(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、パソコン、携帯電話、PDAなどの電子機器の性能向上は著しく、それはCPUの著しい性能向上によっている。この様なCPUの性能向上に伴い、CPUの発熱量も著しく増加し、電子機器における放熱をどの様に行うかが重要な課題になっている。
【0003】
熱対策としてはファンによる空冷やヒートパイプ、水を用いた水冷などの方法があるが、これらはいずれも新たな放熱のための装置を必要とし、機器の重量増加を招くだけでなく、騒音や使用電気量の増加などを招くという欠点がある。
【0004】
一方で、CPUの発生する熱を出来るだけ迅速に広い面積に拡散させる方法は冷却効率を上げることを目的としたもので、携帯電話やパソコンなどの電子機器における冷却方法としては最も現実的なものである。
【0005】
ところで、有機EL素子に代表されるディスプレイデバイスでは、近年、大型化が進み、デバイスの精度、特に均一性が重要視されている。特に有機EL素子においては、素子自体が有機物で構成されている為、熱による劣化が素子の寿命、特に、発光特性、及び色度変化に影響を与えることが知られており、デバイスを構成する駆動回路などの発熱により、経時変化を伴うことがある。
【0006】
この様な放熱目的に使用される熱伝導シートとして、近年では、シート状のグラファイトが大きな注目を集めている。
その理由は、良質のグラファイトシートは100W/(m・K)以上1000W/(m・K)以下の非常に高い熱伝導性を有しており、他のゲル状の放熱材料やシート状の放熱材料の熱伝導度の特性に比べて著しく高性能であり、熱を拡散させるためには最適だからである。
【0007】
特許文献1には、発熱体からの熱を放熱部材に直接伝達するための熱伝導性シートが記載されており、特許文献2や特許文献3には、発熱体からの熱を平面方向に拡散させる熱拡散性の熱伝導性シートが記載されている。
【0008】
熱伝導性シートとしては、特許文献1のものではなく、特許文献2や特許文献3に記載された熱伝導性シートが注目され、特に、グラファイトをシート化したいわゆるグラファイトシートが注目されている。
【0009】
すなわち、グラファイトシートは、平面方向に100W/(m・K)以上1000W/(m・K)以下の高い熱伝導性を有しており、発熱体からの熱を拡散させて電子機器内の温度を均一化させることで、機器内の配置された部品の機能低下を防止している。
【0010】
特許文献2の実施の形態3(段落0048)には、PETフィルムなどの基材の両面に粘着剤層を形成した両面テープをグラファイトシートの片面に予め貼付しておき、その粘着剤層により、電子機器の貼付対象の表面(以下、被着面と言う)に貼付する技術が開示されているが、通常粘着剤層は熱伝導性を有さず、シート全体の熱拡散効果を低下させる傾向にある。また、通常粘着剤層として使用されるアクリル系粘着剤層では、貼り直しのために剥離することが困難である。
【0011】
そのため、特許文献3では、グラファイトシートの片面にシリコーンゴム等の弾性層(粘着剤層に相当)に熱伝導性材料を含有させたグラファイトシート(請求項1)を提供することで、熱伝導率の低下防止と、貼り直しのための剥離を容易にすることを試みている。
【0012】
しかし、画像パネル、とりわけ、OLEDパネル(有機ELパネル)のような画像表示パネルは、そのパネルを構成する表面がガラスであり非常に平滑であるが、粘着剤層に熱伝導性材料を含有させると粘着剤層表面に凹凸が形成されるため、初期の密着性が低下する不具合がある。この密着性の低下は、剥離の容易性には貢献するものの、相対的に粘着剤層を構成する樹脂成分の割合が低下するから、接着信頼性の低下は避けられない(課題1)。
【0013】
