特許第6726517号(P6726517)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6726517LED封止剤用樹脂組成物およびLED封止剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6726517
(24)【登録日】2020年7月1日
(45)【発行日】2020年7月22日
(54)【発明の名称】LED封止剤用樹脂組成物およびLED封止剤
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/05 20060101AFI20200713BHJP
   C08L 83/07 20060101ALI20200713BHJP
   C08K 5/5415 20060101ALI20200713BHJP
   C08K 5/549 20060101ALI20200713BHJP
   C08K 5/06 20060101ALI20200713BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20200713BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20200713BHJP
   H01L 33/56 20100101ALI20200713BHJP
【FI】
   C08L83/05
   C08L83/07
   C08K5/5415
   C08K5/549
   C08K5/06
   H01L23/30 F
   H01L33/56
【請求項の数】11
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2016-89391(P2016-89391)
(22)【出願日】2016年4月27日
(65)【公開番号】特開2017-197653(P2017-197653A)
(43)【公開日】2017年11月2日
【審査請求日】2019年3月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】谷川 智子
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 直人
(72)【発明者】
【氏名】井手 正仁
(72)【発明者】
【氏名】眞鍋 貴雄
【審査官】 土橋 敬介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−232461(JP,A)
【文献】 特開2002−317048(JP,A)
【文献】 特開2002−241501(JP,A)
【文献】 特開2003−073548(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 83/05
C08K 5/06
C08K 5/5415
C08K 5/549
C08L 83/07
H01L 23/29
H01L 23/31
H01L 33/56
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ヒドロシリル基を有する化合物と、
(B)1分子中にアルケニル基を2個以上有する化合物と、
(C)ヒドロシリル化触媒と、を含み、
前記(B)成分のうちの少なくとも1成分が、(d)ビスフェノール骨格を有する有機化合物であり、
(A)ヒドロシリル基を有する化合物が、(a)アルケニル基を有する多面体構造ポリシロキサン系化合物と、(b)ヒドロシリル基を有する化合物とのヒドロシリル化物である、(A’)多面体構造ポリシロキサン変性体であることを特徴とする、LED封止剤用樹脂組成物。
【請求項2】
(A)ヒドロシリル基を有する化合物と、
(B)1分子中にアルケニル基を2個以上有する化合物と、
(C)ヒドロシリル化触媒と、を含み、
前記(B)成分のうちの少なくとも1成分が、(d)ビスフェノール骨格を有する有機化合物であり、
(A)ヒドロシリル基を有する化合物が、(a)アルケニル基を有する多面体構造ポリシロキサン系化合物と、(b)ヒドロシリル基を有する化合物と、(c)1分子中にアルケニル基を1個有する有機ケイ素化合物とのヒドロシリル化物である、(A’)多面体構造ポリシロキサン変性体であることを特徴とする、LED封止剤用樹脂組成物。
【請求項3】
(a)アルケニル基を有する多面体構造ポリシロキサン系化合物が、下記の(式1)で表されるシロキサン単位から構成されたものであることを特徴とする、請求項1または2に記載のLED封止剤用樹脂組成物:
[ARSiO−SiO3/2[RSiO−SiO3/2 ・・・(式1)
(a+bは6〜24の整数であり、aは1以上の整数であり、bは0または1以上の整数であり;Aはアルケニル基であり;Rはアルキル基またはアリール基であり;Rは水素原子、アルキル基、アリール基、または他の多面体構造ポリシロキサン系化合物と連結している基である)。
【請求項4】
(b)ヒドロシリル基を有する化合物が、ヒドロシリル基を有する環状シロキサンおよび分子末端にヒドロシリル基を有する直鎖状シロキサンからなる群より選択される少なくとも1つであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のLED封止剤用樹脂組成物。
【請求項5】
(b)ヒドロシリル基を有する化合物が、ヒドロシリル基を有する環状シロキサンであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のLED封止剤用樹脂組成物。
【請求項6】
(b)ヒドロシリル基を有する化合物が、1,3,5,7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のLED封止剤用樹脂組成物。
【請求項7】
(A’)多面体構造ポリシロキサン変性体が、下記の(式2)で表されるシロキサン単位から構成されたものであることを特徴とする、請求項に記載のLED封止剤用樹脂組成物:
[XRSiO−SiO3/2[RSiO−SiO3/2 ・・・(式2)
(a+bは6〜24の整数であり、aは1以上の整数であり、bは0または1以上の整数であり;Rはアルキル基またはアリール基であり;Rはアルケニル基、水素原子、アルキル基、アリール基、または他の多面体構造ポリシロキサン系化合物と連結している基であり;Xは下記の一般式(1)の構造または一般式(2)の構造を有するものであり、(式2)で表されるシロキサン単位内にXが複数ある場合は、各々のXの具体的な化学構造式が異なっていてもよく、かつ、(式2)で表されるシロキサン単位内に一般式(1)の構造と一般式(2)の構造とが混在していてもよい):
【化1】
【化2】
(lは2以上の整数であり;mは0以上の整数であり;nは2以上の整数であり;Rは水素原子、アルキル基またはアリール基であり;Yは水素原子、アルケニル基、アルキル基、アリール基、またはアルキレン鎖を介して多面体構造ポリシロキサン系化合物と結合している部位であり、(式2)で表されるシロキサン単位内にYが複数ある場合は、Yは同一であっても異なっていてもよく;Zは、水素原子、アルケニル基、アルキル基、アリール基、または、アルキレン鎖を介して多面体構造ポリシロキサン系化合物と結合している部位であり、(式2)で表されるシロキサン単位内にZが複数ある場合は、Zは同一であっても異なっていてもよく;YまたはZの少なくとも1つは水素原子である)。
【請求項8】
(A’)多面体構造ポリシロキサン変性体が、下記の(式3)で表されるシロキサン単位から構成されたものであることを特徴とする、請求項に記載のLED封止剤用樹脂組成物:
[XRSiO−SiO3/2[RSiO−SiO3/2 ・・・(式3)
(a+bは6〜24の整数であり、aは1以上の整数であり、bは0または1以上の整数であり;Rはアルキル基またはアリール基であり;Rはアルケニル基、水素原子、アルキル基、アリール基、または他の多面体構造ポリシロキサン系化合物と連結している基であり;Xは下記の一般式(1)の構造または一般式(2)の構造を有するものであり、(式3)で表されるシロキサン単位内にXが複数ある場合は、各々のXの具体的な化学構造式が異なっていてもよく、かつ、(式3)で表されるシロキサン単位内に一般式(1)の構造と一般式(2)の構造とが混在していてもよい):
【化3】
【化4】
(lは2以上の整数であり;mは0以上の整数であり;nは2以上の整数であり;Rはアルキル基またはアリール基であり;Yは水素原子、アルケニル基、アルキル基、アリール基、またはアルキレン鎖を介して多面体構造ポリシロキサン系化合物と結合している部位であり、(式3)で表されるシロキサン単位内にYが複数ある場合は、Yは同一であっても異なっていてもよく;Zは水素原子、アルケニル基、アルキル基、アリール基、またはアルキレン鎖を介して多面体構造ポリシロキサン系化合物と結合している部位であり、(式3)で表されるシロキサン単位内にZが複数ある場合は、Zは同一であっても異なっていてもよく;(式3)で表されるシロキサン単位内に合計2個以上のYおよびZが含まれる場合は、YまたはZの少なくとも1つは水素原子であり、かつ、YまたはZの少なくとも1つは下記一般式(3)の構造を有する):
【化5】
(lは以上の整数であり;Rは有機ケイ素化合物を有する基である)。
【請求項9】
(d)ビスフェノール骨格を有する有機化合物が、数平均分子量1000未満の有機化合物であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載のLED封止剤用樹脂組成物。
【請求項10】
(d)ビスフェノール骨格を有する有機化合物は、ビスフェノール骨格上にある2個のフェノール性水酸基の水素を、アルケニル基で置換した有機化合物であることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載のLED封止剤用樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載のLED封止剤用樹脂組成物からなる、LED封止剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LED封止剤用樹脂組成物およびLED封止剤に関する。
