(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
一般的に、プリーツタイプのカートリッジフィルターや繊維集合物を筒状に巻き回した筒状フィルターでは、流入側から流出側に向けて、平均繊維径や平均孔径が徐々に小さくなるように繊維集合物を積層して配置し、平均繊維径や平均孔径が最も小さい繊維集合物を最終ろ過層として使用する。本発明の発明者は、従来のプリーツタイプのカートリッジフィルターを使用した際、異物がろ過液中に残存してしまう現象について鋭意検討した結果、平均孔径が最も小さい繊維層(以下、最細繊維層とも称す。)を最終ろ過層とせず、最細繊維層をある程度上流側に配置したうえで、最細繊維層の流入側及び流出側に最細繊維層の平均孔径より大きい繊維層、ネット、又はそれらの積層体を配置することで、異物の捕捉効率が向上し、ろ過性能が向上することを見出し本発明に至った。
【0013】
本発明は、ろ過材がプリーツ状に折り畳まれたプリーツタイプのカートリッジフィルターである。上記ろ過材は、第1繊維層を有し、第1繊維層の流入側には、第2繊維層、第1ネット、及び第1ネットと第2繊維層の積層体からなる群から選ばれるいずれか一つが配置されており、第1繊維層の流出側には、第3繊維層が配置されている。本発明において、第1繊維層の流入側に第1ネットと第2繊維層の積層体が配置される場合、流入側から、第1ネット、第2繊維層の順で配置されることになる。第1繊維層の平均孔径は0.5〜20μmであり、第3繊維層の平均孔径は3〜25μmであり、第3繊維層の平均孔径は第1繊維層の平均孔径に対し1.1〜8.0倍である。後述するように、上記ろ過材は、第1繊維層、第2繊維層、第3繊維層に加えて他の繊維層を含んでもよく、上記ろ過材を構成する全ての繊維層において、第1繊維層の平均孔径が最も小さい。
【0014】
本発明において、繊維層とは、平均繊維径が500μm以下の繊維又は糸で構成されている繊維集合物をいう。また、本発明において、ネットとは、繊維長120mm以上の繊維(実質的に連続した繊維、すなわちモノフィラメントやマルチフィラメントを含む)で構成された繊維集合物であって、構成繊維によって規則的な空隙が形成されており、後述する測定方法で測定した厚みが120μm以上の繊維集合物を意味する。例えば、JX日鉱日石エネルギー株式会社が販売するミライフ(登録商標)、ワリフ(登録商標)などを含む長繊維を縦方向、横方向に配向させた繊維集合物であっても、厚みが120μm未満のものは本発明のネットには該当せず、構成繊維の平均繊維径が500μm以下のものは繊維層に該当する。また、長繊維で構成される不織布、例えばスパンボンド不織布やメルトブローン不織布は、厚みが120μm以上のものが存在するが、規則的な空隙は形成されていないため、本発明のネットには該当しない。なお、繊維集合物が、繊維層及びネットの両方の要件を満たす場合は、ネットとみなす。
【0015】
本発明のカートリッジフィルターにおいて、ろ過精度をより高めるという観点から、第3繊維層の流出側に、第4繊維層を配置していることが好ましい。そして第4繊維層の平均孔径が5〜60μmであり、第4繊維層の平均孔径が第3繊維層の平均孔径の1.05〜4倍であることが好ましい。また、強度を付与する観点から、ろ過材を構成する繊維集合物の中で、最も流出側に第2ネットが配置されていることが好ましい。
【0016】
本発明のカートリッジフィルターが、第1繊維層の流入側に第2繊維層を含むとき、第2繊維層の平均孔径は5〜60μmであり、第2繊維層の平均孔径が第1繊維層の平均孔径の3〜10倍であることが好ましい。そして、第2繊維層の平均孔径は第3繊維層の平均孔径の1.05〜4倍であることがより好ましい。
【0017】
本発明のプリーツタイプのカートリッジフィルターを用いたろ過では、ろ過対象物がろ過材を構成する繊維層の中で最も平均孔径が小さい第1繊維層を通過するときに異物の大半が捕捉されると推測される。ろ過対象物に含まれる異物の中には第1繊維層を通過する異物や一度第1繊維層に捕捉されるが変形することで第1繊維層を通過するゲル状異物が存在する。しかし、異物を含むろ過対象物は第1繊維層を通過する際、その圧力が緩衝され、流速が減少する。その結果、第1繊維層の流出側に配置される、第1繊維層より平均孔径が大きいが、十分な異物捕捉性を有する第3繊維層によって、第1繊維層を通過した異物が捕捉されることにより異物の抜けが抑制され、異物の捕捉性能が向上すると考えられる。第1繊維層の上流側に、平均孔径が第1繊維層の平均孔径より大きい第2繊維層、または平均孔径が第1繊維層の平均孔径より大きい第2繊維層と第1ネットの積層体が配置されていると、異物の捕捉性能がより向上する。
【0018】
第2繊維層は第1繊維層の上流側に配置される繊維層であり、第2繊維層単独、あるいは第1ネットと積層させて使用する。第2繊維層と第1ネットの両方を第1繊維層の上流側に配置する場合、ろ過材の流入側から順に第1ネット、第2繊維層となるように配置させ、かつ第2繊維層は第1繊維層と隣接するように配置することが好ましい。第2繊維層は必要に応じて設けられる繊維層であり、場合によっては第2繊維層を使用せず、第1ネットのみを第1繊維層の上流側に設けてもよい。第2繊維層は、流体に含まれている比較的大きい異物を捕捉する役割がある。そのため、第2繊維層の平均孔径は、第1繊維層の平均孔径より大きければよく、特に限定されないが、第1繊維層の平均孔径に対し3〜10倍であることが好ましく、3〜8倍であることがより好ましく、3.4〜8倍であることがさらに好ましく、3.4〜6.8倍であることがさらにより好ましく、3.5〜6.8倍であることがさらにより好ましく、4〜6.8倍であることがさらにより好ましい。
【0019】
