(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ビニル・シス−ポリブタジエンゴム(A)10〜90重量部、及び(A)以外のジエン系ゴム(B)90〜10重量部からなるゴム成分(A)+(B)100重量部に対し、ゴム補強剤(C)10〜100重量部を配合することを特徴とするゴム組成物であって、前記ビニル・シス−ポリブタジエンゴム(A)は、前記ビニル・シス−ポリブタジエンゴム(A)に対して、融点が95〜110℃の1,2−ポリブタジエン(a)を4〜20重量%、及び融点が150〜230℃の1,2−ポリブタジエン(b)を10〜15重量%含有する、ゴム組成物。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<ビニル・シス−ポリブタジエンゴム(A)>
本発明のゴム組成物に用いるビニル・シス−ポリブタジエンゴム(A)は、マトリックス成分であるポリブタジエン中に、融点が95〜110℃の1,2−ポリブタジエン(a)を4〜20重量%、及び融点が150〜230℃の1,2−ポリブタジエン(b)を10〜15重量%含有する。
【0011】
(1,2−ポリブタジエン(a))
ビニル・シス−ポリブタジエンゴム(A)において、1,2−ポリブタジエン(a)の融点は95〜110℃であるが、95〜105℃であることが好ましい。1,2−ポリブタジエン(a)の融点が95℃より低いと引張応力が低下する傾向にあり、110℃より高いと耐亀裂性が低下する傾向にあり、好ましくない。
【0012】
また、1,2−ポリブタジエン(a)の含有量は、ビニル・シス−ポリブタジエンゴム(A)に対して、4〜20重量%であり、4〜10重量%が好ましく、4〜8重量%がより好ましい。含有量が20重量%より多いと加工性が低下する傾向にあり、4重量%より少ないと引張応力が低下する傾向にあり、好ましくない。
【0013】
1,2−ポリブタジエン(a)は、後述するビニル・シス−ポリブタジエンゴム(A)の製造方法の第1工程において、不活性有機溶媒中に添加又は合成することによって、製造されたビニル・シス−ポリブタジエンゴム(A)中に上記含有量を含有させることができる。
【0014】
(1,2−ポリブタジエン(b))
また、本発明に用いるビニル・シス−ポリブタジエンゴム(A)は、後述するビニル・シス−ポリブタジエンゴム(A)の製造方法の第3工程において、1,3−ブタジエンをシンジオタクチック−1,2重合することによって、1,2−ポリブタジエン(b)を含有させることができる。
【0015】
1,2−ポリブタジエン(b)の含有量(H.I.)は、ビニル・シス−ポリブタジエンゴム(A)に対して、10〜15重量%であり、12〜14重量%が好ましい。含有量が15重量%より多いと加工性及び耐亀裂性及び低燃費性が低下する傾向にあり、10重量%より少ないと引張応力及び耐亀裂性が低下する傾向にあり、好ましくない。
【0016】
また、1,2−ポリブタジエン(b)の融点は150〜230℃であるが、180〜220℃であることが好ましく、190〜210℃であることがさらに好ましい。1,2−ポリブタジエン(b)の融点が150℃より低いと引張応力が低下する傾向にある。
【0017】
また、1,2−ポリブタジエン(b)のピークトップ分子量は、100,000〜400,000が好ましく、200,000〜350,000がより好ましい。ピークトップ分子量が400,000より大きいと加工性が低下する傾向にあり、100,000より小さいと引張応力が低下する傾向にある。本発明において、ピークトップ分子量(Mp)とは、ゲル浸透クロマトグラフィー測定により得られた溶出曲線におけるピークトップの分子量であり、ポリスチレンを標準物質として得た検量線から算出することができる。
【0018】
(ポリブタジエンゴム)
本発明に用いるビニル・シス−ポリブタジエンゴム(A)において、マトリックス成分であるポリブタジエンは、後述するビニル・シス−ポリブタジエンゴム(A)の製造方法の第2工程において、1,3−ブタジエンをシス−1,4重合することによって得られる。ポリブタジエンのムーニー粘度(ML
