(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、半導体や液晶製造分野を中心として、生産効率を向上させるために、放電ランプの大電力化が進んでいる。放電ランプへの印加電圧は電極間距離等の要素によって決まることから、放電ランプの大電力化は主に放電ランプの点灯電流を大きくすることによって行われる。
【0006】
このため、上述した特許文献1に開示された放電ランプ等に比べてより大きな点灯電流を流すことのできる放電ランプの封止構造が求められている。
【0007】
本発明は、このような従来技術の問題に鑑みて開発されたものである。それゆえに本発明の主たる課題は、従来の放電ランプよりも大きな点灯電流を流すことのできる放電ランプの封止構造、およびそれを備える放電ランプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)
本発明の一局面によれば、
内部空間を有する発光管部と封止部とを有する発光管と、
前記内部空間に配置された電極を支持する電極支持棒と、
前記電極支持棒に電気的に接続された電極側分電板と、
外部リード棒と、
前記外部リード棒に電気的に接続された外側分電板と、
前記封止部内に配置され、前記封止部の内面と融着するガラス部材と、
前記封止部内に配置され、前記電極側分電板と前記外側分電板とを電気的に接続する通電部材とを備えており、
前記通電部材は、少なくとも、第1通電材および第2通電材を有しており、
前記第1通電材は、前記第2通電材よりも前記封止部の中心側に配設されており、
前記第1通電材および前記第2通電材は、一端が前記電極側分電板に電気的に接続されているとともに他端が前記外側分電板に電気的に接続されており、かつ、前記電極側分電板と前記外側分電板との間で互いに直接的かつ電気的に接触しないように配設されており、
前記ガラス部材は、少なくとも、前記第1通電材よりも前記封止部の中心側に配設された第1ガラス材、および、前記第1通電材と前記第2通電材との間に配設された第2ガラス材を有している
放電ランプの封止構造が提供される。
【0009】
(2)
好適には、前記電極側分電板は、少なくとも、第1分電材および第2分電材を有しており、
前記第1通電材は、前記第1分電材に接続されており、
前記第2通電材は、前記第2分電材に接続されている。
【0010】
(3)
好適には、前記外側分電板は、少なくとも、外側第1分電材および外側第2分電材を有しており、
前記第1通電材は、前記外側第1分電材に接続されており、
前記第2通電材は、前記外側第2分電材に接続されている。
【0011】
(4)
本発明の他の局面によれば、
上述したような封止構造を備える放電ランプが提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、電極側分電板と外側分電板とを電気的に接続する通電部材が、少なくとも、第2通電材と、これよりも封止部の中心側において、電極側分電板と外側分電板との間で第2通電材に対して直接的かつ電気的に接触しない第1通電材とを有している。つまり、本発明の放電ランプには電流の流路が複数用意されている。これにより、従来の放電ランプよりも大きな点灯電流を流すことのできる放電ランプの封止構造、およびそれを備える放電ランプを提供することができた。
【0013】
また、従来の放電ランプのように通電部材が1重の構造では、通電部材に流れる電流が大きくなると通電部材を構成する部材(例えば、金属箔)の幅が広くなるとともに当該部材の枚数が増加する。これに伴い、通電部材を構成する部材同士の隙間が狭くなることからガラス部材と発光管とが互いに密着する面積が減少する。この結果、発光管部の耐圧強度が低下する。しかしながら、本発明に係る封止構造によれば、電流の大きさに応じて通電部材を構成する通電材を増やすことにより、各通電材を構成する部材(例えば、金属箔)の幅や枚数を増加させる必要がなくなる。これにより、各通電材を構成する部材同士の隙間、すなわちガラス材同士、および、ガラス材と発光管との密着面積が減少しないので、発光管部の耐圧強度が低下するのを回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明が適用された放電ランプ10の一例を示す図である。
【
図2】本発明が適用された放電ランプ10の封止構造の一例を示す拡大図である。
【
図3】本発明が適用された放電ランプ10の封止構造の一例を示す拡大断面図である。
【
図4】電極側分電板18の一例を示す分解斜視図である。
【
図5】電極側分電板18の一例を示す断面図である。
【
図6】外側分電板22の一例を示す分解斜視図である。
【
図8】ガラス部材24の一例を示す分解斜視図である。
【
図10】通電部材26の一例を示す分解斜視図である。
【
