【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の態様)
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、更に他の構成要素を付加したものについても、本願発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
【0006】
(1)床板を貫通して上端部が車内に開口し下端部が台枠内ないし台枠下に開口することで、通常時には車内に溜まった水を車外へと排出する水抜管を有する鉄道車両の水抜構造であって、外部からの熱を受けて前記水抜管の下端部開口を閉鎖するように動作する閉鎖手段を備える鉄道車両の水抜構造(請求項1)。
本項に記載の鉄道車両の水抜構造は、通常時には、上端部が車内に開口し床板を貫通して下端部が台枠内ないし台枠下に開口する水抜管により、車内に溜まった水を車外へと排出するものである。そして、この水抜管の下端部には、外部からの熱を受けて水抜管の下端部開口を閉鎖するように動作する閉鎖手段を備えるものである。このため、火災時にはその熱を受けて、水抜管の下端部開口が閉じられ、水抜管を介して外部から車内へと煙や炎が侵入することを防ぐものとなる。
(2)上記(1)項において、前記閉鎖手段は、外部からの熱を受けて、前記
水抜管を変形させることなく前記水抜管の下端部開口を閉じるものである鉄道車両の
水抜構造(請求項2)。
【0007】
(3)上記(1)(2)項において、前記閉鎖手段は、前記水抜管の少なくとも下端部を覆う箱体であって、該箱体の側壁に開口が形成されており、該箱体が所定温度を超える温度に加熱されたときに、自重により動作して前記開口を閉鎖するシャッター部を備える
鉄道車両の水抜構造(請求項3)。
本項に記載の鉄道車両の水抜構造は、上記(1)項の閉鎖手段が、側壁に開口が形成された、水抜管の少なくとも下端部を覆う箱体により構成されているものである。そしてこの箱体が所定温度を超える温度に加熱されたときに、シャッター部は自重によって箱体の開口を閉鎖するように動作することで、水抜管を介して外部から車内へと煙や炎が侵入することを防ぐものとなる。なお、「所定温度」は、常温よりも高く、通常起こり得る温度上昇、例えば夏季の気温の上昇や、鉄道車両の搭載機器が発する熱を受ける場合の温度を超えて、火災等の異常時の熱を受けて上昇し得る温度が該当するものであり、実験等を通じて適切な温度が定められるものである。
(4)床板を貫通して上端部が車内に開口し下端部が台枠内ないし台枠下に開口する水抜管を有する鉄道車両の水抜構造であって、外部からの熱を受けて前記水抜管の下端部開口を閉じる閉鎖手段を備え、 前記閉鎖手段は、前記水抜管の少なくとも下端部を覆う箱体であって、該箱体の側壁に開口が形成されており、該箱体が所定温度を超える温度に加熱されたときに、自重により動作して前記開口を閉鎖するシャッター部を備える鉄道車両の水抜構造(請求項4)。
【0008】
(
5)上記(1)から(
4)項において、前記閉鎖手段は、前記水抜管の少なくとも下端部を覆う内外二重構造の箱体であって、該箱体を構成する外箱及び内箱のうち、前記外箱は天板と、底板と、側壁とを有し、前記天板には前記水抜管が貫通した状態で前記水抜管が固定され、前記側壁の下端から上方に向かう所定範囲に開口が形成されており、前記内箱は、少なくとも底板と側壁とを有し、前記底板に前記水抜管が挿通される開口が形成され、前記外箱内部で前記水抜管の挿通方向に摺動可能であり、前記外箱に対する前記内箱の摺動範囲の最下方位置において、前記外箱の側壁に形成された開口が、前記内箱の側壁によって閉鎖され、前記最下方位置よりも上方位置に前記内箱を保持し、所定温度を超える温度に加熱されたとき、前記内箱を前記最下方位置へと落下させる保持手段を備える鉄道車両の水抜構造(請求項
5)。
【0009】
本項に記載の鉄道車両の水抜構造は、上記(1)から(
4)項の閉鎖手段が、水抜管の下端部からの所定範囲を覆う、外箱及び内箱からなる内外二重構造の箱体により構成されているものである。そして、外箱は天板と、底板と、側壁とを有し、天板には水抜管が貫通した状態で水抜管が固定されている。このため、水抜管は外箱内部を上方から下方へと向けて延び、その下端部が底板の上方に位置している。又、内箱は、少なくとも底板と側壁とを有して、底板に形成された開口に水抜管が挿通されている。この内箱は、外箱内部で水抜管の挿通方向に摺動することにより、上下方向に移動可能となっており、外箱に対する内箱の摺動範囲の最下方位置において、外箱の側壁に形成された開口が、内箱の側壁によって閉鎖される。この状態では、水抜管の下端部は外箱と内箱とに覆われ、水抜管を介して外部から車内へと煙や炎が侵入することを防ぐものとなる。
