(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
気圧の変動を検出し、検出方向に沿って所定の距離を離して配置される、少なくとも2つの気圧変動センサと、前記少なくとも2つの気圧変動センサによって検出された前記気圧の変動を示す気圧変動情報に基づいて、計測対象物の傾斜情報を計測する傾斜情報計測部と、前記計測対象物が静止している状態における前記計測対象物の傾斜情報を、静止傾斜情報として検出する静止傾斜センサと、前記計測対象物が静止しているか否かを判定する静止判定部と、を備える傾斜計測装置に用いる気圧変動センサの調整方法であって、
空気が流入するキャビティと、前記空気を前記キャビティの内外に流通させる連通孔と、を有し、前記キャビティの内部と外部との圧力差に基づいて気圧の変動を検出する、前記少なくとも2つの気圧変動センサの出力特性を計測する特性計測ステップと、
前記少なくとも2つのうちの少なくとも1つが備える、前記キャビティの容積を変更する容積可変部によって、前記特性計測ステップによって計測された前記少なくとも2つの気圧変動センサの出力特性が一致するように調整する調整ステップと
を含み、
前記傾斜情報計測部は、
前記少なくとも2つの気圧変動センサによって検出された前記気圧の変動を示す気圧変動情報に基づいて、前記計測対象物の傾斜角の変動に関する情報を示す傾斜変動情報を生成する傾斜変動情報生成部と、
前記静止判定部によって前記計測対象物が静止していると判定された場合に前記静止傾斜センサによって検出された前記静止傾斜情報と、前記傾斜変動情報生成部によって生成された前記傾斜変動情報とに基づいて、前記計測対象物の傾斜情報を検出する傾斜情報検出部と
を備えることを特徴とする気圧変動センサの調整方法。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態による傾斜計測装置、傾斜計測システム、及び気圧変動センサの調整方法について、図面を参照して説明する。
【0022】
[第1の実施形態]
まず、
図1〜
図3を参照して、第1の実施形態による傾斜計測装置1の構成について説明する。
図1は、本実施形態による傾斜計測装置1の一例を示す外観図である。また、
図2は、本実施形態による傾斜計測装置1の一例を示すブロック図である。また、
図3は、本実施形態による傾斜変動センサ40の一例を示すブロック図である。
【0023】
図1及び
図2に示すように、傾斜計測装置1は、電源部31と、静止傾斜センサ32と、静止判定部33と、記憶部34と、制御部35と、傾斜変動センサ40とを備えている。また、傾斜変動センサ40は、通信部41と、傾斜変動情報生成部42と、2つの気圧変動センサ(51、52)とを備えている。
なお、本実施形態において、気圧変動センサ51と、気圧変動センサ52とは、同一の出力特性を示すように調整されており、傾斜計測装置1が備える任意の気圧変動センサを示す場合、又は特に区別しない場合には、気圧変動センサ50として説明する。
【0024】
本実施形態による傾斜計測装置1は、計測対象物に設置されて、計測対象物の傾斜情報を検出する。ここで、計測対象物の傾斜情報には、例えば、計測対象物の傾斜角θ、水平度、傾斜の有無を示す情報などが含まれる。本実施形態では、一例として、傾斜計測装置1が、計測対象物の傾斜角θを検出する例について説明する。
【0025】
傾斜計測装置1は、例えば、
図1に示すように、電源部31と、静止傾斜センサ32と、静止判定部33と、記憶部34と、制御部35と、傾斜変動センサ40とが1つのプリント基板PBに実装されており、例えば、数cm(センチメートル)〜十数cm規模のサイズに実装可能である。
また、本実施形態では、傾斜計測装置1が検出する傾斜角θの検出方向を、
図1に示すX軸方向とし、高度の方向をZ軸方向として説明する。
【0026】
電源部31は、傾斜計測装置1を動作させるための電源電圧を生成し、生成した電源電圧を各部に供給する。
静止傾斜センサ32は、例えば、加速度センサを使用した傾斜角センサなどであり、計測対象物が静止している状態における計測対象物の傾斜角θ(静止傾斜角θ
S)を、静止傾斜情報として検出する。静止傾斜センサ32は、検出した計測対象物の傾斜角θ(静止傾斜角θ
S)を制御部35に出力する。
【0027】
静止判定部33は、計測対象物が静止しているか否かを判定する。ここで、計測対象物とは、例えば、自転車、バイク、自動車などの移動可能な移動体である。例えば、計測対象物が、計測対象物の測位情報を取得するGPSシステム(測位システム機構の一例)を搭載している場合には、静止判定部33は、GPSシステムによって取得された測位情報の変化に基づいて、計測対象物が静止しているか否かを判定する。この場合、静止判定部33は、例えば、GPSシステムによって取得された計測対象物の位置が所定の期間変化しない場合に、計測対象物が静止していると判定する。
【0028】
また、例えば、計測対象物が、移動速度を取得する速度計など(速度検出機構の一例)を有する移動体である場合には、静止判定部33は、速度計によって取得された移動速度に基づいて、計測対象物が静止しているか否かを判定する。この場合、静止判定部33は、例えば、速度計によって取得された移動速度を取得し、所定の期間、移動速度がゼロである場合に、計測対象物が静止していると判定する。
【0029】
また、例えば、計測対象物が、自動車などの車輪の駆動によって移動可能な移動体である場合には、静止判定部33は、車輪の駆動状態に基づいて、計測対象物が静止しているか否かを判定する。すなわち、静止判定部33は、車輪の回転の有無を示す回転有無情報を計測対象物から取得して、当該回転有無情報に基づいて、計測対象物が静止しているか否かを判定する。この場合、静止判定部33は、例えば、回転有無情報が、所定の期間、“回転なし”である場合に、計測対象物が静止していると判定する。
【0030】
静止判定部33は、計測対象物が静止しているか否かを示す判定結果を制御部35に出力する。
なお、静止判定部33は、上述した計測対象物の静止の判定方法のいずれか1つによって、計測対象物が静止しているか否かを判定してもよいし、複数の判定方法を組み合わせて判定してもよい。
【0031】
傾斜変動センサ40は、
図1及び
図3に示すように、通信部41と、傾斜変動情報生成部42と、2つの気圧変動センサ50とを備えている。
気圧変動センサ50は、気圧の変動を検出する差圧センサである。気圧変動センサ51と気圧変動センサ52とは、検出方向(X軸方向)に沿って所定の距離(例えば、距離D)を離して配置されている。また、本実施形態では、気圧変動センサ52は、後述するキャビティ10(
図4参照)の容積を変更する容積可変部11を備えている。気圧変動センサ50は、検出した気圧の変動を、例えば検出信号(気圧変動情報)として、傾斜変動情報生成部42に出力する。なお、気圧変動センサ50(51、52)の構成の詳細については後述する。
【0032】
また、本実施形態において、説明の便宜上、気圧変動センサ50が2つである場合の一例について説明するが、傾斜変動センサ40は、3個以上の気圧変動センサ50を備えるようにしてもよい。すなわち、傾斜変動センサ40は、少なくとも2つの気圧変動センサ50を備えるものとする。
【0033】
通信部41は、傾斜変動センサ40と制御部35との間で、各種情報の授受を行うインターフェース部である。通信部41は、例えば、後述する傾斜変動情報生成部42が生成した傾斜変動情報(高度変動情報ΔH
D)を制御部35に送信する。
【0034】
傾斜変動情報生成部42は、少なくとも2つの気圧変動センサ50によって検出された気圧の変動を示す気圧変動情報に基づいて、計測対象物の傾斜角の変動に関する情報を示す傾斜変動情報を生成する。例えば、傾斜変動情報生成部42は、2つの気圧変動情報に基づいて、2つの気圧変動センサ50の高度差の変動を示す高度変動情報を、上述した傾斜変動情報として生成する。
例えば、傾斜変動情報生成部42は、気圧変動センサ51が検出した検出信号(気圧変動情報)と、気圧変動センサ52が検出した検出信号(気圧変動情報)との差分(気圧変動情報の差分情報ΔP)を算出する。この気圧変動情報の差分情報ΔPは、気圧変動センサ51と気圧変動センサ52との高度差に対応する。傾斜変動情報生成部42は、気圧変動情報の差分情報ΔPを、例えば、変換テーブルなどを利用して、高度変動情報ΔH
Dを生成する。
【0035】
記憶部34は、傾斜計測装置1が使用する各種情報を記憶する。記憶部34は、例えば、計測対象物の傾斜情報の初期値(傾斜角初期値θ
0)を記憶する。
制御部35(傾斜情報検出部の一例)は、例えば、CPUなどを含むプロセッサであり、傾斜計測装置1を統括的に制御する。制御部35は、例えば、傾斜計測装置1の起動時に、静止判定部33から計測対象物が静止しているか否かを示す判定結果を取得して、計測対象物が静止したと判定されるまで当該処理を繰り返す。制御部35は、計測対象物が静止したと判定された場合に、静止傾斜センサ32から取得した静止傾斜情報(静止傾斜角θ
S)を、傾斜角初期値θ
0として、記憶部34に記憶させる。
【0036】
また、制御部35は、記憶部34が記憶する傾斜角初期値θ
0と、傾斜変動情報(高度変動情報ΔH
D)とに基づいて、計測対象物の傾斜角θを検出する。例えば、制御部35は、傾斜角初期値θ
0を、上述した2つの気圧変動センサ50の距離Dにおける高度差ΔH
0に変換する。制御部35は、変換した高度差ΔH
0に高度変動情報ΔH
Dを加算した現在の計測対象物の傾斜角θに対応する高度差を算出し、当該高度差と、距離Dとに基づいて、現在の計測対象物の傾斜角θを算出する。すなわち、制御部35は、例えば、静止傾斜情報(静止傾斜角θ
S=傾斜角初期値θ
0)と、上述した所定の距離を示す距離情報(距離D)と、高度変動情報ΔH
Dとに基づいて、計測対象物の傾斜角θを検出する。
【0037】
このように、制御部35は、例えば、静止判定部33によって計測対象物が静止していると判定された場合に静止傾斜センサ32によって検出された静止傾斜情報(静止傾斜角θ
S)と、傾斜変動情報生成部42によって生成された傾斜変動情報(高度変動情報ΔH
D)とに基づいて、計測対象物の傾斜角θを検出する。なお、制御部35による計測対象物の傾斜角θの算出処理の詳細については、後述する。
また、制御部35は、計測対象物の傾斜角θを検出した後に、記憶部34が記憶する傾斜角初期値θ
0を更新する。すなわち、制御部35は、検出した当該計測対象物の傾斜角θを新たな初期値(傾斜角初期値θ
0)として記憶部34に記憶させる。
【0038】
なお、
