(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態の一例を詳細に説明する。
【0021】
<第1実施形態>
・立体像形成システム
図1に、第1実施形態に係る立体像形成システムの構成の一例を示す。立体像形成システム10は、立体像形成システム10の内部に再生された立体像40を、立体像形成システム10の外部に立体像42として結像させるものである。本実施の形態の立体像形成システム10は、立体像42を結像する立体結像素子としての光学結像素子20と、立体像40を再生する立体像再生装置30と、を備えている。
【0022】
・立体像再生装置
まず、物体を示す立体像40を再生する立体像再生装置30を説明する。
立体像再生装置30は、制御部32、投影部34、及び再生部36を備えている。制御部32は、投影部34、及び再生部36に電気的に接続されている。制御部32は、物体を示す立体像信号から画像信号及び画像信号の出力制御信号を形成する。投影部34は、制御部32から出力された出力制御信号に基づいて画像信号を画像に変換して投影する。再生部36は、制御部32から出力された出力制御信号に基づいて、投影部34から投影された画像を立体像40を再生する。
【0023】
図2に、制御部32を実現可能なコンピュータ構成の一例を示す。制御部32はCPU32A、RAM32B、ROM32C、およびインタフェース(I/O)32Gを備え、これらはバス32Hを介して互いに接続されている。また、バス32Hには、立体像再生プログラム32Eを記憶した記憶部32D、及び物体を示す立体像信号を出力する画像源32Fが接続されている。また、インタフェース32Gには、投影部34及び駆動部37も接続されている。なお、記憶部32D及び画像源32Fは、HDD(Hard Disk Drive)や不揮発性のフラッシュメモリ等によって実現できる。また、CPU32Aは、立体像再生プログラム32Eを記憶部32Dから読み出してRAM34に展開して処理を実行する。
【0024】
記憶部32Dに記憶された立体像再生プログラム32Eは、画像源32Fに記憶された立体像信号から2次元の画像信号及び当該画像信号の出力制御信号を出力する機能を有している。ここで、立体像信号は、例えば、三次元のデジタルイメージを示す信号と、奥行き値を示す信号から構成される。奥行き値を示す信号は、例えば立体像信号に基づき投影部34で投影される立体像の投影軸と交差する面において交差(好ましくは直交)する方向をX軸及びY軸とし、投影軸に沿う方向をZ軸とした座標系を設定した場合のZ軸の座標値を示す信号である。つまり、奥行き値は、後述する再生部36において積層された電子スクリーン39の積層方向を軸とした場合の座標値に対応する。
【0025】
また、立体像再生プログラム32Eは、スライスイメージ形成機能、及び復元機能をコンピュータに実行させるプログラムを実行させるための各機能を含む。スライスイメージ形成機能は、立体像信号(三次元のデジタルイメージを示す信号及び奥行き値を示す信号)から、奥行き値に応じた位置で物体をスライスしたスライスイメージを示す信号を各々作成して画像信号として投影部34へ出力する機能である。また、復元機能は、スライスイメージから物体を表す立体像40を示すボリュームイメージを形成するために、作成されるスライスイメージの形成場所(奥行き方向の位置)を示す出力制御信号を作成して再生部36へ出力する機能である。
【0026】
投影部34は、制御部32から出力された出力制御信号に基づいて画像信号を画像に変換して投影する。つまり投影部34は、画像信号からスライスイメージを形成し、形成したスライスイメージを再生部36へ向けて投影する。投影部34は、例えば毎秒1000〜5000コマの描画速度で、十分な光出力の光束を射出することが好ましく、一例として、DMD(DigitaMicromirrorDevice)方式プロジェクタを使用することができる。
【0027】
再生部36は、駆動部37及び積層配置された電子スクリーン39を含む表示器38を備えている。
電子スクリーン39は、例えば、PNLC(PolymerNetworkLiquidCrystal(ポリマーネットワーク型液晶))を用いて形成することができる。電子スクリーン39は、電圧が印加されない状態では、液晶分子は不規則に並ぶように構成され、電圧が印加された状態では、液晶分子が電子スクリーン39の両表面に垂直に並ぶように構成されている。これにより、電子スクリーン39は、電圧が印加されない状態では、外部から入射された光が液晶分子により散乱される不透明な状態に移行し、電圧が印加された状態では、入射された光が透過される透明な状態に移行する。
【0028】
なお、電子スクリーン39は光学結像素子20における光路に対して交差(好ましくは直交)する向きに配置されている。また、以下の説明で、積層配置された電子スクリーン39の各々について個別に他と区別して説明する場合は、電子スクリーン39−1〜39−S(Sは積層数)と、順番を示す記号を付して表記する。
【0029】
駆動部37は、積層配置した電子スクリーン39の各々に対して電圧の印加及び遮断を個別に行う電圧印加回路を含み、積層配置した電子スクリーン39のうち、制御部32からの出力制御信号に応じた電子スクリーン39(39−1〜39−Sの何れか)を不透明な状態に移行し、他の電子スクリーン39の全てを透明な状態に移行する。これにより、投影部34から順次投影される奥行き値に応じたスライスイメージを、奥行き値に応じた場所の電子スクリーン39にそれぞれ映し出すことができる。なお、立体像40としての1フレームは、スライスイメージの表示が複数の電子スクリーン39を一巡することにより完成される。そして、例えば表示器38内に毎秒50フレーム以上の速度でフレームの切換えを行うと、目の残像効果により、立体像40を再生することができる。
【0030】
なお、奥行き値に応じた場所の電子スクリーン39−k(電子スクリーン39−1〜39−Sの何れか1つ)にスライスイメージを映し出す場合、投影部34側の最初の電子スクリーン39から投影対象の電子スクリーン39の直前の電子スクリーン39まで(1〜(k−1))を透明な状態に移行し、投影対象の電子スクリーン39以降(39−k〜39−S)を不透明な状態に移行するようにしてもよい。
【0031】
以上のようにして、立体像再生装置30は、立体像形成システム10の内部に立体像40を再生する。そして、立体像形成システム10の内部に再生された立体像40は、光学結像素子20によって、立体像形成システム10の外部に立体像42として結像される。
【0032】
・光学結像素子
次に、
図3及び
