【文献】
ZHANG,Xiwang et al.,Processing municipal wastewaters by forward osmosis using CTA membrane,Journal of Membrane Science,2014年,Vol.468,p.269-275
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、非特許文献1の技術では、最初沈殿池で沈まない成分が膜表面に付着し、膜のファウリングが頻繁に発生する問題がある。膜表面の付着物は、洗浄により除去することができるが、除去作業を頻繁に行うことによって、濃縮水から本来エネルギーとして回収可能な成分も除去される。
【0009】
特許文献1に記載された技術では、膜のファウリングを抑制することはできるが、海水淡水化を目的とした技術であるため、被処理水からエネルギーを回収することについては記載も示唆もされていない。
【0010】
特許文献2に記載された技術では、被処理水を直接、FO膜に導入して被処理水を濃縮しているため、被処理水に含まれる有機固形物や溶解性有機物により、早期にFO膜表面にバイオファウリングが発生する。また、特許文献2に記載された発明にも、被処理水からエネルギーを回収することについては記載も示唆もされていない。
【0011】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、膜のファウリングを抑制しつつ、排水から効率良くエネルギーを回収することが可能な排水処理装置及び排水処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明者らが鋭意検討したところ、膜分離装置に流入させる流入水の性状を膜のファウリングが起こりにくい形態に予め調整するとともに、各工程で得られた汚泥及び処理水を引き抜いてメタン発酵することで、効率良くエネルギーが回収可能であることを見いだした。
【0013】
以上の知見を基礎として完成した本発明は一側面において、排水中の沈殿性有機物を固液分離し、分離汚泥と分離液とを得る固液分離槽と、半透膜を備え、半透膜を介して分離液を分離液よりも高浸透圧の駆動液と接触させることにより濃縮水と処理水とを得る正浸透膜装置と、正浸透膜装置へ流入する前の分離液に殺菌剤を供給する殺菌剤供給装置と、濃縮水を貯蔵する濃縮水貯蔵槽と、濃縮水と分離汚泥とを分解してメタンガスに変換する嫌気性処理槽とを備える排水処理装置が提供される。
【0014】
本発明に係る排水処理装置は一実施態様において、濃縮水貯蔵槽に排水又は分離汚泥に含まれる有機物を供給可能な有機物供給ラインを更に備える。
【0015】
本発明は別の一側面において、排水中の沈殿性有機物を固液分離し、分離汚泥と分離液とを得る第1の固液分離装置と、半透膜を備え、半透膜を介して分離液を分離液よりも高浸透圧の駆動液と接触させることにより濃縮水と処理水とを得る正浸透膜装置と、正浸透膜装置へ流入する前の分離液に凝集剤を加えて固液分離する第2の固液分離装置と、濃縮水と分離汚泥とを分解してメタンガスに変換する嫌気性処理槽とを備える排水処理装置が提供される。
【0016】
本発明に係る排水処理装置は別の一実施態様において、嫌気性処理槽が、分離汚泥をメタン発酵する嫌気性消化槽と、濃縮水をメタン発酵する嫌気性排水処理槽とを備える。
【0017】
本発明に係る排水処理装置は更に別の一実施態様において、駆動液が、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛、タングステン、マンガン、モリブデン、セレン、ホウ素のいずれかを含む海水、海水淡水化処理施設の濃縮水、又は浸出水処理施設から排出される高塩濃度排水のいずれかを含む。
【0018】
