【実施例1】
【0009】
以下、本実施例では872体の燃料集合体を炉心に装荷する改良型沸騰水型原子炉(ABWR)を対象に説明するが、上述のように、本発明に係る燃料集合体は、横断面十字状の制御棒(十字型制御棒)を装荷する燃料集合体の体数が異なる他の沸騰水型原子炉にもて適用可能である。
【0010】
先ず、沸騰水型原子炉の一例として、改良型沸騰水型原子炉(ABWR)について説明する。
図3は、改良型沸騰水型原子炉(ABWR)の概略構成図である。
図3に示すように、本実施例の燃料集合体(詳細後述する)が装荷される炉心を備える改良型沸騰水型原子炉20は、原子炉圧力容器21内に円筒状の炉心シュラウド26が設けられ、炉心シュラウド26内に、複数体の燃料集合体(図示せず)が装荷された炉心22が設置されている。また、原子炉圧力容器21内には、炉心22を覆うシュラウドヘッド30、シュラウドヘッド30に取り付けられ上方へと延伸する気水分離器28、及び気水分離器28の上方に配される蒸気乾燥器29が設けられている。
上部格子板24が、シュラウドヘッド30の下方で炉心シュラウド26内に配され、炉心シュラウド26に取り付けられて炉心22の上端部に位置している。炉心支持板23が、炉心22の下端部に位置して炉心シュラウド26内に配され、炉心シュラウド26に設置されている。また、複数の燃料支持金具25が炉心支持板23に設置されている。
また、原子炉圧力容器21内には、燃料集合体の核反応を制御するため炉心22へ複数の横断面十字状の制御棒(図示せず)を挿入可能とする制御棒案内管32が設けられている。原子炉圧力容器21の底部より下方に設置された制御棒駆動機構ハウジング(図示せず)内に制御棒駆動機構33を備え、制御棒は制御棒駆動機構33に連結されている。
【0011】
原子炉圧力容器21の底部である下鏡34に、その下方より原子炉圧力容器21の内部へ貫通するよう複数のインターナルポンプ31が設置されている。複数のインターナルポンプ31は、複数の制御棒案内管32の最外周部より外側であって、環状に相互に所定の間隔にて離間し、複数台配されている。これにより、インターナルポンプ31は、制御棒案内管32等と干渉することはない。そして、各インターナルポンプ31のインペラが、円筒状の炉心シュラウド26と原子炉圧力容器21の内面との間に形成される環状のダウンカマ27内に位置付けられている。原子炉圧力容器21内の冷却材である水(冷却水)は、各インターナルポンプ31のインペラにより、ダウンカマ27を介して、下鏡34側から炉心22へ供給される。炉心22内に流入する冷却水は、燃料集合体(図示せず)の核反応により加熱され気液二相流となり、気水分離器28へ流入する。気水分離器28を通流する気液二相流は、湿分を含む蒸気(気相)と水(液相)に分離され、液相は再び冷却水としてダウンカマ27へ降下する。一方、蒸気(気相)は、蒸気乾燥器29へと導入され湿分が除去された後、主蒸気配管35を介してタービン(図示せず)へ供給される。復水器等を介して給水配管36より原子炉圧力容器21内に流入する冷却水は、ダウンカマ27内を下方へと通流する(降下する)。このように、インターナルポンプ31は、炉心22で発生する熱を効率良く冷却するため、冷却水を炉心22へ強制循環させる。
【0012】
次に、炉心22に装荷される本実施例の燃料集合体及び炉心22の構造について説明する。
図1は、本実施例の燃料集合体の軸方向における概略構成及び当該燃料集合体のA−A断面矢視図(横断面図)であり、
図2は、
図1に示す燃料集合体が複数体装荷される沸騰水型原子炉の炉心の横断面図(水平断面図)である。
図1の右図に示すように、燃料集合体1は、横断面(水平断面)が正方形のチャンネルボックス2の内部に243本の外径7.2mm、間隙1.5mmで燃料棒3を三角稠密配置している。なお、各燃料棒3は上下両端部を上部タイプレート及び下部タイプレート(図示せず)にて、また、燃料棒3の途中を軸方向に一定間隔で離間する燃料スペーサー(図示せず)によって保持されている。チャンネルボックス2の外側には飽和水であるギャップ水領域4と十字型制御棒(横断面十字状の制御棒)5が挿入されている。十字型制御5の上半分は、冷却水である軽水より減速能が小さい物質である炭素で構成されたフォロアー部を設けている。また、十字型制御棒5の反対側(燃料集合体1を挟み十字型制御棒5と対向する側)には、冷却水である軽水より減速能が小さい物質である炭素を封入した水排除板6を設置している。以上の構成により、燃料集合体1内を通流する冷却水を少なくして、炉心22内の中性子スペクトルを硬化した(高エネルギー側にシフトした)低減速スペクトル沸騰水型炉を実現している。