図11】環状ガラス部材28の一例を示す斜視図である。
【
図12】実施例に係る封止構造の製造手順を説明するための正面図である。
【
図13】実施例に係る封止構造の製造手順を説明するための断面図である。
【
図14】実施例に係る封止構造の製造手順を説明するための断面図である。
【
図15】実施例に係る封止構造の製造手順を説明するための断面図である。
【
図16】実施例に係る封止構造の製造手順を説明するための断面図である。
【
図17】実施例に係る封止構造の製造手順を説明するための断面図である。
【
図18】実施例に係る封止構造の製造手順を説明するための断面図である。
【
図19】実施例に係る封止構造の製造手順を説明するための断面図である。
【
図20】実施例に係る封止構造の製造手順を説明するための断面図である。
【
図21】実施例に係る封止構造の製造手順を説明するための断面図である。
【
図22】実施例に係る封止構造の製造手順を説明するための断面図である。
【
図23】変形例に係る放電ランプ10の封止構造を示す断面図である。
【
図24】変形例に係る電極側分電板18を示す分解斜視図である。
【
図25】変形例に係る外側分電板22を示す分解斜視図である。
【
図26】変形例に係る封止構造の製造手順を説明するための断面図である。
【
図27】変形例に係る封止構造の製造手順を説明するための断面図である。
【
図28】変形例に係る封止構造の製造手順を説明するための断面図である。
【
図29】他の変形例に係る通電部材26を構成する第1通電材62を示す斜視図である。
【
図30】さらに別の変形例に係る通電部材26を構成する第1通電材62を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(本発明に係る封止構造について)
以下、本発明に係る封止構造が適用された放電ランプ10について説明する。放電ランプ10は、
図1〜
図3に示すように、大略、発光管12と、電極14と、電極支持棒16と、電極側分電板18と、外部リード棒20と、外側分電板22と、ガラス部材24と、通電部材26と、環状ガラス部材28とを備えている。なお、本実施例に係る放電ランプ10の定格電力としては1kW以上40kW以下が想定される。
【0016】
発光管12は、石英ガラスで形成されており、内部空間30を有する発光管部32をその中央部に有しているとともに、当該発光管部32から延出する一対の封止部34を有している。なお、発光管部32の外径は40mm以上300mm以下が想定され、封止部34の外径は25mm以上50mm以下が想定される。また、発光管部32の長手方向の長さは電極14の大きさなどに応じて適切に調節される。さらに、封止部34の長手方向の長さは通電部材26の長さなどに応じて適切に調節される。また、多くの放電ランプ10では、外部リード棒20の先端に口金(図示せず)を接続し、この口金と封止部34の端部とを接着剤で固定した状態で使用される。
【0017】
内部空間30には、発光に必要な水銀、および、主にキセノンやアルゴンなどの不活性ガスが封入されている。また、水銀の封入量は1mg/cm
3以上24mg/cm
3以下が想定される。さらに、この水銀封入量の範囲において想定される点灯時の内部空間30の圧力として2atm以上20atm以下が想定される。また、水銀の発光により、365nmなどの輝線スペクトルが生じる。なお、両封止部34における封止構造は互いに同じものであることから、以下の説明では、基本的に一方の(
図1における左側の封止部34の)封止構造について説明し、他方の封止構造についてはこれを援用する。
【0018】
一対の電極14は、放電ランプ10に印加された高電圧によってアーク放電が形成される部材であり、純タングステンやトリウムタングステンなどタングステンを主成分とする高融点金属で形成されている。直流用の放電ランプ10の場合、
図1に示すように右方の電極14(陽極)の方が左方の電極14(陰極)よりも大きくなるように形成されている。図示しないが、交流用の放電ランプの場合、両電極14は互いに同じ大きさに形成される。なお、電極14の大きさは放電ランプ10の定格電力に応じて適切な大きさが選択される。また、一対の電極14間の距離は、2mm以上40mm以下が想定される。さらに、陽極側の電極14内に密閉空間(図示せず)を設け、この密閉空間内に伝熱体を封入してもよい。伝熱体にはタングステンよりも融点が低い金属が選択される。
【0019】
電極支持棒16は、タングステンやモリブデンといった高融点金属で形成された棒状の部材であり、一端に電極14が取り付けられている。なお、本実施例では、電極14と電極支持棒16とが別部材として形成されているが、これに限定されるものではなく、例えばタングステンを用いて電極14と電極支持棒16とを一体的に形成してもよい。
【0020】
