(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基礎から延びるアンカーボルトによって固定され、前記基礎の長手方向に長い平面視または断面が長方形状の平柱または木製耐力壁を前記基礎に固定するための平柱または木製耐力壁の柱脚金物であって、
長手方向の両側にそれぞれ前記アンカーボルトを挿通させるボルト挿通孔が形成され、前記基礎の上面に載置される下部ベースプレートと、
下端部が前記下部ベースプレートの上面側に接合されたウエブプレートと、
前記ウエブプレートの上部に接合し前記下部ベースプレートに対向して設けられ、上面には前記平柱または木製耐力壁が載置される一方、長手方向の左右両側にはそれぞれ引張力受け部材用通し孔が設けられた上部ベースプレートと、
前記上部ベースプレートと前記下部ベースプレートとの間に設けられた圧縮力受け部材と、
前記上部ベースプレートに設けられた前記引張力受け部材用通し孔に通され、下端部は前記下部ベースプレートの上面に直接または間接的に接合される一方、前記上部ベースプレートより突出した部分には、平柱または木製耐力壁と固定するためのドリフトピンが挿入されるピン挿通孔が形成された引張力受け部材と備え、
前記引張力受け部材に形成された前記ピン挿通孔は、当該ピン挿通孔に前記ドリフトピンを挿入した際、前記ピン挿通孔の内側面と前記ドリフトピンの外側面との間に少なくとも当該引張力受け部材の長手方向にクリアランスが発生するように形成されていることを特徴とする平柱または木製耐力壁の柱脚金物。
基礎から延びるアンカーボルトによって固定され、前記基礎の長手方向に長い平面視または断面が長方形状の平柱または木製耐力壁を前記基礎に固定するための平柱または木製耐力壁の柱脚金物であって、
第1柱脚金物と、その第1柱脚金物とは独立して当該第1柱脚金物の左右両側にそれぞれ設けられる第2柱脚金物とを備え、
前記第1柱脚金物は、
前記アンカーボルトを挿通させるボルト挿通孔が形成され、前記基礎の上面に載置される第1下部ベースプレートと、
下端部が前記第1下部ベースプレートの上面側に接合された第1ウエブプレートと、
前記第1ウエブプレートの上部に接合し前記第1下部ベースプレートに対向して設けられ、上面には前記平柱または木製耐力壁が載置される一方、せん断力受け部材用通し孔が設けられた第1上部ベースプレートと、
前記第1上部ベースプレートと前記第1下部ベースプレートとの間であって前記第1ウエブプレートの両側に当該第1ウエブプレートに対し直交して設けられた第1リブプレートと、
前記第1上部ベースプレートの上部に設けられ、前記第1上部ベースプレートのせん断力受け部材用通し孔から突出するせん断力受け部材とを有し、
前記第2柱脚金物は、
前記アンカーボルトを挿通させるボルト挿通孔が形成され、前記基礎の上面に載置される第2下部ベースプレートと、
下端部が前記第2下部ベースプレートの上面側に接合された第2ウエブプレートと、
前記第2ウエブプレートの上部に接合し前記第2下部ベースプレートに対向して設けられ、上面には前記平柱または木製耐力壁が載置される一方、引張力受け部材用通し孔が設けられた第2上部ベースプレートと、
前記第2上部ベースプレートと前記第2下部ベースプレートとの間に設けられた圧縮力受け部材と、
前記第2上部ベースプレートに設けられた前記引張力受け部材用通し孔に通され、下端部は前記第2下部ベースプレートの上面に直接または間接的に接合される一方、前記第2上部ベースプレートより突出した部分には、平柱または木製耐力壁と固定するためのドリフトピンが挿入されるピン挿通孔が形成された引張力受け部材と、
前記第2上部ベースプレートと前記第2下部ベースプレートとの間であって前記圧縮力受け部材の反対側に前記第2ウエブプレートに対し直交して設けられた第2リブプレートと有し、
前記引張力受け部材に形成された前記ピン挿通孔は、当該引張力受け部材の長手方向に延びる長孔形状に形成されていることを特徴とする平柱または木製耐力壁の柱脚金物。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る平柱または木製耐力壁の柱脚金物(以下、単に柱脚金物と略す場合がある。)の実施の形態を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、下記に説明する実施形態1は、あくまで実施形態1の一例であり、本発明は下記の実施形態1に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で適宜変更可能である。
【0012】
<柱脚金物1の構成>
実施形態1の柱脚金物1は、
図11〜
図13に示すように基礎2から延びるアンカーボルト3および締結ナット4によって固定され、基礎2の長手方向に長い平面視または断面が長方形状の平柱または木製耐力壁(以下、木製耐力壁と総称する場合がある。)5を基礎2に固定するもので、
図1〜
図9に示すように下部ベースプレート11と、ウエブプレート12と、上部ベースプレート13と、引張力受け部材である2本のシャフト14,14と、引張プレート15と、圧縮力受け部材である圧縮プレート16と、リブプレート17と、せん断力受け部材であるせん断ダボ18とを備えて構成される。
【0013】
(下部ベースプレート11)
下部ベースプレート11は、
図11〜
図13に示すように基礎2の上面に載置されるもので、基礎2の幅および木製耐力壁5における基礎2の長手方向の長さに応じた幅および長さを有しており、