1+4,100℃)は、20〜60が好ましく、20〜35がより好ましい。また、ポリブタジエンのシス−1,4構造含有率は90%以上であることが好ましく、特に95%以上であることが好ましい。
【0019】
また、マトリックス成分であるポリブタジエンの重量平均分子量は、200,000〜800,000が好ましく、400,000〜650,000がより好ましい。また、重量平均分子量と数平均分子量の比(Mw/Mn)は、2.00〜5.00が好ましく、(2.20〜3.50がより好ましい。
【0020】
また、シス−1,4重合で得られるポリブタジエンは実質的にゲル分を含有しない。
【0021】
<ビニル・シス−ポリブタジエンゴム(A)の製造方法>
本発明に用いるビニル・シス−ポリブタジエンゴム(A)の製造方法としては、融点が95〜110℃の1,2−ポリブタジエン(a)と、1,3−ブタジエンと、炭化水素を主成分とする不活性有機溶媒との混合物を調製する第1工程と、第1工程で調整された混合物に水、有機アルミニウム化合物及び可溶性コバルト化合物からなる触媒、又は、有機アルミニウム化合物、ニッケル化合物及びフッ素化合物からなる触媒を添加して、1,3−ブタジエンをシス−1,4重合する第2工程と、第2工程で得られた重合反応混合物中の1,3−ブタジエンをシンジオタクチック−1,2重合する第3工程と、を備えることを特徴とする。
【0022】
(第1工程)
ビニル・シス−ポリブタジエンゴム(A)の製造方法において使用する、融点が95〜110℃の1,2−ポリブタジエン(a)は、コバルト化合物、一般式AlR
3(但し、Rは炭素原子数1〜10の炭化水素基である)で表される有機アルミニウム化合物及び二硫化炭素、並びに、必要に応じてアルコール、アルデヒド、ケトン、エステル、ニトリル、スルホキシド、アミド及び燐酸エステルからなる群より選ばれる1種又は2種以上の化合物、からなる触媒を用い、1,3−ブタジエンを重合することにより製造される。前記1,2−ポリブタジエン(a)の1,2構造含有率は、40〜99%が好ましく、50〜95%が特に好ましい。また、前記1,2−ポリブタジエン(a)は、シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエンであることが好ましい。
【0023】
ビニル・シス−ポリブタジエンゴム(A)の製造方法において、1,2−ポリブタジエン(a)の添加量は、得られるビニル・シス−ポリブタジエンに対して、4〜20重量%であり、4〜10重量%が好ましく、4〜8重量%がより好ましい。添加量が20重量%より多いと加工性が悪化する傾向にあり、4重量%より少ないと引張応力が悪化する傾向にあり、好ましくない。
【0024】
ビニル・シス−ポリブタジエンゴム(A)の製造方法において使用する不活性有機溶媒としては、トルエン、ベンゼン及びキシレン等の芳香族炭化水素、n−ヘキサン、ブタン、ヘプタン及びペンタン等の脂肪族炭化水素、シクロヘキサン及びシクロペンタン等の脂環族炭化水素、上記のオレフィン化合物及びシス−2−ブテン、トランス−2−ブテン等のオレフィン系炭化水素、ミネラルスピリット、ソルベントナフサ及びケロシン等の炭化水素系溶媒、並びに塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素系溶媒などが挙げられる。また、1,3−ブタジエンモノマーそのものを重合溶媒として用いてもよい。
【0025】
上記の不活性有機溶媒の中でも、トルエン、シクロヘキサン、及びシス−2−ブテンとトランス−2−ブテンとの混合物などが好適に用いられる。
【0026】
ビニル・シス−ポリブタジエンゴム(A)の製造方法において、融点が95〜110℃の1,2−ポリブタジエン(a)と、1,3−ブタジエンと、炭化水素を主成分とする不活性有機溶媒との混合物は、1,3−ブタジエン及び前記不活性有機溶媒との混合物に、1,2−ポリブタジエン(a)を溶解することより調製することができる。1,2−ポリブタジエン(a)が溶解し難い場合、30〜180℃に加熱し、溶解させることができる。また、1,3−ブタジエンと不活性有機溶媒との混合物中において、上記の触媒系を用いて1,2−ポリブタジエン(a)を合成して、溶解させて、混合物を調製してもよい。
【0027】
(第2工程)
