特許第6726738号(P6726738)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6726738
(24)【登録日】2020年7月1日
(45)【発行日】2020年7月22日
(54)【発明の名称】蓄電素子
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20200713BHJP
   H01M 2/26 20060101ALI20200713BHJP
   H01M 2/04 20060101ALI20200713BHJP
   H01G 11/78 20130101ALI20200713BHJP
   H01M 10/058 20100101ALN20200713BHJP
【FI】
   H01M10/04 W
   H01M2/26 A
   H01M2/04 A
   H01G11/78
   !H01M10/058
【請求項の数】7
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2018-514454(P2018-514454)
(86)(22)【出願日】2015年12月4日
(65)【公表番号】特表2018-535507(P2018-535507A)
(43)【公表日】2018年11月29日
(86)【国際出願番号】EP2015078628
(87)【国際公開番号】WO2017045732
(87)【国際公開日】20170323
【審査請求日】2018年11月27日
(31)【優先権主張番号】特願2015-186091(P2015-186091)
(32)【優先日】2015年9月18日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100153224
【弁理士】
【氏名又は名称】中原 正樹
(72)【発明者】
【氏名】小川 真澄
(72)【発明者】
【氏名】河手 謙志
【審査官】 守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−026929(JP,A)
【文献】 特開2013−020944(JP,A)
【文献】 特開2012−124132(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/26
H01M 2/04
H01M 10/04
H01M 10/058
H01G 11/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極体と、集電体と、前記電極体及び前記集電体を収容した容器とを備える蓄電素子であって、
前記容器は、内面に凹部を有し、
前記電極体と前記集電体とが接続される部分の少なくとも一部または前記電極体に接続された導電部材と前記集電体とが接続される部分の少なくとも一部は、前記凹部に対向する位置に配置され
前記電極体は、本体部と、前記本体部から突出したタブ部とを有し、
前記タブ部は、前記集電体または前記導電部材と接続され、
前記凹部は、前記タブ部の突出方向に位置する前記容器の内面に形成されている
蓄電素子。
【請求項2】
前記集電体は、前記凹部の内面と、直接的に当接、または、前記集電体及び前記容器とは異なる部材を介して間接的に当接される
請求項1に記載の蓄電素子。
【請求項3】
前記集電体は、前記電極体と接続される接続部分または前記導電部材と接続される接続部分と、前記容器と締結される締結部分とを有し、
前記接続部分は、前記凹部に対向する位置に配置され、
前記締結部分は、前記容器の前記凹部と異なる部分に対向する位置に配置されている
請求項1又は2に記載の蓄電素子。
【請求項4】
前記集電体は、前記接続部分が前記締結部分よりも前記凹部内方側に配置された段差形状に形成されている
請求項3に記載の蓄電素子。
【請求項5】
前記凹部は、前記容器の薄肉部分である
請求項1〜4のいずれか1項に記載の蓄電素子。
【請求項6】
前記薄肉部分には、突出部が配置されている
請求項5に記載の蓄電素子。
【請求項7】
前記電極体は、電極が巻回されることで積層されて形成されており、
前記タブ部は、前記電極の積層方向に垂直かつ前記電極体の巻回軸を含む平面で二分された前記電極体の一方に配置されている
請求項1〜6のいずれか1項に記載の蓄電素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極体と、集電体と、電極体及び集電体を収容した容器とを備える蓄電素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電極体及び集電体と、これら電極体及び集電体を収容した容器とを備える蓄電素子において、容器内で、電極体と集電体とが接続される構成が広く知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−179214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このように構成された蓄電素子では、容器内において電極体の発電部分が配置されないデッドスペースが発生する場合がある。このようなデッドスペースは、容器内に占める当該発電部分の割合の低下に繋がるため、蓄電素子の容量の増加を妨げる要因となり得る。
【0005】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、容器内に占める電極体の発電部分の割合を大きく確保して、容量の増加が図られる蓄電素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る蓄電素子は、電極体と、集電体と、前記電極体及び前記集電体を収容した容器とを備える蓄電素子であって、前記容器は、内面に凹部を有し、前記電極体と前記集電体とが接続される部分の少なくとも一部または前記電極体に接続された導電部材と前記集電体とが接続される部分の少なくとも一部は、前記凹部に対向する位置に配置されている。
【0007】
このように、電極体または導電部材と集電体とが接続される部分を凹部の内面に対向する位置に配置することにより、電極体の発電部分(集電体と接続される部分以外の部分)を容器内面近くまで配置することができる。このため、容器内に占める電極体の発電部分の割合を大きく確保することができるので、蓄電素子の容量の増加が図られる。
【0008】
また、前記集電体は、前記凹部の内面と、直接的に当接、または、前記集電体及び前記容器とは異なる部材を介して間接的に当接されることにしてもよい。
【0009】
このように、集電体が凹部の内面と直接的または間接的に当接されることにより、集電体を容器の外方により近い位置に配置することができる。よって、電極体の発電部分をより容器内面近くまで配置することができるので、蓄電素子の容量のさらなる増加が図られる。
【0010】
また、前記集電体は、前記電極体と接続される接続部分または前記導電部材と接続される接続部分と、前記容器と締結される締結部分とを有し、前記接続部分は、前記凹部に対向する位置に配置され、前記締結部分は、前記容器の前記凹部と異なる部分に対向する位置に配置されていることにしてもよい。
【0011】
ここで、電極体または導電部材が集電体に接続される部分は、電極体の他の部分よりも外方に突出する。このため、集電体の接続部分を凹部に対向する位置に配置することにより、容器内において外方に突出する部分の配置スペースを確保しつつ、容器全体の大型化を抑制することができる。
【0012】