図1に示すように、制御部35と、傾斜変動センサ40の通信部41及び傾斜変動情報生成部42とは、傾斜情報計測部30に対応する。傾斜情報計測部30は、例えば、2つの気圧変動センサ50によって検出された気圧の変動を示す気圧変動情報に基づいて、計測対象物の傾斜情報を計測する。
【0039】
次に、
図4及び
図5を参照して、本実施形態における気圧変動センサ50の詳細な構成について説明する。
図4は、本実施形態による気圧変動センサ50の一例を示す構成図である。
図4(a)は、本実施形態における気圧変動センサ50(51、52)の一例を示す平面図であり、
図4(b)は、
図4(a)に示すA−A線に沿った気圧変動センサ51の断面図である。また、
図4(c)は、
図4(a)に示すA−A線に沿った気圧変動センサ52の断面図である。
【0040】
図4に示すように、気圧変動センサ50(51、52)は、表裏の圧力差に応じて変形するカンチレバー4と、一端がカンチレバー4と対向するように配設された蓋部12と、カンチレバー4の変位を測定するための気圧変動検出部5と、カンチレバー4及び蓋部12の一面に配設されたキャビティ筐体3と、を有している。
【0041】
キャビティ筐体3(センサ本体の一例)は、内部にキャビティ10が形成された箱状の部材である。キャビティ筐体3は、例えば、キャビティ10を構成するセラミック材よりなる第1筐体部3aと、第1筐体部3a上に配置され、かつ後述のシリコン支持層2a及びシリコン酸化膜等の酸化層2bよりなる第2筐体部3bとを有している。
【0042】
カンチレバー4は、例えば、シリコン支持層2a、シリコン酸化膜等の酸化層2b、及びシリコン活性層2cを熱的に貼り合わせたSOI基板2を加工することで形成されている。具体的には、カンチレバー4は、SOI基板2を構成するシリコン活性層2cよりなり、平板状のシリコン活性層2cから平面視コ字状に形成されたギャップ13を切り出した形状からなる。これにより、カンチレバー4は、基端部4aを固定端とし、蓋部12と対向する側の端部である先端部4bを自由端とした片持ち梁構造となる。
【0043】
また、カンチレバー4は、キャビティ筐体3に形成されたキャビティ10の上面を囲うように配置されている。つまり、カンチレバー4は、キャビティ10の開口を略閉塞している。カンチレバー4は、基端部4aを介してキャビティ筐体3に第2筐体部3b上に対して一体的に固定されることで、片持ち支持される。これにより、カンチレバー4は、基端部4aを固定端としてキャビティ10内部と外部との圧力差(差圧)に応じた撓み変形が可能になる。
このように、カンチレバー4は、空気をキャビティ10の内外に流通させるギャップ13(連通孔)を除くキャビティ10の開口面を塞ぐように基端部4aから先端部4bに向けて一方向に延びる板状であり、キャビティ10の内部と外部との圧力差に応じて撓み変形する。
【0044】
なお、カンチレバー4の基端部4aには、カンチレバー4が撓み変形しやすいように、平面視コ字状の貫通孔15が形成される。ただし、この貫通孔15の形状は、カンチレバー4の撓み変形を容易にする形状ならば、上記コ字状に限定されるものではない。
【0045】
蓋部12は、キャビティ10上方に位置し、ギャップ13を介して、カンチレバー4の周囲に配置されている。当該蓋部12は、シリコン活性層2cで構成される。
気圧変動検出部5は、外部から加わる応力に応じて電気抵抗値が変化するピエゾ抵抗20と、この電気抵抗値変化を取り出す検出回路22から構成されている。
ピエゾ抵抗20は、
図4に示すように、Y方向において、貫通孔15を挟んだ両側に対となって配置される。これら一対のピエゾ抵抗20は、導電性材料からなる配線部21を介して相互に電気的に接続されている。
なお、この配線部21及びピエゾ抵抗20を含む全体的な形状は、例えば、
図4に示すように平面視U字状とすることができるが、別の配置形状としてもよい。
【0046】
検出回路22は、ピエゾ抵抗20と接続され、ピエゾ抵抗20の電気抵抗値変化に基づいた信号を出力する回路である。検出回路22は、例えば、
図5に示すように、ブリッジ回路221及び差動増幅回路222で構成される。すなわち、検出回路22は、ピエゾ抵抗20と、固定抵抗Ro、可変抵抗Ro’を用いて、ブリッジ回路221を構成することで、ピエゾ抵抗20の電気抵抗値の変化を電圧変化として取り出すことができる。そして、検出回路22は、この電圧変化を差動増幅回路222により所定のゲインで増幅して出力する。
なお、上記のピエゾ抵抗20は、例えば、イオン注入法や拡散法等の各種方法によりリン等のドープ剤(不純物)をシリコン活性層2cにドーピングすることで形成される。また、ドープ剤は、シリコン活性層2c表面近傍のみに添加される。このため、ピエゾ抵抗20の電気抵抗値の変化は、カンチレバー4に加わる応力の圧縮/伸長の方向に対して正負逆となる。
【0047】
また、一対のピエゾ抵抗20間は、配線部21のみで電気的に導通するように構成されている。このため、カンチレバー4のうち配線部21近傍におけるシリコン活性層2cは、配線部21以外でピエゾ抵抗20双方が導通しないよう、エッチング等によりシリコン活性層2cを除去して形成した溝部16を有している。なお、上記の配線部21近傍におけるシリコン活性層2cは、部分的に不純物ドープされることで、エッチングを省略した構成としてもよい。
【0048】
ここで、
図4(b)及び
図4(c)を参照して、本実施形態における気圧変動センサ51と、気圧変動センサ52との違いについて説明する。気圧変動センサ52は、容積可変部11を備えている点が、気圧変動センサ51と異なる。
図4(b)に示すように、気圧変動センサ51は、固定のキャビティ底部10aを備えている。このキャビティ底部10aにより、気圧変動センサ51のキャビティ10の容積(例えば、容積V1)は、固定の値となる。
【0049】
また、
図4(c)に示すように、気圧変動センサ52は、キャビティ10の底部に、容積可変部11を備えている。容積可変部11は、メンブレン構造部60を備えている。
メンブレン構造部60は、キャビティ10の少なくとも1つの面(例えば、底面)に配置され、外力により変形可能な構成となっている。メンブレン構造部60は、例えば、大きさが大、中、及び小の3種類のメンブレン部(601、602、603)を備えており、外力により変形することで、気圧変動センサ52のキャビティ10の容積(例えば、容積V2)を変更する。
【0050】
メンブレン部601は、キャビティ10の容積V2において、メンブレン部602よりも大きい容積を外力により変更可能である。また、メンブレン部602は、キャビティ10の容積V2において、メンブレン部603よりも大きく、且つ、メンブレン部601よりも小さい容積を外力により変更可能である。また、メンブレン部603は、キャビティ10の容積V2において、メンブレン部602よりも小さい容積を外力により変更可能である。
なお、
図4(c)に示す例では、メンブレン構造部60は、メンブレン部601、メンブレン部602、及びメンブレン部603のそれぞれを1つずつ備える例を示しているが、メンブレン部601、メンブレン部602、及びメンブレン部603のそれぞれを複数備えるようにしてもよい。
【0051】
次に、図面を参照して、本実施形態による傾斜計測装置1の動作について説明する。
まず、
図6及び
図7を参照して、本実施形態における気圧変動センサ50の動作について説明する。ここでは、計測対象物の高度が変化することで、大気(空気)の圧力が変化した場合のカンチレバー4の動作と、その時の検出回路22の出力特性について説明する。なお、以下の説明において、空気の圧力は、以下、外圧Poutと表記することとする。外圧Poutは、カンチレバー4のキャビティ筐体3への配設面と対向する面(すなわち、
図4における上面)側の圧力である。また、キャビティ10内部の内圧を内圧Pinと定義し、外圧Poutとする。
【0052】
図6は、本実施形態における気圧変動センサ50の出力信号の一例を示す図である。
ここで、
図6(a)は、外圧Pout及び内圧Pinの経時変化を示しており、
図6(b)は、検出回路22の出力信号の経時変化を示している。
また、
図7は、実施形態における気圧変動センサ50の動作の一例を示す図であり、
図4及び
図5に示すカンチレバー4の動作の一例を模式的に示す断面図である。
ここで、
図7(a)は、初期状態のカンチレバー4の断面図を示し、
図7(b)は、外圧Poutが内圧Pinより高い状態のカンチレバー4の断面図を示している。また、
図7(c)は、キャビティ10内外の圧力が同じに戻った状態のカンチレバー4の断面図を示している。なお、
図7において、検出回路22の図示を省略する。
【0053】
まず、
図6(a)における期間Aのように、外圧Poutと内圧Pinとが等しく、差圧ΔPがゼロである場合には、
図7(a)に示すように、カンチレバー4は、撓み変形しない。
【0054】
次に、
図6(a)における時刻t1以降の期間Bのように、例えば、外圧Poutがステップ状に上昇すると、内圧Pinは急激に変化できず、差圧ΔPが生じるため、
図7(b)に示すように、カンチレバー4は、キャビティ10内部に向けて撓み変形する。すると、当該カンチレバー4の撓み変形に応じてピエゾ抵抗20に応力が加わり、電気抵抗値が変化するので、
図6(b)に示すように、検出回路22の出力信号が増大する。
【0055】
また、外圧Poutの上昇以降(時刻t1以降)において、ギャップ13を介してキャビティ10の外部から内部へと圧力伝達媒体が徐々に流動する。このため、
図6(a)に示すように、内圧Pinは、時間の経過とともに、外圧Poutに遅れながら、かつ外圧Poutの変動よりも緩やかな応答で上昇する。
その結果、内圧Pinが外圧Poutに徐々に近づくので、カンチレバー4の撓みが徐々に小さくなり、
図6(b)に示すように、上述の出力信号が、徐々に低下する。
【0056】
そして、
図6(a)に示す時刻t3以降の期間Dのように、内圧Pinが外圧Poutと同じになると、
図7(c)に示すように、カンチレバー4の撓み変形が解消され、
図7(a)に示す初期状態に復帰する。さらに、
図6(b)に示すように、検出回路22の出力信号も期間Aの初期状態と同値に戻る。
なお、検出回路22の出力信号は、初期状態における基準電圧と、ピエゾ抵抗20の抵抗変化に基づいて増幅された信号との加算となる。初期状態における基準電圧は、カンチレバー4に加わる差圧ΔPがゼロの場合の、
図5に図示したブリッジ回路221の分圧点Vaと分圧点Vbとの電圧差を差動増幅回路222で増幅した電圧値となる。
【0057】
なお、上述した気圧変動センサ50では、SOI基板2のシリコン活性層2cを利用して半導体プロセス技術によりカンチレバー4を形成できるので、非常に薄型化(例えば数十から数百nm厚)しやすい。したがって、気圧変動センサ50では、微小な圧力変動の検出を精度よく行うことができる。
