(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6727861
(24)【登録日】2020年7月3日
(45)【発行日】2020年7月22日
(54)【発明の名称】乗用電動草刈機
(51)【国際特許分類】
A01D 34/64 20060101AFI20200713BHJP
H01M 2/10 20060101ALI20200713BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20200713BHJP
【FI】
A01D34/64 A
H01M2/10 E
H01M2/10 M
H01M2/10 S
H01M10/48 P
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-48159(P2016-48159)
(22)【出願日】2016年3月11日
(65)【公開番号】特開2017-158516(P2017-158516A)
(43)【公開日】2017年9月14日
【審査請求日】2018年6月26日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】伊東 寛和
(72)【発明者】
【氏名】萬治 寧大
【審査官】
門 良成
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−298805(JP,A)
【文献】
特開2001−095110(JP,A)
【文献】
特開2015−216814(JP,A)
【文献】
特開2014−147353(JP,A)
【文献】
特開2011−188789(JP,A)
【文献】
米国特許第06072250(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 34/00
A01D 69/00
H01M 2/00
H01M 10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のバッテリ装着部と、
前記バッテリ装着部に着脱可能に装着される複数のバッテリパックと、
前記バッテリ装着部毎に設けられるとともに前記バッテリ装着部に装着された前記バッテリパックと電気接続する複数の本体接点と、
前記複数の本体接点の夫々が並列接続された給電回路と、
前記複数のバッテリパックの夫々から前記給電回路への電気の流れを前記バッテリパック毎に遮断可能な複数のバッテリスイッチと、
前記複数のバッテリスイッチの夫々を個別に操作するスイッチ操作部と、
前記バッテリ装着部に装着された前記複数のバッテリパックの夫々の充電容量を推定する充電容量推定部と、
前記バッテリ装着部に装着された前記複数のバッテリパックの夫々のバッテリ温度を評価する温度評価部と、
少なくとも1つの前記バッテリパックからの前記給電回路を介しての給電によって駆動する電動モータと、
前記電動モータから動力伝達される駆動輪と、を備え、
前記複数のバッテリパックのそれぞれは、前記駆動輪である左右の後輪の車軸の近傍において左右の前記後輪の間に形成され、且つ、前記複数のバッテリパックに対応する複数段のバッテリ装着部のそれぞれの段に、それぞれの段に設けられたスライド機構によりそれぞれのバッテリパックをスライド挿入することにより、それぞれのバッテリパックのバッテリ接点がそれぞれの段に設けられた前記本体接点に連結するように構成され、
前記スイッチ操作部は、前記複数のバッテリパックのうちの前記温度評価部により評価された前記バッテリ温度が基準値よりも高いバッテリパックから、前記給電回路への前記電気の流れを遮断可能な前記バッテリスイッチを切り状態にする乗用電動草刈機。
【請求項2】
前記充電容量が基準値より低いバッテリパックから前記充電容量が基準値より高いバッテリパックに切り替えるように前記スイッチ操作部は自動操作可能である請求項1に記載の乗用電動草刈機。
【請求項3】
前記充電容量が基準値より低いバッテリパックを報知する報知デバイスが備えられ、前記スイッチ操作部は手動操作可能である請求項1または2に記載の乗用電動草刈機。
【請求項4】
前記バッテリスイッチは前記給電回路に介装されている請求項1から3のいずれか一項に記載の乗用電動草刈機。
【請求項5】
