する。集音部は、車両外部(以下、「車外」という場合がある)の環境音(以下、「車外の音」という場合がある)を集音し、電気信号に変換する。フィルタ部は、集音部にて集音した環境音のうち、当該環境音を集音した当該車両の現在位置を特徴つける音を強調するためのフィルタ処理を行う。処理部は、フィルタ処理された音を含む環境音を車両内部に出力させる。
【0017】
このような本実施形態の処理装置によれば、フィルタ処理により、所望の音源の音(運転手への通知が望まれる音、現在位置を特徴つける音)を残しつつ、他の音源の音(運転手への通知が不要な音)を軽減して、車内に設置されたスピーカから車外の音を出力させることができる。
【0018】
また、本実施形態の処理装置は、さらに検出部を有することができる。検出部は、自車両の現在位置を検出する。そして、フィルタ部は、現在位置に基づき周波数フィルタを選択する。このような処理装置によれば、現在位置に応じて、残す音及び軽減する音を適切に選択し、車内に設置されたスピーカから車外の音を出力させることができる。
【0019】
<本実施形態の詳細>
次に、本実施形態の処理装置の構成を詳細に説明する。図1に、本実施形態の処理装置10の機能ブロック図の一例を示す。図示するように、本実施形態の処理装置10は、集音部11と、処理部12と、検出部13と、フィルタ部14とを有する。
【0020】
機能ブロック図で示される各機能部は、任意のコンピュータのCPU(Central Processing Unit)、メモリ、メモリにロードされるプログラム、そのプログラムを格納するハードディスク等の記憶ユニット(あらかじめ装置を出荷する段階から格納されているプログラムのほか、CD(Compact Disc)等の記憶媒体やインターネット上のサーバ等からダウンロードされたプログラムをも格納できる)、ネットワーク接続用インターフェイスを中心にハードウエアとソフトウエアの任意の組合せによって実現される。そして、その実現方法、装置にはいろいろな変形例があることは、当業者には理解されるところである。
【0021】
図2は、本実施形態の処理装置10のハードウエア構成を例示するブロック図である。図2に示すように、処理装置10は、プロセッサ1A、メモリ2A、入出力インターフェイス3A、周辺回路4A、バス5Aを有する。周辺回路4Aには、様々なモジュールが含まれる。なお、周辺回路4Aを有さなくてもよい。
【0022】
バス5Aは、プロセッサ1A、メモリ2A、周辺回路4A及び入出力インターフェイス3Aが相互にデータを送受信するためのデータ伝送路である。プロセッサ1Aは、例えばCPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)などの演算処理装置である。メモリ2Aは、例えばRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)などのメモリである。入出力インターフェイス3Aは、入力装置(例:キーボード、マウス、マイク等)、外部装置、外部サーバ、外部センサ等から情報を取得するためのインターフェイスや、出力装置(例:ディスプレイ、スピーカ、プリンター、メーラ等)、外部装置、外部サーバ等に情報を出力するためのインターフェイスなどを含む。プロセッサ1Aは、各モジュールに指令を出し、それらの演算結果をもとに演算を行うことができる。
【0023】
以下、図1の機能ブロック図で示される各機能部の機能を詳細に説明する。
【0024】
検出部13は、自車両の現在位置を検出する。「自車両」は、処理装置10を搭載した車両を意味する(以下同様)。現在位置を取得する手段は、例えばGPS(Global Positioning System)を利用するものなどが考えられるが、特段限定されない。
【0025】
集音部11は、車外の音を集音し、電気信号に変換する。集音部11は、1つ又は複数のマイクを有する。マイクは、車外の音を集音する任意の位置に設置される。例えば、4つのマイクが自車両の右前方、左前方、右後方、左後方の4か所に設置されてもよい。
【0026】
フィルタ部14は、集音部11にて集音した環境音のうち、当該環境音を集音した当該車両の現在位置を特徴つける音を強調するためのフィルタ処理を行う。
【0027】
フィルタ部14は、自車両の現在位置に基づき複数の周波数フィルタから現在位置を特徴つける音を強調する周波数フィルタを選択し、当該選択された周波数フィルタに基づきフィルタ処理を行ってもよい。
【0028】
また、フィルタ部14は、地図情報に基づき特定される現在位置の位置属性に対応したフィルタ処理を行ってもよい。