【背景技術】
【0002】
LED(Light Emitting Diode)は、半導体材料によって形成された発光素子であって、基本的に、LED素子の周りをLED封止剤で封止した構造を取る。
【0003】
LED封止剤には、耐熱性、耐光性、耐衝撃性、および透明性などの様々な性質が要求され、このような性質を有するLED封止剤、および当該LED封止剤の原料となるLED封止剤用樹脂組成物の開発が進められている。
【0004】
例えば、特許文献1は、多面体構造ポリシロキサン変性体、および、アルケニル基を2個以上含有する化合物、からなるオルガノポリシロキサン系組成物を開示している。
【0005】
特許文献2は、多面体構造ポリシロキサン変性体、1分子中に2個以上のアルケニル基を有するポリシロキサン、および、アルケニル基を含有する有機化合物に対してヒドロシリル基を含有する化合物をヒドロシリル化反応させて得た化合物、からなる組成物を開示している。
【0006】
特許文献3は、ポリシロキサン組成物、無機フィラー、エポキシ基当量が300g/mol以上であるエポキシ基含有化合物、および、ヒドロシリル化触媒、からなる硬化性樹脂組成物を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013− 57032号公報(2013年3月28日公開)
【特許文献2】特開2012−162666号公報(2012年8月30日公開)
【特許文献3】特開2015− 10132号公報(2015年1月19日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
LED素子に使用される銀電極は、使用環境中の腐食性ガス(例えば硫化水素などの硫化ガス)により腐食され、これによって、LEDの明るさが低下する。この現象を防止するためには銀電極を腐食性ガスから保護する必要があり、銀電極を包むLED封止剤には、高いガスバリア性(換言すれば、低いガス透過性)が要求される。
【0009】
しかしながら、従来用いられているLED封止剤は、ガスバリア性に関して、改良の余地が残されていた。
【0010】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、ガスバリア性が高いLED封止剤、および当該LED封止剤の原料となるLED封止剤用樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、ビスフェノール骨格を有し、かつ、1分子中に2個以上のアルケニル基を有する化合物をビニル成分として含むLED封止剤用樹脂組成物を用いれば、ガスバリア性が高いLED封止剤を実現できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
<1>本発明のLED封止剤用樹脂組成物は、(A)ヒドロシリル基を有する化合物と、(B)1分子中にアルケニル基を2個以上有する化合物と、(C)ヒドロシリル化触媒と、を含み、前記(B)成分のうちの少なくとも1成分が、(d)ビスフェノール骨格を有する有機化合物であることを特徴としている。
【0013】
<2>本発明のLED封止剤用樹脂組成物では、(A)ヒドロシリル基を有する化合物が、(a)アルケニル基を有する多面体構造ポリシロキサン系化合物と、(b)ヒドロシリル基を有する化合物とのヒドロシリル化物である、(A’)多面体構造ポリシロキサン変性体であることが好ましい。
【0014】
<3>本発明のLED封止剤用樹脂組成物では、(A)ヒドロシリル基を有する化合物が、(a)アルケニル基を有する多面体構造ポリシロキサン系化合物と、(b)ヒドロシリル基を有する化合物と、(c)1分子中にアルケニル基を1個有する有機ケイ素化合物とのヒドロシリル化物である、(A’)多面体構造ポリシロキサン変性体であることが好ましい。
【0015】
<4>本発明のLED封止剤用樹脂組成物では、(a)アルケニル基を有する多面体構造ポリシロキサン系化合物が、下記の(式1)で表されるシロキサン単位から構成されたものであることが好ましい:
[ARSiO−SiO3/2[RSiO−SiO3/2 ・・・(式1)
(a+bは6〜24の整数であり、aは1以上の整数であり、bは0または1以上の整数であり;Aはアルケニル基であり;Rはアルキル基またはアリール基であり;Rは水素原子、アルキル基、アリール基、または他の多面体構造ポリシロキサン系化合物と連結している基である)。
【0016】
<5>本発明のLED封止剤用樹脂組成物では、(b)ヒドロシリル基を有する化合物が、ヒドロシリル基を有する環状シロキサンおよび分子末端にヒドロシリル基を有する直鎖状シロキサンからなる群より選択される少なくとも1つであることが好ましい。
【0017】
<6>本発明のLED封止剤用樹脂組成物では、(b)ヒドロシリル基を有する化合物が、ヒドロシリル基を有する環状シロキサンであることが好ましい。
【0018】
<7>本発明のLED封止剤用樹脂組成物では、(b)ヒドロシリル基を有する化合物が、1,3,5,7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンであることが好ましい。
【0019】
<8>本発明のLED封止剤用樹脂組成物では、(A’)多面体構造ポリシロキサン変性体が、下記の(式2)で表されるシロキサン単位から構成されたものであることが好ましい:
[XRSiO−SiO3/2[RSiO−SiO3/2 ・・・(式2)
(a+bは6〜24の整数であり、aは1以上の整数であり、bは0または1以上の整数であり;Rはアルキル基またはアリール基であり;Rはアルケニル基、水素原子、アルキル基、アリール基、または他の多面体構造ポリシロキサン系化合物と連結している基であり;Xは下記の一般式(1)の構造または一般式(2)の構造を有するものであり、(式2)で表されるシロキサン単位内にXが複数ある場合は、各々のXの具体的な化学構造式が異なっていてもよく、かつ、(式2)で表されるシロキサン単位内に一般式(1)の構造と一般式(2)の構造とが混在していてもよい):
【0020】
【化1】
【0021】
【化2】
【0022】
(lは2以上の整数であり;mは0以上の整数であり;nは2以上の整数であり;Rは水素原子、アルキル基またはアリール基であり;Yは水素原子、アルケニル基、アルキル基、アリール基、またはアルキレン鎖を介して多面体構造ポリシロキサン系化合物と結合している部位であり、(式2)で表されるシロキサン単位内にYが複数ある場合は、Yは同一であっても異なっていてもよく;Zは、水素原子、アルケニル基、アルキル基、アリール基、または、アルキレン鎖を介して多面体構造ポリシロキサン系化合物と結合している部位であり、(式2)で表されるシロキサン単位内にZが複数ある場合は、Zは同一であっても異なっていてもよく;YまたはZの少なくとも1つは水素原子である)。
【0023】
<9>本発明のLED封止剤用樹脂組成物では、(A’)多面体構造ポリシロキサン変性体が、下記の(式3)で表されるシロキサン単位から構成されたものであることが好ましい:
[XRSiO−SiO3/2[RSiO−SiO3/2 ・・・(式3)
(a+bは6〜24の整数であり、aは1以上の整数であり、bは0または1以上の整数であり;Rはアルキル基またはアリール基であり;Rはアルケニル基、水素原子、アルキル基、アリール基、または他の多面体構造ポリシロキサン系化合物と連結している基であり;Xは下記の一般式(1)の構造または一般式(2)の構造を有するものであり、(式3)で表されるシロキサン単位内にXが複数ある場合は、各々のXの具体的な化学構造式が異なっていてもよく、かつ、(式3)で表されるシロキサン単位内に一般式(1)の構造と一般式(2)の構造とが混在していてもよい):
【0024】
【化3】
【0025】
【化4】
【0026】
(lは2以上の整数であり;mは0以上の整数であり;nは2以上の整数であり;Rはアルキル基またはアリール基であり;Yは水素原子、アルケニル基、アルキル基、アリール基、またはアルキレン鎖を介して多面体構造ポリシロキサン系化合物と結合している部位であり、(式3)で表されるシロキサン単位内にYが複数ある場合は、Yは同一であっても異なっていてもよく;Zは水素原子、アルケニル基、アルキル基、アリール基、またはアルキレン鎖を介して多面体構造ポリシロキサン系化合物と結合している部位であり、(式3)で表されるシロキサン単位内にZが複数ある場合は、Zは同一であっても異なっていてもよく;(式3)で表されるシロキサン単位内に合計2個以上のYおよびZが含まれる場合は、YまたはZの少なくとも1つは水素原子であり、かつ、YまたはZの少なくとも1つは下記一般式(3)の構造を有する):
【0027】
【化5】
【0028】
(lは以上の整数であり;Rは有機ケイ素化合物を有する基である)。
【0029】
<10>本発明のLED封止剤用樹脂組成物では、(d)ビスフェノール骨格を有する有機化合物が、数平均分子量1000未満の有機化合物であることが好ましい。
【0030】
<11>本発明のLED封止剤用樹脂組成物では、(d)ビスフェノール骨格を有する有機化合物は、ビスフェノール骨格上にある2個のフェノール性水酸基の水素を、アルケニル基で置換した有機化合物であることが好ましい。
<12>本発明のLED封止剤は、前記各項目で説明したLED封止剤用樹脂組成物からなる。
【発明の効果】
【0031】
本発明は、ガスバリア性が高いLED封止剤、および当該LED封止剤の原料となるLED封止剤用樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の一実施形態について以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態や実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態や実施例についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された学術文献及び特許文献の全てが、本明細書中において参考文献として援用される。また、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A〜B」は、「A以上B以下」を意図する。