図5等に示すようにその長手方向の両側にそれぞれアンカーボルト3を挿通させるボルト挿通孔11a,11aが形成されている。
【0014】
(ウエブプレート12)
ウエブプレート12は、鋼板を所定の形状にカットして形成されたもので、
図1や
図2等に示すように、下端部および上端部がそれぞれ下部ベースプレート11の上面と上部ベースプレート13の下面に溶接等によって接合されて鉛直方向に立設していると共に、下部ベースプレート11の長手方向と平行に延びて設けられている。
【0015】
ウエブプレート12の正面視の形状は、
図1や
図2等に示すように構成されており、中央部分に上下方向に凹み、上部ベースプレート13と下部ベースプレート11に溶接されない中央ブリッジ部12aと、中央ブリッジ部12aの両側に設けられ上下端部がそれぞれ上部ベースプレート13下面と下部ベースプレート11上面とに溶接等により接合される一対の脚部12b,12bとを有する。
【0016】
中央ブリッジ部12aは、上述したように下部ベースプレート11および上部ベースプレート13に接合されないよう凹んだ部分であり、その中央には、後述する円柱状のせん断ダボ18が設けられるように上部ベースプレート13の下面付近まで延びるせん断ダボ取付け部12a1が設けられている。
【0017】
一対の脚部12b,12bは、それぞれ、下端部および上端部がそれぞれ下部ベースプレート11上面と上部ベースプレート13下面と接合される脚部本体12b1,12b1と、その脚部本体12b1,12b1それぞれの外側に設けられ、脚部本体12b1,12b1よりも高さが低く、下端部は下部ベースプレート11の上面側に接合される一方、上端部は上部ベースプレート13の下面に接合されず、引張プレート15の下部が固定される引張プレート固定部12b2,12b2とを有する。
【0018】
脚部本体12b1,12b1は、それぞれ、脚部本体12b1,12b1に対し直交、すなわち下部ベースプレート11および上部ベースプレート13の長手方向に対し直交するようにリブプレート17,17が溶接等により接合して設けられており、リブプレート17,17が接合した部分の下端部には、半円形状の凹部12b1a,12b1aが設けられている。
【0019】
また、脚部本体12b1,12b1それぞれの外側上部には、地震等によりシャフト14,14が傾斜や曲げられた際、シャフト14,14との干渉を防止するため、中央側に向かって傾斜した傾斜部12b1b,12b1bが設けられている。
【0020】
(上部ベースプレート13)
上部ベースプレート13は、
図1や
図2等に示すように、下部ベースプレート11と長手方向の長さは同じであるものの、
図3や
図6等に示すように、短手方向の幅が下部ベースプレート11の幅よりも小さい長方形状に形成されており、下部ベースプレート11の上面側に接合されたウエブプレート12の脚部本体12b1,12b1上端部およびリブプレート17,17の上端部が下面に溶接等されて下部ベースプレート11と対向するように設けられている。
【0021】
上部ベースプレート13は、
図4等に示すように、長手方向の中央に上部ベースプレート13の中央ブリッジ部12aに固定されたせん断ダボ18を通すための円形状のせん断ダボ用通し孔13a1が設けられている一方、左右両側にはそれぞれシャフト14,14を通すためのシャフト用通し孔13a2,13a2が設けられている。
【0022】
ここで、せん断ダボ18はせん断ダボ用通し孔13a1の内側面に溶接するため、せん断ダボ用通し孔13a1は
図4等に示すように、せん断ダボ18がほぼ隙間無くギリギリ通り、せん断ダボ18が木製耐力壁5に作用するせん断力を受けるようせん断ダボ18の外径と同じかわずかに大きくする一方、シャフト用通し孔13a2,13a2は、木製耐力壁5に作用するせん断力を受けないよう、それぞれ、上部ベースプレート13および下部ベースプレート11の長手方向に長く延びた長孔形状に形成されている。
【0023】
これにより、木製耐力壁5に作用したせん断力は、せん断ダボ18を介して上部ベースプレート13やウエブプレート12、下部プレート11等に伝達され、シャフト14,14に伝達することを防止できる。特に、せん断ダボ18はせん断ダボ用通し孔13a1の内側面に溶接されている為、木製耐力壁5に作用したせん断力を確実に上部ベースプレート13等に伝達することができる。ただし、本発明では、シャフト用通し孔13a2,13a2を長孔形状にすることは、必須ではなく、任意であり、通常の通し孔でも良い。
【0024】
そのため、引張力に抵抗するシャフト14は、上部ベースプレート13のシャフト用通し孔13a2,13a2を貫通して引張プレート15に固定されているため、上部ベースプレート13や下部ベースプレート11の長手方向への変形に応じて倒れた場合でも、上部ベースプレート13および下部ベースプレート11の長手方向に長く延びた長孔形状に形成されたシャフト用通し孔13a2,13a2がシャフト14の変形や傾きを阻害することを防止できる。
【0025】
(シャフト14)
シャフト14は、
図1や
図4等に示すように、上部ベースプレート13に設けられたシャフト用通し孔13a2,13a2に通され、下端部は下部ベースプレート11の上面に引張プレート15を介して溶接等により間接的に接合されたもので、上部ベースプレート13より突出した部分には、木製耐力壁と固定するためのドリフトピン6が挿入されるピン挿通孔14aが形成されている。
【0026】