本発明は更に別の一側面において、排水中の沈殿性有機物を固液分離し、分離汚泥と分離液とを得ることと、半透膜を備える正浸透膜装置に分離液を供給し、半透膜を介して分離液を分離液よりも高浸透圧の駆動液と接触させることにより、濃縮水と処理水とを得ることと、正浸透膜装置へ流入する前の分離液に殺菌剤を供給することと、濃縮水を貯蔵することと、濃縮水と分離汚泥とを分解してメタンガスに変換することを含む排水処理方法が提供される。
【0019】
本発明は更に別の一側面において、排水中の沈殿性有機物を固液分離し、分離汚泥と分離液とを得ることと、半透膜を備える正浸透膜装置に分離液を供給し、半透膜を介して分離液を分離液よりも高浸透圧の駆動液と接触させることにより濃縮水と処理水とを得ることと、正浸透膜装置へ流入する前の分離液に凝集剤を加えて固液分離することと、濃縮水と分離汚泥とを分解してメタンガスに変換することを含む排水処理方法が提供される。
【0020】
本発明に係る排水処理方法は一実施態様において、駆動液が、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛、タングステン、マンガン、モリブデン、セレン、ホウ素のいずれかを含む海水、海水淡水化処理施設の濃縮水、又は浸出水処理施設から排出される高塩濃度排水を含む。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、膜のファウリングを抑制しつつ、排水から効率良くエネルギーを回収することが可能な排水処理装置及び排水処理方法が提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであってこの発明の技術的思想は構成部品の構造、配置等を下記のものに特定するものではない。
【0024】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態に係る排水処理装置は、
図1に示すように、排水中の沈殿性有機物を固液分離し、分離汚泥と分離液とを得る固液分離槽1(第1の固液分離装置)と、半透膜を備え、半透膜を介して分離液を分離液よりも高浸透圧の駆動液と接触させることにより濃縮水と処理水とを得る正浸透膜装置3と、正浸透膜装置3へ流入する前の分離液に殺菌剤を供給する殺菌剤供給装置4と、濃縮水を貯蔵する濃縮水貯蔵槽5と、濃縮水と分離汚泥とを分解してメタンガスに変換する嫌気性処理槽6とを備える。
【0025】
供給対象とする排水の種類は特に限定されないが、少なくとも溶解性有機物や濁質などの汚染物を含む有機性排水が好適に用いられる。具体的には、下水、下水の一次処理水、下水の二次処理水、し尿、畜産排水、各種製造排水などが、本実施形態に係る排水として利用可能である。
【0026】
排水の水質は以下に限定されるものではないが、例えば、生物化学的酸素要求量(BOD)が10〜1000mg/L、化学的酸素要求量(CODcr)が20〜3000mg/L、浮遊物質(SS)が20〜3000mg/L程度の有機性排水が供給できる。
【0027】
固液分離槽1としては、例えば最初沈殿池などが好適に利用される。なお、固液分離の具体的手段は特に限定されるものではなく、重力沈降分離、遠心分離、浮上分離、凝集分離、膜分離の任意の手段が利用可能である。固液分離槽1で得られる分離液は、正浸透膜装置(FO膜装置)へ送られる。固液分離槽1で分離される分離汚泥は、配管SL2を介して嫌気性処理槽6へ送られる。
【0028】
正浸透膜装置3は半透膜(FO膜)を備えており、半透膜の一次側には固液分離槽1から分離された分離液が供給される。半透膜の二次側には分離液よりも高浸透圧の駆動液(ドロー溶液)が供給される。正浸透膜装置3を用いることにより、逆浸透膜(RO)装置などに比べて、装置内の加圧のための大型ポンプを使用する必要がなくなるため、動力を削減できる。
【0029】
正浸透膜装置3へ流入する分離液が半透膜を介して駆動液と接触することで、濃縮水と処理水とが得られる。処理水は正浸透膜装置3の外部へ放出可能である。濃縮水は配管CLを介して濃縮水貯蔵槽5へ送られる。正浸透膜装置3内へ供給される駆動液としては、海水、海水淡水化処理施設の濃縮水(ブライン)、浸出水処理施設から排出される高塩濃度排水などが好ましい。
