特許第6726525号(P6726525)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6726525
(24)【登録日】2020年7月1日
(45)【発行日】2020年7月22日
(54)【発明の名称】容器用積層シートおよび容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 65/40 20060101AFI20200713BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20200713BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20200713BHJP
   B65D 1/26 20060101ALI20200713BHJP
   B65D 1/28 20060101ALI20200713BHJP
【FI】
   B65D65/40 D
   B32B27/00 H
   B32B15/08 F
   B65D1/26 110
   B65D1/28
【請求項の数】11
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-99291(P2016-99291)
(22)【出願日】2016年5月18日
(65)【公開番号】特開2017-206283(P2017-206283A)
(43)【公開日】2017年11月24日
【審査請求日】2019年3月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】501428187
【氏名又は名称】昭和電工パッケージング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100079038
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100060874
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 瑛之助
(72)【発明者】
【氏名】苗村 正
【審査官】 加藤 信秀
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−167740(JP,A)
【文献】 特開2008−057019(JP,A)
【文献】 特開2015−107582(JP,A)
【文献】 特開2004−075093(JP,A)
【文献】 特開2004−183035(JP,A)
【文献】 特開平11−169979(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 65/40
B32B 15/08
B32B 27/00
B65D 1/26
B65D 1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方開口と該開口周縁のフランジとを有するカップ状の容器の成形材料として用いられる容器用積層シートであって、金属箔と、金属箔の片面に積層されかつ容器の内面を構成する熱融着性樹脂フィルムとを備えており、
金属箔のフランジ外径比が、圧延方向に対して0°の方向(MD)/圧延方向に対して90°の方向(TD)=1.003〜1.02であるとともに、圧延方向に対して45°の方向/圧延方向に対して90°の方向(TD)=0.99〜1.003であり、前者フランジ外径比(MD/TD)が後者フランジ外径比(45°/TD)よりも大きくなされており、
熱融着性樹脂フィルムの破断強度比が、フィルム流れ方向に対して0°の方向(MD)/フィルム流れ方向に対して90°の方向(TD)=1.2〜2、フィルム流れ方向に対して45°の方向/フィルム流れ方向に対して90°の方向(TD)=1.1〜1.6であり
また、金属箔のフランジ外径率が、0.3〜2%である、
容器用積層シート。
【請求項2】
さらに、金属箔の他面に積層されかつ容器の外面を構成する外側樹脂フィルムを備えている、請求項1記載の容器用積層シート。
【請求項3】
金属箔および熱融着性樹脂フィルムの厚みの比率が、金属箔の厚み/熱融着性樹脂フィルムの厚み=0.24〜1.25である、請求項1または2に記載の容器用積層シート。
【請求項4】
金属箔の耐力が20〜200MPaであり、金属箔の伸びが15〜50%である、請求項1〜3のいずれか1つに記載の容器用積層シート。
【請求項5】
熱融着性樹脂フィルムの厚みが80〜350μmである、請求項1〜4のいずれか1つに記載の容器用積層シート。
【請求項6】
熱融着性樹脂フィルムの破断強度が30〜100MPaである、請求項1〜のいずれか1つに記載の容器用積層シート。