【0033】
本明細書において「LED封止剤」とは、LEDの電極を封止し、腐食性ガス、熱変化、衝撃などから当該電極を保護する物体を意図する。「LED封止剤用樹脂組成物」とは、LED封止剤の原料となる、未硬化の樹脂組成物を意図する。LED封止剤用樹脂組成物は、適切に加熱されると硬化物となる。LED封止剤用樹脂組成物を適切に加熱および/または成形すると、LED封止剤が製作できる。
【0034】
本実施の形態のLED封止剤用樹脂組成物は、(A)ヒドロシリル基を有する化合物と、(B)1分子中にアルケニル基を2個以上有する化合物と、(C)ヒドロシリル化触媒と、を含み、かつ、(B)成分のうちの少なくとも1成分が、(d)ビスフェノール骨格を有する有機化合物であることを特徴としている。以下に、各構成について説明する。
【0035】
〔1.(A)ヒドロシリル基を有する化合物〕
本発明における(A)ヒドロシリル基を有する化合物は、分子中にヒドロシリル基(SiH)を含む化合物であればよく、特に限定されない。
【0036】
本発明における(A)成分としては、耐熱性の観点に基づくと、例えば国際公開公報WO96/15194に記載の化合物であって、1分子中に少なくとも1個以上のヒドロシリル基を有する化合物が使用できる。当該化合物の中では、下記化学式で示されるものが好ましい化合物の具体例である。
【0037】
【化6】
【0038】
【化7】
【0039】
【化8】
【0040】
【化9】
【0041】
【化10】
【0042】
【化11】
【0043】
一方、ガスバリア性の観点に基づくと、(A)成分として(A’)多面体構造ポリシロキサン変性体を用いることが望ましい。
【0044】
〔1’.(A’)多面体構造ポリシロキサン変性体〕
本発明の一態様において、(A’)多面体構造ポリシロキサン変性体は、(a)アルケニル基を有する多面体構造ポリシロキサン系化合物と、(b)ヒドロシリル基を有する化合物とのヒドロシリル化物である。
【0045】
本発明の他の態様において、(A’)多面体構造ポリシロキサン変性体は、(a)アルケニル基を有する多面体構造ポリシロキサン系化合物と、(b)ヒドロシリル基を有する化合物と、(c)1分子中にアルケニル基を1個有する有機ケイ素化合物とのヒドロシリル化物である。
【0046】
以下、上述した各々の成分について個別に記載する。
【0047】
〔1’−1.(a)アルケニル基を有する多面体ポリシロキサン系化合物〕
本発明の一態様における(a)アルケニル基を有する多面体構造ポリシロキサン系化合物は、分子中にアルケニル基を有し、かつ、多面体骨格を有するポリシロキサンであれば、特に限定されない。
【0048】
例えば以下の式
[RSiO3/2[RSiO3/2
(上式において、m+nは6〜24の整数であり;mは1以上の整数、nは0または1以上の整数であり;Rはアルケニル基、またはアルケニル基を有する基であり;Rは、任意の有機基、または他の多面体構造ポリシロキサン系化合物と連結している基である)
で表されるシロキサン単位から構成される、アルケニル基を有する多面体構造ポリシロキサン系化合物が好適に用いられる。
【0049】
更に具体的には、(式1)
[ARSiO−SiO3/2[RSiO−SiO3/2 ・・・(式1)
(上式において、a+bは6〜24の整数であり、aは1以上の整数であり、bは0または1以上の整数であり;Aはアルケニル基であり;Rはアルキル基またはアリール基であり;Rは水素原子、アルキル基、アリール基、または他の多面体構造ポリシロキサン系化合物と連結している基である)
で表されるシロキサン単位から構成される、アルケニル基を有する多面体構造ポリシロキサン系化合物が、より好ましい化合物の具体例である。
【0050】
Aは、アルケニル基である。前記アルケニル基の具体例としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基が挙げられる。本発明におけるAは、耐熱性および耐光性の観点に基づくと、ビニル基が好ましい。
【0051】
は、アルキル基またはアリール基である。前記アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基が挙げられる。前記アリール基の具体例としては、フェニル基、トリル基が挙げられる。本発明におけるRは、耐熱性および耐光性の観点に基づくと、メチル基が好ましい。
【0052】
は、水素原子、アルキル基、アリール基、または他の多面体構造ポリシロキサン系化合物と連結している基である。前記アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基が挙げられる。前記アリール基の具体例としては、フェニル基、トリル基が挙げられる。本発明におけるRは、耐熱性および耐光性の観点に基づくと、メチル基が好ましい。
【0053】
aは1以上の整数である以外に、特に制限はない。ただし、多面体構造ポリシロキサン系化合物の取り扱い易さ、および得られる硬化物の物性の観点に基づくと、2以上が好ましく、3以上が更に好ましい。一方bは、0または1以上の整数である他には、特に制限はない。
【0054】
aとbとの和(a+b)は、6〜24の整数であり、多面体構造ポリシロキサン系化合物の安定性、および得られる硬化物の安定性の観点に基づくと、6〜12が好ましく、6〜10がより好ましい。
【0055】
(a)アルケニル基を有する多面体構造ポリシロキサン系化合物の合成方法は、特に限定されず、公知の方法を用いて合成できる。例えば、式 R’SiX(前記式中R’は、上述のRおよびRを表し;Xは、ハロゲン原子、アルコキシ基などの加水分解性官能基を表す)で表されるシラン化合物を、加水分解縮合させることによって、(a)アルケニル基を有する多面体構造ポリシロキサン系化合物が得られる。他の方法としては、R’SiXを加水分解縮合させて、分子内に3個のシラノール基を有するトリシラノール化合物を合成した後、当該トリシラノール化合物と同一または異なる3官能性シラン化合物を反応させることにより閉環し、アルケニル基を有する多面体構造ポリシロキサン系化合物を合成する方法も知られている。
【0056】
その他にも、例えば、テトラエトキシシランなどのテトラアルコキシシランを、4級アンモニウムヒドロキシドなどの塩基存在下で加水分解縮合させる方法が挙げられる。すなわち、テトラアルコキシシランの加水分解縮合反応により、多面体構造を有するケイ酸塩を合成した後に、当該ケイ酸塩をアルケニル基含有シリルクロライドなどのシリル化剤と反応させる方法である。当該反応の産物として、多面体構造を形成するSi原子とアルケニル基とが、シロキサン結合を介して結合した多面体構造ポリシロキサン系化合物が得られる。本方法においては、テトラアルコキシランの替わりに、シリカ、または稲籾殻などのシリカを含有する物質からも、同様のアルケニル基を有する多面体構造ポリシロキサン系化合物を得ることが可能である。
【0057】
上述した(a)アルケニル基を有する多面体構造ポリシロキサン系化合物は、1種類のみを使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0058】
〔1’−2.(b)ヒドロシリル基を有する化合物〕
(A’)多面体構造ポリシロキサン変性体を合成する際に用いる(b)ヒドロシリル基を有する化合物は、透明性、耐熱性および耐光性の観点に基づくと、ヒドロシリル基を有するシロキサン化合物が好ましい。更に、前記ヒドロシリル基を有するシロキサン化合物は、ヒドロシリル基を有する環状シロキサン、および分子末端にヒドロシリル基を有する直鎖状シロキサンからなる群から選択されることが、より好ましい。ガスバリア性の観点をも踏まえて考慮すると、環状シロキサンが更に好ましい。
【0059】
前記分子末端にヒドロシリル基を有する直鎖状シロキサンの具体例としては、ジメチルシロキサン単位とメチルハイドロジェンシロキサン単位および末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、ジフェニルシロキサン単位とメチルハイドロジェンシロキサン単位および末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、メチルフェニルシロキサン単位とメチルハイドロジェンシロキサン単位および末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、ジメチルハイドロジェンシリル基で末端が封鎖されたポリジメチルシロキサン、ジメチルハイドロジェンシリル基で末端が封鎖されたポリジフェニルシロキサン、ジメチルハイドロジェンシリル基で末端が封鎖されたポリメチルフェニルシロキサンが挙げられる。
【0060】
(a)成分と反応させる際の反応性や、得られる硬化物の耐熱性、耐光性などの観点に基づくと、前記分子末端にヒドロシリル基を有する直鎖状シロキサンは、ジメチルハイドロジェンシリル基で分子末端が封鎖されたポリシロキサンが好ましく、ジメチルハイドロジェンシリル基で分子末端が封鎖されたポリジメチルシロキサンがより好ましい。より具体的には、テトラメチルジシロキサン、ヘキサメチルトリシロキサンが、好ましい(b)成分の例である。
【0061】
