(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6726612
(24)【登録日】2020年7月1日
(45)【発行日】2020年7月22日
(54)【発明の名称】鉄道車両用台車
(51)【国際特許分類】
B61F 5/24 20060101AFI20200713BHJP
B61F 5/30 20060101ALI20200713BHJP
B60L 15/40 20060101ALI20200713BHJP
【FI】
B61F5/24 Z
B61F5/30 A
B60L15/40 Z
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-244556(P2016-244556)
(22)【出願日】2016年12月16日
(65)【公開番号】特開2018-95207(P2018-95207A)
(43)【公開日】2018年6月21日
【審査請求日】2019年9月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田村 佳広
(72)【発明者】
【氏名】多賀 之高
(72)【発明者】
【氏名】鴻池 史一
(72)【発明者】
【氏名】小野 貴也
【審査官】
諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−35536(JP,A)
【文献】
特開2011−213148(JP,A)
【文献】
特開2007−191017(JP,A)
【文献】
特開2002−293238(JP,A)
【文献】
米国特許第1742148(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61F 5/24
B60L 15/40
B61F 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
台車枠と、
車軸を回転自在に支持し、前記台車枠に対して変位可能かつ前記車軸回りに角変位可能に前記台車枠に連結された軸箱と、
前記台車枠と前記軸箱との間に介在するサスペンションと、
前記サスペンションの動作による車載機器取付部の変位を抑制するリンク機構と、を備え、
前記リンク機構は、
前記車載機器取付部と、前記軸箱又は前記軸箱と一体に変位する部材に回動自在に連結される第1ピボット部とを含む第1リンクと、
前記台車枠又は前記台車枠と一体に変位する部材に回動自在に連結される第2ピボット部と、前記第1リンクに回動自在に連結される第3ピボット部とを含む第2リンクと、を有し、
前記車載機器取付部は、車両長手方向において前記車軸の中心よりも台車外側に配置され、前記第2ピボット部は、車両長手方向において前記車軸の中心よりも台車中央側に配置されている、鉄道車両用台車。
【請求項2】
前記車載機器取付部、前記第1ピボット部、前記第3ピボット部、及び前記第2ピボット部は、この順で、車両長手方向において台車外側から台車中央側に向けて並んで配置されている、請求項1に記載の鉄道車両用台車。
【請求項3】
前記第3ピボット部は、前記軸箱よりも上方で且つ前記軸箱の車幅方向の外端よりも車幅方向内側に配置されている、請求項1又は2に記載の鉄道車両用台車。
【請求項4】
前記第1ピボット部は、前記車軸の中心よりも上方で且つ前記第3ピボット部よりも下方に配置されている、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の鉄道車両用台車。
【請求項5】
車体から前記台車枠に伝達される鉛直方向荷重が空車荷重であるときの前記第1ピボット部を点A、前記第2ピボット部を点B、前記車載機器取付部に取り付けられる車載機器の所定の目的位置を点Cとし、
前記車体から前記台車枠に伝達される鉛直方向荷重が満車荷重であるときの前記第1ピボット部を点A’、前記第2ピボット部を点B’とし、
車幅方向から見て、点A’を中心として半径が線分ACの長さと同一である円と、点Cを通る鉛直線又は水平線とが交差する点を点C’とし、
線分ACに線分A’C’が重なる又は近づくように三角形A’B’C’を移動させた状態における線分BB’の垂直二等分線上に前記第3ピボット部が設定されてなる、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の鉄道車両用台車。
【請求項6】