【請求項7】
金属箔が、JIS 8000系合金からなりかつ厚みが40〜200μmのアルミニウム箔である、請求項1〜のいずれか1つに記載の容器用積層シート。
【請求項8】
外側樹脂フィルムの厚みが10〜200μmである、請求項1〜7のいずれか1つに記載の容器用積層シート。
【請求項9】
金属箔と熱融着性樹脂フィルムとの積層、および金属箔と外側樹脂フィルムとの積層が、それぞれ接着剤層を介して行われている、請求項1〜8のいずれか1つに記載の容器用積層シート。
【請求項10】
請求項1〜のいずれか1つに記載の容器用積層シートをカップ状に成形してなる、上方開口と該開口周縁のフランジとを有する容器。
【請求項11】
請求項10の容器に、内容物を充填した後、該容器の上方開口を覆うように、金属箔層およびその下面に積層された熱融着性樹脂層を有する複合シートよりなる蓋材を被せて、該容器のフランジ上面に該蓋材下面の周縁部を熱融着させることにより得られる、内容物が密封包装された包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、金属箔の少なくとも片面に樹脂フィルムを積層してなりかつカップ状の容器の成形材料として用いられる容器用積層シート、および同積層シートから成形された容器に関する。
【背景技術】
【0002】
長期保存が必要な内容物を包装するための容器として、ガス・水分・光等のバリア性に優れたアルミニウム箔等の金属箔の片面または両面に樹脂フィルムが積層されている積層シートを、深絞り成形や張出し成形等によりカップ状に成形してなるものが知られている(例えば下記の特許文献1〜3参照)。
上記容器は、その上方開口周縁にフランジを有しており、内容物が充填された容器のフランジに、例えばアルミニウム箔とその内面に積層された熱融着性樹脂フィルムとを有する積層シートから形成された蓋材を熱融着することにより、包装体が形成されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2−167740号公報
【特許文献2】特開2009−221567号公報
【特許文献3】特開2014−76462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記の積層シートからなる容器の場合、成形後のフランジの幅(換言すればフランジの外径)が全周にわたって均一にならず、想定以上にバラツキを生じることがある。
そのため、上記容器の製造に際しては、容器の成形工程とは別に、フランジの幅を切り揃えるトリミング工程が設けられることが多いが、それによってコストの増大を招き、また、材料の無駄が生じていた。
【0005】
この発明の目的は、成形後のフランジの幅が全周にわたって均一なものとなり、従って、トリミング工程を省略することができ、材料の無駄が生じない、容器用積層シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上記の目的を達成するために、以下の態様からなる。
【0007】
1)カップ状の容器の成形材料として用いられる容器用積層シートであって、
金属箔と、金属箔の片面に積層されかつ容器の内面を構成する熱融着性樹脂フィルムとを備えており、
金属箔のフランジ外径比が、圧延方向に対して0°の方向(MD)/圧延方向に対して90°の方向(TD)=1.003〜1.02、圧延方向に対して45°の方向/圧延方向に対して90°の方向(TD)=0.99〜1.003であり、
熱融着性樹脂フィルムの破断強度比が、フィルム流れ方向に対して0°の方向(MD)/フィルム流れ方向に対して90°の方向(TD)=1.2〜2、フィルム流れ方向に対して45°の方向/フィルム流れ方向に対して90°の方向(TD)=1.1〜1.6であり、
また、金属箔のフランジ外径率が、0.3〜2%である、容器用積層シート。
【0008】
2)さらに、金属箔の他面に積層されかつ容器の外面を構成する外側樹脂フィルムを備えている、上記1)の容器用積層シート。
【0009】
3)金属箔の耐力が20〜200MPaであり、金属箔の伸びが15〜50%である、上記1)または2)の容器用積層シート。
【0010】
4)熱融着性樹脂フィルムの破断強度が30〜100MPaである、上記1)〜3)のいずれか1つの容器用積層シート。
【0011】
5)金属箔が、JIS 8000系合金からなりかつ厚みが40〜200μmのアルミニウム箔である、上記1)〜4)のいずれか1つの容器用積層シート。
【0012】
6)上記1)〜5)のいずれか1つの容器用積層シートをカップ状に成形してなる、容器。
【発明の効果】
【0013】