【0013】
図1の左図に示すように、燃料集合体1は燃料有効長さ180cmで、軸方向構成として、定格出力運転時に炉心22の平均線出力密度以上の出力を有する高出力の燃料領域12と炉心22の平均線出力密度以下の出力を有する低出力の上部ブランケット11、第1内部ブランケット領域13、第2内部ブランケット領域14が、交互に配置されている。換言すれば、冷却水の流れの方向に沿って上流側(燃料集合体1の軸方向における下側)に第1内部ブランケット領域13が、また、冷却水の流れの方向に沿って下流側(燃料集合体1の軸方向における上側)に第2内部ブランケット領域14が、燃料領域12を介して配置されている。燃料棒3は、劣化ウランの酸化物或いは劣化ウランに核分裂プルトニウムを含む超ウラン核種を富化した混合酸化物(以下、MOX燃料と称する)のペレット(図示せず)を被覆管(図示せず)に充填している。
【0014】
図2は、
図1に示す燃料集合体1が複数体装荷される改良型沸騰水型原子炉(ABWR)の炉心22の横断面図(水平断面図)である。
図2に示すように、炉心22に872体の燃料集合体1が正方格子状に装荷されており、最外周に配される複数体の燃料集合体1を除き、相互に隣接する4体の燃料集合体1は、十字型制御棒5を囲むよう炉心22に装荷されている。上述の
図1の右図に示した燃料集合体1の横断面図(水平断面図)は、上記4体の燃料集合体の内の1体の燃料集合体1を示している。
図1の右図に示すように、横断面(水平断面)が正方形のチャンネルボックス2を構成する1つの角部で接続する2辺が、十字型制御棒5の2本のブレードと僅かな間隙を介して対向するよう炉心22に装荷されている。一方、上記1つの角部に対し対角線上に位置する他の角部で接続する2辺は、横断面(水平断面)がL字状の水排除板6を構成する2辺と僅かな間隙を介して対向するよう炉心22に装荷されている。
【0015】
次に
図4から
図9により
図1に示した本実施例の燃料集合体1の作用について説明する。
図4は、
図1の左図に示す第1内部ブランケット領域13について、チャンネルボックス2内の定格出力時の平均ボイド率を、
図1の右図に示す横断面を二次元体系で燃焼させたときの燃焼度に対するボイド反応度係数の変化を示している。第1内部ブランケット領域13の定格出力で運転されている状態で、燃焼度ゼロにおけるチャンネルボックス2内のウラン核種と超ウラン核種の合計の個数密度に対する水素の個数密度の比(以下、H/HMと称する)は1.8である。
図4において、曲線aは、ブランケットに通常用いられている劣化ウラン酸化物の燃焼度に対するボイド反応度係数の変化を示している。また、曲線bは、核分裂性プルトニウム富化度0.4wt%であり、プルトニウム239富化度0.3wt%のMOX燃料の燃焼度に対するボイド反応度係数の変化を示している。曲線cは、核分裂性プルトニウム富化度1.1wt%であり、プルトニウム239富化度0.9wt%のMOX燃料の燃焼度に対するボイド反応度係数の変化を示している。ここで核分裂性プルトニウム富化度とは、ウラン核種と超ウラン核種の合計重量に占める核分裂性プルトニウム(プルトニウム239とプルトニウム241の合計)の重量割合のことであり、プルトニウム239富化度とは、ウラン核種と超ウラン核種の合計重量に占めるプルトニウム239の重量割合のことである。
【0016】
図5は、
図1の左図に示す第2内部ブランケット領域14について、チャンネルボックス2内の定格出力時の平均ボイド率を、
図1の右図に示す横断面を二次元体系で燃焼させたときの燃焼度に対するボイド反応度係数の変化を示している。第2内部ブランケット領域14の定格出力で運転されている状態で、燃焼度ゼロにおけるチャンネルボックス2内のH/HMは1.2である。
