特許第6726757号(P6726757)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6726757
(24)【登録日】2020年7月1日
(45)【発行日】2020年7月22日
(54)【発明の名称】自動ポンピング真空ロータシステム
(51)【国際特許分類】
   F04D 17/16 20060101AFI20200713BHJP
   F04C 25/02 20060101ALI20200713BHJP
   F04B 37/16 20060101ALI20200713BHJP
   F04D 29/44 20060101ALI20200713BHJP
   H02J 15/00 20060101ALI20200713BHJP
【FI】
   F04D17/16
   F04C25/02 A
   F04B37/16 E
   F04D29/44 Q
   H02J15/00 A
【請求項の数】15
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2018-541384(P2018-541384)
(86)(22)【出願日】2017年1月25日
(65)【公表番号】特表2019-507276(P2019-507276A)
(43)【公表日】2019年3月14日
(86)【国際出願番号】EP2017051527
(87)【国際公開番号】WO2017137257
(87)【国際公開日】20170817
【審査請求日】2018年11月7日
(31)【優先権主張番号】16155415.9
(32)【優先日】2016年2月12日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516000125
【氏名又は名称】エンリッチメント テクノロジー カンパニー リミテッド ツヴァイクニーデルラッスング ドイチュラント
(74)【代理人】
【識別番号】110002217
【氏名又は名称】特許業務法人矢野内外国特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ライシェル,フーベルト
(72)【発明者】
【氏名】ツィマーマン,エトヴィン
【審査官】 大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭53−76372(JP,U)
【文献】 特表2015−532700(JP,A)
【文献】 TSENTRAL'NOE KONSTRUKTORSKOE BJURO MASHINOSTROENIJA,ロシア国特許第1433133号公報,ロシア,1994年 3月15日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 17/16
F04B 37/16
F04C 25/02
F04D 29/44
H02J 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空ロータシステム(1)であって、回転軸(R)に垂直な両端(2a、2b)で開いている、ロータジャケット(21)を有し、また前記ロータジャケット(21)の内側(21i)に接続され、ロータ(2)が回転できるように適切なベアリング(24)に適切に取り付けられる少なくとも2つのハブ(22、23)を備える中空ロータ(2)を含み、また前記ロータ(2)を収容し、機械式ハウジング(3)からガス(G)を排出するための少なくとも1つのガス出口開口部(31)を有する機械式ハウジング(3)を含み、また前記ガス出口開口部(31)に接続され、前記機械式ハウジング(3)に前段真空圧力(VD)を発生させる目的の少なくとも1つの前段真空ポンプ(41)を有する真空システム(4)を含み、またガス(G)を効率的に集めるために、前記ロータジャケット(21)と接触することなく前記ロータジャケット(21)の前記内側から適切な距離(A)で、前記ハブ(22)と前記ロータジャケット(21)の前記付属する開口端(2a)との間で前記機械式ハウジング(3)内に配置されたガス収集開口部(53)を備える少なくとも1つの第1のガス除去装置(5、51)を含み、前記第1のガス除去装置(5、51)は、前記集められたガスを排出するための前記ガス出口開口部(31)に接続させて、200Hzよりも高い回転数で、前記ロータの前記回転に起因して、前記ロータ(2)自体が前記ロータジャケット(21)の前記内側(21i)に沿って移動している前記ガス(G)の流れの一部を、少なくとも前記第1のガス除去装置(5、51)内に移動し(F)、結果として前記ロータ自体が前記機械式ハウジング(3)内のガス圧を前記前段真空圧力(VD)のレベルからさらに低い作動真空圧力(BD)に低下させることができるように配置されており、
前記第1のガス除去装置(5、51)の場合と同様に、少なくとも1つの第2のガス除去装置(5、52)は、前記ハブ(23)と、そのハブ(23)に対応して属する前記ロータジャケット(21)の一端(2b)との間に、ガス(G)を収集するために、前記ロータジャケット(21)と接触することなく前記ロータジャケット(21)の前記内側(21i)から適切な距離(A)で配置される、真空ロータシステム(1)。
【請求項2】
前記第1のガス除去装置(5、51)の前記ガス収集開口部(53)と前記ロータジャケット(21)との間の距離(A)は、当該の場所の前記ロータ(2)の半径(RD)の10%未満であることを特徴とする、請求項1に記載の真空ロータシステム(1)。
【請求項3】
前記ガス収集開口部(53)は、平均直径(D53)を有し、前記ガス(G)の流れに垂直な前記ロータジャケット(21)に沿って配向された効率的なガス収集面(531)を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の真空ロータシステム(1)。
【請求項4】
前記第1のガス除去装置(5、51)のガス収集開口部(53)は、前記ロータジャケット(21)の前記開口端から軸方向において、前記平均直径(D53)の少なくとも3倍の距離(D21)で、前記ロータジャケット(21)内に配置されることを特徴とする、請求項3に記載の真空ロータシステム(1)。
【請求項5】
前記平均直径(D53)は当該の場所での前記ロータ(2)の前記半径(RD)の3%〜10%であることを特徴とする、請求項に記載の真空ロータシステム(1)。
【請求項6】
前記第1のガス除去装置(5、51)は、前記第1のガス除去装置(5、51)を経る前記ガス(G)の流れの乱れを最小にするのに適した前記ロータジャケット(21)の前記内側(21i)に沿った前記ガス(G)の流れに平行な断面を有し、前記断面は円形または長円形であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の真空ロータシステム(1)。
