特許第6726579号(P6726579)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6726579
(24)【登録日】2020年7月1日
(45)【発行日】2020年7月22日
(54)【発明の名称】工作機械
(51)【国際特許分類】
   B23Q 17/00 20060101AFI20200713BHJP
   B23Q 15/12 20060101ALI20200713BHJP
   G05B 19/18 20060101ALI20200713BHJP
   B23Q 17/09 20060101ALI20200713BHJP
   B23Q 17/12 20060101ALI20200713BHJP
【FI】
   B23Q17/00 Z
   B23Q15/12
   G05B19/18 W
   B23Q17/09 A
   B23Q17/12
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-179834(P2016-179834)
(22)【出願日】2016年9月14日
(65)【公開番号】特開2018-43317(P2018-43317A)
(43)【公開日】2018年3月22日
【審査請求日】2019年5月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000149066
【氏名又は名称】オークマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】田中 貴暁
【審査官】 村上 哲
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−050492(JP,A)
【文献】 特開平10−301578(JP,A)
【文献】 特開平07−219560(JP,A)
【文献】 実開平06−004797(JP,U)
【文献】 特開平01−235863(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/137891(WO,A1)
【文献】 特開2005−074545(JP,A)
【文献】 特開平02−160454(JP,A)
【文献】 特開2007−105809(JP,A)
【文献】 特開2010−089227(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 17/00
B23Q 15/00
G05B 19/18
G10K 11/16
WPI
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具又は被切削材が装着される回転軸を備えた回転軸装置と、前記回転軸装置に取り付けられ、前記回転軸の回転に同期して前記回転軸装置に周期的に発生する現象に係る情報を取得するセンサと、前記回転軸装置の動作を制御するとともに、前記センサを介して前記情報を取得する制御装置とを備えた工作機械であって、
前記制御装置は、前記回転軸を回転させての加工時に、当該加工が、加工状態に関して変化のない定常状態にあるか否かを判別しており、
予め設定される前記被切削材の形状に係る情報と、前記工具の前記被切削材に対する相対的な動作経路と、現在の指令座標とから前記被切削材への切り込み量を算出し、その切り込み量が一定であることをもって前記定常状態であると判別するとともに、
前記定常状態にあると、所定のサンプリング周期で前記センサを介して前記情報を取得するとともに、取得した前記情報と前記回転軸の回転位相とを関連づけ、前記回転軸の複数回の回転にわたって取得した前記情報をもとに、前記現象の1周期分の変化を求めることを特徴とする工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば工具又はワークを回転させながら加工するための回転軸装置を備えた工作機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、回転軸を回転させながら加工を行う工作機械において、工作機械自体の状態診断や加工診断を行うにあたっては、動作中の振動や駆動力等を測定し、その測定結果にもとづいて診断を行うことが一般的となっている。たとえば、回転軸に工具を装着し、ワークに対して切削加工を行う場合、切削加工中の回転軸の駆動力を測定することによって、切削量の同定を行ったり、切削工具の状態を検出したりすることができる。
【0003】
また、特許文献1に記載の発明では、加工対象の形状データ及び加工パスから求められる切削体積と被切削材の材質とにもとづいて切削時に発生する駆動力を算出し、算出した駆動力と実測した駆動力とを比較することにより、異常な加工を検出するようになっている。
さらに、特許文献2に記載の発明では、繰り返し加工を行う場合に、前回の正常な加工を行った際の駆動力と、今回の加工において実測した駆動力とを比較することにより、異常な加工を検出するようになっている。
加えて、近年では、回転軸の駆動力の他、工作機械の各部に振動センサやAEセンサを取り付けたり、変位センサを採用したりすることによって、工作機械上で発生する現象を一層明確に測定しようとする試みがなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−126956号公報