【0030】
図1の嫌気性処理槽6で行われる嫌気性消化処理などを司る微生物の活性には、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛、タングステン、マンガン、モリブデン、セレン、ホウ素などの微量の物質の存在が重要であるが、これら微量の物質を含む海水、海水淡水化処理施設の濃縮水(ブライン)、浸出水処理施設から排出される高塩濃度排水などの駆動液中の成分を半透膜の一次側へ流入させることで、嫌気性消化処理を行うに当たっての栄養源となり、嫌気性消化反応をより安定的に行うことができる。
【0031】
具体的には、嫌気性処理槽6においてより効率良く濃縮水をエネルギー化(メタンガス化)するために、下記で定義されるFO膜の溶質リーク率が0.0001〜0.1になるように、FO膜の種類及び運転条件を設定することが好ましい。
溶質リーク率=(濃縮水塩分濃度÷濃縮率−原排水中塩分濃度)÷駆動液塩分濃度
濃縮率=原排水流量÷濃縮水流量
【0032】
FO膜としては、特に限定されず、種々の半透膜を使用できるが、駆動液の塩が二次側から一次側へ一部流入する膜を使用することが好ましい。例えば、酢酸セルロース、ポリアミド、ポリスルホン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、塩化ビニルなどの様々な材料を使用することができる。FO膜の形状も特に限定されず、平膜、スパイラル膜、中空紙膜など任意の形状の膜を利用できる。
【0033】
正浸透膜装置3へ流入する分離液に対し、殺菌剤供給装置4から供給される殺菌剤としては、スライムコントロール剤が好適に用いられる。スライムコントロール剤としては、次亜塩素酸ナトリウムなどの塩素性スライムコントロール剤、過酸化水素などの酸化性スライムコントロール剤、或いは5−クロロ−メチル−イソチアゾリン3−オン(MIT)、ハロシアノアセトアミド化合物などの有機性スライムコントロール剤を使用することができる。
【0034】
次亜塩素酸ナトリウムなどの塩素系スライムコントロール剤は、有利残留塩素のその強い酸化力によって、FO膜材質を劣化させる場合があるが、アンモニアが存在する排水中ではこれと反応してクロラミンを生成する。このクロラミンは、有利残留塩素に比べて穏やかな酸化力を持つため、膜材質の酸化劣化を抑制しつつ、ファウリングを防ぐことができる。
【0035】
酸化剤の添加量は、多すぎると、後段の嫌気性処理槽6における濃縮水のメタン発酵処理に悪影響を及ぼす場合があり、少なすぎるとFO膜のファウリング抑制効果が有利に得られない。正浸透膜装置3へ供給される分離液中の殺菌剤の濃度が、例えば0.1〜100mg/Lとなるように殺菌剤を添加することが好ましく、より好ましくは0.5〜50mg/L程度である。
【0036】
なお、殺菌剤の添加量(濃度)は、正浸透膜装置3へ供給される液の成分変動などに応じて制御することが好ましい。例えば、正浸透膜の膜間差圧を計測する差圧計(図示せず)を正浸透膜装置3内へ配置し、膜間差圧の値、或いは差圧計の検出結果から計算される膜の透過流速の値が所定の値以下となった場合に、殺菌剤の添加量を増やすような信号を殺菌剤供給装置4へ送出するような制御装置(図示省略)を用いて、殺菌剤の添加量を連続的又は間欠的に制御することができる。これにより、排水の水質変動が生じた場合であっても、膜のファウリングをより長期間抑制することが可能になる。また、正浸透膜モジュールの入口圧と濃縮水圧力を測定し、その差圧(圧力損失)に応じて、殺菌剤の添加量を増やすような信号を殺菌剤供給装置4に送出するような制御機構を用いてもよい。
【0037】
殺菌剤供給装置4から供給される殺菌剤は、正浸透膜装置3内から濃縮水が排出される出口までは殺菌効果を保持し、正浸透膜装置3から排出された後はその殺菌効果が保持されていないことが、濃縮水から効率良くエネルギー回収する上では最も好ましい。一方で、正浸透膜のファウリング抑制の観点からは、正浸透膜装置3へ供給される液(分離液)に対しては殺菌剤を十分に添加させることが好ましいため、正浸透膜装置3から得られる濃縮水中には殺菌剤の成分が残存する。
