【実施例】
【0016】
以下に示す方法で、本発明の回路基板を作製し、評価を行った。
【0017】
(絶縁層)
絶縁層を形成する絶縁剤は次のように作製した。シリコーン樹脂と無機充填材とを自転公転式ミキサー「あわとり練太郎」ARE−310(株式会社シンキー製、登録商標)で3分間撹拌混合し、絶縁剤を作製した。シリコーン樹脂は、以下に示すものを表1から表5に示す比率で用いた。無機充填材は、以下のアルミナまたはシリカを表1から表5に示す充填率・比率で混合したものを用いた。表1から表5において充填率は体積%を示し、シリコーン樹脂、無機充填材の比率はそれぞれの全体を100質量%としたときのそれぞれの質量%を示す。
【0018】
(シリコーン樹脂)
モメンティブ社製TSE3033 Mw A剤/B剤=27500/36000
モメンティブ社製XE14−B2324 Mw A剤/B剤=87900/101200
モメンティブ社製TSE3331K Mw A剤/B剤=21900/21200
【0019】
(無機充填材)
結晶性シリカ:龍森社製 A−1 d50=12μm
アルミナ(1):昭和電工社製 AA−18 d50=18μm
アルミナ(2):デンカ社製 DAW05 d50=5μm
アルミナ(3):デンカ社製 DAW10 d50=10μm
アルミナ(4):デンカ社製 DAW45S d50=45μm
【0020】
(回路基板)
作製した絶縁剤を基材1として厚さ2.0mmのアルミニウム板(材質:1050昭和電工社製)上にスクリーン印刷法で乾燥後の厚さが100μmとなるように塗布して絶縁層2を形成した。絶縁層2の上に導体層3として厚さ70μmの銅箔(GTS−MP 古河サーキットフォイル社製、商品名)を貼り合わせ、180℃で3時間の加熱を行い、絶縁層2を硬化させた。
この導体層3をエッチングして回路パターンを形成し、回路基板を得た。
【0021】
(評価)
得られた回路基板について、以下の方法に従って、耐はんだクラック性、耐電圧、及びピール強度の評価を行った。得られた結果を表1から表5に示す。
【0022】
<耐はんだクラック性の評価方法>
この回路パターン上にR1608(1.6×0.8mm)のチップ抵抗を錫−銀−銅系の鉛フリーはんだ(千住金属工業社製)、で搭載した。
この電子部品搭載基板を用い、−40℃〜+125℃(各20分)の気槽熱衝撃試験を3000サイクル実施した。顕微鏡にて熱衝撃試験後の半田接続部の断面観察を行い、クラック発生状況を調べ、次のように判定した。
○;クラック長がはんだ接合部全体の長さの50%未満
×;クラック長が、はんだ接合部全体の長さの50%以上
【0023】
<耐電圧の測定方法>
エッチング法により、回路基板上に直径が20mmの円形電極を作成し、JISC 2110に規定された20秒段階昇圧試験に基づき、円形電極とアルミニウム板との間の耐電圧を測定した。測定器には、菊水電子工業社製、TOS5101を用いた。
【0024】
<ピール強度の評価方法>
幅10mmの銅箔を残すように回路基板を加工して試料とした。銅箔と基板を90度の角度とし、50mm/minの引っ張り速度で剥離し、引き剥し強度を測定した。その他の条件はJISC6481に基づいた。測定機としては、エー・アンド・デイ社製、テンシロンRTG1210を用いた。
【0025】
<熱伝導率の評価>
絶縁層2の熱伝導率の測定は厚さ1mmにて180℃で3時間硬化させた硬化体を用い、キセノンフラッシュ法(NETZSCH社製LFA 447 Nanoflash)にて評価した。
【0026】
<印刷性の評価>
作製した絶縁剤を基材1として厚さ2.0mmのアルミニウム板(材質:1050昭和電工社製)上にスクリーン印刷法で乾燥後の厚さが100μmとなるように塗布し、アルミ板上に塗布された絶縁剤にカスレがあるか評価した。印刷機は、ニューロング社製、15GTNを用い、目視にてかすれの発生の有無を判断した。
【0027】
【表1】
【0028】
表1に示した実験例1から実験例6は、フィラー充填率を40体積%から65体積%に変えたほかは、すべて同様に評価した。実験例1のフィラー充填率が40体積%の場合は十分な熱伝導率が得られなかった。実験例6のフィラー充填率が65体積%の場合は、目標とした耐はんだクラック性が得られず、さらにスクリーン印刷時にカスレが生じ、それにより耐電圧が低い結果となった。また、十分なピール強度も得られなかった。実験例2から実験例5では、耐はんだクラック性、耐電圧、ピール強度、熱伝導率ともに良好な結果が得られた。
【0029】
【表2】
【0030】
表2に示した実験例3および実験例7から実験例10は、無機充填材のアルミナとシリカの配合比率を変えたほかは、すべて同様に評価した。実験例7のアルミナ単独の場合は、ピール強度が低い結果となったが、実験例8から実験例10および実験例3のシリカの配合比率が25質量%以上の場合には、十分なピール強度が得られ、耐はんだクラック性、耐電圧、熱伝導率を含め、良好な結果が得られた。
【0031】
【表3】
【0032】
表3に示した実験例3および実験例11から実験例13は、無機充填材の粒径を変えたほかは、すべて同様に評価した。いずれも耐はんだクラック性は目標値を満足したが、実験例11の平均粒径5μmのアルミナを使用した場合は、スクリーン印刷時にカスレが生じた。また、実験例13の平均粒径45μmのアルミナを用いた場合は、耐電圧が著しく低くなった。実験例12および実験例3のアルミナの平均粒径が10μm、18μmの場合は、耐はんだクラック性、耐電圧、ピール強度、熱伝導率ともに良好な結果が得られた。
【0033】
【表4】
【0034】
表4に示した実験例14から実験例16は、重量平均分子量の異なるシリコーン樹脂を用いたほかは、すべて同様に評価した。いずれも耐はんだクラック性は目標値を満足したが、実験例14および実験例15では、ピール強度が低くなったが、実験例16は十分なピール強度が得られ、耐電圧、熱伝導率を含め、良好な結果が得られた。
【0035】
【表5】
【0036】
表5に示した実験例3および実験例17から実験例20は、重量平均分子量の異なる二種類のシリコーン樹脂の配合割合を変えたほかは、すべて同様に評価した。いずれも耐はんだクラック性は目標値を満足したが、実験例17の重量平均分子量が小さいシリコーン樹脂を単独で使用した場合は、十分なピール強度が得られなかった。実験例18から実験例20および実験例3の重量平均分子量が大きいシリコーン樹脂を25質量%以上加えた場合は、十分なピール強度が得られ、耐電圧、熱伝導率を含め、良好な結果が得られた。