特許第6726984号(P6726984)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6726984
(24)【登録日】2020年7月2日
(45)【発行日】2020年7月22日
(54)【発明の名称】パルスオキシメータの防水検査構造
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/1455 20060101AFI20200713BHJP
【FI】
   A61B5/1455
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-37854(P2016-37854)
(22)【出願日】2016年2月29日
(65)【公開番号】特開2017-153580(P2017-153580A)
(43)【公開日】2017年9月7日
【審査請求日】2019年2月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000112602
【氏名又は名称】フクダ電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】特許業務法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】窪田 秀明
(72)【発明者】
【氏名】児玉 一幸
(72)【発明者】
【氏名】叶 学
(72)【発明者】
【氏名】坂内 紀信
【審査官】 ▲高▼ 芳徳
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−200267(JP,A)
【文献】 特開平08−206422(JP,A)
【文献】 特開2010−286378(JP,A)
【文献】 特開2002−350280(JP,A)
【文献】 特開昭49−060977(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/1455 − 5/1464
A61B 5/02 − 5/0295
G01M 3/00 − 3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルスオキシメータのケースを貫通するように形成された検査用孔と、
前記検査用孔を塞ぐように設けられた透湿通気防水膜と、
を具備し、
前記検査用孔内には、前記透湿通気防止膜が前記ケースの内部方向へ押し込まれることを防止する押し込み防止部が形成されており、
前記押し込み防止部は、前記検査用孔の入口から前記透湿通気防水膜までの気道を確保しつつ、かつ、前記検査用孔の入口方向から前記検査用孔内を見たときに前記透湿通気防水膜が見えないように形成されている、
パルスオキシメータの防水検査構造。
【請求項2】
前記防水検査構造は、手首装着型のパルスオキシメータ本体に設けられ、
前記検査用孔は、前記パルスオキシメータを手首に装着するためのリストバンドによって覆われる位置に配置されている、
請求項1に記載のパルスオキシメータの防水検査構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルスオキシメータの防水検査構造に関し、特に被検者の手首に装着されるパルスオキシメータ本体における防水検査構造に関する。
【背景技術】
【0002】
パルスオキシメータは、光によって非観血的に動脈血酸素飽和度(SpO)を計測するための医療機器である(例えば特許文献1参照)。パルスオキシメータは、指、足趾又は耳朶等の部位にプローブを装着するように構成されている。このプローブには、装着部位に向けて例えば赤色光又は赤外光を発光する発光素子(例えば発光ダイオード)と、装着部位を透過し又は装着部位から反射した光を検出する受光素子(例えばフォトダイオード)と、が設けられている。パルスオキシメータは、透過光又は反射光の検出信号を用いて動脈血酸素飽和度の計測処理を行う信号処理回路を有し、この回路において、動脈血の脈拍に同期する光検出レベルの変動を赤色光の場合と赤外光の場合とで対比し、その比から動脈血酸素飽和度を算出し、算出した動脈血酸素飽和度を表示部に表示する。
【0003】
パルスオキシメータとしては、パルスオキシメータプローブと、上記信号処理回路及び上記表示部を有するパルスオキシメータ本体と、が別体に構成された別体型のものがある。また、パルスオキシメータプローブに上記信号処理回路及び上記表示部が搭載された一体型のものがある。別体型のパルスオキシメータでは、プローブがケーブルを介してパルスオキシメータ本体に接続される。パルスオキシメータ本体は被検者の手首等に装着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−107152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来のパルスオキシメータにおいては、防水機能を持たないので、入浴中や水中のリハビリにおいてSpOを測定する場合には、防水カバーによってパルスオキシメータを腕ごと覆う必要があった。しかし、このようにすると、防水カバーによって被検者の腕が締め付けられることにより被検者の血流が阻害され、この結果、正確なSpO測定ができないおそれがある。よって、労作となる入浴中のSpO測定が不正確となるおそれがあり、甚だ不都合である。このようなことから、防水機能を持ったパルスオキシメータが望まれる。防水機能を持ったパルスオキシメータによれば、入浴中も途切れることなく24時間のSpO測定及び記録により、被検者が普段の生活の中でSpOが90%未満とならないかスクリーニングを行うことができる。また、防水カバーを取り付ける手間とコストを省くことができ、腕の締め付けにより正確な値が取れないリスクを回避することができる。さらには、防水カバーの取り付けミスにより浸水し、機器が故障するリスクを回避することができる。
【0006】