【請求項7】
前記ハブ(22、23)は、前記中空ロータ(2)の前記ハブ(22、23)間に中間容積部(25)を画定し、前記第2のガス除去装置(5、52)は、集めた前記ガス(G)が前記中間容積部(25)に移動するように配置されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の真空ロータシステム(1)。
【請求項8】
前記ハブ(22、23)は、ガス不透過であるように構成され、気密な中間容積部(25)を形成し、少なくとも部分的なガス吸収層(26)が、前記中間容積部(25)の内側(25i)に配置されることを特徴とする、請求項に記載の真空ロータシステム(1)。
【請求項9】
前記第2のガス除去装置(5、52)に面する前記ハブ(23)はガス不浸透性であり、前記第1のガス除去装置(5、51)に面する前記ハブ(22)は少なくとも部分的にガス透過性であるため、前記第2のガス除去装置(5、52)によって前記中間容積部(25)に移動するガス(G)は、前記ガス透過性のハブ(22)を経て前記第1のガス除去装置(5、51)の方向に出ることが可能であることを特徴とする、請求項に記載の真空ロータシステム(1)。
【請求項10】
前記ガス透過性ハブ(22)は、ガス透過性を達成するのに役立つ対称的な孔(27)の配列を含むことを特徴とする、請求項に記載の真空ロータシステム(1)。
【請求項11】
前記第2のガス除去装置(5、52)は、集めた前記ガス(G)を排出するために、前記ガス出口開口部(31)に直接接続させることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の真空ロータシステム(1)。
【請求項12】
前記第2のガス除去装置(5、52)と前記ガス出口開口部(31)との間で前記直接接続(28)させることは、前記2つのハブ(22、23)を接合するシャフト(29)を通って延びることを特徴とする、請求項11に記載の真空ロータシステム(1)。
【請求項13】
前記真空ロータシステム(1)は、前記ガス出口開口部(31)とは反対側にある、前記機械式ハウジング(3)の側にある別のガス出口開口部(32)を備え、前記第2のガス除去装置(5、52)は、集めた前記ガス(G)を排出するために前記真空システム(4)に接続される、前記ガス出口開口部(32)に接続させることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の真空ロータシステム(1)。
【請求項14】
請求項1に係る複数の真空ロータシステム(1)を備えたフライホイールエネルギー貯蔵ユニットであって、各前記機械式ハウジング(3)内に前段真空圧力(VD)を発生させるために、各真空ロータシステム(1)の前記真空システム(4)が組み合わされ、各機械式ハウジング(3)内に前記前段真空圧力(VD)を供給する少なくとも1つの前段真空ポンプ(41)を有する共同のエネルギー貯蔵真空システムを形成する、フライホイールエネルギー貯蔵ユニット。
【請求項15】
回転軸(R)に垂直な両端(2a、2b)で開いている、ロータジャケット(21)を有し、また前記ロータジャケット(21)の内側(21i)に接続され、前記ロータ(2)が回転できるように適切なベアリング(24)に適切に取り付けられる少なくとも2つのハブ(22、23)を備える中空ロータ(2)を含み、また前記ロータ(2)を収容し、ガス(G)を前記機械式ハウジング(3)から排出するための少なくとも1つのガス出口開口部(31)を有する機械式ハウジング(3)を含む、請求項1に記載の前記真空ロータシステム(1)を動作させる方法であって、
前記ガス出口開口部(31)に接続され、少なくとも1つの前段真空ポンプ(41)を有する真空システム(4)により、前記機械式ハウジング(3)に前段真空圧力(VD)を発生させるステップと、
前記ロータ(2)自体によって、前記機械式ハウジング(3)内の圧力を前記前段真空圧力(VD)のレベルからさらに低い作動真空圧力(BD)に低下させるステップであって、それにおいて前記機械式ハウジング(3)においてガス(G)を効率的に集めるためのガス収集開口部(53)を有する少なくとも1つの第1のガス除去装置(5、51)は、前記ロータジャケット(21)と接触することなく前記ロータジャケット(21)の内側(21i)から適切な距離(A)で、前記ハブ(22)と前記ロータジャケット(21)の前記付属する開口端(2a)との間に配置され、前記第1のガス除去装置(5、51)の場合と同様に、少なくとも1つの第2のガス除去装置(5、52)は、前記ハブ(23)と、そのハブ(23)に対応して属する前記ロータジャケット(21)の一端(2b)との間に、ガス(G)を収集するために、前記ロータジャケット(21)と接触することなく前記ロータジャケット(21)の前記内側(21i)から適切な距離(A)で配置され、前記第1のガス除去装置(5、51)及び第2のガス除去装置(5、52)は、集められた前記ガス(G)を排出できるように前記ガス出口開口部(31)に接続させて、200Hzよりも高い回転数で、前記ロータの回転に起因して、前記ロータ(2)自体が前記ロータジャケット(21)の前記内側に沿って移動している前記ガス(G)の流れの一部を少なくとも前記第1のガス除去装置(5、51)内に移動させる(F)ステップとを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、その配置により、自動ポンピングするように構成されている真空ロータシステムに関し、またこの真空ロータシステムを動作させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ロータは機械の一部を回し(回転させ)たり、凝集したりする。ロータは、回転運動(回転)が最小限の摩擦損失で保存され、必要に応じて使用できるようにしているという点で、運動エネルギー(回転エネルギーおよび慣性)を貯めるいわゆるフライホイールとして使用されることが多い。さらに、フライホイールは、衛星や飛行機を安定させるためにも使用する。
【0003】
