特許第6726990号(P6726990)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6726990訓練用データ生成装置、訓練用データ生成方法及び訓練用データ生成プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6726990
(24)【登録日】2020年7月2日
(45)【発行日】2020年7月22日
(54)【発明の名称】訓練用データ生成装置、訓練用データ生成方法及び訓練用データ生成プログラム
(51)【国際特許分類】
   G09B 9/02 20060101AFI20200713BHJP
   G09B 9/00 20060101ALI20200713BHJP
【FI】
   G09B9/02
   G09B9/00 A
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-57899(P2016-57899)
(22)【出願日】2016年3月23日
(65)【公開番号】特開2017-173483(P2017-173483A)
(43)【公開日】2017年9月28日
【審査請求日】2018年12月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】高橋 由
(72)【発明者】
【氏名】池田 優
(72)【発明者】
【氏名】大塚 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】吉福 泰博
【審査官】 西村 民男
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−161309(JP,A)
【文献】 特開2012−159952(JP,A)
【文献】 特開2011−123187(JP,A)
【文献】 特開2008−210275(JP,A)
【文献】 特開2005−332360(JP,A)
【文献】 特開平8−320645(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/040736(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 1/00− 9/56,
17/00−19/26,
G05B23/00−23/02,
G06F11/07,11/22−11/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムの運転操作を訓練する訓練シミュレータに用いるデータを生成する訓練用データ生成装置であって、
記憶手段と、
ユーザの入力操作に基づいて、前記訓練シミュレータに模擬させる異常状態の難易度を含む、入力データを生成するためのデータ生成条件を設定する条件設定手段と、
前記システムの動作に関する複数のパラメータのうちの少なくとも1つを正常な状態から所定の変化態様の範囲内でランダムに変化させて、前記システムの動作に異常を発生させる可能性のある異常見込データを生成する異常見込データ生成手段と、
前記異常見込データ生成手段で生成された前記異常見込データを含む入力データにより、前記システムの動作に異常が発生するか否かを判定する異常発生判定手段と、
前記異常発生判定手段により、前記異常見込データを含む前記入力データによって前記システムの動作に異常が発生したと判定された場合に、当該異常見込データを異常データとして前記記憶手段に記憶させる異常データ記憶手段と、
前記条件設定手段で設定された前記難易度に基づいて、異常データとされた異常見込データを生成したときのパラメータの変化態様の発生頻度を調整し、調整されたパラメータの変化態様の発生頻度を前記記憶手段に記憶させるパラメータ変化頻度記憶手段と、
を備え
前記異常見込データ生成手段は、調整されたパラメータの変化態様の発生頻度が前記記憶手段に記憶されていた場合に、調整された発生頻度での当該パラメータの変化態様を、異常見込データを生成する際のパラメータの変化態様の選択候補に含める、
ことを特徴とする訓練用データ生成装置。
【請求項2】
前記システムを正常に動作させる前記複数のパラメータの数値情報を正常データとして記憶する正常データ記憶手段を備え、
前記正常データ記憶手段は、前記異常発生判定手段により、前記異常見込データを含む前記入力データによって前記システムの動作に異常が発生しないと判定された場合に、当該異常見込データを新たな正常データとして記憶し、
前記異常見込データ生成手段は、前記正常データ記憶手段に記憶された正常データに基づいて、当該正常データとは異なる前記異常見込データを生成することを特徴とする請求項1に記載の訓練用データ生成装置。
【請求項3】
