(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
再生セルロース繊維と熱接着性繊維とを含む上側繊維層および下側繊維層の間に、再生セルロース繊維を含む中間繊維層が位置し、3つの繊維層が繊維同士の交絡により一体化されている、ウェットワイピングシート用不織布であって、
熱接着性繊維により繊維同士が接着されており、
表面に凹凸が形成されており、
各繊維層は互いに独立して、ビスコースレーヨン、キュプラ、ポリノジック、アセテートおよび溶剤紡糸セルロース繊維から選択される、1または複数の再生セルロース繊維を含み、
各繊維層に含まれる再生セルロース繊維は互いに独立して、20mmを超える繊維長を有し、
上側繊維層および下側繊維層は互いに独立して、再生セルロース繊維と熱接着性繊維とを合わせた質量に対し、再生セルロース繊維を60質量%以上80質量%以下の量で含み、熱接着性繊維を20質量%以上40質量%以下の量で含み、
中間繊維層は再生セルロース繊維を90質量%以上の量で含む、
ウェットワイピングシート用不織布。
(a)再生セルロース繊維を含む第1繊維ウェブの両面に、再生セルロース繊維と熱接着性繊維とを含む第2繊維ウェブおよび第3繊維ウェブを配置して、積層ウェブを作製すること、
(b)積層ウェブに圧力が1MPa以上10MPa以下の柱状水流を積層ウェブの一方の面にのみ1〜5回噴射すること、または両方の面にそれぞれ1〜5回ずつ噴射すること、および
(c)熱処理を施して、熱接着性繊維により繊維同士を接着させること
を含み、
前記(a)において、
各繊維ウェブは互いに独立して、ビスコースレーヨン、キュプラ、ポリノジック、アセテートおよび溶剤紡糸セルロース繊維から選択される、1または複数の再生セルロース繊維を含み、
各繊維ウェブに含まれる再生セルロース繊維は互いに独立して、20mmを超える繊維長を有し、
第2繊維ウェブおよび第3繊維ウェブは互いに独立して、再生セルロース繊維と熱接着性繊維とを合わせた質量に対し、再生セルロース繊維を60質量%以上80質量%以下の量で含み、熱接着性繊維を40質量%以上20質量%以下の量で含み、かつ
第1繊維ウェブは再生セルロース繊維を90質量%以上の量で含み、
前記(b)において、凹凸を形成することが可能な支持体に積層ウェブを置いて、積層ウェブに柱状水流を少なくとも1回噴射することを含む、
ウェットワイピングシート用不織布の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(本発明に至った経緯)
先に挙げた特許文献はいずれも、液体を保持させるために親水性繊維を使用してシートを構成しており、三層構造とするときには真中に位置する繊維層において親水性繊維の割合が最も高くなるようにしている。特許文献1ないし4に記載されたシートはいずれも、各文献に記載された課題を解決するものとして有用なものではあるが、対人用のウェットワイピングシート用不織布としては、なお改善の余地を有するものであった。
【0013】
例えば、特許文献2では、繊維長が20mm以下のセルロース系繊維を50質量%以上含むセルロース系短繊維層を中層とする構成が提案され、好ましいセルロース系短繊維層としてパルプ繊維層が挙げられている。パルプ繊維のように短い繊維を用いると、たとえそれが中層を構成していても、拭き取りの際に加わる力によって毛羽立ちが生じやすく、また使用中に中層繊維の脱落が生じやすい。
【0014】
また、特許文献3では、液体を含浸させた状態で複数枚のシートを重ねたときに生じる液体の移動の問題を解決するために、ウェットシート用シート基材において、繊維が圧密化された凹部を設け、凹部の部分にて液体を安定的に保持させることが提案されている。特許文献3に記載されたシート基材は、親水性繊維を含む単層構造のものであるが、単層構造のシートは吸液速度が低く、所定量の液体を含浸させるのに時間を要する。
【0015】
特許文献4は、拭き取った際に、拭き取り対象における液残りを抑えるために、積層不織布と親水性繊維層との目付の比を4.5〜12.0にすること、および拭き取り時の抵抗感を少なくするために積層不織布に凹部を含ませることが記載されている。特許文献4に記載の積層不織布は、液残りの点で改善されているが、親水性繊維層の割合が少ないために、液体の保持量が不十分となる場合がある。また、特許文献4では、親水性繊維層に積層される表面繊維層を、好ましくは疎水性繊維を使用して構成することが提案されている。疎水性繊維の使用は、上下に重ねられたウェットワイピングシートにおいて、液体が上側のシートから下側のシートへ移動することを促進する場合がある。
【0016】
本発明者らは、拭き取り時の触感が重視される対人用ワイピングシートの基布に適した不織布の構成を検討した。具体的には、液体を含浸させたときに、良好な触感および使い勝手(特に、拭き取り軽さ)を示すとともに、包装容器内で生じる液体の移動を抑制し、かつ十分な保液力および吸液力を有する不織布の構成を検討した。その結果、親水性繊維として、繊維長が20mmを超える再生セルロース繊維または溶剤紡糸セルロース繊維を用いると、目的とするウェットワイピングシート用不織布が得られることを見出した。
以下、本発明の実施形態に係るウェットワイピングシート用不織布を説明する。
【0017】
(実施形態1:不織布)
本発明のウェットワイピングシート(以下、単に「シート」とも呼ぶ)用の不織布を実施形態1として説明する。実施形態1の不織布は、再生セルロース繊維と熱接着性繊維とを含む上側繊維層および下側繊維層の間に、再生セルロース繊維を含む中間繊維層が位置し、3つの繊維層が繊維同士の交絡により一体化されている積層不織布である。以下、本実施形態で用いられる、再生セルロース繊維および熱接着性繊維についてまず説明する。
【0018】
[再生セルロース繊維]
本実施形態では、各繊維層が独立して、1または複数の再生セルロース繊維を含む。ここで「独立して」とは、各繊維層に含まれる再生セルロース繊維の種類および割合が互いに異なっていてよいことを意味する。したがって、例えば、上側繊維層と下側繊維層に含まれる再生セルロース繊維の種類は異なっていてよく、上側繊維層と下側繊維層に含まれる再生セルロース繊維が同じであって、中間繊維層はそれとは異なる再生セルロース繊維を含んでよい。
【0019】
再生セルロース繊維には、例えば、ビスコースレーヨン、銅アンモニアレーヨン(キュプラ)、ポリノジック、アセテートおよび溶剤紡糸セルロース繊維が含まれる。アセテートは、厳密には再生セルロース繊維ではなく、半合成繊維に分類されるものであるが、本明細書においては再生セルロース繊維として扱う。溶剤紡糸セルロース繊維は、「リヨセル」および「テンセル」の商品名で市販されている。本実施形態では、20mmを超える繊維長を有する再生セルロース繊維を使用する。
【0020】
繊維長が20mmを超える再生セルロース繊維は、例えば、パルプと比較したときに、得られる不織布の嵩を大きくすることができ、不織布の保液性をより高くする傾向にあり、また、不織布とした後で不織布から脱落しにくい。再生セルロース繊維は、コットン等の天然セルロース繊維と比較して、均一な質を有する繊維として入手しやすく、また、後述する方法で不織布を製造する場合に、水流の作用により良好に交絡して、地合の良好な不織布を与えやすい。したがって、本実施形態では、20mmを超える繊維長の再生セルロース繊維を、不織布に親水性を付与するための親水性繊維として使用する。