さらに、気圧変動センサ50では、外圧Poutが非常に緩やかに変化する場合、ギャップ13による圧力伝達媒体の流動制限機能が作用せず、内圧Pinは外圧Poutに対して時間遅れせず、ほぼ同じ圧力値となり、差圧ΔPが発生しない。本実施形態では、これを逆に利用し、外圧Poutが非常に遅い変化速度の場合(例えば、気象変化のような気圧変化の場合)、外圧Poutの変化を無視することが可能となる。よって、気象変化のような気圧変化をノイズとして除去することが可能になる。
【0058】
次に、
図8を参照して、上述した気圧変動センサ52の容積可変部11(メンブレン構造部60)の動作について説明する。
図8は、本実施形態における気圧変動センサ52の容積可変部11の動作の一例を示す図である。
図8(a)は、キャビティ10の容積V2が最大に調整された気圧変動センサ52を示している。この状態では、メンブレン構造部60のメンブレン部601、メンブレン部602、及びメンブレン部603のそれぞれが全て、キャビティ10の外側に湾曲している。
【0059】
この状態において、メンブレン部601に外力が加えられると、メンブレン部601は、
図8(b)に示すように、キャビティ10の内側に湾曲して変形し、キャビティ10の容積V2が、メンブレン部601の容積分だけ低減される。
次に、さらにメンブレン部603に外力が加えられると、メンブレン部603は、
図8(c)に示すように、キャビティ10の内側に湾曲して変形し、キャビティ10の容積V2が、メンブレン部603の容積分だけ低減される。
【0060】
このように、容積可変部11(メンブレン構造部60)は、メンブレン部601、メンブレン部602、及びメンブレン部603のいずれか1つ又は複数が外力により変形されることで、キャビティ10の容積V2を調整することが可能である。本実施形態では、この容積可変部11(メンブレン構造部60)の調整機能を利用して、気圧変動センサ52のキャビティ10の容積V2が、気圧変動センサ51のキャビティ10の容積V1と一致するように調整される。すなわち、容積可変部11(メンブレン構造部60)により、気圧変動センサ51の出力特性と、気圧変動センサ52の出力特性とが一致するように焼成される。
【0061】
なお、本実施形態において、メンブレン構造部60の調整のために加えられる外力は、人手によるものであってもよいし、例えば、電気的に制御可能なアクチュエータなどによるものであってもよい。
また、メンブレン構造部60に加えられる外力は、キャビティ10の外部からメンブレン部601、メンブレン部602、及びメンブレン部603を押し込む力だけでなく、外部にメンブレン部601、メンブレン部602、及びメンブレン部603を吸引して引き出す力であってもよい。
【0062】
次に、
図9を参照して、上述した気圧変動センサ50を備える傾斜変動センサ40の動作について説明する。ここでは、気圧変動センサ52の出力特性が、容積可変部11により気圧変動センサ51の出力特性と一致するように、予め調整されているものとして説明する。
図9は、本実施形態における傾斜変動センサ40の動作の一例を示すフローチャートである。
まず、計測対象物に装着された傾斜計測装置1が、上述したX軸方向に傾斜した場合に、2つの気圧変動センサ50に大気圧(上述した外圧Pout)が変化する(ステップS101)。
【0063】
すると、気圧変動センサ50のキャビティ10内部の内圧である内圧Pinは、ステップS101における外圧Poutの変化に追従するように変化する(ステップS102)。ここで、ギャップ13は、キャビティ10内外を連通する連通孔として機能するため、カンチレバー4の表裏に加わる差圧に応じて、高圧側から低圧側へと空気が移動する。ただし、空気の移動が微小なギャップ13によって規制されているため、内圧Pinは、外圧Poutの変化に応じて急激に変化することはなく、外圧Poutの変化に対して遅れ
て追従することとなる。
【0064】
次に、カンチレバー4の表裏面には、上述の外圧Poutの変化に対する内圧Pinの遅れによって、圧力差(以下、差圧ΔP=Pout−Pin)が発生する(ステップS103)。その結果、カンチレバー4は、差圧ΔPの大きさに応じて撓み変形する(ステップS104)。
【0065】
次に、カンチレバー4が、撓み変形をすると、カンチレバー4の基端部4aに設けられたピエゾ抵抗20に応力が加わり(ステップS105)。ピエゾ抵抗20の電気抵抗値が変化する(ステップS106)。ここで、検出回路22は、ピエゾ抵抗20へ電流を流すことで、ピエゾ抵抗20の電気抵抗値の変化を検出し、当該電気抵抗の変化に応じた検出信号を出力する(ステップS107)。
次に、傾斜変動情報生成部42は、2つの気圧変動センサ50によって検出された2つの検出信号に基づいて、高度変動情報ΔH
Dを生成する(ステップS108)。ステップS108の処理後に、傾斜変動情報生成部42は、処理を終了する。
【0066】
上述したように、傾斜変動センサ40は、2つの気圧変動センサ50の検出信号に基づいて、高度変動情報ΔH
Dを生成するが、その生成処理について、
図10及び
図11を参照して説明する。
図10は、本実施形態による傾斜変動センサ40の水平時(静止時)における出力信号の一例を説明する図である。
【0067】
図10(a)において、傾斜計測装置1は、計測対象物に取り付けされており、計測対象物が水平に静止している場合の状態を示している。また、
図10(b)は、計測対象物が水平に静止している場合における2つの気圧変動センサ50の出力信号(検出信号)を示している。
【0068】
図10(b)に示すグラフの縦軸は出力電圧を示し、横軸は時間を示している。
また、
図10(b)において、波形V11が、気圧変動センサ51の出力信号を示し、波形V21が、気圧変動センサ52の出力信号を示し、波形Diff1は、波形V11と波形V21の差を示している(Diff1=V11−V21)。
図10において、計測対象物が静止しているため、気圧変動センサ51の出力信号(波形V11)、気圧変動センサ52の出力信号(波形V21)、及び、その差分(波形Diff1)は、全て“0”になっている。なお、この状態は、計測対象物が水平であることに限らず、傾斜している状態であっても同様である。
【0069】
次に、
図11は、本実施形態による傾斜変動センサ40の傾斜時における出力信号の一例を説明する図である。
ここでは、
図10に示す状態から
図11に示す状態に計測対象物が傾斜した場合の一例である。
図11(a)において、傾斜計測装置1は、計測対象物がX軸方向に、プリント基板PBの中点を中心に傾斜角θだけ傾斜(回転)している場合の状態を示している。また、
図11(b)は、計測対象物の傾斜時における2つの気圧変動センサ50の出力信号(検出信号)を示している。
【0070】
図11(b)に示すグラフの縦軸は出力電圧を示し、横軸は時間を示している。
また、
図11(b)において、波形V12が、気圧変動センサ51の出力信号を示し、波形V22が、気圧変動センサ52の出力信号を示し、波形Diff2は、波形V12と波形V22の差を示している(Diff2=V12−V22)。
【0071】
プリント基板PBが傾斜すると、気圧変動センサ51及び気圧変動センサ52は、それぞれ高度が変化するため、各気圧変動センサ50が感じる気圧が変化し、出力が変化する。すなわち、
図11(b)に示すように、気圧変動センサ51の出力信号(波形V12)と、気圧変動センサ52の出力信号(波形V22)とは、符号が反転した波形になり、その差分である波形Diff2は、波形V12の2倍の検出値となる。
【0072】
ここで、波形Diff2は、計測対象物(プリント基板PB)が傾斜したことによる気圧変動センサ51及び気圧変動センサ52の高さの変化分(高度変動情報ΔH
D)に対応する信号である。したがって、傾斜変動情報生成部42は、気圧変動センサ51の検出値と、気圧変動センサ52の検出値との差分(波形Diff2)を算出し、算出した当該差分(波形Diff2)に基づいて、高度変動情報ΔH
Dを生成する。
なお、例えば、気圧変動センサ52を中心にして回転した場合は、気圧変動センサ52の高度は不変なので気圧変動センサ52の出力信号は“0”のままで、気圧変動センサ51の出力信号のみ変化する。この場合も、傾斜変動情報生成部42は、気圧変動センサ51の検出値と、気圧変動センサ52の検出値との差分を算出することで、同一の高度変動情報ΔH
Dを得ることができる。
【0073】
ここで、
図11を参照して、本実施形態による傾斜角θの検出原理について説明する。
図11(a)に示すように、気圧変動センサ51と気圧変動センサ52との高度差ΔH、気圧変動センサ51と気圧変動センサ52との間の距離D、X軸方向の傾斜角θである場合に、下記の式(1)の関係が成り立つ。
【0075】
また、この式(1)を変形すると、傾斜角θは、以下の式(2)により算出することができる。
【0077】
なお、
図11に示す例は、水平状態からの傾斜であるため、気圧変動センサ51と気圧変動センサ52との高度差ΔH(=高度変動情報ΔH
D)であるが、傾斜した状態で停止していた場合には、上記の式(2)では対応できない場合がある。
そのため、本実施形態による制御部35は、以下のように、傾斜角θを算出する。
【0078】
まず、制御部35は、傾斜した静止状態における2つの気圧変動センサ50の高度差ΔH
0を、傾斜角初期値θ
0(静止傾斜角θ
S)に基づいて算出する。制御部35は、例えば、上述した式(1)を変形した下記の式(3)と、傾斜角初期値θ
0と、距離Dとに基づいて、静止時(前回算出時)の高度差ΔH
0を算出する。
【0080】
次に、制御部35は、傾斜変動情報生成部42が生成した高度変動情報ΔH
Dを、通信部41を介して取得し、静止時の高度差ΔH
0に高度変動情報ΔH
Dを加算した値を、高度差ΔHとして、下記の式(4)に用いて傾斜角θを算出する。
【0082】
次に、
図12を参照して、傾斜計測装置1の動作について説明する。
図12は、本実施形態による傾斜計測装置1の動作の一例を示すフローチャートである。
まず、傾斜計測装置1の制御部35は、計測対象物が静止状態であるか否かの有無判定を実行する(ステップS201)。すなわち、制御部35は、静止判定部33に、例えば、計測対象物が静止状態であるか否かを問い合わせる信号を送信する。静止判定部33は、計測対象物が静止状態であるか否かの判定を実行し、当該判定結果を制御部35に送信する。
【0083】