第3繊維層は第1繊維層の下流側に配置される繊維層であり、第1繊維層を通過した異物を捕捉する役割がある。そのため、第3繊維層の平均孔径は第1繊維層の平均孔径よりは大きいが、異物を捕捉しうる平均孔径、すなわち、平均孔径がある程度小さいことが求められる。第3繊維層の平均孔径は、第1繊維層の平均孔径に対し1.1〜8倍であればよいが、1.4〜8倍であることが好ましく、2〜6倍であることがより好ましく、2.3〜5.8倍であることがさらに好ましく、3〜5.6倍であることがさらにより好ましい。
【0020】
第4繊維層は必要に応じて設けられる繊維層であり、第3繊維層の流出側に第3繊維層に隣接するように配置される。プリーツタイプのカートリッジフィルターにおいて、下流側に平均孔径の小さすぎる繊維層が存在すると、圧力損失が大きくなる可能性があるだけでなく、ろ過する流体の流量が極端に低下するおそれがある。従って、第4繊維層の平均孔径は第1繊維層の平均孔径より大きく、ろ過材を構成する繊維層の中で、比較的平均孔径が大きいものであることが好ましい。第4繊維層の平均孔径は第1繊維層の平均孔径の3〜10倍であることが好ましく、3〜8倍であることがより好ましく、3.2〜8倍であることがさらに好ましく、3.2〜6.8倍であることがさらにより好ましく、3.5〜6.8倍であることがさらにより好ましく、4〜6.8倍であることがさらにより好ましい。また、第4繊維層の平均孔径は、第3繊維層の平均孔径より大きいことが好ましい。
【0021】
上記ろ過材において、第1繊維層、第2繊維層、第3繊維層、及び第4繊維層等の繊維層は、繊維層を構成する繊維又は糸の平均繊維径が500μm以下である繊維集合物であればよく、特に限定されない。繊維層としては、例えば、不織布、編物、織物等が挙げられる。繊維層を構成する繊維同士が三次元的なネットワーク構造を形成しており、厚みによる深層ろ過機構によって異物の捕捉性能が向上しやすい不織布であることが好ましい。
【0022】
以下において、各繊維層が不織布の場合を例示して説明する。
【0023】
上記不織布は、特に限定されず、スパンボンド不織布、ニードルパンチ不織布、水流交絡不織布、熱接着不織布(サーマルボンド不織布、エアスルー不織布とも称す。)、湿式不織布、メルトブローン不織布、エレクトロスピニング法(静電紡糸法)を用いて製造した不織布等のあらゆる不織布が使用可能であるが、メルトブローン不織布であることが好ましい。メルトブロー法で製造するメルトブローン不織布は、他の不織布より、孔径が小さい不織布が得られやすく、目付の均一性が高い。
【0024】
上記メルトブローン不織布は、使用する樹脂が限定されず、ポリプロピレンやポリエチレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリトリメチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ナイロン6やナイロン-6,6などのポリアミド系樹脂等、メルトブローン不織布を製造できる樹脂であれば、いずれの種類の樹脂も使用可能である。中でも、ポリオレフィン系樹脂を使用したポリオレフィン系繊維からなるメルトブローン不織布であることが好ましく、ポリプロピレン系繊維からなるメルトブローン不織布であることがより好ましく、ポリプロピレン単一繊維(PP繊維)からなるメルトブローン不織布であることがさらに好ましいが、複合繊維であっても特に問題ない。ポリプロピレンは耐薬品性が高いため、様々な種類の液体のろ過に使用可能であるだけでなく、軟化点、融点が低いため、熱加工性に優れていることから好ましい。
【0025】
第1繊維層は、メルトブローン不織布であることが好ましく、メルトブローン不織布の少なくとも片方の表面が平滑化されていることがより好ましく、両表面が平滑化されていることが特に好ましい。ここでいう平滑化とは、メルトブローン不織布の少なくとも片方の表面に、例えば熱ロールを使用したカレンダー加工を施すことで、不織布の表面が平滑化され、多孔膜状になることを指す。メルトブローン不織布の少なくとも片方の表面、特に好ましくは両表面を熱ロールでカレンダー加工することで、平滑化されたメルトブローン不織布の表面が多孔膜状になるとともに、メルトブローン不織布全体が緻密なものとなり、平均孔径を小さくすることができる。少なくとも片方の表面を平滑化したメルトブローン不織布は、上述の通り、第1繊維層として好ましく用いることができる。また、平滑化の条件を調整することにより、他の繊維層、例えば第3繊維層としても用いることができる。
【0026】
第1繊維層は、平均孔径が0.5〜20μmであるが、1〜14μmであることが好ましく、1.5〜9μmであることがより好ましく、1.8〜7.5μmであることがさらに好ましく、1.8〜5.4μmであることがさらにより好ましい。第1繊維層の平均孔径は、所望するろ過精度を考慮して選択でき、高いろ過精度を求められる用途に使用する場合、第1繊維層の平均孔径は1.8〜5μmであることが好ましく、1.8〜4.5μmであることがより好ましく、1.8〜4μmであることがさらに好ましい。また、高いろ過精度を必要としない用途であれば、第1繊維層の平均孔径は3〜6.5μmであってもよく、3.5〜6.5μmであってもよい。第1繊維層の平均孔径が上記範囲内であると、第1繊維層を通過した後のろ過対象物の圧力が低くなりやすく、カートリッジフィルターのろ過精度が高くなる。
【0027】