【0029】
また、フィルタ部14は、フィルタ処理を行っているときにおける、自車両の現在位置を特徴つける音でなく、かつ自車両の搭乗者に聴取させる必要のある外部音の集音部11による集音状況に応じて、フィルタ処理を継続するか否かを判断してもよい。
【0030】
処理部12は、フィルタ部14によりフィルタ処理された音を含む環境音を車両内部に出力させる。処理部12は、フィルタ処理後の電気信号に基づき、車内に設置されたアンプ及びスピーカを介して車外の音を出力させる。処理部12は、集音部11が生成した電気信号に所定の処理を実行してもよい。例えば、処理部12は、電気信号に対してゲイン調整(増幅処理、減衰処理等)を行ってもよい。また、複数のマイクで集音される場合には、処理部12は、複数のマイク各々に対応する複数の音波を合成する処理(複数のマイクで集音した複数の音の合成)を行ってもよい。なお、処理部12は、電気信号に対してその他の処理を行ってもよい。
【0031】
処理部12は、フィルタ部14によるフィルタ処理、及び、上述のような各種処理後の信号に基づき、車内に設置されたスピーカを介して車外の音を出力させる。処理部12は、集音部11で集音された音を、リアルタイムにスピーカから出力させる。集音から出力までのタイムロスはできるだけ小さいのが好ましい。スピーカの数及び設置位置は設計的事項である。
【0032】
ここで、フィルタ部14によるフィルタ処理及び処理部12によるゲイン調整の具体例を説明する。フィルタ部14は、一部の周波数帯域の成分を通し、他の周波数帯域の成分を低減する周波数フィルタを用いて、フィルタ処理を行う。
【0033】
複数の周波数フィルタは、低減する周波数帯域が互いに異なる。例えば、複数の周波数フィルタの中には、「人間の声の周波数帯域の成分を通し、その他の周波数帯域の成分を低減する周波数フィルタ」、「人間の子供の声の周波数帯域の成分を通し、その他の周波数帯域の成分を低減する周波数フィルタ」、「自転車の音(例:ブレーキ音、ベル音、車輪の回転音等)の周波数帯域の成分を通し、その他の周波数帯域の成分を低減する周波数フィルタ」、「海の波の音の周波数帯域の成分を通し、その他の周波数帯域の成分を低減する周波数フィルタ」、及び、「鳥の鳴き声の周波数帯域の成分を通し、その他の周波数帯域の成分を低減する周波数フィルタ」の中のいずれか1つまたは複数が含まれてもよい。なお、例示した周波数フィルタはあくまで一例であり、これらに限定されない。
【0034】
フィルタ部14は、検出部13により検出された現在位置に基づき、周波数フィルタを選択することができる。例えば、フィルタ部14は、現在位置の属性(位置属性)を特定してもよい。そして、フィルタ部14は、特定した位置属性に対応する周波数フィルタを選択してもよい。以下、当該処理の一例を説明する。
【0035】
例えば、フィルタ部14は、各位置の属性(位置属性)を示す地図情報に基づき、現在位置の位置属性を特定してもよい。位置属性としては、例えば、「スクールゾーン」、「自転車の交通量が多い」、「海沿い」、「鳥の鳴き声が聞こえる」等が例示されるがこれらに限定されない。なお、地図情報では、ある位置に1つの位置属性を対応付けてもよいし、ある位置に複数の位置属性を対応付けてもよい。また、位置属性を対応付けられていない位置が存在してもよい。
【0036】
そして、フィルタ部14は、特定した現在位置の位置属性に対応する周波数フィルタを選択する。例えば、フィルタ部14は、図3に示すように、位置属性と周波数フィルタのID(identifier)とを対応付けた対応情報を保持しておいてもよい。そして、フィルタ部14は、当該対応情報に基づき、現在位置の位置属性に対応する周波数フィルタを選択してもよい。
【0037】
「位置属性:スクールゾーン」に対応する周波数フィルタは、例えば、「人間の子供の声(スクールゾーン(現在位置)を特徴つける音)の周波数帯域の成分を通し、その他の周波数帯域の成分を低減する周波数フィルタ」であってもよい。また、「位置属性:自転車の交通量が多い」に対応する周波数フィルタは、例えば、「自転車の音(自転車の交通量が多い位置(現在位置)を特徴つける音、例えば自転車のブレーキ音、ベル音、車輪の回転音等)の周波数帯域の成分を通し、その他の周波数帯域の成分を低減する周波数フィルタ」であってもよい。
【0038】
