(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
一対の集電体の間に、第1の電極層、固体電解質層および第2の電極層からなる積層体、並びにこの積層体の周囲に配置されて上記両電極層同士を絶縁する板状の絶縁部材を具備する全固体二次電池であって、
上記絶縁部材の内縁が第1の電極層の外縁に接触または2mm以下の隙間を生じ、
上記絶縁部材が、板状部と、当該絶縁部材の内縁より離れた外側部分に、当該板状部よりも厚い帯状の突状部とを有するものであり、
且つ上記固体電解質層の外縁が上記突状部より少なくとも内側の絶縁部材の表面を覆うとともに当該突状部に接触するようにしたことを特徴とする全固体二次電池。
一対の集電体の間に、第1の電極層、固体電解質層および第2の電極層からなる積層体、並びにこの積層体の周囲に配置されて上記両電極層同士を絶縁する板状の絶縁部材を具備する全固体二次電池の製造方法であって、
上記絶縁部材が、板状部と、第1の電極層を案内し得る開口部と、当該開口部の内縁より離れた外側部分に当該板状部よりも厚い帯状の突状部とを有するものであり、
一方の集電体の表面に、上記絶縁部材を接着する工程と、
この工程で接着された絶縁部材の開口部内に、上記絶縁部材の内縁が第1の電極層の外縁に接触または2mm以下の隙間を生ずるように第1の電極層を配置する工程と、
この工程で配置された第1の電極層の表面および上記突状部よりも少なくとも内側の絶縁部材の表面に固体電解質層を配置するとともに当該突状部に接触させる工程と、
この工程で配置された固体電解質層の上面に第2の電極層を配置して積層体を得る工程と、
この工程で得られた積層体の上面に、他方の集電体を配置した後、押圧する工程とを具備したことを特徴とする全固体二次電池の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述したような製造方法で得られた全固体二次電池においても、内部短絡が発生していた。
この内部短絡の原因を検討した結果、その原因は、押圧時に加えられた力による粉体からなる構成層(以下、粉体層と称す)に作用する主応力およびこの主応力にて生じるせん断応力に起因するものと判明した。すなわち、粉体層に垂直に力が掛かると垂直方向に最大主応力が発生するとともに、横方向にも最小主応力が発生し、これら両主応力により斜め方向のせん断応力が発生する。言い換えれば、せん断力が働くことになる。
【0006】
ところで、粉体層は所定厚さで積層されており、その中央部は押圧より押し固められるが、その周縁部は傾斜面となり薄くなっている。このため、せん断力により、粉体層の周縁部が崩壊し、内部短絡に繋がっていた。
【0007】
そこで、本発明は、押圧により発生する内部短絡を抑制し得る全固体二次電池およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る全固体二次電池は、一対の集電体の間に、第1の電極層、固体電解質層および第2の電極層からなる積層体、並びにこの積層体の周囲に配置されて上記両電極層同士を絶縁する板状の絶縁部材を具備する全固体二次電池であって、
上記絶縁部材の内縁が第1の電極層の外縁に接触または
2mm以下の隙間を生じ、
上記絶縁部材が、板状部と、当該絶縁部材の内縁より離れた外側部分に、当該板状部よりも厚い帯状の突状部とを有するものであり、
且つ上記固体電解質層の外縁が上記突状部より少なくとも内側の絶縁部材の表面を覆う
とともに当該突状部に接触するようにしたものである。
【0009】
また、本発明に係る全固体二次電池の製造方法は、一対の集電体の間に、第1の電極層、固体電解質層および第2の電極層からなる積層体、並びにこの積層体の周囲に配置されて上記両電極層同士を絶縁する板状の絶縁部材を具備する全固体二次電池の製造方法であって、
上記絶縁部材が、板状部と、第1の電極層を案内し得る開口部と、当該開口部の内縁より離れた外側部分に当該板状部よりも厚い帯状の突状部とを有するものであり、
一方の集電体の表面に、
上記絶縁部材を接着する工程と、
この工程で接着された絶縁部材の開口部内に