また、グラファイトシートの厚みが300μm以下の場合には、それほど問題にはならないが、グラファイトシートの厚みがそれ以上厚くなると、シート全体の剛性が高くなる結果、剥離する際にシートを曲げることが困難となる。そのために、グラファイトシートを、グラファイトシートが貼付されている表面から剥離する際に、グラファイトシートと表面とが成す角度が大きくならないようにしながら上方側に引っ張ることになるが、その場合シリコーン粘着剤層が凝集破壊しやすく、その結果、被着面に残りやすい結果となる(課題2)。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施の形態を下記の項目にしたがって述べる。
1.本発明の熱拡散シート(粘着剤付きグラファイトシート)
2.グラファイトシート
3.複合粘着剤フィルム
4.アクリル系粘着剤層
5.ポリエステルフィルム
6.シリコーン粘着剤層
7.ポリエステルフィルムとシリコーン粘着剤層の関係
8.粘着剤付きグラファイトシートの製造方法
【0022】
<1.本発明の粘着剤付きグラファイトシート>
図1の符号2は、本発明の熱拡散シートであり、グラファイトシート10と、複合粘着剤フィルム11とを有している。
この熱拡散シート2は、有機EL素子に代表されるディスプレイデバイスのような機器内及び部位に貼付され、その熱源からの熱を拡散する役割を果たすものである。
【0023】
<2.グラファイトシート>
本発明に用いられるグラファイトシート10は、主に天然黒鉛から製造され、高い熱伝導性を有し、且つ数十ミクロンから数千ミクロンの任意の厚みに調整できるという特性を持っている。
本発明に用いられるグラファイトシート10は、その結晶性から、熱伝導に異方性があり、厚み方向の熱伝導率は低く、熱が伝わりにくくされており、広がり方向(シートの表面と平行な方向)の熱伝導率は高く、熱が伝わりやすくされている。広がり方向への熱伝導率は、銅やアルミニウムの数倍の大きさを有しており、また、グラファイトシート10は金属シートに比べて軽い。
【0024】
グラファイトシートの厚みは、通常、50μm以上2000μm以下の範囲内であるが、本発明の熱拡散シート2に使用されるグラファイトシート10の場合には、OLEDの画像パネルのように薄型化が要請される機器に使用されるという目的や、シート自体の柔軟性が損なわれシワが発生しやすいと言う不具合に対処するためには、80μm未満が好ましい。そして、本発明の複合粘着剤フィルム11は、後述するように、グラファイトシート10の厚さが20μm以上の場合、特に30μm以上の場合に薄型化に適しており、シワの発生も防止される。
【0025】
なお、グラファイトシート10の熱伝導率は、200W/(m・K)以上2000W/(m・K)以下であり、その熱伝導率は、グラファイトの配向、分子量や圧延密度などにより影響を受ける。
【0026】
<3.複合粘着剤フィルム>
本発明の複合粘着剤フィルム11は、上記のグラファイトシート10の片面に形成され、グラファイトシート10を、貼付対象物の表面に貼付する役割を持つ。
【0027】
また、複合粘着剤フィルム11は、後述するように熱伝導性材料を含有していないため、複合粘着剤フィルム11の全体の熱伝導率は0.05W/(m・K)以上0.5W/(m・K)以下の範囲である。
【0028】
したがって、グラファイトシート10の熱伝導性を損なわないように、また本発明の他の効果に影響を与えないようにするため、複合粘着剤フィルム11の総厚みを20μm以上100μm以下の範囲、特に、22μm以上55μm以下の範囲とするのが好ましい。
【0029】
複合粘着剤フィルム11は、ポリエステルフィルム22の片面にアクリル系粘着剤層21が設けられ、その片面の反対側の面にシリコーン粘着剤層23が設けられて構成されており、熱拡散シート2は、アクリル系粘着剤層21の表面がグラファイトシート10の表面に接触してグラファイトシート10と複合粘着剤フィルム11とが接着されたものである。