また、集電体の締結部分を容器の凹部と異なる部分に対向する位置に配置することにより、容器の凹部と異なる部分と集電体とを締結することができる。このため、容器と集電体とを強固に締結することができる。
【0013】
また、前記集電体は、前記接続部分が前記締結部分よりも前記凹部内方側に配置された段差形状に形成されていることにしてもよい。
【0014】
これにより、接続部分が締結部分よりも凹部内方側に配置されることにより形成された空間に、容器内において外方に突出する部分(電極体または導電部材が集電体に接続される部分)を配置することが可能となる。このため、容器全体の大型化を抑制しつつ、蓄電素子の容量の増加が図られる。
【0015】
また、前記凹部は、前記容器の薄肉部分であることにしてもよい。
【0016】
このように、容器の薄肉部分によって凹部が形成されていることにより、容器が外方に膨出することで凹部が形成されている場合に比べて、容器全体の大型化を抑制しつつ、蓄電素子の容量の増加が図られる。
【0017】
また、前記薄肉部分には、突出部が配置されていることにしてもよい。
【0018】
このように、薄肉部分に突出部が配置されることにより、容器の他部よりも剛性が低下しやすい薄肉部分の剛性を確保することができる。よって、蓄電素子の安全性を確保しつつ、蓄電素子の容量の増加が図られる。
【0019】
また、前記電極体は、本体部と、前記本体部から突出したタブ部とを有し、前記タブ部は、前記集電体または前記導電部材と接続されていることにしてもよい。
【0020】
このように、電極体がタブ部を有することにより、電極体または電極体に接続された導電部材と集電体とが接続される部分を小さくすることができる。このため、容器内面に設けられる凹部を小さくすることができるので、容器内に占める電極体の発電部分の割合を大きく確保することができ、その結果、蓄電素子の容量の増加が図られる。
【0021】
また、前記電極体は、電極が巻回されることで積層されて形成されており、前記タブ部は、前記電極の積層方向に垂直かつ前記電極体の巻回軸を含む平面で二分された前記電極体の一方に配置されており、前記凹部は、前記タブ部の突出方向に位置する前記容器の内面に形成されていることにしてもよい。
【0022】
このように、タブ部が巻回軸を含む平面で二分された電極体の一方に配置されているため、タブ部の厚みを小さくすることができる。また、凹部がタブ部の突出方向に位置する容器の内面に形成されているため、タブ部の長さを小さくすることができる。よって、容器内に占める電極体の発電部分の割合をより大きく確保することができ、その結果、蓄電素子の容量の増加が図られる。
【発明の効果】
【0023】
本発明における蓄電素子によれば、容器内に占める電極体の発電部分の割合を大きく確保して、容量の増加を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】実施の形態に係る蓄電素子の外観を示す斜視図である。
図2】実施の形態に係る蓄電素子の分解斜視図である。
図3】実施の形態に係る蓋板構造体の分解斜視図である。
図4】実施の形態に係る蓋板構造体の要部を下方から見た場合の斜視図である。
図5】実施の形態に係る蓋板を下方から見た場合の斜視図、及び、当該斜視図におけるV−V線で切断した場合の断面図である。
図6】実施の形態に係る下部絶縁部材を下方から見た場合の斜視図である。
図7】実施の形態に係る負極集電体を下方から見た場合の斜視図である。
図8】実施の形態に係る電極体の構成を示す斜視図である。
図9】実施の形態に係る負極リード板及びその周辺の構造を示す一の断面概要図である。
図10】実施の形態に係る負極リード板及びその周辺の構造を示す他の断面概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態における蓄電素子について説明する。なお、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示したものではない。
【0026】
また、以下で説明する実施の形態は、それぞれ本発明の一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、製造工程の順序などは一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0027】
まず、図1図3を用いて、実施の形態における蓄電素子10の全般的な説明を行う。
【0028】
図1は、実施の形態に係る蓄電素子10の外観を示す斜視図である。図2は、実施の形態に係る蓄電素子10の分解斜視図である。図3は、実施の形態に係る蓋板構造体180の分解斜視図である。なお、図3では、蓋板構造体180が有する正極集電体140及び負極集電体150に接合される正極リード板145及び負極リード板155は、点線で図示されている。
【0029】
また、図1及び以降の図について、説明の便宜のため、Z軸方向を上下方向として説明しているが、実際の使用態様において、Z軸方向と上下方向とが一致しない場合もある。
【0030】
蓄電素子10は、電気を充電し、また、電気を放電することのできる二次電池であり、より具体的には、リチウムイオン二次電池などの非水電解質二次電池である。蓄電素子10は、例えば、電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)またはプラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)等に適用される。なお、蓄電素子10は、非水電解質二次電池には限定されず、非水電解質二次電池以外の二次電池であってもよいし、キャパシタであってもよい。
【0031】
図1及び図2に示すように、蓄電素子10は、電極体400と、電極体400を収容する容器100とを備える。本実施の形態では、容器100の蓋板110に各種の要素が配置されることで構成された蓋板構造体180が、電極体400の上方に配置されている。
【0032】
蓋板構造体180は、容器100の蓋板110、正極端子200、負極端子300、上部絶縁部材125及び135、下部絶縁部材120及び130、正極集電体140並びに負極集電体150を有する。
【0033】
電極体400は、電極(正極及び負極)の間にセパレータが挟みこまれるように積層されて形成されており、本実施の形態では、電極が巻回されることで積層されて形成されている。具体的には、電極体400は、当該電極体400の本体部である発電部分430と、発電部分430から突出したタブ部410、420とを備える。ここで、タブ部410は正極端子200と電気的に接続される正極側のタブ部であり、タブ部420は負極端子300と電気的に接続される負極側のタブ部である。なお、電極体400の詳細な構成については、図8を用いて後述する。
【0034】
正極端子200は、正極集電体140を介して電極体400の正極と電気的に接続され、負極端子300は、負極集電体150を介して電極体400の負極と電気的に接続される。これら正極端子200等の、電極体400と電気的に接続される電極端子のそれぞれは、下部絶縁部材120等の絶縁部材によって容器100と絶縁されている。
【0035】
上部絶縁部材125及び135並びに下部絶縁部材120及び130のそれぞれは、少なくとも一部が、容器100の壁部と電極端子との間に配置された絶縁部材である。本実施の形態では、略直方体の外形を有する容器100を形成する6つの壁部のうちの、上壁部を形成する蓋板110に沿って各絶縁部材が配置されている。
【0036】