前記バッテリスイッチは前記バッテリパックに内装されている請求項1から3のいずれか一項に記載の乗用電動草刈機。
【請求項6】
前記バッテリ装着部には、車体外部から直接前記バッテリパックをスライド挿入させるスライド機構が設けられている請求項1から5のいずれか一項に記載の乗用電動草刈機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリパックから給電される電動モータによって作業走行する
乗用電動
草刈機(以下、電動作業車両
とも称する)に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1及び2には、駆動車輪を駆動する走行用モータと、刈草用のブレードを駆動するブレード用モータと、それぞれのモータに電力を供給する複数のバッテリを備えた自走式乗用電動草刈機が開示されている。この電動草刈機の複数のバッテリは車体後部に平置きにされ、これらのバッテリを上方より覆って保護する保護フレームが車体に固定されている。さらに、保護フレーム及びバッテリは、カウリングによって覆われている。バッテリの交換作業では、複数のバッテリが同時に取り外され、同数の新しいバッテリが取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2012/0186887号明細書
【特許文献2】特開2011−177106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した電動草刈機では、複数のバッテリを備えることで、長時間の作業走行を可能にしているが、充電量が低下すると、一度に複数のバッテリを交換する必要があり、バッテリ交換作業やバッテリ充電に時間がかかるという問題がある。また、長時間作業走行に適合させた複数のバッテリを搭載しているので、短時間の作業走行には過剰な充電量となるだけでなく、バッテリ重量が負担となる。
このような実情に鑑み、種々の作業走行の形態に効率的に対応できるバッテリの搭載が可能な電動作業車両が要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による
乗用電動
草刈機は、複数のバッテリ装着部と、前記バッテリ装着部に着脱可能に装着される
複数のバッテリパックと、前記バッテリ装着部毎に設けられるとともに前記バッテリ装着部に装着された前記バッテリパックと電気接続する
複数の本体接点と、前記
複数の本体接点
の夫々が並列接続された給電回路と、前記
複数のバッテリパック
の夫々から
前記給電回路への電気の流れを
前記バッテリパック毎に遮断
可能な複数のバッテリスイッチと、前記
複数のバッテリスイッチ
の夫々を
個別に操作するスイッチ操作部と、前記バッテリ装着部に装着された前記
複数のバッテリパックの
夫々の充電容量を推定する充電容量推定部と、前記バッテリ装着部に装着された前記
複数のバッテリパックの
夫々のバッテリ温度を評価する温度評価部と、少なくとも1つの前記バッテリパックからの前記給電回路を介しての給電によって駆動する電動モータと、前記電動モータから動力伝達される駆動輪と、を備え、
前記複数のバッテリパックのそれぞれは、前記駆動輪である左右の後輪の車軸の近傍において左右の前記後輪の間に形成され、且つ、前記複数のバッテリパックに対応する複数段のバッテリ装着部のそれぞれの段に、それぞれの段に設けられたスライド機構によりそれぞれのバッテリパックをスライド挿入することにより、それぞれのバッテリパックのバッテリ接点がそれぞれの段に設けられた前記本体接点に連結するように構成され、前
記スイッチ
操作部は、
前記複数のバッテリパックのうちの前記温度評価部によ
り評価された前記バッテリ温度
が基準値よりも高いバッテリパックから、前記給電回路への前記電気の流れを遮断可能な前記バッテリスイッチを切り状態にする。
【0006】