次に、第1工程で調整された混合物中の水分の濃度を調整する。水分の濃度は、シス−1,4重合で用いる有機アルミニウム化合物1モル当たり、好ましくは0.1〜1.4モル、特に好ましくは0.2〜1.2モルの範囲である。この範囲外では触媒活性が低下したり、シス−1,4構造含有率が低下したり、分子量が異常に低く又は高くなったりするため好ましくない。また、上記の範囲外では、重合時のゲルの発生を抑制することができず、このため重合槽などへのゲルの付着が起り、さらに連続重合時間を延ばすことができないので好ましくない。水分の濃度を調整する方法は、公知の方法が適用できる。多孔質濾過材を通して添加・分散させる方法(特開平4−85304号公報)も有効である。
【0028】
上記のように水分の濃度を調整して得られた混合物に、有機アルミニウム化合物を添加する。有機アルミニウム化合物としては、トリアルキルアルミニウム、ジアルキルアルミニウムクロライド、ジアルキルアルミニウムブロマイド、アルキルアルミニウムセスキクロライド、アルキルアルミニウムセスキブロマイド、及びアルキルアルミニウムジクロライドなどが挙げられる。
【0029】
上記の有機アルミニウム化合物のうち、一般式AlR
3(但し、Rは炭素原子数1〜10の炭化水素基である)により表わされるトリアルキルアルミニウムを好ましく用いることができる。トリアルキルアルミニウムの例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ−n−プロピルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリシクロヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリフェニルアルミニウム、トリ−p−トリルアルミニウム、及びトリベンジルアルミニウムを挙げることができる。なお、トリアルキルアルミニウム内のアルキル基は、互いに同一でも、あるいは異なっていてもよい。
【0030】
上記の有機アルミニウム化合物に加えて、ジメチルアルミニウムクロライド及びジエチルアルミニウムクロライドなどのジアルキルアルミニウムクロライド、セスキエチルアルミニウムクロライド及びエチルアルミニウムジクロライドなどの有機アルミニウムハロゲン化合物、ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライド及びセスキエチルアルミニウムハイドライドなどの水素化有機アルミニウム化合物を用いることもできる。
【0031】
これらの有機アルミニウム化合物は、2種類以上を併用することもできる。
【0032】
有機アルミニウム化合物の使用量は、水、有機アルミニウム化合物及び可溶性コバルト化合物からなる触媒系を用いてシス−1,4重合する場合は、1,3−ブタジエン1モル当たり0.1ミリモル以上、特に0.5〜50ミリモルであることが好ましい。また、有機アルミニウム化合物、ニッケル化合物及びフッ素化合物からなる触媒系を用いてシス−1,4重合する場合は、1,3−ブタジエン1モル当たり1×10
−5〜1×10
−1モルであることが好ましい。
【0033】
次いで、有機アルミニウム化合物を添加した混合物に可溶性コバルト化合物を添加して、1,3−ブタジエンをシス−1,4重合する。可溶性コバルト化合物としては、炭化水素を主成分とする不活性有機溶媒若しくは液体1,3−ブタジエンに可溶なものであるか、又は均一に分散できる、例えば、コバルト(II)アセチルアセトナート及びコバルト(III)アセチルアセトナートなどコバルトのβ−ジケトン錯体、コバルトアセト酢酸エチルエステル錯体のようなコバルトのβ−ケト酸エステル錯体、コバルトオクトエート、コバルトナフテネート及びコバルトベンゾエートなどの炭素数6以上の有機カルボン酸のコバルト塩、塩化コバルトピリジン錯体及び塩化コバルトエチルアルコール錯体などのハロゲン化コバルト錯体などが用いられる。可溶性コバルト化合物の使用量は、1,3−ブタジエン1モル当たり0.0005ミリモル以上、特に0.001ミリモル以上であることが好ましい。また、可溶性コバルト化合物に対する有機アルミニウム化合物のモル比(Al/Co)は10以上であり、特に50以上であることが好ましい。