第1繊維層は、最大孔径が1〜70μmであることが好ましく、2〜30μmであることがより好ましく、2〜20μmであることがさらに好ましく、3〜18μmであることがさらにより好ましく、4〜16μmであることがさらにより好ましい。第1繊維層の最大孔径は、所望するろ過精度を考慮して選択でき、高いろ過精度を求められる用途に使用する場合、第1繊維層の最大孔径は4〜10μmであることが好ましい。また、高いろ過精度を必要としない用途であれば、第1繊維層の最大孔径は10〜18μmであってもよい。また、第1繊維層は、最多孔径が0.5〜28μmであることが好ましく、1.0〜20μmであることがより好ましく、1.5〜12μmであることがさらに好ましく、1.8〜8μmであることがさらにより好ましい。また、第1繊維層は、最小孔径が0.1〜27μmであることが好ましく、0.3〜20μmであることがより好ましく、0.5〜10μmであることがさらに好ましく、0.8〜6μmであることがさらにより好ましい。第1繊維層の最大孔径、最多孔径及び最小孔径が上記範囲内であると、第1繊維層を通過した後のろ過対象物の流速が減少し、カートリッジフィルターのろ過精度がより高くなる。
【0028】
第2繊維層及び第4繊維層は、平均孔径が5〜60μmであることが好ましく、8〜50μmであることがより好ましく、10〜32μmであることがさらに好ましく、12〜25μmであることがさらにより好ましい。第2繊維層及び第4繊維層の平均孔径が上記範囲内であると、第2繊維層は第1繊維層の前ろ過層としての効果が高くなり、第4繊維層はある程度の異物を捕捉する能力を維持しつつ、ろ過する流体の圧力や流量に与える影響を抑えることができる。また、第2繊維層及び第4繊維層の最大孔径は15〜80μmであることが好ましく、20〜50μmであることがより好ましく、25〜35μmであることがさらに好ましく、26〜32μmであることがさらにより好ましい。第2繊維層及び第4繊維層の最多孔径は5〜30μmであることが好ましく、8〜28μmであることがより好ましく、12〜24μmであることがさらに好ましく、14〜20μmであることがさらにより好ましい。第2繊維層及び第4繊維層の最小孔径は5〜25μmであることが好ましく、8〜20μmであることがより好ましく、10〜16μmであることがさらに好ましく、12〜15μmであることがさらにより好ましい。第2繊維層及び第4繊維層の最大孔径、最多孔径及び最小孔径がそれぞれ上記範囲内であると、上述した第2繊維層、及び第4繊維層の効果が高くなり、カートリッジフィルターのろ過精度がより高くなる。
【0029】
第3繊維層の平均孔径は3〜25μmであればよいが、5〜20μmであることが好ましく、8〜18μmであることがより好ましく、10〜16μmであることがさらにより好ましい。第3繊維層の平均孔径が上記範囲内であると、第3繊維層が異物を捕捉しやすく、またろ過対象物の圧力や流速の低下といった影響も少ない。また、第3繊維層の最大孔径は10〜50μmであることが好ましく、15〜30μmであることがより好ましく、18〜26μmであることがさらに好ましく、20〜24μmであることがさらにより好ましい。第3繊維層の最多孔径は3〜20μmであることが好ましく、5〜18μmであることがより好ましく、8〜15μmであることがさらに好ましく、9〜13μmであることがさらにより好ましい。第3繊維層の最小孔径は1〜20μmであることが好ましく、3〜15μmであることがより好ましく、5〜12μmであることがさらに好ましく、6〜10μmであることがさらにより好ましい。第3繊維層の最大孔径、最多孔径及び最小孔径がそれぞれ上記範囲内であると、第3繊維層がろ過する流体の圧力や流量に与える影響を抑えつつ、異物の捕捉効率が高くなりやすい。
【0030】
第2繊維層及び第4繊維層の平均孔径は、第3繊維層の平均孔径に対し、1.05〜4倍であることが好ましく、1.1〜3倍であることがより好ましく、1.15〜2.5倍であることがさらに好ましく、1.2〜2.2倍であることがさらにより好ましい。第2繊維層及び第4繊維層の平均孔径が、第3繊維層の平均孔径に対し上記の比率になることで、本発明のプリーツタイプのカートリッジフィルターはろ過寿命の長いものとなる。第2繊維層、第3繊維層、及び第4繊維層の平均孔径が、第1繊維層の平均孔径に対する倍率として上記の範囲を満たすものであると、異物の捕捉効率が向上し、カートリッジフィルターのろ過性能がより高くなる。不織布の平均孔径、最大孔径、最多孔径及び最小孔径の測定方法は後述する。
【0031】
第1繊維層、第2繊維層、第3繊維層及び第4繊維層は、平均繊維径が0.5〜20μmであることが好ましく、1〜10μmであることがより好ましく、1.5〜8.5μmであることがさらに好ましく、1.8〜5μmであることがさらにより好ましい。特に、第1繊維層の平均繊維径は、所望するろ過精度を考慮して選択でき、高いろ過精度を求められる用途に使用する場合、第1繊維層の平均繊維径は1.8〜5μmであることが好ましい。また、高いろ過精度を必要としない用途であれば、第1繊維層の平均繊維径は3〜9.5μmであってもよい。第1繊維層、第2繊維層、第3繊維層及び第4繊維層は、最小繊維径が0.03〜5μmであることが好ましく、0.05〜3μmであることがより好ましく、0.05〜2μmであることがさらに好ましく、0.08〜1.5μmであることがさらにより好ましく、0.08〜1μmであることがさらにより好ましく0.1〜0.8μmであることがさらにより好ましい。第1繊維層、第2繊維層、第3繊維層及び第4繊維層は、最大繊維径が3〜50μmであることが好ましく、3〜30μmであることがより好ましく、5〜25μmであることがさらに好ましく、5〜20μmであることがさらにより好ましい。第1繊維層、第2繊維層、第3繊維層及び第4繊維層の平均繊維径、最小繊維径及び最大繊維径が上記の範囲を満たすと、カートリッジフィルターのろ過性能がより高くなる。平均繊維径、最小繊維径及び最大繊維径の測定方法は後述する。
【0032】