前記第2リンクは、前記第2ピボット部と前記第3ピボット部との間の距離を調整可能な可変機構を有する、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の鉄道車両用台車。
【請求項7】
前記台車枠は、車幅方向に延びる横梁を有し、
前記サスペンションは、前記横梁の車幅方向の端部を支持した状態で車両長手方向に延び、前記軸箱に支持される板バネである、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の鉄道車両用台車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両の車載機器が取り付けられる台車に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両には、ATS(Automatic Train Stop)装置の車上子等の車載機器が搭載されることがある(例えば、特許文献1参照)。ATS装置は、車上子が地上に設けられた地上子からの制御信号を受けることにより、運転士に対して注意喚起したり自動的にブレーキを制動させて車両を停止させる。地上子−車上子間で情報伝送を行うために、車上子と地上子とは適切な距離にする必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−60841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、車載機器を台車枠に固定されたブラケットに取り付けた場合には、車体から台車枠に伝達される鉛直方向荷重が空車荷重と満車荷重との間で変動するため、その変動に伴って車載機器も鉛直方向に変位することになる。また、台車設計上の都合から、ブラケットと台車枠との連結点が車載機器から遠位に設定されると、車載機器が振動しやすくなる。他方、車載機器の振動抑制のためにブラケットを補強して高剛性化すると、台車重量が増加してしまう。
【0005】
また、車載機器を軸箱に固定されたブラケットに取り付けた場合には、台車枠の鉛直方向変位に伴って軸箱が車軸回りに角変位し得るため、車載機器は鉛直方向と車両長手方向との両方に変位することになる。
【0006】
以上のように、車載機器と地上設備との間の距離は、空車時と満車時との間の車体荷重変化や走行による振動に伴って変化するため、車両の状態にかかわらず車載機器の変位が許容範囲内に収まるようにすることが望まれる。
【0007】
そこで本発明は、車載機器が取り付けられる台車において、地上設備に対する車載機器の変位を抑制するとともに、重量増加を防止しながら車載機器取付部の振動を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る鉄道車両用台車は、台車枠と、車軸を回転自在に支持し、前記台車枠に対して変位可能かつ前記車軸回りに角変位可能に前記台車枠に連結された軸箱と、前記台車枠と前記軸箱との間に介在するサスペンションと、前記サスペンションの動作による車載機器取付部の変位を抑制するリンク機構と、を備え、前記リンク機構は、前記車載機器取付部と、前記軸箱又は前記軸箱と一体に変位する部材に回動自在に連結される第1ピボット部とを含む第1リンクと、前記台車枠又は前記台車枠と一体に変位する部材に回動自在に連結される第2ピボット部と、前記第1リンクに回動自在に連結される第3ピボット部とを含む第2リンクと、を有し、前記車載機器取付部は、車両長手方向において前記車軸の中心よりも台車外側に配置され、前記第2ピボット部は、車両長手方向において前記車軸の中心よりも台車中央側に配置されている。
【0009】
前記構成によれば、車載機器は、台車枠と軸箱とにそれぞれ回動自在に連結されるリンク機構を介して台車に取り付けられるので、サスペンション動作時に、台車枠と軸箱との間の相対変位と軸箱の角変位との両方によってリンク機構が動作する。そのため、台車枠又は軸箱のいずれか一方のみに車載機器取付部を連結する場合に比べ、台車枠と軸箱との間の相対変位と軸箱の角変位との相互干渉を利用して、地上設備に対する車載機器取付部の変位を抑制可能な構成を容易に提供できる。そして、リンク機構の車載機器取付部が台車外側に位置し、かつ、リンク機構と台車枠(又は台車枠と一体に変位する部材)との連結点が台車中央側に位置することで、リンク機構における台車枠との連結点から車載機器取付部までの距離が長くなっても、第1ピボット部が車載機器取付部に近い軸箱に連結されるので、リンク機構を高剛性化して重量増加させることなく車載機器取付部の振動を抑制できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、車載機器が取り付けられる台車において、地上設備に対する車載機器の変位を抑制できるとともに、重量増加を防止しながら車載機器取付部の振動を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態に係る鉄道車両の台車の車幅方向から見た側面図である。
