(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ニップロールの全体幅a´は、前記転写ロールの幅bと同じか、あるいはそれよりも大きく、前記ニップロールの両端部に凹み段差が形成されて、前記ニップロールの前記転写ロールに当接する幅aが規定されており、前記式(1)が成り立つことを特徴とする請求項3記載の微細凹凸パターンを有するフィルム状被転写材の製造装置。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施の形態(以下、「実施の形態」と略記する。)について、詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0018】
本実施の形態に係るフィルム状被転写材の製造方法について説明する。本実施の形態に係るフィルム状被転写材の製造方法は、ロール・ツー・ロール法を用いる。以下、フィルム状被転写材の製造方法において、円筒状金型を原版として製造したフィルム状被転写材を第1のフィルム状モールドと称して説明する。また、バックロールの表面の一部に巻かれた第1のフィルム状モールドを用いて製造されたフィルム状被転写材を、第2のフィルム状モールドと称して説明する。
【0019】
第1のフィルム状モールドは、円筒状金型(転写ロール)を原版として使用した、ロール・ツー・ロール法により製造できる。まず、第1のフィルム状モールドのためのフィルム状基材の表面に光硬化性樹脂を塗布して光硬化性樹脂層を形成する。未硬化の光硬化性樹脂層に対して円筒状金型の周面上に設けられた微細凹凸パターンを密着させ、その後、光硬化性樹脂層を光硬化させて、表面に微細凹凸パターンが転写された樹脂硬化物層を形成する。
【0020】
図1は、本実施の形態に係る第1のフィルム状モールドの製造工程に用いられる製造装置を示す概略図である。
【0021】
図1に示す製造装置100は、フィルム状基材101を送り出す原反ロール102と、第1のフィルム状モールド103を巻き取る巻き取りロール104とを備える。原反ロール102と巻き取りロール104との間には、フィルム状基材101の搬送方向MDにおける上流側から下流側に向けて順に、フィルム状基材101上に光硬化性樹脂を塗布する塗布手段105と、ガイドロール106と、外周面に微細凹凸パターンを有する転写ロール107と、フィルム状基材101上の光硬化性樹脂と転写ロール107の外周面との間を密着させるニップロール108a及び108bからなる押圧手段108と、光硬化性樹脂に光を照射する光源109と、ガイドロール110と、が設けられている。
【0022】
なお、溶媒を用いて光硬化性樹脂を塗布する場合には、光硬化性樹脂中の溶媒を乾燥する乾燥炉111をさらに備えていても良い。
【0023】
上述のような構成からなる製造装置100を用いて、次のように、第1のフィルム状モールドを作製する。まず、原反ロール102から送り出した光透過性のフィルム状基材101上に塗布手段105により光硬化性樹脂を塗布して光硬化性樹脂層を形成する。光硬化性樹脂層付きのフィルム状基材101は、ガイドロール106を経て転写ロール107へ供給する。
【0024】
次に、転写ロール107を回転させながら、押圧手段108によって転写ロール107の外周面を光硬化性樹脂層に密着させて光硬化性樹脂層の表面に微細凹凸パターンを転写する。次に、光硬化性樹脂層に光源109から光を照射して光硬化性樹脂層を光硬化して樹脂硬化物層を形成して、第1のフィルム状モールド103を作製する。第1のフィルム状モールド103を、ガイドロール110を経て、巻き取りロール104で巻き取る。
【0025】
なお、第1のフィルム状モールド103の作製工程においては、転写ロール107から第1のフィルム状モールド103に転写された微細凹凸パターンを保護するため、光硬化後の光硬化性樹脂層上に保護フィルム(カバーフィルム)をラミネートしてもよい。
【0026】
第1のフィルム状モールド103の作製工程においては、転写ロール107と光硬化性樹脂層とを圧着する押圧手段108により転写ロール107と光硬化性樹脂層とが密着した状態で、光硬化性樹脂層に光を照射して光硬化する。転写ロール107の外周面の微細凹凸パターンと光硬化性樹脂層とが密着した状態であるため、転写ロール107の外周面の微細凹凸パターンを正確に光転写でき、また、酸素による硬化不足を回避することができる。
【0027】
また、第1のフィルム状モールド103の作製工程においては、窒素雰囲気下において、転写ロール107と光硬化性樹脂層とを密着させて光照射を行うことが好ましい。これにより、光硬化性樹脂層の光硬化性樹脂への大気中の酸素の接触を避けることができ、酸素による光重合反応の阻害を低減できるので、光硬化性樹脂を充分に硬化させることができるからである。
【0028】
図1では、光硬化性樹脂層と転写ロール107とを密着させて光を照射するために、押圧手段108としてのニップロール108a、108bにより、光硬化性樹脂層と転写ロールとを直接圧着して光を照射する。また、巻出及び巻取制御によりフィルム状基材101の張力を制御して光硬化性樹脂層と転写ロールとを圧着した状態で光を照射してもよい。これらの場合においては、光硬化性樹脂層の転写性により押し付け圧、張力は適宜調整することができる。
【0029】
図2は、本実施の形態における、ニップロールの幅a、転写ロールの幅b、及び、フィルム状被転写材の幅cの各大きさの関係を説明するための概略平面図である。
【0030】
図2Aに示すように、ニップロール108a、108bの幅はaであり、転写ロール107の幅はbであり、第1のフィルム状モールド103の幅はcである。
図2Aに示すように、各幅a、b、cの間には以下の式(1)が成り立っている。
a<b、且つ、a<c・・・(1)
【0031】
式(1)によれば、ニップロール108a、108bの幅aは、転写ロール107の幅b及び、第1のフィルム状モールド103の幅cのいずれに対しても小さい。
【0032】
このため、ニップロール108a、108bの幅a全体が、第1のフィルム状モールド103を介して、転写ロール107に当接する幅となっている。