図4を参照して本実施形態に係る光学結像素子20を説明する。
図3に、本実施の形態に係る光学結像素子20の構成の一例を示す。
図3(A)は、光学結像素子20の全体構成の一例を示し、
図3(B)は、光学結像素子20で、第1反射部材202に含まれる第1反射素子208及び第2反射部材212に含まれる第2反射素子218において光が反射される状態を模式的に示す。
図4に、立体結像素子の一部を模式的に示す構成の一例を示す。
図4(A)は、光学結像素子20における第1反射部材202の構成の一例を示し、
図4(B)は、第1反射部材202の構成のその他の一例を示す。光学結像素子20は、立体像形成システム10の内部に再生された立体像40を、立体像形成システム10の外部に立体像42として結像させるものである。なお、光学結像素子20の製造方法は後述する。
【0033】
図3(A)に示すように、光学結像素子20は、表面及び裏面の少なくとも一方の面が反射面とされた光透過性を有する薄膜状の反射層と、透明性を有する樹脂層(以下、透明性樹脂層という)とが交互に複数積層された第1反射部材202及び第2反射部材212を備えている。第1反射部材202及び第2反射部材212の各々は、一方の積層端面から入射された光が反射面で反射されて他方の積層端面から出射される。また、
図3に示す光学結像素子20では、第1反射部材202の反射面と第2反射部材212の反射面とが交差(例えば直交)した向きとされ、かつ第1反射部材202の積層端面から出射された光が第2反射部材212の積層端面に入射するように配置される。
【0034】
ここで、本発明における光透過性を有するとは、フイルムまたはシート形状での完全な透明な場合を100%の光透過性を有すると表現すると、50%以上の光透過性が有ることを意味する。70%以上更に好ましくは85%以上のものが全て対象となる。
【0035】
図4(A)に示すように、第1反射部材202は、透明部材205の一方の面に金属層206を備えて、光透過性を有する薄膜状の反射層207を備える。
透明部材は、それ自体公知の透明な熱可塑性樹脂、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ1−ブテン、ポリ4−メチル−1−ペンテンあるいはエチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィン同志のランダムあるいはブロック共重合体や、環状オレフィン共重合体などのオレフィン系樹脂;エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、エチレン・塩化ビニル共重合体等のエチレン・ビニル系共重合体樹脂;ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体、ABS、α−メチルスチレン・スチレン共重合体等のスチレン系樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル・塩化ビニリデン共重合体、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル等のビニル系樹脂;ナイロン6、ナイロン6−6、ナイロン6−10、ナイロン11、ナイロン12等のアミド樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリカーボネート;ポリフエニレンオキサイド;ポリ乳酸などの生分解性樹脂;などから形成されていてよい。或いは公知の透明な熱硬化性樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、ポリウレタンなどから形成されていて良い。
一般的には、透明性に優れていると同時に、加熱硬化のための熱処理に対しての耐熱性が良好であり、さらには、張力を印加した時に歪変形量の少ない、弾性率が比較的高いという点で、熱可塑性樹脂においては、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルや、熱硬化性樹脂においてはエポキシ樹脂、シリコン樹脂、ポリウレタン等が好適に使用される。
【0036】
ここで、本発明における透明性又は透明性を有するとは、目視により観察される外観が無色透明であること、より具体的にはJIS K7361−1に準拠して測定される全光線透過率(Tt)が90%以上であり、なおかつYIが1.1以下であることを意味する。
【0037】
金属層は、それ自体公知の蒸着方法により形成された金属蒸着層や塗布方法により形成された金属塗布層が挙げられる。金属蒸着層は、真空にした容器の中で、金属粉末を蒸着材料として加熱し気化または昇華して、離れた位置に置かれた基材の表面に付着させて、形成された薄膜の層である。蒸着材料は、基材の種類に応じて、抵抗加熱、電子ビーム、高周波誘導、レーザーなどの選択された加熱方法で加熱される。蒸着材料の加熱方法及び加熱時間により、形成される薄膜の層の厚さが決定される。
金属蒸着層は、種々の金属、例えばアルミニウム、銅、クロム、銀などの金属の蒸着によって形成されるが、特にシルバー調の金属色を有し且つ鏡面光沢性に優れ、安価であるという観点から、アルミニウムの蒸着により形成されていることが好適である。
金属塗布層は、金属粉末や雲母等の光沢顔料がバインダに分散され塗布形成された層である。
【0038】
金属層206の表面及び裏面は反射面209及び反射面210となる。つまり、
図4(A)に示す例では、第1反射部材202における反射層207の一方の面(の表面及び裏面)が反射面となる。金属層206は、例えば、アルミニウムや銀等の金属により形成された層(例えば、金属蒸着層)とすることができ、アルミニウムで金属層206を形成する場合、形成された金属層206により反射率の高い反射面を安価に形成することができる。また、第1反射部材202は、透明性樹脂層204を備える。透明性樹脂層204は、例えばアクリル樹脂により形成されることが好ましい。第1反射部材202は、反射層207及び透明性樹脂層204からなる第1反射素子208が複数積層されることで、反射層207と透明性樹脂層204とが交互に複数積層される。また、第1反射部材202は、反射層207(反射面209と反射面210)が平行になるように複数積層されて形成される。
【0039】
また、第1反射部材202は、反射層207を構成する透明部材205の屈折率と、透明性樹脂層204の屈折率とを同じ屈折率にすることが好ましい。透明部材205及び透明性樹脂層204を同じ屈折率にすることで、反射層207と透明性樹脂層204とが積層された積層面において屈折率変化による光の界面現象(例えば、反射や屈折)を抑制することができる。