【
図2】
図1に示す台車のリンク機構の第1リンクの斜視図である。
【
図3】(A)〜(C)は
図1に示すリンク機構の設計手順を説明する図面である。
【
図4】第2実施形態に係る鉄道車両の台車の車幅方向から見た側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。なお、以下の説明では、鉄道車両が走行する方向であって車体が延びる方向を車両長手方向とし、それに直交する横方向を車幅方向として定義する。車両長手方向は前後方向とも称し、車幅方向は左右方向とも称しえる。
【0013】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る鉄道車両1の台車2の車幅方向から見た側面図である。
図1に示すように、鉄道車両1は、台車2と、台車2により下方から支持される車体3とを備える。台車2は、二次サスペンションとしての空気バネ4を介して車体3を支持する台車枠5を備える。台車枠5は、車幅方向に延びる横梁5aを備えるが、横梁5aの車幅方向両端部から車両長手方向に延びる側梁を備えていない。横梁5aの車両長手方向両側には、それぞれ一対の輪軸6が配置される。輪軸6は、車幅方向に沿って延びる車軸6aと、車軸6aの車幅方向両側の部分に設けられた一対の車輪6bとを有する。車軸6aの車幅方向両側の端部には、車輪6bよりも車幅方向外側にて車軸6aを回転自在に支持する軸受7が設けられ、軸受7が軸箱8に収容されることで、軸箱8が車軸6aを回転自在に支持する。
【0014】
横梁5aの車幅方向の端部は、軸梁式の軸箱支持装置9によって軸箱8に連結される。軸箱支持装置9は、軸箱8から車両長手方向に横梁5a側に向けて延びた軸梁10を備える。台車枠5には、横梁5aから軸梁10に向けて突出して且つ車幅方向に互いに間隔をあけた一対の受け座11が設けられている。軸梁10は、受け座11に弾性的に結合されている。具体的には、軸梁10は、その先端において車幅方向に軸線を有する筒状部を有し、当該筒状部には、弾性ブッシュ13(例えば、ゴムブッシュ)を介して心棒12が挿入され、当該心棒12の両端部が、受け座11に固定されている。即ち、軸箱8は、弾性ブッシュ13の弾性変形により台車枠5に対して変位可能に、かつ、車軸6a周りに角変位可能に台車枠5に連結されている。
【0015】
軸箱8と台車枠5との間には、一次サスペンションとして車両長手方向に延びた板バネ14が介在している。板バネ14は、一対の受け座11の間の空間を通過する。板バネ14の長手方向の中央部14aは、板バネ14の長手方向両側の端部14bよりも低く配置されている。板バネ14は、台車側面視で下方に凸な弓形状を有する。車両長手方向に離れた一対の軸箱8は、板バネ14の端部14bを夫々支持する。板バネ14の中央部14aは、横梁5aの車幅方向の端部を下方から支持する。これにより、横梁5aは、板バネ14を介して軸箱8に支持される。即ち、板バネ14は、一次サスペンションの機能と従来の側梁の機能とを兼ねる。
【0016】
板バネ14は、例えば、繊維強化樹脂により形成される。横梁5aの車幅方向端部の下部には、下方に凸な円弧状の下面を有する押圧部材15が設けられ、押圧部材15が板バネ14の中央部14aに上方から載せられて離間可能に接触する。即ち、板バネ14を押圧部材15に対して上下方向に固定しない状態で、横梁5aからの重力による下方荷重によって押圧部材15が板バネ14の上面に接触する。即ち、押圧部材15は、固定具により板バネ14に固定されることなく、横梁5aからの重力による下方荷重とそれに対する板バネ14の反力との接触圧によって板バネ14の上面との接触が保たれた状態となる。
【0017】
