(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1駆動輪の動力伝達経路の途中に設けられ、ロック状態で、前記第1駆動輪の一方向の回転をロックし、且つ、前記第1駆動輪の逆方向の回転によりロック状態が解除される第1パーキングロック機構と、
電力により駆動されて前記第1パーキングロック機構をロック状態と解除状態とに切り替える第1駆動部と、
第2駆動輪の動力伝達経路の途中に設けられ、ロック状態で、前記第2駆動輪の一方向の回転をロックし、且つ、前記第2駆動輪の逆方向の回転によりロック状態が解除される第2パーキングロック機構と、
電力により駆動されて前記第2パーキングロック機構をロック状態と解除状態とに切り替える第2駆動部と、
を備え、
前記第1パーキングロック機構によりロックされる前記第1駆動輪の回転方向と、前記第2パーキングロック機構によりロックされる前記第2駆動輪の回転方向とが逆方向であることを特徴とするパーキングロック装置。
前記第1パーキングロック機構は、前記第1駆動輪の動力伝達経路の途中に連結される第1ロックギアと、前記第1駆動部によって前記第1ロックギアの噛合い位置と非噛合い位置との間で変位可能な第1ロック爪とを有し、
前記第1駆動部は、作動部が直接又は間接的に前記第1ロック爪と接続され、前記第1ロック爪に所定値以上の力が加わったときに電力無しで作動部が変位可能なアクチュエータ又はモータであり、
前記第2パーキングロック機構は、前記第2駆動輪の動力伝達経路の途中に連結される第2ロックギアと、前記第2駆動部によって前記第2ロックギアの噛合い位置と非噛合い位置との間で変位可能な第2ロック爪とを有し、
前記第2駆動部は、作動部が直接又は間接的に前記第2ロック爪と接続され、前記第2ロック爪に所定値以上の力が加わったときに電力無しで作動部が変位可能なアクチュエータ又はモータであることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のパーキングロック装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電動パーキングロック装置を採用した車両では、電動の駆動部の異常、駆動部の電源線又は制御線などのハーネスの異常、又は、バッテリ上がりなどが生じた場合に、ロックと解除とを切り替える駆動部が動作不能となる。ロック中に駆動部が動作不能になると、ロックを解除することができず、車両を動かせなくなるという課題がある。
【0006】
本発明は、電動で車両をロックするパーキングロック装置において、その駆動部が動作不能となった場合でも、車両のロックを解除できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、パーキングロック装置であって、
第1駆動輪の動力伝達経路の途中に設けられ、ロック状態で、前記第1駆動輪の一方向の回転をロックし、且つ、前記第1駆動輪の逆方向の回転によりロック状態が解除される第1パーキングロック機構と、
電力により駆動されて前記第1パーキングロック機構をロック状態と解除状態とに切り替える第1駆動部と、
第2駆動輪の動力伝達経路の途中に設けられ、ロック状態で、前記第2駆動輪の一方向の回転をロックし、且つ、前記第2駆動輪の逆方向の回転によりロック状態が解除される第2パーキングロック機構と、
電力により駆動されて前記第2パーキングロック機構をロック状態と解除状態とに切り替える第2駆動部と、
を備え、
前記第1パーキングロック機構によりロックされる前記第1駆動輪の回転方向と、前記第2パーキングロック機構によりロックされる前記第2駆動輪の回転方向とが逆方向であることを特徴としている。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のパーキングロック装置であって、
前記第1駆動輪と前記第2駆動輪とが別々の動力源により別々に駆動可能であることを特徴としている。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載のパーキングロック装置であって、
前記第1パーキングロック機構は、前記第1駆動輪の動力伝達経路の途中に連結される第1ロックギアと、前記第1駆動部によって前記第1ロックギアの噛合い位置と非噛合い位置との間で変位可能な第1ロック爪とを有し、
前記第1駆動部は、作動部が直接又は間接的に前記第1ロック爪と接続され、前記第1ロック爪に所定値以上の力が加わったときに電力無しで作動部が変位可能なアクチュエータ又はモータであり、