図5において、曲線aは、ブランケットに通常用いられている劣化ウラン酸化物の燃焼度に対するボイド反応度係数の変化を示している。また、曲線bは、燃焼度ゼロにおいて、核分裂性プルトニウム富化度0.4wt%であり、プルトニウム239富化度0.3wt%の組成を有するMOX燃料の燃焼度に対するボイド反応度係数の変化を示している。曲線cは、燃焼度ゼロにおいて、核分裂性プルトニウム富化度1.1wt%であり、プルトニウム239富化度0.9wt%の組成を有するMOX燃料の燃焼度に対するボイド反応度係数の変化を示している。
【0017】
定格出力で運転時、冷却と中性子減速機能を有する水(冷却水)が燃料棒3の間を、
図1の左図に示す燃料集合体1の下部から上部に向けて流れているので、第1内部ブランケット領域13のチャンネルボックス2内のH/HMは、第2内部ブランケット領域14のチャンネルボックス2内のH/HMより大きい。劣化ウラン酸化物をブランケットとして用いる曲線aは、燃焼度ゼロの時点でボイド反応度係数は大きく、燃焼に伴い急激に負となる。これに対し、
図4及び
図5に示すように。低富化度MOX燃料(核分裂性プルトニウム富化度0.4wt%であり、プルトニウム239富化度0.3wt%のMOX燃料)の曲線b、及び低富化度MOX燃料(核分裂性プルトニウム富化度1.1wt%であり、プルトニウム239富化度0.9wt%のMOX燃料)の曲線cは、燃焼によるボイド反応度係数の変化が小さい。第1内部ブランケット領域13(
図4)及び第2内部ブランケット領域14(
図5)では、ボイド反応度係数にプルトニウム239の核分裂、捕獲が大きく寄与する。劣化ウラン酸化物をブランケットとして用いる曲線aは燃焼度ゼロでプルトニウム239はゼロであり、プルトニウム239の生成によりボイド反応度係数が負となる。一方、曲線b及び曲線cの低富化度MOX燃料は燃焼初期からプルトニウム239を含有しているため、ボイド反応度係数は劣化ウラン酸化物をブランケットとして用いる曲線aより負である。MOX燃料でも燃焼によりプルトニウム239が蓄積していくが、同時に、中性子スペクトルが硬くなり(高エネルギー側にシフトし)、また、ボイド反応度係数正に寄与するプルトニウム240が蓄積するのでボイド反応度係数の減少は緩やかである。チャンネルボックス2内のH/HMが小さくなり中性子スペクトルが硬くなるに従い、ボイド反応度係数を正側にする核種の寄与が大きくなるため、
図5では、プルトニウム239富化度0.9wt%の曲線cはプルトニウム239富化度0.3%の曲線bよりボイド係数がより正側になるが、燃焼の初期では劣化ウラン酸化物をブランケットとして用いる曲線aより負である。
【0018】
図6は、第2内部ブランケット領域14の横断面(水平断面)においてチャンネルボックス2内のH/HMを0.6から2.1まで変化させたときの燃焼度ゼロにおけるボイド反応度係数を示している。すなわち、燃焼度ゼロの第2内部ブランケット領域14の横断面(水平断面)におけるH/HMに対するボイド反応度係数の変化を示すグラフである。
図7は、第2内部ブランケット領域14の横断面(水平断面)においてチャンネルボックス2内のH/HMを0.6から2.1まで変化させたときの燃焼度15GWd/tにおけるボイド反応度係数を示している。すなわち、燃焼度15GWd/tの第2内部ブランケット領域14の横断面(水平断面)におけるH/HMに対するボイド反応度係数の変化を示すグラフである。燃焼度度15GWd/tは、第2内部ブランケット領域14の運転サイクル末期における平均燃焼度である。
図6及び
図7における曲線aは、燃焼度ゼロにおいてブランケットに通常用いられている劣化ウラン酸化物であり、曲線bは、燃焼度ゼロにおいて核分裂性プルトニウム富化度0.4wt%であり、プルトニウム239富化度0.3wt%の組成を有するMOX燃料、曲線cは、燃焼度ゼロにおいて核分裂性プルトニウム富化度1.1wt%であり、プルトニウム239富化度0.9wt%の組成を有するMOX燃料である。燃焼度ゼロの
図6では、劣化ウラン酸化物をブランケットして用いる曲線aは、プルトニウム239が蓄積していないため、低富化度MOX燃料の曲線b及び曲線c共に曲線aよりボイド反応度係数がより負である。これに対し、燃焼が進んだ