、上記絶縁部材の内縁が第1の電極層の外縁に接触または2mm以下の隙間を生ずるように第1の電極層を配置する工程と、
この工程で配置された第1の電極層の表面および上記突状部よりも少なくとも内側の絶縁部材の表面に固体電解質層を配置する
とともに当該突状部に接触させる工程と、
この工程で配置された固体電解質層の上面に第2の電極層を配置して積層体を得る工程と、
この工程で得られた積層体の上面に、他方の集電体を配置した後、押圧する工程とを具備する製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の全固体二次電池およびその製造方法によれば、絶縁部材の内縁が第1の電極層の外縁に接触または近接されるとともに、当該絶縁部材の内縁より離れた外側部分に、その板状部よりも厚い帯状の突状部を設けたので、第1の電極層の外縁が絶縁部材に接触または近接するとともに少なくとも固体電解質層の外縁が突状部に接触した状態となるため、電池の押圧時に、その周縁部に生じるせん断崩壊を防止することができ、さらに第1の電極層の外周側面を固体電解質層で覆う代わりに絶縁部材の内縁を第1の電極層の外縁に接触または近接させることで、電池の押圧時に、第1の電極層の外周側面の固体電解質の厚みが薄くなることによる段差部を軽減することができるので、内部短絡が発生するのを防止し得る。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態に係る全固体二次電池およびその製造方法について、図面に基づき説明する。
まず、全固体二次電池の構成について説明する。
【0013】
この全固体二次電池を簡単に説明すると、一対の集電体の間に、第1の電極層、固体電解質層および第2の電極層からなる積層体、並びにこの積層体の周囲に配置されて上記両電極層同士を絶縁する板状の絶縁部材を具備する全固体二次電池であって、上記絶縁部材の内縁が第1の電極層の外縁に接触または近接されるとともに、当該絶縁部材の内縁より離れた外側部分に、その板状部よりも厚い帯状の突状部を有し、且つ上記固体電解質層の外縁が上記突状部より少なくとも内側の絶縁部材の表面を覆うようにしたものである。
【0014】
以下、
図1に基づき、全固体二次電池について詳しく説明する。
この全固体二次電池1は、一対の集電体、すなわち正極集電体11と負極集電体21との間に、正極層(第1の電極層の一例)12、固体電解質層32および負極層(第2の電極層の一例)22が順番に積層されてなる積層体X、並びにこの積層体Xの周囲に配置されるとともに少なくとも固体電解質層32と接触して正極層12と負極層22とを電気的に絶縁する板状の絶縁部材41が配置された全固体二次電池であって、上記絶縁部材41の板状部41aの中央に形成された開口部41dの内周面が正極層12の外周面(外周側面)に接触されるとともに、この開口部41dの内周面より所定距離はなれた板状部41aの外側部分に、所定幅でもって板状部41aよりも厚くされた帯状の突状部41bが設けられ、且つ上記正極層12の表面に積層される固体電解質層32を、その外周が上記突状部41bより少なくとも内側の板状部41aの表面すなわち内縁部を覆うような大きさにしたものである。なお、以下、板状部41aの内縁部に41cを付して説明する。
【0015】
また、絶縁部材41と正極集電体11および負極集電体21とは、下部接着層51および上部接着層52を介して接着されている。上記絶縁部材41としては、例えばPETフィルムなどの高分子材料でできた絶縁シートが用いられる。したがって、シート状の絶縁部材と言えるとともに、板状部をシート部と言うことができる。なお、上記各接着層51,52としては、両面接着テープなどの感圧接着材が用いられる。
【0016】
勿論、上記絶縁部材41の開口部41dには積層体Xが配置されることになる。また、突状部41bの厚さは、例えば正極層12と固体電解質層32との合計厚さより厚く(高く)されている。
【0017】
なお、正極層12および負極層22としては、粉末の電極合材が用いられるとともに、固体電解質層32についても、粉末のものが用いられる。そして、電極合材については、電極活物質と固体電解質との混合物が用いられるが、場合によっては、電極活物質だけの場合もある。