前記第2パーキングロック機構は、前記第2駆動輪の動力伝達経路の途中に連結される第2ロックギアと、前記第2駆動部によって前記第2ロックギアの噛合い位置と非噛合い位置との間で変位可能な第2ロック爪とを有し、
前記第2駆動部は、作動部が直接又は間接的に前記第2ロック爪と接続され、前記第2ロック爪に所定値以上の力が加わったときに電力無しで作動部が変位可能なアクチュエータ又はモータであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、電動で車両をロックするパーキングロック装置において、その駆動部が動作不能となった場合に、駆動輪に所定の回転方向のトルクを加えることで、ロック状態を解除することができる。また、ロック状態で、第1および第2のパーキングロック機構は、第1駆動輪と第2駆動輪とを互いに逆の回転方向にロックするので、例えば車両が坂道に停車していても車両が動かないようにロックできる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態の車両の要部を示す構成図である。
【0013】
本実施形態の車両1は、第1駆動輪としての複数の前輪2と、第2駆動輪としての複数の後輪3とを有する電気自動車(EV)である。車両1は、前輪モータ11、後輪モータ12、駆動回路11a、12a、伝達機構13、14、フロントのパーキングロック15、リアのパーキングロック16、高電圧バッテリ17、補機バッテリ18、シフト操作部19、および、ECU(Electronic Control Unit)20を備える。本実施形態のパーキングロック装置は、上記の構成要素のうち、フロントのパーキングロック15とリアのパーキングロック16とを合わせた構成である。また、上記の構成要素のうち、前輪モータ11と後輪モータ12とは、本発明に係る動力源の一例に相当する。
【0014】
前輪モータ11と後輪モータ12とは、走行用の動力を発生する。前輪モータ11と後輪モータ12とは、前輪2の動力と後輪3の動力とをそれぞれ独立して発生する。
【0015】
駆動回路11a、12aは、ECU20の指令に基づいて、高電圧バッテリ17の電力を変換して前輪モータ11と後輪モータ12とにそれぞれ出力する。これらによって、前輪モータ11と後輪モータ12とがそれぞれ駆動する。
【0016】
フロントの伝達機構13は、前輪モータ11の動力を2つの前輪2に伝達する。伝達機構13には、トルクコンバータ、トランスミッション、およびフロント・デファレンシャルギアなどが含まれていてもよい。
【0017】
リアの伝達機構14は、後輪モータ12の動力を2つの後輪3に伝達する。伝達機構14には、トルクコンバータ、トランスミッション、およびリア・デファレンシャルギアなどが含まれていてもよい。
【0018】
フロントのパーキングロック15は、パーキングロック機構15Aと、アクチュエータ15Bとを有する。パーキングロック機構15Aは、フロントの伝達機構13の動力伝達経路の一部に設けられている。アクチュエータ15Bは、電気的にパーキングロック機構15Aを動かす。パーキングロック15の詳細は後述する。
【0019】
リアのパーキングロック16は、パーキングロック機構16Aと、アクチュエータ16Bとを有する。パーキングロック機構16Aは、リアの伝達機構14の動力伝達経路の一部に設けられている。アクチュエータ16Bは、電気的にパーキングロック機構16Aを動かす。パーキングロック16の詳細は後述する。
【0020】
高電圧バッテリ17は、走行用の電力を蓄積し、駆動回路11a、12aに電力を供給する。
【0021】
補機バッテリ18は、アクチュエータ15B、16BおよびECU20など15V以下の電源電圧で動作する低電圧系の回路および電気機器に電力を供給する。
【0022】
シフト操作部19は、乗員のシフト操作を受ける機器であり、パーキングロック15、16をロック状態にするパーキングレンジ「P」の選択操作が可能である。
【0023】
ECU20は、走行時と停車時との車両1の制御を行う。ECU20は、駆動回路11a、12aに前輪モータ11と後輪モータ12とのトルク指令を個別に出力する。トルク指令が出力されると、駆動回路11a、12aは指令に応じた駆動電流を前輪モータ11と後輪モータ12とに流して、各々に指令に応じたトルクを発生させる。また、ECU20は、シフト操作部19の操作に応じて、パーキングロック15、16のアクチュエータ15B、16Bを駆動してロック状態の切り替えを行う。