前記ヒドロシリル基を有する環状シロキサンの具体例としては、1,3,5,7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1−プロピル−3,5,7−トリハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,5−ジハイドロジェン−3,7−ジヘキシル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5−トリハイドロジェン−1,3,5−トリメチルシクロトリシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタハイドロジェン−1,3,5,7,9−ペンタメチルシクロペンタシロキサン、1,3,5,7,9,11−ヘキサハイドロジェン−1,3,5,7,9,11−ヘキサメチルシクロヘキサシロキサンが挙げられる。本発明における環状シロキサンについて、工業上の入手の容易さ、反応性、並びに得られる硬化物の耐熱性、耐光性および強度などの観点に基づくと、1,3,5,7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンが、好ましい(b)成分の例である。
【0062】
上述した(b)ヒドロシリル基を有する化合物は1種類のみを使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0063】
〔1’−3.(c)1分子中にアルケニル基を1個有する有機ケイ素化合物〕
本発明の一態様における、(c)1分子中にアルケニル基を1個有する有機ケイ素化合物は、(b)ヒドロシリル基を有する化合物のヒドロシリル基と反応する。(c)成分を用いれば、得られる硬化物の弾性率が低下し、耐冷熱衝撃性が向上する。
【0064】
アルケニル基の具体例としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基が挙げられる。耐熱性および耐光性の観点に基づくと、前記アルケニル基はビニル基が好ましい。
【0065】
本発明における(c)成分は、1分子中にアルケニル基を1個有する有機ケイ素化合物であれば、特に限定されない。ただし、ガスバリア性および屈折率の観点に基づくと、1分子中に少なくともアリール基を1個以上有する化合物が好ましい。更に、耐熱性および耐光性の観点をも踏まえると、前記アリール基が直接ケイ素原子に結合している化合物がより好ましい。
【0066】
本発明における(c)成分は、耐熱性および耐光性の観点に基づくと、シランまたはポリシロキサンが好ましい。
【0067】
1分子中にアルケニル基を1個有するシランの具体例としては、トリメチルビニルシラン、ジメチルフェニルビニルシラン、メチルジフェニルビニルシラン、トリフェニルビニルシラン、トリエチルビニルシラン、ジエチルフェニルビニルシラン、エチルジフェニルビニルシラン、アリルトリメチルシラン、アリルジメチルフェニルシラン、アリルメチルジフェニルシラン、アリルトリフェニルシラン、アリルトリエチルシラン、アリルジエチルフェニルシラン、アリルエチルジフェニルシランが挙げられる。耐熱性および耐光性の観点に基づくと、トリメチルビニルシラン、ジメチルフェニルビニルシラン、メチルジフェニルビニルシラン、トリフェニルビニルシランが好ましい(c)成分の例である。更に、ガスバリア性および屈折率の観点をも踏まえると、ジメチルフェニルビニルシラン、メチルジフェニルビニルシラン、トリフェニルビニルシランが、より好ましい(c)成分の例である。
【0068】
ポリシロキサンの例としては、アルケニル基を1個有する直鎖構造のポリシロキサン、分子末端にアルケニル基を1個有するポリシロキサン、アルケニル基を1個有する環状シロキサンが挙げられる。
【0069】
前記アルケニル基を1個有する直鎖構造のポリシロキサンの具体例としては、ジメチルビニルシリル基とトリメチルシリル基とで末端がそれぞれ1個ずつ封鎖されたポリジメチルシロキサン、ジメチルビニルシリル基とトリメチルシリル基とで末端がそれぞれ1個ずつ封鎖されたポリメチルフェニルシロキサン、ジメチルビニルシリル基とトリメチルシリル基とで末端がそれぞれ1個ずつ封鎖されたポリジフェニルシロキサン、ジメチルビニルシリル基とトリメチルシリル基とで末端がそれぞれ1個ずつ封鎖されたジメチルシロキサン単位とメチルフェニルシロキサン単位との共重合体、ジメチルビニルシリル基とトリメチルシリル基とで末端がそれぞれ1個ずつ封鎖されたジメチルシロキサン単位とジフェニルシロキサン単位との共重合体、ジメチルビニルシリル基とトリメチルシリル基とで末端がそれぞれ1個ずつ封鎖されたメチルフェニルシロキサン単位とジフェニルシロキサン単位との共重合体が挙げられる。
【0070】
前記分子末端にアルケニル基を1個有するポリシロキサンの具体例としては、前段落で例示したジメチルビニルシリル基とトリメチルシリル基とで末端がそれぞれ1個ずつ封鎖されたポリシロキサン群、並びに、SiO単位、SiO3/2単位、SiO単位およびSiO1/2単位からなる群より選ばれる、少なくとも1つのシロキサン単位および1つのジメチルビニルシロキサン単位からなるポリシロキサンが挙げられる。
【0071】
前記アルケニル基を1個有する環状シロキサンの具体例としては、1−ビニル−1,3,3,5,5,7,7−ヘプタメチルシクロテトラシロキサン、1−ビニル−3−フェニル−1,3,5,5,7,7−ヘキサメチルシクロテトラシロキサン、1−ビニル−3,5−ジフェニル−1,3,5,7,7−ペンタメチルシクロテトラシロキサン、1−ビニル−3,5,7−トリフェニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンが挙げられる。
【0072】
上述した(c)1分子中にアルケニル基を1個有する有機ケイ素化合物は、1種類のみを使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
〔1’−4(A’)多面体構造ポリシロキサン変性体の合成〕
本発明の一態様において、(A’)多面体構造ポリシロキサン変性体は、後述のヒドロシリル化触媒の存在下で、(a)アルケニル基を有する多面体構造ポリシロキサン系化合物と、(b)ヒドロシリル基を有する化合物とのヒドロシリル化反応により合成される。この際、(A’)成分のアルケニル基は、全て反応する必要はなく、一部残存していてもよい。
【0073】
(b)ヒドロシリル基を有する化合物の添加量は、(a)アルケニル基を有する多面体構造ポリシロキサン系化合物のアルケニル基1個に対して、(b)成分に含まれるSi原子に直結した水素原子の数が1個より多くなるように添加することが好ましく、2.5〜20個になるように添加することが更に好ましい。ただし、適切な添加量は化合物に依存する。添加量が少な過ぎる場合、架橋反応により反応物がゲル化し、ハンドリング性の劣った(A’)多面体構造ポリシロキサン変性体が得られる。逆に添加量が多過ぎる場合、多面体構造ポリシロキサン変性体を用いて得られる硬化物の物性に、悪影響を及ぼす場合がある。
【0074】
(a)成分と(b)成分との反応に際しては、過剰量の(b)成分を存在させるため、反応終了後には、減圧・加熱条件下で溶媒を蒸発させるなど適切な方法によって、未反応の(b)成分を留去することが好ましい。
【0075】
(A’)成分の合成に用いるヒドロシリル化触媒の添加量は、特に制限されない。好ましくは、(a)成分のアルケニル基1molに対して10−1〜10−10molの範囲で添加される。より好ましくは10−4〜10−8molの範囲で添加される。ヒドロシリル化触媒が多過ぎると、得られる硬化物が発泡する場合がある。更に、ヒドロシリル化触媒の種類によっては、短波長の光を吸収するため、着色原因になったり、前記硬化物の耐光性が低下したりする場合がある。逆にヒドロシリル化触媒が少な過ぎると、反応が進まず、(A’)成分が得られない場合がある。
【0076】
ヒドロシリル化反応の反応温度は、30〜400℃が好ましく、40〜250℃がより好ましく、45〜140℃が更に好ましい。温度が低過ぎると反応が十分に進行せず、温度が高過ぎると、反応物がゲル化し、(A’)成分のハンドリング性が悪化する場合がある。
【0077】
上述の手法により得られた(A’)成分は、各種化合物との相溶性を確保できる。特に、ビスフェノール骨格を有する有機化合物に対しては、非常に良好な相溶性を確保できるという特徴がある。更に、分子内にヒドロシリル基が導入されているため、各種アルケニル基を有する化合物との反応が可能である。例えば、後述の(B)1分子中にアルケニル基を2個以上含有する化合物と反応させた場合、硬化物が得られる。当該反応に際して、(A’)成分におけるヒドロシリル基は、分子中に少なくとも3個含有されることが好ましい。ヒドロシリル基が3個未満である場合、前記硬化物の強度が不十分となる場合がある。
【0078】
本発明における(A’)多面体構造ポリシロキサン変性体は、温度20℃において液体の状態を取りうる。液状の(A’)成分は、例えば、(b)成分としてヒドロシリル基を有する環状シロキサンまたは直鎖状ポリシロキサンを用い、当該(b)成分を(a)成分と反応させることで得られる。液状の(A’)成分は、ハンドリング性に優れる点において好ましい。
【0079】
本態様における(A’)多面体構造ポリシロキサン変性体は、下記の(式2)で表されるシロキサン単位から構成されたものが、耐熱性、耐光性および得られる硬化物の強度の観点に基づくと、好ましい例である。
【0080】
[XRSiO−SiO3/2[RSiO−SiO3/2 ・・・(式2)
(上式中、a+bは6〜24の整数であり、aは1以上の整数であり、bは0または1以上の整数であり;Rはアルキル基またはアリール基であり;Rはアルケニル基、水素原子、アルキル基、アリール基、または他の多面体構造ポリシロキサン系化合物と連結している基であり;Xは下記の一般式(1)の構造または一般式(2)の構造を有するものであり、(式2)で表されるシロキサン単位内にXが複数ある場合は、各々のXの具体的な化学構造式が異なっていてもよく、かつ、(式2)で表されるシロキサン単位内に一般式(1)の構造と一般式(2)の構造とが混在していてもよい)
【0081】
【化12】
【0082】
【化13】
【0083】