軸箱8の上端部にはバネ座16が取り付けられ、板バネ14の端部14bはバネ座16を介して軸箱8に下方から支持される。バネ座16の上面は、台車側面視で台車中央側に向けて傾斜している。板バネ14の端部14bも、バネ座16に対して上下方向に固定しない状態でバネ座16に上方から載せられる。バネ座16は、軸箱8の上に設置されたベース部材17(例えば、防振ゴム)と、ベース部材17の上に設置されてベース部材17に位置決めされた受部材18とを有する。受部材18は、上方及び台車中央側に向けて開放された凹部を有し、当該凹部に板バネ14の端部14bが収容されている。
【0018】
台車2には、車載機器50が取り付けられる車載機器取付部Qを有するリンク機構20が設けられている。車載機器50は、予め定められた位置で地上設備からの作用を受ける機器である。本実施形態では、車載機器50は、例えば、ATS(Automatic Train Stop)装置又はATC(Automatic Train Control)装置の機器として、予め定められた位置で地上子からの無線信号を受信可能な車上子である。リンク機構20は、第1リンク21及び第2リンク22を備え、板バネ14の弾性変形動作による車載機器取付部Qの変位を抑制するよう構成されている。
【0019】
図2は、
図1に示す台車2のリンク機構20の第1リンク21の斜視図である。
図1及び2に示すように、第1リンク21は、棒状であり、車載機器取付部Qと、第1ピボット部P1とを含む。車載機器取付部Qは、車載機器50が固定具等により固定される部分である。第1ピボット部P1は、軸箱8と一体に変位する部材、即ち、軸箱8が車軸6a周りに回転すると一緒に同方向に回転する部材に回動自在に連結されている。本実施形態では、第1ピボット部P1は、バネ座16(具体的には、受部材18)に固定されたブラケット23に回転自在に連結されている。即ち、第1リンク21は、第1ピボット部P1において車幅方向に延びる回転軸線周りに軸箱8に対して相対角変位自在である。
【0020】
本実施形態では、第1リンク21は、一対の側リンク部31と、連結リンク部32と、一対の弾性結合部33とを有する。一対の側リンク部31は、互いに車幅方向に離間して配置され、車軸6aの車幅方向両端部を支持する一対の軸箱8に取り付けられた一対のバネ座16に第1ピボット部P1において夫々連結されている。連結リンク部32は、車幅方向に延び、一対の側リンク部31の間に介在している。連結リンク部32の車幅方向両端部は、一対の側リンク部31に弾性結合部33を介して柔結合されている。弾性結合部33は、結合機能及び弾性機能を有し、例えば、ゴムブッシュである。連結リンク部32の車幅方向中央部には、車載機器取付部Qが設けられている。即ち、車載機器取付部Qの車幅方向位置は、一対のレールの間に配置された地上子(図示せず)に対応する。
【0021】
図1に示すように、第2リンク22は、棒状であり、第2ピボット部P2と、第3ピボット部P3とを含む。第2ピボット部P2は、台車枠5と一体に変位する部材、即ち、台車枠5が上方向又は下方向に移動すると一緒に同方向に移動する部材に回動自在に連結されている。本実施形態では、第2ピボット部P2は、台車枠5の受け座11に固定されたブラケット24に回転自在に連結されている。即ち、第2リンク22は、第2ピボット部P2において車幅方向に延びる回転軸線周りに台車枠5に対して相対角変位自在である。第3ピボット部P3は、第1リンク21に回動自在に連結されている。即ち、第1リンク21は、第3ピボット部P3において車幅方向に延びる回転軸線周りに相対角変位自在に第2リンク22に連結されている。
【0022】
車載機器取付部Q、第1ピボット部P1、第3ピボット部P3、及び第2ピボット部P2は、この順で、車両長手方向において台車外側から台車中央側に向けて並んで配置されている。車載機器取付部Qは、車両長手方向において車軸6aの中心よりも台車外側に配置されており、より具体的には、輪軸6よりも車両長手方向外方に配置されている。第1ピボット部P1は、車両長手方向において車載機器取付部Qと車軸6aの中心との間に配置されている。第1ピボット部P1は、車軸6aの中心よりも上方に配置されている。第2ピボット部P2は、車両長手方向において車軸6aの中心よりも台車中央側(横梁5a側)に配置されている。より具体的には、第2ピボット部P2は、軸箱8よりも台車中央側に配置されている。第2ピボット部P2は、板バネ14よりも上側に配置されている。
【0023】