次に、制御部35は、静止判定部33から取得した判定結果に基づいて、計測対象物が静止状態であるか否かを判定する(ステップS202)。制御部35は、計測対象物が静止状態である場合(ステップS202:YES)に、処理をステップS203に進める。また、制御部35は、計測対象物が静止状態でない場合(ステップS202:NO)に、処理をステップS201に戻し、ステップS201及びステップS202の処理を、計測対象物が静止状態になるまで繰り返す。
【0084】
ステップS203において、制御部35は、静止傾斜センサ32から静止傾斜度(静止傾斜角θ
S)を取得する。
次に、制御部35は、初期傾斜度(傾斜角初期値θ
0)を設定する(ステップS204)。すなわち、制御部35は、取得した静止傾斜度(静止傾斜角θ
S)を、初期傾斜度(傾斜角初期値θ
0)として、記憶部34に記憶させる。
【0085】
次に、制御部35は、傾斜度変動を計測する(ステップS205)。ここで、傾斜変動センサ40の傾斜変動情報生成部42は、気圧変動センサ51の検出値と、気圧変動センサ52の検出値との差分を算出し、算出した当該差分に基づいて、高度変動情報ΔH
Dを生成する。制御部35は、傾斜変動情報生成部42が生成した高度変動情報ΔH
Dを、傾斜変動情報として、傾斜変動センサ40から取得する。
【0086】
次に、制御部35は、傾斜度(傾斜角θ)を算出する(ステップS206)。制御部35は、まず、記憶部34が記憶する初期傾斜度(傾斜角初期値θ
0)を取得し、上述した式(3)を用いて、静止時、又は前回算出した傾斜角θに対応する高度差ΔH
0を算出する。次に、制御部35は、取得した高度変動情報ΔH
Dと、算出した当該高度差ΔH
0とに基づいて、傾斜角算出用の高度差ΔH(=ΔH
0+ΔH
D、累積高度差)を算出する。そして、制御部35は、上述した式(4)を用いて、現在の傾斜度(傾斜角θ)を算出する。
なお、制御部35は、算出した現在の傾斜角θを、新たな初期傾斜度(傾斜角初期値θ
0)として、記憶部34に記憶させる。
【0087】
次に、制御部35は、計測を継続するか否かを判定する(ステップS207)。制御部35は、計測を継続する場合(ステップS207:YES)に、処理をステップS205に戻す。また、制御部35は、計測を継続しない場合(ステップS207:NO)に、処理を終了する。
【0088】
<気圧変動センサ50の調整方法>
次に、図面を参照して、本実施形態による気圧変動センサ50の調整方法について説明する。
図13は、本実施形態による調整装置7の一例を示すブロック図である。
図13に示す調整装置7は、気圧変動センサ50を調整する装置であり、密閉容器70と、気圧可変部71と、特性計測部72と、容積調整部73とを備えている。
【0089】
なお、
図13に示す例では、気圧変動センサ51の出力特性と、気圧変動センサ52の出力特性とを一致させるために、気圧変動センサ52の容積可変部11を調整する一例を説明する。ここでは、容積可変部11は、上述したように、電気的に制御可能なアクチュエータによりメンブレン構造部60を変形できるものとして説明する。
【0090】
密閉容器70は、気圧可変部71により気圧変動可能な容器であり、調整対象である気圧変動センサ51及び気圧変動センサ52が少なくとも収納される。
気圧可変部71は、密閉容器70の内部の気圧を周期的に変化させる。気圧可変部71は、例えば、特性計測部72によって指定された周波数により気圧を変化させる。
【0091】
特性計測部72(計測部の一例)は、気圧可変部71に指定された周波数により気圧を変化させて、気圧変動センサ51及び気圧変動センサ52の出力特性を計測する。特性計測部72は、気圧変動センサ51及び気圧変動センサ52の出力特性として、例えば、カットオフ周波数(fc、遮断周波数)を計測する。ここで、カットオフ周波数とは、気圧変動センサ50の出力感度が3dB(デシベル)低下する周波数を示す。また、特性計測部72は、カットオフ周波数計測部(721、722)を備えている。
【0092】
カットオフ周波数計測部721は、気圧変動センサ51の出力信号に基づいて、気圧変動センサ51のカットオフ周波数fc1を計測する。また、カットオフ周波数計測部722は、気圧変動センサ52の出力信号に基づいて、気圧変動センサ52のカットオフ周波数fc2を計測する。
【0093】
容積調整部73(調整部の一例)は、気圧変動センサ52が備える容積可変部11によって、特性計測部72によって計測された少なくとも2つの気圧変動センサ50の出力特性が一致するように調整する。すなわち、容積調整部73は、カットオフ周波数計測部721が計測したカットオフ周波数fc1と、カットオフ周波数計測部722が計測したカットオフ周波数fc2とを比較し、当該比較結果に基づいて、容積可変部11のメンブレン構造部60を変形させて、カットオフ周波数fc1と、カットオフ周波数fc2とが一致するように調整する。
【0094】
ここで、
図14は、気圧変動センサ50(51、52)のキャビティ10の容積と周波数特性との関係を説明する図である。
図14に示す例は、気圧変動センサ51のキャビティ10の容積V1が、気圧変動センサ52のキャビティ10の容積V2より大きい場合(V1>V2)の一例を示している。
また、
図14に示すグラフは、縦軸が感度[dB]を示し、横軸は、周波数[Hz]を示している。
【0095】
図14において、波形W1は、気圧変動センサ51の周波数特性を示しており、波形W2は、気圧変動センサ52の周波数特性を示している。気圧変動センサ51のキャビティ10の容積V1が、気圧変動センサ52のキャビティ10の容積V2より大きい場合(V1>V2)に、カットオフ周波数fcは、気圧変動センサ51のカットオフ周波数fc1は、気圧変動センサ52のカットオフ周波数fc2より低くなる(fc1<fc2)。
なお、気圧変動センサ50において、カットオフ周波数fcは、下記の式(5)により表される。
【0097】
ここで、変数kは係数を示し、変数Gは、気圧変動センサ50のギャップ13の幅(ギャップ幅)を示している。また、変数Vは、キャビティ10の容積を示している。
上述した式(5)に示すように、気圧変動センサ50のカットオフ周波数fcは、ギャップ幅Gの2乗に比例し、キャビティ10の容積Vに反比例する。
このことから、容積調整部73は、例えば、カットオフ周波数fc1がカットオフ周波数fc2より大きい場合(fc1>fc2)に、気圧変動センサ52のキャビティ10の容積V2を小さくする調整を、メンブレン構造部60を変形させて行う。また、容積調整部73は、例えば、カットオフ周波数fc1がカットオフ周波数fc2より小さい場合(fc1<fc2)に、気圧変動センサ52のキャビティ10の容積V2を大きくする調整を、メンブレン構造部60を変形させて行う。
【0098】
次に、
図15を参照して、本実施形態による気圧変動センサ50の調整方法について説明する。
図15は、本実施形態による気圧変動センサ50の調整方法の一例を示すフローチャートである。
図15に示すように、まず、調整装置7の特性計測部72は、気圧変動センサ(51、52)のカットオフ周波数(fc1、fc2)を計測する(ステップS301)。特性計測部72は、気圧可変部71に密閉容器70内の気圧を、周波数を変化させて変更し、カットオフ周波数計測部721が、気圧変動センサ51のカットオフ周波数fc1を計測するとともに、カットオフ周波数計測部722が、気圧変動センサ52のカットオフ周波数fc2を計測する。
【0099】
次に、調整装置7の容積調整部73は、カットオフ周波数fc1とカットオフ周波数fc2との差が許容値(第1許容値)以内であるか否かを判定する(ステップS302)。容積調整部73は、カットオフ周波数fc1とカットオフ周波数fc2との差が許容値(第1許容値)以内である場合(ステップS302:YES)に、処理を終了する。また、容積調整部73は、カットオフ周波数fc1とカットオフ周波数fc2との差が許容値(第1許容値)を超える場合(ステップS302:NO)に、処理をステップS303に進める。
【0100】
ステップS303において、容積調整部73は、カットオフ周波数fc1とカットオフ周波数fc2とを比較し、カットオフ周波数fc1がカットオフ周波数fc2より大きいか否かを判定する。容積調整部73は、カットオフ周波数fc1がカットオフ周波数fc2より大きい場合(ステップS303:YES、fc1>fc2)に、処理をステップS304に進める。また、容積調整部73は、カットオフ周波数fc1がカットオフ周波数fc2より小さい場合(ステップS303:NO、fc1<fc2)に、処理をステップS305に進める。
【0101】
ステップS304において、容積調整部73は、気圧変動センサ52のキャビティ10の容積V2を小さくする。すなわち、容積調整部73は、容積可変部11のメンブレン構造部60を変形させて、キャビティ10の容積V2を小さくする制御を行う。ステップS304の処理後に、容積調整部73は、処理をステップS301に戻す。
【0102】
ステップS305において、容積調整部73は、気圧変動センサ52のキャビティ10の容積V2を大きくする。すなわち、容積調整部73は、容積可変部11のメンブレン構造部60を変形させて、キャビティ10の容積V2を大きくする制御を行う。ステップS305の処理後に、容積調整部73は、処理をステップS301に戻す。
【0103】
このように、本実施形態による気圧変動センサ50の調整方法では、気圧変動センサ(51、52)の出力特性を計測する特性計測ステップ(ステップS301)と、容積可変部11によって、気圧変動センサ(51、52)の出力特性が一致するように調整する調整ステップ(ステップS302からステップS305)とを行うことで、気圧変動センサ(51、52)を調整する。このように調整された少なくとも2つの気圧変動センサ50が、上述した傾斜計測装置1に実装される。
【0104】
なお、上述した
図13及び
図15に示す例では、調整装置7が、容積調整部73を備え、容積調整部73が、容積可変部11に指示してキャビティ10の容積V2を調整する例を説明したが、容積可変部11が人手(例えば、作業者)によりキャビティ10の容積V2を調整する場合には、容積調整部73による処理を人手で行うようにしてもよい。
また、容積調整部73は、キャビティ10の容積V2を小さく又は大きくする際に、上述した式(5)に基づいて、容積V2の変化量を決定し、当該変化量に対応させてメンブレン構造部60を変形させてもよい。また、容積調整部73は、カットオフ周波数fc1とカットオフ周波数fc2との差に応じて予め定められた容積V2の変化量に対応させてメンブレン構造部60を変形させてもよい。
【0105】