【0030】
<4.アクリル系粘着剤層>
アクリル系粘着剤層21を構成する材料は、ベースポリマーとなるアクリル共重合体(a)と、ベースポリマーに相溶し粘着性を発現させる粘着付与剤(b)と、アクリル共重合体(a)の凝集力を調整する硬化剤(c)を含んでおり、グラファイトシート10にアクリル系粘着剤層21が接触する前に、アクリル共重合体(a)と硬化剤(c)との反応は、完全ではないが、終了している。
【0031】
アクリル共重合体(a)としては、メタクリロイル基、水酸基、カルボキシル基、メチロール基、またはアミド基などの官能基を有する単量体として、2−ヒドロキシエチルメタクリレートの他に、アクリル酸、メタクリル酸、2−ヒドロキシエチルまたはプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、アクリルまたはメタクリルアミドなどからなるモノマーから選択されたアクリル共重合体を使用することができる。また、粘着付与剤(b)としては、フェノール系樹脂、テルペン系樹脂、ロジン系樹脂、水添ロジン系樹脂、キシレン樹脂、アクリル樹脂からなる低分子のポリマーを使用することができる。
【0032】
硬化剤(c)としては、アクリル共重合体(a)の成分として水酸基などを有するモノマーなどを含有している場合には、イソシアネート型硬化剤などを使用することができ、その一方、エポキシなどの官能基を有するモノマーなどを含有している場合には、エチレンイミン型硬化剤などを使用することができる。
【0033】
アクリル系粘着剤層21の厚みは、5μm以上15μm以下であり、特に、10μm以下である。5μmよりも薄い場合には、被着体との接着力不足となる不具合があり、その一方15μmよりも厚い場合には、ポリエステルフィルム22の厚みにもよるが、熱抵抗が上昇し良好な熱伝導が得られない不具合がある。10μm以下の場合は更に熱抵抗が小さくなる。
なお、熱伝導性材料を含有しないのは、後述のシリコーン粘着剤層23と同様である。
【0034】
<5.ポリエステルフィルム>
ポリエステルフィルム22は、複合粘着剤フィルム11全体の強度を発生させることができ、後述するシリコーン粘着剤層23の厚みとの関係から、剥離が容易となる役割がある。
また、アクリル系粘着剤層21とシリコーン粘着剤層23を直接積層する際に両層が混合されるのを防止する役目も果たしている。
【0035】
ポリエステルフィルム22には、ポリエチレンテレフタレート(PET)を好ましく使用することができ、その厚みは5μm以上30μm以下の範囲がよく、特に、10μm以上がよく、また、25μm以下の範囲がよい。二軸延伸加工されたPETフィルムを用いる場合は、引っ張り強度については、縦延伸方向で100MPa以上300MPa以下の範囲がよく、横延伸方向で10MPa以上50MPa以下の範囲がよい。
そして、貯蔵弾性率については1000Pa以上10000MPa以下の範囲がよい。
【0036】
<6.シリコーン粘着剤層>
シリコーン粘着剤層23は、付加反応型シリコーン樹脂からなり、OLED等の画像パネル(ガラス)に対する付着力(剥離強度)が0.005N/cm以上1.0N/cm以下となる観点から選択される。具体的には、ジメチルシロキサンなどのオルガノシロキサンを使用することができる。
【0037】
なお、上述の通り、複合粘着剤フィルム11はポリエステルフィルム22によって強度が向上されているから、本発明はシリコーン粘着剤層23を厚く形成する必要がなく、具体的には、シリコーン粘着剤層23の厚みは、接着性が必要であるから2μm以上の厚み、特に5μm以上が好ましく、剥離性を良好にする観点から25μm以下、特に、20μm以下の厚みが好ましい。