ここで、ピン挿通孔14aは、各シャフト14,14の長手方向、すなわち上下方向に延びる長孔形状に形成されており、各シャフト14,14に所定間隔を開けつつ90度ずつずらしながらここでは例えば5箇所形成されている。
【0027】
シャフト14,14のピン挿通孔14aをシャフト14,14の長手方向、すなわち上下方向に延びる長孔形状に形成した理由は、後述するようにドリフトピン6に主に引抜力にのみ抵抗させ、シャフト14,14が引抜力(引張力)のみ負担させるためである。
【0028】
そのため、シャフト14,14に設ける長孔形状のピン挿通孔14aは、後述するように過大な圧縮力が実施形態1の柱脚金物1に作用して例えば上部ベースプレート13が最大限塑性変形した場合でも、ピン挿通孔14aに挿入されたドリフトピン6がピン挿通孔14aの下側内側面に当接せずにその圧縮力を、シャフト14を介し引張プレート15に伝達しないような長さに形成しておく。
【0029】
(引張プレート15)
引張プレート15は、
図8等に示すように、上端部15aにシャフト14の下端部が溶接等によって接合される一方、下端部15bがウエブプレート12の引張プレート固定部12b2に接合されることによって下部ベースプレート11の上面に間接的に接合されるもので、
図2等に示すように、上部ベースプレート13および下部ベースプレート11の長手方向に対し直交してウエブプレート12の引張プレート固定部12b2に接合されている。
【0030】
また、引張プレート15は、
図8等に示すように、上端部15aにはシャフト14の下端部が嵌り溶接等によって接合される上側凹部15a1が形成されている一方、下端部15bには引張プレート固定部12b2,が嵌り溶接等によって接合される下側凹部15b1が形成されている。
【0031】
ここで、シャフト14の下端部が接合される引張プレート15の上側凹部15a1の左右端部は、
図1や
図5等に示すように、シャフト14下端部と引張プレート15上側凹部15a1との間の溶接長が短いため、開先角度を大きくし溶接量を確保してシャフト14の下端部を溶接できるよう平面視、3角形状に形成している。
【0032】
また、引張プレート15の上端部15aの幅は、
図4や
図8等に示すように、上部ベースプレート13のシャフト14,14を通すためのシャフト用通し孔13a2,13a2の幅よりも大きくしている。
【0033】
また、引張プレート15に大きな引張力が作用して伸びても、引張プレート15が破断する伸び量に達する前に、引張プレート15の上端部15aが上部ベースプレート13の下面側のシャフト用通し孔13a2周縁に当接するように構成したため、この柱脚金物1を使用した建物の倒壊を防止することができる。
【0034】
さらに、引張プレート15における上側凹部15a1が形成された上端部15aと、下側凹部15b1が形成された下端部15bとの間は、その上端部15aおよび下端部15bよりも幅が狭いくびれ部15cが形成されている。
【0035】
そのため、引抜力に抵抗するシャフト14を支持する引張プレート15では、大きな引抜力がかかった際、くびれ部15cに応力が集中して、くびれ部15cが伸びるので、引張プレート15は安定して塑性変形能力を達成することができる。ただし、上述したように、引張プレート15が破断する伸び量に達する前に、引張プレート15の上端部15aが上部ベースプレート13の下面側のシャフト用通し孔13a2周縁に当接するようにくびれ部15cの幅や長さ等を設計する必要がある。
【0036】
尚、本発明では、引張プレート15にくびれ部15cを設けることは必須ではなく、任意であり、くびれ部15cを設けなくても良い。また、実施形態1の柱脚金物1では、引張プレート15を設け、シャフト14,14は引張プレート15を介して下部ベースプレート11の上面に間接的に接合するように説明したが、本発明ではこれに限らず、引張プレート15を介さずに直接、ウエブプレート12や上部ベースプレート11の上面に接合するように構成しても良い。
【0037】
(圧縮プレート16)
圧縮プレート16は、
図1〜
図3等に示すように、上部ベースプレート13と下部ベースプレート11との間であって左右両側の最外側、すなわちウエブプレート12やシャフト14,14の外側に、上部ベースプレート13下面と下部ベースプレート11上面とに溶接等によって接合されて、この柱脚金物1の上部ベースプレート13にかかる圧縮力を受ける部分である。そのため、圧縮プレート16の厚さは、リブプレート17の厚さよりも大きく構成している。
【0038】
ここで、圧縮プレート16の形状は、
図3等に示すように、上部および下部共に、中央が上部ベースプレート13と下部ベースプレート11とに接合されない凹部を設けてアーチ形状に形成し、上端部16aには一対の上部脚部16a1,16a1が形成されて上部ベースプレート13下面に溶接等で接合される一方、下端部16bには一対の下部脚部16b1,16b1が形成されて下部ベースプレート11上面に接合される。ただし、本発明では、圧縮プレート16の形状のアーチ形状とすることは必須ではなく、任意である。
【0039】
そして、
図3等に示すように、上部脚部16a1,16a1と下部脚部16b1,16b1との間に圧縮プレートウエスト部16cを形成しており、圧縮プレートウエスト部16cの幅よりも下部脚部16b1,16b1間の空間部16b3の幅を狭く形成している。
【0040】
そのため、上部ベースプレート13に過大な圧縮力がかかった場合、圧縮プレートウエスト部16cと下部脚部16b1,16b1とを連結しているアーチ部分が潰れて塑性変形するので、引張力を負担するシャフト14,14に過大な引張力を生じさせることなく木製耐力壁5の破壊させる事なく靱性能を確保できる。