【0034】
また、可溶性コバルト化合物の代わりに、有機アルミニウム化合物を添加した混合物にニッケル化合物及びフッ素化合物を添加して、1,3−ブタジエンをシス−1,4重合してもよい。この場合、水は、シス−1,4重合触媒の成分として添加しても、添加しなくてもよい。
【0035】
ニッケル化合物としては、ニッケルの塩や錯体が好ましく用いられる。特に好ましいものとして、塩化ニッケル及び臭化ニッケルなどのハロゲン化ニッケル、硝酸ニッケルなどの無機酸のニッケル塩、オクチル酸ニッケル、酢酸ニッケル、ニッケルオクトエートなどの炭素原子数1〜18のカルボン酸ニッケル、ナフテン酸ニッケル、マロン酸ニッケル、ニッケルのビスアセチルアセトナート及びトリスアセチルアセトネート、アセト酢酸エチルエステルなどのニッケル錯体、ハロゲン化ニッケルのトリアリールホスフィン錯体、トリアルキルホスフィン錯体、ピリジン錯体及びピコリン錯体等の有機塩基錯体、並びにエチルアルコール錯体などの各種錯体を挙げることができる。ニッケル化合物の使用量は、1,3−ブタジエン1モル当たり1×10
−7〜1×10
−3モルであることが好ましい。
【0036】
フッ素化合物としては、三フッ化ホウ素のエーテル、アルコール、又はこれらの混合物の錯体、あるいはフッ化水素のエーテル、アルコール、又はこれらの錯体の混合物が好ましく用いられる。特に好ましいものとして、三フッ化ホウ素ジエチルエーテレート、三フッ化ホウ素ジブチルエーテレート、フッ化水素ジエチルエーテレート、及びフッ化水素ジブチルエーテレートを挙げることができる。フッ素化合物の使用量は、1,3−ブタジエン1モル当たり1×10
−4〜1モルであることが好ましい。
【0037】
1,3−ブタジエンをシス−1,4重合する温度は、0℃を超えて100℃以下、好ましくは10〜100℃、さらに好ましくは20〜100℃である。重合時間は、10分〜2時間の範囲が好ましい。シス−1,4重合後のポリマー濃度が5〜26重量%となるように、シス−1,4重合を行うことが好ましい。重合は、重合槽(重合器)内にて溶液を攪拌混合して行う。重合に用いる重合槽としては、高粘度液攪拌装置付きの重合槽、例えば特公昭40−2645号公報に記載された装置を用いることができる。
【0038】
シス−1,4重合時に、公知の分子量調節剤、例えばシクロオクタジエン、アレン、メチルアレン(1,2−ブタジエン)などの非共役ジエン類、又はエチレン、プロピレン、ブテン−1などのα−オレフィン類を使用することができる。また、重合時のゲルの生成をさらに抑制するため、公知のゲル化防止剤を使用することができる。
【0039】
(第3工程)
次に、第2工程で得られた重合反応混合物中の1,3−ブタジエンをシンジオタクチック−1,2重合する。その際に、得られたシス−1,4重合物に、1,3−ブタジエンを添加しても添加しなくてもよい。また、この1,2重合する際に、一般式AlR
3(但し、Rは炭素原子数1〜10の炭化水素基である)により表される有機アルミニウム化合物及び二硫化炭素、並びに、可溶性コバルト化合物を添加して1,3−ブタジエンを1,2重合することが好ましく、さらに、1,2重合する際に、重合系に水を添加してもよい。また、二硫化炭素はシス−1,4重合に与える影響が小さく、また重合終了後も溶液中に残存するため、第1工程若しくは第2工程で添加してもよい。
【0040】
前記一般式AlR
3により表される有機アルミニウム化合物としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリn−ヘキシルアルミニウム及びトリフェニルアルミニウムなどが好適である。有機アルミニウム化合物は、1,3−ブタジエン1モル当たり0.1ミリモル以上、特に0.5〜50ミリモルが好ましい。二硫化炭素の濃度は、20ミリモル/L以下、特に好ましくは0.01〜10ミリモル/Lである。二硫化炭素の代替として、公知のイソチオシアン酸フェニルやキサントゲン酸化合物を使用してもよい。水は、1,3−ブタジエンを有機アルミニウム化合物と接触させた後、重合系に添加することが好ましい。水の添加量は、有機アルミニウム化合物1モル当たり0.1〜1.5モルが好ましい。