エネルギー貯蔵用のフライホイール(フライホイールエネルギー貯蔵ユニット)の場合、回転エネルギーの形の電気エネルギーを回転式フライホイールに蓄え、必要なときに、このエネルギーを電気エネルギーに戻して消費者に放出することができる。大部分は、このようなフライホイールエネルギー貯蔵ユニットは、その回転速度および質量に依存して、一定量のエネルギーを貯蔵するロータとして中空シリンダを有する。このようなエネルギー貯蔵ユニットの貯蔵容量は、その最大回転速度によって制限される。回転体(ロータ)のエネルギーの量を算出する式から、高エネルギー量の回転体(ロータ)を、高質量ではなく回転速度が速くなるように優先的に構成すべきであることが示されている。フライホイールエネルギー貯蔵ユニットのロータは、負荷の状態に応じて、例えば毎分50,000回転する速度で回転することができる。典型的な速度の範囲は、15,000rpmと最大回転速度との間である。フライホイール貯蔵ユニットのロータは、できるだけ損失を少なくして回転できるようにして、可能な限り少ない損失でエネルギーを貯蔵することができるように、機械式ハウジング内に収容し、そうすることにより、フライホイールの作動中に、個々のロータハウジングに可能な限り低い圧力が発生する。ロータハウジングのガスの圧力および密度が低いほど、機械式ハウジングの充填ガスに対するロータの摩擦損失は低くなる。このため、ハウジングは通常排気される。フライホイールの効率的な低損失運転にとって必要な最小限の真空を、付属のフライホイールエネルギー貯蔵ユニットに発生させるために、10−3mbar以下の作動圧力を供給し、かつフォアポンプ(例えば、回転ベーンポンプ)とメインポンプ(例えば、ターボ分子ポンプ)からなるポンプシステムを各フライホイールに使用する。いくつかのフライホイールを有するエネルギー貯蔵システムのフライホイールエネルギー貯蔵ユニットすべてが接続されている適切に構成された配管システムによって、個々のフォアポンプがすべてのフライホイールの前段真空圧力を生成できていても、個々のメインポンプは、各フライホイール(ロータ)の機械式ハウジングにおいて必要な作動真空を発生させるために、各々機械式ハウジングに直接接続しなければならない。この目的のために、メインポンプとしてターボ分子ポンプが一般に使用されている。ターボ分子ポンプは、高価な部品であり、メンテナンスに多くの作業が必要である。このような貯蔵ユニットで並行して動作させる複数のフライホイール、例えば32個のフライホイールを有するエネルギー貯蔵ユニットの場合、対応する数のターボ分子ポンプを用いることも必要であり、これにより設置の価格が著しく高額になる。さらに、このようなエネルギー貯蔵ユニットを作動させるとき、ロータから汚れや粒子が脱落することが予想される。しかし、ターボ分子ポンプは、汚れや粒子に非常に弱く、それにより、係る設置が失敗する傾向が強まる。さらに、ターボ分子ポンプを使用する場合、大きな吸引用断面が必要である。その上、不都合な場所に設置された大きな開口部は、いわゆるロータクラッシュが発生した場合にガスまたは塵埃が出るリスクが相当高くなる。
【0004】
エネルギー貯蔵ユニットの市場では、フライホイールエネルギー貯蔵ユニットは、例えばバッテリ貯蔵装置などの他のエネルギー貯蔵技術と競合している。この理由から、できるだけ安価に製造できるが、低損失で、信頼性があり、メンテナンスの作業が少なく、効率的に作動することができるフライホイールエネルギー貯蔵ユニットが必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
本件の背景に先行して、本発明の目的は、安価に製造することができ、効率的に、低損失で、信頼性が高く、メンテナンス作業がわずかで作動し得るフライホイールエネルギー貯蔵ユニットを提供することである。
【0006】
本件の目的は、真空ロータシステムであって、回転軸に垂直な両端で開いているロータジャケットを有し、またロータジャケットの内側に接続され、ロータが回転できるように適切なベアリングに適切に取り付けられる少なくとも2つのハブを備える中空ロータを含み、またロータを収容し、ガスを機械式ハウジングから排出するための少なくとも1つのガス出口開口部を有する機械式ハウジングを含み、またガス出口開口部に接続され、機械式ハウジングにおいて前段真空圧力を発生させる目的の少なくとも1つのフォアポンプを有する真空システムを含み、またガスを効率的に集めるために、ロータジャケットと接触することなくロータジャケットの内側から適切な距離で、ハブとロータジャケットの付属する開口端との間で機械式ハウジング内に配置されたガス収集開口部を備える少なくとも1つの第1のガス除去装置を含み、前述の第1のガス除去装置は、集められたガスを排出するためのガス排出開口部に接続させて、200Hzよりも高い回転数で、ロータの回転に起因して、ロータ自体がロータジャケットの内側に沿って移動しているガス流の一部を、少なくとも第1のガス除去装置内に移動し、結果としてロータ自体が機械式ハウジング内のガス圧を前段真空圧力のレベルからさらに低い作動真空圧力に低下させることができるように配置されている、真空ロータシステムにより達成させる。
【0007】
本発明に係る真空ロータシステムは、例えば、フライホイールエネルギー貯蔵ユニットに使用される。フライホイールエネルギー貯蔵ユニットのエネルギーの量を最大にするために、真空ロータシステムのロータは、固有の重量が軽く、最大の回転速度にされる。なぜなら、最大エネルギーの量になると、回転速度は二次的な寄与をするが、対照的に、重量は直線的にしか寄与しないからである。この文脈では、ロータ(または回転体も)は、2つ以上のハブを介して、フライホイールエネルギー貯蔵ユニットのベアリングおよび駆動要素に接合される。一方では、ハブは、ベアリング要素と駆動要素とのロータジャケットの接続および取り付けを創出しなければならず、他方では、駆動軸からロータのジャケットへ、またその逆のねじりモーメントの伝達を確実にしなければならない。ハブは、ロータジャケットに作用する遠心力のために50,000rpmを超える非常に高い回転速度で半径方向および接線方向の負荷に確実に耐えるように、また、ロータジャケットによって加えられる重量の負荷を支持するように、機械的な負荷に対して十分に強いことが特徴である。フライホイールエネルギー貯蔵ユニットを含む用途におけるロータの公称回転数は、例えば750Hzの範囲内であり、これにより、エネルギーが集められているときに回転数が増加し、エネルギーが放出されるときに回転数が減少する。ロータジャケットおよびハブは、例えば、CFRPラミネートで作られる。このような材料は、十分に頑丈であり、フライホイールエネルギー貯蔵ユニットにおけるロータクラッシュの場合に好ましい衝突挙動を示し、また軽量であるため、さらに簡単にロータをベアリングに取り付けることができる。構成に応じて、ハブは、ジャーナルによって付属のベアリングに互いに分離して取り付けてもよく、さもなければ2つの対向する端部が付属のベアリングに取り付けられる連続シャフトで接合してもよい。真空ロータシステムまたはフライホイールエネルギー貯蔵ユニットのロータは、安全上の理由のためだけでなく、作動真空を発生させるために、機械式ハウジング内に収容されている。適切な機械式ハウジングは、例えば鋼製であり、その壁厚は、ロータの衝突の負荷を補うのに十分である。当業者は、ロータの回転エネルギーに基づいて必要最小壁厚を計算することができる。