【0041】
また、下端部16bのアーチ形状の中央、すなわち一対の下部脚部16b1,16b1の間には、アーチ形状の一部を下方に突出させた突出部16b2を設けている。
【0042】
そのため、上部ベースプレート13に過大な圧縮力がかかって、下部脚部16b1,16b1が潰れて塑性変形する場合でも、突出部16b2先端部(下端部)が下部ベースプレート11上面に当接するので、下端部16bの過度の塑性変形を防止することができ、過大な木製耐力壁5の倒れを発生させず、建物の倒壊を防止できる。
【0043】
(リブプレート17)
リブプレート17は、
図1や
図2、
図5、
図6等に示すように、上部ベースプレート13と下部ベースプレート11との間であってシャフト14,14の内側にウエブプレート12と直交するように設けられており、上部ベースプレート13下面と下部ベースプレート11上面とに溶接等によって接合されて、ウエブプレート12と同様に、この柱脚金物1の上部ベースプレート13にかかる圧縮力を受ける。尚、実施形態1の柱脚金物1では、リブプレート17を設けて説明している、本発明ではこれに限らず、リブプレート17を省略しても良い。
【0044】
(せん断ダボ18)
せん断ダボ18は、木製耐力壁5に作用する基礎2の長手方向のせん断力を受けるもので、丸鋼材等から構成されており、
図1や
図4、
図5、
図6等に示すように、ウエブプレート11の中央ブリッジ部12a中央に形成されたせん断ダボ取付け部12a1に溶接等により接合されると共に、上部ベースプレート13の長手方向の中央に形成されたせん断ダボ用通し孔13a1の内側面にも溶接されて設けられ、上部ベースプレート13の上面側に突出しており、後述するように木製耐力壁5の下端部に形成されたせん断ダボ挿入用凹部5b1に隙間無く挿入される。尚、実施形態1の柱脚金物1では、せん断ダボ18を設けて説明したが、本発明ではこれに限らず、せん断ダボ18を省略しても勿論良い。
【0045】
<実施形態1の柱脚金物1を介した木製耐力壁5の固定>
次に、以上のように構成された実施形態1の柱脚金物1を利用して木製耐力壁5を基礎2に固定する方法について説明する。
【0046】
(木製耐力壁5およびその加工)
木製耐力壁5とは、基礎の短手方向(幅方向)より長手方向に長い寸法を有する平面視または断面が長方形状の平柱または木製耐力壁5のことであり、無垢の木材やLVL(単板積層材)等から構成されている。
【0047】
そして、実施形態1の柱脚金物1の効果(機能)を確実かつ最大限発揮できるように、
図10(a)〜(c)に示すように木製耐力壁5の下端部を加工しておく。
【0048】
具体的には、
図10(a)〜(c)に示すようにこの柱脚金物1を利用して基礎2に固定する木製耐力壁5の下端部には、木製耐力壁5に水平方向の力等が作用した際の引抜力(引張力)と圧縮力とを負担する領域を明確にするため、ウエブプレート12の脚部本体12b1,12b1における上部ベースプレート13下面と溶接等によって接合される接合部上方の上部ベースプレート13に、木製耐力壁5の下端部が当接しないように切り欠いて凹部5a,5aを形成することにより、上部ベースプレート13の上面に載置される中央の中央載置部5bと、左右両側の端側載置部5c,5cとを設ける。
【0049】
そして、木製耐力壁5の下端部中央の中央載置部5bには、上部ベースプレート13の長手方向の中央に形成されたせん断ダボ用通し孔13a1から突出して設けられたせん断ダボ18が挿入されるせん断ダボ挿入用凹部5b1を形成する。
【0050】
また、木製耐力壁5の下端部左右両側の端側載置部5c,5cには、上部ベースプレート13の左右両側のシャフト用通し孔13a2,13a2から突出したシャフト14,14が挿入されるシャフト挿入用凹部5c1,5c1を形成する。尚、木製耐力壁5に設ける凹部5a,5aは、ウエブプレート12の脚部本体12b1,12b1における上部ベースプレート13下面との接合部上方の上部ベースプレート13に木製耐力壁5の下端部が当接しないように切り欠いて形成すれば十分であるため、例えば、
図11に示す場合よりも凹部5a,5aの横幅を長く確保することにより端側載置部5c,5cの横幅を短くして、シャフト挿入用凹部5c1,5c1の下端部全部または一部が凹部5a,5aにかかるように形成しても良い。
【0051】
さらに、木製耐力壁5と実施形態1の柱脚金物1との固定には、複数本のドリフトピン6を使用するため、シャフト14,14のピン挿通孔14aに対応する位置には、ドリフトピン6が挿通できるようにピン挿通孔5dを予め形成しておく。
【0052】
ここで、シャフト14,14のピン挿通孔14aは、上下方向に長い長孔形状に形成されており、シャフト14,14は木製耐力壁5にかかる引抜力のみを負担できるように、木製耐力壁5のピン挿通孔5dに挿入されたドリフトピン6がシャフト14,14の長孔形状のピン挿通孔14aの上側に位置するような位置にピン挿通孔5dを形成する。
【0053】
(木製耐力壁5を柱脚金物1上に固定)
以上のように加工した木製耐力壁5を、
図11〜
図13に示すように、基礎2上にアンカーボルト3および締結ナット4によって固定した実施形態1の柱脚金物1上に設置する。なお、
図11は、実施形態1の柱脚金物1を利用して木製耐力壁5を基礎2に固定した状態を示す正面図、
図12は、その一部切欠側面図、
図13は、その一部切欠平面図である。
【0054】
すると、
図11〜
