(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態を採用した電動リールは、
図1に示すように、外部電源から供給された電力によりモータ駆動される電動リールである。また、この電動リールは、糸繰り出し長さ又は糸巻き取り長さに応じて仕掛けの水深を表示する水深表示機能を有する。
【0021】
電動リールは、釣竿に装着可能なリール本体1と、リール本体1の内部に配置されたスプール2と、リール本体1の側方に配置されたスプール2の回転用のハンドル3と、ハンドル3のリール本体側に配置されたドラグ調整用のスタードラグ4と、水深表示用のカウンタケース5と、を主に備えている。
【0022】
リール本体1は、フレーム6と、フレーム6の左右を覆う第1側カバー7a及び第2側カバー7bと、フレーム6の前部を覆う図示しない前カバーと、を有している。また、リール本体1の内部には、スプール2に連動して動作する図示しないレベルワインド機構や、ハンドル3及び後述するモータ8の回転をスプール2に伝達する図示しない回転伝達機構等が設けられている。
【0023】
スプール2は、第1側カバー7aと第2側カバー7bとの間で、リール本体1に回転可能に設けられる。スプール2の内部には、スプール2を糸巻き取り方向に回転駆動するモータ8が配置されている。
【0024】
ハンドル3は、第1側(右側)カバー7aの中央下部に回転自在に支持されている。また、ハンドル3の支持部分の上方前部には、モータ8の出力を複数段階(例えば、10段階以上であり、本実施形態では、31段階)に制御するための出力調整レバー9が揺動自在に支持されている。出力調整レバー9の後方には、クラッチ操作部材10が揺動自在に配置されている。クラッチ操作部材10は、ハンドル3及びモータ8とスプール2との間に設けられた図示しないクラッチをオン、オフ操作するための部材である。
【0025】
カウンタケース5は、リール本体1の前側の上部に配置され、第1側板6a及び第2側板6bに固定されている。カウンタケース5の上面部には、液晶ディスプレイを有する表示部11が設けられている。表示部11の後方側には、
図1及び
図3に示すように、カウンタケース5から上方向に突出した押圧操作部12と2つの操作スイッチ13と、が配置されている。カウンタケース5の内部には、各種の制御を行う制御部14が収容されている
【0026】
押圧操作部12は、
図2に示すように、圧力センサ15を有している。圧力センサ15は、押圧操作部12を押圧する力(以下、押圧力と記す)に応じたレベルの電気信号を出力する部材であり、押圧力の大きさに応じた検出値を電気信号として後述する制御部14のモータ制御部16に出力する。出力調整レバー9の操作によりモータ8が駆動していないとき、押圧操作部12を押圧している間だけ、押圧力に応じた出力、例えば回転速度でモータ8が駆動される。
【0027】
制御部14は、
図2に示すように、機能構成としてモータ8を制御するモータ制御部16と、カウンタケース5の上面部に設けられた表示部11を制御する表示制御部17と、を有している。モータ制御部16は、モータ8をPWM制御する。
【0028】
制御部14には、押圧操作部12と、操作スイッチ13と、が接続されている。また、制御部14には、表示部11と、スプール2の回転速度及び回転方向を検出するためのスプールセンサ18と、モータ8をPWM駆動するモータ駆動回路19と、が接続されている。
【0029】
モータ駆動回路19は、出力調整レバー9の操作、及び押圧操作部12の押圧操作に応じてモータ8の駆動を制御する。
【0030】
<モータ制御部の処理の流れ>
次に、電動リールの電源がオン状態のとき、制御部14のモータ制御部16によって行われるモータ制御処理の流れを、
図4に示すフローチャートに従って説明する。
【0031】
まず、ステップS1で、出力調整レバー9が停止位置(出力調整レバー9によるモータ8の回転が生じない位置)にあるか否かを判断する。出力調整レバー9が停止位置になければ、押圧操作部12よりも出力調整レバー9が優先して働くため、ステップS4へ移行して、出力調整レバー9の位置に応じた出力で(例えば、ここでは所定のスプール回転速度となるように)モータ8を回転させる。なお、負荷がかかってスプール回転速度が低下した時には所定の回転速度を保つようにフィードバック制御されている。停止位置にあると判断すると、ステップS2へ移行する。