【0040】
なお、
図4(B)に示すように、第1反射部材202は、透明部材205の表面及び裏面の各々に金属層206及び金属層211を備えて反射層207を形成してもよい。
図4(B)に示す第1反射部材202では、反射層207の表面及び裏面、つまり金属層206の表面が反射面210となり、金属層211の表面が反射面209となる。従って、
図4(B)に示す例では、第1反射部材202における反射層207の両方の面(金属層206の表面及び金属層211の表面)が反射面となる。
【0041】
また、
図4(B)に示すように、透明部材205の表面及び裏面の各々に金属層206及び金属層211を備えて反射層207を形成した場合、透明部材205は光透過性を有さなくても良い。つまり、光透過性を有する薄膜状の反射層207の表裏に反射面がある場合、反射面に挟まれたフィルムは、光透過性が無い方がゴーストなどが少なくなるので好ましい。この光透過性の無いフィルムは、黒色で、全光線透過率が(10%以下)であることが好ましい。材質は、蒸着の熱で、変形しないようにある程度耐熱性が高い方が良く、PETやPP等の結晶性ポリマー等が好ましい。
【0042】
ここで、
図4(C)に示すように、第1反射部材202は、反射層207と透明性樹脂層204との間に透明性の接着層ADを備えることもできる。つまり、光透過性を有する薄膜状の反射層207と、透明性樹脂層204との間に、光学的に透明な接着層ADを設けることができる。接着層ADは、反射層207と透明性樹脂層204との積層後、含浸または真空含浸等により透明性樹脂層204と反射層207の間に染み込ませて、接着したり、シート状に成形された接着層ADを透明性樹脂層204と反射層207の間に配置したのち、紫外線照射または熱等を用い、接着硬化させるなどしても良い。シート状に成形された接着層ADを用いる場合、積層接着プロセスがドライプロセスとなり、防汚やハンドリングし易いなどの観点から好ましい。光学的に透明な接着層とは、透明性の接着層であり、全光線透過率が85%以上のものである。従って、接着層ADに用いる接着剤は、光学的に透明性を有することが望ましく、接着剤の屈折率は透明性樹脂層204と同等であることが、光学結像素子20のゴーストを抑制する観点から望ましい。
透明な接着層ADに用いる接着剤は、反射層207と、透明性樹脂層204とを機械的に接着し、かつ透明性樹脂層204の屈折率に同様であれば特に限定されない。例えば、接着層ADの屈折率ntを、1.1〜1.7の範囲としたとき、透明性樹脂層204と接着層ADの屈折率の差分が、±20%以内の範囲であることが好ましい。さらに好ましくは屈折率の差分が、±10%以内、さらに好ましくは±5%以内である。
例えば、接着層ADの一例としては、アクリレート系(アクリル樹脂)や、エポキシ樹脂系、シリコーンゴム系等の透明性樹脂を用いることができる。例えば、エポキシ化合物としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、脂肪族型エポ キシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂などから少なくとも1種選以上が選択される。
【0043】
一方、第2反射部材212は、第1反射部材202と同様の構成のため、説明を省略する。なお、以下の説明では、第1反射部材202の構成要素と第2反射部材212の構成要素とを区別して説明する場合に、第2反射部材212が、透明部材215及び金属層216を含み、反射面219、220を備えた反射層217と、透明性樹脂層214とからなる第2反射素子218を複数積層して形成されたものとして説明する。
【0044】
図3(B)に示すように、光学結像素子20を構成する第1反射部材202に含まれる第1反射素子208と、第2反射部材212に含まれる第2反射素子218とは、反射面が交差(直交)された状態に形成される。
【0045】
ここで、光学結像素子20に入射された入射光は、第1反射部材202の第1反射面、つまり第1反射部材202の第1反射素子208における反射面210で反射され、その反射光が第2反射部材212の第2反射面、つまり第2反射部材212の第2反射素子218における反射面220で反射されて、光学結像素子20から出射される。一方、光学結像素子20では、第1反射部材202及び第2反射部材212が、互いの反射面が交差(直交)した向きに配置される。このように、第1反射部材202の第1反射面、及び第2反射部材212の第2反射面が平面視して直交させて配置されている場合、光学結像素子20への入射光と光学結像素子20から出射光は、光学結像素子20を平面視した状態において平行になる。このため、光学結像素子20の入射側に再生された立体像40の複数の光点の各々は、光学結像素子20の出射側において立体像40と対称の位置の光点に集束されて立体像42として結像される。
【0046】
なお、立体像40と立体像42は、光学結像素子20を中心にして対称関係になるが、面対称になる場合は、光学結像素子20を2つ重ねて用いればよい。
【0047】
立体像形成システム10では、その内部において、投影部34で物体のスライスイメージを順次投影し、それと同期して積層配置した電子スクリーン39を、透明な状態から不透明な状態に順次移行することによって、表示器38に発光するスライスイメージが順次形成され、立体像40が再生される。そして、立体像形成システム10内において立体像再生装置30で再生された物体を表す立体像40が、光学結像素子20による結像によって、立体像形成システム10の外部に、目視可能な立体像42として形成される。
【0048】
・光学結像素子の製造方法
次に、本実施形態に係る光学結像素子20の製造方法について説明する。
図5に、光学結像素子20を製造する工程の流れの一例を示す。
まず、工程S100では、光学結像素子20の一部を構成する反射面を含む光透過性を有するフィルム(以下、光透過性フィルムという)Fを形成する。光透過性フィルムFは、まず、一定厚み(例えば0.5μm〜100μm、好ましくは50μm)の透明物質からなる一定幅の長尺状のテープの表面及び裏面の少なくとも一方の面に、金属の反射面が形成された光透過性を有するテープ(以下、光透過性テープという)を製造する。金属の反射面は、例えば、アルミニウムや銀等の金属を塗布又は蒸着することにより反射面となる金属層を形成することができる。なお、反射面となる金属層の厚みは、例えば、5nm〜5000nmの間の何れかの厚みで形成することができる。光透過性フィルムFは、この光透過性テープから所定幅(例えば1.5mm)だけ切り出すことにより製造する。ここで、光透過性フィルムFの厚みが第1反射部材202における反射層207及び第2反射部材212における反射層217の厚みになる。