以上説明したように、本実施形態による傾斜計測装置1は、少なくとも2つの気圧変動センサ50と、傾斜情報計測部30とを備えている。少なくとも2つの気圧変動センサ50は、気圧の変動を検出し、検出方向に沿って所定の距離を離して配置される。傾斜情報計測部30は、少なくとも2つの気圧変動センサ50によって検出された気圧の変動を示す気圧変動情報に基づいて、計測対象物の傾斜情報を計測する。また、気圧変動センサ50は、空気が流入するキャビティ10と、空気をキャビティ10の内外に流通させるギャップ13(連通孔)と、を有し、キャビティ10の内部と外部との圧力差に基づいて気圧の変動を検出する。そして、少なくとも2つの気圧変動センサ50のうちの少なくとも1つが、キャビティ10の容積を変更する容積可変部11を備えている。
これにより、本実施形態による傾斜計測装置1は、容積可変部11を備えることにより、センサ間の感度バラツキを低減することができるため、傾斜情報の検出精度を向上させることができる。
【0106】
また、本実施形態では、容積可変部11は、キャビティ10の少なくとも1つの面(例えば、底面)に配置され、外力により変形可能なメンブレン構造部60を備えている。
これにより、本実施形態による傾斜計測装置1は、外力によりメンブレン構造部60を変形するという簡易な手段により、キャビティ10の容積を調整することができる。
【0107】
また、本実施形態では、メンブレン構造部60は、大きさの異なる複数種類のメンブレン部(601、602、603)を備えている。
これにより、メンブレン構造部60は、キャビティ10の容積を精度良く調整することができる。
【0108】
また、本実施形態による傾斜計測装置1は、静止傾斜センサ32と、静止判定部33とを備え、傾斜情報計測部30は、傾斜変動情報生成部42と、制御部35(傾斜情報検出部)とを備えている。傾斜変動情報生成部42は、少なくとも2つの気圧変動センサ50によって検出された気圧の変動を示す気圧変動情報(例えば、検出信号)に基づいて、計測対象物の傾斜角の変動に関する情報を示す傾斜変動情報を生成する。静止傾斜センサ32は、計測対象物が静止している状態における計測対象物の傾斜情報を、静止傾斜情報として検出する。静止判定部33は、計測対象物が静止しているか否かを判定する。そして、制御部35は、静止判定部33によって計測対象物が静止していると判定された場合に静止傾斜センサ32によって検出された静止傾斜情報(静止傾斜角θ
S)と、傾斜変動情報生成部42によって生成された傾斜変動情報とに基づいて、計測対象物の傾斜情報(傾斜角θ)を検出する。
【0109】
これにより、本実施形態による傾斜計測装置1は、計測対象物が静止している状態における静止傾斜センサ32から取得した静止傾斜情報(静止傾斜角θ
S)と、高精度に検出可能な気圧変動センサ50を利用して生成された傾斜変動情報とに基づいて計測対象物の傾斜情報(傾斜角θ)を計測するため、傾斜情報の検出精度をさらに向上させることができる。例えば、気圧変動センサ50を利用して計測対象物の傾斜情報(傾斜角θ)を検出するため、本実施形態による傾斜計測装置1は、計測対象物が加速運動している場合であっても、高精度に傾斜情報を計測することができる。
【0110】
また、例えば、絶対圧センサ(気圧センサ)では、高度の検出精度は、数cm程度である。そのため、絶対圧センサを使用した従来技術では、絶対圧センサを、例えば、1m離して配置して傾斜を計測したとしても、数度(deg)程度の計測精度となる。
これに対して、本実施形態による傾斜計測装置1は、mm(ミリメートル)オーダの高度差を検出可能であるため、数cm〜十数cmの間隔に、気圧変動センサ50を配置すれば、絶対圧センサを使用した従来技術よりも高精度に計測精度を実現できる上、傾斜計測装置1のサイズを大幅に縮小することができる。
【0111】
また、本実施形態による傾斜計測装置1は、計測対象物の傾斜情報の初期値を記憶する記憶部34を備えている。制御部35は、静止判定部33によって計測対象物が静止していると判定された場合に、静止傾斜情報(静止傾斜角θ
S)を初期値(傾斜角初期値θ
0)として記憶部34に記憶させる。そして、制御部35は、記憶部34が記憶する初期値(傾斜角初期値θ
0)と、傾斜変動情報とに基づいて、計測対象物の傾斜情報(傾斜角θ)を検出するとともに、検出した当該計測対象物の傾斜情報を初期値(傾斜角初期値θ
0)として記憶部34に記憶させる。
【0112】
これにより、初期値(傾斜角初期値θ
0)を記憶部34に記憶させて毎回更新して行くことで、本実施形態による傾斜計測装置1は、静止判定部33による静止状態の判定、及び静止傾斜センサ32による静止傾斜情報(静止傾斜角θ
S)の取得を、計測の度に毎回実行する必要がない。よって、本実施形態による傾斜計測装置1は、計測対象物が加速運動している場合であっても、測定不可能な期間を低減しつつ、さらに高精度に傾斜情報を計測することができる。
【0113】
また、本実施形態では、傾斜変動情報生成部42は、少なくとも2つの気圧変動情報に基づいて、少なくとも2つの気圧変動センサの高度差の変動を示す高度変動情報(ΔH
D)を、傾斜変動情報として生成する。制御部35は、静止傾斜情報と、所定の距離(距離D)を示す距離情報と、高度変動情報(ΔH
D)とに基づいて、計測対象物の傾斜情報(傾斜角θ)を検出する。
これにより、本実施形態による傾斜計測装置1は、例えば、式(3)及び式(4)に基づいて、簡易な演算により、高精度に傾斜情報を算出することができる。また、本実施形態による傾斜計測装置1は、積分による演算処理を必要としないため、誤差の蓄積がなく、傾斜情報(傾斜角θ)の検出精度を向上させることができる。
【0114】
また、本実施形態では、静止判定部33は、計測対象物の測位情報を取得する測位システム機構(例えば、GPSシステム)によって取得された測位情報の変化に基づいて、計測対象物が静止しているか否かを判定する。また、計測対象物は、移動可能であり、且つ、移動速度を取得する速度検出機構を有する移動体(例えば、自動車、バイクなど)であり、静止判定部33は、速度検出機構によって取得された移動速度に基づいて、計測対象物が静止しているか否かを判定してもよい。また、計測対象物は、車輪の駆動によって移動可能な移動体であり、静止判定部33は、車輪の駆動状態に基づいて、計測対象物が静止しているか否かを判定してもよい。
このように、計測対象物が備えている機構を利用して、計測対象物が静止しているか否かを判定することで、本実施形態による傾斜計測装置1は、自装置で計測対象物が静止していることを検出する手段を備える必要がなく、自装置の構成を簡略化することができる。
【0115】
また、本実施形態では、気圧変動センサ50は、空気が流入するキャビティ10を有するキャビティ筐体3(センサ本体)と、カンチレバー4と、気圧変動検出部5とを備えている。カンチレバー4は、空気をキャビティ10の内外に流通させるギャップ13(連通孔)を除くキャビティ10の開口面を塞ぐように基端部4aから先端部4bに向けて一方向に延びる板状であり、キャビティ10の内部と外部との圧力差に応じて撓み変形する。気圧変動検出部5は、カンチレバー4の撓み変形に応じた気圧変動情報を検出する。
これにより、本実施形態による傾斜計測装置1は、カンチレバー4の撓み変形に応じた抵抗変化に基づいて、圧力変化(高度変化)をより正確に検出することができるため、傾斜情報の検出精度を向上させることができる。なお、半導体プロセス技術によりカンチレバー4を形成できるので、本実施形態による傾斜計測装置1では、カンチレバー4を非常に薄型化(例えば数十から数百nm厚)することができる。よって、本実施形態による傾斜計測装置1では、微小な圧力変動の検出を精度よく行うことができる。
【0116】
また、本実施形態による気圧変動センサ50の調整方法は、上述した少なくとも2つの気圧変動センサ50と、傾斜情報計測部30とを備える傾斜計測装置1に用いる気圧変動センサ50の調整方法であって、特性計測ステップと、調整ステップとを含んでいる。特性計測ステップにおいて、特性計測部72(計測部)が、空気が流入するキャビティ10と、空気をキャビティ10の内外に流通させるギャップ13(連通孔)と、を有し、キャビティ10の内部と外部との圧力差に基づいて気圧の変動を検出する、少なくとも2つの気圧変動センサ50の出力特性を計測する。調整ステップにおいて、容積調整部73(調整部)が、少なくとも2つのうちの少なくとも1つが備える、キャビティ10の容積を変更する容積可変部11によって、特性計測ステップによって計測された少なくとも2つの気圧変動センサ50の出力特性が一致するように調整する。
これにより、本実施形態による気圧変動センサ50の調整方法は、上述した傾斜計測装置1と同様に、センサ間の感度バラツキを低減することができるため、傾斜情報の検出精度を向上させることができる。
【0117】
また、本実施形態では、計測ステップにおいて、特性計測部72が、出力特性として、カットオフ周波数を計測する。そして、調整ステップにおいて、容積調整部73が、少なくとも2つの気圧変動センサ50のカットオフ周波数の差が所定の範囲内になるように、容積可変部11によって調整する。
これにより、本実施形態による気圧変動センサ50の調整方法では、簡易な手法により、精度良くキャビティ10の容積を調整することができる。
【0118】
次に、図面を参照して、気圧変動センサ52の容積可変部11の変形例について説明する。
図16は、ねじ機構を利用した容積可変部11の変形例を示す図である。
<第1の変形例>
図16(a)は、ねじ機構を利用した第1の変形例の容積可変部11aを備える気圧変動センサ52aを示している。気圧変動センサ52aが備える容積可変部11aは、変位可能なキャビティ10の底面部61と、ねじ62(雄ねじ)と、第3筐体部63とを備えている。
【0119】
第3筐体部63は、底面に内側にねじ山を有する雌ねじを有しており、当該雌ねじとねじ62とにより送りねじ機構を構成している。
ねじ62は、外側にねじ山を有する雄ねじであり、回転させることで、第3筐体部63内に挿入される長さを変更可能となっている。
底面部61は、ねじ62が第3筐体部63内に挿入される長さに応じて、Z軸方向の位置が変位し、キャビティ10の容積V2を変更可能に構成されている。
本変形例の容積可変部11aは、ねじ62を回転させることにより、底面部61の位置がZ軸方向に変位し、キャビティ10の容積V2を変更する。
【0120】
このように、本変形例の容積可変部11aは、変位可能なキャビティ10の底面部61(底面)と、底面部61の位置を変更して、容積を変更する送りねじ機構(ねじ62及び第3筐体部63)とを備えている。
これにより、本変形例の容積可変部11aは、ねじ62を回転させることで、上述したメンブレン構造部60を備える場合に比べて、キャビティ10の容積V2をさらに細かく調整することができる。
【0121】
<第2の変形例>