図7では低富化度MOX燃料の曲線cは、H/HMを0.6以上2.1以下の全域において、劣化ウラン酸化物をブランケットとして用いる曲線aよりボイド反応度係数が悪化する。
【0019】
内部ブランケット領域(第1内部ブランケット領域13、第2内部ブランケット領域14)のチャンネルボックス2内のH/HMを2.1より大きくするためにはボイド率を減らすのみならず、燃料棒3を細径化し、冷却水の領域を増やす必要があり転換比が悪化する。一方、チャンネルボックス2内のH/HMを0.6より小さくして中性子スペクトルをより硬くすると、
図5より限りなく燃焼度ゼロに近い点、すなわち、燃焼直後を除いて、MOX燃料は劣化ウラン酸化物よりボイド反応度係数が悪化する。
【0020】
図8は、第2内部ブランケット領域14の横断面(水平断面)について、燃焼度ゼロにおけるチャンネルボックス2内のH/HMを0.6とし、チャンネルボックス2内の定格出力時の平均ボイド率を、
図1の右図に示す横断面を二次元体系で燃焼させた時の燃焼度に対するボイド反応度係数の変化を示している。すなわち、H/HMが0.6の第2内部ブランケット領域14の横断面(水平断面)における燃焼度に対するボイド反応度係数の変化を示すグラフである。
図8において、曲線aは、燃焼度ゼロにおいてブランケットに通常用いられている劣化ウラン酸化物であり、曲線bは、燃焼度ゼロにおいて核分裂性プルトニウム富化度0.4wt%であり、プルトニウム239富化度0.3wt%の組成を有するMOX燃料、曲線cは、燃焼度ゼロにおいて核分裂性プルトニウム富化度1.1wt%であり、プルトニウム239富化度0.9wt%の組成を有するMOX燃料である。
図8に示すように、チャンネルボックス2内のH/HMを0.6より小さくして中性子スペクトルをより硬くする(高エネルギー側にシフトする)と、燃焼度がゼロから少し進むと低富化度MOX燃料(曲線b及び曲線c)は劣化ウラン酸化物(曲線a)よりボイド反応度係数が悪化することが分かった。
【0021】
図9は、第1内部ブランケット領域及び第2内部ブランケット領域のプルトニウム239富化度に対する、沸騰水型原子炉のボイド反応度係数の変化を示すグラフである。すなわち、
図9は、
図1の左図に示す第1内部ブランケット領域13及び第2内部ブランケット領域14を劣化ウラン酸化物から低富化度MOXに変更したときの
図1の左図に示す燃料集合体1を装荷した
図2の炉心22のボイド反応度係数を低富化度MOXのプルトニウム239富化度に対してプロットしたグラフである。
図1の左図に示す上部ブランケット11は劣化ウラン酸化物、燃料領域12は核分裂性プルトニウム富化度26wt%の高富化度MOX燃料を装荷している。炉心22は熱出力3926MW、取り出し燃焼度45GWd/tである。プルトニウム239富化度ゼロの点は従来のブランケットとして劣化ウラン酸化物を用いた場合(以下、劣化ウラン酸化物ブランケットと称する)を示している。
図9より内部ブランケット領域(第1内部ブランケット領域13、第2内部ブランケット領域14)にプルトニウム239富化度1.0wt%までの低富化度MOXを装荷することにより、従来の劣化ウラン酸化物ブランケットよりボイド反応度係数をより負にすることができた。
図9の曲線aにて示されるようにボイド反応度係数はプルトニウム239富化度0.3wt%のとき最小の−11pcm/%voidとなった。
【0022】
以上のとおり、本実施例では、燃料集合体1は、炉心22が定格出力で運転されている状態で軸方向に(冷却水の流れの方向に沿って)高出力の燃料領域12と低出力の燃料領域(第1内部ブランケット領域13、第2内部ブランケット領域14)を備える。そして、炉心22が定格出力で運転されている状態で、燃料集合体の1のチャンネルボックス2内のウラン核種と超ウラン核種の合計の個数密度に対する水素の個数密度の比(H/HM)が0.6以上2.0以下であり、且つ、燃焼度ゼロの燃料集合体1の低出力の燃料領域(第1内部ブランケット領域13、第2内部ブランケット領域14)は、燃料のウラン核種及び超ウラン核種に占める核分裂性プルトニウム(プルトニウム239)が0.1wt%以上1.0wt%以下となるよう超ウラン核種を劣化ウラン酸化物に富化する。これにより、運転中に中性子スペクトルを硬化させた沸騰水型原子炉におけるボイド反応度係数を改善し、原子炉の安全性を向上し得る燃料集合体1を実現できる。また、上述の燃料集合体1を炉心22に装荷することにより、運転中に中性子スペクトルを硬化させた沸騰水型原子炉におけるボイド反応度係数を改善し、原子炉の安全性を向上し得る沸騰水型原子炉を実現できる。