【0021】
再生セルロース繊維の繊維長は、好ましくは35mm以上76mm以下であり、より好ましくは40mm以上60mm以下である。この範囲の繊維長の繊維は、後述する方法で不織布を製造するときに、カードを用いて繊維ウェブを作製するのに適している。
【0022】
再生セルロース繊維の繊度は特に限定されず、例えば、0.5dtex以上3.5dtex以下としてよく、好ましくは0.8dtex以上2.5dtex以下であり、より好ましくは1.4dtex以上1.8dtex以下である。再生セルロース繊維の繊度が小さすぎると、カードの工程性が悪くなり、不織布の厚みも薄くなる。また、再生セルロース繊維の繊度が小さすぎると、不織布全体のコシ感が不足し、拭き取り時にヨレやすくなる。一方、再生セルロース繊維の繊度が大きすぎると、不織布の柔らかさが損なわれ、触感が硬くなる傾向にある。
【0023】
[熱接着性繊維]
熱接着性繊維は熱可塑性樹脂から成る合成繊維であり、加熱により軟化または溶融して繊維同士を接合する役割をする。熱接着性繊維により繊維同士を接着させることによって、シートの強度を高くすることができ、また、拭き取り時に生じる毛羽立ちを抑制することができる。
【0024】
熱接着性繊維を構成する熱可塑性樹脂として、例えば、
・ポリエチレン(高密度、低密度、直鎖状低密度ポリエチレンを含む)、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブチレン、ポリメチルペンテン、ポリブタジエン、エチレン系共重合体(例えば、エチレン−αオレフィン共重合体)、プロピレン系共重合体(例えば、プロピレン−エチレン共重合体)、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、およびエチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体等などのポリオレフィン系樹脂、
・ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネートおよびその共重合体などのポリエステル樹脂、
・ナイロン66、ナイロン12、およびナイロン6などのポリアミド系樹脂、
・アクリル系樹脂、
・ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリスチレンおよび環状ポリオレフィンなどのエンジニアリング・プラスチック、
・それらの混合物、ならびに
・それらのエラストマー系樹脂
が挙げられる。
【0025】
熱接着性繊維は、単一繊維であっても、複合繊維であってもよい。熱接着性繊維が複合繊維である場合には、低融点樹脂と、低融点樹脂の融点よりも10℃以上融点が高い高融点樹脂(すなわち、低融点樹脂の融点(℃)≦高融点樹脂の融点−10(℃)を満たす2種類の樹脂)で構成され、繊維表面の少なくとも一部に低融点樹脂が露出している複合繊維であることが好ましい。
【0026】
複合繊維である熱接着性繊維(以下、「熱接着性複合繊維」)は、低融点樹脂が鞘成分であり、高融点樹脂が芯成分である、同心または偏心の芯鞘型複合繊維、二つの樹脂が貼り合わされた並列型複合繊維、低融点樹脂からなる海成分と、高融点樹脂からなる島成分で構成される海島型複合繊維、および高融点樹脂と低融点樹脂が繊維断面において交互に配置されている分割型複合繊維であってよい。繊維間の熱接着性を考慮すると、熱接着性複合繊維は芯鞘型複合繊維であることが好ましい。
【0027】
熱接着性複合繊維を構成する樹脂の組み合わせ(高融点/低融点)としては、例えば、ポリプロピレン/高密度ポリエチレン、ポリプロピレン/低密度ポリエチレン、ポリプロピレン/直鎖状低密度ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート/高密度ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート/低密度ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート/直鎖状低密度ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート/共重合ポリエステル、ポリプロピレン/エチレン−プロピレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート/エチレン−プロピレン共重合体、ポリアミド/高密度ポリエチレン、ポリアミド/低密度ポリエチレン、ポリアミド/直鎖状低密度ポリエチレン、ポリアミド/ポリプロピレン、ポリ乳酸/ポリエチレン、ポリ乳酸/ポリブチレンサクシネート、およびポリ乳酸/ポリブチレンサクシネートアジペートが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0028】
熱接着性複合繊維が芯鞘型複合繊維である場合、複合比(芯成分と鞘成分の体積比:芯/鞘)は2/8以上、8/2以下であることが好ましい。複合比が2/8以上であると、繊維自体にコシがあり、熱加工時の耐久性に優れた熱接着性繊維となりうる。複合比が8/2以下であると、構成繊維間を熱接着した際、繊維間接着が強固なものとなる。熱接着性複合繊維の複合比は、2.5/7.5以上、7.5/2.5以下であることがより好ましく、3/7以上、7/3以下であることが特に好ましく、3.5/6.5以上、6.5/3.5以下であることが最も好ましい。
【0029】
熱接着性繊維の繊度は特に限定されず、例えば、1.0dtex以上6.0dtex以下としてよく、好ましくは1.4dtex以上3.5dtex以下であり、より好ましくは1.7dtex以上2.4dtex以下である。熱接着性繊維の繊度が小さすぎると、繊維同士の接着が不十分となって、不織布の強度が小さくなることがある。繊度が大きすぎると、不織布を構成する繊維が太くなることにより、不織布の触感が硬くなる傾向にある。また、繊度が大きすぎると、接着点一つあたりの面積が大きくなる傾向にあり、そのために、不織布の触感が硬くなる傾向にある。ここで、接着点とは、加熱により熱接着性繊維が軟化または溶融して繊維同士を接合することにより、熱接着性繊維同士が接着している部分、および熱接着性繊維と熱接着性繊維以外の繊維(特に、再生セルロース繊維)とが接着している部分(より具体的には、熱接着性繊維を構成する熱可塑性樹脂が溶融または軟化して、繊維同士を接合している部分)を指す。
【0030】
熱接着性繊維の繊維長も特に限定されず、例えば、20mmを超えてよく、好ましくは35mm以上76mm以下であり、より好ましくは40mm以上60mm以下である。この範囲の繊維長の繊維は、後述する方法で不織布を製造するときに、カードを用いて繊維ウェブを作製するのに適している。熱接着性繊維の繊維長は、それが含まれる繊維層に含まれる再生セルロース繊維の繊維長と同じであってよく、異なっていてもよい。
【0031】
[その他の繊維]