前記異常発生判定手段は、前記入力データを実際に前記システムに入力し、当該システムの動作に異常が発生するか否かを確認することを特徴とする請求項1または2に記載の訓練用データ生成装置。
【請求項4】
前記異常見込データ生成手段は、前記複数のパラメータのうちの少なくとも1つに、最大最小値変化、データ不連続化、レート変化、データ型変更、BITシフト変化及び固定値の継続のうち少なくとも1つを適用することにより、前記異常見込データを生成することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の訓練用データ生成装置。
【請求項5】
システムの運転操作を訓練する訓練シミュレータに用いるデータを生成する訓練用データ生成方法であって、
前記データを記憶する記憶手段を備える訓練用データ生成装置が、
ユーザの入力操作に基づいて、前記訓練シミュレータに模擬させる異常状態の難易度を含む、入力データを生成するためのデータ生成条件を設定する条件設定工程と、
前記システムの動作に関する複数のパラメータのうちの少なくとも1つを正常な状態から所定の変化態様の範囲内でランダムに変化させて、前記システムの動作に異常を発生させる可能性のある異常見込データを生成する異常見込データ生成工程と、
前記異常見込データ生成工程で生成された前記異常見込データを含む入力データにより、前記システムの動作に異常が発生するか否かを判定する異常発生判定工程と、
前記異常発生判定工程により、前記異常見込データを含む前記入力データによって前記システムの動作に異常が発生したと判定された場合に、当該異常見込データを異常データとして前記記憶手段に記憶させる異常データ記憶工程と、
前記条件設定工程で設定された前記難易度に基づいて、異常データとされた異常見込データを生成したときのパラメータの変化態様の発生頻度を調整し、調整されたパラメータの変化態様の発生頻度を前記記憶手段に記憶させるパラメータ変化頻度記憶工程と、
実行し、
前記異常見込データ生成工程では、調整されたパラメータの変化態様の発生頻度が前記記憶手段に記憶されていた場合に、調整された発生頻度での当該パラメータの変化態様を、異常見込データを生成する際のパラメータの変化態様の選択候補に含める、
ことを特徴とする訓練用データ生成方法。
【請求項6】
システムの運転操作を訓練する訓練シミュレータに用いるデータを生成する訓練用データ生成プログラムであって、
前記データを記憶する記憶手段を備える訓練用データ生成装置に、
ユーザの入力操作に基づいて、前記訓練シミュレータに模擬させる異常状態の難易度を含む、入力データを生成するためのデータ生成条件を設定する条件設定機能と、
前記システムの動作に関する複数のパラメータのうちの少なくとも1つを正常な状態から所定の変化態様の範囲内でランダムに変化させて、前記システムの動作に異常を発生させる可能性のある異常見込データを生成する異常見込データ生成機能と、
前記異常見込データ生成機能により生成された前記異常見込データを含む入力データにより、前記システムの動作に異常が発生するか否かを判定する異常発生判定機能と、
前記異常発生判定機能により、前記異常見込データを含む前記入力データによって前記システムの動作に異常が発生したと判定された場合に、当該異常見込データを異常データとして前記記憶手段に記憶させる異常データ記憶機能と、
前記条件設定機能で設定された前記難易度に基づいて、異常データとされた異常見込データを生成したときのパラメータの変化態様の発生頻度を調整し、調整されたパラメータの変化態様の発生頻度を前記記憶手段に記憶させるパラメータ変化頻度記憶機能と、
を実現させ
前記異常見込データ生成機能は、調整されたパラメータの変化態様の発生頻度が前記記憶手段に記憶されていた場合に、調整された発生頻度での当該パラメータの変化態様を、異常見込データを生成する際のパラメータの変化態様の選択候補に含める、
ことを特徴とする訓練用データ生成プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、システムの運転操作を訓練する訓練シミュレータに用いるデータを生成する技術に関し、特に、システムの実運用で起こり得る異常を好適に模擬するのに有用な技術である。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばドライブシミュレータやフライトシミュレータなど、所定のシステムの運転・操縦操作を訓練する訓練シミュレータが知られている(例えば、特許文献1参照)。