また、シリコーン粘着剤層23は、前述のアクリル系粘着剤層21と同様に、熱伝導性材料を含有しない。
【0038】
<7.ポリエステルフィルムとシリコーン粘着剤層の関係>
ポリエステルフィルム22とシリコーン粘着剤層23は、アクリル系粘着剤層21とは異なり、剥離性を左右するが、グラファイトシート10の厚みや所望の面積に伴って、その厚みの関係を変更することが好ましい。
【0039】
例えば、グラファイトシート10の厚みが50μm以上80μm未満であり、その面積が、25cm
2以上300cm
2以下(例えば、12cm×6.7cm)と比較的小さい場合には、ポリエステルフィルム22の厚みは10μm以上20μm以下の範囲とし、シリコーン粘着剤層23の厚みはポリエステルフィルム22の厚みよりも薄く、5μm以上10μm以下とすることが好ましい。
すなわち、シリコーン粘着剤層23の厚みに対して、ポリエステルフィルム22の厚みを1.0倍より大きく4.0倍以下の範囲とするのが好ましい。
【0040】
また、グラファイトシート10の面積が、4000cm
2以上15000cm
2以下(例えば121.7cm×68.5cm)と比較的大きい場合には、ポリエステルフィルム22の厚みは20μm以上30μm以下とし、シリコーン粘着剤層23の厚みはポリエステルフィルム22の厚みよりも薄い条件の下、10μmより大きく25μm以下とすることが好ましい。すなわち、シリコーン粘着剤層23の厚みに対して、ポリエステルフィルム22の厚みは1.0倍よりも大きく3.0倍以下とするのが好ましい。
【0041】
<8.粘着剤付きグラファイトシートの製造方法>
本発明の粘着剤付きグラファイトシートの製造方法は、上記に説明したグラファイトシート10を用意し、そのグラファイトシート10に対して、アクリル系粘着剤層21、ポリエステルフィルム22及びシリコーン粘着剤層23を順次形成してもよく、また、ポリエステルフィルム22の片面に、ポリエステルフィルム22と接触するアクリル系粘着剤層21を形成し、他面にポリエステルフィルム22と接触するシリコーン粘着剤層23を形成した両面粘着シートである複合粘着剤フィルム11を用意し、その複合粘着剤フィルム11のアクリル系粘着剤層21側とグラファイトシート10とを接触させ、グラファイトシート10に複合粘着剤フィルム11を貼付して本発明の熱拡散シート(粘着剤付きグラファイトシート)2を製造しても良い。
【0042】
また、ポリエステルフィルム22にシリコーン粘着剤層23を形成した中間シートAを形成し、他方、剥離フィルム上にアクリル系粘着剤層21を形成した中間シートBを形成しておき、前記中間シートAのポリエステルフィルム22の表面と、前記中間シートBのアクリル系粘着剤層21の表面とを接触させて、中間シートAと中間シートBとを貼付させて両面粘着シートである複合粘着剤フィルム11を作成し、そのアクリル系粘着剤層21側の剥離フィルムを除去し、露出したアクリル系粘着剤層21の表面をグラファイトシート10の表面に接触させて、複合粘着剤フィルム11をグラファイトシート10に貼付し、本発明の熱拡散シート2を製造しても良い。
【0043】
また、ポリエステルフィルム22にシリコーン粘着剤層23が設けられた中間シートAと、グラファイトシート10にアクリル系粘着剤層21の材料が塗布されてアクリル系粘着剤層21が設けられた中間シートCとを用意し、中間シートAのポリエステルフィルム22の表面を露出させ、その露出された表面に、前記中間シートCのアクリル系粘着剤層21の表面を接触させて貼付し、本発明の熱拡散シート2を製造しても良い。
【実施例】
【0044】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
<膨張黒鉛圧延シートの調整方法>
過マンガン酸カリウムを濃硫酸に溶解した混液約15重量部に対し、天然黒鉛100重量部を浸漬して得た鱗片状黒鉛を約900℃に加熱し、容積比で約150cm
