(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
配列された複数の端子のそれぞれが一端側に回路基板の実装面へ接続のための接続部と他端側に嵌合される相手接触部材の接触のための接触部とを有し、該端子を保持するハウジングが回路基板に対して固定取付けされる固定ハウジングと該固定ハウジングとは別部材をなし該固定ハウジングに対し可動な可動ハウジングを有し、上記相手接触部材が可動ハウジングに嵌合される回路基板用電気コネクタにおいて、
上記端子は、可動ハウジングの可動側保持部にて該可動ハウジングとの一体成形で保持されている接触部を含む可動側被保持部と、固定ハウジングの固定側保持部で端子の接続部寄りの位置での該固定ハウジングとの一体成形で保持されている固定側被保持部と、該固定側被保持部と可動側被保持部を連結していて弾性変位可能な弾性部とを有し、
上記端子の弾性部が、上記回路基板の実装面に平行な面内で端子の配列方向に対して直角なコネクタ幅方向で、可動側被保持部よりも外側で該弾性部の上端をなす屈曲された頂部を有し、
端子配列方向にて端子位置で、上記頂部より上方に位置する上記可動側保持部の下方で少なくとも頂部を含む範囲にコネクタ幅方向に開放された側方開放空間が形成されていること、
を特徴とする回路基板用電気コネクタ。
端子はコネクタ幅方向で対称をなすように対向して二列に配置されており、固定ハウジングは上記二列の端子をそれぞれ固定保持するように上記端子配列方向で分離した別部材をなしていることとする請求項1に記載の回路基板用電気コネクタ。
請求項1の回路基板用電気コネクタの製造方法において、上方から設置される上型と、コネクタ幅方向で側方から設置される横型と、下方から設置する下型とを用い、上型と横型で可動ハウジングを端子の可動側被保持部と一体成形し、横型と下型で固定ハウジングを端子の固定側被保持部と一体成形することを特徴とする回路基板用電気コネクタの製造方法。
複数の端子が、金型による一体成形前に該端子の接続部の先端位置でキャリアにより連結されていて、一体成形後に上記先端位置でキャリアから切り離されることとする請求項5に記載の回路基板用電気コネクタの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1のコネクタは、端子はその一端側で固定ハウジングと、他端側で可動ハウジングとそれぞれ一体成形により保持されるのでその保持強度が高くなるとともに、端子保持は一つの工程で製造できるので、その製造コストが低減されるという利点がある。
【0008】
しかしながら、端子の弾性部は、該端子と固定ハウジングそして可動ハウジングの両ハウジングとの一体成形を簡単に行う都合上直状部をなしており、またその結果、固定ハウジングと可動ハウジングとを最短距離で結ぶ長さとなるので、その弾性変形量は小さい。すなわち、フローティング量が少なくなる。さりとて、弾性変形量を大きくしようとして、上記弾性部を長くすると、それだけコネクタの高さ方向の寸法が大きくなり、回路基板からの高さを小さくする低背化が求められているこの種のコネクタには、適切な対策ではない。
【0009】
本発明は、上述の事情に鑑み、端子を固定ハウジングそして可動ハウジングのそれぞれと一体成形で強固に保持した状態でコネクタの高さ方向寸法を小さくした低背化を確保しつつ、端子の弾性部での弾性変形量を大きくできる回路基板用電気コネクタ及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、上述の課題は、次の第一発明に係る回路基板用電気コネクタ、第二発明に係る回路基板用電気コネクタの製造方法により解決される。
【0011】
<第一発明>(回路基板用電気コネクタ)
第一発明に係る回路基板用電気コネクタは、配列された複数の端子のそれぞれが一端側に回路基板の実装面へ接続のための接続部と他端側に嵌合される相手接触部材の接触のための接触部とを有し、該端子を保持するハウジングが回路基板に対して固定取付けされる固定ハウジングと該固定ハウジングとは別部材をなし該固定ハウジングに対し可動な可動ハウジングを有し、上記相手接触部材が可動ハウジングに嵌合される。
【0012】