【0049】
次の工程S102では、工程S100で形成された光透過性フィルムFを折り返し、反射面が平行になった第1の平行部分を複数形成する。複数の第1の平行部分は、固定治具230を用いて光透過性フィルムFが枠240に仮固定された状態の第1反射体250を製造することにより形成することができる。次に、固定治具230を用いて第1反射体250を製造する工程を説明する。
【0050】
図6に、第1反射体250を製造する過程における光透過性フィルムF、枠240、及び固定治具230の位置関係の一例を示す。
図7に、
図6の分解斜視図を示す。
固定治具230は、同じ直方体形状の移動板232を複数備えている。移動板232は、長手方向の一方の端部における側縁部分に、ピン234が中心軸を中心として回転可能に取り付けられている。このピン234は、光透過性フィルムFの移動を制限する段差236を備える。また、ピン234が取り付けられた複数の移動板232は、長手方向の逆側の端部における平面部分の一部が所定方向(矢印dR及び矢印dLで示す方向)に摺動可能に配置される。また、複数の移動板232は、摺動部分を中心として左右にピン234が位置するように移動板232の向きが左右交互になるように配置される。さらに、複数の移動板232は、各々が分解及び摺動方向以外に移動しないように、図示しない拘束部材に取り付けられている。
【0051】
また、複数の移動板232の各々には、図示しない付勢手段により、左右に位置するピン234が離間する方向に付勢力が与えられるようになっている。また、複数の移動板232に対して、図示しない付勢手段が与える付勢力より大きい力を、左右に位置するピン234が接近する方向に与えることで、複数の移動板232の左右に位置するピン234を接近させることができる。複数の移動板232は、左右に位置するピン234が接近された所定の接近位置から、左右に位置するピン234が離間された所定の離間位置までの移動範囲に摺動可能になるように図示しない拘束部材で設定されている。また、所定の離間位置に向って光透過性フィルムFに所定のテンションが与えられる位置において、光透過性フィルムFを巻きつけるピン234の直径及び隣り合うピン234の間隔は、同じ(例えば、400μm)に設定される。)になるように形成される。また、所定の離間位置は、後述する枠240に光透過性フィルムFを通した長さより長い距離に設定される。
【0052】
枠240は、内部に空間を有する断面が四角形状の四角管で形成されており、四角管の端部で、かつ四角形状の向き合った辺部の1組の各々に、所定の間隔で光透過性フィルムFを収容するための切り込み242が形成されている。切り込み242の所定の間隔は、ピン234の直径又は隣り合うピン234の間隔と同じに形成される。なお、切り込み242が形成された辺部には、光透過性フィルムFを枠240に仮固定する際に接着剤を塗布する塗布領域244も形成されている。また、切り込み242が形成され辺部と異なる辺部の側面部の各々には、貫通穴246が形成されている。
【0053】
以上のように形成された枠240及び固定治具230を用いて、光透過性フィルムFを枠240に仮固定することで、第1反射体250を製造する。具体的には、固定治具230の左右に位置するピン234の間に枠240を配置し、複数の移動板232が接近位置に設定された状態で、光透過性フィルムFを、移動板232のピン234へ左右交互に折り返して巻きつける。この場合、光透過性フィルムFは、枠240に形成された切り込み242を通過する。光透過性フィルムFをピン234に巻きつけた後には、光透過性フィルムFに付勢力を与える。これにより、光透過性フィルムFには長手方向に所定のテンションが与えられて、光透過性フィルムFは左右に位置するピン234の間に平面部分が形成される。また、ピン234の直径及び隣り合うピン234の間隔が同じ設定されているので、折り返された光透過性フィルムFの向き合う平面部分が平行となり、光透過性フィルムFに形成された反射面が平行になる第1の平行部分が複数形成される。光透過性フィルムFで第1の平行部分が複数形成された状態で、塗布領域244に接着剤245を塗布して光透過性フィルムFを枠240に仮固定する。この仮固定後に、枠240の外周に延びる光透過性フィルムFを切断し、光透過性フィルムFが仮固定された枠240を切り離して、第1反射体250を得ることができる。
【0054】
次に、
図5に示す工程S104では、工程S102と同様に、工程S100で形成された光透過性フィルムを折り返し、反射面が平行になった第2の平行部分を形成する。つまり、枠240及び固定治具230を用いて、光透過性フィルムFを枠240に仮固定することで、第2反射体252を得る。また、工程S104では、第1の平行部分が形成された第1反射体250と、第2の平行部分が形成された第2反射体252と、を近接又は当接して第1反射体250の反射面と第2反射体252の反射面とが交差するように配置する。
【0055】
次の工程S106では、第1反射体250における第1の平行部分及び第2反射体252における第2の平行部分に透明性を有する樹脂(以下、透明性樹脂という)を流入し、次の工程S108で、流入した透明性樹脂へ向けて紫外線を照射し、透明性樹脂を硬化させる。このように、流入された透明性樹脂を硬化された第1反射体250及び第2反射体252の組立体(
図9に示す反射素子256)は、本実施形態に係る光学結像素子20として機能する。
【0056】
図8に、第1反射体250の反射面と第2反射体252の反射面とが交差した状態を模式的に示す。
図8では、理解を容易にするために、第1反射体250及び第2反射体252において、枠240の外周に延びる光透過性フィルムFを切断する以前の状態で、第1反射体250の反射面と第2反射体252の反射面とが交差するように配置し平面視した場合を示す。また、
図9に、第1反射体250及び第2反射体252を用いて光学結像素子20を製造する工程の流れの一例を示す。なお、
図9では、第1反射体250の反射面と第2反射体252の反射面とが交差した状態を見やすくするために、反射面の数を減少させている。
【0057】
図9に示すように、第1の平行部分を有する第1反射体250と、第2の平行部分を有する第2反射体252とを、第1反射体250の反射面と第2反射体252の反射面とが交差するように配置して(