3/gに膨張させた膨張黒鉛をプレス成形して密度約1.5g/cm
3の膨張黒鉛を得た。上述の膨張黒鉛から、さらに不純物を取り除き、密度約1.7g/cm
3の膨張黒鉛を得た。これをさらに圧延処理し、厚み0.127mm、0.106mm、0.076mm、0.051mm、0.040mmのフィルム状の膨張黒鉛圧延シートを得た。これを平面方向の熱拡散率を測定できるサーモウェーブアナライザーで測定したところ、熱拡散率は、それぞれ4×10
-4m
2/s、4×10
-4m
2/s、4×10
-4m
2/s、3×10
-4m
2/s、3×10
-4m
2/sであった。
【0045】
<炭化黒鉛シートの調整方法>
市販のポリイミドフィルム((株)カネカ製・アピカルAHの厚さ25、50、75、125、225μm)を黒鉛板に挟み、電気炉を用いて窒素雰囲気下で、1000℃まで昇温した後、1000℃で1時間熱処理して炭化処理(炭素化処理)を行い得られた炭素化フィルムを板状の平滑なグラファイトで上から挟んだ状態で、直方体状の黒鉛容器内に保持し、容器をコークスを主成分とするカーボン粉末で覆い、雰囲気加熱ではなく、容器及びカーボン粉末全体に直流電圧を通電することで3000℃まで加熱し、厚み0.040mm、0.025mmのグラファイトフィルムを作製した。これを平面方向の熱拡散率を測定できるサーモウェーブアナライザーで測定したところ、熱拡散率は、どちらも1×10
-3m
2/sであった。
【0046】
〈シリコーン粘着剤層の作製方法〉
アルケニル基としてビニル基を有するオルガノジメチルポリシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサンとからなる付加型オルガノポリシロキサン[信越化学(株)製:商品名「KS−847H」;固形分30質量%]10質量部に、トルエンとメチルエチルケトンとの混合溶剤(質量比で6:4)15質量部と、白金触媒[信越化学(株)製:商品名「PL−50T」]0.1質量部とを添加して調製した塗工液(固形分12質量%)を、厚さ12μmと、厚さ20μmの二種類のポリエステルフィルム22[帝人デュポンフィルム(株)製のポリエチレンテレフタレートフィルム:商品名「G2」]に、マイヤーバー#3を用いてそれぞれ塗布し、160℃で60秒間乾燥させ、シリコーンエラストマーからなり、微粘着性を有するシリコーン粘着剤層23をポリエステルフィルム22上に形成した。
【0047】
塗工液は、塗布量1.0g/m
2で塗布し厚さ20μmのシリコーン粘着剤層23を形成し、また、その1/4の塗布量を塗布し厚さ5μmのシリコーン粘着剤層23を形成した。
【0048】
〈アクリル系粘着剤層の作製方法〉
アクリルモノマー及びアクリルポリマーを混合した樹脂液55重量部に、粘着付与剤として、水添ロジンである[荒川化学工業(株)社製 商品名「KE311」]を5重量部加えて混合し、更にトルエン40重量部を加えて均一になるまで混合した。これに、TDI系イソシアネート変性架橋剤である[日本ポリウレタン工業(株)社製:商品名「コロネートL」]を2重量部加えて、さらに均一になるまで混合した。この塗工液を厚さ38μmの離型フィルム上に、マイヤーバー#3を用いて塗布量10g/m
2で塗布し、130℃で120秒間乾燥させ、厚さ10μmのアクリル系粘着剤層21を離型フィルム上に形成した。また、半分の塗布量で、厚さ5μmのアクリル系粘着剤層21を離型フィルム上に形成した。
【0049】
〈複合粘着剤フィルム〉
得られた上記組成物を、1kg/cmの線圧で加熱できる装置にてラミネートし、ポリエステルフィルム22の片面にシリコーン粘着剤層23が配置され、その反対側の面にアクリル系粘着剤層21が配置された構造の複合粘着剤フィルム11を作成した。
【0050】