電極側分電板18は、タングステンやモリブデンといった高融点金属で形成された略円板状の部材であり、電極支持棒16と通電部材26とを互いに電気的に接続する役割を有している。本実施例に係る電極側分電板18は、
図4および
図5に示すように、第1分電材102と、第2分電材104と、第3分電材106とで構成されている。
【0021】
第1分電材102は、リング状の平板部材であり、その外径は、第2分電材104の内径よりもやや小さくなるように形成されている。また、第1分電材102の内側には電極支持棒16の他端が差し込まれる電極支持棒取付孔38が形成されている。なお、第1分電材102の外径は、天面102a(電極側分電板18を構成したときに電極支持棒16が挿入される面)側よりも底面102b側の方が大きくなるように形成されている。つまり、第1分電材102の断面は、天面102aから底面102bに向けて外径が徐々に大きくなるテーパー形状となっている。もちろん、天面102a側の外径の寸法と、底面102b側の外径の寸法とが互いに一致するように形成してもよい。
【0022】
第2分電材104も、第1分電材102と同様、リング状の平板部材であり、その外径は第3分電材106の内径よりもやや小さくなるように形成されており、また、内径は上述のように第1分電材102の外径よりもやや大きくなるように形成されている。なお、第2分電材104の外径および内径も、それぞれ、天面104a(電極側分電板18を構成したときに電極支持棒16が挿入される面)側よりも底面104b側の方が大きくなるように形成されている。つまり、第2分電材104の断面は、天面104aから底面104bに向けて外径および内径が徐々に大きくなるテーパー形状となっている。また、第2分電材104の内径のテーパー角度は、第1分電材102の外径のテーパー角度とほぼ一致するようになっている。もちろん、天面104a側の外径および内径の寸法と、底面104b側の外径および内径の寸法とが互いに一致するように形成してもよい。
【0023】
第3分電材106もリング状の平板部材であり、その内径は上述のように第2分電材104の外径よりもやや大きくなるように形成されている。なお、第3分電材106の外径および内径も、天面106a(電極側分電板18を構成したときに電極支持棒16が挿入される面)側よりも底面106b側の方が大きくなるように形成されている。つまり、第3分電材106の断面は、天面106aから底面106bに向けて外径および内径が徐々に大きくなるテーパー形状となっている。また、第3分電材106の内径および外径のテーパー角度は、第2分電材104の外径のテーパー角度とほぼ一致するようになっている。もちろん、天面106a側の外径および内径の寸法と、底面106b側の外径および内径の寸法とが互いに一致するように形成してもよい。
【0024】
つまり、第1分電材102、第2分電材104、および、第3分電材106を組み合わせて1枚の円盤(すなわち、電極側分電板18)を形成できるようになっている。なお、第1分電材102の外径と第2分電材104の外径との差の1/2は第2ガラス材49(後述)の厚さと一致し、第2分電材104の外径と第3分電材106の外径との差の1/2は第3ガラス材50(後述)の厚さと一致するようになっている。また、各分電材102,104,106の外径や厚さは放電ランプ10の定格入力電流に応じて適切な寸法が設定される。
【0025】
図1〜
図3に戻り、外部リード棒20は、電源(図示せず)に接続されたリード線(図示せず)が取り付けられて、電源からの高電圧を放電ランプ10に印加するのに用いられるモリブデン製の棒状の部材である。外部リード棒20の一端は発光管12の封止部34から外部に突出するように配置されている。また、外部リード棒20の他端は封止部34内において外側分電板22に接続されている。
【0026】
外側分電板22も、上述した電極側分電板18と同様、タングステンやモリブデンといった高融点金属で形成された略円板状の部材であり、外部リード棒20と通電部材26とを互いに電気的に接続する役割を有している。本実施例に係る外側分電板22は、
図6および
図7に示すように、外側第1分電材110と、外側第2分電材112と、外側第3分電材114とで構成されている。
【0027】
外側第1分電材110は、リング状の平板部材であり、その外径は、外側第2分電材112の内径よりもやや小さくなるように形成されている。また、外側第1分電材110の内側には外部リード棒20の他端が差し込まれる外部リード棒取付孔44が形成されている。なお、外側第1分電材110の外径は、天面110a(外側分電板22を構成したときに外部リード棒20が挿入される面)側よりも底面110b側の方が大きくなるように形成されている。つまり、外側第1分電材110の断面は、天面110aから底面110bに向けて外径が徐々に大きくなるテーパー形状となっている。もちろん、天面110a側の外径の寸法と、底面110b側の外径の寸法とが互いに一致するように形成してもよい。