本実施の形態に係る蓄電素子10は上記構成に加え、蓋板構造体180と電極体400との間に配置された、上部スペーサ500と緩衝シート600とを有する。
【0037】
上部スペーサ500は、電極体400と蓋板110との間、より具体的には、タブ部410及び420が設けられた電極体の一端と蓋板110との間に配置され、蓋板構造体180の一部に係止される係止部510を有している。言い換えると、上部スペーサ500は、蓋板構造体180の一部に引っ掛かる部分である係止部510を有している。
【0038】
具体的には、上部スペーサ500は全体として平板状であり、かつ、2つの係止部510と、タブ部410及び420が挿入される(タブ部410及び420を貫通させる)2つの開口部520とを有している。本実施の形態では、開口部520は、上部スペーサ500において切り欠き状に設けられている。上部スペーサ500は、例えば、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、または、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)等の絶縁性を有する素材によって形成されている。
【0039】
上部スペーサ500は、例えば、電極体400の上方(蓋板110の方向)への移動を直接的もしくは間接的に規制する部材、または、蓋板構造体180と電極体400との間における短絡を防止する部材として機能する。上部スペーサ500は、2つの係止部510を有し、2つの係止部510のそれぞれは、蓋板構造体180が有する取付部122または132に係止される。
【0040】
緩衝シート600は、発泡ポリエチレンなどの、柔軟性の高い多孔質の素材で形成されており、電極体400と上部スペーサ500との間の緩衝材として機能する部材である。また、緩衝シート600にも、上部スペーサ500と同じく、タブ部410及び420が挿入される(タブ部410及び420を貫通させる)開口部が形成されている。
【0041】
また、本実施の形態では、電極体400の、電極体400と蓋板110との並び方向(Z軸方向)と交差する方向の側面(本実施の形態ではX軸方向の両側面)と、容器100の内面との間にサイドスペーサ700が配置されている。サイドスペーサ700は、例えば、電極体400の位置を規制する役割を果たしている。サイドスペーサ700は、例えば上部スペーサ500と同様に、PC、PP、PE、またはPPS等の絶縁性を有する素材によって形成されている。
【0042】
なお、蓄電素子10は、図1図3に図示された要素に加え、例えば電極体400を包み込む絶縁フィルム、電極体400と容器100(本体111)の底面との間に配置された緩衝シートなど、他の要素を備えてもよい。また、蓄電素子10の容器100の内部には電解液(非水電解質)が封入されているが、電解液の図示は省略する。
【0043】
容器100は、矩形筒状で底を備える本体111と、本体111の開口を閉塞する板状部材である蓋板110とで構成されている。また、容器100は、電極体400等を内部に収容後、蓋板110と本体111とが溶接等されることにより、内部を密封することができるものとなっている。なお、蓋板110及び本体111の材質は、特に限定されないが、例えばステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金など溶接可能な金属であるのが好ましい。また、容器100は、内面(本実施の形態では蓋板110の裏側の面)に凹部が設けられているが、これに関する蓋板110及び集電体等の部材の詳細な構造については、図4図7を用いて後述する。
【0044】
蓋板110には、図2及び図3に示されるように、安全弁170、注液口117、貫通孔110a及び110b、並びに、突起部である2つの膨出部160が形成されている。安全弁170は、容器100の内圧が上昇した場合に開放することで、容器100の内部のガスを放出する役割を有する。
【0045】
注液口117は、蓄電素子10の製造時に電解液を注液するための貫通孔である。また、図1図3に示すように、蓋板110には、注液口117を塞ぐように、注液栓118が配置されている。つまり、蓄電素子10の製造時に、注液口117から容器100内に電解液を注入し、注液栓118を蓋板110に溶接して注液口117を塞ぐことで、電解液が容器100内に収容される。
【0046】
なお、容器100に封入される電解液としては、蓄電素子10の性能を損なうものでなければその種類に特に制限はなく様々なものを選択することができる。
【0047】
2つの膨出部160のそれぞれは、本実施の形態では、蓋板110の一部が膨出状に形成されていることで蓋板110に設けられており、例えば、上部絶縁部材125または135の位置決めに利用される。また、膨出部160の裏側(電極体400に対向する側)には上方に凹状の部分である係合凹部(図示せず)が形成されており、係合凹部の一部に、下部絶縁部材120または130の係合部120bまたは130bが係合する。これにより、下部絶縁部材120または130も位置決めされ、その状態で蓋板110に固定される。
【0048】
上部絶縁部材125は、正極端子200と蓋板110とを電気的に絶縁する部材であり、下部絶縁部材120は、正極集電体140と蓋板110とを電気的に絶縁する部材である。上部絶縁部材135は、負極端子300と蓋板110とを電気的に絶縁する部材であり、下部絶縁部材130は、負極集電体150と蓋板110とを電気的に絶縁する部材である。上部絶縁部材125及び135は、例えば上部パッキンと呼ばれる場合もあり、下部絶縁部材120及び130は、例えば下部パッキンと呼ばれる場合もある。つまり、本実施の形態では、上部絶縁部材125及び135並びに下部絶縁部材120及び130は、電極端子(200または300)と容器100との間を封止する機能も有している。
【0049】
なお、上部絶縁部材125及び135、並びに、下部絶縁部材120及び130は、例えば上部スペーサ500と同様に、PC、PP、PE、またはPPS等の絶縁性を有する素材によって形成されている。また、下部絶縁部材120の、注液口117の直下に位置する部分には、注液口117から流入する電解液を電極体400の方向に導く貫通孔121が設けられている。
【0050】
正極端子200は、正極集電体140を介して、電極体400の正極に電気的に接続された電極端子であり、負極端子300は、負極集電体150を介して、電極体400の負極に電気的に接続された電極端子である。つまり、正極端子200及び負極端子300は、電極体400に蓄えられている電気を蓄電素子10の外部空間に導出し、また、電極体400に電気を蓄えるために蓄電素子10の内部空間に電気を導入するための金属製の電極端子である。なお、正極端子200及び負極端子300は、アルミニウムまたはアルミニウム合金などで形成されている。
【0051】
また、正極端子200には、容器100と正極集電体140とを締結する締結部210が設けられ、負極端子300には、容器100と負極集電体150とを締結する締結部310が設けられている。
【0052】
締結部210は、正極端子200から下方に延設された部材(リベット)であり、正極集電体140の貫通孔140aに挿入されてかしめられる。具体的には、締結部210は、上部絶縁部材125の貫通孔125a、蓋板110の貫通孔110a、下部絶縁部材120の貫通孔120a、及び、正極集電体140の貫通孔140aに挿入されてかしめられる。これにより、正極端子200と正極集電体140とが電気的に接続され、正極集電体140は、正極端子200、上部絶縁部材125及び下部絶縁部材120とともに、蓋板110に固定される。