各繊維層は再生セルロース繊維および熱接着性繊維を所定の量で含む限りにおいて、他の繊維を含んでよい。他の繊維は、例えば、コットン、およびケナフ繊維等のセルロース系の天然繊維、シルク、およびウール等の動物由来の天然繊維、熱接着性繊維で繊維同士を接着させるときに接着性を示さない合成繊維である。合成繊維を構成し得る熱可塑性樹脂は、先に熱接着性繊維に関連して説明したとおりである。合成繊維は単一繊維であっても、複合繊維であってもよい。複合繊維の複合形態については先に熱接着性繊維に関連して説明したとおりである。他の繊維の繊度および繊維長も特に限定されない。例えば、他の繊維が天然繊維である場合には、その繊度および繊維長は、再生セルロース繊維に関連して説明した範囲内にあってよい。あるいは、例えば、他の繊維が合成繊維である場合には、その繊度および繊維長は、熱接着性繊維に関連して説明した範囲内にあってよい。
【0032】
[不織布の構造]
続いて、不織布の構造を説明する。本実施形態の不織布は、上側繊維層および下側繊維層、ならびにこれらの繊維層の間に位置する中間繊維層とからなり、3つの繊維層は繊維同士の交絡により一体化されるとともに、上側繊維層および下側繊維層に含まれる熱接着性繊維によって繊維同士が接着された構造を有する。
【0033】
各繊維層は、互いに独立して、ビスコースレーヨン、キュプラ、ポリノジック、アセテートおよび溶剤紡糸セルロース繊維から選択される、1または複数の再生セルロース繊維を含む。3つの繊維層はそれぞれ異なる再生セルロース繊維を含んでいてよく、あるいは上側繊維層と下側繊維層が同じ再生セルロース繊維を含み、中間繊維層が異なる再生セルロース繊維を含んでよい。
【0034】
本実施形態においては、中間繊維層は溶剤紡糸セルロース繊維を含むことが好ましく、すべての繊維層が溶剤紡糸セルロース繊維を含むことがより好ましい。溶剤紡糸セルロース繊維は、ビスコースレーヨンと比較して、湿潤時の強度低下が小さい。そのため、これが中間繊維層に含まれると中間繊維層がつぶれにくくなり、中間繊維層の繊維間空隙(すなわち、中間繊維層の嵩)が液体を含浸させた後も維持されて、より多くの液体が保持されると推察される。また、溶剤紡糸セルロース繊維は、湿潤時の強度低下が小さく、繊維層の嵩を減少させにくいので、これが上側および下側繊維層に含まれる場合には、繊維層が緻密になりすぎず、ふんわりとした柔らかな触感を示す。
【0035】
上側繊維層および下側繊維層は互いに独立して、再生セルロース繊維と熱接着性繊維とを合わせた質量に対し、再生セルロース繊維を60質量%以上80質量%以下の量で含み、熱接着性繊維を20質量%以上40質量%以下の量で含む。ここで「互いに独立して」とは、上側繊維層における再生セルロース繊維と熱接着性繊維の混合割合が、下側繊維層のそれとは異なっていてもよいことを意味する。再生セルロース繊維の割合が60質量%未満であり、熱接着性繊維の割合が40質量%を超えると、不織布の液体保持性が低下するとともに、熱接着性繊維の接着により不織布の触感が低下する。再生セルロース繊維の割合が80質量%を超え、熱接着性繊維の割合が20質量%未満であると、熱接着性繊維の接着による不織布強度の向上を十分に図ることができない。また、熱接着性繊維の割合が少ないと、繊維同士の接着点が少なくなることで不織布の強度が低下する傾向にある。不織布の強度が低下すると不織布の嵩が減少しやすくなり、保持できる液体の量が少なくなる。
上側繊維層および下側繊維層において、再生セルロース繊維の割合は好ましくは65質量%以上75質量%以下、熱接着性繊維の割合は好ましくは25質量%以上35質量%以下である。
【0036】
上側繊維層および下側繊維層は、再生セルロース繊維と熱接着性繊維を合わせて、好ましくは50質量%以上含み、より好ましくは80質量%以上含む。これらの繊維の総量が各繊維層の50質量%未満であると、それぞれの繊維による作用が十分に奏されないことがある。上側繊維層および下側繊維層は、再生セルロース繊維と熱接着性繊維のみを含んでもよい。上側繊維層および下側繊維層に含まれ得る再生セルロース繊維および熱接着性繊維以外の繊維の例は、上記「他の繊維」で説明したとおりである。
【0037】
中間繊維層は再生セルロース繊維を50質量%以上の量で含む。再生セルロース繊維の割合が50質量%未満であると、不織布の保液性が低くなり、十分な量の液体を保持できなくなる。中間繊維層は、再生セルロース繊維を好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらにより好ましくは80質量%以上、最も好ましくは90質量%以上含み、再生セルロース繊維のみを含んでよい。
【0038】
中間繊維層が再生セルロース繊維以外の繊維を含む場合、当該繊維は、熱接着性繊維であってよく、あるいは上側繊維層および下側繊維層に含まれる熱接着性繊維で繊維同士を接着させるときに接着性を示さない繊維であってもよい。中間繊維層に含まれ得る再生セルロース繊維および熱接着性繊維以外の繊維の例は、上記「他の繊維」で説明したとおりである。前記中間繊維層が再生セルロース繊維以外の繊維を含む場合、再生セルロース繊維以外の繊維が占める割合は、中間繊維層全体の質量を100質量%として50質量%以下である。再生セルロース繊維以外の繊維が中間繊維層に占める割合が50質量%未満であることで、中間繊維層および不織布全体の保水力や吸液性が十分なものとなる。再生セルロース繊維以外の繊維が中間繊維層に占める割合は40質量%以下であってもよく、30質量%以下であってもよく、20質量%以下であってもよく、10質量%以下であってもよい。
【0039】
不織布全体の目付は、ウェットワイピングシートが具体的に適用される用途等に応じて適宜決定される。例えば、不織布全体の目付は、30g/m
2〜100g/m
2の範囲内にあってよく、特に40g/m
2〜80g/m
2の範囲内にあってよく、より特に50g/m
2〜70g/m
2の範囲内にあってよい。
【0040】
上記範囲内の目付を有する不織布において、上側繊維層および下側繊維層の目付はそれぞれ、好ましくは10g/m
2〜40g/m
2の範囲内にあり、より好ましくは15g/m
2〜30g/m
2の範囲内にあり、最も好ましくは18g/m
2〜26g/m
2の範囲内にある。上側繊維層および下側繊維層の目付はこれらの範囲内にある限りにおいて、互いに異なっていてよい。上側繊維層および下側繊維層の目付が小さすぎると、これらの繊維層に含まれる熱接着性繊維が不織布全体に占める割合が小さくなり、十分な不織布強度を得られなくなることがある。上側繊維層および下側繊維層の目付が大きすぎると、不織布において中間繊維層の占める割合が小さくなることがあり、不織布の保液性が低下することがある。
【0041】
上記範囲内の目付を有する不織布において、中間繊維層の目付は、好ましくは7g/m
2〜25g/m
2の範囲内にあり、より好ましくは10g/m
2〜20g/m
2の範囲内にあり、最も好ましくは12g/m
2〜18g/m
2の範囲内にある。中間繊維層の目付が小さすぎると、不織布の保液性が低下することがある。中間繊維層の目付が大きすぎると、不織布において上側繊維層および下側繊維層の占める割合が小さくなることがあり、その場合、これらの繊維層に含まれる熱接着性繊維の割合も小さくなって、不織布の強度を十分に向上させられないことがある。
【0042】