【0023】
本実施例によれば、運転中に中性子スペクトルを硬化させた沸騰水型原子炉におけるボイド反応度係数を改善し、原子炉の安全性を向上し得る燃料集合体及びそれを装荷する沸騰水型原子炉の炉心を実現することが可能となる。
【実施例2】
【0024】
図10は、本発明の他の実施例に係る実施例2の燃料集合体の横断面図(水平断面図)であり、
図11は、H/HMが1.8の第2内部ブランケット領域の横断面(水平断面)における燃焼度に対するボイド反応度係数の変化を示すグラフである。本実施例では、燃料集合体の横断面(水平断面)内において、最外周に配される燃料棒の内部ブランケット領域のみに低富化度MOX燃料を充填し、最外周に配される燃料棒以外の燃料棒の内部ブランケット領域に劣化ウラン酸化物を充填する構成とした点が実施例1と異なる。実施例1と同様の構成要素に同一符号を付し、以下では実施例1と重複する説明を省略する。
【0025】
図10は、上述の実施例1において
図1の左図に示した燃料集合体1の横断面図(水平断面)に対応する。上述の実施例1において
図6及び
図7に示したように、H/HMが大きいほど低富化度MOX燃料のボイド反応度係数が劣化ウラン酸化物より負側となる。
図10のギャップ水領域4は飽和水であるので、
図10の最外周に配される(チャンネルボックス2に最も近接して配される)燃料棒3aは、それ以外の燃料棒3bよりH/HMが大きい。そこで第1内部ブランケット領域13において低富化度MOX燃料を最外周に配される燃料棒3aのみに充填し、燃料棒3bの第1内部ブランケット領域13には劣化ウラン酸化物を充填したときのボイド反応度係数の燃焼変化を、上述の実施例1における
図4と同様に示した図が
図11である。すなわち、燃料集合体1の第1内部ブランケット領域13について、チャンネルボックス2内の定格出力時の平均ボイド率を、
図10に示す横断面を二次元体系で燃焼させたときの燃焼度に対するボイド反応度係数の変化を示している。ここで、燃焼度ゼロにおけるチャンネルボックス2内のH/HMは1.8である。
【0026】
図11において、曲線aは、ブランケットに通常用いられている劣化ウラン酸化物の燃焼度に対するボイド反応度係数の変化を示している。また、曲線bは、燃料棒3a及び燃料棒3bの全てを、核分裂性プルトニウム富化度0.4wt%であり、プルトニウム239富化度0.3wt%のMOX燃料としたときの燃焼度に対するボイド反応度係数の変化を示している。これら曲線a及び曲線bは、上述の実施例1において
図4に示した曲線a及び曲線bと同一である。曲線cは、
図11に示す最外周に配される燃料棒3aにプルトニウム239富化度1.7wt%の低富化度MOX燃料を充填すると共に、燃料棒3bに劣化ウラン酸化物を充填して断面平均のプルトニウム239富化度を曲線bと同一(0.3wt%)とした横断面(水平断面)のボイド反応度係数を示している。曲線bと曲線cは断面平均のプルトニウム239富化度は0.3wt%と同一であるが、曲線cは曲線bよりボイド反応度係数をより負側にできることが確認できた。第2内部ブランケット領域14においても同様の効果が得られることを確認できている。
【0027】
図2に示す熱出力3926MW、取り出し燃焼度45GWd/tの炉心22に
図11の曲線cの燃料棒構成を配置した燃料集合体1を装荷した炉心22のボイド反応度係数は−15pcm/%voidと、上述の実施例1の構成と比較してより負のボイド反応度係数となった。
【0028】
以上のとおり、本実施例によれば、実施例1の効果に加え、実施例1の構成よりも更にボイド反応度係数を負側とすることができ、より一層、ボイド反応度係数を改善することが可能となる。
【0029】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。