図13に示すように、木製耐力壁5の下端部の中央載置部5bのせん断ダボ挿入用凹部5b1には、柱脚金物1のウエブプレート11の中央ブリッジ部12aに接合され、上部ベースプレート13のせん断ダボ用通し孔13a1から突出するせん断ダボ18が挿入される一方、木製耐力壁5の下端部左右両側の端側載置部5c,5cのシャフト挿入用凹部5c1,5c1に上部ベースプレート13のシャフト用通し孔13a2,13a2から突出するシャフト14,14が挿入される。
【0055】
次に、木製耐力壁5を柱脚金物1に固定するため、予め木製耐力壁5下端部の前後左右の側面に形成しておいたピン挿通孔5dから
図11に示すようにドリフトピン6を挿入する。
【0056】
すると、
図11〜
図13に示すように、柱脚金物1の上部ベースプレート13上に載置した木製耐力壁5の下端部を柱脚金物1に固定することができる。ただし、上述したように、シャフト14,14のピン挿通孔14aは、上下方向に長い長孔形状に形成されており、シャフト14,14は木製耐力壁5にかかる引抜力のみを負担できるように、木製耐力壁5のピン挿通孔5dに挿入されたドリフトピン6はシャフト14,14の長孔形状のピン挿通孔14aの上側に位置するような位置に挿入される。
【0057】
そのため、シャフト14,14は、木製耐力壁5に作用する圧縮力は負担せず、木製耐力壁5に作用する引抜力(引張力)を負担することになる。
【0058】
その一方、
図11等に示すように、木製耐力壁5の下端部には凹部5a,5aが形成されており、ウエブプレート12の脚部本体12b1,12b1の上方には木製耐力壁5の凹部5a,5aが位置する。
【0059】
そして、木製耐力壁5の下端部端側載置部5c,5cの下方には、上部ベースプレート13を介して圧縮プレート16,16が位置するので、木製耐力壁5に
図11に示すα方向のような水平方向の倒れるような力が作用した際、木製耐力壁5に作用する圧縮力は主に左右いずれか一方側(
図11では図上、右側)の圧縮プレート16が負担することになる。
【0060】
<実施形態1の柱脚金物1の主な効果>
(1)木製耐力壁5にかかる水平力による偶力を明確に分離する効果
例えば、
図11における矢印α方向の水平力を受けた場合を考えると、木製耐力壁5の下端部に生じる応力は、β方向の“引張力”と、γ方向の“圧縮力”とに分けられる。
【0061】
ここで、シャフト14,14は、それぞれ、柱脚金物1の上部ベースプレート13に形成された水平方向に長い長孔形状のシャフト用通し孔13a2,13a2に溶接されずに突出している。
【0062】
また、シャフト14,14のピン挿通孔14aは、上下方向に長い長孔形状に形成されており、シャフト14,14は木製耐力壁5にかかる引抜力のみを負担できるように、木製耐力壁5のピン挿通孔5dに挿入されたドリフトピン6がシャフト14,14の長孔形状のピン挿通孔14aの上側に位置するような位置にピン挿通孔5dが形成され、ドリフトピン6が挿入されている。そのため、
図11における矢印α方向の水平力を受けた場合、シャフト14,14は、木製耐力壁5にかかる圧縮力をほとんど負担せず、主に引張力を負担することになる。
【0063】
そのため、
図11における矢印α方向の水平力を受けた場合、β方向の“引張力”は、
図11上、左側のシャフト14が負担する一方、γ方向の“圧縮力”は、
図11上、右側の圧縮プレート16が負担することになる。
【0064】
その結果、この柱脚金物1の上に設置された木製耐力壁5が例えば壁体上部に
図11に示すようにα方向の水平力を受けた際に、柱脚金物1に生じるβ方向の“引張力”とγ方向の“圧縮力”とは、それぞれ左右いずれか一方のシャフト14,14と圧縮プレート16,16の負担に明確に分離することが可能となるので、“引張力”と“圧縮力”それぞれの応力に対して独立した塑性変形能力を有した応力抵抗機構を設けることが可能となり、木製耐力壁5の破壊による脆性的な建物の損壊を抑制することができる。
【0065】
特に、この実施形態1では、木製耐力壁5の転倒による圧縮力を負担する領域を明確にするため、
図11等に示すように、ウエブプレート12の脚部本体12b1,12b1における上部ベースプレート13下面と溶接等によって接合される接合部上方の上部ベースプレート13に、木製耐力壁5の下端部が当接しないように切り欠いて凹部5a,5aを形成することにより、上部ベースプレート13の上面に載置される中央の中央載置部5bと、左右両側の端側載置部5c,5cとを設けたため、γ方向の“圧縮力”は、ウエブプレート12やシャフト14,14ではなく、
図11上、右側の端側載置部5cを介して圧縮プレート16で確実に受けることが可能となり、この点でも、“引張力”と“圧縮力”それぞれの応力に対して独立した塑性変形能力を有した応力抵抗機構を設けることにより、木製耐力壁5の破壊による脆性的な建物の損壊を抑制することができる。
【0066】
(2)圧縮プレート16の塑性変形による効果
また、実施形態1の柱脚金物1では、引張側の塑性変形量だけでは壁体としての十分な塑性変形能力を得ることができないため、圧縮力を受ける圧縮プレート16は、
図3等に示すように、上部および下部共に、中央が上部ベースプレート13と下部ベースプレート11とに接合されない凹んだアーチ形状に形成し、下端部16bには一対の下部脚部16b1,16b1が形成されて下部ベースプレート11上面に接合していると共に、圧縮プレートウエスト部16cの幅よりも下部脚部16b1,16b1間の空間部16b3の幅を狭く形成している。
【0067】