しかしながら、パルスオキシメータは医療の診断にも用いられるため、機器内への漏水によって予期せずに機器が故障したり、漏水によって測定精度が低下していることを知らずに測定を続けることは、絶対に避けなければならない。
【0007】
よって、防水機能が果たされているかを検査するための防水検査構造を有していることが好ましい。防水機能はパルスオキシメータの使用時間の経過に伴って低下することが考えられるので、この防水検査構造は、製造時のみならず、使用開始後も簡単に防水検査を行うことができるものであることが好ましい。
【0008】
本発明は、以上の点を考慮してなされたものであり、簡単に防水検査を行うことができるパルスオキシメータの防水検査構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のパルスオキシメータの防水検査構造の一つの態様は、
パルスオキシメータのケースを貫通するように形成された検査用孔と、
前記検査用孔を塞ぐように設けられた透湿通気防水膜と、
を具備し、
前記検査用孔内には、前記透湿通気防止膜が前記ケースの内部方向へ押し込まれることを防止する押し込み防止部が形成されており、
前記押し込み防止部は、前記検査用孔の入口から前記透湿通気防水膜までの気道を確保しつつ、かつ、前記検査用孔の入口方向から前記検査用孔内を見たときに前記透湿通気防水膜が見えないように形成されている
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、検査用孔に圧力測定装置のノズルを挿入し、圧力測定装置によってケース内部の圧力を測定することで防水機能を検査できる。また、検査時以外は、透湿通気防水膜によってケース内部への水分の浸入が防止される。よって、簡単に防水検査を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態に係るパルスオキシメータの全体構成を示す図
図2】本体部の分解斜視図
図3】本体部を裏面側から見た平面図
図4】検査用孔の様子を示す平面図
図5図4のA−A断面図
図6図4のB−B断面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
図1は、本実施の形態に係るパルスオキシメータの全体構成を示す図である。パルスオキシメータ10は、本体部100と、プローブ部200とを有する。本体部100とプローブ部200とはケーブル300を介して接続されている。本体部100は図示しないリストバンドを用いて被検者の手首付近に装着可能とされており、プローブ部200は被検者の指に装着可能とされている。
【0014】
本体部100は、プローブ部200の発光部を発光させる発光回路、プローブ部200からの光を受光する受光回路、受光回路により得た透過光又は反射光の検出信号を用いて動脈血酸素飽和度の計測処理を行う信号処理回路、表示部101及び操作部102等を有する。
【0015】
図2は、本体部100の分解斜視図である。図2において、下側が表示部101側(つまり表面側)であり、上側が手首への装着側である。
【0016】
表面側ケース110と裏面側ケース120との間には、メイン基板130、LCD(Liquid Crystal Display)140が収容される。メイン基板130には、上述した発光回路、受光回路及び信号処理回路が設けられている。
【0017】
表面側ケース110の収容凹部111に、メイン基板130、LCD140を収容した状態において、表面側ケース110と裏面側ケース120とをネジ151a、152a、153a、154aにより締結する。
【0018】
各ネジ151a、152a、153a、154aにはパッキン151b、152b、153b、154bが挿通され、これによりネジ孔からケース内への浸水が防止される。また、裏面側ケース120における表面側ケース110への当接面には、パッキン(図示せず)が設けられており、これにより表面側ケース110と裏面側ケース120との隙間からのケース内への浸水が防止される。
【0019】
表面側ケース110の表面側には、メンブレンシート160が取り付けられる。メンブレンシート160における表面側ケース110と対向する面の周縁部には防水両面テープ(図示せず)が貼着されており、これにより表面側ケース110の表面側にメンブレンシート160を貼着することにより、表面側ケース110の表面側からケース内への浸水が防止される。
【0020】
表面側ケース110の側面には、電池蓋170が取り付けられる。電池蓋170は回動軸171を中心に回動可能に表面側ケース110に取り付けられ、閉状態において遊端側の係止爪172が表面側ケース110の係止部に係合することにより、ロック状態とされる。電池蓋170における表面側ケース110との当接面にはパッキン173が設けられており、これにより電池蓋170のロック状態においてケース内への浸水が防止される。
【0021】
このように、本体部100は、ケース内部への浸水を防止する防水機能を有する。
【0022】
かかる構成に加えて、本体部100は、防水機能を検査するための防水検査構造を有する。本実施の形態による防水検査構造は、本体部100の裏面側ケース120を貫通するように形成された検査用孔(チェックポート)180と、検査用孔180を塞ぐように設けられた透湿通気防水膜181(図5図6)と、を有する。透湿通気防水膜181は、ケース外部からケース内部への水分の浸入を防ぎ、ケース内部からケース外部には水分を通過させ、ケース内部とケース外部との間で空気を通過させる。
【0023】
検査用孔180は、本体部100を手首に装着するためのリストバンド400によって覆われる位置に配置されている。具体的には、裏面側ケース120にはリストバンド400を挿通するためのリストバンド挿通口121、122が形成されており、検査用孔180はこのリストバンド挿通口121、122にリストバンド400が挿通されたときにリストバンド400によって覆われる位置に形成されている。これにより、リストバンド400によって検査用孔180へのゴミや埃の侵入が防止される。