【0053】
締結部310は、負極端子300から下方に延設された部材(リベット)であり、負極集電体150の貫通孔150aに挿入されてかしめられる。具体的には、締結部310は、上部絶縁部材135の貫通孔135a、蓋板110の貫通孔110b、下部絶縁部材130の貫通孔130a、及び、負極集電体150の貫通孔150aに挿入されてかしめられる。これにより、負極端子300と負極集電体150とが電気的に接続され、負極集電体150は、負極端子300、上部絶縁部材135及び下部絶縁部材130とともに、蓋板110に固定される。
【0054】
なお、締結部210は、正極端子200との一体物として形成されていてもよく、正極端子200とは別部品として作製された締結部210が、かしめまたは溶接などの手法によって正極端子200に固定されていてもかまわない。締結部310と負極端子300との関係についても同様である。
【0055】
正極集電体140は、電極体400と容器100との間に配置され、電極体400と正極端子200とを電気的に接続する部材である。正極集電体140は、アルミニウムまたはアルミニウム合金などで形成されている。本実施の形態では、正極集電体140は、正極リード板145を介して電極体400の正極側のタブ部410と電気的に接続される。
【0056】
負極集電体150は、電極体400と容器100との間に配置され、電極体400と負極端子300とを電気的に接続する部材である。負極集電体150は、銅または銅合金などで形成されている。本実施の形態では、負極集電体150は、負極リード板155(図2参照)を介して電極体400の負極側のタブ部420と電気的に接続される。
【0057】
なお、リード板を介した集電体とタブ部との接続部分の詳細については、図9及び図10を用いて後述する。
【0058】
ここで、蓄電素子10は、容器100の内面に後述する凹部を有し、電極体400または電極体400に接続された導電部材と集電体とが接続される部分の少なくとも一部が、凹部に対向する位置に配置されている。本実施の形態では、凹部は、タブ部410、420の突出方向に位置する容器100の内面、すなわち、蓋板110の内面に形成されている。また、本実施の形態では、正極リード板145と正極集電体140とが接続される部分、及び、負極リード板155と負極集電体150とが接続される部分の各々の少なくとも一部が、当該凹部に対向する位置に配置されている。
【0059】
なお、正極リード板145及び負極リード板155の各々は、上記導電部材の一例である。また、複数の部材が接続される部分(例えば、正極リード板145と正極集電体140とが接続される部分)とは、超音波溶接、レーザー溶接もしくは抵抗溶接等の溶接、または、機械的かしめなどの機械的な接合によって、これらの部材が接続される部分である。つまり、当該接続される部分とは、複数の部材の一部であって、互いに接続される部分として定義される。
【0060】
そこで、以下、このような特徴について、図4図7を用いて説明する。
【0061】
図4は、蓋板構造体180の要部を、下方(Z軸方向マイナス側)から見た場合の斜視図である。具体的には、同図には、蓋板構造体180の負極端子300及びその周辺部分を、下方から見た場合の斜視図が示されている。なお、同図には、蓋板構造体180に接続される負極リード板155については点線で図示されている。また、同図では、構造の理解を容易にするため、負極集電体150についてハッチングが施されている。
【0062】
同図に示すように、蓋板110の裏側(下側)には、負極リード板155と接続される負極集電体150と、当該負極集電体150を収容するように設けられた下部絶縁部材130とが、締結部310によって締結されて配置されている。
【0063】
ここで、正極側及び負極側に関する構造については次の点を除いて同様であるため、以下では、主に負極に関する事項について説明し、正極に関する事項については適宜省略して説明する。すなわち、正極側と負極側とでは、注液口117から流入する電解液を電極体400の方向に導く貫通孔121に関連する構造が異なる。具体的には、正極側の下部絶縁部材120には貫通孔121が設けられ、正極集電体140及び正極リード板145には貫通孔121に対向する部分に切り欠きが設けられている。
【0064】
図5は、蓋板110を、下方(Z軸方向マイナス側)から見た場合の斜視図、及び、当該斜視図におけるV−V線で切断した場合の断面図である。
【0065】
同図に示すように、蓋板110の内面には凹部112が設けられている。具体的には、本実施の形態では、正極側及び負極側に対応する2つの凹部112が設けられている。
【0066】
凹部112は、蓋板110の内面(Z軸方向マイナス側の面)に設けられており、当該凹部112の開口及び底面の各々が蓋板110の長手方向に長尺状の略矩形状に形成されている。本実施の形態では、凹部112は、安全弁170と貫通孔110bとの間に配置されている。このような凹部112を設けることによって、容器100の容積を増加させることができる。
【0067】
本実施の形態では、凹部112は、図5の断面図に示すように、容器100(本実施の形態では蓋板110)の薄肉部分114である。薄肉部分114は、蓋板110において、厚みT1が他の部分の厚みT2よりも小さい部分であり、例えば、蓋板110を成形する際のプレス加工によって、蓋板110の一部に設けられる。つまり、凹部112は、蓋板110の外面を略平坦としつつ、蓋板110の一部を他の部分よりも薄くすることによって、蓋板110の内面に形成された凹部である。
【0068】
なお、凹部112の配置位置は特に限定されず、例えば、蓋板110の貫通孔110bが設けられた部分に配置されていてもかまわない。つまり、凹部112の底面に貫通孔110bの開口が位置していてもかまわない。ただし、蓋板110の貫通孔110b周辺部分は締結部310による締結時に負荷がかかる箇所であるため、凹部112が薄肉部分114である場合、凹部112が貫通孔110bと異なる位置に配置されていることが好ましい。このような配置により、貫通孔110b周辺部分の蓋板110の剛性を確保することができるため、蓋板110の変形等を抑制しつつ、蓋板110を強固に締結することができる。
【0069】
また、凹部112の形状は特に限定されず、容器100に要求される剛性等を損なわない形状であればよいが、容器100の容積を増加させる観点から、凹部112の開口及び底面を大きく確保することが好ましい。
【0070】
また、薄肉部分114には、容器100(本実施の形態では蓋板110)の外方に膨出して形成された突出部としての膨出部160が配置されている。このため、凹部112の底面(蓋板110の内面)には、プレス加工等により膨出部160が容器100外方に膨出することで形成された係合凹部162が設けられている。本実施の形態では、膨出部160は、蓋板110の短手方向(Y軸方向)に長尺状に形成されており、具体的には、当該膨出部160の長手方向両側が、凹部112の側面の比較的近い位置となるように配置されている。
【0071】
なお、膨出部160の形状及び配置位置は特に限定されず、例えば、蓋板110の長手方向(X軸方向)に長尺状に形成されていてもかまわないし、凹部112の全幅または凹部外方にわたるように延在していてもかまわない。
【0072】
このように構成された蓋板110の裏側(下側)には、図6に示す下部絶縁部材130が設けられている。
【0073】
図6は、下部絶縁部材130を、下方(Z軸方向マイナス側)から見た場合の斜視図である。
【0074】