【0018】
ここで、全固体二次電池1の形状および大きさについて説明すると、平面視形状が正方形(円形または多角形であってもよい)にされるとともに、その一辺の長さは30〜300mmの範囲で、また厚さは50〜500μmの範囲とするのが適正である。したがって、積層体Xの平面視形状が正方形であるとともに、積層体Xの正極層12および固体電解質層32を案内するための開口部41dの平面視形状も正方形にされている。
【0019】
図1においては、全固体二次電池を水平面に載置した状態で且つ正極側を下方に、負極側を上方に配置したものとして示しているが、勿論、負極側を下方に、正極側を上方に配置したものでもよい。
【0020】
なお、全固体二次電池の主要部分の構成材料については、製造方法を説明した後に、纏めて説明する。
以下、全固体二次電池の製造方法について、
図2〜
図8に基づき、詳しく説明する。
【0021】
図2に示すように、正極集電体11の表面に、正極層12を案内し得る開口部41dを有するとともにこの開口部41dより所定距離はなれた外側の突状部41bが板状部41aよりも厚くされた絶縁部材41を、下部接着層51を介して接着する。上記所定距離は固体電解質層32の面積をどれだけ安全を見て大きくするかで決まる値で、成膜面積が小さい程、コンパクトになり、原料も少なくなって軽量化に繋がる。すなわち、所定距離については、0.1〜5mmの範囲が好ましく、0.5〜5mmの範囲がより好ましい。また、突状部41bの幅については、材質の強度や部材の製造のし易さなどにもよるが、0.5〜20mmの範囲が好ましく、1.0〜20mmの範囲がより好ましい。さらに、突状部41bの高さについては、高すぎると突状部41bで押圧が不十分になる可能性があるため、押圧後の積層体(正極層、固体電解質層、負極層)Xの厚さよりも低い方が望ましく、50〜500μmの範囲が好ましい。
【0022】
なお、ここでは、厚くされた突状部41bを、板状の主絶縁部材41Aの内周寄りの上面に、所定幅の帯状の副絶縁部材41Bが接着層53を介して接着されたものとして説明する。
【0023】
次に、
図3に示すように、この絶縁部材41、すなわち主絶縁部材41Aに設けられた開口部41dの内方の正極集電体11の表面に正極層12を配置する。
次に、
図4に示すように、この正極層12の上面に固体電解質層32を所定厚さでもって配置する。この場合、固体電解質層32の外周部は、例えば1mm幅の帯状の副絶縁部材41Bの上方を覆うように配置される。なお、正極層12の上方の固体電解質層32の表面高さは、突状部41b(副絶縁部材41B)の表面と同一またはそれよりも少し低くされている。
【0024】
次に、
図5に示すように、固体電解質層32の上面に負極層22を所定厚さでもって配置して、積層体Xを得る。
次に、
図6および
図7に示すように、負極層22の上面に、周囲に上部接着層52が取り付けられた負極集電体21を配置するとともに空気を吸引しながら5000Pa程度の低圧力でもって仮押圧(仮プレス)して、上部接着層52により、負極集電体21を絶縁部材41の上面に接着する。
【0025】
次に、
図8に示すように、内部の空気を吸引した状態で、10ton/cm
2程度の高圧力でもって本押圧(本プレス)を行う。
なお、負極集電体21を上方から押圧する際には、負極集電体21と押圧部材(図示せず)との間には、弾性部材、例えばゴム板などが配置される。
【0026】
そして、最後に、両集電体11,21間に積層体Xが配置されてなる電池を一対のステンレス板で挟んだ後、電気取り出し用タブリードが備えられたラミネートフィルムで挟み、真空下で、周囲を熱融着することによりラミネートパックを行う。
【0027】
これにより、単体の全固体二次電池が得られる。通常、全固体二次電池は、単体の電池が、複数個、直列に積層されるか、または並列に配置されることにより構成される。
上記製造方法の主要部分を、工程形式で記載すると、以下のようになる。
【0028】