この種の訓練シミュレータでは、システムの異常(故障)を模擬することで、訓練者にその対応を訓練させることができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5726775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の訓練シミュレータでは、システムで起こり得る異常を人間が想定し、この異常を模擬できるように当該訓練シミュレータ用のデータが作成されているため、例えば「エンジン回転数異常」や「オイル温度異常」などといった単一の異常しか模擬できなかった。
つまり、従来の訓練シミュレータでは、システムの動作に関する複数のパラメータと異常の発生状況とが実運用に即した状態で関連付けられていないために、異常がいつどのような状況で発生するかといった点を再現できておらず、システムの実運用で起こり得る異常を模擬できていなかった。
【0005】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたもので、システムの実運用で起こり得る異常を訓練シミュレータに好適に模擬させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、システムの運転操作を訓練する訓練シミュレータに用いるデータを生成する訓練用データ生成装置であって、
記憶手段と、
ユーザの入力操作に基づいて、前記訓練シミュレータに模擬させる異常状態の難易度を含む、入力データを生成するためのデータ生成条件を設定する条件設定手段と、
前記システムの動作に関する複数のパラメータのうちの少なくとも1つを正常な状態から所定の変化態様の範囲内でランダムに変化させて、前記システムの動作に異常を発生させる可能性のある異常見込データを生成する異常見込データ生成手段と、
前記異常見込データ生成手段で生成された前記異常見込データを含む入力データにより、前記システムの動作に異常が発生するか否かを判定する異常発生判定手段と、
前記異常発生判定手段により、前記異常見込データを含む前記入力データによって前記システムの動作に異常が発生したと判定された場合に、当該異常見込データを異常データとして前記記憶手段に記憶させる異常データ記憶手段と、
前記条件設定手段で設定された前記難易度に基づいて、異常データとされた異常見込データを生成したときのパラメータの変化態様の発生頻度を調整し、調整されたパラメータの変化態様の発生頻度を前記記憶手段に記憶させるパラメータ変化頻度記憶手段と、
を備え
前記異常見込データ生成手段は、調整されたパラメータの変化態様の発生頻度が前記記憶手段に記憶されていた場合に、調整された発生頻度での当該パラメータの変化態様を、異常見込データを生成する際のパラメータの変化態様の選択候補に含めることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の訓練用データ生成装置において、
前記システムを正常に動作させる前記複数のパラメータの数値情報を正常データとして記憶する正常データ記憶手段を備え、
前記正常データ記憶手段は、前記異常発生判定手段により、前記異常見込データを含む前記入力データによって前記システムの動作に異常が発生しないと判定された場合に、当該異常見込データを新たな正常データとして記憶し、
前記異常見込データ生成手段は、前記正常データ記憶手段に記憶された正常データに基づいて、当該正常データとは異なる前記異常見込データを生成することを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の訓練用データ生成装置において、
前記異常発生判定手段は、前記入力データを実際に前記システムに入力し、当該システムの動作に異常が発生するか否かを確認することを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の訓練用データ生成装置において、
前記異常見込データ生成手段は、前記複数のパラメータのうちの少なくとも1つに、最大最小値変化、データ不連続化、レート変化、データ型変更、BITシフト変化及び固定値の継続のうち少なくとも1つを適用することにより、前記異常見込データを生成することを特徴とする。
【0010】
請求項5及び請求項6に記載の発明は、請求項1に記載の訓練用データ生成装置と同様の特徴を具備する訓練用データ生成方法及び訓練用データ生成プログラムである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、システムの動作に関する少なくとも1つのパラメータを正常な状態からランダムに変化させた異常見込データが生成され、この異常見込データを含む入力データによりシステムの動作に異常が発生したと判定された場合に、当該異常見込データが異常データとして記憶される。
これにより、システムを動作させるための各種パラメータの異常発生に及ぼす影響を、システムの実運用に即した状態で確認することができ、ひいては、システムの実運用で起こり得る異常を訓練シミュレータに模擬させるための異常データを、パラメトリックに生成することができる。