本実施形態において、中間繊維層の目付に対する不織布全体の目付の比は、2.5以上3.5以下であることが好ましい。この比が2.5未満であると、不織布に占める上側繊維層および下側繊維層の割合が小さくなって、これらの繊維層に占める熱接着性繊維の割合も小さくなり、不織布の強度を十分に向上させられないことがある。この比が3.5を超えると、不織布に占める中間繊維層の割合が小さくなって、保液性が低下することがある。
【0043】
本実施形態において、不織布の比容積は、好ましくは8cm
3/g〜40cm
3/g、より好ましくは10cm
3/g〜30cm
3/g、最も好ましくは12cm
3/g〜20cm
3/gの範囲内にあってよい。ここで、比容積は、300Paの荷重を加えて測定される厚さから求められる値である。比容積がこの範囲内にある不織布は嵩高であり、ふんわりとした触感を示すとともに、優れた保液性を示すウェットワイピングシートを与え得る。
【0044】
上側繊維層、中間繊維層、および下側繊維層は、繊維同士の交絡により一体化されている。繊維同士は、例えば、ニードルパンチ処理、または水流交絡処理により一体化されていてよい。
【0045】
また、不織布においては、繊維同士が熱接着性繊維により接着されている。繊維同士が接着されていることにより、不織布の強度が向上し、包装容器からシートを取り出すときや、皮膚にシートを当てて拭き取るときに加わる力による不織布の破損や、しわの発生が防止される。また、繊維同士が接着されることにより、不織布に液体を含浸させたときでも繊維間の空隙がつぶれにくくなり、不織布の保液性が向上する。また、繊維同士が接着されていると、不織布の形態安定性が高くなり、拭き取り時に余分な力が加わりにくくなるため、拭き取り時に感じる抵抗が小さくなり、拭き取りが軽くなる。繊維同士の接着は、熱接着繊性繊維の一部が熱により溶融または軟化することにより接着点を形成する、熱接着であってよく、あるいは、電子線等の照射、または超音波溶着による接着であってよい。
【0046】
本実施形態の不織布においては、表面に凹凸が形成されている。不織布の表面において繊維間が接着されていると、接着点が皮膚に対して刺激感を与えやすくなる。本実施形態では、表面に凹凸を形成することによって、不織布が皮膚と接触する面積を減らし、それにより接着点に起因する刺激感を緩和するとともに、拭き取りを軽くすることができる。
【0047】
凹凸は、不織布の圧密化により凹部を形成して得られるものであってよい。あるいは、後述するように、適切な支持体を用いた高圧水流処理によって、繊維密度が小さい部分と、繊維密度が大きい部分とを形成して、凹凸を得てもよい。繊維密度の小さい部分は一般に厚さが小さいため、凹部となり、繊維密度の大きい部分は一般に厚さが大きいため、凸部となる。また、凹部には開口部が形成されていてもよい。開口部もまた、本明細書でいう凹部または低繊維密度領域である。
【0048】
凹凸を、繊維密度が大きい部分(凸部)と繊維密度が小さい部分(凹部)とにより形成する場合、凹凸は、凹部が規則的に繰り返し形成され、凹部と凹部との間に繊維密度が大きく厚い部分(凸部)が形成された形態であってよい。その場合、凹部の形状は、正方形、長方形、ひし形、三角形、六角形、もしくはその他の多角形、円形、または楕円形であってよい。また、その場合、凹部一つあたりの面積は、1mm
2〜10mm
2としてよく、特に、1.5mm
2〜5mm
2としてよい。
【0049】
あるいは、凹凸は、
図1に示すように、凹部となる繊維密度の小さい部分(低繊維密度領域)2aが不織布の機械方向(以下、MD方向という)に対して5〜60゜の角度で存在したMD方向に延びるパターン(A)列と、パターン(A)列を反転させたMD方向に延びるパターン(B)列とがMD方向に直交する方向(以下、CD方向という)に交互に繰り返して存在し、かつ隣り合う低繊維密度領域2aの間に、凸部となる繊維密度の大きい部分(高繊維密度領域)2bが形成されて、低繊維密度領域2aと高繊維密度領域2bとが不織布のMD方向において交互に繰り返して存在している形態であってよい。このような凹凸において、低繊維密度領域2aには、
図2に示すような開口部が形成されていてよい。開口部の形状は、例えば、円形、楕円形、ひし形、または長方形である。開口部の大きさ(面積)は、直径0.2mm〜2mmの円に相当する大きさ(面積)であることが好ましい。直径が2mmを超えると、拭き取った汚れ等が開口部を介して手指に付着することがある。
【0050】
このようなパターンにおいては、凹部(低繊維密度領域)の占める割合が比較的大きくなるため、このパターンを有する不織布は肌との接触面積がより小さくなり、軽い拭き取り感を示しやすい。また、凹部と凸部(高繊維密度領域)とが斜め方向に交互に配置されているため、不織布に加わる力の方向の違いに起因する、汚れの拭き取りやすさの差が小さい。
【0051】
図1および
図2に示すような凹凸パターンにおいて、低繊維密度領域の幅d1および高繊維密度領域の幅d2のうち少なくとも一方が0.2mm〜3mmの範囲内にあってよく、d1/d2は0.2〜1.2であってよい。また、パターン(A)列およびパターン(B)列の幅dは、10mm〜50mmであってよい。
図1および
図2においては、A列とB列の幅が等しいが、A列とB列の幅は互いに異なっていてよい。
【0052】
凹凸はあるいは、凹部と凸部とが不織布のCD方向またはMD方向において交互に配置された、ストライプ状のものであってよい。ストライプは、直線状の凹部と凸部とが交互に配置された形態であってよく、あるいは波形の凹部と凸部とが交互に配置された形態であってよい。ストライプ状の凹凸において、凹部および凸部の幅(交互に配置される方向と平行な方向の寸法)は、0.5mm〜5mmであることが好ましく、1mm〜3mmであることがより好ましい。また、凹部の幅/凸部の幅は、0.1〜10であることが好ましい。ストライプ状の凹凸においても、凹部に開口部が形成されていてもよい。
【0053】
あるいはまた、凹凸は、
図3ないし
図5に示すようなパターンを有するものであってよい。
具体的には、凹凸は、
図3に示すように、長軸が不織布のMD方向に配向し、長軸の長さが0.5〜2.5mm、短軸の長さが0.3〜1.0mmの略楕円状凹部(3a)(一部の凹部は厚み方向に貫通し、開口を形成している。以下、
図4および
図5に示すパターンについても同じ)がMD方向に0.5〜2mmの間隔で千鳥模様状に配列し、MD方向に隣り合う前記略楕円状凹部(3a)の間に直径0.2〜0.7mmの円形凹部(3b)が形成されたパターンを形成していてよい。
【0054】
あるいは、凹凸は、
図4に示すように、長軸が不織布のMD方向に配向し、長軸の長さが1.5〜3.5mm、短軸の長さが0.3〜1.2mmの略楕円状凹部(4a)がMD方向に1.5〜3.5mmの間隔(d4
a)で千鳥模様状に配列し、MD方向に隣り合う前記略楕円状凹部の間に、長さ0.5〜1.5mmの破線状凹部(4b)が形成されたパターンを形成していてよい。
図4に示すパターンにおいては、CD方向に沿って並んでいる前記略楕円状凹部同士の間隔(d4
b)は1.5〜4.0mmであってよい。
【0055】
あるいは、凹凸は、
図5に示すように、MD方向に連続し、波長(d5
a)が4.0〜7.0mm、幅(d5