本発明のカートリッジフィルターにおいて、ろ過材を構成する第1繊維層及び第3繊維層は、カートリッジフィルターのろ過精度、すなわち、カートリッジフィルターがどれだけ小さいサイズの異物を十分に捕捉するかを左右する繊維層である。従って、第1繊維層及び第3繊維層は、平均孔径の小さい繊維層が容易に得られる高目付の繊維層であることが好ましい。第1繊維層及び第3繊維層の目付は30〜150g/m
2の範囲内であることが好ましく、35〜120g/m
2の範囲内であることがより好ましく、40〜100g/m
2の範囲内であることがさらに好ましい。第1繊維層及び第3繊維層の目付が上記の範囲を満たすことで、得られるカートリッジフィルターのろ過性能を高めることができる。なお、第1繊維層の目付は60〜90g/m
2の範囲内であることが特に好ましく、第3繊維層の目付は40〜70g/m
2の範囲内であることが特に好ましい。
【0033】
本発明のカートリッジフィルターにおいて、ろ過材を構成する第2繊維層及び第4繊維層は、第1繊維層の前ろ過層(第2繊維層)であったり、比較的下流側に位置する繊維層(第4繊維層)であったりするため、平均孔径の大きい繊維層が容易に得られる低目付の繊維層であることが好ましい。第2繊維層及び第4繊維層の目付は5〜100g/m
2の範囲内であることが好ましく、20〜80g/m
2の範囲内であることがより好ましく、25〜70g/m
2の範囲内であることがさらに好ましい。第2繊維層及び第4繊維層の目付が上記の範囲を満たすことで、得られるカートリッジフィルターのろ過性能を高めることができるだけでなく、ろ過処理を長時間行える、いわゆるろ過寿命の長いカートリッジフィルターを得ることができる。なお、第2繊維層の目付は20〜40g/m
2の範囲内であることが特に好ましく、第4繊維層の目付は40〜70g/m
2の範囲内であることが特に好ましい。
【0034】
ろ過の対象となる液体の流速を適度に低減させることで、異物の捕捉効率が向上し、ろ過性能が高いカートリッジフィルターが容易に得られるという点から、第1繊維層の目付がろ過材を構成する繊維層の中で最も大きいことが好ましい。また、ろ過の対象となる液体に対し、流量や圧力の急激な低下を招くことなく比較的大きい異物を捕捉するという観点から、第2繊維層の目付がろ過材を構成する繊維層の中で最も小さいことが好ましい。目付の測定方法は後述する。
【0035】
第1繊維層の厚みは特に限定されない。しかし、第1繊維層がろ過精度を左右すること、また平均孔径の小さい繊維集合物を第1繊維層として用いるという観点から、第1繊維層の厚みが0.08〜0.8mmの範囲内であることが好ましく、0.1〜0.4mmの範囲内であることがより好ましく、0.15〜0.35mmの範囲内であることがさらに好ましい。第1繊維層の厚みが0.08mm以上であると、第1繊維層が薄くなりすぎることがなく、カートリッジフィルターを生産する際やカートリッジフィルターの使用時に第1繊維層が破損しにくくなるだけでなく、繊維集合物の厚みが確保されることで平均孔径の小さい繊維層になりやすく、カートリッジフィルターのろ過性能をより高めることができる。また、これらの繊維集合物の厚みが0.8mm以下であると、第1繊維層が過度に厚くない、すなわち平均孔径の小さい、密度の大きい繊維集合物になるため、これもまたカートリッジフィルターのろ過性能を高めることができる。不織布の厚みの測定方法は後述する。
【0036】
第1繊維層が上記の目付及び厚みの範囲を満たすことで、密度の大きい繊維層となる。第1繊維層の密度がある程度大きいことで、不織布の構造が密になり、平均孔径が小さい繊維層となる。これを用いたカートリッジフィルターは、ろ過精度の高いものとなる。第1繊維層の密度は0.12〜0.8g/cm
3であることが好ましく、0.16〜0.5g/cm
3であることがより好ましく、0.18〜0.45g/cm
3であることがさらに好ましい。
【0037】
第2繊維層、第3繊維層及び第4繊維層は、厚みが0.1〜1.2mmであることが好ましく、0.2〜1.0mmであることがより好ましく、0.25〜0.8mmであることがさらに好ましく、0.3〜0.6mmであることがさらにより好ましい。これらの繊維層の厚みが0.1mm以上であると、ろ過性能をより高めることができる。また、これらの繊維層の厚みが1.2mm以下であると、各繊維層を構成する繊維集合物が過度に厚くならないためろ過寿命が低下することもない。
【0038】
ろ過を行う際にろ過対象物の流速を適度に調整し、異物の捕捉効率を効果的に向上させるという点から、第1繊維層の厚みは、カートリッジフィルターのろ過材を構成する全ての繊維層の中で最も小さいことが好ましい。また、第2繊維層の厚みはプリーツフィルターのろ過材を構成する全ての繊維層の中で最も大きいことが好ましい。
【0039】
第1繊維層は、縦方向(MD方向、機械方向とも称す。)において、引張強度が、20〜100N/5cmであることが好ましく、25〜95N/5cmであることがより好ましく、30〜90N/5cmであることがさらに好ましく、40〜80N/5cmであることがさらにより好ましい。また、横方向(CD方向、幅方向とも称す。)において、引張強度が、15〜90N/5cmであることが好ましく、15〜80N/5cmであることがより好ましく、25〜75N/5cmであることがさらに好ましく、30〜70N/5cmであることがさらにより好ましい。第1繊維層の縦方向及び横方向の引張強度が上記の範囲内であると、第1繊維層の縦方向、横方向の強度が十分に高くなり、ろ過の際、第1繊維層が破損されにくくなる。
【0040】