【0024】
<パーキングロックの構成>
図2は、本発明の実施形態のパーキングロックを示す構成図である。
図3は、ロック状態のパーキングロックが外力により解除される過程を示す説明図であり、(A)−(C)は第1過程から第3過程をそれぞれ示す。
【0025】
フロントのパーキングロック15は、パーキングロック機構15Aと、アクチュエータ15Bとを備える。パーキングロック機構15Aは、ロックギア101と、アーム102とを有する。アーム102には、ロック爪103が設けられている。パーキングロック機構15A、アクチュエータ15B、ロックギア101、ロック爪103は、それぞれ本発明に係る第1パーキングロック機構、第1駆動部、第1ロックギア、第1ロック爪の一例に相当する。
【0026】
ロックギア101は、伝達機構13の動力伝達経路の一部に連結され、動力が伝達される際に回転軸f1を中心に回転する。ロックギア101がロックされると動力伝達経路の運動がロックされて前輪2の回転がロックされる。
【0027】
アーム102は、アクチュエータ15Bの駆動により、回転軸f2を中心に退避位置p1とロック位置p2との間を回動する。ロック位置p2において、ロック爪103はロックギア101の噛合い位置に配置されて、ロックギア101をロック状態にする。退避位置p1において、アーム102はストッパh1により位置決めされて、ロック爪103はロックギア101から離間した非噛合い位置に維持される。これによりロックギア101はロック解除状態となる。
【0028】
ロックギア101の歯は、順方向X1を向いた側において急峻に立ち上がる急峻部bを有し、逆方向X2を向いた側において緩く立ち上がる傾斜部aを有する。このような形状により、
図3(A)−(C)に示すように、ロック状態で、ロックギア101が逆方向X2に回転すると、ロックギア101の歯がロック爪103を非噛合い位置まで押し戻し、アーム102を解除位置p3まで移動させることができる。なお、ロックギア101の逆方向X2の回転によりロック爪103を押し戻す構成は、上記の具体例に限られない。例えば、緩い傾斜部は、ロックギア101の歯の替りに、ロック爪103に設けても同様の作用を得ることができる。
【0029】
アクチュエータ15Bは、電力により作動部を回転させて、アーム102を退避位置p1からロック位置p2へ、或いは、ロック位置p2から退避位置p1へ回動させる。アクチュエータ15Bは、ECU20を介して補機バッテリ18の電力を入力し、ECU20の指令に応じて動作する。アクチュエータ15Bに電力が供給されていない停止状態において、作動部は容易に動かないように所定の力で固定される。一方、作動部に所定値以上の外力(トルク)が加わると、アクチュエータ15Bに電力の供給がなくても、作動部は回転する。
【0030】
リアのパーキングロック16は、フロントのパーキングロック15とほぼ同様の構成を有する。リアのパーキングロック機構16Aは、
図2に示したものと同様に、ロックギア101と、ロック爪103を含んだアーム102とを有する。リアのパーキングロック機構16A、アクチュエータ16B、ロックギア101、ロック爪103は、それぞれ本発明に係る第2パーキングロック機構、第2駆動部、第2ロックギア、第2ロック爪の一例に相当する。
【0031】
リアのパーキングロック16において、ロックギア101は、リアの伝達機構14の動力伝達経路の途中に連結されている。リアのロックギア101の順方向X1(ロックされる方向)の回転に対応する後輪3の回転方向は、フロントのロックギア101の順方向X1(ロックされる方向)の回転に対応する前輪2の回転方向と逆向きになるように設定されている。
【0032】
<パーキングロックの動作>
図4は、パーキングロックがロックされたときの車両の状態を説明する図であり、(A)は傾斜無しの停車時、(B)は上り傾斜での停車時、(C)は下り傾斜での停車時を示す。
【0033】
上記構成のパーキングロック15、16によれば、運転終了時など、シフト操作部19においてパーキングロックの操作がなされると、アクチュエータ15B、16Bが駆動してフロントおよびリアのアーム102がロック位置p2へ移動する。これにより、フロントおよびリアのロックギア101は順方向X1の回転がロックされ、これらの回転方向に対応する前輪2と後輪3の回転がロックされる。ロック状態になると、アクチュエータ15B、16Bへの電力の供給が停止されるが、アクチュエータ15B、16Bの作動部は所定の力で固定され、フロントおよびリアのアーム102はロック位置p2に維持される。