図8参照)、組立反射体254を形成する。そして、形成された組立反射体254の空間領域、つまり第1反射体250における第1の平行部分及び第2反射体252における第2の平行部分と同じ厚みになるように透明性樹脂を流入した後に、紫外線を照射し、透明性樹脂を硬化させる。このように、組立反射体254に流入された透明性樹脂を硬化させて、反射素子256を形成する。反射素子256は、本実施形態に係る光学結像素子20として機能する。
【0058】
上述した透明性樹脂としては、高密着性、高透明性、高透過率、低ヘイズ、耐薬品性、耐熱性および耐候性を兼ね備え、且つ追従性が良く、硬化後に粘着性が消失する樹脂であることが好ましい。さらに透明性樹脂の屈折率と、反射体を構成する透明材料の屈折率が同じになるように設計されていることが好ましい。具体的には、シリコン系、ウレタン系、アクリル系、メラミン系、エポキシ系、ポリエステル系、ユリア系、フェノール系等の樹脂を好適に用いることができる。なお、本樹脂の硬化方法としては、UV硬化、熱硬化や湿気硬化等、適宜樹脂に応じてかかる硬化方法選定すればよい。
【0059】
このように、本実施形態では、反射面を有する光透過性フィルムFを折り返し、反射面が平行になった第1の平行部分を複数有する第1反射体250と、第2の平行部分を有する第2反射体252とを形成する。これによって、第1反射体250及び第2反射体252の各々では、反射面が平行になった状態を容易に形成することができる。また、光透過性フィルムFの幅は狭く設定することが容易であり、幅が狭い反射面を備えた光透過性フィルムFを複数積層することも容易である。第1反射体250及び第2反射体252は、第1反射体250の反射面と第2反射体252の反射面とが交差するように配置する。これによって、反射面が交差した状態を容易に形成することができる。そして、第1反射体250の第1の平行部分及び第2反射体252の第2の平行部分に透明性樹脂を流入した後に、紫外線の照射により透明性樹脂を硬化させる。このようにすることによって、反射面が平行になった状態、及び反射面が交差した状態を維持しつつ、簡単な工程でかつ積層密度を向上させた光学結像素子20を得ることができる。
【0060】
なお、本実施形態では、固定治具230として、複数の移動板232の各々に、図示しない付勢手段により、ピン234が離間する方向に付勢力を与える一例を示した(
図6及び
図7)。この付勢力は、手動操作で与えるようにしてもよい。
【0061】
図10に、手動操作によりピン234へ付勢力を与える固定治具230の一例を示す。
図10に示すように、固定治具230は、ピン234が取り付けられる側の左右複数の移動板232の端部の各々が固定部237に各々固定される。固定部237には、操作棒238が取り付けられており、操作者による操作棒238の操作によって、ピン234が取り付けられた複数の移動板232が所定方向(矢印dR及び矢印dLで示す方向)に摺動可能とされる。
【0062】
また、本実施形態では、光透過性フィルムFを固定治具230の左右のピン234に折り返して巻きつけて、反射面が平行になる平行部分を複数形成する一例を示した。この場合、固定治具230における、移動板232の移動範囲(接近位置及び離間位置)を調整することで、反射面が平行になる平行部分を容易に複数形成することができる。
【0063】
図11に、固定治具230により光透過性フィルムFを折り返す状態を説明するための左右のピン234の初期位置の一例を模式的に示す。
図11に示すように、左右のピン234の各々の移動範囲の一部を重複させ、その重複された領域に光透過性フィルムFを通すようにする。つまり、移動板232の移動範囲における接近位置として、左右のピン234の各々の移動範囲が重複されて光透過性フィルムFを通すことが可能な位置を初期位置とする。このように初期値を設定することで、移動板232を初期位置から離間位置へ移動される際に、左右のピン234の各々が接近し、一列に並んだ後に離間する。従って、固定治具230の左右のピン234を、初期位置に設定した状態で、ピン234の間に、光透過性フィルムFを直線的に通し、その後に離間位置へ移動させることで、反射面が平行になる平行部分を複数形成することができる。
【0064】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態を説明する。第2実施形態は、第1実施形態と同様の構成であるため、同一部分は同一符号を付して詳細な説明を省略し、以下、相違部分を説明する。
【0065】
第1実施形態では、固定治具230を用いて光透過性フィルムFを折り返し、反射面が平行な平行部分を複数形成した第1反射体250及び第2反射体252を形成して、光学結像素子20を製造した。第2実施形態は、光透過性フィルムFと透明性を有する樹脂フィルムJ(以下、透明性樹脂フィルムJという)とを用いて、反射面が平行な平行部分を複数形成した第1反射体250及び第2反射体252を得るものである。次に、本実施形態に係る光学結像素子20を製造する工程を説明する。
【0066】
・光学結像素子の製造方法
次に、本実施形態に係る光学結像素子20の製造方法について説明する。
図12に、第2実施形態に係る光学結像素子20を製造する工程の流れの一例を示す。
図13に、第2実施形態に係る光学結像素子20の製造方法による製造過程で形成される積層体260の一例を示す。
図14に、積層体260から一部を切り出して切断積層体266を形成する一例を示す。
図15に、反射面が交差するように配置した複数の切断積層体266の一例を示す。
図16に、第2実施形態に係る光学結像素子を製造する工程により形成された光学結像素子20の一例を示す。
【0067】
まず、工程S120では、積層体260を形成する。
図13に示すように、積層体260は、基材264に光透過性フィルムFと、透明性樹脂フィルムJとを重ねて複数枚巻きかけることにより構成できる。つまり、表面及び裏面の少なくとも一方の面が反射面とされた光透過性フィルムFと、透明性樹脂フィルムJとを重ねた状態で、光透過性フィルムF及び透明性樹脂フィルムJが厚さ方向に交互に複数積層されるように、基材264に複数回巻きつけて積層体260を形成する。
基材264の材質は、張力を印加しながら、光透過性フィルムFと透明性樹脂フィルムJとを重ねて複数枚巻きかけたときに、張力を支え、撓んだり変形したりすることがないように、弾性率の高い、スレンレス合金(SUS))や、ハイス鋼、炭素鋼等が好適に用いられる。また、汎用の熱可塑性樹脂や汎用の熱硬化性樹脂、或いは汎用のエンジニアリングプラスチック等を用いることにより軽量化を図り、プロセス装置の省エネルギー化を図ることも可能である。
【0068】