かかる回路基板用電気コネクタにおいて、第一発明では、上記端子は、可動ハウジングの可動側保持部にて該可動ハウジングとの一体成形で保持されている接触部を含む可動側被保持部と、固定ハウジングの固定側保持部で端子の接続部寄りの位置での該固定ハウジングとの一体成形で保持されている固定側被保持部と、該固定側被保持部と可動側被保持部を連結していて弾性変位可能な弾性部とを有し、上記端子の弾性部が、上記回路基板の実装面に平行な面内で端子の配列方向に対して直角なコネクタ幅方向で、可動側被保持部よりも外側で該弾性部の上端をなす屈曲された頂部を有し、端子配列方向にて端子位置で、上記頂部より上方に位置する上記可動側保持部の下方で少なくとも頂部を含む範囲にコネクタ幅方向に開放された側方開放空間が形成されていることを特徴としている。
【0013】
第一発明では、端子は、該端子の可動側被保持部が可動ハウジングで、そして該端子の固定側被保持部が固定ハウジングで、それぞれ一体成形により保持されているので、該可動ハウジング及び該固定ハウジングの両ハウジングでの端子の保持強度が大きい。また、上記端子の弾性部は、頂部を有するように屈曲されているので、該弾性部を上下方向で大きくすることなく、弾性変位可能なばね長を大きく確保でき、十分なフローティングを可能とする。さらに、第一発明にかかる回路基板用電気コネクタでは、端子配列方向にて端子位置にて、上下方向で少なくとも頂部を含む範囲にコネクタ幅方向に開放された空間が形成されているので、端子の弾性部が頂部で屈曲された形状をなしていても、コネクタ幅方向で金型を成形位置へ向け移動して設置することが可能となる。
【0014】
第一発明において、端子はコネクタ幅方向で対称をなすように対向して二列に配置されており、固定ハウジングは上記二列の端子をそれぞれ固定保持するように上記端子配列方向で分離した別部材をなしていてもよい。このように別部材をなす二つの固定ハウジングは、コネクタ幅方向に延びる連結金具で連結されていてもよい。このように固定ハウジング同士を連結金具で連結することにより固定ハウジング自体の補強そして回路基板への取付時の固定ハウジングの取付強度を大きくすることができる。
【0015】
第一発明において、弾性部は、コネクタ幅方向で少なくとも該弾性部の一部が可動ハウジングの幅方向範囲内に位置していることが好ましい。このように弾性部を位置させることにより、コネクタ幅方向でコネクタを小型化することができる。
【0016】
<第二発明>(回路基板用電気コネクタの製造方法>
第二発明に係る回路基板用電気コネクタの製造方法は、第一発明に係る回路基板用電気コネクタの製造方法である。
【0017】
かかる製造方法において、第二発明では、上方から設置される上型と、コネクタ幅方向で側方から設置される横型と、下方から設置する下型とを用い、上型と横型で可動ハウジングを端子の可動側被保持部と一体成形し、横型と下型で固定ハウジングを端子の固定側被保持部と一体成形することを特徴としている。
【0018】
この第二発明によれば、上型、横型及び下型の三種の金型を用いて、一つの工程で、可動ハウジングを端子の可動側被保持部と一体成形するとともに、固定ハウジングを端子の固定側被保持部と一体成形することができるので、コネクタ製造工程が簡単になり、また、製造コストを低減することができる。
【0019】
第二発明において、横型が、該横型に形成された逃げ溝に端子の弾性部を収めるように側方から成形位置へ移動して設置されることとしてもよい。このように逃げ溝が形成された横型を用いることにより、一体成形時にて、弾性部と横型との干渉を回避でき、また、弾性部を逃げ溝内に収めることにより該弾性部の位置を定めることができる。
【0020】
第二発明において、複数の端子が、金型による一体成形前に該端子の接続部の先端位置でキャリアにより連結されていて、一体成形後に上記先端位置でキャリアから切り離されることとしてもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、以上のように、コネクタに関しては、第一には、端子を固定ハウジングと可動ハウジングのそれぞれで一体成形により保持することとしたので端子の保持強度が大になり、第二には、端子の弾性部が屈曲された頂部を有する形態としたので、コネクタの低背化の要請に応えつつ、弾性部における弾性変形量、すなわち、フローティング量を大きくすることができ、また第三には、該弾性部の頂部を含む範囲にコネクタ幅方向で開放された側方開放空間を形成しているので、コネクタがその幅方向でコンパクトになるとともに、コネクタ幅方向に金型を設置そして取外しができ、端子が上記屈曲した弾性部を有していても、一体成形を可能とする。また、かかるコネクタの製造方法に関しては、金型を上型、横型そして下型を用いることとしたので、上述のコネクタの製造を可能とする。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面にもとづき、本発明の一実施形態について説明する。