【0041】
本発明においては、第3工程において、可溶性コバルト化合物の添加量を調整することで、1,2−ポリブタジエン(b)の含有量(H.I.)を調整することができる。第3工程で添加する可溶性コバルト化合物の量としては、第2工程終了後の残存1,3−ブタジエン1モル当たり0.005mmol以上が好ましい。また、可溶性コバルト化合物としては、前記第2工程で記載したものと同様のものを用いることができる。なお、重合活性が低い場合には、可溶性コバルト化合物を通常より多く添加する場合がある。
【0042】
1,2重合する温度は、−5〜100℃が好ましく、特に−5〜80℃が好ましい。1,2重合する際の重合系には、前記第2工程で得られたシス−1,4重合物100重量部当たり1〜50重量部、好ましくは1〜20重量部の1,3−ブタジエンを添加することが好ましい。これにより、1,2重合時の1,2−ポリブタジエン(b)の収量を増大させることができる。重合時間は、10分〜2時間の範囲が好ましい。1,2重合後のポリマー濃度が9〜29重量%となるように、1,2重合を行うことが好ましい。重合は、重合槽(重合器)内にて重合溶液を攪拌混合して行う。1,2重合に用いる重合槽としては、1,2重合中は更に高粘度となり、ポリマーが付着しやすいので、高粘度液攪拌装置付きの重合槽、例えば特公昭40−2645号公報に記載された装置を用いることができる。
【0043】
重合反応が所定の重合率に達した後、常法に従って公知の老化防止剤を添加することができる。老化防止剤としては、フェノール系の2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)、リン系のトリノニルフェニルフォスファイト(TNP)、並びに硫黄系の4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール及びジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート(TPL)などが挙げられる。これらを単独でも2種以上組み合わせて用いてもよく、老化防止剤の添加は、ビニル・シス−ポリブタジエン(A)100重量部に対して0.001〜5重量部である。
【0044】
重合反応は、重合溶液にメタノール及びエタノールなどのアルコール、又は水などの極性溶媒を大量に投入する方法、塩酸及び硫酸などの無機酸、酢酸及び安息香酸などの有機酸、又は塩化水素ガスを重合溶液に導入する方法など、それ自体公知の方法を用いて停止する。次いで、通常の方法に従い、生成したビニル・シス−ポリブタジエン(A)を分離、洗浄、続いて乾燥する。
【0045】
<ゴム組成物>
本発明のゴム組成物は、前記ビニル・シス−ポリブタジエンゴム(A)10〜90重量部、及び(A)以外のジエン系ゴム(B)90〜10重量部からなるゴム成分(A)+(B)100重量部に対し、ゴム補強剤(C)10〜100重量部を配合する。
【0046】
((A)以外のジエン系ゴム(B))
本発明において、(B)成分の(A)以外のジエン系ゴムとしては、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、乳化重合若しくは溶液重合スチレン−ブタジエンゴムから選ばれる少なくとも1種類以上のジエン系ゴムを用いることができ、特に天然ゴム及びブタジエンゴムを使用することが好ましい。(B)成分を(A)成分と混合させるときには、通常行われているバンバリー、ロールなどの混練時に混合してもよいし、重合後の溶液状態のままで予め混合、乾燥したものを使用してもよい。
【0047】
(A)成分と(B)成分との割合は、(A)成分が10〜90重量部、(B)成分が90〜10重量部であることが好ましく、特に(A)成分が10〜60重量部、(B)成分が90〜40重量部である場合、タイヤ用のゴム組成物として最適である。
【0048】
(ゴム補強剤(C))
本発明において、(C)成分のゴム補強剤としては、各種のカーボンブラック、ホワイトカーボン、活性化炭酸カルシウム、超微粒子珪酸マグネシウム等の無機補強剤やシンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ハイスチレン樹脂、フェノール樹脂、リグニン、変性メラミン樹脂、クマロンインデン樹脂及び石油樹脂等の有機補強剤が挙げられる。