【0028】
外側第2分電材112も、外側第1分電材110と同様、リング状の平板部材であり、その外径は外側第3分電材114の内径よりもやや小さくなるように形成されており、また、内径は上述のように外側第1分電材110の外径よりもやや大きくなるように形成されている。なお、外側第2分電材112の外径および内径も、それぞれ、天面112a(外側分電板22を構成したときに外部リード棒20が挿入される面)側よりも底面112b側の方が大きくなるように形成されている。つまり、外側第2分電材112の断面は、天面112aから底面112bに向けて外径および内径が徐々に大きくなるテーパー形状となっている。また、外側第2分電材112の内径のテーパー角度は、外側第1分電材110の外径のテーパー角度とほぼ一致するようになっている。もちろん、天面112a側の外径および内径の寸法と、底面112b側の外径および内径の寸法とが互いに一致するように形成してもよい。
【0029】
外側第3分電材114もリング状の平板部材であり、その内径は上述のように外側第2分電材112の外径よりもやや大きくなるように形成されている。なお、外側第3分電材114の外径および内径も、天面114a(外側分電板22を構成したときに外部リード棒20が挿入される面)側よりも底面114b側の方が大きくなるように形成されている。つまり、外側第3分電材114の断面は、天面114aから底面114bに向けて外径および内径が徐々に大きくなるテーパー形状となっている。また、外側第3分電材114の内径および外径のテーパー角度は、外側第2分電材112の外径のテーパー角度とほぼ一致するようになっている。もちろん、天面114a側の外径および内径の寸法と、底面114b側の外径および内径の寸法とが互いに一致するように形成してもよい。
【0030】
つまり、外側第1分電材110、外側第2分電材112、および、外側第3分電材114を組み合わせて1枚の円盤(すなわち、外側分電板22)を形成することができる。なお、外側第1分電材110の外径と外側第2分電材112の外径との差は第2ガラス材49の厚さと一致し、外側第2分電材112の外径と外側第3分電材114の外径との差は第3ガラス材50の厚さと一致するようになっている。また、各分電材110,112,114の外径や厚みは放電ランプ10の定格入力電流に応じて適切な寸法が設定される。
【0031】
ガラス部材24は、封止部34内に配置され、当該封止部34の内面と融着して発光管部32の内部空間30を気密する石英ガラス製の部材であり、本実施例では、
図8および
図9に示すように、第1ガラス材48と、第2ガラス材49と、第3ガラス材50とで構成されている。
【0032】
第1ガラス材48は略円柱状の部材であり、その外径は第2ガラス材49の第1貫通孔52の径よりもやや小さく形成されている。また、第1ガラス材48の外径は、電極側分電板18を構成する第1分電材102の外径、および、外側分電板22を構成する外側第1分電材110の外径とほぼ同一に形成されている。
【0033】
第2ガラス材49は、第1ガラス材48よりも大径の略円筒状の部材であり、この第2ガラス材49に形成された第1貫通孔52の径は、第1ガラス材48の外径よりもやや大きく形成されている。これにより、第2ガラス材49は、第1ガラス材48をその第1貫通孔52内に収めることができる。また、第2ガラス材49の外径は、電極側分電板18を構成する第2分電材104の外径、および、外側分電板22を構成する外側第2分電材112の外径とほぼ同一に形成されている。
【0034】
第3ガラス材50は略円筒状の部材であり、この第3ガラス材50に形成された第2貫通孔53の径は、第2ガラス材49の外径よりもやや大きく形成されている。これにより、第3ガラス材50は、第2ガラス材49をその第2貫通孔53内に収めることができる。また、第3ガラス材50の外径は、電極側分電板18を構成する第3分電材106の外径、および、外側分電板22を構成する外側第3分電材114の外径とほぼ同一に形成されている。
【0035】
なお、第1ガラス材48、第2ガラス材49、および、第3ガラス材50の長手方向の長さは、互いに同じ長さに形成されている。
【0036】
通電部材26は、電極側分電板18と外側分電板22とを電気的に互いに接続する役割を有するモリブデン製の部材であり、
図10に示すように、本実施例では、第1通電材62と第2通電材63と第3通電材64とで構成されている。これら各通電材62,63,64は、電極側分電板18と外側分電板22との間で直接的かつ電気的に互いに接触しないように互いに離間するように配設されている。さらに言えば、各通電材62,63,64は、電極側分電板18および外側分電板22を介してのみ電気的に接続されていることが好ましい。