【0034】
ロック状態においては、
図4(A)−(C)に示すように、前輪2は前進方向Y1の回転がロックされ、後輪3は後退方向Y2の回転がロックされる。従って、車両1が停車時に前後方向から押されるようなことがあっても、前輪2と後輪3との何れかのロックによって車両1は動かない。また、
図4(B)、(C)に示すように、坂道に停車していても、前輪2と後輪3との何れかのロックによって車両1は動かない。
【0035】
運転開始時など、シフト操作部19においてロック解除の操作がなされると、アクチュエータ15B、16Bが駆動してフロントおよびリアのアーム102が退避位置p1へ移動する。これにより前輪2と後輪3とはロック解除状態になる。ロック解除状態になると、アクチュエータ15B、16Bへの電力の供給が停止されるが、アクチュエータ15B、16Bの作動部は所定の力で固定され、フロントおよびリアのアーム102は退避位置p1に維持される。
【0036】
<パーキングロックの異常回避動作1>
ロック状態において、フロントのパーキングロック15に異常が発生し、フロントのアクチュエータ15Bの動作が不能となったとする。このような場合、シフト操作部19においてロック解除の操作がなされても、リアのパーキングロック16と後輪3とはロック解除状態になるが、フロントのパーキングロック15と前輪2とはロック状態が維持される。このような場合、例えばECU20がセンサ等を介してパーキングロック15の異常を検出し、表示パネルのインジケータランプにフロントのパーキングロック15の解除不能の表示を行うように構成してもよい。これにより、車両1の乗員はフロントのパーキングロック15が解除されていないことを認識できる。
【0037】
このような場合、車両1の乗員は、運転操作を行って、前輪モータ11又は後輪モータ12に後退方向の所定値以上のトルクを発生させる。このようなトルクの発生は異常の検出に基づきECU20が自発的に行ってもよい。このトルクによって、車両1は少し後退する。すると、
図3(A)のように、前輪モータ11又は前輪2の運動がロックギア101に伝達され、ロックギア101がロックされていない逆方向X2に回転し、アーム102を退避位置p1の方へ押す。そして、
図3(B)のように、ロックギア101の歯の先端がロック爪103の先端と対向する非噛合い位置まで押される。このときのアーム102の位置を解除位置p3と記す。そして、この位置でアクチュエータ15Bの作動部は所定以上の力が加わらないと動かないように保持され、アーム102が解除位置p3で維持される。このようなアクチュエータ15Bとしては、例えば無通電時保持型のソレノイドアクチュエータを適用できる。このようなソレノイドアクチュエータであれば、保持力以上の力が加わることでアーム102が解除位置p3へ移動し、その後は、保持力によってアーム102の位置を保持できる。
【0038】
図3(C)に示すように、アーム102が解除位置p3で維持されると、ロックギア101とロック爪103との噛合いが解除され、ロックギア101は順方向X1と逆方向X2との両方に回転可能になる。これにより、前輪2はロック解除状態となり、車両1を走行することが可能となる。乗員は、例えばパーキングロック15の異常を修理する整備場まで、走行により車両1を移動することができる。
【0039】
なお、上記の例では、フロントのパーキングロック15が異常となった場合を示したが、リアのパーキングロック16が異常となった場合にも、同様にロックを解除することができる。この場合、リアのパーキングロック16の異常に対応してトルクを発生させる回転方向を逆転させればよい。
【0040】
<パーキングロックの異常回避動作2>
次に、ロック状態において、フロントのパーキングロック15とリアのパーキングロック16の両方のアクチュエータ15B、16Bが動作不能になった場合のロック解除方法を説明する。
【0041】
アクチュエータ15B、16Bが動作不能になると、シフト操作部19のロック解除の操作がなされても、パーキングロック15、16のロック状態は解除されない。このような場合、例えばECU20がセンサ等を介してパーキングロック15、16の異常を検出し、表示パネルのインジケータランプにフロントおよびリアのパーキングロック15、16のロック解除不能の表示を行うように構成してもよい。これにより、車両1の乗員はフロントとリアとの両方のパーキングロック15、16がロック解除されていないことを認識できる。
