【実施例】
【0065】
以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0066】
<抽出物A中のシトラール含有割合の測定方法>
(測定手順)
10mLメスフラスコに製造例1〜7、9〜15の抽出物A500mgを量り込み、蓋をしてよく振り混ぜた後、希釈溶剤(水/アセトニトリル=1/1(vol/vol))でメスアップした。得られた各サンプル溶液10μLを下記の高速液体クロマトグラフィーに注入して分析を行った。各サンプルにおけるシトラールのエリア面積(シス体のZ−シトラール、トランス体のE−シトラールの合計エリア面積)を、下記のシトラール標準溶液[濃度:190mg/L]が同条件で示すシトラールのエリア面積と比較して各サンプルに含まれるシトラール含有割合を算出した。
【0067】
(高速液体クロマトグラフィー条件)
分析機器:高速液体クロマトグラフィー(島津製作所 LC−20AD)
カラム:ナカライテスク COSMOSIL 5C18−AR−II 4.6φ×250mm
カラム温度:40℃
流速:1.0mL/分
検出波長:UV検出器 235nm
分析時間:20分
移動相:水/アセトニトリル=1/1(vol/vol)
注入量:10μL
希釈溶剤:水/アセトニトリル=1/1(vol/vol)
(シトラール標準溶液の調製)
50mLメスフラスコにシトラール100mgを量り込み、アセトニトリルで希釈し、メスアップした(A液)。別の50mLメスフラスコにA液5mLを量り込み、希釈溶剤(水/アセトニトリル=1/1(vol/vol))で希釈し、メスアップし、シトラール標準溶液[濃度:190mg/L]を得た。
【0068】
<抽出物Aおよび抽出物BのBrixの測定方法>
Brixの測定には株式会社アタゴ製のPR−201α(測定範囲0.0〜60.0%)又はPR−301α(測定範囲45.0〜90.0%)を使用した。また、サンプルの測定は自動温度補正が適応される20℃前後で実施した(PR−201α、PR−301α共に5〜40℃の間で自動温度補正)。Brixのゼロ点補正については、PR−201αは蒸留水、PR−301αは付属品の標準液を用いて行った。
【0069】
(溶媒込みの抽出物のBrix測定)
抽出物Aまたは抽出物Bを直接Brix計のプリズム面に少量滴下し、Brixを測定した。
【0070】
(抽出物に含まれている溶媒のBrix測定)
抽出物Aまたは抽出物Bに含まれている溶媒と同組成の溶媒を新たに調製し、その溶媒をBrix計のプリズム面に少量添加し、Brixを測定した。
【0071】
(抽出物のBrix算出)
上記の抽出物Aまたは抽出物Bを直接Brix計で測定したBrixから、抽出物Aまたは抽出物Bに含まれている溶媒と同組成の溶媒のBrixを減算し、これを抽出物Aまたは抽出物BのBrixとした。
【0072】
<シトラール含有飲料の官能評価方法>
実施例及び比較例で作製したシトラール含有飲料を、熟練した10名のパネラーが試飲し、シトラールの劣化臭を評価した。その際の評価基準は以下の通りである。各パネラーが採点した評価点の平均値を各表に掲載した。
5点:劣化臭が全く感じられない(抽出物A及び抽出物Bを添加せず、食品中のシトラール含有量が同量になるようにシトラールを添加して調製した以外は同一配合の飲料を作製した直後に感じられる風味と同等)。
4点:劣化臭がほとんど感じられない(5点の飲料と3点の飲料を1:1の重量比で混合して得た飲料の風味と同等)。
3点:劣化臭がやや感じられる(前述した同一配合の飲料を55℃で3日間保存した後に感じられる風味と同等)。
2点:劣化臭が感じられる(3点の飲料と1点の飲料を1:1の重量比で混合して得た飲料の風味と同等)。
1点:劣化臭が強く感じられる(前述した同一配合の飲料を55℃で7日間保存した後に感じられる風味と同等)。
【0073】
(製造例1)抽出物Aの作製
表1に示す配合に従い、レモンマートルの葉1重量部に水6重量部を加え、0.18MPaに加圧して40℃で30分間保持した後、固形分を除いてから水で希釈して、抽出物Aを得た。得られた抽出物AのBrixは2.7%、シトラール含有割合は0.03重量%であった。
【0074】
【表1】
【0075】
(製造例2)抽出物Aの作製