この構成によれば、バッテリ装着部に装着されたバッテリパックは給電回路に並列に接続されるので、任意の数のバッテリパックをバッテリ装着部に装着することができる。1つだけしかバッテリパックが装着されていなくても、電動モータを駆動することができるので、短時間の作業走行の場合には、車両重量が軽くなり、好都合である。また、複数のバッテリパックを装着している場合にも、バッテリパック毎に、給電回路に対する電気接続をバッテリスイッチによって入り切りすることができるので、バッテリパックの多様な使用が可能となる。例えば、装着された複数のバッテリパックのうちの1つだけを予備バッテリパックとしてそのバッテリスイッチを切りとし、その他のバッテリパックで作業走行する。その他のバッテリパックが充電切れした時には、予備バッテリパックのバッテリスイッチを入りとして、充電可能な場所まで走行することができる。これにより、その他のバッテリパックが充電切れするまで、安心して目一杯の作業走行を行うことができる。
【0007】
また、複数のバッテリパックをバッテリ装着部に装着し、全てのバッテリパックを同時に使用するのではなく、順番にバッテリパックを使用していくような場合、使用中のバッテリパックの充電容量が基準値より低くなれば、次のバッテリパックに切り替える必要がある。このような切替作業を確実に行うために、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記充電容量が基準値より低いバッテリパックから前記充電容量が基準値より高いバッテリパックに切り替えるように前記スイッチ操作部は自動操作可能なように構成されている。
【0008】
スイッチ操作部の自動操作機能が付属していない場合や、次に使用するバッテリパックの順番を人為的に任意に選択したい場合は、特定のバッテリパックの充電容量が基準値より低くなったことを把握した段階で、運転者は、対応するバッテリスイッチを操作することになる。このような要望を満足させるために、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記充電容量が基準値より低いバッテリパックを報知する報知デバイスが備えられ、前記スイッチ操作部は手動操作可能なように構成されている。
【0009】
バッテリスイッチに関する本発明の好適な実施形態の1つでは、前記バッテリスイッチは前記給電回路に介装されている。この構成では、各バッテリ装着部に装着されるバッテリパックのためのバッテリスイッチを集約することができる。さらに、バッテリスイッチを内装していない分だけ、バッテリパックのコストが安くなる。また、バッテリ装着部とバッテリパックの間に、バッテリスイッチを操作するための制御信号線のコネクタ・ソケットを設ける必要もない。したがって、この構成は、バッテリ装着部の数より多くのバッテリパックが製作される場合に適している。
【0010】
バッテリスイッチに関する本発明の好適な実施形態の他の1つでは、前記バッテリスイッチは前記バッテリパックに内装されている。この構成では、バッテリスイッチはバッテリパックに内装されているので、バッテリスイッチは、バッテリパックのケースによって、外部環境から保護されるという利点がある。
【0011】
車両の駆動源となるバッテリは、大きな充電容量が要求されるので、大型化し、重くなる。本発明では、車両に必要な充電容量は、複数のバッテリパックに割り振ることができるので、1つのバッテリパックは比較的軽量となるが、なおその取扱いは容易ではない。
特に、バッテリ装着部へのバッテリパックの装着及び同所からの取り外しを人手で行う際には、注意しなければならない。このバッテリパックの装着と取り外しを容易にするため、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記バッテリ装着部には、車体外部から直接前記バッテリパックをスライド挿入させるスライド機構が設けられている。この構成では、バッテリ装着部に装着すべきバッテリパックを一旦スライド機構の入口に載せると、あとはスライド機構によって簡単にバッテリ装着部にスライド挿入できる。さらに、ボンネットやカウリングなどを取り外すことなく、バッテリパックを車体外部から直接スライド挿入できる。これにより、バッテリパックの交換作業負担が少なくなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】電動作業車両に搭載されるバッテリシステムの基本的な構成を説明するための説明図である。
【
図2】バッテリシステムの簡単化された回路図である。
【
図3】電動草刈機の基本構成を示す基本構成側面図である。
【
図6】バッテリパック及びバッテリパックから給電される電動モータを示す模式的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に関わる電動作業車両の具体的な実施形態を説明する前に、