したがって、特定の異常のみを模擬できるように訓練シミュレータ用のデータが作成されていた従来と異なり、システムの実運用で起こり得る異常を訓練シミュレータに好適に模擬させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】訓練用データ生成装置の概略構成を示すブロック図である。
図2】訓練用データ生成処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0014】
[訓練用データ生成装置の構成]
まず、本実施形態における訓練用データ生成装置10の構成について説明する。
図1は、訓練用データ生成装置10の概略構成を示すブロック図である。
【0015】
この図に示すように、訓練用データ生成装置10は、所定の実機システム30の運転操作を訓練する訓練シミュレータ20に用いるデータを生成するものである。より詳しくは、訓練用データ生成装置10は、実機システム30での異常(故障)発生を実際に確認することにより当該異常を訓練シミュレータ20で模擬させるための異常データを生成し、この異常データを含んだ訓練シミュレータ20を動作させるためのデータを生成するものである。
【0016】
ここで、訓練シミュレータ20は、実機システム30の運転・操縦操作を訓練するためのリアルタイムシミュレータであり、例えば、ドライブシミュレータや鉄道シミュレータ、フライトシミュレータ、プラント運転シミュレータなどである。この訓練シミュレータ20は、実機システム30と同一のパラメータ条件によって、当該実機システム30と同じ動作状態を模擬できるように構成されている。
【0017】
実機システム30は、実際の運用に供するシステム(または装置)であって、訓練シミュレータ20に対応したものであり、例えば訓練シミュレータ20がドライブシミュレータである場合には、当該実機システム30は車両である。
但し、本実施形態における実機システム30は、訓練用データ生成装置10からのデータの入力によって異常が発生するか否かを安全に確認可能なものであれば、実際の運用に供するものでなくともよい。例えばフライトシミュレータはこの異常発生の確認が可能であるため、訓練シミュレータ20としては勿論のこと、実機システム30としても利用可能である。
【0018】
具体的に、訓練用データ生成装置10は、入力部11と、表示部12と、記憶部13と、制御部14とを備えて構成されている。
このうち、入力部11は、キー群を有するキーボードや、ポインティングデバイスであるマウス(いずれも図示せず)を備えており、押下されたキーボード上のキーの位置やマウスでの操作に対応する信号を制御部14に出力する。
表示部12は、図示しないディスプレイを備えており、制御部14から入力される表示信号に基づいて各種情報をディスプレイに表示する。
【0019】
記憶部13は、訓練用データ生成装置10の各種機能を実現するためのプログラムやデータを記憶するとともに、作業領域としても機能するメモリである。本実施形態においては、記憶部13は、訓練用データ生成プログラム130を記憶している。
訓練用データ生成プログラム130は、後述の訓練用データ生成処理(図2参照)を制御部14に実行させるためのプログラムである。
【0020】
また、記憶部13は、インターフェース情報記憶領域131と、正常データ記憶領域132と、異常データ記憶領域133とを有している。
インターフェース情報記憶領域131には、実機システム30の要素間のインターフェースを規定・管理するICD(Interface Control Documents;インターフェース管理文書)等に基づき、当該要素間でやり取りされる各種パラメータの情報等が、インターフェース情報として予め記憶されている。
正常データ記憶領域132は、実機システム30の動作に関する複数のパラメータの数値情報であって当該実機システム30を正常に動作させるものを、正常データとして記憶する領域である。この正常データ記憶領域132には、シミュレーション結果等に基づくものが予め記憶されているほか、後述の訓練用データ生成処理において新たに正常データと判定されたものが記憶されるようになっている。
異常データ記憶領域133は、後述の訓練用データ生成処理において、実機システム30の動作に異常を発生させるパラメータ情報(すなわち、当該異常を訓練シミュレータ20に模擬させるパラメータ情報)を、異常データとして記憶する領域である。
【0021】