表1に示す配合に従い、レモンマートルの葉1重量部に、含水率が80重量%のエタノール6重量部を加え、0.18MPaに加圧して40℃で30分間保持した後、固形分を除いてから水で希釈して、抽出物Aを得た。得られた抽出物AのBrixは2.6%、シトラール含有割合は0.18重量%であった。
【0076】
(製造例3)抽出物Aの作製
表1に示す配合に従い、レモンマートルの葉1重量部に、含水率が重量60%のエタノール6重量部を加え、0.18MPaに加圧して40℃で30分間保持した後、固形分を除いてから水で希釈して、抽出物Aを得た。得られた抽出物AのBrixは2.5%、シトラール含有割合は0.33重量%であった。
【0077】
(製造例4)抽出物Aの作製
表1に示す配合に従い、レモンマートルの葉1重量部に、含水率が50重量%のエタノール6重量部を加え、0.18MPaに加圧して40℃で30分間保持した後、固形分を除いてから水で希釈して、抽出物Aを得た。得られた抽出物AのBrixは2.4%、シトラール含有割合は0.38重量%であった。
【0078】
(製造例5)抽出物Aの作製
表1に示す配合に従い、レモンマートルの葉1重量部に、含水率が45重量%のエタノール6重量部を加え、0.18MPaに加圧して40℃で30分間保持した後、固形分を除いてから水で希釈して、抽出物Aを得た。得られた抽出物AのBrixは2.2%、シトラール含有割合は0.41重量%であった。
【0079】
(製造例6)抽出物Aの作製
表1に示す配合に従い、レモンマートルの葉1重量部に、含水率が40重量%のエタノール6重量部を加え、0.18MPaに加圧して40℃で30分間保持した後、固形分を除いてから水で希釈して、抽出物Aを得た。得られた抽出物AのBrixは2.1%、シトラール含有割合は0.44重量%であった。
【0080】
(製造例7)抽出物Aの作製
表1に示す配合に従い、レモンマートルの葉1重量部に、含水率が0.5重量%のエタノール6重量部を加え、0.18MPaに加圧して40℃で30分間保持した後、固形分を除いてから水で希釈して、抽出物Aを得た。得られた抽出物AのBrixは1.7%、シトラール含有割合は0.48重量%であった。
【0081】
(製造例8)抽出物Bの作製
ヤマモモの樹皮1重量部にメタノール10重量部を加え60℃で5時間保持した後、濾過して抽出し、減圧乾燥により乾燥粉末を得た。得られた乾燥粉末1重量部を水20重量部で懸濁した後、濾過し、再度減圧乾燥によりヤマモモ乾燥粉末を得た。
【0082】
0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)5重量部に乳糖12.5重量部を加えて溶解させ、これに、ヤマモモ乾燥粉末1重量部とβ-ガラクトシダーゼ(酵素力価20,000)0.05重量部を含むジメチルスルホキシド液5重量部を加え、60℃で4時間撹拌した。反応終了物1重量部を水50重量部で希釈し、スチレン−ジビニールベンゼン共重合体からなるポーラスポリマー35重量部を充填したカラムに通液し、次いで水250重量部を通液した。次いで、40%(v/v)メタノール100重量部を通液して吸着物を溶出し、これを乾燥させた後、乾燥粉末3重量部にエタノール50重量部、グリセリン47重量部を加えて溶解させ、抽出物Bを得た。得られた抽出物BのBrixは2.6%であった。
【0083】
(製造例9)抽出物Aの作製
表1に示す配合に従い、レモンマートルの葉1重量部に、含水率が80重量%のプロピレングリコール10重量部を加え、0.18MPaに加圧して40℃で30分間保持した後、固形分を除いて抽出物Aを得た。得られた抽出物AのBrixは2.2%、シトラール含有割合は0.05重量%であった。
【0084】
(製造例10)抽出物Aの作製
表1に示す配合に従い、レモンマートルの葉1重量部に、含水率が60重量%のプロピレングリコール10重量部を加え、0.18MPaに加圧して40℃で30分間保持した後、固形分を除いて抽出物Aを得た。得られた抽出物AのBrixは1.5%、シトラール含有割合は0.1重量%であった。
【0085】
(製造例11)抽出物Aの作製
表1に示す配合に従い、レモンマートルの葉1重量部に、含水率が50重量%のプロピレングリコール10重量部を加え、0.18MPaに加圧して40℃で30分間保持した後、固形分を除いて抽出物Aを得た。得られた抽出物AのBrixは1.3%、シトラール含有割合は0.15重量%であった。