【0037】
第1通電材62は、略短冊状に形成されたモリブデン製の金属箔66を複数枚(本実施例では4枚)用いて構成されている。第1通電材62を構成する金属箔66は、ガラス部材24を構成する第1ガラス材48の外側面において第1ガラス材48の長手方向に沿って配置される。また、第1通電材62を構成する金属箔66の長さは、第1ガラス材48の長手方向の長さよりも少し長く、第1ガラス材48の上端および下端から金属箔66が少しはみ出るように設定されている。
【0038】
第2通電材63も、第1通電材62と同様、略短冊状に形成されたモリブデン製の金属箔66を複数枚(本実施例では4枚)用いて構成されている。第2通電材63を構成する金属箔66は、ガラス部材24を構成する第2ガラス材49の外側面において第2ガラス材49の長手方向に沿って配置される。また、第2通電材63を構成する金属箔66の長さは、第2ガラス材49の長手方向の長さよりも少し長く、第2ガラス材49の上端および下端から金属箔66が少しはみ出るように設定されている。
【0039】
第3通電材64も同様に、略短冊状に形成されたモリブデン製の金属箔66を複数枚(本実施例では4枚)用いて構成されている。第3通電材64を構成する金属箔66は、ガラス部材24を構成する第3ガラス材50の外側面において第3ガラス材50の長手方向に沿って配置される。また、第3通電材64を構成する金属箔66の長さは、第3ガラス材50の長手方向の長さよりも少し長く、第3ガラス材50の上端および下端から各金属箔66が少しはみ出るように設定されている。
【0040】
なお、通電部材26を構成する各金属箔66は、それぞれ、1枚分の幅が1.5mm以上20mm以下であり、長さが40mm以上150mm以下であり、厚さが10μm以上40μm以下であることが想定されている。
【0041】
環状ガラス部材28は、必要に応じて設けられる部材であり、封止部34において、電極側分電板18よりも発光管部32の内部空間30に近い側、および、外側分電板22よりも外側の少なくともいずれか一方に配置される。この環状ガラス部材28は、
図11に示すように、石英ガラス製の略円柱状の本体部70と、当該本体部70の略中心部に形成された貫通孔72とを有している。貫通孔72は、電極支持棒16あるいは外部リード棒20が挿通される孔である。つまり、環状ガラス部材28が電極側分電板18よりも発光管部32の内部空間30に近い側に配置される場合、貫通孔72には電極支持棒16が挿通されることになり、環状ガラス部材28が外側分電板22よりも外側に配置される場合、貫通孔72には外部リード棒20が挿通されることになる。なお、本実施例では、電極側分電板18よりも発光管部32の内部空間30に近い側、および、外側分電板22よりも外側の両方に環状ガラス部材28が設けられている。
【0042】
(本実施例に係る封止構造の製造手順)
次に、本実施例に係る封止構造の製造手順について説明する。予め、電極支持棒16の一端に電極14を接続しておくとともに、電極側分電板18を構成する第1分電材102の電極支持棒取付孔38に電極支持棒16の他端を挿入した後、電極支持棒16と第1分電材102とを溶接等の手段で互いに接続しておく。また、外側分電板22を構成する外側第1分電材110の外部リード棒取付孔44に外部リード棒20の他端を挿入した後、外部リード棒20と外側第1分電材110とを溶接等の手段で互いに接続しておく。なお、電極側分電板18を構成する第1分電材102と電極支持棒16とを先に溶接接続しておき、最終マウント154(後述)を組み立てた後、環状ガラス部材28の本体部70に電極支持棒16を通し、然る後、電極支持棒16の一端に電極14を接続してもよい。
【0043】
然る後、
図12に示すように、第1ガラス材48の天面48aに第1分電材102の底面102bを当接させるとともに、第1ガラス材48の底面48bに外側第1分電材110の底面110bを当接させる。このとき、第1ガラス材48の側面と、第1分電材102の外周面と、外側第1分電材110の外周面とは、それぞれ面一になっている。なお、図示しないが、第1ガラス材48の天面48aと第1分電材102の底面102bとの間、および、第1ガラス材48の底面48bと外側第1分電材110の底面110bとの間の少なくともいずれか一方に緩衝材としての金属薄円板(図示せず)を挟むようにしてもよい。この金属薄円板は電極側分電板18や外側分電板22を構成する1要素である。金属薄円板はその径が第1ガラス材48の天面48aや底面48bの径とほぼ同じかやや小さく形成されている。また、この金属薄円板と第1通電材62とは、互いに電気的に接続されていてもよいし、接続されていなくてもよい。
【0044】
次に、