b)が0.8〜3.0mmである波状凸部(5a)が形成され、前記波状凸部がCD方向に隣り合う波状凸部同士の間隔が1.0〜7.0mmになるように配置されたパターンを形成してよい。ここで、
図5に示すパターンにおいては、CD方向に隣り合う前記波状凸部間には長軸の長さが3.0〜7.0mmの楕円状凹部(5b)が形成されていてよく、MD方向に隣り合う前記楕円状凹部同士を連結する、幅1.0〜3.0mmの連結凹部(5c)が形成されていてよい。
【0056】
いずれの形態の凹凸においても、不織布の面積に占める凹部の割合は、好ましくは10%〜70%であり、より好ましくは30%〜60%である。凹部の占める割合が少なすぎると、凹部を設けることによる不織布の刺激感の低減という効果が得られにくくなる。凹部の占める割合が多すぎると、不織布と皮膚との接触面積が小さくなりすぎて、所望の拭き取り効果を得られないことがある。
【0057】
(実施形態2:不織布の製造方法)
次に、本発明の不織布の製造方法の一実施形態を実施形態2として説明する。本発明の不織布の製造方法は、
(a)再生セルロース繊維を含む第1繊維ウェブの両面に、再生セルロース繊維と熱接着性繊維とを含む第2繊維ウェブおよび第3繊維ウェブを配置して、積層ウェブを作製すること、
(b)積層ウェブに圧力が1MPa以上10MPa以下の柱状水流を積層ウェブの一方の面にのみ1〜5回噴射すること、または両方の面にそれぞれ1〜5回ずつ噴射すること、および
(c)熱処理を施して、熱接着性繊維により繊維同士を接着させること
を含み、
前記(a)において、
各繊維ウェブは互いに独立して、ビスコースレーヨン、キュプラ、ポリノジック、アセテートおよび溶剤紡糸セルロース繊維から選択される、1または複数の再生セルロース繊維を含み、
各繊維ウェブに含まれる再生セルロース繊維は互いに独立して、20mmを超える繊維長を有し、
第2繊維ウェブおよび第3繊維ウェブは互いに独立して、再生セルロース繊維と熱接着性繊維とを合わせた質量に対し、再生セルロース繊維を60質量%以上80質量%以下の量で含み、熱接着性繊維を40質量%以上20質量%以下の量で含み、かつ
第1繊維ウェブは再生セルロース繊維を50質量%以上の量で含み、
前記(b)において、凹凸を形成することが可能な支持体に積層ウェブを置いて、積層ウェブに柱状水流を少なくとも1回噴射することを含む。
【0058】
第2繊維ウェブおよび第3繊維ウェブはそれぞれ、実施の形態1の不織布の上側繊維層および下側繊維層に相当し、第1繊維ウェブは、実施の形態1の不織布の中間繊維層に相当する。これらの繊維ウェブが含む再生セルロース繊維および熱接着性繊維、ならびにこれらの繊維ウェブにおける再生セルロース繊維および熱接着性繊維の割合等は先に実施の形態1に関連して説明したとおりであるから、ここではそれらの説明を省略する。
【0059】
第1、第2、および第3繊維ウェブはいずれも、カードウェブであることが好ましい。カードウェブを用いると、例えば湿式抄紙ウェブを用いるときと比較して、不織布において繊維間空隙をある程度確保でき、嵩の大きい不織布を得やすくなる。カードウェブとして、パラレルウェブ、クロスウェブ、クリスクロスウェブ、セミランダムウェブ、およびランダムウェブが挙げられる。3つの繊維層は同じ種類のカードウェブであってよく、あるいは互いに異なる種類のカードウェブであってよい。あるいは第2繊維ウェブと第3繊維ウェブが同じ種類のカードウェブであり、第1繊維ウェブが異なる種類のカードウェブであってよい。
【0060】
第1繊維ウェブの両面に第2繊維ウェブおよび第3繊維ウェブを配置して、積層ウェブを作製したあと、これに柱状水流を噴射して繊維同士を交絡させる。柱状水流により繊維同士を交絡させる処理は、水流交絡処理またはウォータージェット処理と称される。水流交絡処理によれば、ウェブを載せる支持体の種類を選択することにより、繊維同士の交絡と凹凸の形成を同時に実施できる。また、水流交絡処理によれば、触感が良好であり、地合の良好な不織布を得ることができる。
【0061】
水流交絡処理条件は、処理対象となる繊維ウェブの目付、および支持体の搬送速度等に応じて適宜設定される。例えば、水流交絡処理は、孔径0.05mm〜0.5mmのオリフィスが0.3mm〜1.5mmの間隔で設けられたノズルから、水圧1MPa以上10MPa以下の柱状水流を、積層ウェブの一方の面にのみ1〜5回噴射することにより、あるいは積層ウェブの両方の面にそれぞれ1〜5回ずつ噴射することにより実施してよい。水圧は、好ましくは2MPa以上8MPa以下であり、より好ましくは2MPa以上7MPa以下である。
【0062】
水流交絡処理においては、積層ウェブを支持体の上に載せた状態で、柱状水流を噴射する。繊維の交絡を専ら進行させようとするときには、支持体として、例えば、直径(線径とも呼ぶ)0.8mm〜3mmのモノフィラメントを織成した80〜100メッシュの平織りの支持体が用いられる。そのような支持体上で積層ウェブに柱状水流を噴射したときに形成される凹凸は極めて微細なものであって、実施形態1で説明した凹凸に該当するものではない。
【0063】
本実施形態においては、柱状水流の噴射を少なくとも1回、凹凸を形成することが可能な支持体に積層ウェブを載せて実施する。それにより、凹凸が形成された不織布を得ることができる。凹凸を形成することが可能な支持体は、例えば、経糸および緯糸がそれぞれ線径0.5〜2mmのモノフィラメントから成り、経糸密度が5〜50本/インチであり、緯糸密度が3〜24本/インチである平織り構造の支持体である。そのような支持体を使用すると、経糸が緯糸の上に浮いている箇所において、繊維が周囲に移動して、低繊維密度領域(凹部)が形成され、その周囲に高繊維密度領域(凸部)が形成され、低繊維密度領域(凹部)が市松模様状に配置した凹凸を得ることができる。
【0064】
モノフィラメントの線径は、低繊維密度領域1つあたりの面積と関係し、モノフィラメントの線径が細いと、低繊維密度領域1つあたりの面積が小さくなり、モノフィラメントの線径が太いと、低繊維密度領域1つあたりの面積が大きくなる。
【0065】
あるいは、凹凸形成可能な支持体として、杉綾織り構造の支持体を用いてよい。杉綾織り構造の支持体を用いると、
図1および
図2に示すような凹凸を得ることができる。なお、
図2に示す凹凸は、杉綾織物の裏面(緯糸がより多く現れている面)側を支持体の表面として、当該面に積層ウェブを載せて、柱状水流を噴射したときに得られる凹凸である。杉綾織りの支持体は、好ましくは経糸(モノフィラメント)の線径が0.1〜2mm、経糸密度が5〜250本/インチ、緯糸(モノフィラメント)の線径が0.1〜2mm、緯糸密度が5〜250本/インチであるものである。
【0066】
繊維交絡処理後、繊維ウェブを乾燥処理に付した後、熱処理を実施して、熱接着性繊維で繊維同士を熱接着させる。あるいは、水流交絡処理後の繊維ウェブの乾燥処理と、熱接着のための熱処理とを同時に実施してよい。熱処理は、熱接着性繊維が溶融または軟化して、熱接着性を示す温度にて実施する。熱処理温度は、熱接着性繊維の熱接着成分(複合繊維の場合は低融点樹脂)の融点に応じて、その融点よりも3℃〜15℃程度、高い温度にて実施する。例えば、熱接着成分が高密度ポリエチレンである場合には、熱処理温度は130℃〜150℃としてよい。