【特許文献2】特開2012−254499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の方法において、回転軸の駆動や切削を行う周期、軸受やガイド部品固有の振動周期等といった所望の現象の変化を検出するためには、非常に短いサンプリング周期で測定する必要がある。たとえば、切削刃が6枚の回転工具を用いた切削時における1刃毎の駆動力の変化を測定しようとすると、回転速度が10000min−1である場合、切削周期は100μsecとなる。そのため、切削刃1枚毎に10点サンプリングするには、サンプリング周期は10μsecよりも速くなければならない。そして、このような高速でのサンプリングが必要になると、測定及び解析にコストがかかるという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みなされたものであって、回転軸装置に発生する現象の変化について、従来のように非常に短い周期でサンプリングを行うことなく、低コストで、且つ、精度の良い測定結果を得ることができる工作機械を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、工具又は被切削材が装着される回転軸を備えた回転軸装置と、前記回転軸装置に取り付けられ、前記回転軸の回転に同期して前記回転軸装置に周期的に発生する現象に係る情報を取得するセンサと、前記回転軸装置の動作を制御するとともに、前記センサを介して前記情報を取得する制御装置とを備えた工作機械であって、前記制御装置は、前記回転軸を回転させての加工時に、当該加工が、加工状態に関して変化のない定常状態にあるか否かを判別しており、予め設定される前記被切削材の形状に係る情報と、前記工具の前記被切削材に対する相対的な動作経路と、現在の指令座標とから前記被切削材への切り込み量を算出し、その切り込み量が一定であることをもって前記定常状態であると判別するとともに、前記定常状態にあると、所定のサンプリング周期で前記センサを介して前記情報を取得するとともに、取得した前記情報と前記回転軸の回転位相とを関連づけ、前記回転軸の複数回の回転にわたって取得した前記情報をもとに、前記現象の1周期分の変化を求めることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、回転軸を回転させての加工時に、当該加工が、加工状態に関して変化のない定常状態にあるか否かを判別しており、予め設定される被切削材の形状に係る情報と、工具の被切削材に対する相対的な動作経路と、現在の指令座標とから被切削材への切り込み量を算出し、その切り込み量が一定であることをもって定常状態であると判別する。そして、定常状態にあると、所定のサンプリング周期でセンサを介して情報を取得するとともに、取得した情報と回転軸の回転位相とを関連づけ、回転軸の複数回の回転にわたって取得した情報をもとに、現象の1周期分の変化を求めるため、たとえば主軸の駆動力の変化といった高速で変化する現象について、従来よりも長いサンプリング周期で測定するにも拘わらず、有用な測定結果を得ることができ、コスト低減を図ることができる。また、従来では変化の周期が速すぎて技術的に困難であった現象についても測定することができるし、定常状態である場合にのみ測定するため、信頼性の高い測定結果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】工作機械を示した説明図である。
図2】主軸装置に発生する現象の測定に係る制御について示したフローチャート図である。
図3】主軸の駆動力の周期的な変化とサンプリングとの対応関係を示した説明図である。
図4】50μsec毎に測定して得られる主軸の駆動力の1周期分の変化を示した説明図である。
図5】30msec毎の測定で、最終的に得られる主軸の駆動力の1周期分の変化を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態となる工作機械について、図面にもとづき詳細に説明する。
【0011】
図1は、工作機械20を示した説明図である。
工作機械20は、所謂マシニングセンタであって、主軸装置11と制御装置12とを有する。主軸装置11の主軸頭3には、回転軸となる主軸2や、主軸2を回転させるための駆動装置(図示せず)等が備えられており、主軸2の先端には、工具を備えた工具ホルダ1が装着可能となっている。また、主軸頭3を始めとする主軸装置11の主要構成部品には、主軸2の駆動力を測定するためのセンサ(たとえば、駆動装置の所要電力を測定するセンサ)や、主軸装置11に生じる振動を測定するためのセンサ等が取り付けられている。一方、制御装置12は、主軸2の動作を制御するとともに、主軸装置11の状態や主軸装置11での加工を診断するためのものであって、上記各種センサに接続され、主軸装置11における種々の情報を測定する測定部4、所定のサンプリング周期で測定値を記録する記録部5、及び記録部5に記憶された値をもとに種々の演算処理を行う演算部6を備えている。
【0012】
そして、本発明の要部となる主軸装置11に発生する現象の測定に係る制御ついて、図2のフローチャート図に沿って説明する。ここでは、切削刃が3枚の工具を用いた切削時における主軸2の駆動力の変化を測定することとする。