図1と
図2とを用いて、この電動作業車両に搭載されるバッテリシステムの基本的な構成を説明する。この電動作業車両のバッテリシステムでは、小型化かつ軽量化された持ち運び可能なバッテリパック6が用いられる。この電動作業車両の車体には、バッテリパック6のためのバッテリ装着部7が複数(
図1では5つ)設けられている。複数のバッテリパック6は車両バランスに影響を与える重さを持つ。したがって、前輪11と後輪12との間に作業装置Wを配置させているこの電動作業車両では、バッテリ装着部7は、後輪12の車軸付近に配置されている。作業装置Wが後輪12の後に配置される電動作業車両では、バッテリ装着部7は、前輪11の車軸付近や前輪11の前方、あるいは前輪11と後輪12との間に配置される。ただし、車両バランスや配置スペースの関係で、バッテリ装着部7は、この電動作業車両の車体全域に分けて配置してもよい。
【0014】
バッテリパック6は手持ち可能であり、バッテリ装着部7に着脱可能に装着できる。バッテリ装着部7には、バッテリパック6のバッテリ接点6aと電気接続される本体接点7aが設けられている。本体接点7aは、バッテリパック6からの電力を制御ユニット5に供給する給電回路8に並列接続されている。制御ユニット5は、バッテリパック6から供給された電力を用いて、電動モータ4を駆動するモータ制御部51が備えられている。各バッテリ装着部7に装着されるバッテリパック6は給電回路8に並列接続されるので、少なくとも1つ以上のバッテリパック6が装着されていれば、電動モータ4の駆動は可能となる。電動モータ4からの動力は、トランスミッション40を介して、駆動輪である後輪12に伝達される。
【0015】
図1と
図2で示された例では、バッテリ装着部7に装着されたバッテリパック6の給電機能を停止させるため、バッテリパック6との制御ユニット5との接続を遮断するバッテリスイッチ90が給電回路8に設けられている。このバッテリスイッチ90の入り切りを操作するために、制御ユニット5にはスイッチ操作部52が備えられている。スイッチ操作部52からのスイッチ切替信号により、バッテリ装着部7に装着されているバッテリパック6のうちの任意のバッテリパック6の給電機能を開始させたり、停止させたりすることが可能である。なお、バッテリスイッチ90は、バッテリパック6に内装することも可能である。
【0016】
図2で示された例では、制御ユニット5には、充電容量推定部53と温度評価部54とが備えられている。充電容量推定部53は、バッテリ装着部7に装着されたバッテリパック6の充電容量を推定する。温度評価部54は、バッテリ装着部7に装着されたバッテリパック6のバッテリ温度を、バッテリパック6に内装された温度センサ91からの検出信号に基づいて評価する。充電容量推定部53による充電容量の推定結果や温度評価部54によるバッテリ温度の評価結果に基づいて、バッテリスイッチ90の入り切りを制御することができる。例えば、充電容量が基準値より低いバッテリパック6やバッテリ温度が基準値より高いバッテリパック6が検出されると、当該バッテリパック6につながっているバッテリスイッチ90を切り状態にするように、スイッチ操作部52に制御指令を与える。充電容量に関しては、充電されない限り改善されることがないので、予備のバッテリパック6がバッテリ装着部7に装着されておれば、当該バッテリスイッチ90を入り状態するように、スイッチ操作部52に制御指令を与える。これにより、充電容量が基準値より低いバッテリパック6から満充電のバッテリパック6への切り替えが自動的に行われる。
バッテリ温度が基準値より高いバッテリパック6が検出された場合には、しばらくの間、バッテリスイッチ90を切り状態にして、バッテリ温度が基準値より低くなれば、バッテリスイッチ90を入り状態にすることで、バッテリパック6の劣化が抑制される。なお、スイッチ操作部52への制御指令は、手動操作可能なバッテリセレクタ94を通じて出力できるように構成すれば、バッテリパック6の切り替えが人為的に行うことが可能となる。その際、運転者が充電容量の低いバッテリパック6や高温になったバッテリパック6を把握できるように、充電容量推定部53の推定結果や温度評価部54の評価結果を報知する報知デバイス93が備えられる。この推定結果の報知デバイス93は、警報ランプのような報知形態でもよいし、充電容量やバッテリ温度が連続的に把握できるスライドバーのような報知形態でもよい。