また、「位置属性:海沿い」に対応する周波数フィルタは、例えば、「海の波の音(海沿い(現在位置)を特徴つける音)の周波数帯域の成分を通し、その他の周波数帯域の成分を低減する周波数フィルタ」であってもよい。また、「位置属性:鳥の鳴き声が聞こえる」に対応する周波数フィルタは、例えば、「鳥の鳴き声(鳥の鳴き声が聞こえる位置(現在位置)を特徴つける音)の周波数帯域の成分を通し、その他の周波数帯域の成分を低減する周波数フィルタ」であってもよい。
【0039】
フィルタ部14は、例えば上述のようにして選択した周波数フィルタを用いて、集音部11が生成した電気信号にフィルタ処理を行う。
【0040】
なお、図3では図示していないが、フィルタ部14は、複数の位置属性の組み合わせと周波数フィルタのID(identifier)とを対応付けた対応情報を保持しておいてもよい。例えば、「位置属性:スクールゾーン」と「位置属性:自転車の交通量が多い」の組み合わせに対応して、周波数フィルタが対応付けられてもよい。当該周波数フィルタは、「人間の子供の声の周波数帯域の成分、及び、自転車の音(例:ブレーキ音、ベル音、車輪の回転音等)の周波数帯域の成分を通し、その他の周波数帯域の成分を低減する周波数フィルタ」であってもよい。
【0041】
現在位置に複数の位置属性が対応付けられている場合、フィルタ部14は、複数の位置属性の組み合わせに対応する周波数フィルタを選択することができる。
【0042】
また、現在位置にいずれの位置属性も対応付けられていない場合、フィルタ部14は、周波数フィルタを選択しなくてもよい。この場合、フィルタ処理を行わずに車外の音がスピーカら出力されてもよい。
【0043】
ところで、上述の通り、現在位置の位置属性に応じて、周波数フィルタを通過させてスピーカから出力させる音、すなわち、運転手に通知する音が異なる。例えば、スクールゾーンでは子供の声を通知し、自転車の交通量が多い位置では自転車の音を通知し、海沿いでは海の波の音を通知し、鳥の鳴き声が聞こえる位置では鳥の鳴き声を通知するという具合である。
【0044】
このように、運転手に通知する音は複数種類(例:人間の話す声、自転車の音、海の波の音、鳥の鳴き声)存在し得るが、それらは、音源から発せられる音の大きさが互いに異なる。
【0045】
そこで、処理部12は、現在位置の位置属性に応じて(すなわち、現在位置に応じて)、スピーカに入力される信号の増幅率を変えてもよい。増幅率は0以上の値である。具体的には、処理部12は、現在位置で運転手に通知する音を適切な大きさ(大きすぎず、かつ、小さすぎず)で運転手に通知できるように、上記増幅率を設定してもよい。
【0046】
また、集音部11が複数のマイクで車外の音を集音する場合、処理部12は、一部のマイク(第1のグループのマイク)で集音され、スピーカに入力される信号の増幅率を、他のマイク(第2のグループのマイク)で集音され、スピーカに入力される信号の増幅率と異ならせてもよい。
【0047】
処理部12は、自車両の現在位置に基づき、一部のマイク(第1のグループのマイク)を決定することができる。すなわち、処理部12は、自車両の現在位置に基づき、複数のマイクを、第1のグループ及び第2のグループにグループ分けすることができる。
【0048】
例えば、自車両の現在位置の位置属性が「海沿い」である場合、処理部12は、海が存在する側に位置するマイクで集音された音の信号の増幅率を、他のマイクで集音された音の信号の増幅率よりも大きくしてもよい。例えば、海が自車両の右側に位置する場合、処理部12は、自車両の右側(例:右前方、右後方等)に位置するマイクを第1のグループに分類し、自車両の左側(例:左前方、左後方等)に位置するマイクを第2のグループに分類してもよい。そして、第1のグループで集音された音の信号の増幅率を、第2のグループで集音された音の信号の増幅率よりも大きくしてもよい。
【0049】
次に、本実施形態の処理装置10の処理の流れの一例を説明する。
【0050】
図4に示すように、車外の音をスピーカから出力する処理が開示されると、集音部11は、車外の音を集音する(S10)。
【0051】
そして、フィルタ部14は、集音部11により生成された電気信号に対して、設定されている周波数フィルタでフィルタ処理を行う。なお、いずれの周波数フィルタも設定されていない場合、フィルタ部14は、フィルタ処理を行わなくてもよい。
【0052】
S11の後、処理部12は、スピーカから車外の音を出力させる(S12)。S11でフィルタ処理を行った場合、処理部12は、フィルタ処理後の電気信号に基づき、スピーカから車外の音を出力させる。S11でフィルタ処理を行っていない場合、処理部12は、フィルタ処理を行っていない電気信号に基づき、スピーカから車外の音を出力させる。
【0053】