【0038】
本実施形態に係る排水処理装置では、濃縮水貯蔵槽5において、殺菌剤の効果を失活させる程度に、正浸透膜装置3で得られる濃縮水を一定期間貯蔵することができる。例えば、濃縮水貯蔵槽5に貯蔵された濃縮水を大気中で静置するか、或いは濃縮水貯蔵槽5内に散気手段(図示せず)を設け、散気して濃縮水を撹拌することによって、殺菌剤を分解させ、その殺菌効果を失わせることが可能である。濃縮水中の殺菌剤の濃度にもよるが、例えば、濃縮水を0.2時間以上、より好ましくは1.0時間以上大気中で貯蔵することが好ましい。
【0039】
濃縮水貯蔵槽5には、排水(流入原水)又は固液分離槽1で分離された分離汚泥に含まれる有機物を供給可能な有機物供給ラインOL1、OL2が接続されていることが好ましい。
図1に示すように、有機物供給ラインOL2は、固液分離槽1で分離された分離汚泥を供給する供給ラインSL2に接続されており、供給ラインSL2から分離汚泥の一部を抜き取って濃縮水貯蔵槽5へ供給することが可能である。有機物供給ラインOL1は、流入原水である排水の一部を抜き取って濃縮水貯蔵槽5へ供給することが可能である。排水及び濃縮汚泥に含まれる有機物を濃縮水と混合することにより、濃縮水中の殺菌剤をより早期に分解することができる。
【0040】
例えば、濃縮水に分離汚泥及び排水の少なくともいずれかを混合させる場合、濃縮水に含まれる有効殺菌量の0.1〜10倍程度が最適である。有効殺菌量は、殺菌剤量(重量)を液中に含まれる有機物量(重量)で定義される。例えば、残留塩素が0.5mg/Lであれば、0.05〜5mg/Lの有機物量が必要である。このように、排水及び濃縮汚泥に含まれる有機物を混合することで、貯留時間を短縮することができ、例えば0.05時間以上、より典型的には0.5時間以上の貯留で済むようになり、濃縮水貯留槽5の容積を小さくすることができる。
【0041】
嫌気性処理槽6は、濃縮水と分離汚泥とを分解してメタンガスに変換する目的で設置される装置であれば特に限定されない。嫌気性処理槽6としては、例えば、分離汚泥及び濃縮水を嫌気性生物処理して、メタンガスや炭酸ガスなどの燃料ガスに分解する生物処理装置が利用可能である。
【0042】
嫌気性処理槽6の後段には、濃縮水及び分離汚泥を嫌気性消化槽でメタン発酵処理して得られた消化汚泥を乾燥或いは炭化して燃料汚泥にメタン発酵する乾燥機又は炭化装置等が更に配置されていてもよい。
【0043】
嫌気性処理槽6として嫌気性処理槽を設置して処理する場合は、至適pHを6.5〜7.5とし、30〜35℃を至適温度として中温メタン発酵処理又は50〜55℃を至適温度とした高温メタン発酵処理を行うことができる。嫌気性菌を維持するためには、温度管理とpH管理が極めて重要である。嫌気性処理槽6による嫌気性消化で得られた流出液と処理汚泥は、固液分離槽7において固液分離され、上澄液は処理水として放流することができる。
【0044】
第1の実施の形態に係る排水処理方法は、
図1に示す排水処理装置を用いて実施することができる。まず、固液分離槽1において、原水である排水中の沈殿性有機物を固液分離し、分離汚泥と分離液とを得る。次に、固液分離槽1で得られた分離液を、半透膜を備える正浸透膜装置3に供給し、半透膜を介して分離液を分離液よりも高浸透圧の駆動液と接触させることにより、濃縮水と処理水とを得る。その際、正浸透膜装置3へ流入する前の分離液には、殺菌剤を供給する。正浸透膜装置3で得られた濃縮水は、濃縮水貯蔵槽5において一定期間貯蔵し、濃縮中に残存する殺菌剤を分解させる。その後、濃縮水貯蔵槽5に貯蔵された濃縮水を、固液分離槽1で分離された分離汚泥と共に嫌気性処理槽6へ供給し、嫌気性処理槽6において、濃縮水及び分離汚泥を分解してメタンガスに変換する。
【0045】