すなわち、この製造方法は、一対の集電体の間に、正極層(第1の電極層)、固体電解質層および負極層(第2の電極層)からなる積層体、並びにこの積層体の周囲に配置されて上記両電極層同士を絶縁する板状の絶縁部材を具備する全固体二次電池の製造方法であって、正極集電体(一方の集電体)の表面に、正極層を案内し得る開口部を有し(開口部を有するように)且つ当該開口部の内縁より所定距離はなれた外側部分に所定幅でもってその板状部よりも厚い帯状の突状部が設けられた(突状部を有するように)絶縁部材を接着する工程と、この工程で接着された絶縁部材の開口部内に正極層を配置する工程と、この工程で配置された正極層の表面および上記突状部よりも少なくとも内側の絶縁部材の表面に固体電解質層を配置する工程と、この工程で配置された固体電解質層の上面に負極層を配置して積層体を得る工程と、この工程で得られた積層体の上面に、負極集電体(他方の集電体)を配置した後、押圧する工程とを備えた方法である。
【0029】
上記全固体二次電池1の主要構成部材の材料について説明する。
正極集電体11および負極集電体21としては、銅(Cu)、マグネシウム(Mg)、ステンレス鋼、チタン(Ti)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、ゲルマニウム(Ge)、インジウム(In)、リチウム(Li)、錫(Sn)またはこれらの合金等から成る薄板状体、箔状体が用いられる。ここで、薄板状体および箔状体は、その厚さが5μm〜100μmの範囲内のものである。本実施の形態においては、正極集電体11としてはアルミニウム箔、負極集電体21としては銅箔が用いられる。さらに、各集電体11,21は、粉末の積層体Xとの密着性向上の観点から、その表面に粗化処理が施されたものであることが好ましい。粗化処理とは、エッチングなどで表面粗さを大きくする処理である。本実施の形態においては、正極集電体11には、エッチング処理されたアルミニウム箔(エッチドアルミ箔とも言う)が用いられる。また、負極集電体21には、エッチング処理された銅箔(粗化銅箔とも言う)が用いられるが、エッチング処理がされない銅箔を用いてもよい。また、絶縁部材41(41A,41B)には、PETフィルムなどの高分子材料でできた絶縁シートが用いられる。
【0030】
このようにエッチング処理が施された集電体を用いることによって、全固体二次電池を製造する際の押圧で、エッチングによりできた孔部が潰され、電極層すなわち正極層12および負極層22の表面に喰い付きやすくなり、集電体とこれら電極層とが一体化されやすくなる。
【0031】
また、電極層は、電子の授受を行うために粒子間に電子伝導パスを確保する電極活物質とイオン伝導性を有する固体電解質とを所定の割合で混合した混合材から成る層である。このように電極活物質にリチウムイオン伝導性を有する固体電解質を混合することにより、電子伝導性に加えてイオン伝導性を付与し、粒子間にイオン伝導パスを確保することができる。
【0032】
正極層12に適した正極活物質としては、リチウムイオンの挿入離脱が可能なものであればよく、特に限定されない。例えば、正極活物質としては、リチウム・ニッケル複合酸化物(LiNi
xM
1−xO
2、ただしMはCo、Al、Mn、V、Cr、Mg、Ca、Ti、Zr、Nb、MoおよびWのうち少なくとも1つの元素)、コバルト酸リチウム(LiCoO
2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO
2)、マンガン酸リチウム(LiMn
2O
4)などの層状酸化物、オリビン構造を持つリン酸鉄リチウム(LiFePO
4)、スピネル構造を持つマンガン酸リチウム(LiMn
2O
4、Li
2MnO
3、LiMO
2)などの固溶体やそれらの混合物、さらに硫黄(S)、硫化リチウム(Li
2S)などの硫化物などを用いることもできる。本実施の形態においては、正極活物質として、リチウム・ニッケル・コバルト・アルミニウム複合酸化物(LiNi
0.8Co
0.15Al
0.05O
2、以下NCA系複合酸化物と称する)が用いられる。
【0033】