図2に示すように、ニップロール108a、108bは、第1のフィルム状モールド103の両端部よりも内側に収まっているため、第1のフィルム状モールド103が、ニップロール108a、108bと転写ロール107との間に挟持されて押圧されても、第1のフィルム状モールド103に対する押圧領域は、ニップロール108a、108bと当接する範囲に限られ、樹脂のフィルム端部からのはみ出しを適切に防止することが出来る。したがって、樹脂のはみ出しによる発塵の発生、フィルム裏面への回り込み、及び、転写ロール側面への樹脂付着を防止することが出来る。
【0033】
図2Aに示す構成において、転写ロール107の幅bと、第1のフィルム状モールド103の幅cとの関係を限定するものではないが、c≦bであることが好適である。c>bであると、転写ロールの両端部である側面に、樹脂が堆積し、発塵源となる場合があるが、c≦bであれば、第1のフィルム状モールドの両端に広がった樹脂は、第1のフィルム状モールドに移行し搬送されるため、発塵源とならない。
【0034】
また、第1のフィルム状モールド103は、フィルム状基材と、フィルム状基材に塗布された樹脂層とを有し、この樹脂層に微細凹凸パターンが転写される。本実施の形態では、樹脂層に微細凹凸パターンが転写される前の塗布幅W1(後述する
図5参照)を、ニップロール108a、108bの幅a以下に設定することが好ましい。
【0035】
次に、
図2Bでは、各幅a、b、cの間に、以下の式(2)が成り立っている。
b<a、且つ、b<c・・・(2)
【0036】
すなわち、式(2)によれば、転写ロール107の幅bは、ニップロール108a、108bの幅a、及び、第1のフィルム状モールド103の幅cのいずれに対しても小さい。この構成によっても、樹脂のフィルム端部からのはみ出しを適切に防止することが出来る。したがって、樹脂のはみ出しによる発塵の発生、フィルム裏面への回り込み、及び、転写ロール側面への樹脂付着を防止することが出来る。
【0037】
図2Bに示す構成において、ニップロール108a、108bの幅aと、第1のフィルム状モールド103の幅cとの関係を限定するものではないが、c≦aであることが好適である。c>aの場合、ニップロールの幅aより広い範囲の第1のフィルム状モールド103の幅cの領域において、フィルムの折れやシワが発生することがあるが、c≦aであれば、第1のフィルム状モールド103の全面がニップロールに接していることになるため、フィルムの折れやシワを抑制することが出来る。
【0038】
また、第1のフィルム状モールド103は、フィルム状基材と、フィルム状基材に塗布された樹脂層とを有し、この樹脂層に微細凹凸パターンが転写される。本実施の形態では、樹脂層に微細凹凸パターンが転写される前の塗布幅W1(後述する
図5参照)を、転写ロール107の幅b以下に設定することが好ましい。塗布幅W1を、転写ロール107の幅bよりも広くすると、樹脂漏れのリスクが高まる。
【0039】
本実施の形態では、上記式(1)又は式(2)のいずれかが成り立つが、式(1)及び式(2)のうち、ニップロール108a、108bの幅aを、微細凹凸パターンを有する転写ロール107の幅bよりも小さくした上記の式(1)を採用することが好適である。これにより、長時間転写によっても、樹脂が転写ロール107の端部に付着することをより効果的に防止できる。また、樹脂が酸素雰囲気に露出しないため、酸素阻害による未硬化を防止することが出来る。
【0040】
ところで、上記の
図2Aにおいて、ニップロール108a、108bの幅aは、ニップロール108a、108bの両端間の長さとして表される全体幅である。そして
図2Aでは、幅a全体が、第1のフィルム状モールド103の裏面に当接する円周上の面とされる。ただし、次のような構成では、ニップロール108a、108bの全体幅を、転写ロール107の幅b以上としても、上記の式(1)を成立させることができる。
【0041】
図3は、本実施の形態におけるニップロールの構造を説明するための概略斜視図である。
図3に示すように、ニップロール108a、108bの両端間の長さである全体幅はa´とされている。
図3に示すように、ニップロール108a、108bの両端部には凹み段差112が形成されている。
【0042】
図3に示すニップロール108a、108bの全体幅a´は、転写ロール107の幅bと同じか、それよりも大きい。また、ニップロール108a、108bの両端部に形成された凹み段差112により、ニップロール108a、108bの転写ロール107に当接する幅aが規定されている。この幅aは、上記の式(1)に示すように、転写ロール107の幅bよりも小さく、且つ、第1のフィルム状モールド103の幅cよりも小さい幅である。このとき、凹み段差112により、ニップロール108a、108b端部の直径を、2mm〜5mm程度、小さくすることが好適である。
【0043】
この構成により、樹脂のはみ出し量を抑制しつつ、ニップロールの端部からの光漏れを低減することが出来る。光漏れの低減については、ニップロール108a、108bの全体幅a´が広いため、ニップロール108a、108bの両端部で遮られる光量が増えるためである。ニップロール108a、108bの全配幅a´、及び、転写ロール107の幅bは、第1のフィルム状モールド103の幅cよりも大きいことが好ましい。光漏れを低減させることによって、樹脂が転写ロールより手前で硬化することを防ぐことができ、転写性を高めることが出来る。
【0044】
(第2のフィルム状モールドの複製工程)
図4は、
図1で製造された第1のフィルム状モールドを、第2のフィルム状モールドの複製工程に用いられる製造装置を示す概略図である。
【0045】
図4に示す製造装置200は、被転写基材201を送り出すための第1の送り出しロール202と、完成した第2のフィルム状モールド203を巻き取るための第1の巻き取りロール204とを備える。第1の送り出しロール202と第1の巻き取りロール204との間には、第1のフィルム状モールド103の搬送方向MDにおける上流側から下流側に向けて順に、被転写基材201の表面に光硬化性樹脂を塗布する塗布手段205と、第1のフィルム状モールド103を送り出すための第2の送り出しロール206と、第1のフィルム状モールド103と被転写基材201とを貼り合わせるための貼合手段207と、ガイドロール208と、第1のフィルム状モールド103と被転写基材201とを密着させるための押圧手段209と、光硬化性樹脂層に光を照射する光源210と、ガイドロール211と、第1のフィルム状モールド103を巻き取るための第2の巻き取りロール212が設けられている。