【0008】
付属の真空ロータシステムのロータがフライホイールエネルギー貯蔵ユニットで最低限の損失で回転し、したがって最低限の損失でエネルギーを貯蔵することができるように、真空システムは1つ以上のフォアポンプ、例えばロータリーベーンポンプを使用し、ロータを収容している機械式ハウジング内の圧力を、例えば、10−2mbarの桁の前段真空圧力にまでポンピングする。しかし、この圧力は、ロータまたはフライホイールエネルギー貯蔵ユニットの長期間の低摩擦、さらにはしたがって損失の低い動作を可能にするほど十分に低いわけではない。機械式ハウジング内のガスの圧力および密度が低いほど、機械式ハウジング内の残留ガスに対するロータの摩擦損失が小さくなる。本発明に係る本システムは、有利には、本発明に係る適切に配置されたガス除去装置を使用することによるロータの自動ポンピング効果のために、少なくとも1桁の大きさの前段真空圧力をさらに低減するのに適しており、例えば、ターボポンプのようなメインポンプの使用も避けながら、作動真空として10−3mbar以下の圧力を確保することができる。
【0009】
ロータの回転に起因して、機械式ハウジング内に存在するガスは、同様に、ロータの摩擦の作用によって回転する。ロータジャケットと機械式ハウジングとの間にはわずかな隙間しか存在していないが、中空ロータはロータジャケットの内側に比較的大きな直径を有し、その結果機械式ハウジング内に存在するガスの大部分が、ロータの内部または回転するロータジャケットによって画定される容積部の内側に位置する。対応して回転するガスは、遠心力によってロータジャケットの内側に押し付けられ、回転するロータジャケットと共にロータの回転軸の周りを流れる。遠心力により、ロータジャケットの半径に沿った圧力勾配を有する圧力分布が発生し、それにより、圧力はまさに、半径方向で見てロータジャケットの内側表面において最大であり、回転軸で最小である。次いでロータジャケットの内側近傍にガス除去装置を設置し、そのガス除去面が、回転するロータジャケットと共に回転するガス流に対向する方向で垂直に配向されている場合、ロータ内部の最高圧力がロータジャケットの表面の内側近傍に広がるので、回転するガスが、このガス除去開口部を経て非常に効率的に放出できる。同じ原理が、ロータジャケット内の他の位置のガス除去開口部を通ってガスを集めることにもつながるが、そこで広がるより低い圧力(半径方向の圧力勾配)のために、得られるポンピングの能力は、ロータの回転およびガスの除去に起因して回転軸に近い他の点で著しく効率が悪い。適切な距離は、−ロータの意図した回転数において、ガス除去装置とロータジャケットの内側との間の接触が、ガス除去装置と、想定するにまたロータジャケットとを壊すので、そのような望ましくない接触を絶対に避けること、および−理想的な場合に、最も高い局所的な圧力の場合にロータジャケットの内側で機械式ハウジングからロータ内のガスを直接移動させることを望んでいることから、最小距離間の妥協点を構成する。
【0010】
この理由のために、一実施形態では、第1のガス除去装置のガス収集開口部とロータジャケットとの間の距離は、この場所でのロータの半径の10%未満である。円筒状ロータジャケットの場合、この場所での半径は、ロータジャケットの全体的な位置に依存しない半径である。他の形状のロータジャケットの場合、上記の半径は、ロータジャケットがガス除去装置の位置で回転軸に対して垂直である半径を示す。好ましい実施形態では、ガス除去開口部とロータジャケットの内側との間の距離は、この場所でのロータの半径の1%〜5%である。
【0011】
異なる形状および構成を有する装置をガス除去装置として使用することができ、これらの装置は、ガス除去開口部とガス出口開口部との間でガスに対して開放されたチャネルを有する。この文脈では、ロータの構成およびベアリングの構成により、ロータまたはハブの同じ側にいくつかのガス除去装置を配置することが可能になるならば、1つ以上のガス除去装置を同じガス出口開口部に接続することができる。ガス除去装置を構成する材料は、わずかなまたは無視できるレベルだけしか固有のガスの放出を示さない、真空にできる材料にすべきである。例えば、ガス出口開口部からロータジャケットまでの半径方向に延び、ロータジャケットに達する前に曲率を有するパイプ接続部をガス除去装置として使用することができ、その結果開いているパイプ開口部は、ロータジャケットの内側に沿ったガスの流れの方向に向き、それによって、ガス除去面は、ガスの流れに対して垂直に配向された表面を示す。この文脈では、ガス除去開口部は、例えば円形、長円形または楕円形などの様々な形状を有することができる。過度に鋭利な形状は、ガス流に生じる乱れのために不適切であり得る。ここで、ガス出口開口部は、ガス除去装置がガス出口開口部に接続されていない場合、機械式ハウジング内のガスが直接的に排出される機械式ハウジング内の開口部を示す。ガス除去装置がガス出口開口部を介して既に除去しているガスは、機械式ハウジングの外側に輸送されるのみである。
【0012】
本発明のおかげで、このような汚れや粒子に弱いターボポンプの必要がもはやなくなるので、真空ロータシステムの汚れや粒子に対する耐性はかなり向上する。その結果、真空ロータシステムは非常にメンテナンスのしやすいものとなりまた、信頼性があるものとなる。また、ターボポンプを避けることで、システム全体の部品のコストが低減する。それにもかかわらず、本発明に係るシステムでは、真空ロータシステムが非常に低損失かつ効率的な方法で作動し続けることができるように、少なくとも必要な作動圧力を生成することが可能である。本発明により、真空ロータシステムの可撓性も著しく向上する。ガス除去装置は、(回転軸に対して平行な方向で見られるように)取り付け点の近くに、またはスタンドに近接して設置することができるが、その設置の結果、クラッシュ時にガスや塵が出るリスクがある。そのリスクは、より高い安定性および横断面の縮小のためにかなり減少する。
【0013】
結果として、本発明は、例えば、フライホイールエネルギー貯蔵ユニットを安価に製造することができ、効率的に、低損失で、確実かつ少量のメンテナンス作業で動作することができるフライホイールエネルギー貯蔵ユニット用の真空ロータシステムを提供する。
【0014】