(上式中、lは2以上の整数であり;mは0以上の整数であり;nは2以上の整数であり;Rは水素原子、アルキル基またはアリール基であり;Yは水素原子、アルケニル基、アルキル基、アリール基、またはアルキレン鎖を介して多面体構造ポリシロキサン系化合物と結合している部位であり、(式2)で表されるシロキサン単位内にYが複数ある場合は、Yは同一であっても異なっていてもよく;Zは、水素原子、アルケニル基、アルキル基、アリール基、または、アルキレン鎖を介して多面体構造ポリシロキサン系化合物と結合している部位であり、(式2)で表されるシロキサン単位内にZが複数ある場合は、Zは同一であっても異なっていてもよく;YまたはZの少なくとも1つは水素原子である)。
【0084】
本発明の他の態様において、(A’)多面体構造ポリシロキサン変性体は、後述のヒドロシリル化触媒の存在下で、(a)アルケニル基を有する多面体構造ポリシロキサン系化合物と、(b)ヒドロシリル基を有する化合物と、(c)1分子中にアルケニル基を1個有する有機ケイ素化合物とのヒドロシリル化反応により合成される。
【0085】
本発明の(A’)多面体構造ポリシロキサン変性体を得る反応の工程は、特に限定されず種々設定できる。例えば、予め(a)成分と(b)成分とを反応させた後、(c)成分を反応させてもよいし、予め(c)成分と(b)成分とを反応させた後、(a)成分を反応させてもよいし、(a)成分と(c)成分とを共存させて(b)成分と反応させてもよい。各反応の終了後に、減圧・加熱条件下で溶媒を蒸発させるなどの適切な方法によって揮発性の未反応成分を留去し、目的物または中間体を得てもよい。(c)成分と(b)成分のみが反応した、(a)成分を含まない化合物の生成を抑制するためには、(a)成分と(b)成分とを反応させ、未反応の(b)成分を留去した後、(c)成分を反応させる方法が好ましい。
【0086】
なお、上述の反応が完全に終了した段階において、(A’)成分のアルケニル基が全て反応している必要はなく、一部残存していてもよい。
【0087】
(b)成分の添加量についての説明は、前述の態様において記載した。したがって本項目では再度の記載を省略する。
【0088】
(c)成分の添加量は、(b)成分が有するヒドロシリル基1個に対し、(c)成分に含まれるアルケニル基の数が0.01〜0.36個になるように添加することが好ましい。添加量が少な過ぎる場合、得られる(A’)成分の耐冷熱衝撃性が低下する場合があり、添加量が多いと、得られる硬化物に硬化不良が生じる場合がある。
【0089】
(A’)成分の合成に用いるヒドロシリル化触媒の添加量、反応温度、(A’)成分の性質についての説明は、前述の態様において記載した。したがって本項目では再度の記載を省略する。
【0090】
本態様における(A’)多面体構造ポリシロキサン変性体は、下記の(式3)で表されるシロキサン単位から構成されたものが、耐熱性の観点に基づくと、好ましい例である。
【0091】
[XRSiO−SiO3/2[RSiO−SiO3/2 ・・・(式3)
(a+bは6〜24の整数であり、aは1以上の整数であり、bは0または1以上の整数であり;Rはアルキル基またはアリール基であり;Rはアルケニル基、水素原子、アルキル基、アリール基、または他の多面体構造ポリシロキサン系化合物と連結している基であり;Xは下記の一般式(1)の構造または一般式(2)の構造を有するものであり、(式3)で表されるシロキサン単位内にXが複数ある場合は、各々のXの具体的な化学構造式が異なっていてもよく、かつ、(式3)で表されるシロキサン単位内に一般式(1)の構造と一般式(2)の構造とが混在していてもよい)
【0092】
【化14】
【0093】
【化15】
【0094】
(lは2以上の整数であり;mは0以上の整数であり;nは2以上の整数であり;Rはアルキル基またはアリール基であり;Yは水素原子、アルケニル基、アルキル基、アリール基、またはアルキレン鎖を介して多面体構造ポリシロキサン系化合物と結合している部位であり、(式3)で表されるシロキサン単位内にYが複数ある場合は、Yは同一であっても異なっていてもよく;Zは水素原子、アルケニル基、アルキル基、アリール基、またはアルキレン鎖を介して多面体構造ポリシロキサン系化合物と結合している部位であり、(式3)で表されるシロキサン単位内にZが複数ある場合は、Zは同一であっても異なっていてもよく;(式3)で表されるシロキサン単位内に合計2個以上のYおよびZが含まれる場合は、YまたはZの少なくとも1つは水素原子であり、かつ、YまたはZの少なくとも1つは下記一般式(3)の構造を有する):
【0095】
【化16】
【0096】
(lは以上の整数であり;Rは有機ケイ素化合物を有する基である)。
【0097】
は有機ケイ素化合物を含有する基であれば特に限定はされない。ただし、ガスバリア性や屈折率の観点に基づくと、1分子中に少なくともアリール基を1個以上含有していることが好ましい。更に、耐熱性および耐光性の観点をも踏まえると、当該アリール基が直接ケイ素原子に結合していることが、より好ましい。
【0098】
〔2.(B)1分子中にアルケニル基を2個以上有する化合物〕
本発明における(B)1分子中にアルケニル基を2個以上有する化合物は、(A)ヒドロシリル基を有する化合物と、(C)ヒドロシリル化触媒の存在下で反応し硬化する。
【0099】
(B)成分中に含まれるアルケニル基の個数は、1分子あたり2個以上であればよい。好ましくは、1分子あたり2〜10個である。1分子中のアルケニル基の数が多いと、架橋構造が増加するためにガスバリア性がより向上するが、多過ぎると耐熱性および耐光性が低下する場合がある。
【0100】
アルケニル基の具体例としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基が挙げられる。耐熱性の観点に基づくと、前記アルケニル基はビニル基またはアリル基が好ましい。
【0101】
本発明における(B)成分としては、直鎖状または分枝状シロキサン化合物、環状シロキサン化合物、その他の有機系化合物などが利用できる。
【0102】
前記直鎖状または分岐上シロキサン化合物の具体例としては、
CH=CHSiMeO(SiMeO)SiMeCH=CH(n=0〜10),
CH=CHSiMeO(SiMeO)(SiPhO)SiMeCH=CH(m=0〜5,n=1〜4),
CH=CHSiPhO(SiMeO)(SiPhO)SiPhCH=CH(m=0〜3,n=1〜2),
CH=CHSiMeO(SiMeO)(SiPhMeO)SiMeCH=CH(m=0〜5,n=1〜6),
MeSiO(SiMeO)(SiMe(CH=CH)O)SiMe(m=0〜5,n=1〜9),
MeSi[O(SiMeO)SiMeCH=CH(m=0〜2)
(上式中、Meはメチル基を、Phはフェニル基を表す)
が挙げられる。
【0103】
前記環状シロキサン化合物の具体例としては、1,3,5,7−テトラビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5-トリビニル−ペンタメチルシクロテトラシロキサン、1,3−ジビニル−ヘキサメチルシクロテトラシロキサン、1,5−ジビニル−ヘキサメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラビニル−1−フェニル−3,5,7−トリメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラビニル−1,3−ジフェニル−5,7−ジメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラビニル−1,5−ジフェニル−3,7−ジメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラビニル−1,3,5−トリフェニル−7−メチルシクロテトラシロキサン、1−フェニル−3,5,7−トリビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3−ジフェニル−5,7−ジビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,5−ジフェニル−3,7−ジビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5−トリビニル−1,3,5−トリメチルシクロトリシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタビニル−1,3,5,7,9−ペンタメチルシクロペンタシロキサン、1,3,5,7,9,11−ヘキサビニル−1,3,5,7,9,11−ヘキサメチルシクロヘキサシロキサンが挙げられる。
【0104】
前記その他の有機系化合物の具体例としては、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、1,1,2,2−テトラアリロキシエタン、ジアリリデンペンタエリスリット、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、ジアリルモノメチルイソシアヌレート、1,2,4−トリビニルシクロヘキサン、ジビニルベンゼン類(純度50〜100%のもの、好ましくは純度80〜100%のもの)、ジビニルビフェニル、1,3−ジイソプロペニルベンゼン、1,4−ジイソプロペニルベンゼンが挙げられる。
【0105】
〔2−1.(d)ビスフェノール骨格を有する有機化合物〕
本発明における(B)成分のうち少なくとも1つは、(d)ビスフェノール骨格を有する有機化合物である。(d)ビスフェノール骨格を有する有機化合物のより具体的な構成としては、ビスフェノール骨格上にある2個のフェノール性水酸基の水素を、アルケニル基で置換した有機化合物を挙げることができる。当該条件を満たす(B)成分を含有することにより、得られる硬化物のガスバリア性が高まり、LED封止剤としての機能がより向上する。更に、得られる硬化物の強度や靱性、屈折率が向上するなどの効果も得られる。
【0106】