【0046】
貼合手段207は、一対のラミネートロール207a、207bで構成されている。押圧手段209は、第1のフィルム状モールド103と被転写基材201がその外周面上を搬送されるバックロール209aと、バックロール209aに第1のフィルム状モールド103と被転写基材201を押圧するニップロール209b、209cで構成されている。なお、第2のフィルム状モールド203の作製において、「転写ロール」とは、バックロール209aとバックロール209aの表面の一部に巻かれた第1のフィルム状モールド103とを合わせたものを指す。バックロール209aの外周面には微細凹凸パターンは形成されておらず、微細凹凸パターンは、第1のフィルム状モールド103の表面に形成されている。第2のフィルム状モールド203の作製において、「転写ロールに形成された微細凹凸パターン」は、第1のフィルム状モールド103の表面に形成された微細凹凸パターンを指す。
【0047】
また、光硬化性樹脂を溶媒に溶かして被転写基材201に塗布する場合には、塗布手段205の下流側に乾燥炉213を設けることができる。また、貼合手段207の下流側に乾燥炉214を設けても良い。
【0048】
また、第1の送り出しロール202と、第2の送り出しロール206とを入れ替えても構わない。すなわち、第1のフィルム状モールド103の樹脂硬化物層の凹凸形成面上に光硬化性樹脂を塗布しても良い。
【0049】
このような構成からなる製造装置200を用いて、次のように第2のフィルム状モールドの複製を行う。
【0050】
まず、第1の送り出しロール202から、被転写基材201を送り出し、その表面上に、塗布手段205により光硬化性樹脂を直接塗布し、光硬化性樹脂層を形成する。
【0051】
このとき、被転写基材201上に塗布する光硬化性樹脂の塗布幅を、第1のフィルム状モールド103の樹脂硬化物層の塗布幅よりも小さくすることが好ましい。
【0052】
次に、貼合手段207によって第2の送り出しロール206から巻き出された第1のフィルム状モールド103の樹脂硬化物層の微細凹凸パターン形成面を、被転写基材201上の光硬化性樹脂層に貼り合わせる。
【0053】
この際、被転写基材201上の光硬化性樹脂層は、第1のフィルム状モールド103の樹脂硬化物層の微細凹凸パターン形成面の樹脂塗布領域内に張り合わせる。第1のフィルム状モールド103と被転写基材201との位置合わせは、例えば、フィルムの蛇行調整装置を設置することにより行うことができる。
【0054】
第1のフィルム状モールド103及び被転写基材201を、ガイドロール208を経て、押圧手段209に供給する。押圧手段209において、第1のフィルム状モールド103の樹脂硬化物層の凹凸形成面を光硬化性樹脂層に密着させる。この状態で、光源210から光硬化性樹脂に光を照射し、光硬化性樹脂を光硬化させる。押圧手段209による密着によって酸素による未硬化を防止することができる。
【0055】
この後、第1のフィルム状モールド103及び被転写基材201を、ガイドロール211まで搬送し、ここで、第1のフィルム状モールド103から表面に樹脂硬化物層が形成された被転写基材201、すなわち、第2のフィルム状モールド203を剥離する。このとき、第1のフィルム状モールド103の微細凹凸パターンの反転形状が第2のフィルム状モールド203に転写される。
【0056】
この後、第2のフィルム状モールド203を、第1の巻き取りロール204に巻き取る。一方、第1のフィルム状モールド103を、第2の巻き取りロール212に巻き取る。
【0057】
フィルム状モールドに微細凹凸パターンを転写する工程について更に詳しく説明する。
図5、
図6は、本実施の形態に係る第1のフィルム状モールドの製造方法の一工程を示す断面概略図及び平面概略図である。
【0058】
図5A及び
図5Bに示すように、フィルム状基材101の表面に光硬化性樹脂を塗布し、光硬化性樹脂層12を形成する。光硬化性樹脂は、フィルム状基材101の走り方向(MD)に沿って略帯状に塗布される。フィルム状基材101の走り方向(MD)に対して略直交する方向を幅方向と呼び、この幅方向に沿った光硬化性樹脂層12の長さを塗布幅W1とする。
【0059】
本実施の形態において、光硬化性樹脂は、離型性を良くするためにフッ素含有物質を含有していることが好ましい。
【0060】
次に、未硬化の光硬化性樹脂層12に対して転写ロール107(
図1参照)を押圧し、転写ロール107の周面上に形成された微細凹凸パターンを密着させ、その後、光硬化性樹脂層12を光硬化させて、
図6Aに示すように、表面に微細凹凸パターンが転写された樹脂硬化物層13を設け、第1のフィルム状モールド103を得る。本実施の形態では、ニップロールの幅をa、転写ロールの幅をb、及び、フィルム状被転写材の幅をcとしたとき、上記した式(1)、又は、式(2)が成り立っている。
【0061】
本実施の形態では、転写ロール107を光硬化性樹脂層12に押圧したときに、
図6A及び
図6Bに示すように、光硬化性樹脂層12が幅方向に押し広げられ、樹脂硬化物層13に転写された微細凹凸パターンの幅W2は、最初の塗布幅W1よりも外側に広がる。このように、押圧工程により微細凹凸パターンの幅W2が広がっても、本実施の形態では、上記した式(1)、又は、式(2)を満たすため、フィルム端部から樹脂がはみ出すのを防止でき、樹脂のはみ出しによる発塵の発生や、フィルム裏面への回り込み、転写ロールの側面への樹脂付着を防止することが出来る。
【0062】
図7及び
図8は、本実施の形態に係るフィルム状被転写材(第2フィルム状モールド)の製造方法の一工程を示す断面概略図及び平面概略図である。
【0063】
図7Aに示すように、第1のフィルム状モールド103から、第2のフィルム状モールドのためのフィルム状基材(以下、被転写基材と言う)31の表面に形成された被転写樹脂層32へ、微細凹凸パターン14を転写する。この際、被転写樹脂層32が樹脂硬化物層13の樹脂塗布領域13a内に収まるように、被転写樹脂層32の幅方向の長さ、すなわち