一実施形態では、ガス収集開口部は、平均直径を有し、ガス流に対して垂直にロータジャケットに沿って配向された効率的なガス収集面を含む。ガス流に垂直な係る向きの場合、ガス除去開口部を通るガスの収集は最大のものになる。ここで、平均直径とは、ガス除去開口部の端部のすべての点とそれらの幾何学的中間点との間の距離に基づいて平均化された値をいう。円の場合、縁のすべての点の半径は同じであることが分かっているため、円の平均半径は円の半径と同じである。他の平均直径は、円形と異なる表面の場合に得ることができる。
【0015】
一実施形態では、第1のガス除去装置は、ロータジャケットの内側に、ロータジャケットの開口端から平均直径の少なくとも3倍に相当する距離に配置される。この距離は、ロータジャケットの開口端での乱流または排水効果により生じる、ガス除去開口部を経るガス除去の減少を回避する。ガス流は、上記の距離の場合、またはそれより距離が大きい場合に安定し、その結果、ガスの除去に最適なものとなる。上記の最小距離を維持する限り、残りの距離は、所望のように選択することができる。
【0016】
別の実施形態では、平均直径は、この場所でのロータの半径の3%〜10%である。係る大きさのガス除去面は、最大のガス除去能力を備える。さらに小さな開口部では、機械式ハウジングからのガスの移動がより少なくなる。開口部が大きいと、ガスの流れが過度に妨げられ、そのことが同様にガスの除去に悪影響を与える。
【0017】
別の実施形態では、第1のガス除去装置は、第1のガス除去装置を通るガス流の乱れを最小にするのに適したロータジャケットの内側に沿ったガス流に平行な断面を有する。この乱れはまた、避けるか、最小化すべきである。ガスの除去の減少にもつながるからである。このため、好ましい実施形態では、断面は円形または長円形である。
【0018】
別の実施形態では、第1のガス除去装置の場合と同様に、少なくとも1つの第2のガス除去装置が、その他方のハブと、その他方のハブに対応するロータジャケットの一端との間に、ガスを収集するために、ロータジャケットと接触することなくロータジャケットの内側から適切な距離で配置される。この第2のガス除去装置(および、場合によってはいくつかの第2のガス除去装置)のおかげで、ロータの他の側でも、したがって第1のガス除去装置の他の側でも、機械式ハウジングからまたはロータの開口端からガスを移動させ、それによって作動圧力をさらに改善することができる。
【0019】
一実施形態では、ハブは、中空ロータのハブ間に中間容積部を画定し、第2のガス除去装置は、集めたガスが中間容積部に移動されるように配置される。この様式では、ガスはロータジャケットと機械式ハウジングとの間の空隙に接続されたロータの領域から除去される。したがって、ガスの圧力は、少なくともギャップ内で低下し、ロータの動作中の摩擦損失がさらに低減する。しかし、ロータの回転数が低下するとすぐに、中間容積部に一時的に貯蔵されたガスは再びロータの他の領域に出ることができる。その結果、この解決策は、摩擦損失を一時的に減少させる一時的な中間貯蔵手段を構成するのみである。
【0020】
別の実施形態では、ハブは、気密性の中間容積部を形成するためにガス不透過性であるように構成されている。この様式では、中間的に貯蔵されているガスが確実に一時的に集められる。好ましい実施形態では、少なくとも部分的に、ガス吸収層が中間容積部の内側に配置される。このガス吸収層は、ガスを永続的に結合するか、あるいは、相当に大きな緩衝材を構成し、機械式ハウジング内の作動圧力を永続的に、さもなければ長時間にわたって低下させる。適切な接着層の例は、活性炭または他の天然または合成ゼオライトまたは分子ふるいとも呼ばれる他の物質の層である。分子ふるいは、大きな内部表面積(例えば、600〜700m2/g)を有し、分子の直径の桁が均一な細孔直径を有し、したがって、ガスに対する高い吸着能力を特徴とする。
【0021】
一実施形態では、第2のガス除去装置に面するハブはガス不浸透性であり、第1のガス除去装置に面するハブは少なくとも部分的にガス透過性であるため、第2のガス除去装置によって中間容積部に移動するガスは、ガス透過性のハブを経て第1のガス除去装置の方向に出ることが可能である。第2のガス除去装置は、ガスをロータジャケットの他方の開放端部から中間容積部内に移動し、これにより中間容積部内の圧力の上昇を確実のものとして、中間容積部内の圧力がハブの外側よりも高くなるようにする。このため、ガスが中間容積部からガス透過性ハブを通って第1のガス除去装置の方向に出て、次いで後者が機械式ハウジングからガスを移動させ、それにより作動圧力をさらに低下させることができる。中間貯蔵部にあるガスの量の排気は、低回転速度でも改善される。第1の(より低い)ハブのガス透過性は、適切なガス透過性材料またはガス透過性通路、例えば切欠きによって達成することができる。好ましい実施形態では、ガス透過性ハブ(第1または下部ハブ)は、ガス透過性を達成するのに役立つ対称的な孔の配列を含む。この対称的な配置は、ハブの回転中にアンバランスになるのを防止することを目的としている。この文脈では、孔はガス透過性を付与し、ガス透過性材料と比較して非常に正確に予測することができる。
【0022】
別の実施形態では、第2のガス除去装置が集めたガスを排出するために、第2のガス除去装置はガス出口開口部に直接接続する。その結果、第2のガス除去装置によって移動されるガスは、中間容積部およびガス透過性が外部に向かうガス流に影響を及ぼすことなく、機械式ハウジングから直接移動させることができる。好ましい実施形態では、第2のガス除去装置とガス出口開口部との間の直接的な接続は、2つのハブを接合するシャフトを通って延びる。既存のシャフトを貫通する孔を介して、ロータに追加の構成要素を組み込む必要なく、ガスを遠ざけるためにガスチャネルを設けることができる。
【0023】
別の実施形態では、真空ロータシステムは、他方のガス出口開口部とは反対側にある、機械式ハウジングの側にある別のガス出口開口部を備える。この文脈では、第2のガス除去装置が集めたガスを排出するために、第2のガス除去装置が他方のガス収集開口部に接続される。それはひいては、前段真空システムに接続される。この実施形態では、第2のガス除去装置によって集められたガスは、最短経路を介して機械式ハウジングから移動できる。これは、真空という点でポンプの抵抗が最も低いことに関与するアプローチであるが、これは真空システムを構成することになると、より多大な労力を必要とする。
【0024】
別の実施形態では、第2のガス除去装置は、上記の実施形態のうちの1つ以上に係る第1のガス除去装置の構成に対応する構成を有する。第2のガス除去装置は、例えば、第1のガス除去装置と同一であってもよいが、その局所的な配置は、他のハブ領域および他のベアリング領域の状況を考慮しなければならない。