第3ピボット部P3は、第1ピボット部P1及び軸箱8よりも上方に配置されている。より具体的には、第3ピボット部P3は、板バネ14の端部14bよりも上方に配置されている。第3ピボット部P3は、軸箱8の車幅方向の外端よりも車幅方向内側に配置されている。より具体的には、第3ピボット部P3は、上方から見て板バネ14の端部14b及び軸箱8と重なるように配置されている。第3ピボット部P3は、車輪6bの上端よりも下方に配置されている。即ち、リンク機構20の全体が、車輪6bの上端よりも下方に配置されている。なお、車体3との間のスペースに余裕がある場合には、リンク機構20が車輪6bの上端よりも上方に突出してもよい。
【0024】
次に、リンク機構20の設計手順の一例について説明する。
【0025】
先ず、
図3(A)に示すように、空車状態、即ち、車体3(
図1参照)から台車枠5に伝達される鉛直方向荷重が空車荷重であるときの台車2を作図する。空車状態の台車2において、第1ピボット部P1を点A、第2ピボット部P2を点B、車載機器取付部Qに取り付けられる車載機器50の特定位置(例えば、アンテナ先端位置)を点Cとする。点Aは、車軸6aの中心よりも台車外側において任意の位置に設定し、点Bは、車軸6aの中心よりも台車中央側において任意の位置に設定する。点Cは、車載機器取付部Qに取り付けられる車載機器50の所定の目的位置に設定する。本例では、点Cは、点Cと車軸6aの中心との間の車両長手方向の距離Lと、レールRからの点Cの高さHとが予め定められた値になるように設定する。なお、点Cを通る鉛直線をVとする。
【0026】
次いで、
図3(B)に示すように、満車状態、即ち、車体3(
図1参照)から台車枠5に伝達される鉛直方向荷重が満車荷重であるときの台車2を作図する。満車状態の台車2では、空車状態に比べて、板バネ14が撓んで台車枠5が降下し、かつ、それに伴って軸箱8が車軸6a周りに回転する。そのため、第1ピボット部P1及び第2ピボット部P2の各位置は、満車状態と空車状態との間で変化する。満車状態の台車2において、第1ピボット部P1を点A’、第2ピボット部P2を点B’、車載機器取付部Qに取り付けられる車載機器50の特定位置を点C’とする。
【0027】
本例では、満車状態での点C’の車両長手方向位置が、空車状態での点Cの車両長手方向位置と一致するようなリンク機構20を設計するものとして説明する。点A’を中心として半径が線分ACの長さと同一である円Eを描き、この円Eと鉛直線V(点Cを通る垂線)との交点を点C’として設定する。(なお、満車状態での点C’の高さが、空車状態での点Cの高さと一致するようなリンク機構20を設計する場合には、空車状態での点Cを通る水平線と円Eとの交点を点C’として設定すればよい。)
次いで、
図3(C)に示すように、空車状態の台車2において、線分ACに線分A’C’が重なるように三角形A’B’C’を移動させ、その状態における線分BB’の垂直二等分線M上の任意の位置に第3ピボット部P3として点Dを設定する。このようにして点A〜Dの全ての位置が決定される。そして、点Aが第1ピボット部P1の位置、点Bが第2ピボット部P2の位置、点Cが車載機器50の特定位置、点Dが第3ピボット部P3の位置となるように第1リンク21及び第2リンク22の形状を決定する。
【0028】
以上に説明した構成によれば、車載機器50は、台車枠5と軸箱8とにそれぞれ回動自在に連結されるリンク機構20を介して台車2に取り付けられるので、車体3から台車枠5に伝達される鉛直方向荷重が空車荷重と満車荷重との間で変動して板バネ14が弾性変形した時に、台車枠5と軸箱8との間の相対変位と軸箱8の角変位との両方によってリンク機構20が動作する。そのため、台車枠5又は軸箱8のいずれか一方のみに車載機器取付部を連結する場合に比べ、台車枠5と軸箱8との間の相対変位と軸箱8の角変位との相互干渉を利用して、地上設備に対する車載機器取付部Qの変位を抑制可能な構成を容易に提供できる。
【0029】
そして、リンク機構20と台車枠5のブラケット24との連結点(第2ピボット部P2)が台車中央側に位置することで、リンク機構20における第2ピボット部P2から車載機器取付部Qまでの距離が長くなっても、第1ピボット部P1が車載機器取付部Qに近い軸箱8に連結されるので、リンク機構20を補強する必要が無くなり、リンク機構20の重量増加を引き起こすことなく車載機器取付部Qの振動を抑制できる。
【0030】