具体的には、まず、光学結像素子20の一部を構成する反射面を含む光透過性フィルムFを形成する。光透過性フィルムFは、透明物質からなる一定幅の長尺状のテープの表面及び裏面の少なくとも一方の面に、金属の反射面が形成された光透過性テープを製造する。光透過性フィルムFは、第1実施形態と同様に、一定厚み(例えば0.5μm〜100μm)で、所定幅(例えば1.5mm)となるように形成する。次に、透明性樹脂フィルムJを形成する。透明性樹脂フィルムJは、光透過性フィルムFと同じ幅(例えば1.5mm)の長尺状の樹脂テープにより形成する。透明性樹脂フィルムJは、光透過性フィルムFの向き合う反射面に一定の間隔を有させるために、所定の厚み(例えば400μm)に設定される。これら光透過性フィルムF及び透明性樹脂フィルムJを重ね合わせて、重ね合わされた重畳フィルム262を、基材264に複数回巻きかけることにより積層体260を形成する。
【0069】
積層体260の形成に際して、基材264の形状は、断面が円形及び長方形状の何れでもよいが、光透過性フィルムF及び透明性樹脂フィルムJ(重畳フィルム262)が巻きかけられた際に、平面形状になるように基材264の形状を形成することが好ましい。本実施形態では、断面で対向する辺が所定長Ltで直線状に形成された基材264を用いている。このようにすることで、所定長Ltの長さに亘り、光透過性フィルムF及び透明性樹脂フィルムJ(重畳フィルム262)が平面形状となり、積層される光透過性フィルムFの反射面が所定長Ltの長さの間で平行になる。
【0070】
なお、積層体260を形成する場合、一定幅(例えば200mm)の光透過性テープと一定幅(例えば200mm)の樹脂テープとを重ねてから所定幅(例えば1.5mm)だけ切り出すことにより、光透過性フィルムF及び透明性樹脂フィルムJを重ねた状態で重畳フィルム262を製造してもよい。
【0071】
次に、工程122では、積層体260を、複数箇所で積層方向に切断して、複数の切断積層体266を形成する。つまり、工程120で形成された積層体260から一部を切り出すことによって、切断積層体266を複数形成する。
【0072】
具体的には、
図14に示すように、光透過性フィルムF及び透明性樹脂フィルムJ(重畳フィルム262)が基材264に複数回巻きかけられた積層体260を、所定長Lsで切断する。積層体260の切断に際しては、基材264に複数回巻きかけられた光透過性フィルムF及び透明性樹脂フィルムJが、切断後に分離しないように、光透過性フィルムF及び透明性樹脂フィルムJを仮止めすることが好ましい。本実施形態では、積層体260を切断する方法の一例として、切断時に、光透過性フィルムF及び透明性樹脂フィルムJの仮止めを可能にするレーザ溶着切断を用いている。レーザ溶着切断は、切断幅を微小にすることができると共に、切断面を溶融して、積層された光透過性フィルムF及び透明性樹脂フィルムJを溶着することができる。
図14に示す例では、レーザ溶着切断により、4つの切断積層体266を形成した場合を示す。このようにして、積層された光透過性フィルムFの反射面が平行になった平行部分が複数形成された切断積層体266を複数形成し、第1反射体250及び第2反射体252とする。
【0073】
例えば、光学結像素子20を構成する反射面を有する切断積層体266として、一辺が20cmの四角形状の切断積層体266を得るためには、光透過性フィルムFの厚さが50μmで、透明性樹脂フィルムJの厚さが400μmとした場合に、平面部分の長さ(所定長Lt)が20cm以上の基材264に、444回、光透過性フィルムF及び透明性樹脂フィルムJ(重畳フィルム262)を巻きつけ、所定長Ls(=20cm)で切断すればよい。
【0074】
次の工程S124では、1つの切断積層体266の積層端面と他の切断積層体266の積層端面とが近接又は当接し、1つの切断積層体266の反射面と他の切断積層体266の反射面とが交差する向きに、1つの切断積層体266と他の切断積層体266とを配置する。つまり、
図15に示すように、積層された光透過性フィルムFの反射面が平行になった切断積層体266である第1反射体250と、第2反射体252とを、近接又は当接して第1反射体250の反射面と第2反射体252の反射面とが交差するように配置する。
【0075】
次の工程では、配置された1つの切断積層体266(第1反射体250)と他の切断積層体266(第2反射体252)とに、透明性樹脂を含浸させた後に透明性樹脂を硬化させて、光学結像素子20を形成する。つまり、次の工程S126では、1つの切断積層体266(第1反射体250)及び他の切断積層体266(第2反射体252)に透明性樹脂を含浸させ、次の工程S128で、含浸させた透明性樹脂へ向けて紫外線を照射し、透明性樹脂を硬化させる。
図16に示すように、含浸された透明性樹脂を硬化された第1反射体250及び第2反射体252の組立体は、本実施形態に係る光学結像素子20として機能する。
【0076】
ところで、切断積層体266を扱う場合、枠体に切断積層体266を収容して第1反射体250及び第2反射体252を形成することによって、光学結像素子20を製造する工程における素子の取り扱いが容易の場合がある。そこで、切断積層体266を枠体268に収容して第1反射体250及び第2反射体252を形成することが好ましい。
【0077】
図17に、切断積層体266を枠体268に収容して第1反射体250(及び第2反射体252)を形成する工程の流れの一例を示す。
図17(A)は、複数積層された切断積層体266における光透過性フィルムF及び透明性樹脂フィルムJ(重畳フィルム262)の各々を示す。
図17(B)は、レーザ溶着切断により切断された光透過性フィルムF及び透明性樹脂フィルムJの各々が仮止めされた状態の切断積層体266を示す。
図17(C)は、枠体268に切断積層体266を収容し、第1反射体250(及び第2反射体252)を形成する状態を示す。
【0078】
図17に示すように、積層された光透過性フィルムF及び透明性樹脂フィルムJからなる切断積層体266を枠体268に収容し、第1反射体250(及び第2反射体252)を形成することにより、光透過性フィルムF及び透明性樹脂フィルムJの少なくとも一方に触れることなく、第1反射体250(及び第2反射体252)を取り扱うことができる。
【0079】