【0024】
図1は本実施形態の回路基板用電気コネクタ(以下、「コネクタ」)の外観を示す斜視図、
図2は
図1のコネクタと相手コネクタを示す端子位置での断面図であり、(A)はコネクタ嵌合前、(B)はコネクタ嵌合後であり、
図3は
図1のコネクタの製造要領を一体成形のための金具とともに示す説明図である。
【0025】
図1そして
図2(A)に見られるように、本実施形態のコネクタ1は、固定ハウジング10と、可動ハウジング20と、端子30とを有している。コネクタ1は、全体として横長直方体外形を有し、その底面にて回路基板(図示せず)上に配されて、端子30が該回路基板の対応回路部と半田接続される。本実施形態では、コネクタ1は回路基板の面に平行な方向をなす長手方向そしてこれに対し直角な短手方向をなすコネクタ幅方向のいずれの方向でも対称に作られている。電気絶縁材料で作られた固定ハウジング10は、コネクタの幅方向で可動ハウジング20の下端部に対して両側方で、該可動ハウジング20から離間した位置に、該可動ハウジング20とは別部材として上記長手方向に延びる角棒状をなして回路基板の面上に配されるように形成されている。上記両側の固定ハウジング10も、それぞれ別部材として形成されている。
【0026】
上記可動ハウジング20の両側方で、高さ方向で該可動ハウジング20の下端部に対応して位置し、互いに分離して可動ハウジング20の両側に位置しているそれぞれの上記固定ハウジング10は、
図1に見られるように、上記コネクタの長手方向に延びる中間部11と、該中間部11の長手方向両端部に、該中間部11よりも高く形成された被連結部12と該被連結部12から上記長手方向に延出する支持端部13を有している。上記中間部11は、正方形断面で比較的細い角棒状をなし、該中間部11は、後述する端子30の一端側(図にて下端側)を一体成形で保持する固定側保持部11Aをなしている(
図2(A)参照)。上記固定ハウジング10の両端側の被連結部12は、上面そして上記長手方向での端面で開口する嵌合溝部12Aが形成されている。該嵌合溝部12Aは、後述する連結部材16の嵌合片16Bが上方から嵌入する際の誘いとなるように溝入口上縁がテーパ部12A−1を有している。上記被連結部12に対し、コネクタ幅方向で上記嵌合溝部12Aよりも内側に位置して上記被連結部12よりも低くそして肉薄をなすように段状に形成され上記長手方向に上記被連結部12から突出する支持端部13を有している。該支持端部13は、コネクタ幅方向で外側の側面が連結部材16を支持する支持面13Aを形成している。
【0027】
上記連結部材16は、金属帯を屈曲した形態をなし、回路基板の面に平行でコネクタ幅方向に延びる中間部16Aと、該中間部16Aの、両端で下方に向け平坦な板面に対し直角に下方へ向け屈曲された脚状の嵌合片16Bとを有していて、全体として逆U字状をなしている。該連結部材16は、両端に設けられた脚状の嵌合片16Bが上記固定ハウジング10の被連結部12に形成された嵌合溝部12Aへ上方から嵌合するようになっている。該連結部材16は、コネクタ長手方向で、上記二つの固定ハウジング10の両端のそれぞれの被連結部12に嵌合するように、二つ設けられている。かくして、二つの固定ハウジング10はそれらの両端で二つの連結部材16のそれぞれで連結されて、該連結部材16と相俟って、可動ハウジング20の底部をとり囲むように四角枠状をなす。このように、連結部材16で連結された二つの固定ハウジング10は、可動ハウジング20の両側位置で、強固に回路基板に固定される。
【0028】