上記1)の容器用積層シートにあっては、金属箔のフランジ外径比、熱融着性樹脂フィルムの破断強度比、および金属箔のフランジ外径率を上記範囲に設定することで、成形後における容器のフランジの幅を均一にコントロールすることが可能となる。
従って、上記1)の積層シートによれば、均一な幅のフランジを有する容器を成形することができるので、フランジの幅を切り揃えるトリミング工程の付加によるコストの増大が回避され、材料の無駄も生じない。また、上記1)の積層シートによれば、容器のフランジを最小限の幅に抑えることができる。さらに、上記1)の積層シートによれば、その異方性が小さくなるので、成形時の局部的な伸びが生じ難く、成形性を向上させることができる。
ここで、「金属箔のフランジ外径比」とは、金属箔単体よりなる直径55mmの円板状のブランクを、所要形状の金型を用いて、内径が33mm、深さが14mm、圧延方向に対して90°の方向(TD)のフランジ外径が約39mmとなるように、かつフランジにしわが生じないようにしわ押え圧力を調整して、カップ状に成形し、得られた成形品について、圧延方向に対して0°、45°、90°の方向のフランジ外径をそれぞれ計測し、これらの計測値に基づいて前記の比を算出したものである。
また、「金属箔のフランジ外径率」とは、上記カップ状の成形品について、圧延方向を基準として30°刻みで計6方向のフランジ外径を計測し、[(大きい方の2方向のフランジ外径の平均−小さい方の2方向のフランジ外径の平均)/((大きい方の2方向のフランジ外径の平均+小さい方の2方向のフランジ外径の平均)/2)×100]を示したものである。
【0014】
上記2)の容器用積層シートによれば、成形された容器に耐力、耐候性、耐凹み性、耐傷付き性などを付与することができる。
【0015】
上記3)の容器用積層シートによれば、容器の成形不良が起こりにくく、成形性がさらに向上する。また、上記3)の容器用積層シートによれば、成形時にシートに力が掛かり過ぎないので、ピンホールや破れが起こりにくくなる。
【0016】
上記4)の容器用積層シートによれば、成形性がより良くなり、成形後のデラミネーションが起こりにくくなる。
【0017】
上記5)の容器用積層シートによれば、金属箔としてJIS 8000系合金よりなるアルミニウム箔が用いられているので、成形性がより良くなる。また、上記5)の容器用積層シートによれば、上記アルミニウム箔の厚みを40〜200μmとしたので、成形された容器に形状保持性や適度な剛性が得られる上、製造コストも高くなり過ぎない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】この発明の実施形態に係る容器用積層シートの層構造を示す部分拡大断面図である。
図2】同積層シートの構成材料である金属箔よりなるカップ状の成形体を示すものであって、(a)は垂直断面図、(b)は平面図である。
図3】同積層シートよりなるカップ状の容器を示すものであって、(a)は垂直断面図、(b)は平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明の実施形態を、図1図3を参照して説明する。
【0020】
図1は、この発明による容器用積層シートの層構造を示したものである。
図示の容器用積層シート(10)は、金属箔(101)と、金属箔(101)の片面に積層されかつ容器(1)の内面を構成する熱融着性樹脂フィルム(102)と、金属箔(101)の他面に積層されかつ容器(1)の外面を構成する外側樹脂フィルム(103)とよりなる。
【0021】
金属箔(101)は、容器(1)にガス・水分・光等のバリア性を付与して、内容物の長期保存を可能にするためのバリア層を形成するものである。
金属箔(101)としては、例えば、アルミニウム箔、鉄箔、ステンレス鋼箔、銅箔を使用することができるが、好適にはアルミニウム箔が用いられる。アルミニウム箔の場合、純アルミニウム箔、アルミニウム合金箔のいずれでもよく、また、軟質、硬質のいずれでもよいが、好適には、JIS 8000系合金、すなわち、JIS H4160で分類されるA8000系(特に、A8079HやA8021H)の合金よりなるものが用いられ、特に、同合金の焼鈍処理済の軟質材(O材)が好適であり、それによって優れた成形性が得られる。
金属箔(101)の厚みは、特に限定されないが、JIS 8000系合金のアルミニウム箔が用いられる場合、40〜200μmであるのが好ましく、それによって、成形された容器に形状保持性や適度な剛性が得られ、また、製造コストも高くなりすぎない。
金属箔(101)の片面または両面には、必要に応じて、クロメート処理などの下地処理を行うことができる。具体的には、例えば、脱脂処理を行った金属箔(101)の表面に、
1)リン酸と、
クロム酸と、
フッ化物の金属塩およびフッ化物の非金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含む混合物の水溶液