【0086】
(製造例12)抽出物Aの作製
表1に示す配合に従い、レモンマートルの葉1重量部に、含水率が80重量%のグリセリン10重量部を加え、0.18MPaに加圧して40℃で30分間保持した後、固形分を除いて抽出物Aを得た。得られた抽出物AのBrixは2.1%、シトラール含有割合は0.03重量%であった。
【0087】
(製造例13)抽出物Aの作製
表1に示す配合に従い、レモンマートルの葉1重量部に、含水率が60重量%のグリセリン10重量部を加え、0.18MPaに加圧して40℃で30分間保持した後、固形分を除いて抽出物Aを得た。得られた抽出物AのBrixは1.5%、シトラール含有割合は0.03重量%であった。
【0088】
(製造例14)抽出物Aの作製
表1に示す配合に従い、レモンマートルの葉1重量部に、含水率が50重量%のグリセリン10重量部を加え、0.18MPaに加圧して40℃で30分間保持した後、固形分を除いて抽出物Aを得た。得られた抽出物AのBrixは1.4%、シトラール含有割合は0.03重量%であった。
【0089】
(製造例15)抽出物Aの作製
表1に示す配合に従い、レモンマートルの葉1重量部に、含水率が95重量%のトリアセチン10重量部を加え、0.18MPaに加圧して40℃で30分間保持した後、固形分を除いて抽出物Aを得た。得られた抽出物AのBrixは1.9%、シトラール含有割合は0.04重量%であった。
【0090】
<レモンマートル抽出物(抽出物A)における含水エタノールの含水率とシトラールの劣化抑制効果の関係>
抽出物Aにおける含水エタノールの含水率がシトラール劣化抑制効果に与える影響を明らかにするために以下の試験を実施した。
(実施例1)シトラール含有飲料の作製
表2に示す配合に従い、シトラール含有飲料を作製した。即ち、ショ糖7.48重量部、クエン酸0.2重量部、クエン酸三ナトリウム二水和物0.04重量部、水92.0725重量部の混合物を90℃で10分間殺菌し、5℃まで冷却した後、クリーンベンチ内でシトラール0.00075重量部、抽出物A(製造例1)0.1重量部及び抽出物B(製造例8)0.1重量部を添加して、シトラール含有飲料を得た。得られたシトラール含有飲料は遮光して55℃で7日間保存した後、上述した手法により風味を評価し、その結果を表2に示した。
【0091】
(実施例2〜4、比較例1〜3)シトラール含有飲料の作製
表2に示す配合に従い、製造例1の抽出物Aに代えて、飲料中のP値及びQ値がほぼ同じになるように製造例2〜7の抽出物Aを添加し、飲料中のシトラール含有量が同じになるようにシトラールの配合量を調整し、全体量を水で調整した以外は、実施例1と同様にシトラール含有飲料を作製し、風味を評価して、その結果を表2に示した。
【0092】
【表2】
【0093】
表2中、液状食品中のシトラール含有量は、シトラールの配合量(純分)と、抽出物Aに含まれるシトラール量(抽出物Aの配合量×抽出物A中のシトラール含有割合)とを合計した量である。以下の表でも同様である。
1)和光純薬工業株式会社製「スクロース」
2)和光純薬工業株式会社製「クエン酸」
3)和光純薬工業株式会社製「くえん酸三ナトリウム二水和物」
4)和光純薬工業株式会社製「シトラール(cis-,trans-混合物)」(純度95%)
【0094】
表2から明らかなように、55℃で7日間保存後の風味評価において、水、又は、含水率が50重量%以上のエタノールを使用して抽出した抽出物Aと抽出物Bとを配合した実施例1〜4に顕著なシトラールの劣化抑制効果が見られ、特に水を使用して抽出した抽出物Aと抽出物Bとを配合した実施例1が最も効果が高かった。抽出物Aの抽出に用いる有機溶媒の含水率の高さがシトラール劣化抑制効果の向上に寄与していることは明らかである。
【0095】
<レモンマートル抽出物(抽出物A)における含水有機溶媒の種類とシトラールの劣化抑制効果の関係>
抽出物Aにおける含水有機溶媒の種類がシトラール劣化抑制効果に与える影響を明らかにするために以下の試験を実施した。
(実施例5〜11)シトラール含有飲料の作製