この連結部材16を用いる利点としては、上述した二つの固定ハウジング10の回路基板への固定の強化に加え、コネクタの長手方向での小型化と固定ハウジング10の製造容易化がある。コネクタの小型化に関しては、仮に、図示された二つの固定ハウジング10の両端に対する長手方向外側で、固定ハウジングの一部をなす部分あるいは他の部材により上記二つの固定ハウジングを連結しようとすると、上記長手方向外側に位置する部分あるいは部材の分だけ、コネクタの大型化となってしまう。この点で、図示の連結部材16を用いることでコネクタの小型化が図れる。次にコネクタの製造容易化に関しては、本発明では、コネクタの長手方向にのみ延びる比較的単純な形状の固定ハウジングを用意するだけでよいので成形のための金型が簡単になる。仮に、上述した連結する部分を固定ハウジングと一体化して成形するとそれだけ金型が複雑となるし、あるいは別部材とすれば、そのための他の金型を必要となる。この点、図示の連結部材16を用いることで、コネクタの製造容易化を図れる。
【0029】
可動ハウジング20は、固定ハウジング10と同様に、電気絶縁材料で作られていて、上半部をなす嵌合部21と下半部をなす支柱部22とを有している。
【0030】
上記嵌合部21は、上方に開口した有底角筒状をなしていて、側壁21Aと端壁21Bから成る周壁そして底壁21Cにより、後述する相手コネクタを受け入れる凹空間をなす受入部23を形成し、該受入部23の長手方向に延びる側壁21Aの内側面と底壁21Cで後述の端子30を保持しているとともに、上記受入部23に相手コネクタを受け入れて、該相手コネクタに設けられた相手端子と上記端子30とが接触して電気的に接続されるようになっている。該受入部23を形成する嵌合部21の底壁21Cには、コネクタ幅方向中央位置で上記長手方向の複数箇所に、相手コネクタの嵌合時の衝撃を吸収するためのガイド突部21C−1が上方に向け突出形成されている。このガイド突部21C−1が相手コネクタの対応部と嵌合することで、相手コネクタが嵌合時にコネクタ1の周壁内面、特に側壁21Aの内面とコネクタ幅方向での衝突を防止している。
【0031】
上記可動ハウジング20の支柱部22は、
図2(A)に見られるように、コネクタ幅方向中央位置で、上記嵌合部21の底壁21Cから下方に延び、コネクタ長手方向で上記受入部23の上記長手方向での全長にわたり及ぶ縦中央壁部22Aと、該縦中央壁部22Aの上記長手方向の両端で該縦中央壁部22Aと一体に設けられコネクタ幅方向に延びる縦端壁部22Bとを有している。このような可動ハウジング20は、その底壁21Cの下方で上記支柱部22の縦中央壁部22Aと縦端壁部22Bとで、コネクタ幅方向で上記受入部23よりも外側に位置している上記固定ハウジング10までの範囲に、上記縦中央壁部22Aから側方にひろがる側方開放空間24を形成している。
【0032】
上記支柱部22の縦端壁部22Bの下端には、
図1に見られるように、該縦端壁部22Bからコネクタ長手方向外方へ延出する被規制部22Cが設けられていて、二つの固定ハウジング10を連結している連結部材16の中間部16Aの下方に位置し、該被規制部22Cの上面が上記中間部16Aの下面に近接して対向しており、可動ハウジング20が上方に許容量以上に移動しようとしたときに該被規制部22Cが上記中間部16Aに当接してその移動が規制される。
【0033】
上記支柱部22は、受入部23を形成する嵌合部21の底壁21Cから下方に向け回路基板の面の近傍まで延びているが、該回路基板に対しては固定されておらず、外力を受けた際には、可動ハウジング20全体がコネクタ幅方向、長手方向さらには上下方向に可動である。
【0034】
端子30は、
図1そして
図2(A)に見られるように、全長にわたり帯状をなし接触部32を除いて等幅の細い金属平帯状片をその板厚方向に屈曲して作られている。接触部32は他部よりも若干幅広である。したがって、板厚方向に対し直角な方向での寸法が端子幅となる。コネクタ1をその長手方向に見たときに、
図2(A)からのわかるように、端子30は、下方に位置する一端部に形成された接続部31と、上方に位置する他端部に形成された接触部32との間に横S字状の弾性部33とを有している。該端子30は、コネクタ幅方向で対称をなすように対をなして設けられていて、この対がコネクタ長手方向に複数配列されている。
【0035】
上記接続部31は、回路基板の上面に位置するように該回路基板の面に平行な横方向に延び、該接続部31に隣接する部分で、端子30はクランク状に曲げられた固定側被保持部34を有し、該固定側被保持部34が上記固定ハウジング10との一体成形により保持されている。すなわち、固定ハウジング10が端子の固定側被保持部34に対し固定側保持部を形成している。上記接続部31は固定ハウジング10の底面で突出して該底面に沿って横方向に延びている。