【0025】
本発明はまた、本発明に係る複数の真空ロータシステムを備えたフライホイールエネルギー貯蔵ユニットに関し、各機械式ハウジング内に前段真空圧力を発生させるために、各真空ロータシステムの真空システムが組み合わされ、各機械式ハウジング内に前段真空圧力を付与する少なくとも1つの前段真空ポンプを有する共同のエネルギー貯蔵真空システムを形成する。次に、作動真空が、回転するロータ自体によって各機械式ハウジング内に生成される。それは、200Hzよりも高い回転数で、ロータの回転に起因してロータジャケットの内側に沿って移動しているガスの流れの一部が、付属のロータ自体によって付属の第1のガス除去装置内に移動され、そのためそれ自体が付属の機械式ハウジング内のガス圧を前段真空圧力のレベルからさらに低い作動圧力に低下させることができるという点である。フライホイールエネルギー貯蔵ユニットの用途におけるロータの公称回転数は、例えば750Hzの範囲内であり、それによってエネルギーが集められると回転数が上昇し、エネルギーが取り除かれると回転数は低下する。
【0026】
本発明はまた、両端で開いている、回転軸に垂直なロータジャケットを有し、またロータジャケットの内側に接続され、ロータが回転できるように適切なベアリングに適切に取り付けられる少なくとも2つのハブを備える中空ロータを含み、またロータを収容し、機械式ハウジングからガスを排出するための少なくとも1つのガス出口開口部を有する機械式ハウジングを含む、本発明に係る真空ロータシステムを動作させる方法であって、
− ガス出口開口部に接続され、少なくとも1つのフォアポンプを有する真空システムにより、前記機械式ハウジングに前段真空圧力を発生させるステップと、
− ロータ自体によって、機械式ハウジング内の圧力を前段真空圧力のレベルからさらに低い作動真空圧力に低下させるステップであって、それにおいて機械式ハウジングにおいてガスを効率的に集めるためのガス収集開口部を有する少なくとも1つの第1のガス除去装置は、ロータジャケットと接触することなくロータジャケットの内側から適切な距離で、ハブとロータジャケットの付属する開口端との間に配置され、前述の第1のガス除去装置は、集められたガスを排出できるようにガス排出開口部に接続させて、200Hzよりも高い回転数で、ロータの回転に起因して、ロータ自体がロータジャケットの内側に沿って移動しているガス流の一部を少なくとも第1のガス除去装置内に移動させるステップとを含む方法に関する。
【0027】
本発明のこれらおよび他の態様は、以下の図面に詳細に示される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明に係る真空ロータシステムの実施形態の側面図を示す。
図2図1に示すような本発明に係る真空ロータシステムの実施形態の、下部ハブ の領域におけるロータの拡大図である。
図3】追加の第2のガス除去装置を備えた、本発明に係る真空ロータシステムの別 の実施形態の側面図である。
図4】第1のガス除去装置のガス出口開口部への直接的なガス接続を有する追加の 第2のガス除去装置を有する、本発明に係る真空ロータシステムの別の実施形態の側 面図である。
図5】本明細書でガス透過性である下部ハブの領域におけるロータの拡大図である 、図3aに示す本発明に係る真空ロータシステムの別の実施形態を示す。
図6】第2のガス出口開口部への直接的なガス接続を有する追加の第2のガス除去 装置を備える、本発明に係る真空ロータシステムの別の実施形態の側面図である。
図7】真空ロータシステムを動作させるための、本発明に係る方法の実施形態であ る。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、本発明に係る真空ロータシステム1の実施形態を側面図で示しており、前述のシステムは、両端2a、2b、すなわち第1の開口端2aと第2の開口端2bで開いている、回転軸Rに垂直なロータジャケット21を有し、またロータジャケット21の内側21iに接続され、ロータ2が回転できるように適切なベアリング24に適切に取り付けられる少なくとも2つのハブ22、23を備える中空ロータ2を含む。ここではまた、第1の開口端2aに配置されたハブ22を、第1のハブ22と称する。したがって、他方の開口端2b(第2の開口端2b)に配置されたハブ23をまた、第2のハブ23と称する。中空ロータ2は、ここでは、円筒状ロータジャケット21を有する円筒状ロータとして構成され、それによって円筒状の形状の付属のカバー表面が開放され、したがって開口端2aおよび2bを構成する。ここに示すロータは鉛直に設置され、地面に対して垂直である回転軸を有する。したがって、鉛直に配置されたロータの場合、第1のハブ22はまた下部ハブ22(地面に近い方)と呼ばれ、一方で第2のハブ23はまた上部ハブ23(第1または下部ハブ22よりもさらに地面から離れている)と呼ばれる。この実施形態では、ロータ2は、別々のジャーナル29aに互いに分離して取り付けられたハブ22、23を介して取り付けられている。この実施形態では、ハブ22、23はロータジャケット21を介してのみ互いに接合されている。また、他の実施形態では、ハブ22、23は、ロータ2全体を貫通する共通シャフト29でベアリング24に取り付けてもよい。50,000rpmの回転速度に適したベアリングが、当業者に知られている。この文脈では、ロータ2は、作動の信頼性および作動真空圧力BDを確実にするために、機械式ハウジング3からガスGを排出するように機能する少なくとも1つのガス出口開口部31を有する機械式ハウジング3に収容されている。前段真空を発生させるために、ガス出口開口部31に接合された真空システム4は、少なくとも1つのフォアポンプ41(例えば、回転ベーンポンプ)に接続され、機械式ハウジング3において前段真空圧力VDを発生する。機械式ハウジング3内で、ハブ22とロータジャケット21の付属の開口端2aとの間に、作動真空圧力を発生させるために、少なくとも1つのガス除去装置5、51があり、このガス除去装置5、51は、ロータジャケット21と接触することなくロータジャケットの内側から適切な距離Aでガス収集開口部53を有し、ガスGを効率的に集め、それにより前述のガス除去装置5、51をガス出口開口部31に接続して、収集したガスGを排出するようにする。ここで、ガス出口開口部31は、ガス除去装置5、51がガス収集開口部53に接続されていない場合に機械式ハウジング3内のガスGが排出される機械式ハウジング3の開口部を示す。ガス除去装置5、51がガス出口開口部31を介して既に除去したガスGは、機械式ハウジング3の外側に、次いで真空システム4に送られるのみである。この文脈では、ガス除去装置5、51は、200Hzより大きい回転数で、ロータ2自体がガス流Gの一部を移動させるFように配置され、これはロータの回転により、ロータジャケット21の内側21iに沿って、少なくとも第1のガス除去装置5、51内に移動し、その結果ロータ自体が機械式ハウジング3のガス圧を前段真空圧力VDのレベルから、より低い作動真空圧力BDに低下できる。ガス除去装置5、51は、例えば、中空管の形態であり、ガス出口開口部31からロータジャケットの内側の方向に延びている。ガス除去装置5、51に関するさらなる詳細は、図2の範囲内で説明する。