【0032】
ステップS2では、圧力センサ15から電気信号の出力があるか否かを判断する。電気信号の出力があれば、ステップS3へ移行して、圧力センサ15から出力されている電気信号に応じた出力で(例えば、ここでは所定のスプール回転速度となるように)モータ8を回転させる。圧力センサ15から電気信号の出力がなければ、モータ制御処理は実行されない。
【0033】
ステップS3で、圧力センサ15から出力されている電気信号に応じた出力でモータ8を回転させるとき、例えば、所定のスプール回転速度となるように制御するとともに、押圧力が大きくなるに従って、モータ8の回転速度が早くなるように制御する。これにより、釣り人が押圧操作部12を強く押せばモータ8の回転速度が早くなり、釣り人の感覚とモータの出力とが整合するので、モータ8の出力の調整が容易になる。
【0034】
<出力調整手段について>
次に、圧力センサ15における押圧力の最大値の閾値を任意に設定するときの処理の流れを、
図5に示すフローチャートに従って説明する。この処理は、モータ制御部16によって行われる。
【0035】
ステップS11では、操作スイッチ13が3秒以上続けて押されたか否かを判断する。操作スイッチ13が3秒以上押されたと判断すると、ステップS12へ移行する。
【0036】
ステップS12では、モータ8が回転しているか否かを判断する。すなわち、モータ8の回転停止を待って、以降の処理を実行する。
【0037】
モータ8の回転が停止している場合は、ステップS12からステップS13に移行する。ステップS13では、押圧力の最大値の閾値を設定するための設定モードへ切り替えを行う。
【0038】
設定モードへ切り替え後、押圧操作部12が押圧されると、ステップS14で、このときの押圧力に基づいて押圧力の最大値の閾値を設定する。このとき、例えば、押圧力を複数回計測して、その押圧力の平均値に基づいて押圧力の最大値の閾値を設定することにより、押圧力に多少のばらつきがあっても、平均値に基づいて押圧力の最大値の閾値が設定されるため、より押圧力の不足や過剰が生じにくくなる。
【0039】
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態における出力調整手段の処理の流れを、
図6に従って説明する。なお、第2実施形態におけるリール本体1は、第1実施形態と同じ構成のため、説明を省略する。また、モータ制御部16によって行われるモータ制御処理についても、第1実施形態と同様のため説明を省略する。
【0040】
第2実施形態においても、モータ制御部16によって本処理が行われる。そして、ステップS24以外の処理は
図5と同様であるので、ここでは、ステップS24で実行される押圧力の最大値の閾値を設定する処理のみを説明する。すなわち、ステップS24では、最大押圧力の所定範囲(例えば、最大押圧力の80%)に基づいて押圧力の最大値の閾値を設定する。なお、最大押圧力の所定範囲は、これに限定されるものではない。
【0041】
<第3実施形態>
本発明の第3実施形態における出力調整手段の処理の流れを、
図7に従って説明する。なお、第3実施形態におけるリール本体1は、第1実施形態と同じ構成のため、説明を省略する。また、モータ制御部16によって行われるモータ制御処理についても、第1実施形態と同様のため説明を省略する。
【0042】
第3実施形態においても、モータ制御部16によって本処理が行われる。そして、ステップS34以外の処理は
図5と同様であるので、ここでは、ステップS34で実行される押圧力の最大値の閾値を設定する処理のみを説明する。
【0043】
ここで、第3実施形態では、複数段階(例えば5段階)に対応する閾値が予め
設定されている。設定モードへ切り替え後、任意の段階が選択されると、ステップS34でその段階に応じた押圧力に基づいて押圧力の最大値の閾値を設定する。この場合は、押圧力の最大値の閾値の設定、又は変更をするときに押圧力を測定しなくてもよいため、容易に押圧力の最大値の閾値を設定、又は変更を行うことができる。