【0036】
一方、接触部32は、可動ハウジング20の底壁21Cを貫通して該底壁21Cの上方部分で該可動ハウジング20の側壁21Aの内側面に沿って直状に延び、その上端部分がコネクタ幅方向に外側に向け屈曲された逆U字状の上端曲部32Aを形成し、可動ハウジング20の側壁21A内に上端曲部32Aの先端部が完全に埋設されており、該上端曲部32Aの他部は上面のみが露呈して下面そして側端面が上記側壁21A内に埋設されている。上記上端曲部32Aの上面、特にコネクタ幅方向内側となる内側上面は、上記可動ハウジング20の側壁21Aの上面に対し僅かに突出する程度で該側壁21Aとほぼ同一レベル面を形成し、相手コネクタの案内導入面をなしている。
【0037】
上記上端曲部32Aから下方へ向け、可動ハウジング20の受入部23を形成する嵌合部21の周壁の一部をなす側壁21Aの内側面に沿って直状に延びる接触部32は、受入部23側に向く内面が上記側壁21Aの内側面よりも若干突出して露呈していて相手コネクタの端子と接触する接触面を形成し、該接触部32は該接触面と反対側に位置する面そして側端面の三方が上記側壁21A内に埋設している。
【0038】
上記端子30は、上記接触部32の直下方部分がL字状に屈曲された可動側被保持部35を形成し、上記可動ハウジング20の側壁21Aから底壁21Cへわたる部分で形成された可動側保持部25で上記可動側被保持部35が可動ハウジング20との一体成形により保持されている。該可動側被保持部35の下面側は、一体成形の際に該下面を金型で支えられるために露呈している。
【0039】
上記端子30は、可動側被保持部35よりも下方部分が可動ハウジング20の底壁21Cを貫通して下方に延び、該底壁21Cと固定ハウジング10とを連結している弾性部33に至っている。
【0040】
上記弾性部33は、横S字状をなすように、コネクタ幅方向で内方に位置する内直状部33A、外方に位置する外直状部33B、それらの中間に位置する中間直状部33C、さらには、内直状部33Aと中間直状部33Cとをそれらの下端で連結する下端曲部33D、そして、中間直状部33Cと外直状部33Bとをそれらの上端で連結する上端曲部33Eとを有している。該上端曲部33Eは弾性部33の頂部をなしている。
図2(A)からも判るように、上記弾性部33は、コネクタ幅方向で上記上端曲部33Eよりも内側部分が同方向で可動ハウジング20の側壁21Aよりも内方に位置し、すなわち、可動ハウジング20の上記側方開放空間24内にほぼ収まっている。該弾性部33の内直状部33Aは、可動ハウジング20の支柱部22の一部をなす縦中央壁部22Aに沿って延びているが、該縦中央壁部22Aに対して離間している。かくして、弾性部33は、端子30が外力を受けたときに、上記側方開放空間24内で弾性変位(弾性変形)が可能である。したがって、可動ハウジング20がその受入部23で相手コネクタと嵌合して、可動ハウジング20が固定ハウジング10に対して、例えばコネクタ幅方向で正規位置に対してずれを生じて位置すると、上記弾性部33の弾性変位により上記ずれが吸収され、いわゆるフローティングがなされる。上記可動ハウジング20のずれが、例えば、
図2(A)において右方向である場合、右側の端子30の弾性部33が左右方向で圧縮されるように、そして左側の端子30の弾性部33が同方向で拡大されるようにそれぞれ弾性変位を生ずる。
【0041】
次に、上述のように構成されるコネクタ1の製造方法について、
図3にもとづき説明する。
図3では、コネクタ1の断面が実線で、そしてハウジングのモールド成形のための金型Mが二点鎖線で示されている。金型Mは、成形位置と成形位置へのセット前の待機位置との両方が示されており、待機位置から成形位置への移動は二点鎖線の矢印で示されている。
【0042】
先ず、端子30が作られる。該端子30は、金属板を抜いてキャリア(図示せず)で複数の金属帯状片の一端で連結されている一次加工部材を作り、該金属帯状片を曲げ加工して複数の端子30が上記キャリアで保持されている状態の二次加工部材を用意する。キャリアで保持されている複数の端子30は、ハウジングとのモールド一体成形のために、金型M内に設置される。
【0043】