表3に示す配合に従い、製造例1の抽出物Aに代えて、飲料中のP値及びQ値がほぼ同じになるように製造例9〜15の抽出物Aを添加し、飲料中のシトラール含有量が同じになるようにシトラールの配合量を調整し、全体量を水で調整した以外は、実施例1と同様にシトラール含有飲料を作製し、風味を評価して、その結果を表3に示した。
【0096】
【表3】
【0097】
表3から明らかなように、55℃で7日間保存後の風味評価において、含水率が50重量%以上のプロピレングリコールを使用して抽出した抽出物Aと抽出物Bとを配合した実施例5〜7に顕著なシトラールの劣化抑制効果が見られ、特に含水率の高いプロピレングリコールで抽出した抽出物Aほど効果が高かった。
また、含水率が50重量%以上のグリセリンを使用して抽出した抽出物Aと抽出物Bとを配合した実施例8〜10にシトラールの劣化抑制効果が見られた。
更に、含水率が95重量%のトリアセチンを使用して抽出した抽出物Aと抽出物Bとを配合した実施例11にシトラールの劣化抑制効果が見られた。
【0098】
<レモンマートル抽出物(抽出物A)とヤマモモ抽出物(抽出物B)の比率とシトラール劣化抑制効果の関係>
シトラールの劣化抑制効果が高まる、抽出物Aと抽出物Bの混合比率を明らかにするため以下の試験を実施した。
【0099】
(実施例12〜16、比較例4〜5)シトラール含有飲料の作製
表4に示す配合に従い、飲料中のQ値がほぼ同じになるように製造例1の抽出物Aと製造例8の抽出物Bの合計添加量を0.2重量部に固定しつつ両抽出物の比率を変え、飲料中のシトラール含有量が同じになるようにシトラールの配合量を調整し、全体量を水で調整した以外は、実施例1と同様にシトラール含有飲料を作製し、風味を評価して、その結果を表4に示した。
【0100】
(参考例1)シトラール含有飲料の作製
表4に示す配合に従い、製造例1の抽出物Aと製造例8の抽出物Bを添加せず、飲料中のシトラール含有量が同じになるようにシトラールの配合量を調整し、全体量を水で調整した以外は、実施例1と同様にシトラール含有飲料を作製し、風味を評価して、その結果を表4に示した。
【0101】
【表4】
【0102】
表4の風味評価から明らかなように、P値が0.4〜55の範囲内にある実施例1、実施例12−16の飲料は劣化臭をほとんど感じず、対して比較例4、5の飲料は劣化臭をやや感じた。参考例1は、シトラール含有飲料の官能評価方法の基準点(1点)であり、抽出物A、抽出物Bを添加せずに55℃で7日間保存すると劣化臭が強く感じられることが確認された。
【0103】
以上の結果から、抽出物Aに含まれる有効成分と抽出物Bに含まれる有効成分との比率を示す指標となるP値を0.4〜55に調整することでシトラールの劣化を抑制できることが明らかになった。
【0104】
<レモンマートル抽出物(抽出物A)とヤマモモ抽出物(抽出物B)の添加量とシトラール劣化抑制効果の関係>
シトラールの劣化抑制効果が十分に感じられる添加量を明らかにするため、以下の試験を実施した。
【0105】
(実施例17〜22、比較例6)シトラール含有飲料の作製
表5に示す配合に従い、飲料中のP値がほぼ同じになるように製造例1の抽出物Aと製造例8の抽出物Bの比率を1:1に固定しつつ両抽出物の添加量を変え、飲料中のシトラール含有量が同じになるようにシトラールの配合量を調整し、全体量を水で調整した以外は、実施例1と同様にシトラール含有飲料を作製し、風味を評価して、その結果を表5に示した。
【0106】
【表5】
【0107】
表5の風味評価から明らかなように、Q値が7〜3600の範囲内にある実施例1、実施例17〜22の飲料は劣化臭をほとんど感じず、対して比較例6の飲料は劣化臭を感じた。
【0108】
以上の結果から、抽出物Aと抽出物Bに含まれる有効成分の合計量を示す指標となるQ値を7〜3600に調整することでシトラールの劣化を抑制できることが明らかとなった。
【0109】
<飲料中のシトラール量とシトラール劣化抑制効果の関係>
飲料中のシトラール量が、抽出物Aと抽出物Bのシトラール劣化抑制効果に影響しないことを明らかにするため、以下の試験を実施した。
【0110】
(実施例23〜26)シトラール含有飲料の作製