図13に示すように、第1通電材62を構成する複数の金属箔66を第1ガラス材48の側面における長手方向に沿って配設する。上述のように、金属箔66は、第1ガラス材48の長手方向の長さよりも少し長く設定されているので、第1通電材62を構成する金属箔66の一端は第1分電材102の外周面に達するとともに、他端は外側第1分電材110の外周面に達している。然る後、各金属箔66の一端と第1分電材102とを溶接等の手段で電気的に接続させるとともに、各金属箔66の他端と外側第1分電材110とを溶接等の手段で電気的に接続させる(第1分電材102と第2分電材104とで金属箔66を挟むことだけで電気的に接続してもよい。以下同じ。)。以上により、電極支持棒16と、外部リード棒20と、第1分電材102と、外側第1分電材110と、第1ガラス材48と、第1通電材62とで、1次マウント150が構成される。
【0045】
図14に示すように、この1次マウント150をガラス管Xに挿入した後、当該ガラス管Xを外部から加熱する等の手段によってガラス管Xを収縮(シュリンク)させ、第1通電材62が存在しない部分において第1ガラス材48の側面に密着させ、ガラス管Xと第1ガラス材48とで第1通電材62を挟み込む。然る後、第1ガラス材48と第1分電材102との境、および、第1ガラス材48と外側第1分電材110との境でガラス管Xをカットする。
図15に示すように、カット後に残存する、第1ガラス材48の側面に密着したガラス管Xの一部分が第2ガラス材49となる。
【0046】
そして、
図16に示すように、第1分電材102の外周に第2分電材104を配置するとともに、外側第1分電材110の外周に外側第2分電材112を配設する。このとき、第1分電材102の外周面および第2分電材104の内周面、また、外側第1分電材110の外周面および外側第2分電材112の内周面で、それぞれ、第1通電材62を構成する金属箔66を挟むようになる。なお、図示しないが、第2ガラス材49の天面49aと第2分電材104の底面104bとの間、および、第2ガラス材49の底面49bと外側第2分電材112の底面112bとの間の少なくともいずれか一方に緩衝材としてのリング状の金属薄円板(図示せず)を挟むようにしてもよい。この金属薄円板は電極側分電板18や外側分電板22を構成する1要素である。金属薄円板はその外径が第2ガラス材49の天面49aや底面49bの外径とほぼ同じかやや小さく形成されている。また、金属薄円板の内径は、第1ガラス材48の天面48aや底面48bの外径よりもやや大きく形成されている。さらに、この金属薄円板と第2通電材63とは、互いに電気的に接続されていてもよいし、接続されていなくてもよい。
【0047】
続いて、
図17に示すように、第2通電材63を構成する複数の金属箔66を第2ガラス材49の側面において長手方向に沿って配設する。上述のように、この金属箔66は、第2ガラス材49の長手方向の長さよりも少し長く設定されているので、第2通電材63を構成する金属箔66の一端は第2分電材104の外周面に達するとともに、他端は外側第2分電材112の外周面に達している。然る後、各金属箔66の一端と第2分電材104とを溶接等の手段で電気的に接続させるとともに、各金属箔66の他端と外側第2分電材112とを溶接等の手段で電気的に接続させる。以上により、電極支持棒16と、外部リード棒20と、第1分電材102と、外側第1分電材110と、第1ガラス材48と、第1通電材62と、第2分電材104と、外側第2分電材112と、第2ガラス材49と、第2通電材63とで、2次マウント152が構成される。
【0048】
図18に示すように、この2次マウント152をガラス管Yに挿入した後、当該ガラス管Yを外部から加熱する等の手段によってガラス管Yを収縮(シュリンク)させ、第2通電材63が存在しない部分において第2ガラス材49の側面に密着させる。然る後、第2ガラス材49と第2分電材104との境、および、第2ガラス材49と外側第2分電材112との境でガラス管Yをカットする。
図19に示すように、カット後に残存する、第2ガラス材49の側面に密着したガラス管Yの一部分が第3ガラス材50となる。
【0049】
次に、
図20に示すように、第2分電材104の外周に第3分電材106を配置するとともに、外側第2分電材112の外周に外側第3分電材114を配設する。このとき、第2分電材104の外周面および第3分電材106の内周面、また、外側第2分電材112の外周面および外側第3分電材114の内周面で、それぞれ、第2通電材63を構成する金属箔66を挟むようになる。なお、図示しないが、第3ガラス材50の天面50aと第3分電材106の底面106bとの間、および、第3ガラス材50の底面50bと外側第3分電材114の底面114bとの間の少なくともいずれか一方に緩衝材としてのリング状の金属薄円板(図示せず)を挟むようにしてもよい。この金属薄円板は電極側分電板18や外側分電板22を構成する1要素である。金属薄円板はその外径が第3ガラス材50の天面50aや底面50bの外径とほぼ同じかやや小さく形成されている。また、金属薄円板の内径は、第2ガラス材49の天面49aや底面49bの外径よりもやや大きく形成されている。さらに、この金属薄円板と第3通電材64とは、互いに電気的に接続されていてもよいし、接続されていなくてもよい。