金型Mは、一つの上型M1、一つの下型M2、二つの横型M3から成っている。既述したように、コネクタ1が左右対称形であるので、二つの横型M3は互いに対称形をなしている。また、上型M1自体、そして下型M2自体もそれぞれ左右対称形をなしている。
【0044】
上型M1は、コネクタ1の可動ハウジング20の嵌合部21に凹空間として形成された受入部23をなす上記嵌合部21の内側壁面を形成するための嵌合部成形面M1−1を有している。該嵌合部成形面M1−1は、嵌合部21の側壁21Aの内側面を成形する側面M1−1Aと嵌合部21の底壁21Cの内面を成形する底面M1−1Bとを有している。上記側面M1−1Aは、上記側壁21Aで端子30の接触部32を保持し、該接触部32の露呈面が側壁21Aの面から僅かに突出する程度に、接触部32が側壁21A内に埋設保持されるように側壁21Aを成形する形状に作られている。上記側面M1−1Aは、側壁21Aの上端の形状が丸味をもつようにR形状面M1−1A−1を有している。
【0045】
下型M2は、上記可動ハウジング20の支柱部22を成形するために上方へ延びる縦面M2−1と固定ハウジング10の内側面そして下側面を成形するための横面M2−2とを有している。可動ハウジング20の支柱部22は、縦中央壁部22A、縦端壁部22Bそそして被規制部22Cを有していて、上記縦面M2−1はこれらを含んだ支柱部22の成形に適するような形状となっているが、理解をしやすくするために、
図3では、上記縦面M2−1は縦中央壁部22Aに対応する部分のみが示されている。
図3に示されている上記縦面M2−1は、細い二つの縦柱の間の縦内面M2−1Aで縦中央壁部22Aの成形の面をなしている。また、二つの縦柱の縦外面M2−1Bが端子30の内直状部33Aを内側から支持する面をなしている。
【0046】
下型M2の横面M2−2は、固定ハウジング10の上面と同一高さで、コネクタ幅方向の中央部に位置する横上面M2−2Aと、該横上面M2−2Aに対し段をなして没し、該横上面M2−2Aの両側に位置する横下面M2−2Bと、両方の固定ハウジング10の内側に位置して、横上面M2−2Aから横下面M2−2Bへ移行する縦方向の側面M2−2Cとを有している。該側面M2−2Cは固定ハウジング10の内側面を成形し、横下面M2−2Bは固定ハウジング10の下面を成形する。上記側面M2−2Cには端子30の固定側被保持部34が固定ハウジング10の内側上部から突出する部分に対する逃げ溝M2−2C−1が側方に向け開口して形成されている。
【0047】
横上面M2−2Aには、横下面M2−2Bよりも高い範囲で、コネクタ幅方向で上記縦中央壁部22A寄り部分に、上記端子30の弾性部33のうちの下端曲部33Dとその近傍を収めるための端子逃げ溝M2−2B−1が上方に向け開口して形成されている。
【0048】
横下面M2−2Bは、固定ハウジング10の下面を成形する位置に設けられていて、該横下面M2−2Bには、固定ハウジング10から突出して横方向に延びる接続部31を収める逃げ溝M2−2B−2が形成されている。
【0049】
左右に対称に設けられる横型M3は、可動ハウジング20の嵌合部21の外側壁面を形成するための側上面M3−1と、その下方にコネクタ幅方向内側へ突出して位置して上記下型M2の縦面M2−1と相俟って端子30の内直状部33Aを挟持する側下面M3−2と、該側下面3M−2の下方で該側下面3M−2よりもコネクタ幅方向外側へ没して段状をなす段部面3M−3とを有している。該段部面3M−3の横方向に延びる上面3M−3Aが固定ハウジング10の上面を成形し、該段部面3M−3の縦方向に延びる側面3M−3Bが固定ハウジング10の外側面を成形する。上記側下面M3−2には、端子30の弾性部33を収容する逃げ溝M3−2−1が形成される。
【0050】
上記金型Mは、成形位置へのセット前には、該成形位置に対し、上型M1は上方に、下型M2は下方に、そして横型M3は側方にそれぞれ離間した待機位置にある。
【0051】
かかる上型M1、下型M2そして横型M3は、待機位置からそれぞれ
図3の二点鎖線矢印に示される方向に移動して、コネクタ成形面以外の面で金型同士が互いに接合することで、成形位置へ設置される。成形位置では、上型M1と横型M3がそれぞれの接合面で、そして横型M3と下型M2がそれぞれの接合面で接面して、端子30を保持しつつ、可動ハウジング20そして固定ハウジング10のための成形空間を形成する。その際、下型M2はその逃げ溝M2−2B−1で端子の下端曲部33Dをそして逃げ溝M2−2B−2で端子30の接続部31を収容し、横型M3はその逃げ溝M3−2−1で端子30の弾性部33を収容する。