図7A及び
図7Bに示すように、塗布幅W3を樹脂塗布領域13aの塗布幅W1よりも小さくし、且つ、被転写樹脂層32を樹脂塗布領域13a内に貼り合わせる。その後、押圧しながら被転写樹脂層32を構成する光硬化性樹脂を光硬化して、
図8に示すように、フィルム状基材31と共に光硬化後の被転写樹脂層32を剥離し、第2のフィルム状モールド203を得る。第2のフィルム状モールド203の被転写樹脂層32には、第1のフィルム状モールド103の微細凹凸パターン14に対応した微細凹凸パターン33が転写されている。
図8に示すように、押圧しながら光硬化して微細凹凸パターンが転写され且つ硬化した後の被転写樹脂層32の幅を、転写幅W4とする。第2のフィルム状モールドへの微細凹凸パターンの転写工程においても、上記した式(1)、又は、式(2)が成立しているため、フィルム端部から樹脂がはみ出すのを防止でき、樹脂のはみ出しによる発塵の発生や、フィルム裏面への回り込み、転写ロールの側面への樹脂付着を防止することが出来る。
【0064】
なお、被転写樹脂層32は、フッ素含有物質を含む光硬化性樹脂を塗布して形成することが好適である。
【0065】
次に、本実施の形態に係るフィルム状被転写材の製造方法の構成要素についてさらに詳細に説明する。
【0066】
(フィルム状基材)
フィルム状基材101には光透過性があるフィルム状基材を用いることができる。
【0067】
フィルム状基材としては、紫外・可視光領域で使用する光源に対して実質的に光透過性を有する材料を主成分とするものであれば特に限定されないが、ハンドリング性、加工性に優れた樹脂材料であることが好ましい。このような樹脂材料としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、シクロオレフィン樹脂(COP)、架橋ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、トリアセチルセルロール(TAC)樹脂などの非晶性熱可塑性樹脂、及び、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂などの結晶性熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0068】
フィルム状基材は、ロール・ツー・ロール法に適用するためフィルム状であることが好ましい。
【0069】
フィルム状基材の厚みは、材料にもよるが、好ましくは20〜200μm、より好ましくは50〜150μm、さらに好ましくは50〜100μmである。200μm以下であれば、光ナノインプリントの光源に使用される紫外線の透過率が良好であり、光硬化に充分な光量を得ることができる。20μm以上であれば、フィルムとしての剛性を保持することができるため、ハンドリングが容易である。
【0070】
フィルム状基材の表面には、光硬化性樹脂との密着性向上のため、プライマー処理、大気圧プラズマ処理、コロナ処理を施すことができる。
【0071】
本実施の形態に係るフィルム状被転写材の製造方法において、上述のように、転写ロール107、又は第1のフィルム状モールド103(第2のフィルム状モールド203を作製するとき)に対して、樹脂硬化物層に密着した状態で光硬化性樹脂層に光を照射して光硬化させる。このため、使用する光硬化性樹脂にもよるが、フィルム状基材には、波長200nm〜500nmの範囲で良好な光透過率が求められる。使用する光硬化性樹脂の感光性にもよるため、波長200nm〜500nmの範囲で具体的な透過率の値については特に限定しないが、365nm、405nm及び全光線透過率が良好であれば、光硬化性樹脂が充分に光硬化するため好ましい。また、波長200nm〜500nmの範囲における透過率が良好であれば、光硬化性樹脂の硬化に要する光照射エネルギーを低減でき、且つ、転写の迅速化を達成することができる。
【0072】
(光硬化性樹脂)
光硬化性樹脂層は光硬化性樹脂で形成される。光硬化性樹脂は、転写性、原版からの剥離性、フィルム状基材との密着性、粘度、製膜特性、感光性、硬化後の力学特性、樹脂鋳型作製時の樹脂層との剥離性を考慮して選択する。
【0073】
光硬化性樹脂層を光硬化して得られる樹脂硬化物層は、樹脂鋳型として用いる場合、微細凹凸パターンが形成された凹凸形成面の表面部におけるフッ素元素濃度(Es)が、光硬化性樹脂層中の平均フッ素元素濃度(Eb)より高いことが好ましい。
【0074】
これによれば、樹脂硬化物層における凹凸形成面側のフッ素元素濃度(Es)が、樹脂硬化物層中の平均フッ素元素濃度(Eb)に対して相対的に高いことから、例えば、第2のフィルム状モールドの樹脂硬化物層の第1のフィルム状モールドからの離型性や、第2のフィルム状モールドから展開される微細凹凸パターン付製品を作製する場合の第2のフィルム状モールドからの微細凹凸パターン付製品の離型性が向上する。
【0075】
樹脂硬化物層中のフッ素原子は、フッ素原子含有物質によって導入される。フッ素含有物質は、界面活性剤、フッ素含有重合性モノマー(アクリレート、メタクリレート、エポキシ)、離型剤、表面処理剤及びフッ素系溶媒を指す。光硬化性樹脂中での運動性の観点から、好ましくは、フッ素系界面活性剤及びフッ素含有重合性モノマーである。
【0076】
本実施の形態に係るフィルム状モールドにおいては、樹脂硬化物層の凹凸形成面側の表面部におけるフッ素元素濃度(Es)が、樹脂硬化物層中の平均フッ素濃度(Eb)に対して相対的に大きくなるように、すなわちフィルム状基材側の表面部から凹凸形成面側の表面部に向けて濃度勾配を設けることが好ましい。これにより、樹脂硬化物層とフィルム状基材との間の密着性を維持しつつ、樹脂硬化物層の微細凹凸パターンからの被処理体の離型性が向上する。つまり、第1のフィルム状モールドからの第2のフィルム状モールドの離型性や、第2のフィルム状モールドからの第3のフィルム状モールドの離型性や、第2のフィルム状モールドから微細凹凸パターン付製品の離型性が向上する。
【0077】