そのため、上部ベースプレート13に過大な圧縮力がかかった場合、圧縮プレートウエスト部16cと下部脚部16b1,16b1とを連結しているアーチ部分が潰れて塑性変形するので、引張力を負担するシャフト14,14に過大な引張力を生じさせることなく十分な塑性変形能力を発揮することができる。
【0068】
また、下端部16bのアーチ形状の中央、すなわち一対の下部脚部16b1,16b1の間には、
図3等に示すように、アーチ形状の一部を下方に突出させた突出部16b2を設けているため、上部ベースプレート13に過大な圧縮力がかかって、下部脚部16b1,16b1が潰れて塑性変形した場合でも、突出部16b2先端部(下端部)が下部ベースプレート11上面に当接するので、下端部16bの過度の塑性変形を防止することができ、建物の倒壊を防止できる。
【0069】
(3)木製耐力壁5の変形追従による効果
木製耐力壁5に挿入されたシャフト14,14を支持している引張プレート15は、木製耐力壁5の転倒方向に直交する方向に平行になるように設置されているため、木製耐力壁5の転倒方向に変形し易く、シャフト14,14が木製耐力壁5の転倒に追従して傾斜し易いことになる。
【0070】
そのため、木製耐力壁5のα方向に大きく転倒して変形が進行した際に、引張プレート15もその変形に追従して曲がり、シャフト14,14が傾斜するので、木製耐力壁5の割裂を誘発することを防止でき、木製耐力壁5の脆性的な破壊を抑制することができる。
【0071】
特に、実施形態1の柱脚金物1では、引張力に抵抗するシャフト14,14は、上部ベースプレート13に設けられたシャフト用通し孔13a2,13a2を貫通して引張プレート15を介して溶接等により間接的に下部ベースプレート11に接合されているが、上部ベースプレート13のシャフト用通し孔13a2,13a2は、
図3等に示すように、それぞれ、上部ベースプレート13および下部ベースプレート11の長手方向に長く延びた長孔形状に形成されている。
【0072】
そのため、木製耐力壁5のα方向に大きく転倒して変形が進行し、引張プレート15やシャフト14,14もその変形に追従する際に、シャフト14,14の傾斜や変形を阻害しないので、この点でも、木製耐力壁5の割裂を誘発することを防止でき、木製耐力壁5の脆性的な破壊を抑制することができる。
【0073】
また、実施形態1の柱脚金物1では、ウエブプレート12における脚部本体12b1,12b1それぞれの外側上部には、地震等によりシャフト14,14が傾斜した際、シャフト14,14との干渉を防止するため中央側に向かって傾斜した傾斜部12b1b,12b1bを設けているため、木製耐力壁5のα方向に大きく転倒して変形が進行し、シャフト14,14もその変形に追従する際に、シャフト14,14の傾斜や変形を阻害しないので、この点でも、木製耐力壁5の割裂を誘発することを防止でき、木製耐力壁5の脆性的な破壊を抑制することができる。
【0074】
また、上部ベースプレート13のシャフト用通し孔13a2,13a2は、
図4等に示すように、上部ベースプレート13および下部ベースプレート11の長手方向に長く延びた長孔形状に形成されている一方、せん断ダボ用通し孔13a1は、
図4等に示すように、せん断ダボ18がほぼ隙間無くギリギリ通り、せん断ダボ18が木製耐力壁5に作用するせん断力を受けるようせん断ダボ18の外径と同じかわずかに大きく形成しているため、木製耐力壁5に作用したせん断力は、せん断ダボ18を介して上部ベースプレート13やウエブプレート12、下部プレート11等に伝達され、シャフト14,14に伝達することを防止できる。
【0075】
その結果、実施形態1の柱脚金物1では、シャフト14,14には、圧縮力だけでなく、せん断力も極力伝達されず、主に引張力だけ作用することになるので、引張力はシャフト14,14が負担、圧縮力は圧縮プレート16が負担、せん断力はせん断ダボ18が負担するというように“引張力”と“圧縮力”と“せん断力”それぞれの応力に対して独立した塑性変形能力を有した応力抵抗設計を行うことが可能となり、木製耐力壁5の破壊による脆性的な建物の損壊に対し明快に対応することができる。
【0076】
(4)木製耐力壁5の倒壊防止のための工夫による効果
また、実施形態1の柱脚金物1では、引張力に抵抗するシャフト14,14下端部を支持する引張プレート15は、
図8等に示すように、その上端部15aおよび下端部15bよりも幅が狭いくびれ部15cを形成しているため、引抜力に抵抗するシャフト14を支持する引張プレート15では、大きな引抜力がかかった際、くびれ部15cに応力が集中するので、引張プレート15は安定して塑性変形能力を達成することができる。
【0077】
また、引張プレート15は、上述したように、その上端部15aおよび下端部15bよりも幅が狭いくびれ部15cを形成しているため、くびれ部15で破断し易い構成になっているが、
図4や
図8等に示すように、引張プレート15の上端部15aの幅は、上部ベースプレート13のシャフト14,14を通すためのシャフト用通し孔13a2,13a2の幅よりも大きくし、かつ、過大な引張力によって引張プレート15が破断する伸び量に達する前に、引張プレート15の上端部15aが上部ベースプレート13の下面側のシャフト用通し孔13a2周縁に当接するように構成している。
【0078】
そのため、引張プレート15に過大な引張力が作用して、くびれ部15cに応力が集中し変形が進行した場合でも、引張プレート15の破断を防止して、柱脚金物1を使用した建物の倒壊を防止することができる。
【0079】
実施形態2.