<実施例1〜5>
上述の工程で製造したグラファイトシート10(このグラファイトシート10には膨張黒鉛圧延シートと炭化黒鉛シートの両方が含まれる。)と複合粘着剤フィルム11とを真空加熱プレスにより、アクリル系粘着剤層21がグラファイトシート10に接触して固定されている熱拡散シート2を得た。
【0051】
この熱拡散シート2は積層体であり、ポリエステルフィルムが25μmの熱拡散シート2(実施例1、4)と12μmの熱拡散シート2(実施例2、3、5)を作成した。
【0052】
<比較例1、2>
本発明に用いた複合粘着剤フィルム11に替えて、熱伝導性材料が含有されておらず、両面にアクリル系粘着剤層が形成された両面粘着シート(「市販品1」)を、複合粘着剤フィルムとしてグラファイトシート10の片面に貼付し、熱拡散シートを作成した。この両面粘着シートは、比較例1では、グラファイトシート側と被着体側とにアクリル系粘着剤層が10μm形成されており、比較例2では、グラファイトシート側と被着体側とにアクリル系粘着剤層が30μm形成されており、グラファイトシート層の厚さは106μmと127μmである。
被着体にアクリル系粘着剤層が貼付されるので、剥離性は悪い。
【0053】
<比較例3>
厚さ12μmのポリエステルフィルムに、厚さ10μmのアクリル系粘着剤層と、厚さ20μmのシリコーン粘着剤層とを形成し、アクリル系粘着剤層を、厚さ127μmのグラファイトシートに貼付した。シリコーン粘着剤層には、デクセリアルズ(株)製のシリコーン粘着剤シート[商品名T4082S]を用いた。
シリコーン粘着剤層の厚みがポリエステルフィルムよりも厚く、剥離が困難であり又ポリエステルフィルムが変形することがあり、作業性が悪い。
【0054】
<比較例4>
上述の工程で製造したグラファイトシートに、上述のシリコーン粘着剤層用の塗工液を塗布・乾燥させ、シリコーン粘着剤層23を形成し、熱拡散シートを得た。複合粘着剤フィルムは用いていない。
【0055】
<測定試験>
各実施例1〜5と比較例1〜4の熱拡散シートについて、下記試験を行った。
○熱拡散率試験
熱拡散シートを15mm×15mmにポンチで切り抜き、熱拡散率測定装置(サーモウェーブアナライザーTA3:(株)ベテル製)を用いて、25℃の温度下で平衡状態に達した時の熱拡散率を算出した。熱拡散率は数値が高いほど好ましく、10
-4m
2/s以上が望まれる。
【0056】
○剥離性試験
熱拡散シートをガラス板(ソーダライムガラス)に、1kg/cmの線圧でラミネートし、常温にて7日経過後、複合粘着剤シートをガラス板から剥離出来るかを確認した。さらに、剥離後の剥離残渣がガラス板の表面上に残っていないかを確認した。
【0057】
○接着信頼性試験
熱拡散シートをガラス板(ソーダライムガラス)に、1kg/cmの線圧でラミネートし、60℃75%RHに調整された大気恒温恒湿オーブンに投入し、1000Hr経過後の外観を確認した。
【0058】
<試験結果>
○測定値
各試験の結果を、下記表1、2に示す。
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】
【0061】
○剥離性の評価
表1、2中の剥離性の欄には、下記の評価が示されている。
A良好:ガラス板から少ない力で剥離でき、ガラス板から剥離した面に残渣が残らない
B可能:ガラス板から一応剥離できる。ガラス板から剥離した面に残渣が残らないが、ポリエステルフィルムの変形が発生する。
C不良:ガラス板から剥離するのにかなり力が必要。ガラス板から剥離した面に残渣が残る
○接着信頼性の評価
表1,2中、接着信頼性の欄には、下記の評価が示されている。
A良好:浮きの発生が全く無く、端部もきちんと接着している
B可能:浮きの発生はほぼ無いが、端部が一部盛り上がっている
C不良:浮きの発生があり、端部が盛り上がっている