【0067】
熱処理は、例えば、熱風を吹き付ける熱風加工処理、熱ロール加工(熱エンボスロール加工)、または赤外線を使用した熱処理である。熱風加工処理は、所定の温度の熱風を繊維ウェブに吹き付ける装置、例えば、熱風貫通式熱処理機、および熱風吹き付け式熱処理機を用いて実施してよい。不織布の嵩をできるだけ大きくするためには、熱風加工処理が好ましく実施される。熱風加工処理によれば、比容積の減少を比較的抑制できる。
【0068】
以上において、本実施形態の製造方法を説明した。別の実施形態において、繊維同士の交絡はニードルパンチ処理、または水蒸気流処理によって実施してよい。また、凹凸は、水流交絡処理を施した積層ウェブに、熱エンボス加工を施すことにより形成してよい。その場合、圧密された繊維密度の高いエンボス部が凹部となり、エンボスされていない凹部の周囲の繊維密度の低い領域が凸部となる。
【0069】
[実施形態3:ウェットワイピングシート]
実施形態3として、実施形態1の不織布、または実施形態2の製造方法により得られる不織布に液体を含浸させて得られるウェットワイピングシートを説明する。本実施形態のウェットワイピングシートは特に対人用として好適である。ウェットワイピングシートに含浸させる液体は、それが人体から拭い取る対象物(メイク、汗、マニキュア、排泄物等)に応じて適宜選択される。液体の含浸量は、例えば、不織布100質量部に対し、100質量部以上700質量部以下としてよく、好ましくは200質量部以上500質量部以下であり、より好ましくは250質量部以上400質量部以下である。シートが拭い取る対象物に応じて、液体には、例えば、固形分が含まれていてよい。例えば、固形分は汗拭きシートにおいては、汗を吸収する制汗パウダーであってよい。
【0070】
対人用のウェットワイピングシートは、例えば、乳幼児用または成人用のおしり拭き、経血拭き、化粧落とし用シート、洗顔シート、汗拭きシート、およびネイルリムーバー等である。本実施形態のウェットワイピングシートは、特に、顔、腕、足、首筋、および脇等に付着した汗を拭き取るために用いる、汗拭きシートに適している。本実施形態のシートはしっかりとしたコシを有していて、汗を拭き取るときに比較的強い力を加えても、ワイピングシートにしわがよりにくく、拭き取りがしやすく、毛羽立ちも生じにくい。また、汗拭きシートに含浸されている液体には一般には制汗用のパウダーが含まれており、拭き取りの際には、これを同時に皮膚に付着させる。本実施形態のシートは上下に複数枚重ねて保管したときでも、上側のシートから下側への液体の移動が生じにくいため、一つの容器内で、シートの液体含浸量のバラツキが生じにくい。また、液体が固形分(例えば、制汗パウダー)を含んでいる場合に、固形分の皮膚への付着量がシート毎にばらつくことを抑制できる。
【実施例】
【0071】
以下、本発明を実施例により説明する。
本実施例で用いる繊維として下記のものを用意した。
【0072】
(再生セルロース繊維1)
繊度1.7dtex、繊維長38mmの溶剤紡糸セルロース繊維(商品名リヨセル(登録商標)、レンツィング社製)
(再生セルロース繊維2)
繊度1.7dtex、繊維長40mmのビスコースレーヨン(商品名コロナ(登録商標)、ダイワボウレーヨン(株)製)
(熱接着性繊維1)
繊度1.7dtex、繊維長51mmの、高密度ポリエチレン(融点130℃)が鞘成分であり、ポリプロピレン(融点165℃)が芯成分である、芯鞘型複合繊維(芯/鞘複合比(体積比)50/50)
【0073】
(実施例1〜8)
第1繊維ウェブとして、表2−1および表2−2に示す再生セルロース繊維を用いて、狙い目付15g/m
2のパラレルウェブを作製した。また、第2繊維ウェブおよび第3繊維ウェブとして、表2−1および表2−2に示す再生セルロース繊維と熱接着性繊維とを、表2−1および表2−2に示す割合で混合して、狙い目付22.5g/m
2のパラレルウェブを作製した。第1繊維ウェブの両面に第2繊維ウェブおよび第3繊維ウェブを重ねて、積層ウェブを作製し、この積層ウェブに水流交絡処理を施した。
【0074】
水流交絡処理は、積層ウェブを、線径0.13mmのモノフィラメントからなる90メッシュの平織りの支持体に載せて、孔径0.12mmのオリフィスが0.6mm間隔で設けられたノズルを用いてウェブの一方の面に柱状水流を1回噴射し、他方の面に柱状水流を1回噴射して実施した。さらに、各実施例において、凹凸を形成するための水流交絡処理を実施した。凹凸形成用支持体として、以下の支持体を用意した。なお、括弧は表に示した略称である。
・杉綾支持体(杉綾):経糸(モノフィラメント)の線径0.4mm、緯糸(モノフィラメント)の線径0.8mm、織り密度64/18(本/inch)の3/1杉綾織りネット
・杉綾支持体裏面(杉綾(裏)):経糸(モノフィラメント)の線径0.4mm、緯糸(モノフィラメント)の線径0.8mm、織り密度64/18(本/inch)の3/1杉綾織りネットであって、裏面を支持体表面(ウェブと接する側の表面)としたもの
・平織支持体A(平織A):経糸(モノフィラメント)の線径0.7mm、緯糸(モノフィラメント)の線径0.7mm、織り密度25/25(本/inch)の平織りネット
・平織支持体B(平織B):経糸(モノフィラメント)の線径1.2mm、緯糸(モノフィラメント)の線径1.2mm、織り密度12/12(本/inch)の平織りネット
・平織支持体D(平織D):経糸(モノフィラメント)の線径0.9mm、緯糸(モノフィラメント)の線径1.0mm、織り密度9/10(本/inch)の平織りネットであって、経糸を2本ずつ同じ状態に並べて緯糸を1本ずつ打ち込んだもの
【0075】
各実施例において、それぞれ凹凸形成用の支持体として、表2−1および表2−2に示す凹凸形成用の支持体を使用して、孔径0.12mmのオリフィスが0.6mm間隔で設けられたノズルを用いてウェブの一方の面に柱状水流を1回噴射して、凹凸を形成した。杉綾支持体(杉綾)を使用した場合には、
図1に示すような凹凸であって、凹部の幅が1mm、凸部の幅が1.7mmであり、凹部および凸部が共にMD方向に対して23°の角度で存在し、
図1に示す幅dが27mmである凹凸が形成された。杉綾支持体裏面(杉綾(裏))を使用した場合には、
図2に示すような凹凸であって、凹部の幅が1mm、凸部の幅が1.7mmであり、凹部および凸部が共にMD方向に対して23°の角度で存在し、
図2に示す幅dが27mmである凹凸が形成された。
【0076】
また、平織支持体Aを用いた場合には、
図3に示すような、長軸が不織布のMD方向に配向し、長軸の長さが1.5mm、短軸の長さが0.7mmの略楕円状凹部(3a)(一部の凹部は厚み方向に貫通し、開口部を形成している。以下、
図4および
図5に示すパターンにおいても同じ)がMD方向に1.5mmの間隔で千鳥模様状に配列し、MD方向に隣り合う前記略楕円状凹部(3a)の間に直径0.5mmの円形凹部(3b)が形成された。平織支持体Bを使用した場合には
図4に示すような、長軸が不織布のMD方向に配向し、長軸の長さが2.6mm、短軸の長さが0.9mmの略楕円状凹部(4a)がMD方向に2.6mmの間隔(d4