図16(b)は、ねじ機構を利用した第2の変形例の容積可変部11bを備える気圧変動センサ52bを示している。気圧変動センサ52bが備える容積可変部11bは、変位可能なキャビティ10の底面部61aと、2つのねじ(62A、62B)と、雌ねじ部(64A、64B)を有するキャビティ筐体3と、蛇腹機構65とを備えている。
【0122】
ねじ62Aと、ねじ62Bとは、外側にねじ山を有する雄ねじであり、底面部61aに設けられた固定孔を介して、雌ねじ部64Aと、雌ねじ部64Bとに挿入されている。ねじ62Aと、ねじ62Bとは、回転させることで、雌ねじ部64Aと、雌ねじ部64Bとに挿入される長さを変更可能となっている。ここで、ねじ62A及びねじ62Bと、雌ねじ部64A及び雌ねじ部64Bとは、送りねじ機構を構成している。
【0123】
底面部61aは、ねじ62Aと、ねじ62Bとが雌ねじ部64Aと、雌ねじ部64Bとに挿入される長さに応じて、Z軸方向の位置が変位する。
蛇腹機構65は、底面部61aと、キャビティ筐体3との間を覆うように、且つ、キャビティ10を、ギャップ13以外で空気の出入りがないように、伸縮自在に構成されている。蛇腹機構65は、底面部61aのZ軸方向の変位に応じて、伸縮し、当該蛇腹機構65が伸縮することにより、キャビティ10の容積V2を変更可能に構成されている。
本変形例の容積可変部11bは、ねじ62A及びねじ62Bを回転させることにより、底面部61aの位置がZ軸方向に変位し、キャビティ10の容積V2を変更する。
【0124】
このように、本変形例の容積可変部11bは、変位可能なキャビティ10の底面部61a(底面)と、底面部61aの位置を変更して、容積を変更する送りねじ機構(ねじ62A及びねじ62B、ならびに、雌ねじ部64A及び雌ねじ部64B)とを備えている。
これにより、本変形例の容積可変部11bは、ねじ62A及びねじ62Bを回転させることで、上述したメンブレン構造部60を備える場合に比べて、キャビティ10の容積V2をさらに細かく調整することができる。
【0125】
また、本変形例では、容積可変部11bは、キャビティ10の側面に配置された、底面部61aを変位する蛇腹機構65を備えている。
これにより、本変形例の容積可変部11bは、上述した第1の変形例と同様に、キャビティ10の容積V2を調整することができる。
【0126】
<第3の変形例>
図16(c)は、ねじ機構を利用した第3の変形例の容積可変部11cを備える気圧変動センサ52cを示している。気圧変動センサ52cが備える容積可変部11cは、ねじ62(雄ねじ)と、第3筐体部63とを備えている。
ねじ62(雄ねじ)と、第3筐体部63とは、第1の変形例の容積可変部11aと同様であり、容積可変部11cは、変位可能なキャビティ10の底面部61を備えない点が異なる。
【0127】
本変形例の容積可変部11cは、ねじ62を回転させることにより、第3筐体部63内(キャビティ10内)に挿入される長さが変更され、キャビティ10内に挿入されたねじ62の体積により、キャビティ10の容積V2を変更する。
これにより、本変形例の容積可変部11cは、上述した第1の変形例と同様に、キャビティ10の容積V2を調整することができる。
【0128】
<第4の変形例>
図17は、樹脂注入を利用した容積可変部11の変形例を説明する図である。
図17(a)に示すように、本変形例の気圧変動センサ52dは、キャビティ筐体3の底部に挿入孔66を備えている。気圧変動センサ52dは、キャビティ10の容積V2を調整する際に、挿入孔66からキャビティ10内に、例えば、接着剤や硬化性樹脂などの樹脂67を注入される。
【0129】
その結果、気圧変動センサ52dは、
図17(b)に示すように、キャビティ10内に樹脂部67aが形成される。そして、
図17(c)に示すように、樹脂部67aが硬化され、キャビティ筐体3の底部に挿入孔66を塞ぐように固定される。なお、本変形例の容積可変部11dは、キャビティ筐体3の底部に挿入孔66を塞ぐように固定された樹脂部67aを備えている。
本変形例の容積可変部11dは、キャビティ10内に挿入された樹脂部67aの体積により、キャビティ10の容積V2を変更する。すなわち、本変形例の容積可変部11dは、キャビティ10の内部に配置された樹脂部67aによってキャビティ10の容積V2を変更する。
これにより、本変形例の容積可変部11dは、上述したメンブレン構造部60を備える場合に比べて、キャビティ10の容積V2をさらに細かく調整することができる。
【0130】
図18は、ピエゾ素子を利用した容積可変部11の変形例を示す図である。
<第5の変形例>
図18(a)は、ピエゾ素子68を利用した第5の変形例の容積可変部11eを備える気圧変動センサ52eを示している。気圧変動センサ52eが備える容積可変部11eは、ピエゾ素子68と、ピエゾドライバ部69とを備えている。
【0131】
ピエゾ素子68(圧電素子の一例)は、キャビティ10の底面部を形成しており、ピエゾドライバ部69から電圧を印加されることで、体積が変化し、キャビティ10の底面の位置が変位する。
ピエゾドライバ部69は、ピエゾ素子68に電圧を印加する。ピエゾドライバ部69は、例えば、外部からの指令に基づいて、ピエゾ素子68に印加する電圧を変更できるものとする。
【0132】
本変形例の容積可変部11eは、ピエゾ素子68に電圧を印加することにより、ピエゾ素子68の体積が変化し、当該ピエゾ素子68の体積の変化により、キャビティ10の容積V2を変更する。
これにより、本変形例の容積可変部11eは、上述したメンブレン構造部60を備える場合に比べて、キャビティ10の容積V2をさらに細かく調整することができる。
【0133】
また、本変形例の容積可変部11eは、ピエゾ素子68に電圧を印加するピエゾドライバ部69を備えている。
これにより、本変形例の容積可変部11eは、電子制御により、キャビティ10の容積V2を調整することできる。すなわち、気圧変動センサ52eは、傾斜計測装置1に実装された後に、キャビティ10の容積V2を調整することできる。
【0134】
<第6の変形例>
図18(b)は、ピエゾ素子68aを利用した第6の変形例の容積可変部11fを備える気圧変動センサ52fを示している。気圧変動センサ52fが備える容積可変部11fは、変位可能なキャビティ10の底面部61と、ピエゾ素子68aと、第3筐体部63と、ピエゾドライバ部69とを備えている。
本変形例では、第1の変形例におけるねじ62の代わりに、ピエゾ素子68aを利用して、キャビティ10の底面部61を変位させる変形例である。
【0135】
ピエゾ素子68a(圧電素子の一例)は、底面部61と、第3筐体部63の底面部との間に配置され、ピエゾドライバ部69から電圧を印加されることで、体積がZ軸方向に変化する。
底面部61は、ピエゾ素子68aの体積がZ軸方向に変化することにより、Z軸方向の位置が変位する。
ピエゾドライバ部69は、ピエゾ素子68aに電圧を印加する。ピエゾドライバ部69は、例えば、外部からの指令に基づいて、ピエゾ素子68aに印加する電圧を変更できるものとする。
【0136】
本変形例の容積可変部11fは、ピエゾ素子68aにピエゾドライバ部69から電圧を印加することにより、ピエゾ素子68aの体積が変化し、当該ピエゾ素子68aの体積の変化に応じて、キャビティ10の容積V2を変更する。
このように、本変形例の容積可変部11fは、変位可能なキャビティ10の底面部61(底面)と、底面部61の位置を変更して、キャビティ10の容積V2を変更するピエゾ素子68a(圧電素子)とを備えている。
これにより、本変形例の容積可変部11fは、上述した第5の変形例と同様に、電子制御により、キャビティ10の容積V2を調整することできる。
【0137】
<第7の変形例>
図18(c)は、ピエゾ素子68bを利用した第7の変形例の容積可変部11gを備える気圧変動センサ52gを示している。気圧変動センサ52gが備える容積可変部11gは、ピエゾ素子68bと、第3筐体部63と、ピエゾドライバ部69とを備えている。
【0138】
ピエゾ素子68b(圧電素子の一例)は、キャビティ筐体3と第3筐体部63との間に配置されている。ピエゾ素子68bは、ピエゾドライバ部69から電圧を印加されることで、体積がZ軸方向に変化する。
第3筐体部63は、ピエゾ素子68bの体積がZ軸方向に変化することにより、Z軸方向の位置が変位する。すなわち、キャビティ10の底面部が、Z軸方向の位置が変位する。
ピエゾドライバ部69は、ピエゾ素子68bに電圧を印加する。ピエゾドライバ部69は、例えば、外部からの指令に基づいて、ピエゾ素子68bに印加する電圧を変更できるものとする。
【0139】
本変形例の容積可変部11gは、ピエゾ素子68bにピエゾドライバ部69から電圧を印加することにより、ピエゾ素子68bの体積が変化し、当該ピエゾ素子68bの体積の変化に応じて、キャビティ10の容積V2を変更する。
このように、本変形例の容積可変部11gは、変位可能なキャビティ10の底面部(第3筐体部63の底面)と、キャビティ10の底面部の位置を変更して、キャビティ10の容積V2を変更するピエゾ素子68b(圧電素子)とを備えている。
これにより、本変形例の容積可変部11gは、上述した第5及び第6の変形例と同様に、電子制御により、キャビティ10の容積V2を調整することできる。
【0140】
なお、上述した第5〜第7の変形例において、ピエゾ素子68(68a、68b)を用いる例を説明したが、電圧を印加することで変形可能な圧電素子であれば、他の圧電素子であってもよい。
【0141】
<第8の変形例>
図19は、モータ及びねじ機構を利用した容積可変部11の変形例を示す図である。
図19に示す気圧変動センサ52hが備える容積可変部11hは、モータ81と、回転軸82と、ピストン83と、モータドライバ部84とを備えている。
【0142】
モータ81は、キャビティ筐体3の底面部に配置され、モータドライバ部84から供給される電力により、回転軸82を回転させる。
回転軸82は、先端が外部にねじ山を有する雄ねじになっており、モータ81により回転される。回転軸82は、回転されることにより、ピストン83のZ軸方向の位置を変位させる。
【0143】
ピストン83は、キャビティ10の底面部に配置され、Z軸方向に変位可能に配置されている。また、ピストン83は、内側にねじ山を有する雌ねじとして機能し、ピストン83の当該雌ねじと、回転軸82の雄ねじとにより送りねじ機構を構成している。ピストン83は、回転軸82の回転に応じて、Z軸方向に位置が変位する。
モータドライバ部84は、モータ81を駆動する電力(電気信号)をモータ81に供給する。
【0144】