【0010】
又、最下方位置よりも上方位置に内箱を保持し、所定温度を超える温度に加熱されたときに、内箱を最下方位置へと落下させる保持手段を備えることにより、通常時は、水抜管の下端部は、外箱の側壁に形成された開口を介して外箱の外部と流体連通可能につながっており、車内に溜まった水を、水抜管を介して車外へと排出するものである。一方、火災時において、保持手段が、所定温度を超える温度に加熱されたときに、内箱を最下方位置へと落下させることで、上述のごとく、水抜管の下端部は外箱と内箱とに覆われ、水抜管を介して外部から車内へと煙や炎が侵入することを防ぐものとなる。
【0011】
(
6)上記(
5)項において、前記保持手段は、熱溶融性素材を介して一対の部材が固定された継手であって、前記一対の部材の一方が前記外箱に固定され他方が前記内箱に固定されてなる鉄道車両の水抜構造(請求項
6)。
本項に記載の鉄道車両の水抜構造は、上記(
5)項の保持手段が、熱溶融性素材を介して一対の部材が固定された継手であり、一対の部材の一方が外箱に固定され他方が内箱に固定されてなるものである。このため、通常時には、この継手を介して外箱と内箱とが、外箱に対する内箱の摺動範囲の最下方位置よりも上方位置となるように、保持される。一方、火災時においては、継手が所定温度を超える温度に加熱されて、熱溶融性素材が溶融し一対の部材が分離することで、内箱を最下方位置へと落下させるものとなる。
【0012】
(
7)上記(
5)(
6)項において、前記保持手段は、熱溶融性素材からなるねじであり、該ねじによって前記外箱と前記内箱とが友締めされてなる鉄道車両の水抜構造。
本項に記載の鉄道車両の水抜構造は、上記(
5)(
6)項の保持手段が、熱溶融性素材からなるねじであり、このねじによって外箱と内箱とが友締めされて、通常時には、外箱と内箱とが、外箱に対する内箱の摺動範囲の最下方位置よりも上方位置となるように、保持される。一方、火災時においては、ねじが所定温度を超える温度に加熱されて溶融し、内箱を最下方位置へと落下させるものとなる。
【0013】
(
8)上記(
5)から(
7)項において、前記内箱の内部に、前記水抜管の貫通孔が形成された熱膨張性充填材が配置されている鉄道車両の水抜構造(請求項
7)。
本項に記載の鉄道車両の水抜構造は、内箱の内部に配置されている熱膨張性充填材に、水抜管の貫通孔が形成されていることから、外箱内部を上方から下方へと向けて延びる水抜管は、熱膨張性充填材の貫通孔内に位置するものである。又、火災時において、保持手段が、所定温度を超える温度に加熱されたときに、熱膨張性充填材の貫通孔により、内箱がその摺動範囲の最下方位置へと落下することを阻害されることもない。そして、内箱が最下方位置へと落下し、水抜管の下端部が外箱と内箱とに覆われると共に、熱膨張性充填材も熱を受けて膨張し、内箱及び外箱の内部空間が塞がれる。又、内箱が最下方位置へと落下した状態で、熱膨張性充填材の水抜管の貫通孔も、自らの膨張によって塞がれる。その結果、水抜管の下端部の開口は、膨張した熱膨張性充填材によって塞がれることとなり、水抜管を介して外部から車内へと煙や炎が侵入することを防ぐものとなる。
【0014】
(
9)上記(
5)から(
8)項において、前記外箱の側壁は、前記水抜管の挿通方向と交差する方向の断面形状がハット形をなし、該ハット形を構成するフランジ部が前記台枠の構成部材との接合部をなしている鉄道車両の水抜構造(請求項
8)。
本項に記載の鉄道車両の水抜構造は、外箱の側壁の、水抜管の挿通方向と交差する方向の断面形状がハット形をなし、ハット形を構成するフランジ部が台枠の構成部材との接合部をなしていることから、このフランジ部を介して外箱が台枠に固定されるものである。この場合、台枠構成部材の壁面も、外箱内部において内箱を摺動可能に収容するための、空間を構成する要素として用いられるものとなる。
【0015】
(
10)上記(
9)項において、前記内箱の側壁は、前記水抜管の挿通方向と交差する方向の断面形状がチャネル形をなし、該チャネル形を構成する底部が前記外箱に形成された開口に面している鉄道車両の水抜構造(請求項
9)。
本項に記載の鉄道車両の水抜構造は、内箱の側壁の、水抜管の挿通方向と交差する方向の断面形状がチャネル形をなし、チャネル形を構成する底部が外箱に形成された開口に面していることから、内箱の側壁は、上記(
9)項の、水抜管の挿通方向と交差する方向の断面形状がハット形をなす外箱の側壁に位置決めされ、かつ、摺動案内されるものである。そして、火災時において、保持手段が、所定温度を超える温度に加熱されたときに、内箱が摺動範囲の最下方位置へと落下することで、内箱のチャネル形を構成する底部が前記外箱に形成された開口を閉鎖するものとなる。