次に、図5のフローチャートを用いて、上記設定されている周波数フィルタを変更する処理の一例を説明する。
【0054】
検出部13は、自車両の現在位置を検出する処理を継続する。そして、フィルタ部14は、検出部13から現在位置を示す情報を取得する(S20)。
【0055】
フィルタ部14は、最新の現在位置に基づき、周波数フィルタを設定する処理を行う(S21)。すなわち、フィルタ部14は、現在位置に基づき適用する周波数フィルタを決定する。そして、フィルタ部14は、設定内容を、決定した周波数フィルタを示すものにする。
【0056】
次に、本実施形態の作用効果を説明する。
【0057】
本実施形態の処理装置10によれば、周波数フィルタの選択、及び、選択した周波数フィルタを用いたフィルタ処理により、所望の音源の音(運転手への通知が望まれる音)を残しつつ、他の音源の音(運転手への通知が不要な音)を軽減して、車内に設置されたスピーカから車外の音を出力させることができる。このような本実施形態の処理装置10によれば、従来技術に比べて確実に、所望の車外の音を運転手に通知することができる。
【0058】
また、本実施形態の処理装置10は、現在位置に基づき周波数フィルタを選択することができる。このような処理装置10によれば、現在位置に応じて、残す音及び軽減する音を適切に選択し、車内に設置されたスピーカから車外の音を出力させることができる。
【0059】
運転手に通知すべき音は多数存在する。それらすべてを通す周波数フィルタの場合、ほとんどの音を通してしまい、フィルタ効果が薄れてしまう。本実施形態の場合、現在位置に応じて運転手に通知すべき音を絞り込み、その音を通す周波数フィルタを選択することができる。このため、従来技術に比べて確実に、各場所で運転手に通知すべき音を運転手に通知することができる。
【0060】
また、本実施形態の処理装置10は、現在位置に応じて、スピーカに入力される信号の増幅率を変えることができる。運転手に通知すべき音は多数存在し、音源から発せられる大きさは互いに異なる。このため、スピーカに入力される信号の増幅率を一定にしていると、ある音は適当な大きさで聞こえるが、他の音は聞こえにくかったり、また、大きすぎたりという状況が生じ得る。
【0061】
音が聞こえにくいと、運転手がその音を聞き逃すという問題が発生し得る。また、音が大きすぎると、運転の妨げになり得る。また、音が大きすぎると、運転手がスピーカの音量の設定を小さくなるように変更し、それ以降、所定の音が聞こえにくくなる等の問題が発生し得る。
【0062】
現在位置に応じてスピーカに入力される信号の増幅率を変え、各位置で運転手に通知すべき音が適当な大きさでスピーカから出力されるように調整できる処理装置10によれば、上述のような不都合を軽減できる。
【0063】
また、本実施形態の処理装置10は、複数のマイクで車外の音を集音する場合、一部のマイクで集音され、スピーカに入力される信号の増幅率を、他のマイクで集音され、スピーカに入力される信号の増幅率と異ならせることができる。そして、現在位置に応じて、上記一部のマイクと上記他のマイクとのグループ分けを行うことができる。
【0064】
例えば、処理装置10は、運転手に通知すべき音を集音しやすいマイク(例:運転手に通知すべき音の音源が位置する側のマイク)で集音された音の信号の増幅率を、他のマイクで集音された音の信号の増幅率よりも大きくすることができる。このような処理装置10によれば、運転手に通知すべき音を強調してスピーカから出力させることができる。結果、従来技術に比べて確実に、各場所で運転手に通知すべき音を運転手に通知することができる。
【0065】
<変形例>
ここで、本実施形態の処理装置10の変形例を説明する。処理装置10は、選択した周波数フィルタの情報を、周波数フィルタを選択したときの自車両の位置情報や日時情報等と対応付けて外部のサーバ装置に送信してもよい。外部のサーバ装置は送信された情報に基づき地図情報を更新する。
【0066】
図6のフローチャートを用いて、処理の流れの一例を説明する。車両Aに搭載された処理装置10の検出部13が自車両の現在位置を検出し(S30)、フィルタ部14が現在位置に基づき周波数フィルタを選択すると(S31)、処理装置10は、集音部11により集音された音を解析し、選択された周波数フィルタで通す対象となる音(その位置を特徴つける音)が集音された音に含まれているか否かを判断する(S32)。例えば、スクールゾーンにおいて、「人間の子供の声の周波数帯域の成分を通し、その他の周波数帯域の成分を低減する周波数フィルタ」が選択された場合、集音した音に人間の子供の声が含まれているか否かを判断する。