本変形例の容積可変部11hは、モータ81により回転軸82を回転させることにより、ピストン83の位置がZ軸方向に変位してキャビティ10内にピストン83を挿入する。本変形例の容積可変部11hは、キャビティ10に挿入されたピストン83の体積に応じて、キャビティ10の容積V2を変更する。
【0145】
このように、本変形例の容積可変部11hは、変位可能なキャビティ10の底面部(ピストン83)と、キャビティ10の底面部の位置を変更して、キャビティ10の容積V2を変更する送りねじ機構(ピストン83及び回転軸82)とを備えている。
これにより、本変形例の容積可変部11hは、上述した第1の変形例と同様に、メンブレン構造部60を備える場合に比べて、キャビティ10の容積V2をさらに細かく調整することができる。
【0146】
また、本変形例では、容積可変部11hは、送りねじ機構(ピストン83及び回転軸82)を動作させるモータ81と、モータドライバ部84とを備えている。
これにより、本変形例の容積可変部11hは、上述した第5〜第7の変形例と同様に、電子制御により、キャビティ10の容積V2を調整することできる。また、本変形例の容積可変部11hは、電力供給の必要なしに、キャビティ10の容積V2を調整した状態を維持することができる。そのため、本変形例の容積可変部11hは、傾斜計測装置1の消費電力を低減させることができる。
【0147】
なお、本実施形態による傾斜計測装置1は、容積可変部11の代わりに、上述した第1〜第8の変形例の容積可変部11a〜11hのいずれかを備えるようにしてもよいし、他の方式の容積可変部を備えるようにしてもよい。
【0148】
[第2の実施形態]
次に、図面を参照して、第2の実施形態による気圧変動センサ50の調整方法について説明する。
図20は、第2の実施形態による気圧変動センサの調整方法の一例を示すフローチャートである。
なお、本実施形態において、傾斜計測装置1及び調整装置7の構成は、第1の実施形態と同様であるので、ここではその説明を省略する。
【0149】
図20において、まず、調整装置7の特性計測部72は、気圧変動センサ(51、52)のカットオフ周波数(fc1、fc2)を計測する(ステップS401)。なお、ステップS401の処理は、上述した
図15のステップS301の処理と同様である。
【0150】
次に、調整装置7の容積調整部73は、カットオフ周波数fc1とカットオフ周波数fc2との差が第1許容値以内であるか否かを判定する(ステップS402)。容積調整部73は、カットオフ周波数fc1とカットオフ周波数fc2との差が第1許容値以内である場合(ステップS402:YES)に、処理を終了する。また、容積調整部73は、カットオフ周波数fc1とカットオフ周波数fc2との差が第1許容値を超える場合(ステップS402:NO)に、処理をステップS403に進める。
【0151】
続く、ステップS403からステップS405の処理は、上述した
図15のステップS303からステップS305の処理と同様であるので、ここではその説明を省略する。
ステップS404及びステップS405の処理後に、特性計測部72は、気圧変動センサ(51、52)のカットオフ周波数(fc1、fc2)を計測する(ステップS406)。
【0152】
次に、容積調整部73は、カットオフ周波数fc1とカットオフ周波数fc2との差が第2許容値以内であるか否かを判定する(ステップS407)。ここで、第2許容値は、上述した第1許容値とは異なる値である。第2許容値は、例えば、第1許容値よりも厳しい許容値としてもよいし、第1許容値よりも緩い許容値としてもよい。容積調整部73は、カットオフ周波数fc1とカットオフ周波数fc2との差が第2許容値以内である場合(ステップS407:YES)に、処理を終了する。また、容積調整部73は、カットオフ周波数fc1とカットオフ周波数fc2との差が第2許容値を超える場合(ステップS407:NO)に、処理をステップS403に戻す。
【0153】
以上説明したように、本実施形態による気圧変動センサ50の調整方法では、容積調整部73は、カットオフ周波数fc1とカットオフ周波数fc2との差が第1許容値を超えある場合に、容積可変部11によるキャビティ10の容積V2の調整を行う。そして、容積調整部73は、再び測定したカットオフ周波数fc1とカットオフ周波数fc2との差が第2許容値以内になるまで調整処理を繰り返す。ここで、第2許容値は、第1許容値と異なる値である。
これにより、本実施形態による気圧変動センサ50の調整方法では、2つの許容値を使用することで、気圧変動センサ50の調整のランク分けを行うことができる。例えば、第2許容値が第1許容値より厳しい値である場合には、より追い込んだ調整が可能になり、より精度を求める場合の傾斜計測装置1に使用することができる。
【0154】
[第3の実施形態]
次に、図面を参照して、第3の実施形態による傾斜計測装置1及び気圧変動センサ50の調整方法について説明する。
本実施形態では、2つの気圧変動センサ50の両方が、容積可変部11を備える場合の一例について説明する。なお、図示を省略するが、本実施形態による傾斜計測装置1は、気圧変動センサ51aと気圧変動センサ52とを備えている。気圧変動センサ51aは、気圧変動センサ52と同一の構成であり、容積可変部11を備えているものとする。また、本実施形態において、気圧変動センサ51aと、気圧変動センサ52とは、傾斜計測装置1が備える任意の気圧変動センサを示す場合、又は特に区別しない場合には、気圧変動センサ50として説明する。
【0155】
図21は、本実施形態による調整装置7aの一例を示すブロック図である。
図21に示すように、調整装置7aは、密閉容器70と、気圧可変部71と、特性計測部72と、容積調整部73aとを備えている。
なお、
図21において、
図13に示す構成と同一の構成には、同一の符号を付与してその説明を省略する。
本実施形態では、容積調整部73aが、気圧変動センサ51aと気圧変動センサ52との両方の調整を行う点が、第1及び第2の実施形態と異なる。
【0156】
容積調整部73a(調整部の一例)は、気圧変動センサ51aと気圧変動センサ52とが備える容積可変部11によって、特性計測部72によって計測された少なくとも2つの気圧変動センサ50(気圧変動センサ51a及び気圧変動センサ52)の出力特性が一致するように調整する。すなわち、容積調整部73aは、カットオフ周波数計測部721が計測したカットオフ周波数fc1と、カットオフ周波数計測部722が計測したカットオフ周波数fc2とを比較し、当該比較結果に基づいて、容積可変部11のメンブレン構造部60を変形させて、カットオフ周波数fc1と、カットオフ周波数fc2とが一致するように調整する。
【0157】
次に、
図22を参照して、本実施形態による気圧変動センサ50の調整方法について説明する。
図22は、本実施形態による気圧変動センサ50の調整方法の一例を示すフローチャートである。
図22に示すように、まず、調整装置7aの特性計測部72は、気圧変動センサ(51a、52)のカットオフ周波数(fc1、fc2)を計測する(ステップS501)。特性計測部72は、気圧可変部71に密閉容器70内の気圧を、周波数を変化させて変更し、カットオフ周波数計測部721が、気圧変動センサ51aのカットオフ周波数fc1を計測するとともに、カットオフ周波数計測部722が、気圧変動センサ52のカットオフ周波数fc2を計測する。
【0158】
続く、ステップS502及びステップS503の処理は、上述した
図15に示すステップS302及びステップS303の処理と同様であるので、ここではその説明を省略する。なお、ステップ503において、調整装置7aの容積調整部73aは、カットオフ周波数fc1がカットオフ周波数fc2より大きい場合に、処理をステップS504に進め、カットオフ周波数fc1がカットオフ周波数fc2より小さい場合に、処理をステップS505に進める。
【0159】
ステップS504において、容積調整部73aは、気圧変動センサ52のキャビティ10の容積V2を小さくする、又は、気圧変動センサ51aのキャビティ10の容積V1を大きくする。すなわち、容積調整部73aは、気圧変動センサ52の容積可変部11のメンブレン構造部60を変形させて、キャビティ10の容積V2を小さくする、又は、気圧変動センサ51aの容積可変部11のメンブレン構造部60を変形させて、キャビティ10の容積V1を大きくする制御を行う。ステップS504の処理後に、容積調整部73aは、処理をステップS501に戻す。
【0160】
ステップS505において、容積調整部73aは、気圧変動センサ52のキャビティ10の容積V2を大きくする、又は、気圧変動センサ51aのキャビティ10の容積V1を小さくする。すなわち、容積調整部73aは、気圧変動センサ52の容積可変部11のメンブレン構造部60を変形させて、キャビティ10の容積V2を大きくする、又は、気圧変動センサ51aの容積可変部11のメンブレン構造部60を変形させて、キャビティ10の容積V1を小さくする制御を行う。ステップS505の処理後に、容積調整部73aはa、処理をステップS501に戻す。
【0161】
このように、本実施形態による気圧変動センサ50の調整方法では、気圧変動センサ(51a、52)の出力特性が一致するように、気圧変動センサ51a又は気圧変動センサ52の容積可変部11を調整する。このように調整された2つの気圧変動センサ50が、傾斜計測装置1に実装される。
【0162】
なお、上述した
図22に示す例では、調整装置7aが、容積調整部73aを備え、容積調整部73aが、容積可変部11に指示してキャビティ10の容積(V1、V2)を調整する例を説明したが、容積可変部11が人手(例えば、作業者)によりキャビティ10の容積(V1、V2)を調整する場合には、容積調整部73aによる処理を人手で行うようにしてもよい。
【0163】
以上説明したように、本実施形態による気圧変動センサ50の調整方法では、調整ステップ(ステップS502からステップS505)において、容積調整部73aが、少なくとも2つの気圧変動センサ50(51a、52)のカットオフ周波数の差が所定の範囲内になるように、気圧変動センサ51aの容積可変部11、又は気圧変動センサ52の容積可変部11によって調整する。
これにより、本実施形態による気圧変動センサ50の調整方法では、気圧変動センサ51aと気圧変動センサ52とのいずれか一方、又は両方により調整できるため、さらに細かくキャビティ10の容積を調整することができる。すなわち、本実施形態による気圧変動センサ50の調整方法では、キャビティ10の容積を調整する自由度を向上させることができる。
【0164】
[第4の実施形態]
次に、
図23を参照して、第4の実施形態による傾斜計測装置1について説明する。
本実施形態では、傾斜計測装置1が、気圧変動センサ50の調整機能を備える場合の一例について説明する。