制御装置12は、主軸2の駆動力の変化を測定するにあたり、まず、切削加工するに際して設定された回転軸回転周期Lで主軸2が回転している主軸装置11から、所定のサンプリング周期S(たとえば30msec)で主軸2の駆動力を測定する(S1)。次に、制御装置12から主軸装置11に対する回転速度指令や送り速度指令に変化がないこと(回転軸装置への動作制御に係る指令に関して変化がないこと)、及び予め記録部5に記録されている被切削材の形状に係る情報や工具の動作経路、そして現在の指令座標にもとづいて被切削材に対する軸方向及び径方向の切り込み量を算出し、その切り込み量が一定であること(加工状態に関して変化がないこと)から、被切削材に対して同一の加工が行われている定常区間であるか否か(すなわち、加工が定常状態であるか否か)を判別する(S2)。そして、制御装置12は、加工が定常区間である場合にのみ測定を継続し、加工が定常区間を外れると、即座に測定を中止する。
【0013】
また、制御装置12は、加工が定常区間であると、下記式(1)を用いて、すなわち、サンプリング周期Sとサンプリング回数Nとの積算を回転軸回転周期Lで除した値の小数部分によって、サンプリング回数N回目の測定時における主軸2の回転位相を算出し(S3)、この算出した回転位相と測定値とを関連づけて記録部5に記録する(S4)。そして、主軸2の複数回の回転にわたって、この測定及び測定時における主軸2の回転位相の算出を継続し、種々の回転位相での測定値を得ることにより、最終的に図5に示すような主軸2の1回転における駆動力の変化(すなわち、1周期分の変化)を求める。
【数1】
【0014】
ここで、図3図5にもとづいて、本実施形態のように30msec毎に測定する場合と、従来のように50μsec毎に測定する場合とを比較する。50μsec毎に測定する従来の方法では、主軸2が1回転する間に、その駆動力の変化を略リアルタイムで測定することができ、図4に示すような測定結果を得ることができる。一方、本実施形態のように30msec毎に測定する方法では、主軸2が1回転する間に、1点若しくは2点程度しか駆動力を測定できない。しかしながら、図3に示すように加工が定常区間である間に、複数回の回転にわたって駆動力を測定するとともに、その測定値と主軸2の回転位相とを関連づけ、複数回の回転にわたる測定値を統合することで、図5に示すような1回転における駆動力の変化として求めることができる。そして、図4図5とを比較して明らかなように、30msec毎に測定した場合にも、50μsec毎に測定した測定結果と近似する測定結果を得ることができる。
【0015】
以上のような構成を有する工作機械20によれば、制御装置12から主軸装置11に対する回転速度指令や送り速度指令に変化がないこと、及び予め記録部5に記録されている被切削材の形状に係る情報や工具の動作経路、そして現在の指令座標にもとづいて被切削材に対する軸方向及び径方向の切り込み量を算出し、その切り込み量が一定であることから、被切削材に対して同一の加工が行われている定常区間であるか否かを判別する。そして、加工が定常区間であると、式(1)を用いてサンプリング回数N回目の測定時における主軸2の回転位相を算出し、この算出した回転位相と測定値とを関連づけて記録部5に記録する。さらに、この測定及び測定時における主軸2の回転位相の算出を、主軸2の複数回の回転にわたって継続し、種々の回転位相で測定値を得ることにより、最終的に主軸2の1回転における駆動力の変化を求める。したがって、主軸2の駆動力の変化といった高速で変化する現象について、従来よりも長いサンプリング周期で測定するにも拘わらず、有用な測定結果を得ることができ、コスト低減を図ることができる。また、従来では変化の周期が速すぎて技術的に困難であった現象についても測定することができるし、定常状態である場合にのみ測定するため、信頼性の高い測定結果を得ることができる。
【0016】
なお、本発明の工作機械に係る構成は、上記実施形態に何ら限定されるものではなく、工作機械全体の構成は勿論、現象の測定に係る制御等に係る構成についても、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で必要に応じて適宜変更可能である。
【0017】
たとえば、上記実施形態ではマシニングセンタの主軸装置について説明しているが、旋盤の主軸装置や送り軸装置等、本発明は他の工作機械、回転軸装置についても好適に適用することができる。
また、上記実施形態では、周期的に変化する現象として主軸の駆動力を挙げているが、これに限定されることはなく、たとえば送り軸といった他の駆動軸の駆動力であってもよいし、回転軸装置に発生する振動、変位、温度等であってもよい。具体的に例示すると、送り軸(回転軸)に振動センサ(センサ)を取り付け、送り軸を一定速度で回転させて移動体を移動させる際の振動を測定してもよい。このような測定結果を得ることで、送り軸移動に係るベアリングやボールねじの状態を診断することができる。
【0018】
さらに、上記実施形態では、回転軸装置への動作制御に係る指令に関して変化がないこと、及び加工状態に関して変化がないことの両方をもって定常状態であるか否かを判別しているが、何れか一方のみによって定常状態であるか否かを判別してもよい。
加えて、上記実施形態では、被切削材への切り込み量が一定であることをもって、加工状態に関して変化がないとしているが、たとえば送り方向の変化がないことや機械温度の変化がないこと等、他の条件に変化がないことをもって加工状態に関して変化がないとするように構成することも可能である。
【符号の説明】
【0019】
2・・主軸(回転軸)、4・・測定部、5・・記録部、6・・演算部、11・・主軸装置(回転軸装置)、12・・制御装置、20・・工作機械。
図1
図2
図3
図4
図5