【0024】
図3は、本体部100を裏面側から見た平面図である。
【0025】
図4は検査用孔180を裏面側から見た平面図であり、図5図4のA−A断面図、図6図4のB−B断面図である。
【0026】
図4図6に示したように、検査用孔180内には、検査用孔180に裏面側から圧力測定装置のノズル500や棒状の異物が入り込んだときに、これらによって透湿通気防水膜181が損傷を受けることを防止するための押し込み防止部182a、182bが形成されている。
【0027】
押し込み防止部182a、182bは、検査用孔180の入口から透湿通気防水膜181までの気道を確保しつつ、検査用孔180の入口から入り込む圧力測定装置のノズル500や棒状の異物による透湿通気防水膜181の損傷を防止する。
【0028】
本実施の形態の場合、押し込み防止部182a、182bは2段構成となっており、検査用孔180の入口側に第1の押し込み防止部182aが形成されているとともに検査用孔180の奥側に第2の押し込み防止部182bが形成されている。第1の押し込み防止部182aには、周縁部に気道を確保するための切欠182a1が形成されている。一方、第2の押し込み防止部182bには、中央部に気道を確保するための切欠182b1が形成されている。これにより、圧力測定装置のノズル500や棒状の異物による透湿通気防水膜181の損傷を防止できる。例えば、圧力測定装置のノズル500の先端は第1の押し込み防止部182aに当接するので、ノズル500は第1の押し込み防止部182aより奥へは進入しない。また、棒状の異物は、第1の押し込み防止部182aの切欠182a1から奥へ進入したとしても、第2の押し込み防止部182bに突き当たるので、透湿通気防水膜181は損傷を受けない。
【0029】
なお、押し込み防止部の構成は、図4図6の例に限定されるものではなく、要は検査用孔180の入口から透湿通気防水膜181までの気道を確保しつつ、検査用孔180の入口から入り込む圧力測定装置のノズル500や棒状の異物による透湿通気防水膜181の損傷が防止される構成であればよい。このためには、検査用孔180の入口から透湿通気防水膜181までの気道が確保され、かつ、検査用孔180の入口方向から検査用孔180内を見たときに透湿通気防水膜181が見えないように押し込み防止部を形成するとよい。
【0030】
因みに、本実施の形態では、透湿通気防水膜181は、裏面側ケース120のケース内部側に両面テープ(図示せず)により貼着されている。さらに、透湿通気防水膜181の周縁部をポリカーボネート183により支持することで、透湿通気防水膜181の剥がれを確実に防止するようになっている。ポリカーボネート183は、両面テープ184により裏面側ケース120のケース内面に貼着されている。
【0031】
以上の構成において、本体部100の防水機能を検査する際には、先ず、本体部100からリストバンド400を外し、検査用孔180に圧力測定装置のノズル500を挿入する。そして、圧力測定装置によって本体部100の内部圧力を所定の圧力まで上昇させ、このとき圧力が低下しなければ防水機能が正常な状態であると判定する。これに対して、圧力が低下した場合、このことはケースのいずれかの位置から空気が漏れる状態であることを意味し、防水機能が低下している状態であると判定する。
【0032】
検査時以外においては、透湿通気防水膜181が本体部100の外部から内部への水分の浸入を防止するので、検査用孔180から本体部100の内部への水分の浸入は防止される。また、本体部100の内部の湿度は、透湿通気防水膜181によって外部の湿度と同じ程度まで下げられる。
【0033】
以上説明したように、本実施の形態によれば、パルスオキシメータ10の本体部100のケース120を貫通するように形成された検査用孔180と、検査用孔180を塞ぐように設けられた透湿通気防水膜181と、を設けたことにより、簡単に防水検査を行うことができるパルスオキシメータの防水検査構造を実現できる。
【0034】
また、検査用孔180をリストバンド400によって覆われる位置に設けたことにより、リストバンド400によって検査用孔180へのゴミや埃の侵入を防止できる。さらに、防水検査中以外は、検査用孔180がリストバンド400によって覆われるので、検査中以外に検査用孔180に透湿通気防水膜181を損傷させるおそれがあるような棒状の異物が入り込むことを防止できる。
【0035】
さらに、押し込み防止部182a、182bを設けたことにより、圧力測定装置のノズル500による透湿通気防水膜181の破損を防止できる。勿論、押し込み防止部182a、182bは、ノズル500以外の異物による透湿通気防水膜181の破損も防止できる。
【0036】
このように、本実施の形態によれば、リストバンド400及び又は押し込み防止部182a、182bによって、透湿通気防水膜181の破損を確実に防止でき、防水機能を検査するための検査用孔180からケース内部に水分が入り込むといった本末転倒の事態を確実に防止できる。
【0037】
上述の実施の形態は、本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することの無い範囲で、様々な形で実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、パルスオキシメータの防水機能を検査する防水検査構造として有用である。
【符号の説明】
【0039】
10 パルスオキシメータ
100 本体部
110 表面側ケース
120 裏面側ケース
180 検査用孔
181 透湿通気防水膜
182a、182b 押し込み防止部
182a1、182b1 切欠
183 ポリカーボネート
200 プローブ部
300 ケーブル
400 リストバンド
500 ノズル
図1
図2
図3
図4
図5
図6