なお、樹脂硬化物層の濃度勾配としては、凹凸形成面側の樹脂硬化物層のフッ素元素濃度(Es)が樹脂硬化物層中のフッ素元素濃度(Eb)に対して相対的に大きくなる範囲となればどのようなものであってもよい。例えば、濃度勾配としては、樹脂硬化物層のフィルム状基材側の表面部から凹凸形成面側の表面部に向けて連続的に無段階に変化するものであってもよく、階段状に段階的に変化するものであってもよい。また、樹脂硬化物層のフィルム状基材側の表面部から凹凸形成面側への厚み方向において、フィルム状基材側の表面部から樹脂硬化物層の中央部までの濃度勾配と、樹脂硬化物層の中央部から凹凸形成面側の表面部までの濃度勾配とが同一であってもよく、異なる濃度勾配を有していてもよい。
【0078】
本実施の形態においては、樹脂硬化物層の表面部のフッ素元素濃度(Es)は、XPS法により求めた値を採用する。本実施の形態においては、XPS法におけるX線の侵入長である数nmの深さにおける測定値をもってフッ素元素濃度(Es)としている。
【0079】
一方、樹脂硬化物層中の平均フッ素元素濃度(Eb)とは、仕込み量から計算した値、予め硬化樹脂表層を削り内面を露出してXPS法により求めた値、ガスクロマトグラフ質量分析計(GC/MS)から解析した値、又はイオンクロマトグラフ分析から解析した値を採用する。すなわち、樹脂硬化物層全体に含まれるフッ素元素濃度を意味する。例えば、フィルム状に形成された光重合性混合物の硬化物から構成されるフィルム状被転写材の、樹脂部分を物理的に剥離した切片を、フラスコ燃焼法にて分解し、続いてイオンクロマトグラフ分析にかけることで光硬化性樹脂中の平均フッ素元素濃度(Eb)を同定することができる。
【0080】
光硬化性樹脂としては、例えば、光重合開始剤により重合可能な各種アクリレート化合物及びメタクリレート化合物、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、チオール化合物、シリコーン系化合物などを使用することができる。これらの中でも、アクリレート化合物及びメタクリレート化合物、エポキシ化合物、シリコーン系化合物を用いることが好ましく、アクリレート化合物、メタクリレート化合物を用いることがより好ましい。これらの化合物は単独種類で用いてもよく、エポキシ化合物とアクリレート化合物との組合せなど、複数種類を組合せて用いてもよい。
【0081】
また、光硬化性樹脂としては、上記アクリレート化合物及びメタクリレート化合物、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、シリコーン系化合物のうち、炭化水素中の水素がフッ素に置換されたフッ素含有化合物を用いることができる。フッ素含有化合物を用いることにより、硬化後の表面自由エネルギーが減少し、転写工程における原版(転写ロール107、又は第1のフィルム状モールド103(第2のフィルム状モールド203を作製するとき))からの被転写結果物(第1のフィルム状モールド103及び第2のフィルム状モールド203)の離型性が向上する。
【0082】
フッ素含有(メタ)アクリレートとしては、ポリフルオロアルキレン鎖及び/又はペルフルオロ(ポリオキシアルキレン)鎖と、重合性基とを有することが好ましく、直鎖状ペルフルオロアルキレン基、又は炭素原子−炭素原子間にエーテル性酸素原子が挿入されかつトリフルオロメチル基を側鎖に有するペルフルオロオキシアルキレン基がさらに好ましい。また、トリフルオロメチル基を分子側鎖又は分子構造末端に有する直鎖状のポリフルオロアルキレン鎖及び/又は直鎖状のペルフルオロ(ポリオキシアルキレン)鎖が特に好ましい。
【0083】
フッ素含有(メタ)アクリレートとしては、重量平均分子量Mwが50〜50000であることが好ましく、相溶性の観点から重量平均分子量Mwが50〜5000であることが好ましく、重量平均分子量Mwが100〜5000であることがより好ましい。相溶性の低い高分子量を使用する際は希釈溶剤を使用しても良い。希釈溶剤としては、単一溶剤の沸点が40℃〜180℃の溶剤が好ましく、60℃〜180℃がより好ましく、60℃〜140℃がさらに好ましい。希釈剤は2種類以上使用もよい。
【0084】
光硬化性樹脂としては、感光性を向上するため光重合開始剤を含むことが好ましい。光重合開始剤としては、光ラジカル重合開始剤、光酸発生剤、光塩基発生剤などが挙げられる。光重合開始剤は、使用する光源波長及び基材(透明シート)、諸物性などを考慮し、選択することができる。
【0085】
光硬化性樹脂としては、光感度向上のため増感剤を含むものが好ましい。光硬化性樹脂は、溶媒を添加して粘度を調整することができる。
【0086】
光硬化性樹脂は、例えば、光硬化、熱硬化、電子線による硬化及びマイクロウェーブにより硬化させることができる。これらの中でも、光硬化を用いることが好ましい。フィルム状基材に光硬化性樹脂を上記塗布方法により塗布した後、所定波長における任意の光量で光硬化性樹脂に光を照射することにより、光硬化性樹脂の硬化反応を促進することができる。
【0087】
(塗布手段)
塗布手段105、205によるフィルム状基材への光硬化性樹脂の塗布方法としては、公知の塗布コーター又は含浸塗布コーターを用いた塗布方法が挙げられる。具体的には、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、ブレードコーター、ワイヤーバーコーター、エアーナイフコーター、ディップコーター、コンマナイフコーター、スプレーコーター、カーテンコーター、スピンコーター、ラミネーターなどを用いた塗布方法が挙げられる。これらの塗布方法は、必要に応じて1種の塗布方法を用いてもよく、2種以上の塗布方法を組合せて用いてもよい。また、これらの塗布方法は、生産性の観点から連続方式で塗布することが好ましい。また、ディップコーター、コンマナイフコーター、グラビアコーター又はラミネーターを使用した連続方式の塗布方法が特に好ましい。
【0088】
(光源)
光硬化性樹脂への光照射に用いる光源109、210としては、特に制限されるものではなく、用途及び設備に応じて種々の光源を用いることができる。例えば、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、無電極ランプ、メタルハライドランプ、エキシマーランプ、LEDランプ、キセノンパルス紫外線ランプなどを用いることができる。また、光硬化性樹脂は、波長200nm〜500nmの紫外線又は可視光を露光量が100mJ/cm