上記実施形態1では、
図1〜
図13に示すように、2本のシャフト14,14を、それぞれ、長方形状の1枚の下部ベースプレート11の左右両側に引張プレート15を介して溶接等により間接的に接合して1枚の上部ベースプレート13の左右両側から突出させると共に、ウエブプレート12に下端部を接合したせん断ダボ18を上部ベースプレート13の中央から突出させた一台の柱脚金物1によって1つの木製耐力壁5を基礎2に固定するように説明したが、実施形態2の柱脚金物1’では、実施形態1の柱脚金物1を長手方向に3分割して、2本のシャフト14,14と、せん断ダボ18とがそれぞれ独立するように構成したものである。
【0080】
図14は、本発明に係る実施形態2の平柱または木製耐力壁の柱脚金物1’を使用して基礎上2に木製耐力壁5を固定した状態を示す正面図、
図15は、その一部切欠側面図である。また、
図16〜
図20は、それぞれ、本発明に係る実施形態2の平柱または木製耐力壁の柱脚金物1’の正面図、平面図、側面図、第1柱脚金物の側面図、
図16におけるF−F線断面図である。
【0081】
図14および
図15に示すように、実施形態2の柱脚金物1’では、実施形態1の柱脚金物1を長手方向に3分割して、2本のシャフト14,14と、せん断ダボ18とがそれぞれ独立するように、下部ベースプレート11、ウエブプレート12および上部ベースプレート13をその長手方向に3分割して構成している。
【0082】
つまり、実施形態2の柱脚金物1’では、実施形態1の柱脚金物1の下部ベースプレート11を長手方向で3分割して、中央の1つの第1下部ベースプレート11A’と、左右両側の2つの第2下部ベースプレート11B’,11B’とに分ける一方、実施形態1の柱脚金物1のウエブプレート12および上部ベースプレート13も同様に3分割して、それぞれ、中央の1つの第1ウエブプレート12A’と、左右両側の2つの第2ウエブプレート12B’,12B’、中央の1つの第1上部ベースプレート13A’と、左右両側の2つの第2上部ベースプレート13B’,13B’とに分ける。
【0083】
そして、実施形態2の柱脚金物1’では、中央の1つの第1下部ベースプレート11A’と、第1ウエブプレート12A’と、第1上部ベースプレート13A’とによってせん断ダボ18を実施形態1と同様に支持する第1柱脚金物1A’と、左右両側の2つの第2下部ベースプレート11B’,11B’と、第2ウエブプレート12B’,12B’と、第2上部ベースプレート13B’,13B’とによってそれぞれシャフト14,14を実施形態1と同様に支持する2つの第2柱脚金物1B’,1B’とによって構成される。
【0084】
ただし、実施形態2の柱脚金物1’は、実施形態1の柱脚金物1を中央の第1柱脚金物1A’と、その左右両側の第2柱脚金物1B’,1B’とに3分割して構成したため、第1柱脚金物1A’および第2柱脚金物1B’,1B’の構造が安定するように、第1柱脚金物1A’では第1ウエブプレート12A’の両側に第1リブプレート17A’,17A’を設ける一方、第2柱脚金物1B’,1B’では、それぞれ、圧縮プレート16の反対側に第2リブプレート17B’を設ける。
【0085】
(実施形態2の木製耐力壁5’および木製耐力壁5’への柱脚金物1’の固定)
尚、実施形態2の柱脚金物1’に固定される木製耐力壁5’は、
図14等に示すように、上記実施形態1の木製耐力壁5と同様に下端部を加工して、凹部5a’,5a’を形成することにより、第1柱脚金物1A’の第1上部ベースプレート13A’上面に載置される中央の中央載置部5b’と、第2柱脚金物1B’,1B’の第1上部ベースプレート13B’,13B’上面に載置される左右両側の端側載置部5c’,5c’とを設ける。
【0086】
そして、木製耐力壁5’の下端部中央の中央載置部5b’には、第1柱脚金物1A’の上部ベースプレート13の長手方向の中央に形成されたせん断ダボ用通し孔13a1から突出して設けられたせん断ダボ18が挿入されるせん断ダボ挿入用凹部5b1を形成する。
【0087】
一方、木製耐力壁5’の下端部左右両側の端側載置部5c’,5c’には、第2柱脚金物1B’,1B’の第1上部ベースプレート13B’,13B’のシャフト用通し孔13a2,13a2から突出したシャフト14,14が挿入されるシャフト挿入用凹部5c1,5c1を形成する。尚、木製耐力壁5’に設ける凹部5a’,5a’は、第2柱脚金物1B’,1B’の第2上部プレート13B’,13B’における第2ウエブプレート12B’,12B’および第2リブプレート17B’,17B’との接合部上方に木製耐力壁5’の下端部が当接しないように切り欠いて形成すれば十分であるため、例えば、