【0030】
図2は、図1に示される本発明に係る真空ロータシステム1の実施形態を、下部ハブ22の領域におけるロータ2の拡大図で示している。ガス収集開口部53とガス出口開口部31、32との間のガスGのための開放された内部チャネルを備える基本的に異なる形状や構成の装置は、すべてガス除去装置5として使用することができる。この文脈では、実施形態に応じて、ロータおよびベアリングの設計により、いくつかのガス除去装置5が同じ側、ここではロータ2の開口端2aに面する側にある配置が可能になるとすると、1つ以上のガス除去装置5を同じガス出口開口部31、32に接続することができる。この実施形態では、図1に既に示されているガス除去装置5、51に加えて、別のガス除去装置5、51(破線で示されている)が、第1(下部)ハブ22と、ロータ2のロータジャケット21の対応する第1の開口端2aとの間に、回転軸Rに対して同じ平面内にあるように、配置されている。他の実施形態では、例えば、互いに対称的に配置された4つ以上のガス除去装置5を、第1の(下部)ハブ22と(ロータ2の)ロータジャケット12の対応する第1の開口端2aとの間に、互いに対称的に配置することができる。ガス除去装置5の材料は、例えば、ステンレス鋼のような、真空が可能な材料からなり、機械式ハウジング内での固有のガスの放出がほとんどまたはまったくないようにする。例えば、ガス収集開口部53から、場合によっては適切な角度で、場合によっては、回転軸Rに対して90°から広がる角度で、ロータジャケット21までずっと半径方向に延びる、配管による接続を使用することができ、ロータジャケット21に到達する前に、それらはガス収集開口部53(ここでは右側のガス収集開口部に示されている)として機能する、開いている配管開口部が、ガス流Gのロータジャケット21の内側21iに沿って垂直に配向されるように、曲率をもたせることができる。ロータジャケット21の内側21iに沿ったガスの流れは、2つの湾曲した矢印Gによってロータの左側に概略的に描かれている。破線で示すガス除去装置5、51にはまた、ガス流Gに垂直なガス収集開口部53が設けられており、このガス収集開口部53は、ガス流G内に向けられ、それによって前述のガス収集開口部53は、ここでは配向のために(後ろに向いている)可視ではない。ここで、ガス収集面531は、ガス流Gに対して垂直に向けられた面を示す。この文脈では、ガス収集開口部53は、例えば、円形、長円形または楕円形などの様々な形状を有することができる。過度に鋭利な形状は、ガス流Gの乱れのために不適切である可能性がある。ここで、第1のガス除去装置5、51のガス収集開口部53とロータジャケット21との距離Aは、この箇所の円筒状ロータ2の半径RDの10%未満である。好ましい実施形態では、距離Aは、この場所におけるロータ2の半径RDの1%〜5%である。その結果、ガス収集開口部53は、平均直径D53を有する効率的なガス収集面531を有し、ロータジャケット21に沿ってガス流Gに対して垂直に配向される。平均直径D53は、例えば、ロータ2の半径RDの3%〜10%である。ここで、第1のガス除去装置5、51は、ロータジャケット21の開口端から平均直径D53の少なくとも3倍の距離D21に配置され、そのためガスはガス除去装置内に妨害されずに流れることができる。距離D21がさらに短ければ、ガス流Gの少なくとも一部は、ロータジャケット21の端部で開口端2aに向かって乱されるか、そうでなければ、端部で排出され、これにより、ガス除去装置5、51に流入するガス流Gが減少するに至る。結果として、この配置で可能な限り低い作動真空圧力を成すことは不可能であろう。
【0031】
図3は、追加の第2のガス除去装置5、52を備えた、本発明に係る真空ロータシステム1の別の実施形態を、側面図で示す。この実施形態では、第1のガス除去装置5、51の場合と同様に、さらにガスGを集めるために、ロータジャケット21に接触することなく、ロータジャケット21の内側21iから適切な距離Aで、他方のハブ23(第2のハブ23または上部ハブ23)と、この第2のハブ23に対応して属しているロータジャケット21の第2の端部2bとの間に、第2のガス除去装置5、52が配置される。このプロセスでは、ハブ22、23は、ここに示されている中空円筒状ロータ2のハブ22、23の間に中間容積部25を画定し、それによってこの実施形態の第2のガス除去装置5、52は、集めたガスGが中間容積部25に移動するように配置される。この実施形態では、ハブ22、23は、ガスの不透過性を有するように構成され、気密な中間容積部25を形成し、中間容積部25は、ロータの第2の端部の領域から除去されたガスGのための一時的な中間貯蔵ユニットとして働く。ロータの回転数が本発明に係る自動ポンピング効果を成す限り、ガスが中間容積部25から出ることはなく、これは、ガスが中間容積部25に移動するので、中間容積部25の外側のロータの作動圧力BDより高い圧力を有する。好ましくは、第2のガス除去装置5、52と中間容積部25との間に位置するガス運搬チャネルは、上部ベアリング24およびジャーナル29aを通って延びている。この実施形態では、ロータ2は、別々のジャーナル29aで互いに分離して取り付けられたハブ22、23を介して取り付けられている。この実施形態では、ハブ22、23はロータジャケット21を介してのみ互いに接続されている。当業者は、第2のガス除去装置5、52と中間容積部25との間に位置するガス運搬チャネルを適切に構成することができる。第2のガス除去装置5、52については、第1のガス除去装置5、51の場合と同様に、同じ配置、向き、距離A、距離D21、およびガス収集面531の平均直径D53を選択することができる。この文脈ではまた、図2を参照されたい。これは、図4および図6による以下の実施形態にも当てはまる。さらなる詳細については、図1および図2も参照されたい。
【0032】