特に好ましくは、粒子径が90nm以下、ジブチルフタレート(DBP)吸油量が70ml/100g以上のカーボンブラックで、例えば、FEF,FF,GPF,SAF,ISAF,SRF,HAF等が挙げられる。
【0049】
(C)成分の配合割合は、ゴム成分(A)+(B)100重量部に対して、10〜100重量部が好ましく、20〜60重量部がより好ましい。(C)成分が20より少ないと、引張応力が低下する傾向があり、60より多いと、加工性が悪化する傾向がある。
【0050】
(その他の成分)
本発明のゴム組成物は、必要に応じて、その他の成分である加硫剤、加硫助剤、老化防止剤、充填剤、プロセスオイル、亜鉛華、ステアリン酸など、通常ゴム業界で用いられる薬品を混練してもよい。
【0051】
加硫剤としては、公知の加硫剤、例えば硫黄、有機過酸化物、樹脂加硫剤、酸化マグネシウムなどの金属酸化物などが用いられる。
【0052】
加硫促進剤としては、公知の加硫促進剤、例えばアルデヒド類、アンモニア類、アミン類、グアニジン類、チオウレア類、チアゾール類、チウラム類、ジチオカーバメイト類、キサンテート類などが用いられる。
【0053】
充填剤としては、炭酸カルシウム、塩基性炭酸マグネシウム、クレー、リサージュ、珪藻土、再生ゴム及び粉末ゴムなどが挙げられる。
【0054】
老化防止剤としては、アミン−ケトン系、イミダゾール系、アミン系、フェノール系、硫黄系及び燐系などが挙げられる。
【0055】
プロセスオイルは、アロマティック系、ナフテン系、パラフィン系のいずれを用いてもよい。
【0056】
本発明のゴム組成物は、前記各成分を通常行われているバンバリー、オープンロール、ニーダー、二軸混練り機などを用いて混練りすることで得られる。
【0057】
本発明のゴム組成物を加硫して得られる加硫ゴム組成物は、その改良された引張応力を生かして、スタッドレスタイヤ、スノータイヤ及びオールシーズンタイヤ等のタイヤ用途、また大型タイヤ用途にも適用可能である。
【0058】
本発明に係るゴム組成物は、サイドウォール、キャップトレッド、ベーストレッド、サイド補強ゴム及びビートフィラー等のタイヤの各部位に用いることができ、特にタイヤのサイドウォールに用いることが好ましい。
【0059】
本発明に係るゴム組成物を用いたタイヤは、空気入りタイヤであることが好ましく、充填する気体としては、通常の又は酸素分圧が調整された空気、窒素、並びにアルゴン及びヘリウム等の不活性ガスなどがある。
【0060】
本発明に係るゴム組成物をタイヤのサイドウォールに用いる場合、各成分を含有させた本発明に係るゴム組成物が未加硫の段階で加工され、タイヤ成形機上で通常の方法により貼り付け成形され、生タイヤを得ることができる。この生タイヤを加硫機注で加熱加圧して、タイヤを得ることができる。
【0061】
また、本発明に係るゴム組成物は、タイヤ用途以外に、防振ゴム、免震ゴム、ベルト(ベルトコンベア)、ゴムクローラ、各種ホース、モランなどに用いることができる。
【実施例】
【0062】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、これらは本発明の目的を限定するものではない。なお、ビニル・シス−ポリブタジエンゴム(A)及びゴム組成物の物性は、以下のようにして測定した。
【0063】
<ビニル・シス−ポリブタジエンゴム(A)>
1.ムーニー粘度(ML
1+4,100℃)
ムーニー粘度(ML
1+4,100℃)は、JIS K6300に準拠し、100℃にて予熱1分測定4分の値をムーニー粘度計(島津製作所製、SMV−202)により測定した。
【0064】
2.低融点SPB(1,2−ポリブタジエン(a))含有量
低融点SPB(1,2−ポリブタジエン(a))の含有量は、以下の式(1)を用いて計算した。
低融点SPB(1,2−ポリブタジエン(a))の含有量=重合系中に添加した低融点SPB量÷得られたビニル・シス−ポリブタジエンゴム(A)量×100 ・・・(1)
【0065】
3.高融点SPB(1,2−ポリブタジエン(b))含有量(H.I.)