第1の実施の形態に係る排水処理装置及び排水処理方法によれば、正浸透膜装置3へ流入する前の分離液に殺菌剤が供給されるため、正浸透膜装置3に設置される半透膜のファウリングを長期間抑制することができる。一方で、正浸透膜装置3の濃縮水には、生物活性を低下させる殺菌剤が添加されているため、濃縮水を直接、嫌気性処理槽6においてメタン発酵させると、メタン発酵菌がダメージを受けてメタンガスの回収量が低下する場合がある。
【0046】
第1の実施の形態に係る排水処理方法及び装置によれば、殺菌剤が添加された濃縮水を濃縮水貯蔵槽5で一定期間貯蔵するため、濃縮水貯蔵槽5で濃縮水中の殺菌剤を分解した後に、嫌気性処理槽6に濃縮水を供給することができる。これにより、嫌気性処理槽6で使用される嫌気性細菌の死滅を抑制し、エネルギーとして回収するメタンガスの発生効率を向上させることができる。或いは、固液分離された分離汚泥又は排水の一部を、有機物供給ラインOL1、OL2を介して濃縮水貯蔵槽5へ供給して濃縮水と混合することで、濃縮水中の殺菌剤の分解効果を早めることができる。
【0047】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態に係る排水処理装置は、
図2に示すように、殺菌剤供給装置4の前段に、第2の固液分離装置2が配置される点が、
図1に示す排水処理装置と異なる。なお、第2の固液分離装置は、凝集沈殿装置、凝集砂ろ過装置、凝集膜ろ過装置、凝集沈殿装置と砂ろ過或いは膜ろ過装置のいずれかを採用することができる。
【0048】
即ち、第2の実施の形態に係る排水処理装置は、排水中の沈殿性有機物を固液分離し、分離汚泥と分離液とを得る第1の固液分離装置(固液分離槽)1と、半透膜を備え、半透膜を介して分離液を分離液よりも高浸透圧の駆動液と接触させることにより濃縮水と処理水とを得る正浸透膜装置3と、正浸透膜装置3へ流入する前の分離液に凝集剤を加えて固液分離する第2の固液分離装置2と、濃縮水と分離汚泥とを分解してメタンガスに変換する嫌気性処理槽6とを備える。
図2に示す排水処理装置では殺菌剤供給装置4は配置してもしなくても良い。第2の固液分離装置2以外の構成は、
図1に示す構成と実質的に同様であるので、説明を省略する。
【0049】
固液分離槽1の分離液には、固液分離槽1で除去されない微細な有機性固形物及び溶解性有機物が残存しているため、第2の固液分離装置2において、分離液に凝集剤を加えて有機物を凝集沈殿させる。これにより、正浸透膜装置3へ流入する分離液中の有機物濃度を低減できるため、正浸透膜装置3において有機物を基質とする微生物の増殖を抑制し、膜のファウリングを長期間抑制することができる。
【0050】
第2の固液分離装置2は、固液分離槽1からの分離液に凝集剤を添加する第1の反応槽21と、第1の反応槽21から流出する分離液に凝集助剤を添加する第2の反応槽22と、第2の反応槽22から流出する分離液を固液分離する凝集沈殿槽23とを備えることができる。
図2の例では、2つの反応槽21、22を備える例を示しているが、反応槽21、22の個数は特に限定されず、例えば単一の反応槽としてもよいことは勿論である。
【0051】
本実施形態で使用される凝集剤には、凝結剤を用いることができる。凝結剤としては、一般に使用されている有機凝結剤を使用するのが好ましい。有機凝結剤は、従来の無機凝集剤と比較して主成分が有機物であり、嫌気性消化によって分解可能である。有機凝結材としては、例えば、縮合系ポリアミン、ジシアンジアミド・ホルマリン縮合物、ポリエチレンイミン、ポリビニルイミダリン、ポリビニルピリジン、ジアリルアミン塩・二酸化硫黄共重合体、ポリジメチルジアリルアンモニウム塩、ポリジメチルジアリルアンモニウム塩・二酸化硫黄共重合体、ポリジメチルジアリルアンモニウム塩・アクリルアミド共重合体、ポリジメチルジアリルアンモニウム塩・ジアリルアミン塩酸塩誘導体共重合体、アリルアミン塩重合体などが挙げられる。
【0052】