【0042】
車両1の乗員は、両方のパーキングロック15、16が動作不能でロック解除がなされていないと認識すると、先ず、ジャッキ等を用いて前輪2を浮かし、運転操作により前輪モータ11に車両1を後退させる方向のトルクを発生させる。また、フロントのパーキングロック15の解除用に、ECU20が、後輪モータ12を停止させ、前輪モータ11のみ後退方向のトルクを発生させる制御を行ってもよい。このようなトルクにより、
図3(A)−(C)に示したように、外力によってパーキングロック15のロックが解除されて、アーム102が解除位置p3で維持される。
【0043】
なお、前輪2を浮かした状態でフロントのパーキングロック15を解除する方法としては、前輪モータ11を駆動する方法に限られず、前輪2を手動で後退方向に回転する方法を用いてもよい。このような操作によっても、上述と同様に、ロックギア101を回転させてロックを解除することができる。手動でパーキングロック15を解除できるので、高電圧バッテリ17の電気が枯渇している場合でも、パーキングロック15を解除して、例えば他の車両によって車両1を牽引可能な状態にすることができる。
【0044】
フロントのパーキングロック15のロックが解除できたら、上述のパーキングロックの異常回避動作1にて示した方法で、リアのパーキングロック16のロックを解除できる。これにより、乗員は、例えばパーキングロック15、16を修理する整備場まで、車両1を走行により移動することができる。
【0045】
なお、上述の例では、フロントのパーキングロック15から解除する方法を示したが、同様の手順でリアのパーキングロック16から解除してもよい。
【0046】
以上のように、本実施形態のパーキングロック装置によれば、電気的な制御によって車両1が動かないようロックすることができる。さらに、車両1のロック中にパーキングロック装置のアクチュエータ15B、16Bが動作不能になった場合でも、前輪2又は後輪3に所定方向のトルクを加える操作を行うことでロックを解除することができる。従って、車両1が全く動かなくなることを回避して、例えば整備場まで走行することが可能となる。
【0047】
また、本実施形態のパーキングロック装置によれば、前輪モータ11と後輪モータ12とから前輪2と後輪3とにそれぞれ独立してトルクを加えることができる。従って、フロントとリアとのパーキングロック15、16の両方でアクチュエータ15B、16Bが動作不能となった場合でも、前輪2と後輪3との何れか一方を浮かして、前輪モータ11又は後輪モータ12の駆動によりロックを解除することができる。
【0048】
また、本実施形態のパーキングロック装置によれば、アクチュエータ15B、16Bは所定値以上の力を加えて作動部を動かすことができるので、ロックギア101に逆方向のトルクを加えることで、アーム102を動かしてロックを解除することができる。また、ロックを解除した際に、アーム102を解除位置p3に維持することができる。
【0049】
(第1変形例)
図5は、第1変形例のパーキングロック装置が外力により解除される過程を示す説明図であり、(A)−(C)は第1過程から第3過程をそれぞれ示す。
【0050】
第1変形例のパーキングロック装置は、パーキングロック機構15Aaとアクチュエータ15Baの構成が異なり、他の部分は、上述した実施の形態のものと同様である。従って、異なる構成についてのみ詳細に説明し、同様の部分は同一符号を付して説明を省略する。
【0051】
第1変形例のパーキングロック機構15Aaは、ロックギア101と、アーム102aと、可動ストッパ104と、付勢部材105とを有する。アーム102aには、ロックギア101の歯と噛合うロック爪103が設けられている。
【0052】
アクチュエータ15Baは、例えばソレノイド型のアクチュエータであり、電力によって作動部106を動作させる。アクチュエータ15Baは、支点f3の部分で支持され、作動部106の先端部がアーム102aと連結されている。
【0053】
可動ストッパ104は、アーム102aの先端部g1に当接するように、付勢力が加えられた状態で変位可能に支持される。付勢力は、付勢部材105によってアーム102aに向かう方向に加えられている。
【0054】
このような構成によれば、アクチュエータ15Baが、作動部106を押し出すように駆動したり、引き戻すように駆動したりすることで、ロック爪103をロックギア101の噛合い位置と非噛合い位置とに変位させることができる。これにより、パーキングロック機構15Aaをロック状態と解除状態とに切り替えられる。