示差走査熱量計(島津製作所製、DSC−50)により測定した融解熱量と、実測H.I.測定法で得られたH.I.の検量線から求めた。実測H.I.は2gのビニル・シス−ポリブタジエンゴムを200mlのn−ヘキサンにて4時間ソックスレー抽出器によって沸騰抽出した抽出残部を重量部で示した。
【0066】
4.高融点SPB(1,2−ポリブタジエン(b))の融点
高融点SPB(1,2−ポリブタジエン(b))の融点は、試料約10mg、昇温速度10℃/minとした場合の値を示差走査熱量計(島津製作所製、DSC−50)により測定した。
【0067】
<ゴム組成物>
1.加工性
加工性は、二次配合物のムーニー粘度(ML
1+4,100℃)より評価した。比較例2を100とし、指数を算出した。数値が高い程加工性が良好なことを示す。
【0068】
<加硫物>
1.引張応力(M300)
JIS6251に従い引張応力M300を測定した。また、比較例1を100とし、指数を算出した。数値が大きいほど引張応力が高いことを示す。
【0069】
(合成例1)
ヘリカル羽を備えチッソ置換を終えた1.5Lステンレス製オートクレーブに、低融点SPB(1,2−ポリブタジエン(v)成分:JSR社製 RB830)2.7g及びシクロヘキサン100mlを投入しオートクレーブを密閉し、次いで、1,3−ブタジエンおよび2−ブテンの混合溶液(重量比50:50)500mlを圧送することで、原料溶液(FB)600mlを作製した。原料溶液に表1に示す水(H
2O)及び二硫化炭素(CS
2)をシリンジを用いて添加し、その後、オートクレーブを60℃まで昇温し、30分・500rpmで攪拌することにより、低融点SPBを完全に溶解させた。オートクレーブを25℃まで冷却した後、表1に示すジエチルアルミニウムクロライド及びトリエチルアルミニウム(モル比3:1)をシリンジを用いて添加し、5分攪拌した。次いで、表1に示す1,5−シクロオクタジエン(COD)をシリンジを用いて添加し、45℃まで昇温させた。その後、表1に示すコバルトオクトエート(Co(Oct)
2)をシリンジを用いて添加し、45℃で20分シス−1,4重合を実施した。得られた重合反応混合物に、表2に示すトリエチルアルミニウム(TEA)をシリンジを用いて添加し2分間保持、次いで、表2に示すコバルトオクトエート(Co(Oct)
2)をシリンジを用いて添加し、45℃で20分シンジオタクチック−1,2重合を実施した。得られた重合反応混合物に重合停止剤を添加し、シンジオタクチック−1,2重合を停止させた。その後、オートクレーブを冷却・脱圧し、重合反応混合物をバットに取り出した。100℃に温めた真空乾燥機にバットごと投入し、未反応のブタジエン及び溶剤を除去することで、合成例1に記載のビニル・シス−ポリブタジエンを得た。得られたビニル・シス−ポリブタジエンの物性を表3に示す。
【0070】
(比較合成例1)
ヘリカル羽を備えチッソ置換を終えた5.0Lステンレス製オートクレーブに、低融点SPB(1,2−ポリブタジエン(a)成分:JSR社製 RB830)3.0g投入し、1,3−ブタジエンと2−ブテンおよびシクロヘキサンの混合液(重量比32:31:36)を2000ml圧送、オートクレーブを密閉し原料溶液を作製した。原料溶液に表1に示す水(H
2O)及び二硫化炭素(CS
2)をシリンジを用いて添加し、その後、オートクレーブを60℃まで昇温し、30分・500rpmで攪拌することにより、低融点SPBを完全に溶解させた。オートクレーブを25℃まで冷却した後、表1に示すジエチルアルミニウムクロライドをシリンジを用いて添加し、5分攪拌した。次いで、表1に示す1,5−シクロオクタジエン(COD)、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート(TPL)をシリンジを用いて添加し、60℃まで昇温させた。その後、表1に示すコバルトオクトエート(Co(Oct)
2)シリンジを用いて添加し、60℃で20分シス−1,4重合を実施した。得られた重合反応混合物に、表2に示すトリエチルアルミニウム(TEA)をシリンジを用いて添加し2分間保持、次いで、表2に示すコバルトオクトエート(Co(Oct)