a)で千鳥模様状に配列し、MD方向に隣り合う前記略楕円状凹部の間に、長さ0.9mmの破線状凹部(4b)が形成された。なお、CD方向に沿った前記略楕円状凹部の並びにおいて、前記略楕円状凹部同士の間隔(d4
b)は3.0mmであった。
【0077】
平織支持体Dを用いた場合には、
図5に示すような、MD方向に連続し、波長(d5
a)が5.9mm、幅(d5
b)が1.7mmである波状凸部(5a)が形成され、前記波状凸部はCD方向に隣り合う波状凸部同士の間隔が2.0mm〜5.2mmになるように配置されていた。なお、CD方向に隣り合う前記波状凸部間には長軸の長さが5.2mmの楕円状凹部(5b)が形成され、MD方向に隣り合う前記楕円状凹部同士を連結する、幅2.0mmの連結凹部(5c)が形成された。
【0078】
次に、凹凸が形成された不織布を、乾燥処理を兼ねて、140℃に設定した熱風貫通式熱処理機にて、熱処理に付し、熱接着性繊維により繊維同士を熱接着させて、不織布を得た。
【0079】
(比較例1〜4)
第1繊維ウェブとして、比較例1においては、パルプを湿式抄紙してなる目付17g/m
2の湿式抄紙不織布を用意し、比較例2においては、再生セルロース繊維1(商品名リヨセル)からなる、目付15g/m
2のパラレルウェブを作製し、比較例3においては、鞘/芯が高密度ポリエチレン/ポリプロピレンの芯鞘型複合繊維(繊度1.7dtex)からなり、接着部がドット状に形成された、目付20g/m
2のポイントボンド不織布を用意した。また、第2繊維ウェブおよび第3繊維ウェブとして、表3に示す再生セルロース繊維と熱接着性繊維とを、表3に示す割合で混合して、狙い目付22.5g/m
2のパラレルウェブを作製した。第1繊維ウェブの両面に第2繊維ウェブおよび第3繊維ウェブを重ねて、積層ウェブを作製した。
【0080】
続いて、水流交絡処理および凹凸の形成を実施例1ないし8の不織布の製造で採用した条件と同様の条件で実施した。ただし、比較例5においては凹凸を形成しなかった。次に、凹凸が形成された不織布を、乾燥処理を兼ねて、表3に示す温度に設定した熱風貫通式熱処理機にて、熱処理に付し、熱接着性繊維により繊維同士を熱接着させて、不織布を得た。比較例2においては、熱処理温度を120℃とし、繊維同士を熱接着させなかった。
【0081】
(比較例5)
表3に示す割合で、再生セルロース繊維1と熱接着性繊維とを混合して、目付約60g/m
2のパラレルウェブを作製し、これに実施例1ないし8の不織布の製造で採用した条件と同様の条件で、水流交絡処理および熱処理を実施して、単層構造の不織布を得た。
【0082】
各実施例および各比較例で得られた不織布について、以下の方法で物性を測定するとともに、使用官能評価を実施した。測定結果を表2−1および表2−2に示す。
【0083】
<厚さ>
厚さは、厚み測定機(商品名 THICKNESS GAUGE モデル CR−60A (株)大栄科学精器製作所製)を用い、300Paの荷重を加えた状態で測定した。
【0084】
<剛軟度>
不織布のドレープ性(剛軟度)は、JIS L 1096 6.19.5 E法(ハンドルオメータ法)に準じて測定した。具体的には、次の手順で測定した。
縦:20cm、横:20cmの試験片を試料台の上に、試験片の測定方向がスロット(隙間幅20mm)と直角になるように置く。
次に、試料台の表面から8mmまで下がるように調整されたペネトレータのブレードを下降させ、試験片を押し込んだとき、いずれか一方の辺から6.7cm(試験片の幅の1/3)の位置で、縦方向および横方向それぞれ表裏異なる個所について、押し込みに対する抵抗値を読み取る。抵抗値として、マイクロアンメータの示す最高値(g)を読み取る。
測定は不織布のMD方向(機械方向、縦方向とも呼ばれる)、CD方向(幅方向、横方向とも呼ばれる)に平行な方向についてそれぞれ行い、CD方向に平行な方向について異なる2箇所にて剛軟度を測定し、その後MD方向に平行な方向について異なる2箇所にて測定する。
各測定箇所にて3回測定を行い、その平均値の総和を、そのサンプルの剛軟度として評価した。
【0085】
<保液率>
不織布をMD方向×CD方向=100mm×100mmに切断し、不織布の質量を測定した後、蒸留水に2分間浸した。それから、蒸留水を含浸させた不織布の三隅を洗濯ばさみで挟んで吊し、10分経過後の質量を測定して、下記の式に従って保液率を算出した。
保液率(%)=[(M2−M1)/M1]×100
M1:蒸留水を含浸させる前の不織布の質量(g)
M2:蒸留水を含浸させてから10分間吊した後の不織布の質量(g)
【0086】
<使用時の摩擦感試験>
使用した際に肌に与える摩擦感を評価するため、摩擦係数を測定し、評価した。測定には静動摩擦測定機(株式会社トリニティラボ社性 TL201Ts)を使用した。摩擦係数を測定は摩擦係数を求める試料(不織布)に対し、30gの荷重を加えた接触子(擬似指紋)を当て、移動速度が毎秒10mmになるように接触子を水平に30mm移動させる。この移動を2往復行い、2往復する間の摩擦係数を測定した。測定された摩擦係数から以下のように静止摩擦係数、動摩擦係数を求めた。
・静止摩擦係数(μs)
不織布試料上に静止している接触子が動き出した際に記録される摩擦係数
・動摩擦(μk)
接触子が移動を開始した際に記録される摩擦係数の最大値が低下してから、移動が終了するまでの摩擦の平均値
【0087】
<使用官能評価>
不織布100質量部に対して、蒸留水を300質量部含浸させて作製したウェットワイピングシートについて、1)拭き取り感、2)肌にあてたときに感じる柔らかさ、3)拭き取り時の不織布のヨレにくさ、4)拭き取り時の不織布における毛羽立ちにくさ、5)拭き取り時に感じる抵抗感(拭き取り軽さ)を、3人のモニターで評価した。各モニターが、以下の表1に示す評価基準に従って、それぞれの使用感について点数を付け、最も多くのモニターが付けた点数を、その項目についての評価結果として示した。
【0088】
【表1】
【0089】
【表2-1】
【0090】
【表2-2】
【0091】
【表3】
【0092】
<吸液速度>
実施例1、比較例1および比較例5の不織布について、バイレック法により吸液速度を測定した。水の吸い上げ方向をMD方向とした試料(MD方向×CD方向=250mm×25mm)を作成し、水の吸い上げ方向がMD方向と一致するように試料をセットして吸い上げ高さを測定した。吸い上げた高さを、10秒、20秒、30秒、60秒、90秒、120秒、180秒、240秒、300秒経過後にそれぞれ測定した。同様に、水の吸い上げ方向をCD方向とした試料(MD方向×CD方向=25mm×250mm)を作成し、水の吸い上げ方向がCD方向と一致するように試料をセットして、吸い上げ高さをMD方向のそれと同じ時間間隔で測定した。結果を表4に示すとともに、
図6(MD方向)および
図7(CD方向)に示す。
【0093】
【表4】
【0094】
<液体移行性>
実施例1、比較例1および比較例3の不織布について、液体を含浸した状態で重ねて長期間保管した場合を想定した液体移行性を評価した。
液体移行性は下記の方法に従って評価した。