同図に示すように、下部絶縁部材130は、負極集電体150を収容する収容部131を有する。収容部131は、負極集電体150を収容できるように、負極集電体150の外形よりもわずかに大きい形状で凹んだ凹部である。収容部131は、蓋板110の凹部112に対向して配置された第一収容部131aと、蓋板110の貫通孔110bの周辺部分に対向して配置される第二収容部131bとを有する。本実施の形態では、第一収容部131aは、凹部112の内面、及び、負極集電体150に当接して配置されており、具体的には、凹部112の底面と負極集電体150とで上下方向両側から挟まれて配置されている。つまり、負極集電体150は、凹部112の内面と、当該負極集電体150及び容器100とは異なる部材(本実施の形態では、下部絶縁部材130)を介して間接的に当接されている。
【0075】
ここで、「間接的に当接する」とは、複数の部材または部分の間に介在する部材が、いずれの部材または部分にも当接することとして定義される。すなわち、本実施の形態では、下部絶縁部材130は、負極集電体150と凹部112の内面との間に配置され、かつ、負極集電体150及び凹部112の内面のいずれにも当接して配置されている。
【0076】
具体的には、下部絶縁部材130において、第一収容部131aには係合部130bが設けられ、第二収容部131bには貫通孔130aが設けられ、第一収容部131aと第二収容部131bとの間には段差が設けられている。また、下部絶縁部材130において第二収容部131bの外方には、取付部132が設けられている。
【0077】
例えば、第一収容部131aには、少なくとも1つのリブ134(本実施の形態では3つのリブ134)がX軸方向に所定の間隔をあけて配列されている。リブ134は、収容部131の全幅にわたるようにY軸方向に延在する長尺状の突出部である。このように、リブ134の長手方向に交差する方向で、複数のリブ134が所定の間隔をあけて配置されている。
【0078】
次に、負極集電体150の構造について、図4を参照しつつ図7を用いて説明する。
【0079】
図7は、負極集電体150を、下方(Z軸方向マイナス側)から見た場合の斜視図である。
【0080】
図4及び図7に示すように、負極集電体150は、電極体400または電極体400に接続された導電部材と接続される接続部分151を有し、接続部分151の少なくとも一部は、容器100の凹部112に対向する位置に配置されている。本実施の形態では、接続部分151は、電極体400に接続された負極リード板155と接続され、当該接続部分151の全体が、凹部112に対向する位置に配置されている。また、本実施の形態では、接続部分151は、下部絶縁部材130を介して、凹部112の内面と間接的に当接されている。具体的には、接続部分151は、負極集電体150の一部であって、超音波溶接、レーザー溶接もしくは抵抗溶接等の溶接、または、機械的かしめなどの機械的な接合によって負極リード板155と接続される部分である。
【0081】
なお、凹部112と接続部分151との配置は、凹部112に対向する位置(凹部112のZ軸マイナス側)に接続部分151の少なくとも一部が配置されていればよく、接続部分151の一部が凹部112に対向しない位置に配置されていてもかまわない。
【0082】
また、負極集電体150は、さらに、容器100と接続される締結部分152を有し、締結部分152は、凹部112と異なる部分に対向する位置に配置されている。具体的には、締結部分152は、負極端子300に設けられた締結部310が貫通孔150aに挿入されてスピンかしめ等でかしめられることにより、蓋板110と締結される。つまり、締結部分152は、負極集電体150の一部であって、蓋板110と締結される部分である。
【0083】
また、本実施の形態では、負極集電体150は、接続部分151が締結部分152よりも凹部112内方側に配置された段差形状に形成されている。つまり、接続部分151と締結部分152との間には、段差153が設けられており、接続部分151は、締結部分152よりも電極体400と反対側(Z軸方向プラス側)に配置されている。言い換えると、接続部分151は、締結部分152と比べて、本実施の形態において略直方体の外形を有する容器100の6つの壁のうちの上壁を形成する蓋板110の外方側に配置されている。本実施の形態では、蓋板110の凹部112が薄肉部分114であるため、接続部分151は、締結部分152よりも、蓋板110の外面に近い位置に配置されることとなる。
【0084】
また、本実施の形態では、負極集電体150は、外形が蓋板110の長手方向(X軸方向)に長尺状の略矩形の屈曲平板状に形成されている。また、負極集電体150は、長手方向の一方の端部(X軸方向マイナス側の端部)に接続部分151を有し、他方の端部(X軸方向プラス側の端部)に締結部分152を有する。ここで、タブ部420は、電極体400の比較的平坦な部分(後述する平坦部)に設けられる。このため、電極が巻回されることで形成された、いわゆる巻回型の電極体400を備える蓄電素子10において、巻回軸方向に蓋板110が配置される場合、タブ部420は蓋板110の長手方向中央近くに設けられることとなる。このため、蓋板110の長手方向に長尺状の負極集電体150を設けることにより、蓋板110の長手方向端部に配置される負極端子300と電極体400とを電気的に接続することができる。
【0085】
このような負極集電体150は、導電性を有する板状部材をプレス加工等によって段差形状に屈曲することにより形成される。
【0086】
なお、負極集電体150の形状は特に限定されず、例えば、矩形の一部に切り欠きが設けられた外形形状であってもかまわない。また、負極集電体150は、1つの部材によって構成されていなくてもよく、例えば、接続部分151と締結部分152とが異なる部材によって構成されていてもかまわない。ただし、蓄電素子10の低抵抗化を図る観点から、負極集電体150は、1つの部材で構成され、接続部分151を大きく確保した平板形状であることが好ましい。また、蓋板110との締結を強固とする観点から、締結部分152は所定の大きさを確保することが好ましい。
【0087】
次に、このような集電体(正極集電体140、負極集電体150)と接続される電極体400の構成について、図8を用いて説明する。本実施の形態では、電極体400は、導電部材としてのリード板(正極リード板145、負極リード板155)を介して集電体と接続される。
【0088】
図8は、実施の形態に係る電極体400の構成を示す斜視図である。なお、図8では、電極体400の巻回状態を一部展開して図示しており、電極体400の仮想的な巻回軸Wを一点鎖線で示している。
【0089】
電極体400は、電気を蓄えることができる発電要素であり、図8に示すように、正極450及び負極460と、セパレータ470a及び470bとが交互に積層されかつ巻回されることで形成されている。つまり、電極体400は、正極450と、セパレータ470aと、負極460と、セパレータ470bとがこの順に積層され、かつ、断面が長円形状になるように巻回されることで形成されている。
【0090】
正極450は、アルミニウムまたはアルミニウム合金などからなる長尺帯状の金属箔である正極基材層の表面に、正極活物質層が形成された電極である。なお、正極活物質層に用いられる正極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵放出可能な正極活物質であれば、適宜公知の材料を使用できる。例えば、正極活物質として、LiMPO、LiMSiO、LiMBO(MはFe、Ni、Mn、Co等から選択される1種または2種以上の遷移金属元素)等のポリアニオン化合物、チタン酸リチウム、マンガン酸リチウム等のスピネル化合物、LiMO(MはFe、Ni、Mn、Co等から選択される1種または2種以上の遷移金属元素)等のリチウム遷移金属酸化物等を用いることができる。