第2繊維層、第3繊維層及び第4繊維層は、縦方向において、引張強度が5〜100N/5cmであることが好ましく、7〜95N/5cmであることがより好ましく、10〜90N/5cmであることがさらに好ましく、15〜80N/5cmであることがさらにより好ましい。また、第2繊維層、第3繊維層及び第4繊維層は、横方向において、引張強度が5〜100N/5cmであることが好ましく、7〜95N/5cmであることがより好ましく、10〜90N/5cmであることがさらに好ましく、12〜80N/5cmであることがさらにより好ましい。第2繊維層、第3繊維層及び第4繊維層の縦方向及び横方向の引張強度が上記の範囲内であると、これらの繊維集合物の縦方向、横方向の強度が十分に高くなり、ろ過の際、各繊維層が破損されにくくなる。本発明において不織布をはじめとする繊維集合物の引張強度は、JIS L 1096に基づいて測定する。
【0041】
第1繊維層は、縦方向において、引張伸度が5〜150%であることが好ましく、10〜120%であることがより好ましく、15〜100%であることがさらに好ましい。また、第1繊維層は、横方向において、引張伸度が5〜200%であることが好ましく、7〜100%であることがより好ましく、10〜80%であることがさらに好ましく、10〜40%であることがさらにより好ましい。第1繊維層の縦方向及び横方向の引張伸度が上記の範囲内であると、第1繊維層がある程度の伸度を有するようになり、第1繊維層が破損しにくくなる。本発明において、不織布を始めとする繊維集合物の引張伸度は、JIS L 1096に基づいて測定する。
【0042】
第2繊維層、第3繊維層及び第4繊維層は、縦方向において、引張伸度が5〜150%であることが好ましく、10〜120%であることがより好ましく、15〜100%であることがさらに好ましい。また、第2繊維層、第3繊維層及び第4繊維層は、横方向において、引張伸度が5〜200%であることが好ましく、20〜150%であることがより好ましく、30〜120%であることがさらに好ましく、40〜100%であることがさらにより好ましい。第2繊維層、第3繊維層及び第4繊維層の縦方向並びに横方向の引張伸度が上記の範囲内であると、各繊維層がある程度の伸度を有するようになり、ろ過液の圧力に対し伸びることで圧力を吸収するため、使用時に各繊維層が破損されにくくなる。
【0043】
第1繊維層の通気度は特に限定されない。第1繊維層がカートリッジフィルターのろ過精度を左右すること、また平均孔径の小さい繊維集合物を第1繊維層として用いるという観点から、第1繊維層の通気度はある程度小さいことが好ましい。第1繊維層の通気度は0.05〜50(cm
3/cm
2/秒)の範囲内であることが好ましく、0.1〜20(cm
3/cm
2/秒)の範囲内であることがより好ましく、0.2〜15(cm
3/cm
2/秒)の範囲内であることがさらに好ましく、0.3〜5(cm
3/cm
2/秒)の範囲内であることがさらにより好ましい。通気度が上記の範囲内であると、第1繊維層が異物を捕捉する効率が高くなり、ろ過精度の高いカートリッジフィルターとなる。
【0044】
第2繊維層、第3繊維層及び第4繊維層は、通気度が1〜100(cm
3/cm
2/秒)の範囲内であることが好ましく、5〜50(cm
3/cm
2/秒)の範囲内であることがより好ましく、通気度が8〜40(cm
3/cm
2/秒)の範囲内であることがさらに好ましく、10〜30(cm
3/cm
2/秒)の範囲内であることがさらにより好ましい。通気度が上記の範囲内であると、捕捉対象物に対して繊維層の組み合わせに対応した捕捉性能が得られるカートリッジフィルターとなる。不織布の通気度の測定方法は後述する。
【0045】
本発明の効果を妨げない範囲において、本発明のプリーツタイプのカートリッジフィルターを構成するろ過材は、第1繊維層、第2繊維層、第3繊維層及び第4繊維層に加えて、他の繊維層を含んでもよい。ろ過材を構成する繊維層が増えることでろ過材の製造工程が煩雑になるだけでなく、プリーツ状に折り曲げる際、加工性が低下するおそれがあることから、本発明のカートリッジフィルターを構成するろ過材は、2〜6層の繊維層で構成されていることが好ましい。ろ過材を構成する繊維層の数が上記範囲を満たすことでろ過材の生産性が高く、ろ過性能の高いカートリッジフィルターが容易に得られる。本発明のカートリッジフィルターを構成するろ過材は3〜5層の繊維層で構成されていることがより好ましく、3層又は4層の繊維層で構成されていることがさらに好ましい。
【0046】
本発明のプリーツタイプのカートリッジフィルターを構成するろ過材は、ろ過材を構成する繊維層の中で最も平均孔径が小さい繊維層、すなわち第1繊維層が比較的流入側にあるだけでなく、第1繊維層の下流側にも繊維層を設けることを特徴としている。本発明のカートリッジフィルターを構成するろ過材において、第1繊維層の流入側に配置されている繊維層が0〜2層であり、第1繊維層の流出側に配置されている繊維層が1〜3層であり、第1繊維層の流出側に配置されている繊維層の数と第1繊維層の流入側に配置されている繊維層の数が等しいか、第1繊維層の流出側に配置されている繊維層の数が第1繊維層の流入側に配置されている繊維層の数よりも多いことが好ましい。上記ろ過材において、第1繊維層の流出側により多くの繊維層を配置することでろ過精度が高められる。上記ろ過材において、第1繊維層の流入側に配置されている繊維層が0〜1層であり、第1繊維層の流出側に配置されている繊維層が1〜3層であることが好ましく、第1繊維層の流入側に配置されている繊維層が0〜1層であり、第1繊維層の流出側に配置されている繊維層が1〜2層であることがより好ましく、第1繊維層の流入側に配置されている繊維層が1層であり、第1繊維層の流出側に配置されている繊維層が1〜2層であることがさらに好ましい。
【0047】