本明細書においてビスフェノール骨格とは、2個のフェノール性水酸基を有する公知のビスフェノール構造を意図する。具体例としては、ビスフェノールA(2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン)、ビスフェノールB(2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン)、ビスフェノールF(ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン)、ビスフェノールAP(1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン)、ビスフェノールAF(2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン)、ビスフェノールBP(ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン)、ビスフェノールC(2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン)、ビスフェノールC(ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2,2−ジクロロエチレン)、ビスフェノールE(1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン)、ビスフェノールG(2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−イソプロピルフェニル)プロパン)、ビスフェノールM(1,3−ビス(2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル)ベンゼン)、ビスフェノールS(ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン)、ビスフェノールP(1,4−ビス(2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル)ベンゼン)、ビスフェノールPH(5,5’−(1−メチルエチリデン)−ビス(1,1’−(ビスフェニル)−2−オール)プロパン)、ビスフェノールTMC(1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン)、ビスフェノールZ(1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン)が挙げられる。ただし、例示した構造に限定されない。
【0107】
(d)成分の構造中に含まれるビスフェノール骨格は、特に限定されない。ただし、耐光性の観点に基づくと、一分子あたりのベンゼン環の個数が2個である構造が、(d)成分に含まれることが好ましい。
【0108】
前記2個のフェノール性水酸基が、(d)成分中において占める位置は、芳香環に結合している以外は特に限定されない。ただし、入手性の観点に基づくと、それぞれのフェノール性水酸基が、異なる芳香環に結合していることが好ましい。
【0109】
(d)成分中に含まれる2個以上のアルケニル基は、構造式上のどこに位置していてもよい。ただし、ヒドロシリル化反応の際に十分な硬さを有する硬化物が得られるため、ビスフェノール骨格上にある2個のフェノール性水酸基の水素をアルケニル基で置換した有機化合物が好ましい。
【0110】
単位重量あたりの(d)成分中に含まれるアルケニル基のモル数は、ガスバリア性と耐冷熱性衝撃性とのバランスの観点に基づくと、1.0〜12mmol/gの範囲内にあることが好ましく、2.0〜10mmol/gの範囲内にあることがより好ましく、3.0〜8mmol/gの範囲内にあることが更に好ましい。単位重量あたりのアルケニル基のモル数が1.0mmol/g未満である場合、LED封止剤のガスバリア性が不十分となる場合がある。逆に単位重量あたりのアルケニル基のモル数が12mmol/gを超える場合、得られる硬化物に応力が溜まりやすくなり、LED封止剤の耐冷熱衝撃性が低下する場合がある。
【0111】
一方、ハンドリング性の観点に基づくと、(d)成分の数平均分子量は1000未満であることが好ましく、500未満であることがより好ましい。
【0112】
以上の条件を総合すると、(d)成分として好ましい有機化合物の具体例としては、2,2−ビス(4−アリルオキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−メチル−4−アリルオキシフェニル)プロパンが挙げられる。
【0113】
〔2−2.(d)ビスフェノール骨格を有する有機化合物へのアルケニル基の導入〕
1分子中に2個以上のアルケニル基を有し、かつ構造中にビスフェノール骨格を有する有機化合物は、公知の手法によって合成される。例えば、国際公開公報WO2012/133108 A1で開示されている製造方法がある。
【0114】
前記(d)成分として好ましい有機化合物の具体例として挙げた2,2−ビス(4−アリルオキシフェニル)プロパンは、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンをアリル化しても得られるし、市場を通じても容易に入手できる。
【0115】
〔3.(C)ヒドロシリル化触媒〕
本発明においては、(A)ヒドロシリル基を有する化合物と(B)1分子中にアルケニル基を2個以上有する化合物とを反応させ硬化させる際、および(A’)多面体構造ポリシロキサン変性体を合成する際に、ヒドロシリル化触媒が用いられる。
【0116】
前記ヒドロシリル化触媒には、公知のヒドロシリル化触媒が使用でき、特に制限されない。
【0117】
ヒドロシリル化触媒の具体例としては、白金−オレフィン錯体、塩化白金酸、白金の単体、担体(アルミナ、シリカ、カーボンブラックなど)に固体白金を担持させた物質、白金−ビニルシロキサン錯体(例えば〔Pt(ViMeSiOSiMe2Vi)およびPt(MeViSiO)4)、白金−ホスフィン錯体(例えばPt(PPhおよびPt(PBu)、白金−ホスファイト錯体(例えばPt〔P(OPh)およびPt〔P(OBu))、Pt(acac)が挙げられる。更に、Ashbyらの米国特許第3159601号および米国特許3159662号明細書中に記載された白金−炭化水素複合体、並びにLamoreauxらの米国特許第3220972号明細書中に記載された白金アルコラ−ト触媒も挙げられる。
【0118】
白金化合物以外の触媒の例としては、RhCl(PPh、RhCl、Rh/Al、RuCl、IrCl、FeCl、AlCl、PdCl・2HO、NiCl、TiClが挙げられる。
(前段落および本段落の式中において、Meはメチル基、Buはブチル基、Viはビニル基、Phはフェニル基を表し;acacはアセチルアセトンを表し;n、mは整数を表す)。
【0119】
本発明の(C)ヒドロシリル化触媒は、触媒活性の観点に基づくと、塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体、Pt(acac)などが好ましい。
【0120】
上述した触媒は1種類のみを使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0121】
〔LED封止剤の製作〕
上述した(A)ヒドロシリル基を有する化合物、(B)1分子中にアルケニル基を2個以上有する化合物(うち少なくとも1成分は(d)ビスフェノール骨格を有する有機化合物)および(C)ヒドロシリル化触媒を含むLED封止剤用樹脂組成物を、適切な方法で加熱および/または成形すれば、LED封止剤として好適な硬化物が製作できる。
【0122】
[1.LED封止剤用樹脂組成物の調製]
LED封止剤用樹脂組成物の内訳は、(A)成分30〜95重量部、(B)成分1〜40重量部(うち(d)成分1〜35重量部)、(C)成分0.01〜5重量部とするのが一般的である。好ましくは(A)成分40〜95重量部、(B)成分1〜35重量部(うち(d)成分1〜30重量部)、(C)成分0.01〜2.5重量部であり、より好ましくは(A)成分50〜95重量部、(B)成分1〜30重量部(うち(d)成分1〜25重量部)、(C)成分0.01〜1重量部である。
【0123】
各成分を混合する順序は、(A)成分に(B)成分を加えた後、(C)成分を加えてもよいし、(B)成分に(C)成分を加えた後、(A)成分を加えてもよいし、(B)成分に(C)成分を加えた後、(A)成分を加えてもよい。作業の容易さの観点に基づくと、(B)成分に(C)成分を加えた後、(A)成分を加える手順を採用することの利便性が高い。
【0124】
前記各成分、または、前記各成分および後述する任意成分を、ロール、バンバリーミキサー、ニーダーなどの混練機、または遊星式攪拌脱泡機などを利用して混合すれば、均一に混合されたLED封止剤用樹脂組成物が調製できる。
【0125】
[1−1.硬化遅延剤]
前記LED封止剤用樹脂組成物の保存性および安定性を改良し、または、硬化過程でのヒドロシリル化反応の反応性を調整するための成分として、前記LED封止剤用樹脂組成物は硬化遅延剤を含みうる。本発明における硬化遅延剤には、ヒドロシリル化触媒により付加型硬化性を示し、LED封止剤用樹脂組成物に対して用いられる公知の物質が使用できる。例としては、脂肪族不飽和結合を有する化合物、有機リン化合物、有機硫黄化合物、窒素含有化合物、スズ系化合物、有機過酸化物が挙げられる。
【0126】
前記脂肪族不飽和結合を有する化合物の具体例としては、プロパギルアルコール類(3−ヒドロキシ−3−メチル−1−ブチン、3−ヒドロキシ−3−フェニル−1−ブチン、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、1−エチニル−1−シクロヘキサノールなど)、エン−イン化合物類、無水マレイン酸、マレイン酸エステル類(マレイン酸ジメチルなど)が挙げられる。
【0127】
前記有機リン化合物の具体例としては、トリオルガノフォスフィン類、ジオルガノフォスフィン類、オルガノフォスフォン類、トリオルガノフォスファイト類が挙げられる。
【0128】
前記有機硫黄化合物の具体例としては、オルガノメルカプタン類、ジオルガノスルフィド類、硫化水素、ベンゾチアゾール、チアゾール、ベンゾチアゾールジサルファイドが挙げられる。