【0165】
図23は、第4の実施形態による傾斜計測装置1の傾斜変動センサ40の一例を示すブロック図である。
図23に示すように、傾斜計測装置1の傾斜変動センサ40は、通信部41と、傾斜変動情報生成部42と、2つの気圧変動センサ(51、52)と、特性計測部72と、容積調整部73とを備えている。
なお、
図23において図示を省略した傾斜計測装置1の他の構成は、第1の実施形態と同様である。また、
図23において、
図3及び
図13に示す構成と同一の構成には、同一の符号を付与してその説明を省略する。
【0166】
また、本実施形態による傾斜計測装置1は、気圧変動センサ50を調整する場合に、
図23に示すように、気圧可変部71を備える密閉容器70に収納されて、気圧変動センサ50の調整が行われる。また、本実施形態による気圧変動センサ50の調整方法は、第1の実施形態と同様であるので、ここではその説明を省略する。
【0167】
以上説明したように、本実施形態による傾斜計測装置1は、特性計測部72と、容積調整部73(調整部)とを備えている。特性計測部72は、少なくとも2つの気圧変動センサ50の出力特性を計測する。容積調整部73は、特性計測部72によって計測された少なくとも2つの気圧変動センサ50の出力特性が一致するように、容積可変部11により調整する。
これにより、本実施形態による傾斜計測装置1は、気圧変動センサ50を実装した状態において、気圧変動センサ50を調整することができる。例えば、経年変化などにより、2つの気圧変動センサ50の出力特性がずれた場合などであっても、本実施形態による傾斜計測装置1は、気圧変動センサ50を調整することができる。よって、本実施形態による傾斜計測装置1は、傾斜情報の検出精度を維持することができる。
【0168】
[第5の実施形態]
次に、
図24を参照して、第5の実施形態による傾斜計測システム100について説明する。
なお、本実施形態では、上述した傾斜計測装置1を複数の装置に分割して、傾斜計測システム100とした場合の一例について説明する。
図24に示すように、傾斜計測システム100は、傾斜計測装置1aと、センサユニット1bとを備えている。
なお、
図24において、
図2及び
図3に示す構成と同一の構成には、同一の符号を付与してその説明を省略する。
【0169】
傾斜計測装置1aは、電源部31と、静止判定部33と、記憶部34と、制御部35とを備えている。また、センサユニット1bは、静止傾斜センサ32と、傾斜変動センサ40とを備えている。なお、本実施形態において、制御部35と、傾斜変動センサ40の通信部41及び傾斜変動情報生成部42とは、第1の実施形態と同様に、傾斜情報計測部30に対応する。
本実施形態による傾斜計測システム100は、傾斜計測装置1aは、静止傾斜センサ32及び傾斜変動センサ40を、傾斜計測装置1aとは別体のセンサユニット1bに備えるように構成し、傾斜計測装置1aと、センサユニット1bとを異なる場所に配置することを可能にする。
なお、傾斜計測装置1aと、センサユニット1bとの間の接続は、有線接続であってもよいし、無線通信などで接続するようにしてもよい。
【0170】
以上説明したように、本実施形態による傾斜計測システム100は、第1の実施形態の傾斜計測装置1と同様に、少なくとも2つの気圧変動センサ50と、傾斜情報計測部30とを備えている。気圧変動センサ50は、空気が流入するキャビティ10と、空気をキャビティ10の内外に流通させるギャップ13(連通孔)と、を有し、キャビティ10の内部と外部との圧力差に基づいて気圧の変動を検出する。そして、少なくとも2つの気圧変動センサ50のうちの少なくとも1つが、キャビティ10の容積を変更する容積可変部11を備える。
これにより、本実施形態による傾斜計測システム100は、第1の実施形態の傾斜計測装置1と同様に、容積可変部11を備えることにより、センサ間の感度バラツキを低減することができるため、傾斜情報の検出精度を向上させることができる。
【0171】
なお、本発明は、上記の各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
例えば、上述した各実施形態において、制御部35は、傾斜角初期値θ
0を初期化する初期化要求(リセット要求)に応じて、静止判定部33によって計測対象物が静止していると判定された場合に、静止傾斜情報(静止傾斜角θ
S)を傾斜角初期値θ
0として記憶部34に記憶させるようにしてもよい。
これにより、例えば、計測誤差が蓄積した場合などに、リセット要求により静止傾斜情報(静止傾斜角θ
S)を傾斜角初期値θ
0として再設定することで、傾斜計測装置1は、計測対象物の傾斜情報(傾斜角θ)の検出精度を高精度に維持することができる。
【0172】
また、リセット要求があった場合であっても、制御部35は、計測対象物が静止状態でない場合には、計測を継続するので、傾斜計測装置1は、測定不可能な期間を低減しつつ、高精度に傾斜情報を計測することができる。
【0173】
また、上記の各実施形態において、計測対象物の傾斜角の変動に関する情報を示す傾斜変動情報の一例として、高度変動情報ΔH
Dを適用する例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、計測対象物が水平に近い範囲でのみ使用する場合には、傾斜変動情報は、傾斜変動情報生成部42によって、上述した式(2)に基づいて、生成された傾斜角の変動分(Δθ)であってもよい。この場合、制御部35は、記憶部34が記憶する傾斜角初期値θ
0に、当該傾斜角の変動分(Δθ)を加算して、現在の傾斜角θを算出してもよい。
【0174】
また、上記の各実施形態において、記憶部34には、傾斜角初期値θ
0を記憶させる例を説明したが、傾斜角初期値θ
0の代わりに、傾斜角初期値θ
0から変換した高度差ΔH
0を記憶させるようにしてもよい。
また、上記の各実施形態において、静止傾斜センサ32が、加速度センサを使用した傾斜角センサである例を説明したが、ジャイロセンサ等を使用した傾斜角センサであってもよい。
【0175】
また、上記の各実施形態において、傾斜計測装置1及び傾斜計測システム100が、2つの気圧変動センサ50を備える例を説明したが、2つ以上の気圧変動センサ50を備えるようにしてもよい。
また、上記の各実施形態において、気圧変動センサ50の出力特性の一例として、カットオフ周波数を用いる例を説明したが、これに限定されるものではなく、カットオフ周波数の代わりに、例えば、出力波形、他の周波数特性、遅延特性、位相特性などを用いてもよい。
【0176】
また、上記の第3〜第4の実施形態は、第1の実施形態に適用する例を説明したが、第2の実施形態に適用してもよい。
また、上記の第4の実施形態において、気圧変動センサ50を調整する際に、傾斜計測装置1を密閉容器70に収納する例を説明したが、傾斜計測装置1の気圧変動センサ50を含む一部を密閉容器70に収納するようにしてもよい。
【0177】
また、上記の第1〜第3の実施形態の実施形態において、調整装置7(7a)は、検出回路22を含む気圧変動センサ50を調整する例を説明したが、これに限定されるものではなく、検出回路22を含まない気圧変動センサ50について調整するようにしてもよい。例えば、検出回路22を含まない形態で気圧変動センサ50を調整する場合には、調整装置7(7a)は、特性計測部72の前に検出回路22を備えるようにしてもよい。
【0178】
また、上記の第3の実施形態において、2つの気圧変動センサ50のカットオフ周波数の差が所定の範囲内になるように、容積可変部11を調整する例を説明したが、2つの気圧変動センサ50のカットオフ周波数のそれぞれが、所定の範囲内になるように、各容積可変部11を調整してもよい。
また、上記の第2〜第5の実施形態において、容積可変部11の代わりに、上述した第1〜第8の変形例の容積可変部11a〜11hのいずれかが、適用されてもよいし、他の方式の容積可変部が適用されるようにしてもよい。
【0179】
なお、上述した傾斜計測装置1(1a)及び調整装置7(7a)が備える各構成は、内部に、コンピュータシステムを有している。そして、上述した傾斜計測装置1(1a)及び調整装置7(7a)が備える各構成の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより上述した傾斜計測装置1(1a)及び調整装置7(7a)が備える各構成における処理を行ってもよい。ここで、「記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行する」とは、コンピュータシステムにプログラムをインストールすることを含む。ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
また、「コンピュータシステム」は、インターネットやWAN、LAN、専用回線等の通信回線を含むネットワークを介して接続された複数のコンピュータ装置を含んでもよい。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。このように、プログラムを記憶した記録媒体は、CD−ROM等の非一過性の記録媒体であってもよい。
【0180】
また、記録媒体には、当該プログラムを配信するために配信サーバからアクセス可能な内部又は外部に設けられた記録媒体も含まれる。なお、プログラムを複数に分割し、それぞれ異なるタイミングでダウンロードした後に傾斜計測装置1(1a)及び調整装置7(7a)が備える各構成で合体される構成や、分割されたプログラムのそれぞれを配信する配信サーバが異なっていてもよい。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、ネットワークを介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また、上記プログラムは、上述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、上述した機能をコンピュータシステムに既に記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0181】
また、上述した傾斜計測装置1(1a)が備える機能の一部又は全部を、LSI(Large Scale Integration)等の集積回路として実現してもよい。上述した各機能は個別にプロセッサ化してもよいし、一部、又は全部を集積してプロセッサ化してもよい。また、集積回路化の手法はLSIに限らず専用回路、又は汎用プロセッサで実現してもよい。また、半導体技術の進歩によりLSIに代替する集積回路化の技術が出現した場合、当該技術による集積回路を用いてもよい。