【0044】
<第4実施形態>
第4実施形態の電動リールは、第1実施形態の構成とほぼ同じであり、モータ制御部16の制御処理方法のみが異なる。すなわち、出力調整レバー9の操作によりモータ8が駆動しているとき、押圧操作部12を押圧している間だけ、押圧力に応じてモータ8の出力(例えば回転速度)を減少又は停止する、といった点のみが第1実施形態と異なっている。従って、ここでは
図8に示すフローチャートに沿って第4実施形態におけるモータ制御部16の処理の流れについてのみ説明する。
【0045】
<モータ制御部の処理の流れ>
まず、ステップS41で、出力調整レバー9が停止位置(出力調整レバー9によるモータ8の回転が生じない位置)にあるか否かを判断する。出力調整レバー9が停止位置にある場合は、モータ制御処理は実行されない。そして、出力調整レバー9が停止位置になければ、ステップS42へ移行する。
【0046】
ステップS42では、出力調整レバー9の位置に応じた出力で(例えば、ここでは所定のスプール回転速度となるように)モータ8を回転させる。なお、負荷がかかってスプール回転速度が低下した時には所定の回転速度を保つようにフィードバック制御されている。
【0047】
ステップS43では、圧力センサ15から電気信号の出力があるか否かを判断する。電気信号の出力があれば、ステップS44へ移行する。
【0048】
ステップS44で、圧力センサ15から出力されている電気信号に応じて、モータ8の出力を減少(例えば、ここではスプール回転速度を減速)させる。このとき、押圧操作部12の押圧力が大きくなるに従って、モータ8の出力が減少、すなわちモータ8の回転速度が減速するように制御する。これにより、釣り人が押圧操作部12を強く押せば、出力調整レバー9によって設定されたモータ8の回転速度が大きく減速し、釣り人の感覚とモータ8の回転速度とが整合するので、モータ8の回転速度の調整が容易になる。なお、押圧力に応じてモータ8の回転速度が減速する場合、押圧力が最大になった時にモータ8の回転を停止するように制御してもよい。
【0049】
第4実施形態においても、もちろん第1実施形態と同様に圧力センサ15における押圧力の最大値の閾値を任意に設定するための出力調整手段を備えている。
【0050】
<第5実施形態>
図9及び
図10は、本発明の第5実施形態における電動リールを示す。第5実施形態の電動リールは、出力調整部材である第1実施形態の出力調整レバー9を、回動式の出力調整部材20にしたものである。さらに、第5実施形態における押圧操作部は、出力調整部材20に一体的に設けられている。出力調整部材20を径方向に押圧する(すなわち、出力調整部材20を内部に押し込む)ことによって、その押圧力に応じた出力でモータ8が駆動される。
【0051】
第5実施形態におけるモータ8は、
図10に示すように、スプール2の前方に配置されている。それ以外は、第1実施形態とほぼ同様の構成のため、以下からは、第1実施形態と異なる構成についてのみ説明を行う。なお、
図10及び
図11では、第1実施形態と同様の構成については、同じ符号を付している。
【0052】
出力調整部材20は、モータ8の出力を複数段階(例えば、10段階以上であり、この実施形態では、31段階)に制御するためのものであり、
図9及び
図10に示すように、第1側板6aと第1側カバー7aとの間に設けられる。出力調整部材20は、ダイヤル状に形成され、カウンタケース5のケース部材21の後部の外側面に立設された図示しない支持軸に回動自在に装着されている。この実施形態における出力調整部材20の回動角度は、例えば80°から120°の範囲である。ただし、回動角度はこれに限定されない。
【0053】
出力調整部材20の支持軸の支持部には、圧力センサ15が設けられている。出力調整部材20を径方向に押圧することにより、その押圧力に応じた出力でモータ8が駆動される。なお、出力調整部材20における押圧操作部を出力調整部材20の表面に設けてもよい。
【0054】
出力調整部材20が押圧されたときのモータ制御部16によって行われるモータ制御処理の流れは、第1実施形態で説明した