第1繊維層の流入側に2層以上の繊維層が存在する場合、流入側からみて第1繊維層の直前に位置し、第1繊維層に接触している繊維層が第2繊維層となる。また、第1繊維層の流出側に3層以上の繊維層が存在する場合、ろ過材を構成する繊維集合物を流入側から順に並べ、第1繊維層の次に位置する繊維層、言い換えるならば、第1繊維層の流出側表面に接触している繊維層が第3繊維層となる。そして、第3繊維層の流出側に位置し、第3繊維層の直後に位置する繊維層、言い換えるならば、第3繊維層の流出側表面に接触している繊維層が第4繊維層となる。この場合、第1繊維層の流入側に配置されている繊維層が2層であり、第1繊維層の流出側に配置されている繊維層が2〜3層であり、第1繊維層の流出側に配置されている繊維層の数と第1繊維層の流入側に配置されている繊維層の数が等しいか、第1繊維層の流出側に配置されている繊維層の数が第1繊維層の流入側に配置されている繊維層の数よりも多いことが好ましい。
【0048】
第1ネット及び第2ネットは、繊維長が120mm以上の繊維、又はモノフィラメントやマルチフィラメントなどの連続繊維で構成された繊維集合物であり、構成繊維(以下において、繊条とも記す。)によって規則的な空隙が形成されており、1cm
2当たり2.94cNの荷重下で測定した厚みが120μm以上となっているネットである。ここでいう規則的な空隙が形成されているとは、繊条によって形成されている空隙の面積や形状がバラバラでなく、実質的に同じ面積かつ実質的に同じ形状の空隙が繰り返されていることを指す。上記ネットは実質的に同一形状の空隙が繰り返されていれば、ネットの空隙部分の形状は限定されず、例えば、空隙部分が三角形、四角形、六角形を始めとする多角形の空隙等のいずれの形状でも良い。ネットは、好ましくは格子状に繊条が配置されているネットであり、より好ましくは空隙部分が正方形のネットである。本発明において好ましく用いられるネットとしてはJX日鉱日石エネルギー株式会社より購入可能なコンウェッド(登録商標)ネット、三井化学産資株式会社より購入可能なネトロン(登録商標)シート、三晶株式会社より購入可能なデルネット(登録商標)などがある。
【0049】
第1ネット及び第2ネットにおいて、繊条の材質は特に限定されず、ろ過を行う環境に応じた材質からなるネットを使用することができる。例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂といった合成樹脂製のネットを使用したりすることが可能である。この中でもポリオレフィン系樹脂からなる繊条で構成されたネットを使用することが好ましく、さらに好ましいのはポリプロピレンの単一成分で構成される繊条、例えばポリプロピレン単一成分のモノフィラメント(PPモノフィラメント)などで構成されたネットである。ポリプロピレンは耐薬品性が高いため、様々な液体のろ過に使用可能であり、軟化点及び融点が低く、熱加工性に優れているため、ろ過材をケースに収めて両端をヒートシールする際、優れたヒートシール性を示す。
【0050】
第1ネットの線径(繊条の太さ)、厚み、空隙面積、目付は特に限定されないが、線径(繊条の太さ)が0.25〜2mmであることが好ましく、0.3〜2mmであることがより好ましく、0.4〜1.5mmであることがさらに好ましい。線径が上記の範囲内であると、使用中に変形せず、プリーツ加工性も良好になる。厚みが0.25〜2mmであることが好ましく、0.3〜2mmであることがより好ましく、0.4〜1.5mmであることがさらに好ましい。厚みが上記の範囲内であると、使用中に変形せず、プリーツ加工性も良好になる。空隙面積が0.5〜40mm
2であることが好ましく、0.5〜25mm
2であることがより好ましく、1〜20mm
2であることがさらに好ましい。ネットの空隙面積が上記の範囲内であると、圧力損失や目詰まりを軽減することができ、プリーツ加工性も良好になる。目付が10〜200g/m
2であることが好ましく、30〜150g/m
2であることがより好ましく、50〜100g/m
2であることがさらに好ましい。目付が上記の範囲内であると、ろ過材全体の強度が高くなる。
【0051】
第2ネットの線径(繊条の太さ)、厚み、空隙面積、目付は特に限定されないが、線径が0.1〜0.6mmであることが好ましく、0.12〜0.5mmであることがより好ましく、0.15〜0.5mmであることがさらに好ましい。線径が上記の範囲内であると、使用中に変形せず、圧力損失も低減することができ、プリーツ加工性も良好になる。厚みが0.12〜0.6mmであることが好ましく、0.14〜0.5mmであることがより好ましく、0.15〜0.5mmであることがさらに好ましい。厚みが上記の範囲内であると、使用中に変形せず、圧力損失も低減することができ、プリーツ加工性も良好になる。空隙面積が1〜170mm
2であることが好ましく、1〜150mm
2であることがより好ましく、2〜100mm
2であることがさらに好ましい。ネットの空隙面積が上記の範囲内であると、圧力損失や目詰まりを軽減することができ、ろ過材全体の強度を保つことができる。目付が10〜200g/m
2であることが好ましく、20〜150g/m
2であることがより好ましく、30〜100g/m
2であることがさらに好ましい。目付が上記の範囲内であると、第2ネットが各繊維層を支えるようになり、ろ過材全体の強度が高められる。
【0052】
上記ろ過材をプリーツ状に折り畳み、ろ過材の両端をヒートシール加工し、ろ過材の両端にエンドキャップを施し、カートリッジフィルターを得ることができる。なお、上記ろ過材をプリーツ状に折り畳み、プロテクター(ケース)に入れた後、両端にエンドキャップを装着し、ろ過材の両端をヒートシール加工してもよい。例えば、ろ過材に対しひだ状に折りたたむプリーツ加工を施し、ろ過材の両端をヒートシール加工して接着させ、各種プラスチック製のプロテクターに収め、両端にエンドキャップを装着させて、カートリッジフィルターを得ることができる。本発明のカートリッジフィルターの形状は、特に限定されるものではなく、円筒状、三角形、四角形、六角形等の角柱状等いずれの形状であっても問題ないが、円筒状のカートリッジフィルターであることが好ましい。