【0052】
このように金型Mが成型位置に設置された状態で、上記成形空間へ溶融樹脂が注入され、その固化後に、上型M1、下型M2そして横型M3を待機位置まで戻すことで、互いに分離した固定ハウジング10、可動ハウジング20、そして固定ハウジング10と可動ハウジング20との一体成形で保持された端子30を有するコネクタ1を得る。
【0053】
上述のように構成されるコネクタ1に対して嵌合接続される相手接触部材としての相手コネクタ2は、
図2(A)に見られるように、電気絶縁材料で作られた相手ハウジング50と、該相手ハウジング50より保持された金属板製の相手端子60とを有している。相手接触部材は、上記相手コネクタでなくとも、例えば、回路基板等の部材でもよい。
【0054】
相手ハウジング50は、全体として直方体外形をなし、側壁50Aと端壁50Bから成る周壁と、底壁50Cと、さらには、中央壁50Dとで、上記コネクタ1の可動ハウジング20の進入を許容する嵌合凹部51を形成している。
図2(A)では、相手コネクタ2は、上記コネクタ1の上方位置に配されて該コネクタ1への嵌合直前の状態で示されている関係上、底壁50Cは上部に位置し上記嵌合凹部51は下向きに開口している。
【0055】
相手ハウジング50の中央壁50Dは、コネクタ幅方向の中央位置でコネクタ長手方向(
図2(A)にて紙面に直角方向)に延びており、側壁50Aと端壁50Bにより形成される周壁内の空間を上記コネクタ幅方向で二分していて、二分された各空間が上記嵌合凹部51を形成している。上記中央壁50Dには、コネクタ開口側(
図2(A)にて下側)に向け、上記コネクタ1の可動ハウジング20に設けられたガイド突部21C−1を受け入れるガイド突部受入凹部50Eが形成されている。
【0056】
上記相手ハウジング50には、後述する板状の相手端子60を保持そして収容する端子溝52が形成されている。該端子溝52は、
図2(A)にて、逆U字状をなし、側壁50Aに形成された圧入溝52A、中央壁50Dに形成された収容溝52D、圧入溝52Aと収容溝52Dとを連通するように底壁50Cに形成された底部溝52Cを有している。後述するように、相手端子60は金属板の板面をそのまま維持して該板面に直角な方向、すなわち板厚方向に打ち抜いて作られており、
図2(A)にて上記板面が紙面に平行であり、したがって、上記端子溝52は、紙面に直角な方向での溝幅が、上記相手端子60の板厚にほぼ等しくなっている。
【0057】
上記圧入溝52Aは、スリット孔状で上記側壁50Aをコネクタ嵌合方向となる上下方向に貫通して形成されており、収容溝52Dは中央壁50Dに、底壁50C側と側壁50Aに向う側とで開口するようにして形成されており、底部溝52Cは底壁50Cに対してスリット孔状に上下方向に貫通して形成されている。上記圧入溝52A、収容溝52D、底部溝52Cは連通することで一つの端子溝52をなしている。この端子溝52は、少なくとも収容溝52Dと底部溝52Cで、紙面に対して直角方向の溝幅が相手端子60の板厚よりも若干大きくなっていて、相手端子60が収容溝52Dそして底部溝52Cで弾性変位を許容している。
【0058】
相手端子60は、金属板をその平坦な板面を維持しつつ該板面に対して直角な板厚方向に打ち抜くことにより作られており、
図2(A)にて紙面に平行な面に平坦面をなしている。この相手端子60の形状は、
図2(A)にて逆U字状部分と該逆U字状部分の上部で一方に向け相手ハウジング50外へ突出する突出部を有する形をなし、逆U字状をなす部分は、上記端子溝52のうちの圧入溝52Aへ上方から圧入される直状の固定腕部61、該固定腕部61の上端から中央壁50Dの方に向け屈曲して底壁50Cに沿って延出して上記底部溝52C内に位置する延出腕部62、該延出腕部62から屈曲されて嵌合凹部51の開口側に向け
図2(A)にて下方に延び上記収容溝52D内に位置する接触腕部63を有しており、上記固定腕部61と延出腕部62の移行位置から相手ハウジング50外へ向けた突出部が接続部64を形成しコネクタ幅方向(
図2(A)にて横方向)に突出して設けられている。
【0059】