図4は、第1のガス除去装置5、51のガス出口開口部31への直接的なガス接続28を有する追加の第2のガス除去装置5、52を有する、本発明に係る真空ロータシステム1の別の実施形態を、側面図で示す。図3に示す実施形態の変形例として、ここに示す実施形態では、第2のガス除去装置5、52は、第2の(上部)ハブ23と、ロータ2の開いた第2の端部2bとの間の領域から除去されたガスGを、中間容積部25内に移動させるのではなく、むしろこの中間容積部25を経て第1のガス出口開口部31に至り、機械式ハウジング3から真空システム4内にさらに移動することができる。この文脈では、第2のガス除去装置5、52とガス出口開口部31との間の直接的な接続28は、2つのハブ22、23を接合するシャフト29を通り、また第1のガス出口開口部31と真空システム4との間で、適切な様式でガス用チャネルに接続される。ここでの直接的な接続は、この直接的な接続28がロータ2のシャフト29に一体化できるように選択された断面を有する。
【0033】
図5は、ここではガス透過性である下部ハブ22の領域におけるロータ2の拡大図で、図2および図3に示す本発明に係る真空ロータシステム1の別の実施形態を示している。ここでは、中間容積部25の内側25iの一部にガス吸収層26が配置されている。この層26は、中間容積部25に存在するガスを吸収し、次いで、例えば図3による第2のガス除去装置5、52によって中間容積部25に移動する。そうでない場合にガス気密である中間容積部25では、ガス不透過性の下部ハブ22の場合であっても、これだけで中間容積部25のガス圧の低下を引き起こす。しかし、本実施形態ではさらに、第2のガス除去装置5、52に対向するハブ23がガス不透過性であり、第1のガス除去装置5、51に対向するハブ22(下部ハブ22または第1のハブ22)は、第2のガス除去装置5、52によって中間容積部25に移動したガスGがガス透過性ハブ22を介して第1のガス除去装置5、51の方向に出ることができるように、少なくとも部分的にガス透過性であるように構成されている。この様式では、第1のガス除去装置5、51は、第2のガス除去装置5、52によって集められたガスを、ガス出口開口部31を介して、機械式ハウジング3を通って真空システム4の中に排出し、それによって機械式ハウジング3の作動真空圧力をさらに低下させることができる。さらに、結果として、中間貯蔵部にあるガスの量の排出も低回転速度で改善される。この実施形態における第1の(下部)ハブ22のガス透過率は、好ましくはハブ22に対称的に配置される複数の孔27によって達成される。
【0034】
図6は、第2のガス出口開口部32への直接的なガス接続を有する追加の第2のガス除去装置5、52を備えた、本発明に係る真空ロータシステム1の別の実施形態を、側面図で示している。ここで、真空ロータシステム1は、他方のガス出口開口部31と反対側に位置する機械式ハウジング3の側部にある追加のガス出口開口部32を含み、それによって、第2のガス除去装置5、52が集めたガスGを排出し、それは追加のガス出口開口部32に接続され、ひいてはそれは真空システム4に接続される。この直接的な接続により、第2のガス除去装置5、52で集めたガスGは、これが最短経路でありそれによって作動真空圧力をさらに低減することができるため、効率的に機械式ハウジング3から除去することができる。
【0035】
図7は、真空ロータシステム1の作動のための、本発明に係る方法の実施形態であって、ガス出口開口部31に接続され、少なくとも1つのフォアポンプ41を有する真空システム4により、機械式ハウジング3において前段真空圧力VDを発生させるステップと、回転ROに起因してロータ2自体によって、機械式ハウジング3内の圧力を前段真空圧力VDからさらに低い作動真空圧力BDに低下させるステップであって、それにおいて機械式ハウジング3においてガスGを効率的に集めるためのガス収集開口部53を有する少なくとも1つの第1のガス除去装置5、51は、ロータジャケット21と接触することなくロータジャケット21の内側21iから適切な距離Aで、ハブ22とロータジャケット21の付属する開口端2aとの間に配置され、前述の第1のガス除去装置5、51は、集められたガスGを排出するようにガス排出開口部31に接続させて、200Hzよりも高い回転数で、ロータの回転に起因して、ロータ2自体がロータジャケット21の内側21iに沿って移動しているガス流Gの一部を少なくとも第1のガス除去装置5、51内に移動させるFステップとを含む方法の実施形態を示す。
【0036】
図1から図6に示す実施形態により、例えば、ポンプ接続フランジで10−4mbarの作動真空圧力で、上部ハブ23とロータ2の開放(第2の)端2bとの間にある領域にて、2×10−3mbarの作動真空圧力BDを達成することが可能である。これと比較して、本発明に係るガス除去装置の代わりにターボポンプにする場合、ポンプ接続フランジで10−5mbarの作動真空圧力で、わずか10−2mbarの作動真空圧力のみがハブの反対側で成し遂げられる。そのため、本発明に係る真空ロータシステム1は、よりコスト効率の良い同等の圧力だけでなく、より良好な圧力分布を達成することができる。
【0037】
本明細書に示す実施形態は、本発明の単なる例を構成するものであり、したがって、限定的な性質であると解釈するべきではない。当業者によって考慮された他の実施形態も同様に本発明の保護範囲に包含される。
【符号の説明】
【0038】
1 真空ロータシステム
2 ロータ
2a、2b 回転軸に垂直なロータの(2つの)開口端
21 ロータジャケット
21i ロータジャケットの内側
22 ハブ(第1のハブまたは下部ハブ)
23 別のハブ(第2のハブまたは上部ハブ)
24 ハブが取り付けられているベアリング
25 ハブ間のロータの中間容積部
25i 中間容積部の内側
26 ガス吸収層
27 ガス透過性ハブの孔
28 第2のガス除去装置とガス出口開口部31との直接的な接続
29 2つのハブを接合するシャフト
29a 毎回ハブの1つをベアリングに接続するジャーナル
3 機械式ハウジング
31 (第1の)ガス出口開口部
32 他方のガス出口開口部31と反対側にある機械式ハウジングの側にある追加の(
第2の)ガス出口開口部
4 真空システム
41 真空システムにおける前段真空ポンプ
5 ガス除去装置(第1または第2)
51 第1のガス除去装置
52 第2のガス除去装置
53 ガス収集開口部
531 ガス収集面
A ガス収集開口部とロータジャケットの内側との間の距離
BD 作動真空圧力
D21 ガス除去装置とロータの開口端との間の距離
D53 ガス除去面の平均直径
F ロータの回転によるガス除去装置へのガスの移動
G ガス、ガス流
R 回転軸
RD ロータの半径
RO ロータの回転
VD 前段真空圧力
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7