2〜2000mJ/cm
2となるように照射することにより硬化することができる。また、酸素による光硬化反応の阻害を防止する観点から、光照射時には酸素濃度が低い状態で光を照射することが望ましい。
【0089】
(転写ロール)
第1のフィルム状モールド103の作製に用いる原版には、連続生産性や歩留まりの観点から転写ロール107を用いる。また、転写ロール107は継ぎ目のないことがより好ましい。継ぎ目があった場合、最終的に得られる微細凹凸パターン付製品において、継ぎ目部に対応する微細凹凸パターンがない箇所を切り落とすため、歩留まりが悪化するだけでなく、切り落とす作業が余分に入るため連続生産性も悪化する。
【0090】
転写ロール107としては、外周面に微細凹凸パターンを有する円筒状金型を用いる。微細凹凸パターンは、製造しようとする微細凹凸パターン付製品の微細凹凸パターンの形状に応じたものである。
【0091】
転写ロール107の微細凹凸パターンは、レーザー切削法、電子線描画法、フォトリソグラフィー法、半導体レーザーを用いた直接描画リソグラフィー法、干渉露光法、電鋳法、陽極酸化法などの加工方法により、円筒状の基材の外周面に直接形成することができる。これらの中でも、微細凹凸パターンに継目のない円筒状金型を得る観点から、フォトリソグラフィー法、半導体レーザーを用いた直接描画リソグラフィー法、干渉露光法、電鋳法、陽極酸化法が好ましく、半導体レーザーを用いた直接描画リソグラフィー法、干渉露光法、陽極酸化法がより好ましい。
【0092】
また、転写ロール107としては、上記加工方法で平板基板の表面に形成した微細凹凸パターンを樹脂材料(フィルム)へ転写し、このフィルムを円筒状金型の外周面に位置精度よく張り合わせたものを用いてもよい。また、上記加工方法で平板基板の表面に形成した微細凹凸パターンを電鋳法によりニッケルなどの薄膜に転写し、この薄膜をローラーに巻き付けたものを用いてもよい。
【0093】
転写ロール107の材料としては、微細凹凸パターンの形成が容易であり、耐久性に優れた材料を用いることが望ましい。このような観点から、ガラスロール、石英ガラスロール、ニッケル電鋳ロール、クロム電鋳ロール、アルミロール、又はSUSロール(ステンレス鋼ロール)が好ましい。
【0094】
ニッケル電鋳ロール及びクロム電鋳ロール用の母材としては、導電性を有する導電性材料を用いることができる。導電性材料としては、例えば、鉄、炭素鋼、クロム鋼、超硬合金、金型用鋼(例えば、マルエージング鋼など)、ステンレス鋼、アルミ合金などの材料が好適に用いられる。
【0095】
転写ロール107の表面には、離型処理を施すことが望ましい。離型処理を施すことにより、転写ロール107の表面自由エネルギーを低下させることができるので、連続的に光硬化性樹脂へ転写した場合においても、良好な剥離性及び微細凹凸パターンのパターン形状を保持することができる。また、第1のフィルム状モールド103から複製される第2のフィルム状モールド203まで、転写ロール107の離型性が反映されるため、離型処理を行うことが好ましい。第1のフィルム状モールド103の作製には、対向する離型処理によって達成された低い表面自由エネルギーを有する転写ロール107の表面に光硬化性樹脂が接触することで、フッ素成分が強く偏析される。第1のフィルム状モールド103から第2のフィルム状モールド203を複製する際にも、同様のメカニズムで進行するため、最初の第1のフィルム状モールド作製工程における金型の表面状態によって、後工程の離型性と転写性が支配される。
【0096】
離型処理には、市販の離型剤及び表面処理剤を用いることができる。市販の離型剤及び表面処理剤としては、例えば、オプツール(ダイキン化学工業社製)、デュラサーフ(ダイキン化学工業社製)、ノベックシリーズ(3M社製)などが挙げられる。また、離型剤、表面処理材としては、転写ロール107の材料の種類及び転写される光硬化性樹脂との組合せにより、適宜好適な離型剤、表面処理剤を選択することができる。
【0097】
(ニップロール)
本実施の形態では、微細凹凸パターンを有する転写ロール107(第2のフィルム状モールド203の作製においては、バックロール209aと、バックロール209a表面に接する第1のフィルム状モールド103とを合わせたもの)とニップロール108a、108bとで挟持して第1のフィルム状モールド103及び第2のフィルム状モールド203に微細凹凸パターンを転写する。
【0098】
ニップロール108a、108bの構成においては、用いる樹脂の組成や粘性にもよるが、一般的なゴム材質を採用することができる。例えば、エチレンプロピレンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、アクリルゴム、ブチルゴム、シリコンゴム、フッ素ゴム、スチレンブタジエンゴム、ウレタンゴム等を採用することができるが、耐光性、耐薬品性の観点から、エチレンプロピレンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、シリコンゴム、フッ素ゴムが好ましい。
【0099】
ニップロールの材質にもよるが、ニップロールのゴム硬度は、20以上60以下が好ましい。ゴム硬度20以上であれば、フィルムと密着し、且つ、剥離性を担保することができるので、転写性を担保することが出来る。ゴム硬度60以下であれば、ニップロール幅方向に均一に押圧することが出来、且つ、線圧が高くならないため、フィルム幅方向への樹脂の広がりを抑制することが出来る。ゴム硬度が60以上の場合、その据付精度からある程度の押圧を加えなければ、均一に押圧することが出来ず、均一に押圧するために圧力を高くすると樹脂が幅方向に溢れ、発塵源となる場合がある。ゴム硬度は、JIS K 6253のタイプAデュロメータの測定硬度で示される。
【0100】
ニップロールの色は、特に限定しないが、用いる光源の発光波長、或いは、光開始剤の吸収波長において、その光、或いは、波長を吸収できる色が好ましい。一般的に黒色であれば、広範囲波長において光を吸収するため、光漏れを防止することができ、樹脂の未然硬化を防ぐことができる。
【0101】
(第nのフィルム状モールドの作製)