【0091】
負極460は、銅または銅合金などからなる長尺帯状の金属箔である負極基材層の表面に、負極活物質層が形成された電極である。なお、負極活物質層に用いられる負極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵放出可能な負極活物質であれば、適宜公知の材料を使用できる。例えば、負極活物質として、リチウム金属、リチウム合金(リチウム−アルミニウム、リチウム−鉛、リチウム−錫、リチウム−アルミニウム−錫、リチウム−ガリウム、及びウッド合金等のリチウム金属含有合金)の他、リチウムを吸蔵・放出可能な合金、炭素材料(例えば黒鉛、難黒鉛化炭素、易黒鉛化炭素、低温焼成炭素、非晶質カーボン等)、金属酸化物、リチウム金属酸化物(LiTi12等)、ポリリン酸化合物などが挙げられる。
【0092】
セパレータ470a及び470bは、樹脂からなる微多孔性のシートである。なお、蓄電素子10に用いられるセパレータ470a及び470bの素材としては、蓄電素子10の性能を損なうものでなければ適宜公知の材料を使用できる。
【0093】
正極450は、巻回軸方向の一端において外方に突出する複数の電極突出部411を有する。負極460も同様に、巻回軸方向の一端において外方に突出する複数の電極突出部421を有する。これら、複数の電極突出部411及び複数の電極突出部421は、活物質が塗工されず基材層が露出した部分(活物質未塗工部)である。
【0094】
なお、巻回軸とは、正極450及び負極460等を巻回する際の中心軸となる仮想的な軸であり、本実施の形態では、電極体400の中心を通るZ軸方向に平行な直線である。
【0095】
複数の電極突出部411と複数の電極突出部421とは、巻回軸方向の同一側の端(図8におけるZ軸方向プラス側の端)に配置され、正極450及び負極460が積層されることにより、電極体400の所定の位置で積層される。具体的には、複数の電極突出部411は、正極450が巻回によって積層されることにより、巻回軸方向の一端において周方向の所定の位置で積層される。また、複数の電極突出部421は、負極460が巻回によって積層されることにより、巻回軸方向の一端において、複数の電極突出部411が積層される位置とは異なる周方向の所定の位置で積層される。
【0096】
その結果、電極体400には、複数の電極突出部411が積層されることで形成されたタブ部410と、複数の電極突出部421が積層されることで形成されたタブ部420とが形成される。タブ部410は、例えば積層方向の中央に向かって寄せ集められて、正極リード板145と、例えば超音波溶接によって接合される。また、タブ部420は、例えば積層方向の中央に向かって寄せ集められて、負極リード板155と、例えば超音波溶接によって接合される。タブ部410と接合された正極リード板145は、正極集電体140と接合され、タブ部420と接合された負極リード板155は負極集電体150と接合される。
【0097】
つまり、本実施の形態では、タブ部410、420は、電極(ここでは、正極450及び負極460)の積層方向に垂直かつ電極体400の巻回軸Wを含む平面で二分された電極体400の一方に配置されている。具体的には、本実施の形態において、巻回型の電極体400は、対向する一対の平坦部481、482と、当該一対の平坦部を繋ぐ湾曲部483、484とを有し、タブ部410、420は平坦部482に配置されている。ここで、平坦部481、482では、電極が略一定方向(Y軸方向)に積層されている。つまり、タブ部410、420は、一定方向に電極が積層された電極体400の部分である平坦部481、482において、電極の積層方向(Y軸方向)に垂直かつ電極体400の巻回軸Wを含む平面(巻回軸Wを含むXZ平面)で二分された電極体400の一方である平坦部482に配置されている。
【0098】
よって、正極のタブ部410は、正極の巻回数と略同数の電極突出部411が寄せ集められて形成されている。負極のタブ部420も同様に、負極460の巻回数と略同数の電極突出部421が寄せ集められて形成されている。
【0099】
なお、タブ部(410、420)は、電極体400において、電気の導入及び導出を行う部分である。
【0100】
ここで、タブ部410は、基材層が露出した部分である電極突出部411が積層されることで形成されているため、発電に寄与しない部分となる。同様に、タブ部420は、基材層が露出した部分である電極突出部421が積層されることで形成されているため、発電に寄与しない部分となる。一方、電極体400のタブ部410及び420と異なる部分は、基材層に活物質が塗工された部分が積層されることで形成されているため、発電に寄与する部分となる。以降、当該部分を発電部分430と称する。
【0101】
次に、リード板を介した集電体とタブ部との接続部分及びその周辺の構成例について、図9及び図10を用いて説明する。
【0102】
図9及び図10は、実施の形態に係る負極リード板155及びその周辺の構造を示す断面概要図である。具体的には、図9には、図3におけるIX−IX線を通るYZ平面で切断した場合の蓄電素子10の一部の断面が図示されている。また、図10には、図3におけるX−X線を通るXZ平面で切断した場合の蓄電素子10の一部の断面が図示されている。なお、これらの図では、X軸方向プラス側のサイドスペーサ700(図2参照)の図示は省略されている。また、電極体400は簡略化されて図示されている。
【0103】
図9及び図10に示すように、電極体400のタブ部420と、負極集電体150とは、YZ平面で切断した断面がU字状の負極リード板155を介して電気的に接続されている。このような接続構造は、例えば以下の手順で作製される。
【0104】
平板状の負極リード板155の端部(第一端部)と電極体400のタブ部420とを、例えば超音波溶接によって接合する。さらに、負極リード板155の第一端部とは反対側の端部(第二端部)を、蓋板構造体180に組み込まれた負極集電体150の接続部分151と、例えばレーザー溶接によって接合する。ここで、負極集電体150は、予めかしめ等によって蓋板110と締結されることにより、蓋板構造体180に組み込まれている。
【0105】
その後、負極リード板155を、第一端部と第二端部との間の所定の位置で折り曲げることでU字状に変形させる。その結果、図9及び図10に示すように、断面がU字状の負極リード板155を介した、電極体400のタブ部420と負極集電体150との接続構造が形成される。
【0106】
また、電極体400と蓋板110との間に上部スペーサ500が配置されている。より詳細には、上部スペーサ500によって、タブ部420と負極リード板155との接合部分と、電極体400の発電部分430とが仕切られている。タブ部420は、上部スペーサ500に設けられた開口部520に挿入されて配置されている。また、上部スペーサ500と電極体400の発電部分430との間には、図5に示すように、緩衝シート600が挟まれている。
【0107】
なお、図9及び図10では負極リード板155周辺の構造について図示し、その説明を行ったが、正極リード板145周辺の構造も同様である。すなわち、電極体400のタブ部410と、正極集電体140とは、断面がU字状の正極リード板145(例えば図2参照)を介して電気的に接続されている。また、上部スペーサ500によって、タブ部420と正極リード板145との接合部分と、電極体400の発電部分430とが仕切られており、タブ部420は、上部スペーサ500に設けられた開口部520に挿入されて配置される。