2)リン酸と、
アクリル系樹脂、キトサン誘導体樹脂およびフェノール系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂と、
クロム酸およびクロム(III)塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含む混合物の水溶液
3)リン酸と、
アクリル系樹脂、キトサン誘導体樹脂およびフェノール系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂と、
クロム酸およびクロム(III)塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、
フッ化物の金属塩およびフッ化物の非金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含む混合物の水溶液
上記1)〜3)のうちのいずれかの水溶液を塗工した後、乾燥することにより、化成処理を施して、皮膜を形成する。
前記化成処理により金属箔(101)表面に形成される皮膜は、クロム付着量(片面当たり)を0.1mg/m〜50mg/mとするのが好ましく、特に、2mg/m〜20mg/mとするのが好ましい。
【0022】
上記積層シート(10)を構成する金属箔(101)としては、そのフランジ外径比が、圧延方向に対して0°の方向(MD)/圧延方向に対して90°の方向(TD)=1.003〜1.02、圧延方向に対して45°の方向/圧延方向に対して90°の方向(TD)=0.99〜1.003であり、また、そのフランジ外径率が、0.3〜2%であるものが用いられる。
ここで、図2を参照して、「フランジ外径比」とは、上記金属箔(101)よりなる直径55mmの円板状のブランクを、所要形状の金型を用いて、内径(d)が33mm、深さ(H)が14mm、圧延方向に対して90°の方向(TD)のフランジ外径(D)が約39mmとなるように、かつフランジ(11c)にしわが生じないようにしわ押え圧力を調整して、カップ状に成形し、得られた成形品(11)について、圧延方向に対して0°、45°、90°の方向のフランジ(11c)外径をそれぞれ計測した上で、前記の比、すなわち、圧延方向に対して0°の方向(MD)のフランジ外径/圧延方向に対して90°の方向(TD)のフランジ外径、および、圧延方向に対して45°の方向のフランジ外径/圧延方向に対して90°の方向(TD)のフランジ外径を算出したものである。
また、「フランジ外径率」とは、上記成形品(11)について、圧延方向に対して90°の方向(A1)を基準として30°刻みで計6方向(A1)〜(A6)のフランジ(11c)の外径を計測し(図2(b)参照)、[(大きい方の2方向のフランジ外径の平均−小さい方の2方向のフランジ外径の平均)/((大きい方の2方向のフランジ外径の平均+小さい方の2方向のフランジ外径の平均)/2)×100]を示したものである。
ここで、従来の容器用積層シートの場合、金属層(具体的にはアルミニウム箔)として、耳率の小さいものを使っていた。その理由は、金属層の耳率が大きいと、成形された容器のフランジにしわが生じやすく、また、成形時に破断等の不具合が生じるからである(例えば、上記特許文献1参照)。また、同積層シートの合成樹脂層には、共押しによる製膜であったとしても、配向が生じ、異方性が生じる。一般的に、無延伸樹脂フィルムの破断強度は、材料送り方向に対して0°方向(MD)>斜め方向>90°方向(TD)となり、これは必ず生じるものである。そして、耳率およびフランジ外径率の小さい金属層と、異方性が大きい合成樹脂層とを積層してなるシート材料から成形された容器では、合成樹脂層の影響により、そのフランジ幅は、材料送り方向に対して90°方向(TD)>斜め方向>0°方向(MD)となる。そこで、この発明では、合成樹脂層の異方性が必ず生じることを前提として、その異方性とは逆向きの異方性を金属層に付与することにより、積層シート全体としての異方性をゼロに近づけるようにしたものである。なお、金属層(すなわち、アルミニウム箔等の金属箔)の異方性は、主として、焼鈍条件と、中間焼鈍までの熱圧延率とにより決定付けられる。
【0023】
さらに、上記金属箔(101)としては、耐力が20〜200MPa(好ましくは、20〜100MPa)であり、伸びが15〜50%(好ましくは、20〜30%)であるものが好適に用いられる。
耐力および伸びが上記範囲内である金属箔(101)を容器用積層シート(10)に用いれば、容器(1)の成形不良が起こりにくく、成形性がより良くなり、また、成形時にシート(10)に力が掛かり過ぎないので、ピンホールや破れが起こりにくくなる。