【0053】
上記カートリッジフィルターは、ろ過寿命を向上する観点から、プリーツ加工されたろ過材のプリーツ折りの山数は、ろ過材の外周部分の長さ50mm当たり8個以上であることが好ましい。ここでいうろ過材の外周部分の長さとは、カートリッジフィルターを切断した断面において、プリーツ折りされたろ過材が収められている形状における、フィルター材の外側部分の外周長さのことである。上記カートリッジフィルターにおいて、プリーツ加工されたろ過材のプリーツ折りの山数は、ろ過材の外周部分の長さ50mm当たりの山数が8〜40個であることがより好ましく、ろ過材の外周部分の長さ50mm当たりの山数が12〜35個であることがさらに好ましい。ろ過寿命の測定方法は後述する。
【0054】
上記カートリッジフィルターは、ろ過精度が高く、粒子径が1μmの粒子の捕集率が99%以上であることが好ましく、99.5%以上であることがより好ましい。ろ過精度の測定方法は後述する。
【実施例】
【0055】
以下、本発明を実施例により説明する。本発明は以下の実施例に限られたものではない。
【0056】
使用した不織布及びネットの物性の測定方法、並びにカートリッジフィルターの物性及びろ過性能の測定方法を下記に示した。
【0057】
(目付)
不織布又はネットから、1辺が20cmの正方形(面積0.04m
2)の試料を切り出し、その試料の質量(g)を測定し、目付(g/m
2)を算出した。
【0058】
(厚み)
厚み測定機(商品名「THICKNESS GAUGE モデルCR−60A」、(株)大栄科学精器製作所製)を用い、試料1cm
2あたり2.94cNの荷重を加えた状態で測定した。
【0059】
(最小孔径、平均孔径、最大孔径及び最多孔径)
ASTM F 316−86(バブルポイント法)に準じ、ポーラス・マテリアルズ社製「パーム・ポロメーター」を用いて測定した。
【0060】
(引張強度及び引張伸度)
JIS L 1096 6.12.1 A法(ストリップ法)に準じて、定速緊張形引張試験機を用いて、試料片の幅5cm、つかみ間隔10cm、引張速度30±2cm/分の条件で引張試験を行い、切断時の荷重値(引張強度)及び引張伸度を測定した。引張試験は、不織布の縦方向(MD方向)及び横方向(CD方向)をそれぞれ引張方向として実施した。評価結果はいずれも3点の試料について測定した値の平均で示している。
【0061】
(最小繊維径、平均繊維径及び最大繊維径)
不織布の走査型電子顕微鏡写真から、任意の100本の繊維を選択してそれらの繊維の繊維径を測定し、最小値、平均値、最大値をそれぞれ、最小繊維径、平均繊維径、最大繊維径とした。
【0062】
(通気度)
フラジール型試験機を用いて、JIS L 1096に準じて測定した。
【0063】
(通水圧力損失)
水道水をカートリッジフィルターの外側から中空部に向かって30リットル/分の流量で通水した時の、カートリッジフィルターの入口とカートリッジフィルターの出口との圧力差を測定した。
【0064】
(ろ過精度)
JIS Z 8901に準ずる試験用ダスト(JIS11種[中位径2μm]とJIS8種[中位径6.6〜8.6μm]を1:1の質量割合で混合したもの)の試験用水懸濁液(濃度:50ppm)を、均一に攪拌しながらカートリッジフィルターの外側から中空部に向かって20リットル/分の流量で流し、ろ過液100リットルを採集して評価した。評価方法は、ろ過前の試験用懸濁液100リットルに含まれるダストの粒子径別の個数(M)と、ろ過した後のろ過液100リットルに残るダストの粒子径別の個数(N)を粒度分布測定器(ベックマンコールター社製、商品名「コールターカウンターマルチサイザー2」)を用いて測定し、下記に示す式に基づいて、各粒子径別の捕集率を算出した。そして、粒子径が1μmの粒子の捕集率及び捕集率90%の粒子径を、それぞれ、ろ過精度A及びろ過精度Bとした。
捕集率(%)={(M−N)/M}×100
【0065】
(ろ過寿命)
JIS Z 8901に準ずる試験用ダスト(JIS11種[中位径2μm]とJIS8種[中位径6.6〜8.6μm]を1:1の質量割合で混合したもの)の試験用水懸濁液(濃度:50ppm)を、均一に攪拌しながらカートリッジフィルターの外側から中空部に向かって20リットル/分の流量で流し続け、カートリッジフィルターの流入側と流出側の圧力差(圧力損失)が0.2MPaになるまで流し、圧力差が0.2MPaに到達した時点の総通液量を求め、ろ過寿命とした。
【0066】
実施例及び比較例では、下記表1に示す不織布及び表2に示すネットを用いた。表1及び表2において、不織布及びネットの各物性は、上記のように測定評価した。表1において、「***」は、未測定を意味する。
【0067】
【表1】
【0068】
【表2】
【0069】
不織布2〜6は、メルトブローン不織布であり、不織布1は、不織布2を下記の条件でカレンダー加工し、両表面を平滑化した不織布である。不織布7は、ポリプロピレン繊維からなるメルトブローン不織布A(目付55g/m
2、厚み0.76mm、通気度19.9cm
3/cm
2/秒、平均孔径16.1μm、最大孔径26.0μm)を下記の条件でカレンダー加工したものである。不織布8は、ポリプロピレン繊維からなるメルトブローン不織布B(目付70g/m
2、厚み0.82mm、通気度30.5cm
3/cm
2/秒、平均孔径22.2μm、最大孔径41.1μm)を下記の条件でカレンダー加工したものである。
【0070】
<カレンダー加工>
不織布2、メルトブローン不織布A及びメルトブローン不織布Bのそれぞれに対し、加熱温度70℃、線圧3〜5MPa/cmの条件下、金属熱ロールで不織布の両表面に対しカレンダー加工を行い、不織布1、不織布7及び不織布8を得た。
【0071】
(実施例1)