表6に示す配合に従い、飲料中のP値がほぼ同じになるように製造例1の抽出物Aと製造例8の抽出物Bの比率を1:1に固定し、シトラールの添加量を変えて全体量を水で調整した以外は、実施例1と同様にシトラール含有飲料を作製し、風味を評価して、その結果を表6に示した。
【0111】
【表6】
【0112】
表6の風味評価から明らかなように、シトラール含有量が0.0075〜15ppmの範囲内にある実施例1、実施例23−26の飲料は劣化臭をほとんど感じなかった。
【0113】
以上の結果から、飲料中のシトラール量に関わらず、表5の結果と同様に、抽出物Aと抽出物Bに含まれる有効成分の合計量を示す指標となるQ値を7〜3600に調整することでシトラールの劣化を抑制できることが明らかとなった。
【0114】
レモンマートル抽出物(抽出物A)のみ、ヤマモモ抽出物(抽出物B)のみ、又は、P値が1.04となるように1:1の比率で混合した抽出物Aと抽出物Bの混合物におけるシトラール劣化抑制効果の違いを明らかにするために試験を実施した。
【0115】
<レモンマートル抽出物(抽出物A)のみのシトラール劣化抑制効果>
抽出物Aのみでシトラールの劣化をどれだけ抑制できるのか明らかにするために以下の試験を実施した。
【0116】
(比較例7〜17)シトラール含有飲料の作製
表7に示す配合に従い、製造例8の抽出物Bを添加せず、製造例1の抽出物Aの添加量を変え、飲料中のシトラール含有量が同じになるようにシトラールの配合量を調整し、全体量を水で調整した以外は、実施例1と同様にシトラール含有飲料を作製し、風味を評価して、その結果を表7に示した。
【0117】
【表7】
【0118】
表7から明らかなように、Q値が363以上になるように製造例1の抽出物Aを添加しても、シトラールの劣化抑制効果は頭打ちとなり、しかも、官能評価点は3.3点であり劣化臭をやや感じた(比較例15−17)。Q値が182以下になると徐々にシトラール劣化抑制効果が弱まり(比較例7−14)、Q値が3.6(添加量0.001%)になると官能評価点は1.3まで低下し、劣化臭を強く感じた(比較例7)。
【0119】
<ヤマモモ抽出物(抽出物B)のみのシトラール劣化抑制効果>
抽出物Bのみでシトラールの劣化をどれだけ抑制できるのか明らかにするために以下の試験を実施した。
【0120】
(比較例18〜28)シトラール含有飲料の作製
表8に示す配合に従い、製造例1の抽出物Aを添加せず、製造例8の抽出物Bの添加量を変え、飲料中のシトラール含有量が同じになるようにシトラールの配合量を調整し、全体量を水で調整した以外は、実施例1と同様にシトラール含有飲料を作製し、風味を評価して、その結果を表8に示した。
【0121】
【表8】
【0122】
表8から明らかなように、Q値が350以上になるように製造例8の抽出物Bを添加しても、シトラールの劣化抑制効果は頭打ちとなり、しかも、官能評価点は2.0点であり、劣化臭を感じた(比較例26−28)。Q値が175以下になると徐々にシトラール劣化抑制効果が弱まり、Q値が35.1になると官能評価点は1.0まで低下した(比較例23−25)。Q値が35.1以下の場合は、官能評価点は1.0となり、劣化臭を強く感じた(比較例18−23)。
【0123】
表7、8の結果から、製造例1の抽出物A又は製造例8の抽出物Bを単独でシトラール含有飲料に添加しても十分なシトラール劣化抑制効果を得られないことが明らかとなった。
【0124】
<P値が1.04となるように1:1の比率で混合した抽出物Aと抽出物Bの混合物におけるシトラール劣化抑制効果>
製造例1の抽出物Aと製造例8の抽出物BをP値が1.04になるように混合したシトラール含有飲料は、Q値が7以上で官能評価点が3.5以上の高い値となり、シトラールの劣化臭をほとんど感じなかった(実施例1、17−22)。
【0125】
特に実施例1、20−22は官能評価点が4.0以上の高い値となり、抽出物Aまたは抽出物Bの単独添加ではなし得なかった、強いシトラールの劣化抑制効果を確認した。
【0126】
図1では、実施例1、17−22(P値1.04)、実施例12(P値0.45)、実施例16(P値50.9)、比較例7〜17(抽出物Aのみ)、比較例18〜28(抽出物Bのみ)に関して、Q値と官能評価結果との関係を示している。この図より、各実施例が各比較例より優れた官能評価を示すことが明らかである。