2)をシリンジを用いて添加し、40℃で20分シンジオタクチック−1,2重合を実施した。得られた重合反応混合物に重合停止剤を添加し、シンジオタクチック−1,2重合を停止させた。その後、オートクレーブを冷却・脱圧し、重合反応混合物をバットに取り出した。100℃に温めた真空乾燥機にバットごと投入し、未反応のブタジエン及び溶剤を除去することで、比較合成例1に記載のビニル・シス−ポリブタジエンを得た。得られたビニル・シス−ポリブタジエンの物性を表3に示す。
【0071】
(比較合成例2)
ヘリカル羽を備えチッソ置換を終えた1.5Lステンレス製オートクレーブに、低融点SPB(1,2−ポリブタジエン(a)成分:JSR社製 RB830)2.7g及びシクロヘキサン100mlを投入しオートクレーブを密閉し、次いで、1,3−ブタジエンおよび2−ブテンの混合溶液(重量比50:50)500mlを圧送することで、原料溶液(FB)600mlを作製した。原料溶液に表1に示す水(H
2O)及び二硫化炭素(CS
2)をシリンジを用いて添加し、その後、オートクレーブを60℃まで昇温し、30分・500rpmで攪拌することにより、低融点SPBを完全に溶解させた。オートクレーブを25℃まで冷却した後、表1に示すジエチルアルミニウムクロライド及びトリエチルアルミニウム(モル比3:1)をシリンジを用いて添加し、5分攪拌した。次いで、表1に示す1,5−シクロオクタジエン(COD)をシリンジを用いて添加し、45℃まで昇温させた。その後、表1に示すコバルトオクトエート(Co(Oct)
2)をシリンジを用いて添加し、45℃で20分シス−1,4重合を実施した。得られた重合反応混合物に、表2に示すトリエチルアルミニウム(TEA)をシリンジを用いて添加し2分間保持、次いで、表2に示すコバルトオクトエート(Co(Oct)
2)をシリンジを用いて添加し、45℃で20分シンジオタクチック−1,2重合を実施した。得られた重合反応混合物に重合停止剤を添加し、シンジオタクチック−1,2重合を停止させた。その後、オートクレーブを冷却・脱圧し、重合反応混合物をバットに取り出した。100℃に温めた真空乾燥機にバットごと投入し、未反応のブタジエン及び溶剤を除去することで、比較合成例2に記載のビニル・シス−ポリブタジエンを得た。得られたビニル・シス−ポリブタジエンの物性を表3に示す。
【0072】
【表1】
【0073】
【表2】
【0074】
【表3】
【0075】
前記合成例1及び比較合成例1,2で得られたビニル・シス−ポリブタジエンゴムを表4に従ってプラストミルでカーボンブラック、天然ゴム、プロセスオイル、亜鉛華、ステアリン酸および老化防止剤を加えて混練する一次配合を実施し、次いで、ロールにて加硫促進剤および硫黄を添加する二次配合を実施して、二次配合物を作成した。この二次配合物のムーニー粘度(ML
1+4,100℃)を測定し加工性を評価した。さらに、この二次配合物を成型し、160℃にてプレス加硫して加硫物を得た後、引張応力(M300)を測定した。配合物および加硫物の物性測定結果について、表5に示す。
【0076】
【表4】
【0077】
【表5】
【0078】
以上より、実施例に係る配合物及び加硫物は、比較例の配合物及び加硫物と比較して、引張応力と加工性の改善が図られていることが分かる。
【0079】
〈低燃費性の評価〉
次に、実施例1並びに比較例1及び2について低燃費性の評価を行った。レオメトリックス社製の粘弾性測定装置を用いて、温度50℃、周波数15Hz、歪5%で損失正接(tanδ)を測定した。結果を表6に示す。結果は比較例1を100としてtanδの逆数を指数表示した。指数値が大きいほど、低燃費性に優れていることを示す。
【0080】
【表6】
【0081】
〈タイヤのサイドゴム耐亀裂成長性の評価〉
次に、実施例1並びに比較例1及び2に係るゴム組成物をタイヤのトレッド部に用いた場合の耐亀裂成長性について評価試験を行った。先ず、実施例1及び比較例1に係るゴム組成物それぞれを用いて、サイズが195/65R15の空気入りタイヤを製造した。得られたタイヤのサイドゴム部分に予め1mmの傷を入れた後、ドラム上で走行させ、一定時間後の成長した亀裂の長さを測定した。その結果を表6に示す。結果は、比較例1の亀裂長さを100として、亀裂長さの逆数をとって指数表示した。指数値が大きいほど耐亀裂成長性に優れていることを示す。
【0082】
評価の結果、実施例1に係るゴム組成物を用いた際に低燃費性の大きな悪化なく耐亀裂成長性の大幅な向上がみられた。また、H.I.量を増やした比較例2については低燃費性の悪化がみられた他、耐亀裂成長性の向上はみられなかった。