【0129】
前記窒素含有化合物の具体例としては、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N−ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジエチルエチレンジアミン、N,N−ジブチルエチレンジアミン、N,N−ジブチル−1,3−プロパンジアミン、N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N,N’,N’−テトラエチルエチレンジアミン、N,N−ジブチル−1,4−ブタンジアミン、2,2’−ビピリジンが挙げられる。
【0130】
前記スズ系化合物の具体例としては、ハロゲン化第一スズ2水和物、カルボン酸第一スズが挙げられる。
【0131】
前記有機過酸化物の具体例としては、ジ−t−ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、過安息香酸t−ブチルが挙げられる。
【0132】
上述した硬化遅延剤のうち、マレイン酸ジメチル、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、1−エチニル−1−シクロヘキサノールが、特に好ましい硬化遅延剤の例である。
【0133】
上述した硬化遅延剤は1種類のみを使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0134】
硬化遅延剤の添加量は、特に限定するものではないが、ヒドロシリル化触媒1molに対して10−1〜10molの範囲で用いるのが好ましく、1〜100molの範囲で用いるのがより好ましい。
【0135】
[1−2.接着性付与剤]
本発明の一態様においては、(A’)多面体構造ポリシロキサン変性体を含むLED封止剤用樹脂組成物と、基材との接着性を向上させる目的で、接着性付与剤を、前記多面体構造ポリシロキサン変性体を含むLED封止剤用樹脂組成物に添加しうる。接着性を向上させる効果が得られる物質ならば、特に限定なく前記接着性付与剤として利用できる。好適な物質の一例として、シランカップリング剤が挙げられる。
【0136】
シランカップリング剤は、分子中に、有機基と反応性のある官能基、および加水分解性のケイ素基を、各々少なくとも1個有する化合物であれば、特に限定されない。前記有機基と反応性のある基は、取り扱いの容易さの観点に基づくと、エポキシ基、メタクリル基、アクリル基、イソシアネート基、イソシアヌレート基、ビニル基、カルバメート基からなる群より選ばれる少なくとも1個の官能基が好ましい。更に、硬化性および接着性の観点をも踏まえると、エポキシ基、メタクリル基、アクリル基がより好ましい。前記加水分解性のケイ素基は、取り扱いの容易さの観点に基づくとアルコキシシリル基が好ましい。更に、反応性の観点をも踏まえると、メトキシシリル基、エトキシシリル基がより好ましい。
【0137】
シランカップリング剤として好適な、エポキシ官能基を有するアルコキシシラン類の具体例としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシラン、2−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、2−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジエトキシシランが挙げられる。
【0138】
一方、シランカップリング剤として好適な、メタクリル基またはアクリル基を有するアルコキシシラン類の具体例としては、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、メタクリロキシメチルトリエトキシシラン、アクリロキシメチルトリメトキシシラン、アクリロキシメチルトリエトキシシランが挙げられる。
【0139】
上述したシランカップリング剤は、1種類のみを使用してもよいし、2種類以上併用してもよい。
【0140】
シランカップリング剤の添加量は、(A’)多面体構造ポリシロキサン変性体、(B)1分子中にアルケニル基を2個以上有する化合物および(C)ヒドロシリル化触媒の混合物100重量部に対して、好ましくは0.05〜30重量部であり、より好ましくは0.1〜10重量部である。添加量が少な過ぎると接着性改良効果が現れず、逆に添加量が多過ぎると得られる硬化物の物性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0141】
本態様においては、前記接着性付与剤の効果を高めるために、公知の接着性促進剤を用いうる。接着性促進剤の具体例としては、エポキシ含有化合物、エポキシ樹脂、ボロン酸エステル化合物、有機アルミニウム化合物、有機チタン化合物が挙げられる。
【0142】
[1−3.無機フィラー]
前記LED封止剤用樹脂組成物に無機フィラーを添加することにより、本発明のLED封止剤の強度、硬度、弾性率、熱膨張率、熱伝導率、放熱性、電気的特性、光の反射率、難燃性、耐火性、およびガスバリア性などの諸物性が向上する。
【0143】
無機フィラーは、無機物または無機物を含む化合物であれば特に限定されない。具体例としては、シリカ系無機フィラー(石英、ヒュームドシリカ、沈降性シリカ、無水ケイ酸、溶融シリカ、結晶性シリカ、超微粉無定型シリカなど)、アルミナ、ジルコン、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミ、炭化ケイ素、ガラス繊維、ガラスフレーク、アルミナ繊維、炭素繊維、マイカ、黒鉛、カーボンブラック、フェライト、グラファイト、ケイソウ土、白土、クレー、タルク、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マンガン、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、チタン酸カリウム、ケイ酸カルシウム、無機バルーン、銀粉が挙げられる。
【0144】
上述した無機フィラーは、1種類のみを使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0145】
無機フィラーの表面には、適宜表面処理を施しうる。表面処理の具体例としては、アルキル化処理、トリメチルシリル化処理、シリコーン処理、シランカップリング剤による処理が挙げられる。
【0146】
無機フィラーの形状は、破砕状、片状、球状、棒状など各種の形状が用いられる。無機フィラーの平均粒径および粒径分布は、特に限定されない。ただし、ガスバリア性の観点に基づくと、平均粒径は0.005〜50μmが好ましく、0.01〜20μmがより好ましい。無機フィラーのBET比表面積も、特に限定されない。ただし、ガスバリア性の観点に基づくと、70m/g以上が好ましく、100m/g以上がより好ましく、200m/g以上が更に好ましい。
【0147】
無機フィラーの添加量は特に限定されない。(A)ヒドロシリル基を有する化合物、(B)1分子中にアルケニル基を2個以上有する化合物および(C)ヒドロシリル化触媒の混合物100重量部に対して、好ましくは1〜1000重量部、より好ましくは3〜500重量部、更に好ましくは5〜300重量部である。無機フィラーの添加量が多過ぎると、流動性が悪くなる場合があり、逆に無機フィラーの添加量が少な過ぎると、所望の物性が得られない場合がある。
【0148】
無機フィラーの混合の順序は、特に限定されない。良好な貯蔵安定性が得るためには、無機フィラーと(B)成分とを混合した後、(A)成分を混合する方法が望ましい。一方、反応前物質をよく混合し、安定した成形物を容易に得るためには、(A)成分および(B)成分の混合物に無機フィラーを混合することが好ましい。
【0149】
無機フィラーを混合する手段は、特に限定されない。具体例としては、撹拌機(2本ロールまたは3本ロール、遊星式撹拌脱泡装置、ホモジナイザー、ディゾルバー、プラネタリーミキサーなど)、溶融混練機(プラストミルなど)が挙げられる。無機フィラーの混合は、常温でも、加熱下でも行いうる。同様に、無機フィラーの混合は、常圧下で減圧下でも行いうる。ただし、混合する際の温度が高いと、成型する前にLED封止剤用樹脂組成物が硬化してしまう場合がある。
【0150】
[1−4.その他成分]
前記LED封止剤用樹脂組成物には、必要に応じて蛍光体、着色剤、耐熱性向上剤などの各種添加剤や、反応制御剤、離型剤または充填剤用分散剤などを、任意で添加しうる。前記充填剤用分散剤の具体例としては、ジフェニルシランジオール、各種アルコキシシラン、カーボンファンクショナルシラン、シラノール基含有低分子量シロキサンが挙げられる。
【0151】
本発明のLED封止剤の効果を高めるには、例えば溶融球状シリカを添加することで、耐冷熱衝撃性を向上させられる。他にも、アルミナを添加することで、放熱性が向上させられる。
【0152】
ただし、[1−1.硬化遅延剤]〜[1−4.その他成分]で説明した任意成分は、本発明の効果を損なわないように最小限の添加量に止めることが好ましい。
【0153】
[2.LED封止剤用樹脂組成物の硬化および成形]
前記LED封止剤用樹脂組成物を加熱すると、硬化物が得られる。硬化させる際に適切な温度は30〜400℃、好ましくは50〜250℃である。硬化させる際の温度が高過ぎると、得られる硬化物に外観不良が生じる傾向がある。逆に硬化させる際の温度が低過ぎると、硬化が不十分となる。本工程は、2段階以上の温度条件を組み合わせうる。一例として、70℃、120℃、150℃のように、段階的に温度を引き上げて反応を進める方法がある。当該方法によれば、LED封止剤として好適な硬化物が得られる。
【0154】
硬化に要する時間は、硬化させる際の温度、(C)ヒドロシリル化触媒の量、(A)成分および(B)成分に含まれる反応性基の量、並びに、前記LED封止剤用樹脂組成物に含まれる他の配合物の組み合わせにより適宜選択できる。通例ならば、1分間〜12時間の加熱により、好ましくは10分間〜8時間の加熱により、良好な硬化物が得られる。