評価する不織布を、縦(MD方向)100mm×横(CD方向)150mmの寸法に裁断する。この試料を40枚作製する。所定の大きさに裁断した不織布に対し、蒸留水を含浸させた。蒸留水の含浸量は不織布の質量を100質量部としたとき、含浸させる蒸留水が300質量部となるように調整した。蒸留水を所定の割合で含浸させた不織布の質量を1枚ずつ測定する。質量を測定した不織布をC字状になるよう折り、40枚重ねる。蒸留水を含浸させた不織布を40枚重ねた状態で、市販されているプラスチック製の線ファスナーがついたポリエチレン製の袋に入れ、線ファスナーを閉じて密封状態とする。この状態で、50℃に調整した恒温乾燥機に入れて、一週間放置した。所定時間が経過した後、袋から試料を取り出し、各シートの質量を測定する。そして上から2枚目に位置していた不織布と、上から39枚目、すなわち下から2枚目に位置していた不織布の保水率(不織布の質量に対する水の質量の割合を百分率で示したもの)を計算する。上から39枚目の不織布と、2枚目の不織布の保水率の差から、保水率差を求め、これの大小によって液体移行性を評価した。結果を表5に示す。
【0095】
【0096】
各実施例の不織布はいずれも、ほぼ60g/m
2の目付を有し、比較的厚く、嵩の大きいものであった。また、いずれも保液率が大きく、使用感も良好であった。特に、第1繊維ウェブ(中間繊維層)が溶剤紡糸セルロース繊維からなる不織布は、第1繊維ウェブがレーヨンからなる不織布と比較して、高い保液率を示した。また、実施例1の不織布は、良好な吸液性を示した。
【0097】
第1繊維層(中間繊維層)がパルプからなる比較例1の不織布は、吸液性は良いが、厚さが小さく、保液率も低かった。中間繊維層が湿式不織布であって、厚さが小さいことによると考えられる。また、比較例1は剛軟度が低く、コシの弱いものであった。比較例2は、熱接着性繊維により繊維同士を熱接着させなかったため、不織布のコシが小さく、拭き取り感が悪く、ヨレおよび毛羽立ちが生じやすく、拭き取りも重かった。
【0098】
凹凸が形成されていない比較例4は、不織布の厚さが小さく、保液率も低かった。この結果から、凹凸の形成により不織布の嵩が高くなることがわかる。比較例4はまた、MD方向の静止摩擦係数が大きく、拭き取りの方向によっては他の不織布と比較して拭き取り感が重くなった。第2繊維層を有していない単層構造の比較例5は、吸液速度が低かった。
【0099】
表5に示す長期間保管後の液体移行性評価から、中間繊維層としてセルロース系繊維からなる繊維層を使用している不織布(実施例1、比較例1)は、長期間保管しても含浸させた液の移動が少ない、即ち、シートに水を主体とした液体を含浸させた状態で積層し、この状態で長期間保管した後でも上に位置するシートと、下に位置するシートでは液体の含浸量に差が生じにくいことがわかる。これは、親水性の高いセルロース系繊維を主体とする繊維層が、含浸させた液体を保持しようと強く働くためであると考えられる。すなわち、液体を含浸させた不織布を積層した状態で保管した際、液体そのものに加わる重力や、上に重ねられたシートの重さによって、含浸させた液体を容器内の下側に移動させるような力が働いたり、周囲の温度によって液体が蒸発しやすい環境にさらされたりしても、セルロース系繊維が液体を保持しているために、液体の移動が発生しにくく、温度による液体の蒸発も少なくなったと考えられる。
【0100】
一方、比較例3の不織布では、シートを積層した積層体の上側に位置するシートと下側に位置するシートとで、保水率に大きな差が生じている。これは、比較例3の不織布には疎水性の合成繊維を主体とする繊維層が中層として含まれていたため、不織布全体として液体を保持しようとする力が弱くなっていることが考えられる。
【0101】
本実施形態のウェットワイピング用不織布は以下の態様のものを含む。
(態様1)
再生セルロース繊維と熱接着性繊維とを含む上側繊維層および下側繊維層の間に、再生セルロース繊維を含む中間繊維層が位置し、3つの繊維層が繊維同士の交絡により一体化されている、ウェットワイピングシート用不織布であって、
熱接着性繊維により繊維同士が接着されており、
表面に凹凸が形成されており、
各繊維層は互いに独立して、ビスコースレーヨン、キュプラ、ポリノジック、アセテートおよび溶剤紡糸セルロース繊維から選択される、1または複数の再生セルロース繊維を含み、
各繊維層に含まれる再生セルロース繊維は互いに独立して、20mmを超える繊維長を有し、
上側繊維層および下側繊維層は互いに独立して、再生セルロース繊維と熱接着性繊維とを合わせた質量に対し、再生セルロース繊維を60質量%以上80質量%以下の量で含み、熱接着性繊維を20質量%以上40質量%以下の量で含み、
中間繊維層は再生セルロース繊維を50質量%以上の量で含む、
ウェットワイピングシート用不織布。
(態様2)
上側繊維層、下側繊維層、および中間繊維層が、再生セルロース繊維として溶剤紡糸セルロース繊維を含む、態様1に記載のウェットワイピングシート用不織布。
(態様3)
凹凸が、繊維密度の大きい部分からなる凸部と、繊維密度の小さい部分からなる凹部とにより形成されており、
繊維密度の小さい部分(以下、「低繊維密度領域」)が不織布の機械方向(以下、「MD方向」)に対して5〜60゜の角度で存在したMD方向に延びるパターン(A)列と、パターン(A)列を反転させたMD方向に延びるパターン(B)列とが、MD方向に直交する方向(以下、「CD方向」)に交互に繰り返して存在し、かつ隣り合う低繊維密度領域の間に、繊維密度の大きい領域(以下、「高密度繊維領域」)が位置していて、凹部である低繊維密度領域と凸部である高繊維密度領域とが不織布のMD方向において交互に繰り返して存在している、
態様1または2に記載のウェットワイピングシート用不織布。
(態様4)
(a)再生セルロース繊維を含む第1繊維ウェブの両面に、再生セルロース繊維と熱接着性繊維とを含む第2繊維ウェブおよび第3繊維ウェブを配置して、積層ウェブを作製すること、
(b)積層ウェブに圧力が1MPaMPa以上10MPaMPa以下の柱状水流を積層ウェブの一方の面にのみ1〜5回噴射すること、または両方の面にそれぞれ1〜5回ずつ噴射すること、および
(c)熱処理を施して、熱接着性繊維により繊維同士を接着させること
を含み、
前記(a)において、
各繊維ウェブは互いに独立して、ビスコースレーヨン、キュプラ、ポリノジック、アセテートおよび溶剤紡糸セルロース繊維から選択される、1または複数の再生セルロース繊維を含み、
各繊維ウェブに含まれる再生セルロース繊維は互いに独立して、20mmを超える繊維長を有し、
第2繊維ウェブおよび第3繊維ウェブは互いに独立して、再生セルロース繊維と熱接着性繊維とを合わせた質量に対し、再生セルロース繊維を60質量%以上80質量%以下の量で含み、熱接着性繊維を40質量%以上20質量%以下の量で含み、かつ
第1繊維ウェブは再生セルロース繊維を50質量%以上の量で含み、
前記(b)において、凹凸を形成することが可能な支持体に積層ウェブを置いて、積層ウェブに柱状水流を少なくとも1回噴射することを含む、
ウェットワイピングシート用不織布の製造方法。
(態様5)
凹凸を形成することが可能な支持体が、杉綾織り構造の支持体である、態様4に記載のウェットワイピングシート用不織布の製造方法。
(様態6)
様態1ないし3のいずれかのウェットワイピングシート用不織布100質量部に対して液体が100質量部以上1000質量部以下含浸されている、対人用ウェットワイピングシート。