【0108】
このように、電極体400と、正極集電体140及び負極集電体150とを、正極リード板145及び負極リード板155とを介して接続することで、電極体400のタブ部410及び420の長さ(巻回軸方向(Z軸方向)の長さ)を比較的短くすることができる。
【0109】
つまり、電極体400の製造に必要な、正極450及び負極460の電極の幅(巻回軸方向(Z軸方向)の長さ)を比較的短くすることができる。このことは、例えば電極体400の製造効率の観点から有利である。
【0110】
以上、本実施の形態に係る蓄電素子10について説明した。以下、このような蓄電素子10が奏する効果について、説明する。なお、以下では、負極側の構成(負極集電体150等)の効果について説明するが、正極側の構成(正極集電体140等)の効果についても同様である。
【0111】
本実施の形態によれば、電極体400または導電部材と負極集電体150とが接続される部分(本実施の形態では、負極リード板155と負極集電体150とが接続される部分)を凹部112の内面に対向する位置に配置することにより、電極体400の発電部分430を容器100の内面近くまで配置することができる。
【0112】
具体的には、図9及び図10に示すように、当該接続される部分を凹部112の内面に対向する位置に配置することにより、対向しない位置に配置した場合に比べて、タブ部420を凹部112の深さ(Z軸方向の大きさ、T2−T1(図5参照))だけ蓋板110側に寄せて配置することができる。よって、発電部分430の高さ(Z軸方向の大きさ)を凹部112の深さだけ蓋板110側に大きく設けることができる。言い換えると、蓋板110の内面と発電部分430との距離を近づけて配置することができる。
【0113】
このため、本実施の形態によれば、容器100内に占める電極体400の発電部分430の割合を大きく確保することができるので、蓄電素子10の容量の増加が図られる。
【0114】
また、本実施の形態によれば、負極集電体150が凹部112の内面と間接的に当接されることにより、負極集電体150を容器100の外方により近い位置に配置することができる。よって、電極体400の発電部分430をより容器100内面近くまで配置することができるので、蓄電素子10の容量のさらなる増加が図られる。
【0115】
ここで、電極体400または導電部材が負極集電体150に接続される部分は、電極体400の他の部分よりも外方に突出する。これは、電極体400において、負極集電体150に直接または導電部材を介して接続される部分は、例えば、活物質未塗工部が積層方向の中央に向かって寄せ集められることにより形成されるためである。このため、本実施の形態では、負極集電体150と負極リード板155とタブ部420とが並んで配置される部分では、当該部分の配置スペースを確保することが必要となる。ただし、容器100全体を大型化して当該配置スペースを確保することは、蓄電素子10の小型化の妨げとなる。
【0116】
そこで、本実施の形態によれば、負極集電体150の接続部分151を凹部112に対向する位置に配置することにより、容器100内において外方に突出する部分の配置スペースを確保しつつ、容器100全体の大型化を抑制することができる。
【0117】
また、容器100と負極集電体150とが薄肉部分114(凹部112)と重なる位置で締結される場合、締結作業時または締結後において、容器100または負極集電体150にガタつきが生じる虞がある。そこで、本実施の形態によれば、負極集電体150の締結部分152を凹部112と異なる部分に対向する位置に配置することにより、凹部112と異なる部分と負極集電体150とを締結することができる。このため、容器100と負極集電体150とを強固に締結することができる。
【0118】
特に、本実施の形態では、凹部112が薄肉部分114であるため、凹部112と異なる部分と負極集電体150とを締結することにより、容器100の比較的剛性が大きい部分が締結されることとなる。このため、締結による容器100の破損等の不具合の発生を低減しつつ、容器100と負極集電体150とを強固に締結することができる。
【0119】
また、本実施の形態によれば、接続部分151が締結部分152よりも凹部112内方側に配置されているため、当該配置によって形成された空間に、容器100内において外方に突出する部分(電極体400または導電部材が負極集電体150に接続される部分)を配置することが可能となる。
【0120】
具体的には、図10に示すように、接続部分151は、締結部分152よりも、例えば凹部112の深さと同程度だけ凹部112内方側(Z軸方向プラス側)に配置されている。このため、タブ部420を凹部112の深さと同程度だけ蓋板110側に寄せて配置することができる。よって、発電部分430の高さ(Z軸方向の大きさ)を凹部112の深さだけ蓋板110側に大きく設けることができる。言い換えると、蓋板110の内面と発電部分430との距離を近づけて配置することができる。
【0121】
このため、本実施の形態によれば、容器100全体の大型化を抑制しつつ、蓄電素子10の容量の増加が図られる。
【0122】
なお、接続部分151と締結部分152との高さの差分は、特に限定されず、蓋板110と負極集電体150との間に配置される下部絶縁部材130の厚み、または、各部材間に設けられる空隙等の厚み等によって規定される。
【0123】
また、本実施の形態によれば、容器100の薄肉部分(本実施の形態では蓋板110の薄肉部分114)によって凹部112が形成されていることにより、容器100が外方に膨出することで凹部が形成されている場合に比べて、容器100全体の大型化を抑制することができる。具体的には、図9及び図10に示すように、凹部112が設けられた部分と他の部分とで、容器100の高さを略一定とすることができる。このため、容器100全体の大型化を抑制しつつ、蓄電素子10の容量の増加が図られる。
【0124】
また、本実施の形態によれば、薄肉部分114に膨出部160が配置されることにより、容器100の他部よりも剛性が低下しやすい薄肉部分114の剛性を確保することができる。具体的には、例えば、容器100の内圧が上昇した場合、蓋板110が外方に膨らむように変形し得る。このとき、薄肉部分114の剛性が他部よりも低ければ、薄肉部分114において変形等が生じる虞がある。そこで、薄肉部分114に膨出部160を配置することにより、容器100の内圧上昇時における破損等を抑制することができるため、蓄電素子10の安全性が確保される。また、図9及び図10に示すように、膨出部160は、容器100の外方に向かって膨出している。つまり、膨出部160が電極体400とは反対側に向けて膨出しているため、膨出部160によって容器100の容積が削減されることがない。よって、本実施の形態によれば、蓄電素子10の安全性を確保しつつ、蓄電素子10の容量の増加が図られる。
【0125】
また、本実施の形態によれば、電極体400がタブ部420を有することにより、電極体400に接続された導電部材と集電体とが接続される部分(本実施の形態では、負極リード板155と負極集電体150とが接続される部分)を小さくすることができる。このため、容器100の内面に設けられる凹部112を過大なサイズにする必要がないため、比較的小さくすることができる。よって、容器100内に占める発電部分430の割合を大きく確保することができ、その結果、蓄電素子の容量の増加が図られる。