【0155】
前記LED封止剤用樹脂組成物は、押出成形、圧縮成形、ブロー成形、カレンダー成形、真空成形、発泡成形、射出成形、液状射出成形、注型成形などの任意の成形方法により成形されうる。
【0156】
上に例示した加熱方法および/または成形方法により、LED封止剤用樹脂組成物からLED封止剤が製作できる。
【0157】
以下に、[1.LED封止剤用樹脂組成物の調製]で得られたLED封止剤用樹脂組成物から、LED封止剤を製作する方法の一例を記載する。ただし、本発明のLED封止剤用樹脂組成物を原料とするLED封止剤は、以下の製造方法に限られて製作されるものではない。
【0158】
調製したLED封止剤用樹脂組成物5gに対し、蛍光体(インテマティックス社製 NYAG4454−S)を0.225g加えて撹拌した。更に、自転・公転ミキサー(Thinky社製 あわとり練太郎AR−250)を用いて、撹拌3分、脱泡3分、撹拌3分の操作を順に加えた。次に、得られた未硬化組成物を、青色LEDチップ(ジェネライツ社製 12mil×13mil角 B1213AAA0 S46B/C−19/20)を実装したリフレクター(エノモト社製 TOP LED 1−IN−1)にシリンジを使って注入した。最後に、対流式オーブンにて、80℃で30分間、120℃で2時間、170℃で1時間の3段階を経て硬化させることで、LED封止剤で封止されたLEDを得た。
【実施例】
【0159】
以下、本発明のLED封止剤用樹脂組成物およびLED封止剤を、実施例に基づいて更に詳細に説明する。しかし、本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。
【0160】
まず、実施例および比較例の多面体構造ポリシロキサン系組成物に対して課した試験について説明する。なお、多面体構造ポリシロキサン系組成物は、後述する通り、多面体構造ポリシロキサン変性体と、種々の1分子中にアルケニル基を2個以上有する化合物、およびジアリルモノメチルイソシアヌレートとを攪拌し得られたものである。実施例においては、1分子中にアルケニル基を2個以上有する化合物はビスフェノール骨格を有している。一方、比較例においては、1分子中にアルケニル基を2個以上有する化合物はビスフェノール骨格を有していない。
【0161】
〔耐硫化試験〕
LEDパッケージ(株式会社エノモト製 TOP LED 1−IN−1)に多面体構造ポリシロキサン系組成物を注入し、対流式オーブンで80℃×2時間、100℃×1時間、150℃×5時間の順で多面体構造ポリシロキサン系組成物を熱硬化させてサンプルを製作した。当該サンプルを、フロー式ガス腐食試験機(ファクトケイ製 KG130S)内に入れ、40℃、80%RH、硫化水素3ppmの条件下で、96時間、硫化水素暴露試験を行った。試験後、パッケージのリフレクターが試験前と同等の光沢および色目を維持している場合は◎、パッケージのリフレクターが光沢はやや低下するものの、変色していなければ○、光沢の低下とともにわずかに変色が見られた場合は△、光沢が無くなり、黒くなっている場合は×とした。
【0162】
〔透明性試験〕
型に多面体構造ポリシロキサン系組成物を充填し、対流式オーブンで80℃×2時間、100℃×1時間、150℃×5時間の順で多面体構造ポリシロキサン系組成物を熱硬化させて、厚さ1mmのサンプルを製作した。当該サンプルに関して、紫外可視分光光度計(日本分光社製 JASCO V 560)により、波長450nmの光線透過率を測定し、評価した。
【0163】
〔ゲル化時間(スナップアップタイム)〕
少量の多面体構造ポリシロキサン系組成物を150℃に設定したホットプレート上で加熱したアルミ板に載せ、爪楊枝の先で混ぜながら、目視により硬化状態に至るまでに要した時間を測定した。
【0164】
次いで、多面体構造ポリシロキサン変性体の合成方法を、製造例1および製造例2にて説明する。
【0165】
〔製造例1〕
48wt%コリン水溶液(トリメチル−2ヒドロキシエチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液)1262gにテトラエトキシシラン1083gを加え、室温で2時間激しく攪拌した。反応系内が発熱し、均一溶液になった段階で、攪拌を緩め、更に12時間反応させた。次に、反応系内に生成した固形物に、メタノール1000mLを加え、均一溶液とした。
【0166】
ジメチルビニルクロロシラン537g、トリメチルシリクロリド645gおよびヘキサン1942mLを含む溶液を激しく攪拌しながら、当該溶液にメタノール溶液をゆっくりと滴下した。滴下終了後、1時間反応させた後、有機層を抽出し、かつ、濃縮することにより、固形物を得た。次に、生成した固形物をメタノール中で激しく攪拌することにより洗浄し、洗浄された固形物を濾別することにより、Si原子16個と、ビニル基3個とを有するアルケニル基含有多面体構造ポリシロキサン系化合物である、トリス(ビニルジメチルシロキシ)ペンタキス(トリメチルシロキシ)オクタシルセスキオキサン(Fw=1166.2)を白色固体として592g得た。
【0167】
〔製造例2〕
製造例1で得られたアルケニル基含有多面体構造ポリシロキサン系化合物30gをトルエン60gに溶解させ、当該溶液に、更に白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有する白金ビニルシロキサン錯体、ユミコアプレシャスメタルズジャパン製 Pt−VTSC−3X)4.2μLを溶解させた。上述の工程により得た溶液を、1、3、5、7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン45.0g(使用したアルケニル基含有多面体構造ポリシロキサン系化合物のアルケニル基1個に対し、ヒドロシリル基10個となる量)とトルエン22.5gとの混合溶液に滴下し、105℃で2時間加温した。当該溶液をH−NMR測定すると、アルケニル基含有多面体構造ポリシロキサン系化合物由来のアルケニル基が消失していることが確認できた。反応終了後、トルエンと未反応成分とを留去した後、再度トルエン45gを加えて生成物を溶解させた。当該溶液に、更に別途準備したビニルジフェニルメチルシラン16.5g(使用した1,3,5,7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンのヒドロシリル基1個に対し、アルケニル基0.96個となる量)をトルエン16.5gに溶解させた溶液を滴下させ、105℃で2時間加温した。当該溶液をH−NMR測定すると、ビニルジフェニルメチルシラン由来のビニル基が消失している事が確認できた。室温まで冷却した後に、トルエンを留去することにより、液状の多面体構造ポリシロキサン変性体60.3g(SiH価1.56mol/kg)を得た。
【0168】
[実施例1]
製造例2で得られた多面体構造ポリシロキサン変性体75gに、ジアリルモノメチルイソシアヌレート10.5g、および2,2−ビス(4−アリルオキシフェニル)プロパン6.2gを加えて撹拌し、多面体構造ポリシロキサン系組成物を調製した。当該組成物を用いて、上述の各種評価を行い、その結果を表1に記載した。
【0169】
[実施例2]
製造例2で得られた多面体構造ポリシロキサン変性体75gに、ジアリルモノメチルイソシアヌレート10.5g、および2,2−ビス(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン6.2gを加えて撹拌し、多面体構造ポリシロキサン系組成物を調製した。当該組成物を用いて、上述の各種評価を行い、その結果を表1に記載した。
【0170】
[実施例3]
製造例2で得られた多面体構造ポリシロキサン変性体75gに、ジアリルモノメチルイソシアヌレート10.5g、および2,2−ビス(3−メチル−4−アリルオキシフェニル)プロパン5.68gを加えて撹拌し、多面体構造ポリシロキサン系組成物を調製した。当該用いて、上述の各種評価を行い、その結果を表1に記載した。
【0171】
[実施例4]
製造例2で得られた多面体構造ポリシロキサン変性体75gに、ジアリルモノメチルイソシアヌレート10.5g、および2,2−ビス(4−アリルオキシフェニル)ブタン5.4gを加えて撹拌し、多面体構造ポリシロキサン系組成物を調製した。当該組成物を用いて、上述の各種評価を行い、その結果を表1に記載した。
【0172】
[実施例5]
製造例2で得られた多面体構造ポリシロキサン変性体75gに、ジアリルモノメチルイソシアヌレート10.5g、および1,1−ビス(4−アリルオキシフェニル)−1−フェニルエタン6.37gを加えて撹拌し、多面体構造ポリシロキサン系組成物を調製した。当該組成物を用いて、上述の各種評価を行い、その結果を表1に記載した。
【0173】
[比較例1]
製造例2で得られた多面体構造ポリシロキサン変性体75gに、ジアリルモノメチルイソシアヌレート10.5g、および1,5−ジビニル−3,3−ジフェニル−1,1,5,5−テトラメチルトリシロキサン7.75gを加えて撹拌し、多面体構造ポリシロキサン系組成物を調製した。当該組成物を用いて、上述の各種評価を行い、その結果を表1に記載した。
【0174】
[比較例2]
製造例2で得られた多面体構造ポリシロキサン変性体75gに、ジアリルモノメチルイソシアヌレート10.5g、および1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン3.77gを加えて撹拌し、多面体構造ポリシロキサン系組成物を調製した。当該組成物を用いて、上述の各種評価を行い、その結果を表1に記載した。
【0175】
【表1】
【0176】
〔結果〕
ビスフェノール骨格を有し、かつ、1分子中に2個以上のアルケニル基を有する化合物を成分に含む組成物から製作した硬化物は、当該化合物を成分に含まない組成物から製作した硬化物よりも、高いガスバリア性(硫化水素耐性)を示した。
【産業上の利用可能性】
【0177】
本発明は、LEDを製造する分野に利用することができる。