縮合系ポリアミンの具体例としては、アルキレンジクロライドとアルキレンポリアミンとの縮合物、アニリンとホルマリンの縮合物、アルキレンジアミンとエピクロルヒドリンとの縮合物、アンモニアとエピクロルヒドリンとの縮合物などが挙げられる。エピクロルヒドリンと縮合するアルキレンジアミンとしては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、メチルプロピルアミン、メチルブチルアミン、ジブチルアミンなどが挙げられる。凝結剤は、分子量の比較的小さな高分子で、被処理水中のコロイド粒子や、SSを小さなフロックにすることができる。これら凝結剤の注入量は、原水の水質にもよるが、1〜1000mg/Lの範囲である。
【0053】
有機凝結剤の代わりに無機凝集剤を単独で使用してもよい。よりフロックを強固にして固液分離性を高めるために、有機凝結材と無機凝結材とを併用することもできる。一般に、無機凝集剤としては、既に使用されている鉄系又はアルミニウム系無機凝集剤が使用できる。具体的には、硫酸バンド、ポリ塩化アルミニウム(PAC)、塩化アルミニウム、ポリ硫酸第二鉄(ポリ鉄)、塩化第二鉄及びこれらの混合物が挙げられる。これら無機凝集剤の注入量は、原水の水質にもよるが、1〜1000mg/Lの範囲である。
【0054】
凝集助剤としては、高分子凝集剤として、通常、ポリ(メタ)アクリルアミド、その加水分解物、ポリ(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミドとアルキルアミノ(メタ)アクリルアミド共重合体等のノニオン性、アニオン性、カチオン性又は両性高分子凝集剤を使用することができる。高分子凝集剤の添加量は、通常、排水量に対して0.5〜5mg/L程度がよい。凝集沈殿槽23の固液分離方法としては、沈殿、加圧浮上、膜など任意の固液分離方法を利用することができる。凝集沈殿槽23で得られる凝集汚泥は、供給ラインSL3を介して嫌気性処理槽6へ送られる。
【0055】
最初沈殿池などの固液分離槽1において自然に沈降する固形分に比べ、分離液中に浮遊しているSSに含まれる微生物は高い生物活性を有する。この高い活性は、溶液の酸化還元電位を効果的に上げて溶液を還元的な雰囲気にするため、正浸透膜装置3に供給された場合に、早期にファウリングを発生させことがある。
【0056】
第2の実施の形態に係る排水処理装置によれば、第2の固液分離装置2を配置することにより、固液分離槽1で分離された分離液中の有機物を更に凝集沈殿させて、正浸透膜装置3へ供給される微生物量を低減させることができる。殺菌剤供給装置4を更に併用することにより、正浸透膜装置3内の半透膜のファウリングを更に長期間抑制することができる。なお、第2の固液分離装置2に膜ろ過を用いる場合には、第2の固液分離装置2の前段或いは、第2の固液分離装置2に酸化剤を添加し、膜ファウリングを抑制するとよい。
【0057】
更に、凝集沈殿槽23で得られた凝集汚泥の一部を、供給ラインSL3と濃縮水貯蔵槽5との間を接続する有機物供給ラインOL3を介して供給することにより、殺菌剤供給装置4から殺菌剤が供給された場合に、濃縮水中に残存する殺菌剤の分解を早めることができるため、殺菌剤により嫌気性処理槽6内の嫌気性細菌を死滅させることなく、安定的にエネルギー回収を行うことができる。更に、排水由来の分離汚泥及び凝集汚泥を嫌気性処理槽6でメタン発酵することにより、排水中の有機物から効率良くエネルギー回収をすることができる。
【0058】
なお、第2の実施の形態に係る排水処理方法は、
図2に示す排水処理装置を用いて実施することができる。まず、固液分離槽1において、原水である排水中の沈殿性有機物を固液分離し、分離汚泥と分離液とを得る。次に、固液分離槽1で得られた分離液を、第2の固液分離装置2において、凝集剤を加えて固液分離する。更に、凝集剤を加えて固液分離した後の分離液に必要に応じて殺菌剤を供給し、半透膜を備える正浸透膜装置3に供給する。正浸透膜装置3では、半透膜を介して分離液を分離液よりも高浸透圧の駆動液と接触させることにより、濃縮水と処理水とを得る。その後の処理工程は第1の実施の形態に係る排水処理方法と実質的に同様とすることができるので、記載を省略する。