【0024】
熱融着性樹脂フィルム(102)は、容器(1)の内面およびフランジ(1c)の上面を構成するものであって、容器(1)のフランジ(1c)に熱融着(ヒートシール)性を付与するとともに、金属箔(101)を内容物から保護する役割を担うものである。
この熱融着性樹脂フィルム(102)は、例えば、ポリプロピレン(PP)樹脂フィルムやポリエチレン(PE)樹脂フィルム等のポリオレフィン系樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂フィルム等のポリエステル系樹脂フィルム、ナイロン(Ny)樹脂フィルム等のポリアミド系樹脂フィルム、または、これらの複合フィルムによって構成される。
複合フィルムの場合、好ましくは、例えばポリエチレン(PE)樹脂フィルムとポリプロピレン(PP)樹脂フィルムのように相互に剥離しやすい樹脂フィルムを少なくとも2枚積層した複合フィルムが用いられる。上記複合フィルムによれば、開封時にフィルムどうしが容易に剥がれて、小さい力で容易に開封することができる。
具体的には、例えば、蓋材(2)の最内層を構成する熱融着性樹脂層がポリエチレン(PE)樹脂である場合、容器用積層シート(10)の熱融着性樹脂フィルム(102)として、最内層側のポリエチレン(PE)樹脂フィルムと、その外側に積層された金属箔(101)層側のポリプロピレン(PP)樹脂フィルムとよりなる複合フィルムが用いられる。
また、熱融着性樹脂フィルム(102)を上記複合フィルムで構成する場合において、容器(1)のフランジ(1c)上面に、複合フィルムの最内層側(フランジ(1c)上面側)の樹脂フィルムを貫通してその外側(下側)の樹脂フィルムの上部まで達する深さを有する開封用ノッチ(図示略)を全周に亘って環状に設けてもよい。この場合、開封時に複合フィルムを構成する樹脂フィルムどうしが容易に剥がれて、より小さい力で開封することができる。
容器用積層シート(10)における金属箔(101)および熱融着性樹脂フィルム(102)の厚みの比率は、金属箔(101)の厚み/熱融着性樹脂フィルム(102)の厚み=0.24〜1.25であるのが好ましい。上記比率が0.24未満であると、熱融着性樹脂フィルムの影響が大きくなりすぎ、フランジ外径が安定しない。一方、上記比率が1.25を越えると、金属箔の影響が大きくなり、フランジ外径は金属箔の異方性のみに依存する。熱融着性樹脂フィルムの厚みは、80〜350μm程度とするのが好ましい。
【0025】
また、この発明の容器用積層シート(10)において、熱融着性樹脂フィルム(102)は、その破断強度比が、フィルム流れ方向に対して0°の方向(MD)/フィルム流れ方向に対して90°の方向(TD)=1.2〜2、フィルム流れ方向に対して45°の方向/フィルム流れ方向に対して90°の方向(TD)=1.1〜1.6となされている。MD/TD、45°/TDの破断強度比が上記範囲内である熱融着性樹脂フィルムと、前記の金属箔とを貼り合わせた容器用積層シートを用いることにより、各材料が有している強度の方向性および歪みが打ち消し合って、容器成形時の歪みが少なくなり、結果として、フランジ外径のバラツキが小さい容器を得ることができる。
熱融着性樹脂フィルム(102)の破断強度は、好適には、30〜100MPaである。これにより、容器用積層シート(10)から容器(1)を成形する際の成形性が向上し、また、成形後のデラミネーションの発生が抑制される。
【0026】
容器用積層シート(10)の外側樹脂フィルム(103)は、成形された容器(1)の外面を構成し、容器(1)に耐力、耐候性、耐凹み性、耐傷付き性などを付与する役割を果たすものである。
この外側樹脂フィルム(103)としては、例えば、ポリエチレン(PE)樹脂フィルムやポリプロピレン(PP)樹脂フィルム(無延伸ポリプロピレン(CPP)樹脂フィルムおよび延伸ポリプロピレン(OPP)樹脂フィルムを含む)等のポリオレフィン系樹脂フィルム、ナイロン(Ny)樹脂フィルム等のポリアミド系樹脂系フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂フィルムやポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂フィルム等のポリエステル系樹脂フィルムや、これらの複合材料が用いられる。
外側樹脂フィルム(103)の厚みは、10〜200μmとするのが好ましい。
【0027】
図示は省略したが、金属箔(101)と熱融着性樹脂フィルム(102)との積層、および金属箔(101)と外側樹脂フィルム(103)との積層は、それぞれ接着剤層を介して行われる。接着剤層には、例えば、二液硬化型のポリエステル−ポリウレタン樹脂系接着剤、またはポリエーテル−ポリウレタン樹脂系接着剤が用いられる。