図14に示す場合よりも凹部5a’,5a’の横幅を長く確保することにより端側載置部5c’,5c’の横幅を短くして、シャフト挿入用凹部5c1,5c1の下端部全部または一部が凹部5a’,5a’にかかるように形成しても良い。
【0088】
さらに、木製耐力壁5’におけるシャフト14,14のピン挿通孔14aに対応する位置には、ドリフトピン6が挿通できるようにピン挿通孔5dを予め形成しておく。
【0089】
以上のように加工した木製耐力壁5’を、
図14および
図15に示すように、木製耐力壁5’中央の中央載置部5b’を第1柱脚金物1A’の第1上部ベースプレート13A’上面に載置して、せん断ダボ18を中央載置部5b’のせん断ダボ挿入用凹部5b1に挿入する一方、木製耐力壁5’両側の端側載置部5c’,5c’がそれぞれ第2柱脚金物1B’,1B’の第1上部ベースプレート13B’,13B’上面に載置して、シャフト14,14が端側載置部5c’,5c’のシャフト挿入用凹部5c1,5c1に挿入し、木製耐力壁5のピン挿通孔5dとシャフト14,14のピン挿通孔14aの位置を合わせてドリフトピン6を挿入する。
【0090】
そのため、実施形態2の柱脚金物1’では、
図11に示すようにα方向の力が木製耐力壁5’に作用した場合、第1柱脚金物1A’のせん断ダボ18がせん断力を負担し、いずれか一方(
図14上、左側)の第2柱脚金物1B’,1B’のシャフト14,14が引張力を負担し、他方(
図14上、右側)の第2柱脚金物1B’,1B’の圧縮プレート16,16が圧縮力を負担することになる。
【0091】
<実施形態2の柱脚金物1’の効果>
従って、実施形態2の柱脚金物1’では、実施形態1の柱脚金物1を長手方向に3分割して、2本のシャフト14,14と、せん断ダボ18とがそれぞれ独立するように第1柱脚金物1A’および第2柱脚金物1B’,1B’で構成しただけで、その他については基本的に、実施形態1の柱脚金物1と同様に構成したため、実施形態1の柱脚金物1によって得られる(1)〜(4)の効果、すなわち、
(1)木製耐力壁5にかかる水平力による偶力を明確に分離する効果
(2)圧縮プレート16の塑性変形による効果
(3)木製耐力壁5の変形追従による効果
(4)木製耐力壁5の倒壊防止のための工夫による効果
の効果が得られる。
【0092】
また、実施形態2の柱脚金物1’では、実施形態1の柱脚金物1を長手方向に3分割した第1柱脚金物1A’および第2柱脚金物1B’,1B’で構成しているため、木製耐力壁5の幅、すなわち基礎2の長手方向の長さが変更された場合でも、第1柱脚金物1A’および第2柱脚金物1B’,1B’間の間隔を変更するだけで対応可能となり、この点では、木製耐力壁5の幅の変更には対応できない実施形態1の柱脚金物1よりも優れていることになる。
【0093】
尚、上記実施形態の説明では、シャフト14,14は、引張プレート15を介して下部ベースプレート11の上面に間接的に接合するように説明したが、本発明ではこれに限らず、引張プレート15を介さずに直接、ウエブプレート12や上部ベースプレート11の上面に接合するように構成しても良い。
【0094】
また、上記実施形態の説明では、本発明の引張力受け部材として平面視円形のシャフト14,14を一例に説明したが、本発明の引張力受け部材はこれに限らず、引張力を受ける部材であれば、平面視正方形の角鋼や平面視長方形の細長長尺形状のプレート等でも勿論良い。この場合、上部ベースプレート11に設ける引張力受け部材用通し孔であるシャフト用通し孔13a2,13a2は、丸形状の通し孔に限らず、引張力受け部材の形状に応じて方形状の通し孔や、方形状等のスリットでも勿論良い。同様に、本発明のせん断力受け部材として平面視円形のせん断ダボ18を一例に説明したが、本発明のせん断力受け部材はこれに限らず、平面視正方形の角鋼や平面視長方形のプレート等でも勿論良い。この場合も同様に、上部ベースプレート11に設けるせん断力受け部材通し孔であるせん断ダボ用通し孔13a1も、せん断力受け部材の形状に応じて丸形状の通し孔に限らず、方形状の通し孔や、方形状等のスリットでも良い。
【0095】
また、上記実施形態1,2の説明では、シャフト14に設けるピン挿通孔14aは、上下方向に長い長孔形状で説明したが、本発明では、ピン挿通孔14aは長孔形状に限らず、ドリフトピン6を挿入した際、ピン挿通孔14aの内側面とドリフトピン14の外側面との間に少なくともシャフト14の長手方向にクリアランスが発生し、特に、木製耐力壁5に引張力が作用していないときにドリフトピン6の少なくとも下側にクリアランスが発生するような形状であれば十分で、例えば、ドリフトピン6の外径よりも大きい内径の円形や楕円形等のルーズ孔でも勿論良い。