制御部14は、入力される指示に応じて所定のプログラムに基づいた処理を実行し、各機能部への指示やデータの転送等を行って、訓練用データ生成装置10を統括的に制御する。具体的に、制御部14は、入力部11から入力される操作信号等に応じて記憶部13に格納された各種プログラムを読み出し、当該プログラムに従って処理を実行する。そして、制御部14は、処理結果を記憶部13に一時保存するとともに、当該処理結果を表示部12に適宜出力させる。
また、制御部14は、訓練シミュレータ20や実機システム30に対してデータの入出力を行うことで、当該訓練シミュレータ20及び実機システム30の動作を制御可能に構成されている。
【0022】
[訓練用データ生成装置の動作]
続いて、訓練用データ生成処理を実行する際の訓練用データ生成装置10の動作について説明する。
図2は、訓練用データ生成処理の流れを示すフローチャートである。
【0023】
訓練用データ生成処理は、実機システム30の動作に発生する異常(故障)を訓練シミュレータ20で模擬させるための異常データを生成する処理である。この訓練用データ生成処理は、例えば訓練用データ生成装置10を操作するオペレータにより当該処理の実行指示が入力されたときに、制御部14が記憶部13から訓練用データ生成プログラム130を読み出して展開することで実行される。
【0024】
図2に示すように、訓練用データ生成処理が実行されると、まず制御部14は、オペレータによる入力部11での入力操作に基づいて、データ生成の条件を設定する(ステップS1)。
ここでは、例えば、異常データによって訓練シミュレータ20に模擬させる異常状態の難易度(すなわち、訓練シミュレータ20による訓練の難易度)や、実機システム30の動作に異常を発生させてから解除させるまでの解除時間などのパラメータが設定される。
【0025】
次に、制御部14は、実機システム30を正常に動作させるための複数のパラメータからなる正常データを生成する(ステップS2)。
具体的に、制御部14は、実機システム30の動作に必要な全てのパラメータについて、当該実機システム30を正常に動作させることができる数値情報を記憶部13の正常データ記憶領域132から読み出して、正常データを生成する。
【0026】
次に、制御部14は、記憶部13のインターフェース情報記憶領域131に記憶されたインターフェース情報と、正常データ記憶領域132に記憶された正常データとに基づいて、実機システム30の動作に異常を発生させる可能性のある異常見込データを生成する(ステップS3)。
具体的に、制御部14は、インターフェース情報と正常データとに基づいて、実機システム30の動作に関する複数のパラメータのうちの少なくとも1つを、通常の(正常な)状態からランダムに変化させることで、正常データとは異なる異常見込データを生成する。
【0027】
異常見込データを生成する際のパラメータの変化態様としては、例えば、最大最小値変化、データ不連続化、レート変化、データ型変更、BITシフト変化、固定値の継続などが挙げられる。制御部14は、これらの変化態様のうち、選択したパラメータに対して適用可能な少なくとも1つをランダムに抽出し、当該パラメータに適用する。
ここで、最大最小値変化とは、パラメータの最大値及び/または最小値を、その正常な範囲から外れた値とすることである。
データ不連続化とは、正常であれば連続しているパラメータを、不連続なものとすることである。
レート変化とは、パラメータの変化率を正常なものから変えることである。
データ型変更とは、パラメータのデータタイプを正常なものから変更することである。
BITシフト変化とは、パラメータのシフト演算の方向(右シフトと左シフト)やビット数などを正常なものから変化させることである。
固定値の継続とは、正常であれば変動するパラメータを固定値とすることである。
【0028】
次に、制御部14は、ステップS2で生成した正常データをベースとし、これにステップS3で生成した異常見込データを加える(または、該当パラメータを置き換える)ことで実機システム30を動作させるためのインプットデータを生成し、実機システム30に出力する(ステップS4)。
【0029】
次に、制御部14は、ステップS4で実機システム30に出力したインプットデータによって、実機システム30の動作に異常が発生するか否かを判定する(ステップS5)。
【0030】
このステップS5において、実機システム30の動作に異常が発生しないと判定した場合(ステップS5;No)、制御部14は、異常見込データ(に含まれるパラメータの数値情報)を新たな正常データとして記憶部13の正常データ記憶領域132に保存(記憶)し(ステップS6)、上述のステップS2へ処理を移行する。
そして、制御部14は、再びステップS2の正常データ生成以降の工程を繰り返す。このとき、上述のステップS3で生成された異常見込データが新たな正常データとされたことにより、当該異常見込データと同じものは次回のステップS3の異常見込データ生成では生成されなくなる。