また、車載機器取付部Qは、台車枠5だけでなく軸箱8にも連結されるので、いわゆる側梁が省略されて板バネ14が設けられた台車2であっても、車載機器取付部Qを安定して保持できる。
【0031】
また、車載機器取付部Q、第1ピボット部P1、第3ピボット部P3、及び第2ピボット部P2は、この順で、車両長手方向において台車外側から台車中央側に向けて並んで配置されているので、リンク機構20を構成する第1リンク21及び第2リンク22が長くならず、リンク機構20の重量増加と変形とを好適に防止できる。
【0032】
また、第3ピボット部P3は、軸箱8よりも上方で且つ軸箱8の車幅方向の外端よりも車幅方向内側に配置されているので、車両限界を超えない範囲でリンク機構20をコンパクトに配置できる。更に、第1ピボット部P1は、車軸6aの中心よりも上方で且つ第3ピボット部P3よりも下方に配置されているので、車両限界を超えない範囲でリンク機構20の強度を好適に保つことができる。
【0033】
また、第1リンク21の第1ピボット部P1は、輪軸6からの振動を直接受ける軸箱8に連結されるのではなく、軸箱8との間に弾性部材(ベース部材17)が介在した部材(受部材18)に連結されているため、第1リンク21の振動の抑制効果を高めることができる。また、第1リンク21は、弾性結合部33を有するので、左右の側リンク部31が独立して変位して互いの変位が相違したときでも、側リンク部31及び連結リンク部32に作用する曲げ力や捩り力を低減できる。
【0034】
(第2実施形態)
図4は、第2実施形態に係る鉄道車両の台車102の側面図である。
図4に示すように、第2実施形態の台車102では、リンク機構120のうち第2リンク122の形態が第1実施形態と異なる。第2リンク122は、第2ピボット部P2と第3ピボット部P3との間の距離を調整可能な可変機構122aを有する。例えば、可変機構122aは、ターンバックルとし、その一端部に第2ピボット部P2を設け、その他端部に第3ピボット部P3を設ける。第2リンク122としてのターンバックルを作業者が回転操作することで、第3ピボット部P3が第2ピボット部P2に対して近接又は離反して、第1ピボット部P1を支点として第1リンク21が揺動し、第1リンク21の車載機器取付部Qの位置が変化する。
【0035】
このような構成によれば、可変機構122aにより第2ピボット部P2と第3ピボット部P3との間の距離を調整することで、車載機器取付部Qの最終位置調整を行うことができる。また、車載機器取付部Qの最終位置調整を行うための機構を車載機器50の近傍に設けずに済むため、第1リンク21の重量増が防止されて第1リンク21の振動も抑制できる。なお、他の構成は前述した第1実施形態と同様であるため説明を省略する。また、可変機構は、第2ピボット部P2と第3ピボット部P3との間の距離を調整可能なものであれば、ターンバックル以外のものでもよい。
【0036】
本発明は前述した各実施形態に限定されるものではなく、その構成を変更、追加、又は削除することができる。第1リンク21は、第1ピボット部P1において、バネ座16に連結される代わりに、軸箱8自体に連結されてもよいし、軸箱8と一体に変位する他の部材に連結されてもよい。第2リンク22,122は、第2ピボット部P2において、ブラケット24に連結される代わりに、台車枠5自体に連結されてもよいし、台車枠5と一体に変位する他の部材に連結されてもよい。点Dの設定にあたって線分A’C’が線分ACに重なるように三角形A’B’C’を移動させる代わりに、線分A’C’が線分ACに距離及び/又は角度において近づくように三角形A’B’C’を移動させた状態における線分BB’の垂直二等分線上に点Dを設定してもよい。第1リンクは、弾性結合部33を設けずに側リンク部31と連結リンク部32とが互いに剛結合されたものとしてもよい。車載機器50は、ATS/ATC装置の車上子に限られず、例えば、トリップコック等でもよい。台車は、一次サスペンションを板バネとした台車に限られず、コイルバネを用いた一般台車でもよい。軸箱支持装置は、軸梁式に限られず、各種の方式を用いることができる。
【符号の説明】
【0037】
1 鉄道車両
2,102 台車
5 台車枠
5a 横梁
6a 車軸
8 軸箱
14 板バネ(サスペンション)
16 バネ座
20,120 リンク機構
21 第1リンク
22,122 第2リンク
23,24 ブラケット
50 車載機器
122a 可変機構
P1 第1ピボット部
P2 第2ピボット部
P3 第3ピボット部
Q 車載機器取付部