【0055】
一方、パーキングロック機構15Aaがロック状態のときにアクチュエータ15Baが動作不能になった場合、ロックギア101に逆方向X2のトルクを加えて回転させることで、
図5(A)−(C)に示すように、ロックギア101のロックを解除できる。その際、
図5(B)に示すように、ロックギア101がアーム102aを解除位置p3まで押し戻すと、可動ストッパ104がアーム102aの先端部g1を退避位置p1の方向へ押す。これにより、アーム102が退避位置p1の方へ移動して、ロックギア101とロック爪103とが互いに離間した位置に維持される。
【0056】
以上のように、第1変形例のパーキングロック装置によれば、アクチュエータ15Baが動作不能となってトルクを加えてロックを解除した場合でも、ロックギア101とロック爪103とを離間させて、安定したロック解除の状態を得ることができる。
【0057】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は上記の実施形態に限られない。例えば、フロントのパーキングロック15がロックする前輪2の回転方向と、リアのパーキングロック16がロックする後輪3の回転方向とは、互いに逆向きであればよく、実施形態で示した回転方向に限られない。また、上記実施形態では、アーム102を回動させてロック爪103を移動する構成を示したが、ロック爪を移動できればアームを介さずに直接にアクチュエータがロック爪を移動してもよい。また、上記実施形態では、ロック爪を駆動する駆動部として電動のアクチュエータを示したが、電動のモータを適用してもよい。また、上記実施形態では、2つのパーキングロック15、16が前輪2と後輪3とを別箇にロックする構成を示した。しかし、4つの車輪を4つのモータでそれぞれ駆動するインホイールモータを採用した車両の場合、4つの車輪を別々にロックする4つのパーキングロックを備えてもよい。また、上記実施形態では、2つの動力源が電動のモータである例を示したが、例えば一方をエンジン、他方をモータなどとしてもよいし、一方をエンジンとモータのハイブリッド動力源、他方をモータなどとしてもよい。
【0058】
また、上記実施形態では、前輪と後輪とを独立して駆動できる2つの動力源を有する車両にパーキングロック装置を適用した例を示したが、1つの動力源を有する車両を適用してもよい。
図6は、1つの動力源を有する車両に実施形態のパーキングロック装置を適用した変形例を示す構成図であり、(A)は第1例を示し、(B)は第2例を示す。
【0059】
例えば、
図6(A)に示すように、1つの動力源31と、動力を前輪2と後輪3とに伝達する伝達機構32〜37とを有する車両1Aが適用されてもよい。この場合、前輪2の動力を伝達する伝達機構35にフロントのパーキングロック15を設け、後輪3の動力を伝達する伝達機構37にリアのパーキングロック16を設ければよい。伝達機構32〜37には、前輪2の動力を断続できるクラッチ(34)と、後輪3の動力を断続できるクラッチ(36)とが含まれる。このような構成であれば、クラッチ(34、36)の切り替えにより、前輪2への動力の伝達と、後輪3への動力の伝達とを、切り替えられる。従って、前輪2の動力源と後輪3の動力源とを別箇に備える車両と同様の手順によってロックの解除を行うことができる。
【0060】
また、
図6(B)に示すように、1つの動力源41と、動力を前輪2と後輪3とに伝達する伝達機構42〜45とを有する車両1Bが適用されてもよい。この場合、前輪2の動力を伝達する伝達機構43にフロントのパーキングロック15を設け、後輪3の動力を伝達する伝達機構45にリアのパーキングロック16を設ければよい。伝達機構42〜45には、後輪3の動力を断続できるクラッチ(44)が含まれる。このような構成であれば、2つのパーキングロック15、16がロック状態で動作不能となった場合には、先ず、クラッチ(44)を切断して前輪2の伝達機構43にトルクを出力し、先にフロントのパーキングロック15のロックを解除する。その後、クラッチ(44)を接続して後輪3の伝達機構45にトルクを出力し、リアのパーキングロック16のロックを解除すればよい。
【0061】
また、1つの動力源を有する車両であれば1つの走行用モータを有する電気自動車、或いは1つのエンジンを有するエンジン自動車が採用されてもよい。その他、実施形態示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。