【0059】
(第3の実施の形態)
第3の実施の形態に係る排水処理装置は、
図3に示すように、嫌気性処理槽6が、嫌気性消化槽61と、嫌気性排水処理槽62を備える点が、
図2に示す排水処理装置と異なる。他は、
図2に示す排水処理装置と実質的に同様であるので、記載を省略する。
【0060】
固液分離槽1又は第2の固液分離装置2で得られる余剰汚泥及び凝集汚泥と、正浸透膜装置3で得られる濃縮水は、水分濃度や有機物濃度がそれぞれ異なるため、嫌気性処理槽6における反応槽での最適滞留時間が異なる。そのため、
図3に示すように、固液分離槽1及び第2の固液分離装置2で生じる余剰汚泥及び凝集汚泥については嫌気性消化槽61で処理し(
図1及び
図2の嫌気性処理槽6に該当)、濃縮水については嫌気性排水処理槽62で処理するように、それぞれ個別に処理することが効率面からは好ましい。
【0061】
余剰汚泥及び凝集汚泥に対しては嫌気性消化を行うことができる。嫌気性消化槽内では、約55℃、或いは約25℃を保つように加温される。嫌気性消化槽内では、酸発酵菌、メタン発酵菌の働きにより、汚泥がメタンガス、二酸化炭素、硫化水素等のガス、水溶性の窒素、リンなどに分解される。発生したメタンガスは回収することで、エネルギー利用可能である。固液分離槽1から得られる余剰汚泥は易分解性でメタン発酵しやすいため、メタンガスの発生量を増加させることができる。汚泥の滞留時間は10〜40日程度であり、汚泥の分解性能に応じて任意の時間をとることができる。
【0062】
濃縮水に対しての嫌気性排水処理槽62には、生物処理装置を用いることができる。生物処理装置としては、嫌気性固定床法、嫌気性流動床法、上向流汚泥床法(UASB法、EGSB法)などの高負荷嫌気性処理方法を採用した装置があるが、いずれの装置であってもよい。嫌気性排水処理槽62は、酸発酵とメタン発酵を一槽で行う一相式であってもよいし、酸発酵とメタン発酵を別々の反応槽で行う二相式であってもよい。嫌気性菌を維持するためには、温度管理とpH管理が極めて重要である。例えば、嫌気性排水処理槽62内やメタン発酵の原水(濃縮水及び濃縮汚泥)、処理水等の温度、pHを検出して、その値をフィードバック又はフィードフォワードして各制御を行いながら運転することが好ましい。嫌気性処理排水処理槽62へ流入する流入水の滞留時間は、有機物濃度によって異なるが、有機物濃度が高い場合には、処理水等を循環して濃度を低下させてから処理することが好ましく、一般的に処理時間は0.1〜10時間程度である。
【0063】
嫌気性消化槽61で得られた処理物は固液分離槽8で固液分離され、処理水が外部へ放流される。嫌気性排水処理槽62で得られた処理物は固液分離槽7で固液分離され、処理水が外部へ放流される。
【0064】
第3の実施の形態に係る排水処理装置によれば、汚泥と濃縮水に対して別々の装置を用いて嫌気性消化を行うことができるため、最適滞留時間でより効率良くメタン発酵処理を進めることができる。
【実施例】
【0065】
以下に本発明の実施例を比較例と共に示すが、これらの実施例は本発明及びその利点をよりよく理解するために提供するものであり、発明が限定されることを意図するものではない。
【0066】
(実施例1)
図1に示す排水処理装置で検証試験を実施した。排水として下水を使用した。下水の性状は、BOD150mg/L、溶解性BOD80mg/L、SS100mg/Lであった。まず、下水を最初沈澱池に導入し、沈降しやすい固形物と上澄み液に分離した。上澄み液は反応槽(図示せず)に導入し、スライムコントロール剤(エバスパースMB605(水ing製))を1mg/L添加した後、FO膜装置に導入し、塩類濃度3.5%の海水とFO膜を介して10倍濃縮した。FO膜は酢酸セルロース膜を使用した。FO膜装置から得られた濃縮水は、最初沈殿池の余剰汚泥と混合し、貯蔵槽で0.5時間貯蔵した。貯蔵後の濃縮水を嫌気性排水処理装置に導入した。