また、本実施形態では、レーザ溶着切断を用いて積層体260を切断する一例を説明したが、積層体260の切断はレーザ溶着切断に限定されるものではなく、切断のみでもよい。この場合、光透過性フィルムF及び透明性樹脂フィルムJが、切断後に分離しないように、光透過性フィルムF及び透明性樹脂フィルムJを仮止めすることが好ましい。例えば、光透過性フィルムF及び透明性樹脂フィルムJの各々における表裏何れかの面に粘着部材を塗布する。これにより、基材264に、光透過性フィルムF及び透明性樹脂フィルムJ(重畳フィルム262)を巻きかけることで、光透過性フィルムF及び透明性樹脂フィルムJ(重畳フィルム262)を仮止めすることができる。
図18に、粘着部材の塗布により光透過性フィルムF及び透明性樹脂フィルムJを仮止めする一例を示す。
図18に示す例では、光透過性フィルムF及び透明性樹脂フィルムJが仮止めされた重畳フィルム262の表裏何れかの面に粘着部材を塗布し粘着面を形成した状態を示している。
【0080】
このように、本実施形態では、反射面を有する光透過性フィルムFと透明性樹脂フィルムJを基材264に巻きかけて積層体260を形成する。この積層体260から切断積層体266を分離切断し、分離切断された切断積層体266によって、反射面が平行とされる第1反射体250及び第2反射体252を形成する。つまり、光透過性フィルムFと透明性樹脂フィルムJを基材264に巻きかけた積層体260から切断積層体266を分離切断するのみで、反射面が平行になった第1反射体250及び第2反射体252の各々を容易に形成することができる。第1反射体250及び第2反射体252は、第1反射体250の反射面と第2反射体252の反射面とが交差するように配置し、透明性樹脂を含浸した後に、紫外線の照射により透明性樹脂を硬化させる。このようにすることによって、反射面が平行になった状態、及び反射面が交差した状態を維持しつつ、簡単な工程でかつ積層密度を向上させた光学結像素子20を得ることができる。
【0081】
<第3実施形態>
次に、第3実施形態を説明する。第3実施形態は、第1実施形態と同様の構成であるため、同一部分は同一符号を付して詳細な説明を省略し、以下、相違部分を説明する。
【0082】
第1実施形態では、固定治具230を用いて光透過性フィルムFを折り返し、反射面が平行な平行部分を複数形成した第1反射体250及び第2反射体252を形成して、光学結像素子20を製造した。第3実施形態は、光透過性フィルムFから所定の大きさに切断された光透過性カット片Fpを用いて、第1反射体250及び第2反射体252を形成し光学結像素子20を製造するものである。次に、本実施形態に係る光学結像素子20を製造する工程を説明する。
【0083】
・光学結像素子の製造方法
次に、本実施形態に係る光学結像素子20の製造方法について説明する。
図19に、第3実施形態に係る光学結像素子20を製造する工程の流れの一例を示す。
まず、工程S140では、光学結像素子20の一部を構成する反射面を含む光透過性カット片Fpを複数形成する。光透過性カット片Fpは、第1実施形態と同様に、一定厚み(例えば0.5μm〜100μm)で所定幅(例えば1.5mm)の光透過性フィルムFを形成し、この光透過性フィルムFを所定の長さ(例えば200mm)で切断することにより製造する。
【0084】
次の工程S142では、工程S140で形成された複数の光透過性カット片Fpを用いて、反射面が平行になった第1の平行部分を複数形成する。複数の第1の平行部分は、固定治具270を用いて光透過性カット片Fpが仮固定された状態の第1反射体250を製造することにより形成することができる。次に、固定治具270を用いて第1反射体250を製造する工程を説明する。
【0085】
図20に、固定治具270の一例を示す。
固定治具270は、光透過性カット片Fpを固定する四角柱形状の固定パーツ271を、挟み込むガイド272を備えている。ガイド272は、固定パーツ271を挟み込むように固定パーツ271に対して一対形成されており、一対のガイド272の間に溝部273が形成される。一対のガイド272は、光透過性カット片Fpの両端を固定するために、光透過性カット片Fpの長さに応じた距離を隔てて配置される。また、距離を隔てて配置された一対のガイド272の組は、各々の溝方向が平行になるように配置される。ガイド272の両端部には、四角柱形状の固定バー274が配置される。固定バー274は、光透過性カット片Fpの長さ以上の長さに形成される。なお、
図20では、ガイド272の一方の端部に固定バー274を配置した例を示す。
【0086】
これら固定治具270の固定パーツ271、ガイド272、溝部273及び固定バー274を用いて第1反射体250を製造する。まず、ガイド272の溝部273に固定パーツ271を挿入し、挿入された固定パーツ271をガイド272の一方側に配置された固定バー274に当接して配置する。次に、光透過性カット片Fpの両端部を、固定バー274に当接した逆側の面に取り付ける。次に、光透過性カット片Fpを挟み込むように次の固定パーツ271を配置する。そして、光透過性カット片Fpの両端部を固定パーツ271に取り付けて次の固定パーツ271を配置する。固定パーツ271の配置及び光透過性カット片Fpの取り付けを繰り返し、ガイド272の他方側に配置された固定パーツ271に固定バー274を配置する。
【0087】
距離を隔てて配置された一対のガイド272の組は、図示しない付勢部により、離間する方向に付勢力が与えられるようになっている。つまり、光透過性カット片Fpの両端部が固定パーツ271で挟み込まれた状態で、ガイド272の組を離間方向に付勢力を与えることにより、光透過性カット片Fpにテンションが与えられ、光透過性カット片Fpに平面部を形成することができる。従って、光透過性カット片Fpにテンションが与えられ、光透過性カット片Fpに平面部が形成された状態で、最外縁の固定パーツ271に固定バー274を取り付け、固定パーツ271及び固定バー274を仮固定する。
【0088】
つまり、
図21(A)に示すように、光透過性カット片Fpには、長手方向(矢印dXに沿う方向)に所定のテンションが与えられて、複数の光透過性カット片Fpにより複数の平面部分が形成される。また、固定パーツ271の厚さは同じに設定されるので、複数の光透過性カット片Fpの向き合う平面部分が平行となり、光透過性カット片Fpに形成された反射面が平行になる第1の平行部分が複数形成される。光透過性カット片Fpで第1の平行部分が複数形成された状態で、接着剤を塗布して光透過性カット片Fpを固定パーツ271及び固定バー274に仮固定する。このようにして、
図21(B)に示すように、第1反射体250を製造する。
【0089】
次に、