不織布6、不織布1、不織布2、不織布3及びネット1を、この順番でろ過対象物の流入側(外側)から流出側(中空部)に配置されるように積層して重ねた状態でプリーツ状に加工し、4層の繊維層を有するろ過材とした。そして、両端を一括してヒートシール加工を施し、プロテクターに収め、端面にエンドキャップを接着させて、カートリッジフィルターを得た。
【0072】
(
参考例1)
ネット1、不織布1、不織布2、不織布3及びネット2を、この順番でろ過対象物の流入側(外側)から流出側(中空部)に配置されるように積層して重ねた状態でプリーツ状に加工し、3層の繊維層を有するろ過材とした。そして、両端を一括してヒートシール加工を施し、プロテクターに収め、端面にエンドキャップを接着させて、カートリッジフィルターを得た。
【0073】
(実施例3)
不織布6、不織布1、不織布4、不織布5及びネット1を、この順番でろ過対象物の流入側(外側)から流出側(中空部)に配置されるように積層して重ねた状態でプリーツ状に加工し、4層の繊維層を有するろ過材とした。そして、両端を一括してヒートシール加工を施し、プロテクターに収め、端面にエンドキャップを接着させて、カートリッジフィルターを得た。
【0074】
(
参考例2)
ネット1、不織布1、不織布4、不織布5及びネット2を、この順番でろ過対象物の流入側(外側)から流出側(中空部)に配置されるように積層して重ねた状態でプリーツ状に加工し、3層の繊維層を有するろ過材とした。そして、両端を一括してヒートシール加工を施し、プロテクターに収め、端面にエンドキャップを接着させて、カートリッジフィルターを得た。
【0075】
(実施例5)
不織布6、不織布7、不織布2、不織布3及びネット1を、この順番でろ過対象物の流入側(外側)から流出側(中空部)に配置されるように積層して重ねた状態でプリーツ状に加工し、4層の繊維層を有するろ過材とした。そして、両端を一括してヒートシール加工を施し、プロテクターに収め、端面にエンドキャップを接着させて、カートリッジフィルターを得た。
【0076】
(実施例6)
不織布6、不織布8、不織布2、不織布3及びネット1を、この順番でろ過対象物の流入側(外側)から流出側(中空部)に配置されるように積層して重ねた状態でプリーツ状に加工し、4層の繊維層を有するろ過材とした。そして、両端を一括してヒートシール加工を施し、プロテクターに収め、端面にエンドキャップを接着させて、カートリッジフィルターを得た。
【0077】
(比較例1)
ネット1、不織布1及びネット1を、この順番でろ過対象物の流入側(外側)から流出側(中空部)に配置されるように積層して重ねた状態でプリーツ状に加工し、1層の繊維層を有するろ過材とした。そして、両端を一括してヒートシール加工を施し、プロテクターに収め、端面にエンドキャップを接着させて、カートリッジフィルターを得た。
【0078】
(比較例2)
ネット1、不織布3、不織布2、不織布1及びネット2を、この順番でろ過対象物の流入側(外側)から流出側(中空部)に配置されるように積層して重ねた状態でプリーツ状に加工し、3層の繊維層(メルトブローン不織布からなる繊維層を3層有し、各繊維層は平均孔径が徐々に小さくなるように配置されており、平均孔径が最も小さい繊維層の流出側には繊維層が存在しない。)を有するろ過材とした。そして、両端を一括してヒートシール加工を施し、プロテクターに収め、端面にエンドキャップを接着させて、カートリッジフィルターを得た。
【0079】
(比較例3)
ネット1、不織布7及びネット1を、この順番でろ過対象物の流入側(外側)から流出側(中空部)に配置されるように積層して重ねた状態でプリーツ状に加工し、1層の繊維層を有するろ過材とした。そして、両端を一括してヒートシール加工を施し、プロテクターに収め、端面にエンドキャップを接着させて、カートリッジフィルターを得た。
【0080】
(比較例4)
ネット1、不織布8及びネット1を、この順番でろ過対象物の流入側(外側)から流出側(中空部)に配置されるように積層して重ねた状態でプリーツ状に加工し、1層の繊維層を有するろ過材とした。そして、両端を一括してヒートシール加工を施し、プロテクターに収め、端面にエンドキャップを接着させて、カートリッジフィルターを得た。
【0081】
実施例1
、3、5、6、
参考例1〜2及び比較例1〜4で得られたカートリッジフィルターのろ過性能の測定結果を下記表3及び表4に示した。
【0082】
【表3】
【0083】
【表4】
【0084】
表3から分かるように、実施例
1、3のカートリッジフィルターは、粒子径が1μmの粒子の捕集率が99%以上であり、粒子径が1μmの粒子の捕集率で示されるろ過精度が極めて高かった。また、捕集率が90%である粒子の粒子径は、0.7μm未満であり、捕集率が90%である粒子の粒子径で示されるろ過精度も良好であった。一方、比較例1〜2のカートリッジフィルターは、粒子径が1μmの粒子の捕集率は75%未満であり、捕集率が90%である粒子の粒子径は1.50μm以上であり、ろ過精度が低かった。
【0085】
表4のデータにおいて、実施例5、6と比較例3、4を比較すると、本発明のカートリッジフィルターにおいて、ろ過精度を中程度に設定した場合でもその効果が発揮されることがわかる。即ち、カレンダー加工を行ったメルトブローン不織布のみを繊維層として用いている比較例3と、比較例3で用いた繊維層を使用し、その繊維層よりも平均孔径の大きい繊維層を下流側に配置させた実施例5では、各種ろ過精度が向上していることが確認できる。同様の結果が比較例4と実施例6の対比でも確認できる。これらの結果から、中程度のろ過精度、具体的には1〜5μmほどの粒子を補足するカートリッジフィルターにおいても、最も平均孔径の小さい繊維層の下流側に平均孔径の範囲を調整した繊維層を配置することで、流速の落ちた、サイズの小さい粒子を補足できるようになり、ろ過精度が高められる。