【0050】
続いて、
図21に示すように、第3通電材64を構成する複数の金属箔66を第3ガラス材50の側面において長手方向に沿って配設する。上述のように、この金属箔66は、第3ガラス材50の長手方向の長さよりも少し長く設定されているので、第3通電材64を構成する金属箔66の一端は第3分電材106の外周面に達するとともに、他端は外側第3分電材114の外周面に達している。然る後、各金属箔66の一端と第3分電材106とを溶接等の手段で電気的に接続させるとともに、各金属箔66の他端と外側第3分電材114とを溶接等の手段で電気的に接続させる。以上により、電極支持棒16と、外部リード棒20と、第1分電材102と、外側第1分電材110と、第1ガラス材48と、第1通電材62と、第2分電材104と、外側第2分電材112と、第2ガラス材49と、第2通電材63と、第3分電材106と、外側第3分電材114と、第3ガラス材50と、第3通電材64とで、最終マウント154が構成される。
【0051】
図22に示すように、最終マウント154における電極支持棒16および外部リード棒20にそれぞれ環状ガラス部材28を取り付け、発光管12の端部(封止部34となる部分)に挿入した後、この発光管12の端部を外部から加熱する等の手段によって収縮(シュリンク)させることによって第3ガラス材50および両環状ガラス部材28と、発光管12の端部とを互いに密着させる。以上により、封止部34が形成され、封止構造が完成する(
図3を参照)。
【0052】
(本実施例に係る封止構造の特徴)
本実施例に係る封止構造によれば、電極側分電板18と外側分電板22とを電気的に接続する通電部材26が3つの通電材62,63,64で構成されており、放電ランプ10に流れる電流の流路が3つ存在することから、従来の放電ランプよりも大きな点灯電流を流すことができる。
【0053】
また、従来の放電ランプのように通電部材が1重の構造では、通電部材に流れる電流が大きくなると通電部材を構成する箔の幅が広くなるとともに箔の枚数が増加する。これに伴い、箔同士の隙間が狭くなることからガラス部材と発光管とが互いに密着する面積が減少する。この結果、発光管部の耐圧強度が低下する。しかしながら、本実施例に係る封止構造によれば、電流の大きさに応じて通電部材26を構成する通電材62,63,64を増やすことにより、各通電材62,63,64を構成する金属箔66の幅や枚数を増加させる必要がなくなる。これにより、各金属箔66同士の隙間、すなわち各ガラス材48,49,50同士、および、第3ガラス材50と発光管12との密着面積が減少しないので、発光管部32の耐圧強度が低下するのを回避できる。
【0054】
(変形例1)
上述した実施例における電極側分電板18および外側分電板22に代えて、
図23〜
図25に示すような形状の電極側分電板18および外側分電板22を使用してもよい。この変形例1に係る電極側分電板18および外側分電板22は、それぞれ、第1〜第3分電材102,104,106、および、外側第1〜第3分電材110,112,114で構成されている。
【0055】
変形例1に係る第1〜第3分電材102,104,106は、それぞれ略リング状に形成されており、かつ、中心部に電極支持棒16が挿通できる程度の電極支持棒挿通孔120が形成されている。また、第1分電材102の外径よりも第2分電材104の外径の方が大きく形成されており、さらに、第2分電材104の外径よりも第3分電材106の外径の方が大きく形成されている。なお、第1分電材102の外径と第2分電材104の外径との差の1/2は第2ガラス材49の厚さと一致し、第2分電材104の外径と第3分電材106の外径との差の1/2は第3ガラス材50の厚さと一致するようになっている。
【0056】
変形例1に係る外側第1〜第3分電材110,112,114も同様に、それぞれ略リング状に形成されており、かつ、中心部に外部リード棒20が挿通できる程度の外部リード棒挿通孔122が形成されている。また、外側第1分電材110の外径よりも外側第2分電材112の外径の方が大きく形成されており、さらに、外側第2分電材112の外径よりも外側第3分電材114の外径の方が大きく形成されている。なお、外側第1分電材110の外径と外側第2分電材112の外径との差の1/2は第2ガラス材49の厚さと一致し、外側第2分電材112の外径と外側第3分電材114の外径との差の1/2は第3ガラス材50の厚さと一致するようになっている。