【0028】
図3は、上記の容器用積層シート(10)から成形された容器(1)を示すものである。
図示の容器(1)は、円板状の底(1a)、底(1a)の周縁から垂直に立ち上がった略円筒状の胴(1b)、および胴(1b)の上端縁から径方向外方に張り出したフランジ(1c)とよりなるカップ状のものである。なお、容器の形状は、図示のものには限定されず、適宜変更可能である。
上記の容器(1)は、例えば、容器用積層シート(10)を所定形状(図2の容器の場合、円板状)にカットしてなるブランクを、パンチ、ダイスおよびブランクホルダー(しわ押え板)を備えた金型(図示略)を用いて、深絞り成形・張出し成形等の冷間成形を行うことにより、形成することができる。
特に、この発明の容器用積層シート(10)から成形された容器(1)の場合、そのフランジ外径率が小さく、全周に亘ってフランジ(1c)の外径、言い換えればフランジ(1c)の幅がほぼ均一に揃っているため、従来の容器のようにフランジの幅を切り揃えるためのトリミング加工を必要とせず、材料の無駄も生じないので、コストが抑えられる。
この容器(1)に、食品等の内容物を充填した後、その上方開口を覆うように、例えば金属箔層およびその下面に積層された熱融着性樹脂層を有する複合シートよりなる蓋材(2)を被せて、フランジ(1c)上面に蓋材(2)下面の周縁部を熱融着することにより、内容物が密封包装された包装体が得られる。
【実施例】
【0029】
次に、この発明の具体的実施例について説明する。
【0030】
<容器用積層シートの作製>
JIS H4160で分類されるA8021H合金よりなりかつ以下の表1に示すフランジ外径比およびフランジ外径率をそれぞれ有する厚み120μmのアルミニウム箔を用意した。各アルミニウム箔の表面には、クロメート処理を行うことにより、化成皮膜を形成した。
そして、各アルミニウム箔の片面に、熱融着性樹脂フィルムとして、以下の表1に示す破断強度比をそれぞれ有する厚み300μmのポリプロピレン(PP)樹脂フィルムを、二液硬化型のポリエステル−ポリウレタン樹脂系接着剤を用いてドライラミネートするとともに、各アルミニウム箔の他面に、外側樹脂フィルムとして、厚み30μmの無延伸ポリプロピレン(CPP)樹脂フィルムを、二液硬化型のポリエステル−ポリウレタン樹脂系接着剤を用いてドライラミネートすることにより、実施例1〜2および比較例1〜4の容器用積層シートを作製した。
【0031】
<容器の成形>
次に、実施例1〜2および比較例1〜4の容器用積層シートを直径55mmの円板状にカットしてブランクを形成し、各ブランクを、パンチ、ダイスおよびブランクホルダーよりなる金型を用いて、内径が33mm、深さが14mm、圧延方向に対して90°の方向(TD)のフランジ外径が約39mmとなるように、かつフランジにしわが生じないようにしわ押え圧力を調整して、図3に示すようなカップ状に深絞り成形し、実施例1〜2および比較例1〜4の容器を得た。
【0032】
得られた実施例1〜2および比較例1〜4の容器それぞれについて、圧延方向に対して90°の方向(A1)を基準として30°刻みで計6方向(A1)〜(A6)のフランジ外径を計測し(図3(b)参照)、以下の計算式によりフランジ外径率を算出した。
フランジ外径率(%)=(大きい方の2方向のフランジ外径の平均−小さい方の2方向のフランジ外径の平均)/((大きい方の2方向のフランジ外径の平均+小さい方の2方向のフランジ外径の平均)/2)×100
各容器のフランジ外径率およびその判定は、表1に示す通りである。
なお、判定は、「◎」=フランジ外径率が1.00未満であって、フランジの外径が全周にわたって均一である、「○」=フランジ外径率が1.00以上、1.25未満であって、フランジの外径が全周にわたってほぼ均一である、「△」=フランジ外径率が1.25以上、1.50未満であって、フランジの外径にややバラツキがある、「×」=フランジ外径率が1.50以上であって、フランジの外径にバラツキがあるとした。
【0033】
【表1】
【0034】
表1から明らかなように、実施例1および実施例2の容器では、フランジの外径にバラツキがなく、良好な結果が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0035】
この発明は、長期保存が必要な食品等の内容物を包装するための容器、および同容器を成形するための積層シートとして、好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0036】
(1):容器
(1c):フランジ
(10):容器用積層シート
(101):金属箔
(102):熱融着性樹脂フィルム
(103):外側樹脂フィルム
図1
図2
図3