一方、負極層22に適した負極活物質としては、例えば天然黒鉛、人造黒鉛、黒鉛炭素繊維、樹脂焼成炭素などの炭素材料や、固体電解質と合材化される合金系材料が用いられる。合金系材料としては、例えば、リチウム合金(LiAl,LiZn,Li
3Bi,Li
3Cd,Li
3Sb,Li
4Si,Li
4.4Pb,Li
4.4Sn,Li
0.17C,LiC
6など)や、チタン酸リチウム(Li
4Ti
5O
12)、Znなどの金属酸化物などが挙げられる。本実施の形態においては、負極活物質として、天然・人造などの黒鉛が用いられる。
【0034】
また、正極活物質および負極活物質の表面に、ジルコニア(ZrO
2)、アルミナ(Al
2O
3)、チタン酸リチウム(Li
4Ti
5O
12)、ニオブ酸リチウム(Li
4NbO
3)、炭素(C)などをそれぞれコーティングしたものを電極活物質として使用することができる。
【0035】
固体電解質は、有機系のポリマー電解質(有機固体電解質とも言う)、無機系の無機固体電解質などに大別されるが、固体電解質として、いずれを用いても構わない。また、無機固体電解質は、酸化物系の材料および硫化物系の材料に大別されるが、いずれを用いても構わない。さらに、無機固体電解質においては、結晶性または非晶質のもののうちから適宜選択することができる。すなわち、固体電解質は、有機化合物、無機化合物またはこれらの混合物から成る材料から適宜選択することができる。具体的には、固体電解質として用いることのできる材料としては、例えば、Li
2−SiO
2、Li
2−SiO
2−P
2O
5などのリチウム含有金属酸化物(金属は一種以上)、Li
xP
yO
1−zN
2などのリチウム含有金属窒化物、Li
2S−P
2S
5系、Li
2S−SiS
2系、Li
2S−B
2S
3系、Li
2S−GeS
2系、Li
2S−SiS
2−LiI系、Li
2S−SiS
2−Li
3PO
4系、Li
2S−Ge
2S
2系、Li
2S−GeS
2−P
2S
5系、Li
2S−GeS
2−ZnS系などのリチウム含有硫化物系ガラス、およびPEO(ポリエチレンオキシド)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、リン酸リチウム(Li
3PO
4)、リチウムチタン酸化物などのリチウム含有遷移金属酸化物が挙げられる。なお、本実施の形態においては、固体電解質として、高いイオン伝導性を有する硫化物系ガラスをベースとした硫化物系無機固体電解質のうち、Li
2S−P
2S
5系ガラスが用いられる。また、固体電解質層32に適した固体電解質は、正極層12および負極層22で用いられる固体電解質と同一または異なるものであってもよい。
【0036】
上記実施の形態においては、接着層として、取扱いの容易さから両面接着テープなどの感圧接着材が用いたが、液体、固体などの接着剤を用いてもよい。
また、上記実施の形態においては、絶縁部材41の内縁を正極層12の外縁に接触させるように説明したが、製造誤差により、絶縁部材41の内縁と正極層12との間に、例えば2mm以下の隙間が生じる場合がある。すなわち、絶縁部材41の内縁が正極層12の外縁に近接する場合もある。
【0037】
上記全固体二次電池およびその製造方法によると、絶縁部材の内縁が正極層(第1の電極層)の外縁に接触または近接されるとともに、当該絶縁部材の内縁より離れた外側部分に、その板状部よりも厚い帯状の突状部を設けたので、正極層の外縁が絶縁部材に接触または近接するとともに少なくとも固体電解質層の外縁が突状部に接触して、それぞれ保持された状態となるため、押圧時に周縁部に生じる積層体の崩壊を防止し得るとともに、正極層の外周側面を固体電解質層で覆う代わりに、絶縁部材の内縁を正極層の外縁に接触または近接させることで、やはり、電池の押圧時に、正極層の外周側面の固体電解質層の厚みが薄くなることによる段差部を軽減することができるので、より確実に、内部短絡が発生するのを防止することができる。
【0038】