【0017】
図1では、模式的にしか示されていないが、バッテリ装着部7には、車体外部から直接バッテリパック6をスライド挿入させるスライド機構10が設けられている。つまり、スライド機構10の挿入口が車体外部に露出可能であり、バッテリパック6の先端を挿入口に挿入すると、スライド機構10によってスムーズにバッテリパック6をバッテリ装着部7に装着することができる。スライド機構10自体はよく知られた構造であり、ガイドレール構造やガイドローラ構造を採用することができる。
【0018】
図1及び
図2で説明したようなバッテリシステムを採用した電動作業車両の具体的な実施形態の1つを説明する。
図3は、電動作業車両の一例である電動草刈機の基本構成を示す基本構成側面図であり、
図4は電動草刈機の平面図であり、
図5はバッテリパック6と、バッテリパック6から給電される電動モータ4とを示す模式的な平面図である。
図3と
図4と
図5とに示されているように、電動草刈機(以下単に草刈機と称する)は、左右一対の前輪11と回転駆動される駆動車輪としての左右一対の後輪12とによって対地支持された車体を構成する車体フレーム2を備えている。車体フレーム2は左右一対の前フレーム21と後フレーム22とからなる。前輪11と後輪12との間で、作業装置Wとしてのモーアユニット13がリンク機構14を介し前フレーム21から吊り下げられている。
モーアユニット13には、ブレード伝動機構131と、このブレード伝動機構131によって回転するブレード132が備えられている。車体フレーム2の機体前後方向中央領域に運転部16が配置されている。この運転部16において、運転座席16aが、車体フレーム2に座席支持体を介して配置されている。
【0019】
図6に示されているように、前フレーム21の後端領域には、左右の前フレーム21の間に、駆動ユニット3が配置されている。この駆動ユニット3は、ケース構造体30を備えている。ケース構造体30は平面視で門型形状であり、その左部分である左ケース部30Lと、その右部分である右ケース部30R、左ケース部30Lと右ケース部30Rとを接続する中央ケース部30Cとからなる。左ケース部30Lと右ケース部30Rとは、それぞれ中央ケース部30Cから後方に延びている。左ケース部30Lの端部領域は左後車軸41を支持する後輪車軸受け部が形成され、右ケース部30Rの端部領域は右後車軸42を支持する後輪車軸受け部が形成されている。ケース構造体30は左右の前フレーム21と連結されており、車体フレーム2のクロスビームの1つとして機能している。後フレーム22はケース構造体30及び前フレーム21とから延びており、載置面22Sを規定しており、この載置面22Sに、複数のバッテリパック6を装着することができるバッテリボックスBBが配置されている。
【0020】
駆動輪を駆動する電動モータ4は、この実施形態では、左の後輪12を駆動する左モータ4Lと右の後輪12を駆動する右モータ4Rとからなる。中央ケース部30Cは、左の後輪12を駆動する左モータ4Lと右の後輪12を駆動する右モータ4Rとの共通のハウジングとして機能する。トランスミッション4Tは、左モータ4Lの動力を左後車軸41に伝達する左伝動機構43と左モータ4Lの動力を右後車軸42に伝達する右伝動機構44とを備えている。左伝動機構43は左ケース部30Lに内装され、右伝動機構44は右ケース部30Rに内装されている。
図6では、点線で囲まれたボックスとして模式的に示されているだけであるが、ギヤ対やチェーンや伝動軸などを用いて構成される。
【0021】
左モータ4Lと右モータ4Rとは独立に可変速駆動制御される。これにより、左右の後輪12の両方が同じまたはほぼ同じ速度で前進方向に駆動することで直進前進が作り出され、左右の後輪12が同じまたはほぼ同じ速度で後進方向に駆動することで直進後進が作り出される。さらに、左右の後輪12の速度を互いに異ならせることで、車体フレーム2を任意の方向に旋回移動させることができ、例えば、左右の後輪12のいずれか一方を零速に近い低速にさせ、他方の後輪12を高速で前進側あるいは後進側に操作することで小回り旋回させることができる。さらに、左右の後輪12を互いに逆方向に駆動することで、車体フレーム2を左右の後輪12のほぼ中央部を旋回中心としてスピンターンさせることもできる。左右一対の前輪11は、キャスタ輪に構成されて縦軸芯周りで向きを自由に変更することができるから、左右の後輪12の駆動による走行方向に応じて向きが修正されることになる。