【0067】
嫌気性排水処理装置では、嫌気性消化槽(嫌気性処理槽)のpHを7とし、消化槽の温度を35℃に加温し、処理日数(HRT)30日で処理したところ、汚泥及び濃縮水の分解率は50%で、10.5L/日のメタンガスを回収することができた。また、実施例1では、FO膜の洗浄頻度は1.5週間に一度程度の実施で、膜のファウリングも見られず、安定的に運転できた。
【0068】
(実施例2)
図2に示す排水処理装置で検証試験を実施した。排水として実施例1と同様に下水を使用した。下水の性状は、BOD150mg/L、溶解性BOD80mg/L、SS100mg/Lであった。まず、下水を最初沈澱池に導入し、沈降しやすい固形物と上澄み液に分離した。上澄み液を反応槽に導入し、有機凝結剤(エバグロースL−90)50mg/Lを添加した後、凝集助剤としてエバグロースA−151(水ing製)を2mg/Lとなるように添加した。凝集沈殿槽では、処理水と凝集汚泥に分離した。凝集沈殿槽処理水のBODは10mg/Lであった。上澄み液は反応槽(図示せず)に導入し、スライムコントロール剤(エバスパースMB605(水ing製))を1mg/L添加した後、FO膜装置に導入し、塩類濃度3.5%の海水とFO膜を介して10倍濃縮した。FO膜は酢酸セルロース膜を使用した。FO膜装置から得られた濃縮水は、最初沈殿池からの余剰汚泥と凝集沈殿槽からの凝集汚泥と混合し、貯蔵槽で0.1時間貯蔵した。貯蔵後の濃縮水を嫌気性排水処理装置に導入した。
【0069】
嫌気性排水処理装置では、嫌気性消化槽(嫌気性処理槽)のpHを7とし、消化槽の温度を35℃に加温し、処理日数(HRT)30日で処理したところ、汚泥及び濃縮水の分解率は50%で、12L/日のメタンガスを回収することができた。また、実施例2では、FO膜の洗浄頻度は2週間に一度で十分であった。
【0070】
(実施例3)
図3に示す排水処理装置で検証試験を実施した。排水として実施例1及び実施例2と同様に下水を使用した。下水の性状は、BOD150mg/L、溶解性BOD80mg/L、SS100mg/Lであった。まず、下水を最初沈澱池に導入し、沈降しやすい固形物と上澄み液に分離した。上澄み液を反応槽に導入し、ポリ塩化アルミニウム100mg/Lを添加した後、凝集助剤としてエバグロースA−151(水ing製)を2mg/Lとなるように添加した。凝集沈殿槽では、処理水と凝集汚泥に分離した。凝集沈殿槽処理水のBODは10mg/Lであった。上澄み液は反応槽(図示せず)に導入し、スライムコントロール剤(エバスパースMB605(水ing製))を1mg/L添加した後、FO膜装置に導入し、海水とFO膜を介して10倍濃縮した。FO膜は酢酸セルロースを使用した。FO膜装置から得られた濃縮水は、最初沈殿池からの余剰汚泥の一部と凝集沈殿槽からの凝集汚泥の一部と混合し、貯蔵槽で0.1時間貯蔵した。貯蔵後の濃縮水と、余剰汚泥及び凝集汚泥とを別々に嫌気性排水処理装置に導入した。
【0071】
嫌気性排水処理装置では、濃縮水は上向流汚泥床式のEGSBのメタン発酵装置を用い、液の滞留時間は10時間とした。余剰汚泥及び凝集汚泥は、嫌気性消化槽(嫌気性処理槽)のpHを7とし、消化槽の温度を35℃に加温し、処理日数(HRT)30日で処理した濃縮水の分解率は90%で、5L/日のメタンガスを回収することができた。汚泥の分解率は50%で、7L/日のメタンガスを回収することができた。実施例3では、FO膜の洗浄頻度は1.5週間に一度で十分あった。
【0072】
(比較例)
図1に示す排水処理装置において、殺菌剤供給装置4による分離液への殺菌剤の供給を行わない以外は、実施例1と同様の条件で検証試験を実施した。汚泥及び濃縮水の分解率は50%で、10.0L/日のメタンガスを回収することができたが、実施例1と比べると、FO膜にかかるBOD負荷が高く、洗浄回数が2日に一度となり明らかに多くなった。