【0126】
また、本実施の形態によれば、タブ部420が巻回軸Wを含む平面(XZ平面)で二分された電極体400の一方(本実施の形態では、二分された電極体400のY軸方向マイナス側)に配置されているため、タブ部420の厚みを小さくすることができる。また、凹部112がタブ部420の突出方向に位置する容器100の内面(蓋板110の内面)に形成されているため、タブ部420の長さ(突出方向の大きさ)を小さくすることができる。よって、容器100内に占めるタブ部420の割合を小さくすることができるため、容器100内に占める発電部分430の割合をより大きく確保することができ、その結果、蓄電素子10の容量の増加が図られる。
【0127】
(他の実施の形態)
以上、本発明に係る蓄電素子について、実施の形態に基づいて説明した。しかしながら、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を上記実施の形態に施したものも、あるいは、上記説明された複数の構成要素を組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。
【0128】
例えば、蓄電素子10が備える電極体400の個数は1には限定されず、2以上であってもよい。蓄電素子10が複数の電極体400を備える場合、同一体積(容積)の容器100に単数の電極体400を収容する場合に比べ、容器100のコーナー部のデッドスペースを減らすことができる。このため、容器100の容積に占める電極体400の割合を増加させることが可能となり、その結果、蓄電素子10の容量の増加が図られる。
【0129】
また、蓄電素子10が備える電極体400は巻回型である必要はない。蓄電素子10は、例えば平板状極板を積層した積層型の電極体を備えてもよい。また、蓄電素子10は、例えば、長尺帯状の極板を山折りと谷折りとの繰り返しによって蛇腹状に積層した構造を有する電極体を備えてもよい。
【0130】
また、電極体400が有する正極側のタブ部410と負極側のタブ部420との位置関係は特に限定されない。例えば、巻回型の電極体400において、タブ部410とタブ部420とが巻回軸方向の互いに反対側に配置されていてもよい。また、蓄電素子10が、積層型の電極体を備える場合、積層方向から見た場合において、正極側のタブ部と負極側のタブ部とが異なる方向に突出して設けられていてもよい。
【0131】
また、蓄電素子10の各構成は、以下のように構成されていてもかまわない。なお、以下では、主に負極側の構成について説明するが、正極側の構成についても同様である。
【0132】
例えば、タブ部420は、電極(正極450、負極460)の積層方向(Y軸方向)に垂直かつ電極体400の巻回軸Wを含む平面(巻回軸Wを含むXZ平面)で二分された電極体400の両方に配置されていてもかまわない。つまり、上記実施の形態では、タブ部420が発電部分430の厚みの略半分で当該発電部分430から引き出されていたが、タブ部420は発電部分430の厚みと略同等で引き出されていてもかまわない。このような構成の場合、タブ部420の厚みが大きくなることにより多少効果は劣るものの、上記実施の形態と同様に蓄電素子10の容量の増加が図られる。
【0133】
また、容器100において、凹部112が設けられている位置は特に限定されない。例えば、凹部112は、容器100の本体111の内面に設けられていてもかまわない。また、負極側の凹部112と正極側の凹部112とが容器100の互いに異なる内面に設けられていてもかまわない。
【0134】
また、凹部112は、蓋板110の薄肉部分114でなくてもかまわない。例えば、凹部112は、平板状の部材の一部が外方に膨出されることにより、内面に形成された凹部であってもかまわない。
【0135】
また、蓋板110の薄肉部分114に膨出部160が配置されていなくてもかまわない。例えば、蓋板110の薄肉部分114は内面及び外面が共に平坦形状であってもかまわない。
【0136】
また、膨出部160に代わり、蓋板110の薄肉部分114の内面が平坦形状の突出部が配置されていてもかまわない。つまり、蓋板110の薄肉部分114には、突出部が配置されていればよく、当該突出部は、プレス成形等により膨出して形成された形状に限らず、鋳造等により突出して形成された形状であってもかまわない。このような構成であっても、膨出部160が配置された構成と同様に、容器100の他部よりも剛性が低下しやすい薄肉部分114の剛性を確保することができる。
【0137】
また、当該突出部は、容器100の外方側に突出していなくてもよく、内方側に突出していてもかまわない。このような構成によれば、突出部が外方側に突出する場合に比べて蓄電素子10の容量が多少小さくなるものの、当該場合と同様に、容器100の他部よりも剛性が低下しやすい薄肉部分114の剛性を確保することができる。
【0138】
また、負極集電体150は、段差形状に形成されていなくてもよく、接続部分151と締結部分152との間に段差153が設けられていなくてもかまわない。例えば、負極集電体150は平板形状に形成され、凹部112に対向する位置で負極リード板155と接続されていてもかまわない。
【0139】
また、負極集電体150の締結部分152が配置される位置は特に限定されず、例えば、凹部112に対向する位置に配置されてもかまわない。つまり、負極集電体150は、全体が凹部112に対向する位置に配置されてもかまわない。
【0140】
また、負極集電体150は、負極リード板155等の導電部材を介さずに電極体400と接続されてもかまわない。つまり、負極集電体150と電極体400とは、超音波溶接、レーザー溶接もしくは抵抗溶接等の溶接、または、機械的かしめなどの機械的な接合によって接続されていてもかまわない。ただし、上述したように電極体400の製造効率の観点から、負極集電体150が負極リード板155等の導電部材を介して電極体400と接続されることが好ましい。なお、当該導電部材は、負極リード板155に限定されず、例えば、導電ケーブルまたは導電フィルム等の導電性を有するものであればかまわない。
【0141】
また、負極集電体150は、下部絶縁部材130を介さずに、凹部112の底面と直接的に当接されていてもかまわない。また、負極集電体150は、下部絶縁部材130とは異なる他の部材を介して、凹部112の底面と当接されていてもかまわない。また、負極集電体150が直接的または間接的に当接される容器100の部分は、凹部112の内面であればよく、凹部112の側面であってもかまわない。
【0142】
また、負極集電体150は、接続部分151が凹部112に対応する位置に配置されていればよく、凹部112の内面と直接的または間接的に当接されていなくてもかまわない。例えば、負極集電体150は、下部絶縁部材130と離間して配置されていてもかまわない。ただし、発電部分430を大きく確保して蓄電素子10の容量の増加を図る観点から、負極集電体150は、凹部112の内面と直接的または間接的に当接されていることが好ましい。
【0143】
また、タブ部410とタブ部420は、互いに絶縁性を確保できる距離だけ離間して設けられていればよく、これらが設けられる部分は平坦部482に限定されない。例えば、平坦部481であってもかまわないし、湾曲部483、484であってもかまわない。
【産業上の利用可能性】
【0144】
本発明は、高容量化が求められる自動車等に搭載される蓄電素子等に適用できる。
図1
図2
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図10