【0022】
左モータ4Lと右モータ4Rとに対する変速操作は、
図4及び
図5に示されている運転座席16aの両側に配置された左右一対の変速レバー18によって行われる。変速レバー18を前後中立位置に保持すると無段変速装置が中立停止状態となり、変速レバー18を中立位置から前方に操作することで前進変速が実現し、後方に操作することで後進変速が実現する。
【0023】
運転部16の後部にはロプス(ROPS)装置17が設けられている。ロプス装置17はU字状のアーチ部材であり、左右の自由端領域が、後フレーム22と左ケース部30Lと右ケース部30Rとに連結している。
【0024】
図6に示すように、中央ケース部30Cと左ケース部30Lと右ケース部30Rとによって囲まれる空間に作業装置Wとしてのモーアユニット13に動力を与える作業用モータ4Wが配置されている。作業用モータ4Wは出力軸が車体前後方向で前方に延びており、中継軸130を介してモーアユニット13のブレード伝動機構131に動力が伝達される。
【0025】
次にバッテリボックスBBについて説明する。バッテリボックスBBは、機体フレームに取り付けられたケース60を備えており、ケース60の内部空間は、循環ファン69などが備えられた機器収容室S2と、複数のバッテリ装着部7を備えたバッテリ収容室S1とに分けられている。機器収容室S2はバッテリ収容室S1の上方に位置する。ケース60の内部空間は実質的には閉鎖されており、循環ファンによって空気循環が行われる。この実施形態では、バッテリ装着部7は、鉛直方向(上下方向)に5段で設けられており、扁平な直方体形状のバッテリパック6を5つ装着することができる。各段の一方側には、バッテリ装着部7を構成するコネクタ70の車体側構成要素であるレセプタル71が固定されている。バッテリパック6の一方の端面には、コネクタ70のバッテリ側構成要素であるプラグ72が設けられている。バッテリパック6の他方の端面には、取っ手が設けられている。各段の他方側には、蓋61によって閉鎖することができる挿入口62が形成されている。さらに、各段にはスライド機構10としてスライドレールが設けられている。
バッテリパック6を挿入口62に差し込んで、スライドレールを用いて奥にスライド移動させることで、レセプタル71とプラグ72とが連結される。レセプタル71は本体接点7aとして機能し、プラグ72はバッテリ接点6aとして機能する。
【0026】
〔別実施の形態〕(1)上述した実施形態では、5つのバッテリ装着部7が上下方向に配置されており、最大5つのバッテリパック6を5段で収納することができるが、それ以外の個数、段数を採用してもよい。また、バッテリボックスBBにバッテリパック6を一括収納するのではなく、バッテリ装着部7及びバッテリパック6を車体の異なる場所に分散する構成を採用してもよい。
(2)上述した実施形態では、バッテリボックスBB内の空気を循環させるために循環ファン69が配置されていたが、このような循環ファン69をなくして、ダクトやルーバを用いて、外気を導入する構成を採用してもよい。
(3)上述した実施形態では、バッテリパック6を備えた電動作業車両として草刈機が取り上げられたが、田植機やコンバインやトラクタなどの農作業機、バックホウやバケットローダなどの建機なども本発明の適用対象である。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、バッテリによって駆動する電動作業車両に適用することができる。
【符号の説明】
【0028】
4 :電動モータ
5 :制御ユニット
51 :モータ制御部
52 :スイッチ操作部
53 :充電容量推定部
54 :温度評価部
6 :バッテリパック
6a :バッテリ接点
60 :ケース
62 :挿入口
7 :バッテリ装着部
7a :本体接点
70 :コネクタ
71 :レセプタル
72 :プラグ
8 :給電回路
90 :バッテリスイッチ
91 :温度センサ
94 :バッテリセレクタ
10 :スライド機構
W :作業装置