【0067】
集音した音にフィルタを通す対象となる音が含まれている場合(S32のYes)、選択したフィルタの種別情報、フィルタを選択した際の自車両の位置情報、日時情報及び環境情報(例えば、天候情報、渋滞情報等)を外部のサーバ装置に送信する(S33)。集音した音にフィルタを通す対象となる音が含まれていない場合(S32のNo)、サーバ装置への情報送信は行わない。
【0068】
サーバ装置は、複数の車両からこれらの情報を受信し(S34、取得部)、受信する毎に個別ID(identifier)と共にテーブルデータとして記憶する(S35)。そして、記憶したテーブルデータを統計処理することで、位置毎に選択されるフィルタの種別とそのフィルタが選択されるための条件の一又は複数の組み合わせを参照情報として算出する(S36、生成部)。算出した参照情報は地図情報に埋め込んでもよい。
【0069】
フィルタを新たに選択する車両Bに搭載された処理装置10は、現在の位置情報、日時情報及び環境情報を条件情報としてサーバ装置に送信し、使用すべき周波数フィルタを問い合わせる(S40)。
【0070】
サーバ装置は、当該問い合わせを受信すると(S37)、S36で生成した参照情報、及び、S37で受信した情報に基づき、選択されるべきフィルタの種別を決定し(S38、決定部)、そのフィルタの種別を示す情報を車両Bの処理装置10に送信する(S39)。
【0071】
車両Bの処理装置10は、サーバ装置から送信された情報を受信すると(S41)、受信した情報で示されるフィルタの種別を特定し、そのフィルタでフィルタ処理を行う(S42)。
【0072】
なお、サーバ装置から各車両の処理装置10に参照情報を送信してもよい。そして、各処理装置10が自身で、参照情報に基づき使用するフィルタを決定してもよい。
【0073】
当該変形例でサーバ装置に収集される情報の一例を図7に模式的に示す。当該変形例の場合、周辺環境や時刻の変化等により、フィルタを選択したときにフィルタを通す対象の音が含まれていない状況、すなわち、フィルタ処理を行う必要が無いときはフィルタが選択されないため、処理装置10の処理を軽減でき、また、周辺環境や日時の条件に対応したフィルタの種別を選択することができる。
【0074】
図8のフローチャートを用いて、他の変形例を説明する。処理装置10は、緊急車両の接近等、車内に出力する必要のある音が自車両周辺に発生した場合は、集音状況に応じて車内に出力する必要のある音も強調するような周波数フィルタを設定する。具体的には、マイクで集音した音(S50)に、運転者に対し出力する必要がある音(緊急車両の音、公共の緊急放送等)が含まれているか否かを、処理装置10は判断する(S51)。運転者に対し出力する必要がある音が含まれる場合(S51のYes)、状況に応じて自車両の位置情報に基づき選択した周波数フィルタに加え、運転者に対して出力する必要のある音の成分を通すフィルタ処理も行う。例えば、緊急車両が接近している場合(S52のYes)等、時間経過とともに運転者にとって重要度が増加する場合は運転者に対して出力する必要のある音の成分を通すフィルタ処理を行い(S53)、緊急車両が遠ざかる場合(S52のNo)等、時間経過とともに運転者にとって重要度が減少する場合は運転者に対して出力する必要のある音の成分を通すフィルタ処理を行わない。S51のNoの場合、及び、S52のNoの場合は、上述した本実施形態の構成に従い周波数フィルタ(現在位置を特徴つける音を強調するための周波数フィルタ)が選択される。なお、運転者に対し出力する必要がある音の種類は、予め登録されていてもよい。
【0075】
また、自動運転車両において、自動運転システムから搭乗者への運転の権限委譲が起こる場合、当該権限委譲の緊急度合いに応じて集音した音を車室内に出力してもよい。例えば、権限譲渡の緊急度合いが高い場合は集音した音に代えてアラーム音を出力し、権限譲渡の緊急度合いが低い場合は集音した音を出力する。緊急度の低い権限委譲にアラーム音ではなく車外の音を使用することで、より自然でストレスの少ない権限委譲が可能となる。
【0076】
以上、図面を参照して実施形態及び実施例について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0077】
この出願は、2016年10月25日に出願された日本出願特願2016−208426号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8