以上説明した本実施の形態に係るフィルム状モールドの製造方法では、転写ロール107から微細凹凸パターンを転写して作製した第1のフィルム状モールド103を原版として第2のフィルム状モールド203を複製する場合について説明した。しかし、第2のフィルム状モールド203を原版として第3のフィルム状モールドをさらに複製することも可能である。すなわち、本発明は、第(n−1)(nは2以上の整数)のフィルム状モールドから第nのフィルム状モールドの製造方法に適用することが可能である。
【0102】
図9は、本実施の形態に係る第nのフィルム状モールドの製造方法を示す説明図である。
図9に示すように、円筒状金型M−0を原版として第1のフィルム状モールドM−1を作製し、この第1のフィルム状モールドM−1を原版として第2のフィルム状モールドM−2を複製できる。さらに、第2のフィルム状モールドM−2を原版として第3のフィルム状モールドM−3を複製できる。同様にして、第(n−1)のフィルム状モールドM−(n−1)を原版として、第nのフィルム状モールドM−nを複製できる。
【0103】
つまり、第nのフィルム状モールドM−nを複製するために用いられた第(n−1)のフィルム状モールドM−(n−1)は、一つ前の第(n−2)のフィルム状モールドM−(n−2)(図示せず)を原版として用いて作製されたものである。
【0104】
このように、原版としての第(n−1)のフィルム状モールドM−(n−1)から第nのフィルム状モールドM−nへの微細凹凸パターンの転写において、上述のように、式(1)、又は、式(2)を満たすことで、フィルム端部から樹脂がはみ出すのを防止でき、樹脂のはみ出しによる発塵の発生や、フィルム裏面への回り込み、転写ロールの側面への樹脂付着を防止することが出来る。
【0105】
上述のようにして製造された第2〜第nのフィルム状モールドM−2〜M−nのいずれも、これを原版として微細凹凸パターン付き製品Pを量産するために使用することができる。
【0106】
(第nのフィルム状モールドの応用例)
以上説明した本実施の形態に係るフィルム状モールドの製造方法により得られた第nのフィルム状モールドは、例えば、反射防止材の製造、レジストマスクの作製、細胞培養培地、超撥水加工及び超親水加工に応用することができ、有用である。以下に、(1)反射防止材の製造及び(2)レジストマスクの作製への応用例について説明する。
【0107】
(1)反射防止材の製造
ピラー形状、円錐形状、角錐形状、惰円錐形状を含む周期的な微細凹凸パターンを有するものは、反射防止効果があるモスアイ構造の反射防止膜として用いることができる。ここで、モスアイ構造とは、サブミクロンオーダーのピラミッド状凹凸構造を蛾の目のような2次元パターンに配置した構造をいう。このようなモスアイ構造においては、表面に形成されるナノオーダーの微細凹凸パターンが滑らかな屈曲率傾斜を誘発し、界面の屈折率差で発生する反射が起きないため、反射防止膜として好適に用いることが可能となる。
【0108】
図10は、本実施の形態に係るフィルム状モールドの製造方法で得られた第nのフィルム状モールドを用いた反射防止材の製造の各工程を示す断面概略図である。
【0109】
図10Aに示すように、第nのフィルム状モールド801を用意する。第nのフィルム状モールド801は、フィルム状基材802と、フィルム状基材802の表面に設けられた微細凹凸パターンを有する樹脂硬化物層803とで構成されている。
【0110】
次に、
図10Bに示すように、第nのフィルム状モールド801の樹脂硬化物層803の微細凹凸パターンに対して樹脂804を塗布する。この際、溶融樹脂であっても溶液であっても構わない。また、樹脂804が、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂のいずれであっても構わない。
【0111】
その後、
図10Cに示すように、基材805を樹脂804上に積層する。さらに、樹脂804から第nのフィルム状モールド801を剥離することで、
図10Dに示すように、反射防止材800を得ることができる。
【0112】
(2)レジストマスクの作製
本実施の形態に係るフィルム状モールドの製造方法により得られた第nのフィルム状モールドを用い、エッチング対象である基板の表面にレジストマスクを作製できる。
【0113】
図11は、本実施の形態に係るフィルム状モールドの製造方法で得られた第nのフィルム状モールドを用いたレジストマスクの作製の各工程を示す断面概略図である。
【0114】
図11Aに示すように、第nのフィルム状モールド901を用意する。第nのフィルム状モールド901は、フィルム状基材902と、フィルム状基材902の表面に設けられた微細凹凸パターンを有する樹脂硬化物層903とで構成されている。
【0115】
次に、
図11Bに示すように、第nのフィルム状モールド901の樹脂硬化物層903の微細凹凸パターンにレジスト材料904を塗布し、埋め込む。レジスト材料904は、使用する基板に合わせて選択できる。レジスト材料904が樹脂である場合には、溶融樹脂であっても溶液であっても構わない。樹脂は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、熱分解性樹脂、光硬化性樹脂又は光分解性樹脂のいずれであっても構わない。
【0116】
その後、
図11Cに示すように、基板905を、樹脂硬化物層903上に配置し、レジスト材料904を何らかの手法で貼り合わせる。さらに、第nのフィルム状モールド901を離型することで、
図11Dに示すように、基板905の表面上に、微細凹凸パターンの反転構造を有するレジストマスク906が形成される。
【0117】
図12は、本実施の形態に係るフィルム状モールドの製造方法で得られた第nのフィルム状モールドを用いたレジストマスク作製の他の例の各工程を示す断面概略図である。
【0118】
図12Aに示すように、基板1001の表面上にレジスト材料1002を塗布する。次に、レジスト材料1002に対して、
図12Bに示すように、第nのフィルム状モールド901の樹脂硬化物層903の凹凸形成面を貼り合わせ、押圧する。この後、第nのフィルム状モールド901を離型して、
図12Cに示すように、基板1001の表面上に、微細凹凸パターンの反転構造を有するレジストマスク1003が形成される。