図4に示すフローチャートと同様であり、
図4のステップS1における出力調整レバー9が出力調整部材20に替わるだけであるため、説明を省略する。
【0055】
第5実施形態においても、第1実施形態と同様に圧力センサ15における押圧力の最大値の閾値を任意に設定するための出力調整手段を備えている。処理の流れは、前述した
図5のフローチャートと同じ流れであるため、説明を省略する。
【0056】
<第6実施形態>
図11は、本発明の第6実施形態における電動リールを示す。第6実施形態の電動リールは、第1実施形態の出力調整レバーを押圧操作部22に換えたものである。これ以外は、第1実施形態とほぼ同様の構成であるため、以下からは異なる構成についてのみ説明を行う。なお、
図11では、第1実施形態と同様の構成については、同じ符号を付している。
【0057】
押圧操作部22は、カウンタケース5の上面部に設けられており、操作スイッチ13の左側、すなわちハンドルとは反対側に偏倚して配置されている。 押圧操作部22は、モータ8の出力を複数段階(例えば、10段階以上であり、本実施形態では、31段階)に制御する。
【0058】
押圧操作部22は、第1実施形態と同様に圧力センサ15を有しており、押圧力の大きさに応じた検出値を電気信号として、制御部14のモータ制御部16に出力する。押圧操作部22を押圧している間だけ、押圧力に応じた出力でモータ8が駆動される。
【0059】
<モータ制御部の処理の流れ>
次に、電動リールの電源がオン状態のとき、制御部14のモータ制御部16によって行われるモータ制御処理の流れを、
図12に示すフローチャートに従って説明する。
【0060】
ステップS51で、圧力センサ15から電気信号の出力があるか否かを判断する。電気信号の出力があれば、ステップS52へ移行する。出力がなければ、モータ制御処理は実行されない。
【0061】
ステップS52では、圧力センサ15から出力された電気信号に応じた出力で(例えば、ここでは所定のスプール回転速度となるように)モータ8を回転させる。このとき、押圧力が大きくなるに従って、モータ8の出力が大きく(ここではスプール回転速度が早く)なるように制御することで、釣り人が押圧操作部22を強く押せばモータ8の回転速度が早くなり、釣り人の感覚とモータ8の出力とが整合するので、モータ8の出力の調整が容易になる。なお、負荷がかかってスプール回転速度が低下した時には所定の回転速度を保つようにフィードバック制御されている。
【0062】
第6実施形態においても、もちろん第1実施形態と同様に圧力センサ15における押圧力の最大値の閾値を任意に設定するための出力調整手段を備えている。
【0063】
<その他の実施形態>
(a)第1から第4実施形態における出力調整レバー9を、第5実施形態で採用している回動式の出力調整部材20にしてもよい。
【0064】
(b)第4から第6実施形態における出力調整手段は、第2又は第3実施形態における出力調整手段でもよい。
【0065】
(c)第5実施形態において押圧力に応じた出力でモータ8が駆動されるとき、第4実施形態で採用しているように、押圧力に応じてモータ8の出力(例えば回転速度)を減少又は停止するように制御してもよい。
【0066】
(d)圧力センサ15は感圧素子のような単体部品でなく、大きなばね定数のばねで押圧された部材の微小な変位量に応じて出力するものであってもよい。
【0067】
(e)前述の実施形態ではモータ出力としてスプール2の回転速度を検出し、フィードバック制御していたが、モータに供給される電流値を制御して巻き上げトルクが所定値となるようにしてもよい。あるいはスプール2の糸巻径を算出して張力が所定値になるように制御してもよい。これらの場合、押圧操作部と出力調整部材で制御する対象を変えてもよい。
【0068】
(f)第1から第4実施形態における押圧操作部12は、カウンタケース5から突出したものに限られない。また、第6実施形態における押圧操作部22は、カウンタケース5から突出していてもよい。また、押圧操作部22は、上記実施形態の位置に限定されるものではない。カウンタケース5そのものを押圧操作部にしてもよい。