上記固定腕部61はその縁部に固定用突起61Aが設けられており、該固定腕部61が圧入溝52Aへ所定位置まで圧入されたときに圧入溝52Aの内壁面に喰い込んで固定され、その抜けを防止している。
【0060】
上記接触腕部63はその先端に、嵌合凹部51の内方に向け突出した接触部63Aが設けられている。該接触部63Aは、既述したコネクタ1の端子30の接触部32に接触するための部位であり、該相手端子60の接触部63Aがその板厚方向の切断面で上記帯状の端子30の板厚方向に対し直角な板面に対して接触する。すなわち、上記相手端子60の板厚方向と上記端子30の板厚方向は直角をなしている。
【0061】
上記相手端子60の接触腕部63は収容溝52D内でそして延出腕部62は底部溝52C内で、該相手端子60の板厚方向(
図2(A)にて紙面に対し直角方向)で溝内面との間に隙間を形成しており、したがって、上記接触腕部63と延出腕部62は端子溝52内で弾性変位が可能となっていて、かくして、該相手端子60の接触部63Aはコネクタ1の端子30の接触部32に対して、上記弾性変位のもとで、接圧をもって接触する。
【0062】
既述した本実施形態のコネクタ1は、上述の相手コネクタ2とともに、次の要領で使用される。
【0063】
先ず、コネクタ1と相手コネクタ2は、それぞれの対応回路基板(図示せず)に取り付けられる。コネクタ1は、その端子30の接続部31が対応回路基板の回路部と半田接続され、相手コネクタ2はその相手端子60の接続部64が他の対応回路基板の回路部と半田接続される。
【0064】
かかる状態で、コネクタ1の上方位置へ相手コネクタ2をその嵌合凹部51が下方に開口しているようにした嵌合直前にもたらす。しかる後、相手コネクタ2を、該相手コネクタ2が取り付けられている他の回路基板とともに降下させる。この相手コネクタ2の降下により、該相手コネクタ2の嵌合凹部51へ上記コネクタ1の嵌合部21が進入、コネクタ1と相手コネクタ2は互いに
図2(B)に示す正規位置での嵌合状態となる。その際、コネクタ1のガイド突部21C−1が相手コネクタ2のガイド突部受入凹部50Eに突入して、コネクタ1と相手コネクタ2の互いの位置が定まる。
【0065】
このようなコネクタ1と相手コネクタ2との嵌合状態では、相手コネクタ2の相手端子60がその接触部63Aでコネクタ1の端子30の接触部32との間で、接触腕部63の弾性変位をもって接圧を生じて電気的に接続される。
【0066】
相手コネクタ2は、コネクタ1に対する嵌合位置が必ずしも正規位置となるとは限らない。例えば、上記相手コネクタ2が、コネクタ幅方向で上記正規位置からずれた位置でコネクタ1へ嵌合されることもある。上記相手コネクタ2は、回路基板に取り付けられており、コネクタ1に対する視界がこの回路基板により遮られているため、このようなずれた位置での嵌合が生じやすい。例えば、
図2(A)にて相手コネクタ2が正規位置より右方へずれた位置で相手コネクタ2がコネクタ1へ嵌合が開始されると、相手コネクタ2は、該相手コネクタ2の相手ハウジング50がコネクタ1の可動ハウジング20を嵌合の進行中に右方へ押圧する。したがって、可動ハウジング20は、端子30の弾性部33の弾性変位(弾性変形)により、固定ハウジング10に対して右方へ移動する。すなわち、上記弾性部33が上記ずれた吸収する。その際、
図2(A)にて、右側の端子30がその弾性部33をコネクタ幅方向で圧縮し、左側の端子30の弾性部33を広げることとなる。
【0067】
このように、相手コネクタ2が正規位置からずれた位置で嵌合されても、そのずれ量が許容量内であれば、上記弾性部33の弾性変位により、これに対応できる。その際、弾性部33が弾性変位することで、端子30には、その弾性変位量に応じて内部応力を生ずる。この内部応力は、端子20の一端側の固定側被保持部34そして他端側の可動側被保持部35及び接触部32にも伝達される。しかしながら、本実施形態では、端子30は固定ハウジング10そして可動ハウジング20との一体成形により保持されているので、上記固定側被保持部34そして可動側被保持部35及び接触部32での保持力は強固であり、上記応力に十分耐えられる。
【0068】
しかも、本実施形態では、端子30の弾性部33は、その殆どが可動ハウジング20の下方に形成された側方開放空間24に収められており、また可動ハウジング20のコネクタ幅方向範囲に収まっているので、コネクタ1は上記コネクタ幅方向でコンパクトに構成される。