図19に示す工程S144では、工程S142と同様に、工程S140で形成された光透過性カット片Fpを、固定パーツ271及び固定バー274を用いて反射面が平行になった第2の平行部分を形成する。つまり、固定治具270を用いて、光透過性カット片Fpを固定パーツ271及び固定バー274に仮固定することで、第2反射体252を得る。また、工程S144では、第1の平行部分が形成された第1反射体250と、第2の平行部分が形成された第2反射体252と、を近接又は当接して第1反射体250の反射面と第2反射体252の反射面とが交差するように配置する。
【0090】
次の工程S146では、第1反射体250における第1の平行部分及び第2反射体252における第2の平行部分に透明性樹脂を流入し、次の工程S108で、流入した透明性樹脂へ向けて紫外線を照射し、透明性樹脂を硬化させる。このように、流入された透明性樹脂を硬化された第1反射体250及び第2反射体252の組立体は、本実施形態に係る光学結像素子20として機能する。
【0091】
このように、本実施形態では、反射面を有する光透過性フィルムFから光透過性カット片Fpを形成し、反射面が平行になった第1の平行部分を複数有する第1反射体250と、第2の平行部分を有する第2反射体252とを形成する。このように、予め形成した複数の光透過性カット片Fpによって反射面が平行でかつ、第1反射体250の反射面と第2反射体252の反射面とが交差した状態の組立体を容易に形成することができる。そして、組立体に透明性樹脂を流入した後に、紫外線の照射により透明性樹脂を硬化させる。このようにすることによって、反射面が平行になった状態、及び反射面が交差した状態を維持しつつ、簡単な工程でかつ積層密度を向上させた光学結像素子20を得ることができる。
【0092】
<第4実施形態>
次に、第4実施形態を説明する。第4実施形態は、前記実施形態と同様の構成であるため、同一部分は同一符号を付して詳細な説明を省略し、以下、相違部分を説明する。
【0093】
第3実施形態では、固定治具270を用いて複数の光透過性カット片Fpから、反射面が平行な平行部分を複数形成した第1反射体250及び第2反射体252を形成して、光学結像素子20を製造した。このように複数の光透過性カット片Fpを用いて光学結像素子20を製造する場合、複数の光透過性カット片Fpにより反射面が平行になった平行部分に透明性樹脂のカット片を備えて第1反射体250及び第2反射体252を形成することが可能である。そこで、一例として、第4実施形態では、光透過性フィルムFから形成した光透過性カット片Fpと透明性樹脂フィルムJから形成した透明性樹脂カット片Jpを積層してカット片積層体を形成して反射面が平行になった第1反射体250及び第2反射体252の各々を用いて光学結像素子20を製造するものである。次に、本実施形態に係る光学結像素子20を製造する工程を説明する。
【0094】
・光学結像素子の製造方法
次に、本実施形態に係る光学結像素子20の製造方法について説明する。
図22に、第4実施形態に係る光学結像素子20を製造する工程の流れの一例を示す。
まず、工程S160では、第3実施形態と同様に、光学結像素子20の一部を構成する反射面を含む光透過性カット片Fpを複数形成する。また、工程S160では、所定の厚み(例えば400μm)の透明性樹脂フィルムJから透明性樹脂カット片Jpを複数形成する。透明性樹脂カット片Jpは、厚さは相違するが光透過性カット片Fpと縦横同じ形状に形成される。
【0095】
次の工程S162では、工程S160で形成された複数の光透過性カット片Fp及び複数の透明性樹脂カット片Jpを用いて、反射面が平行になった積層体を形成する。つまり、表面及び裏面の少なくとも一方の面が反射面とされた光透過性カット片Fp及び透明性樹脂カット片Jpを厚さ方向に交互に複数積層して、カット片積層体を(切断積層体266として)複数形成する。複数形成されたカット片積層体を、第1反射体250及び第2反射体252として用いる。
【0096】
なお、カット片積層体を形成する場合、光透過性カット片Fp及び透明性樹脂カット片Jpが平面形状になるように、例えば
図20に示す固定治具270を用いて、光透過性カット片Fp及び透明性樹脂カット片Jpの長手方向に所定のテンションを与えて、複数の光透過性カット片Fp及び透明性樹脂カット片Jpに複数の平面部分を形成させることが好ましい。
【0097】
次の工程S164では、1つのカット片積層体の積層端面と他のカット片積層体の積層端面とが近接又は当接し、1つのカット片積層体の反射面と他のカット片積層体の反射面とが交差する向きに、1つのカット片積層体と他のカット片積層体とを配置する。つまり、積層された光透過性カット片Fpの反射面が平行になったカット片積層体である第1反射体250と、第2反射体252とを、近接又は当接して第1反射体250の反射面と第2反射体252の反射面とが交差するように配置する。
【0098】
次の工程では、配置された1つのカット片積層体(第1反射体250)と他のカット片積層体(第2反射体252)とに、透明性樹脂を含浸させた後に透明性樹脂を硬化させて、光学結像素子20を形成する。つまり、次の工程S166では、1つのカット片積層体(第1反射体250)及び他のカット片積層体(第2反射体252)に透明性樹脂を含浸させ、次の工程S168で、含浸させた透明性樹脂へ向けて紫外線を照射し、透明性樹脂を硬化させる。含浸された透明性樹脂を硬化された第1反射体250及び第2反射体252の組立体は、本実施形態に係る光学結像素子20として機能する。
【0099】
このように、本実施形態では、反射面を有する光透過性フィルムFから光透過性カット片Fpを複数形成し、また透明性樹脂フィルムJから透明性樹脂カット片Jpを複数形成して、形成された光透過性カット片Fp及び複数の透明性樹脂カット片Jpを交互に積層してカット片積層体を形成する。カット片積層体は、複数の反射面が平行に形成された第1反射体250及び第2反射体252として用いることができる。従って、複数の光透過性カット片Fp及び複数の透明性樹脂カット片Jpを交互に積層することによって反射面が平行でかつ、第1反射体250の反射面と第2反射体252の反射面とが交差した状態の組立体を容易に形成することができる。そして、組立体に透明性樹脂を流入した後に、紫外線の照射により透明性樹脂を硬化させる。このようにすることによって、反射面が平行になった状態、及び反射面が交差した状態を維持しつつ、簡単な工程でかつ積層密度を向上させた光学結像素子20を得ることができる。
【0100】
なお、本実施の形態で説明した、立体像形成システム10、光学結像素子20、立体像再生装置30、固定治具230及び固定治具270等の構成等は一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において状況に応じて変更されることは言うまでもない。