詳しく説明すると、絶縁部材41における積層体Xとの接触部である突状部41bを、外側の板状部41aよりも厚くしたので、電池の押圧時にその周縁部に生じるせん断力による崩壊を防止することができ、したがって内部短絡(電気的短絡)が発生するのを防止することができる。すなわち、絶縁部材41における突状部41bが、積層体Xが押圧された際に生じるせん断崩壊を防止し得る崩壊防止ブロックとして機能することになる。
【0039】
例えば、正極層12、固体電解質層32および負極層22を単に積層するだけであれば、中央部分が最も厚くなるとともに周縁部が薄くなる。この状態で、高圧力でもって押圧しても周縁部には力があまり作用しないので、この周縁部では粉体同士の固着が不十分となって、衝撃や集電体の変形により層構造が破壊され易くなるが、このような事態を回避することができる。
【0040】
さらに、絶縁部材41の突状部41bよりも内側に内縁部41cを設けて正極層12の周囲を固体電解質層32で覆った際に生じる段差部を無くすことにより、段差緩和機能(段差緩和領域)が具備されている。例えば、
図9に示すように、突状部41bの内側に、正極層12の外周面に接触する内縁部が設けられていない場合、正極層12を覆う固体電解質層32には、破線にて示すように、肩部つまり段差部が生じるため、積層体Xの押圧時にこの肩部が崩れて、短絡が発生し易くなってしまう。このような事態を回避することができる。
【0041】
ここで、実際に製造した全固体二次電池を充放電させた際の結果について説明する。
この全固体二次電池においては、正極集電体11として、厚さ20μmの粗化処理されたアルミ箔(エッチドアルミニウム)を用いるとともに、負極集電体21として、厚さ18μmの銅箔を用いた。また、絶縁部材41としては、厚さ50μmのPETフィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルム)を用いた。また、下部接着層51および上部接着層52としては、厚さ30μmで幅が2mmの感圧接着フィルム(両面接着テープ)を用いるとともに、突状部41bの接着層53としては、同じもので幅が1mmのものを用いた。
【0042】
さらに、正極層12として、正極活物質であるNCA系複合酸化物と、固体電解質としてLi
2S(80mol%)−P
2S
5(20mol%)からなるガラスセラミックとを、7:3の割合で混合したものを用いた。負極層22としては、負極活物質である黒鉛粉末と、固体電解質であるLi
2S(80mol%)−P
2S
5(20mol%)からなるガラスセラミックとを、6:4の割合で混合したものを用いた。固体電解質層32における固体電解質としては、Li
2S(80mol%)−P
2S
5(20mol%)からなるガラスセラミックを用いた。
【0043】
また、各構成部材の所定厚さについては、本押圧後において、正極層12の厚さが約70μm、負極層22の厚さが約100μm、固体電解質層32の厚さが約70μmとなるように、例えば静電スクリーン塗布法により塗布した。
【0044】
上記得られた電池を、一辺が70mmの正方形で厚さ0.3mmの一対のステンレス板で挟んだ後、電気取り出し用タブリードが備えられたラミネートフィルムで挟み、真空下で、周囲を熱融着してラミネートパックを施し、そして、100MPaの圧力でもって、例えば30秒間プレス(本プレス)して、全固体二次電池1を作製した。
【0045】
この全固体二次電池1を、例えば4個作製するとともに、それぞれ、0.1C、4〜2Vで充放電させたところ、全て、異常なく充放電を行うことができた。
ところで、上記実施の形態においては、積層体の周囲に配置される絶縁部材の一部を帯状の突出部として説明したが、例えば
図10に示すように、
図6で示した負極集電体21側に、帯状の副絶縁部材41Bの外側に沿って配置し得る環状の外側絶縁部材42を、上部接着層52を介して接着させておき、そして押圧時に(矢印aで示す)、この外側絶縁部材42を、接着層54を介して、絶縁部材41の板状部41A(41a)の上面に接着させるようにしたものでもよい。言い換えると、絶縁部材41,42の全体の厚さを、押圧後における積層体Xの固体電解質層32の下面より上方の位置となるように厚くしてもよい。