【0057】
次に、変形例1に係る電極側分電板18および外側分電板22を用いて封止構造を製造する手順について説明する。なお、変形例1に係る封止構造の製造手順において上述した封止構造の製造手順と共通する内容については上記手順を援用し、製造手順のうち相違する内容についてのみ説明する。
【0058】
図26に示すように、1次マウント150をガラス管Xに挿入し、加熱により収縮させた当該ガラス管Xを第1分電材102の外周面における天面102a側の縁付近、および、外側第1分電材110の外周面における天面110a側の縁付近でカットする。カット後に残存する、第1ガラス材48の側面、第1分電材102の外周面、および、外側第1分電材110の外周面のそれぞれに密着したガラス管Xの一部が第2ガラス材49となる。
【0059】
然る後、
図27に示すように、第2分電材104に形成された電極支持棒挿通孔120に電極支持棒16を挿通していき、第1分電材102の天面102aに第2分電材104の底面104bを当接させた後、第1分電材102と第2分電材104とを溶接等で電気的に接続させる。この状態で、第2ガラス材49の側面と第2分電材104の外周面とが面一になっている。
【0060】
外側第2分電材112に形成された外部リード棒挿通孔122に外部リード棒20を挿通していき、外側第1分電材110の天面110aに外側第2分電材112の底面112bを当接させた後、外側第1分電材110と外側第2分電材112とを溶接等で電気的に接続させる。この状態で、第2ガラス材49の側面と外側第2分電材112の外周面とが面一になっている。
【0061】
さらに、第2通電材63を配設して2次マウント152を構成した後、
図28に示すように、この2次マウント152をガラス管Yに挿入し、加熱により収縮させた当該ガラス管Yを第2分電材104の外周面における天面104a側の縁付近、および、外側第2分電材112の外周面における天面112a側の縁付近でカットする。カット後に残存する、第2ガラス材49の側面、第2分電材104の外周面、および、外側第2分電材112の外周面のそれぞれに密着したガラス管Yの一部が第3ガラス材50となる。
【0062】
その後、第3分電材106、外側第3分電材114、および、第3通電材64を配設して最終マウント154を構成し、この最終マウント154および環状ガラス部材28を発光管12の端部に挿入して当該端部を収縮(シュリンク)させて封止部34を形成することにより、封止構造が完成する(
図23を参照)。
【0063】
(変形例2)
上述した実施例において、電極側分電板18および外側分電板22はそれぞれ3つの部材で構成されていたが、電極側分電板18および外側分電板22をそれぞれ2つの部材、あるいは、4つ以上の部材で構成してもよい。
【0064】
(変形例3)
上述した実施例において、通電部材26は3つの部材で構成されていたが、通電部材26を2つの通電材、あるいは、4つ以上の通電材で構成してもよい。なお、電極側分電板18および外側分電板22をそれぞれ構成する部材の数と、通電部材26を構成する部材の数と、ガラス部材24を構成する部材の数とを互いに一致させるのが好ましい。
【0065】
(変形例4)
上述した実施例では、電極支持棒16と電極側分電板18を構成する第1分電材102とが別体として構成されているが、これらを一体的に形成してもよい。同様に、外部リード棒20と外側分電板22を構成する外側第1分電材110とを、別体ではなく一体的に形成してもよい。
【0066】
(変形例5)
上述した実施例では、通電部材26を構成する各通電材62,63,64は、それぞれ略短冊状に形成された複数の金属箔66で構成されているが、これに代えて、
図29や
図30に示すように、金属箔で構成した円筒の表面に幾つかの切欠部130を設けた形状を採用してもよい(なお、
図29や
図30には、例として第1通電材62を示しているが、第2通電材63や第3通電材64もこれと同様の形状となる)。これら切欠部130を介して円筒の内側にあるガラス材と外側にあるガラス材とが互いに融着して気密性を高めることになる。したがって、放電ランプ10に求められる、発光管部32における内部空間30の耐圧性能に応じて、切欠部130の面積と金属箔部分の面積との比率を最適化するのが好ましい。さらに言えば、通電部材26を構成する各通電材62,63,64すべてに同じ形状を採用する必要はなく、例えば、第1通電材62には金属箔円筒の表面に幾つかの切欠部130を設けた形状を採用し、第3通電材64には略短冊状に形成された複数の金属箔を採用してもよい。
【0067】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。