【0119】
なお、レジスト材料1002と基板1001との間に接着層を設けることや、もう一層レジスト材料を積層する二層レジストとすることもできる。
【0120】
上述のようにして作製されたレジストマスク906、1003を用いて、基板905、1001をエッチングすることにより、基板905、1001に微細凹凸パターンを形成できる。
【0121】
また本実施の形態により得られたフィルム状被転写材を、ワイヤグリッド偏光子シート等に適用することも可能である。
【0122】
(微細凹凸パターン)
本実施の形態に係るフィルム状被転写材の製造方法において、微細凹凸パターンとは、円錐形状、角錐形状若しくは楕円錘形状の凸部を複数含むピラー形状、又は、円錐形状、角錐形状若しくは楕円錘形状の凹部を複数含むホール形状或いはラインアンドスペース形状である。ここで、「ピラー形状」とは、「柱状体(錐状態)が複数配置された形状」であり、「ホール形状」とは、「柱状(錐状)の穴が複数形成された形状」である。
【0123】
微細凹凸パターンのスケールに関しては、用いられる用途に依存するため、特に規定することはしないが、数十ナノメートルから数十ミクロンメートルを指す。またこのスケールは、微細凹凸パターン体一つの大きさ、径、深さ、ピッチであっても構わない。また、ランダムな構造も微細凹凸パターン体の一つとすることができる。
【実施例】
【0124】
以下、本発明の効果を確認するために行った実施例について説明する。
(実施例1)
ニップロールの幅aを、570mmとし、転写ロールの幅bを、640mmとし、フィルム状転写材の幅cを、640mmとした。この条件は、上記の式(1)に該当する。また、フィルム状転写材に対して幅570mmで樹脂を塗工した。なお、ニップロールは、エチレンプロピレンゴムのゴム硬度30、及び黒色を使用した。
【0125】
続いて、フィルム状転写材の樹脂に対して、転写ロールに形成された微細凹凸パターンを転写したところ、ニップロールにより押圧されて、両側に広がった塗工樹脂は、フィルム端部からはみだすことなく転写することができた。
【0126】
(実施例2)
ニップロールの幅aを、530mmとし、転写ロールの幅bを、750mmとし、フィルム状転写材の幅cを、560mmとした。この条件は、上記の式(1)に該当する。また、フィルム状転写材に対して幅530mmで樹脂を塗工した。なお、ニップロールは、エチレンプロピレンゴムのゴム硬度30、及び黒色を使用した。
【0127】
続いて、フィルム状転写材の樹脂に対して、転写ロールに形成された微細凹凸パターンを転写したところ、ニップロールにより押圧されて、両側に広がった塗工樹脂は、フィルム端部からはみだすことなく転写することができた。
【0128】
(実施例3)
ニップロールの幅aを、750mmとし、転写ロールの幅bを、640mmとし、フィルム状転写材の幅cを、720mmとした。この条件は、上記の式(2)に該当する。また、フィルム状転写材に対して幅530mmで樹脂を塗工した。なお、ニップロールは、エチレンプロピレンゴムのゴム硬度30、及び黒色を使用した。
【0129】
続いて、フィルム状転写材の樹脂に対して、転写ロールに形成された微細凹凸パターンを転写したところ、ニップロールにより押圧されて、両側に広がった塗工樹脂は、フィルム端部からはみだすことなく転写することができた。
【0130】
ただし、長時間転写するにつれて転写ロールの端部に樹脂が溜まり、6時間後に転写ロール端部で樹脂屑となることがわかった。
【0131】
以上により、本実施例では、式(1)又は、式(2)を満たしているが、式(2)よりも式(1)を満たすことが好ましいとわかった。
【0132】
(実施例4)
ニップロールの全体幅はa´(
図3参照)を、750mmとし、転写ロールの幅bを、640mmとした。また、ニップロールの両側端部の直径を幅90mmにわたって、2mm小さくし、ニップロールが転写ロールと当接する幅aを570mmとした。また、フィルム状転写材の幅cを、640mmとした。この条件は、上記の式(1)に該当する。また、フィルム状転写材に対して幅570mmで樹脂を塗工した。なお、ニップロールは、エチレンプロピレンゴムのゴム硬度30、及び黒色を使用した。
【0133】
続いて、フィルム状転写材の樹脂に対して、転写ロールに形成された微細凹凸パターンを転写したところ、ニップロールにより押圧されて、両側に広がった塗工樹脂は、フィルム端部からはみだすことなく転写することができ、且つ、ニップロールからの光漏れを抑制することができた。
【0134】
(実施例5)
ニップロールの全体幅はa´(
図3参照)を、750mmとし、転写ロールの幅bを、750mmとした。また、ニップロールの両側端部の直径を幅110mmにわたって、2mm小さくし、ニップロールが転写ロールと当接する幅aを530mmとした。また、フィルム状転写材の幅cを、560mmとした。この条件は、上記の式(1)に該当する。また、フィルム状転写材に対して幅530mmで樹脂を塗工した。なお、ニップロールは、エチレンプロピレンゴムのゴム硬度30、及び黒色を使用した。
【0135】
続いて、フィルム状転写材の樹脂に対して、転写ロールに形成された微細凹凸パターンを転写したところ、ニップロールにより押圧されて、両側に広がった塗工樹脂は、フィルム端部からはみだすことなく転写することができ、且つ、ニップロールからの光漏れを抑制することができた。
【0136】
(比較例)
ニップロールの幅aを、570mmとし、転写ロールの幅bを、640mmとし、フィルム状転写材の幅cを、550mmとした。また、フィルム状転写材に対して幅530mmで樹脂を塗工した。なお、ニップロールは、エチレンプロピレンゴムのゴム硬度30、黒色を使用した。
【0137】
ニップロールにて、フィルム状転写材の幅全面を押圧したことにより、フィルム状転写材端部から樹脂がはみ出し、ニップロールへの付着・フィルム状転写材裏面への回り込みが発生した。
【0138】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状等については、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。