【0031】
一方、ステップS5において、実機システム30の動作に異常が発生したと判定した場合には(ステップS5;Yes)、制御部14は、異常見込データを異常データとして記憶部13の異常データ記憶領域133に保存(記憶)する(ステップS7)。
これにより、実機システム30の動作に異常を発生させる異常データ、すなわち、訓練シミュレータ20に当該異常を模擬させることができる異常データが得られる。
そして、制御部14は、ステップS4で出力したインプットデータから異常データを除いた正常データを、上述のステップS1で設定された解除時間の経過後に実機システム30に出力することで、実機システム30の異常状態を解除し、正常な動作状態に復帰させる(ステップS8)。
【0032】
次に、制御部14は、例えばオペレータの終了指示などにより訓練用データ生成処理を終了させるか否かを判定し(ステップS9)、終了させると判定した場合には(ステップS9;Yes)、訓練用データ生成処理を終了する。
【0033】
また、ステップS9において、訓練用データ生成処理を終了させないと判定した場合には(ステップS9;No)、制御部14は、ステップS1で設定された難易度に基づいて異常データ(パラメータの変化態様)の発生頻度を調整し、これをステップS3の異常見込データ生成におけるパラメータの変化態様の選択候補に加わるよう記憶部13に保存(記憶)したうえで(ステップS10)、上述のステップS2へ処理を移行する。
このステップS10では、例えば、データ不連続化がされたパラメータを含む異常見込データが異常データとされた場合に、このパラメータの不連続の生じる頻度が、訓練シミュレータ20に模擬させる異常状態の難易度に応じて、高難易度であれば高頻度に、低難易度であれば低頻度に調整される。そして、この発生頻度が変化したパラメータの変化態様が、次回のステップS3の異常見込データ生成における選択候補となる。
【0034】
[効果]
以上のように、本実施形態によれば、実機システム30の動作に関する少なくとも1つのパラメータを正常な状態からランダムに変化させた異常見込データが生成され、この異常見込データを含むインプットデータにより実機システム30の動作に異常が発生したと判定された場合に、当該異常見込データが異常データとして記憶される。
これにより、実機システム30を動作させるための各種パラメータの異常発生に及ぼす影響を、実機システム30の実運用に即した状態で確認することができ、ひいては、実機システム30の実運用で起こり得る異常を訓練シミュレータ20に模擬させるための異常データを、パラメトリックに生成することができる。
したがって、特定の異常のみを模擬できるように訓練シミュレータ20用のデータが作成されていた従来と異なり、実機システム30の実運用で起こり得る異常を訓練シミュレータ20に好適に模擬させることができる。またこれにより、実機システム30の実運用で起こり得る異常による機能損失を訓練シミュレータ20で模擬することができ、実機システム30の実運用に即した訓練を実現することができる。
【0035】
また、異常見込データを含むインプットデータによっては実機システム30の動作に異常が発生しないと判定された場合、当該異常見込データが新たな正常データとして正常データ記憶領域132に記憶され、この正常データ記憶領域132に記憶された正常データに基づいて次の異常見込データを生成される。
したがって、一度正常データとされた異常見込データは次回以降の異常見込データ生成では生成されなくなるため、実機システム30の動作に異常を発生させるパラメータ条件を学習させることができる。
【0036】
[変形例]
なお、本発明を適用可能な実施形態は、上述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0037】
例えば、上記実施形態では、訓練用データ生成処理におけるステップS6やステップS10の後に、ステップS2へ処理を移行させて当該ステップS2の正常データ生成以降の処理を繰り返すこととしたが、前回のステップS2で既に生成済みの正常データをそのまま再利用することとしてもよい。つまり、ステップS6やステップS10の後に、ステップS2ではなく、ステップS3の異常見込データ生成へ処理を移行させることとしてもよい。
【0038】
また、訓練用データ生成装置10は、訓練シミュレータ20の一部として、当該訓練シミュレータ20と一体的に構成してもよい。
【符号の説明】
【0039】
10 訓練用データ生成装置
13 記憶部
130 訓練用データ生成プログラム
131 インターフェース情報記憶領域
132 正常データ記憶領域
133 異常データ記憶領域
14 制御部
20 訓練シミュレータ
30 実機システム
図1
図2