特許第6728114号(P6728114)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6728114
(24)【登録日】2020年7月3日
(45)【発行日】2020年7月22日
(54)【発明の名称】研究室試料配送システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/04 20060101AFI20200713BHJP
【FI】
   G01N35/04 G
   G01N35/04 H
【請求項の数】11
【外国語出願】
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2017-166631(P2017-166631)
(22)【出願日】2017年8月31日
(62)【分割の表示】特願2016-92510(P2016-92510)の分割
【原出願日】2012年11月2日
(65)【公開番号】特開2017-227648(P2017-227648A)
(43)【公開日】2017年12月28日
【審査請求日】2017年8月31日
(31)【優先権主張番号】11187982.1
(32)【優先日】2011年11月4日
(33)【優先権主張国】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100146710
【弁理士】
【氏名又は名称】鐘ヶ江 幸男
(72)【発明者】
【氏名】ハイゼ,ミハエル
(72)【発明者】
【氏名】シュナイダー,ハンス
【審査官】 島田 保
(56)【参考文献】
【文献】 実開平01−168866(JP,U)
【文献】 特開昭61−217434(JP,A)
【文献】 特開平01−148966(JP,A)
【文献】 特表2011−519029(JP,A)
【文献】 特開平07−301637(JP,A)
【文献】 特開2007−309675(JP,A)
【文献】 特表2013−525232(JP,A)
【文献】 英国特許出願公開第02165515(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00−37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
研究室試料配送システム(100)であって、前記研究室試料配送システム(100)は、
複数の容器キャリア(1)であって、各々の容器キャリア(1)が試料を含む試料容器(3)を有し、各々の容器キャリア(1)が少なくとも1つの磁気的活性デバイスを備える、複数の容器キャリア(1)と、
前記複数の容器キャリア(1)を運ぶための搬送平面(4)と、
前記搬送平面(4)の下方に行と列の形で静止して配置された複数の電磁アクチュエータ(5、5’)であって、前記複数の電磁アクチュエータ(5、5’)は、容器キャリア(1)を、前記容器キャリア(1)に磁力を印加することによって前記搬送平面(4)の上で少なくとも2つの異なる方向に移動させ、前記複数の電磁アクチュエータ(5、5’)は、開始場所から宛先場所まで前記容器キャリアを移動させる、複数の電磁アクチュエータ(5、5’)と、を有し、前記複数の電磁アクチュエータ(5、5’)は、前記搬送平面(4)の上で同時に複数の異なる容器キャリア(1)を互いに独立に所定の経路に沿って移動させるように起動され、
前記研究室試料配送システムはさらに、複数の研究室ステーション(22)と、
前記複数の研究室ステーション(22)の各々に対応する、前記搬送平面(4)上に配置される複数の移送場所(28)と、
前記搬送平面(4)上の移送場所(28)と対応する研究室ステーション(22)との間で試料品を移送するように構成される、少なくとも1つの移送デバイス(33)と、を備え、
前記搬送平面(4)は、前記少なくとも1つの移送デバイス(33)に隣接して位置する少なくとも1つの移送領域(27)を備え、前記移送領域(27)は異なる位置に可変数の容器キャリアを収容するように適合されており、前記移送場所(28)は前記移送領域(27)の内側に位置し、前記移送領域(27)の大きさは、前記研究室ステーション(22)による処理を待つ容器キャリア(1)の数に応じて動的に変化する、
研究室試料配送システム(100)。
【請求項2】
前記搬送平面(4)に機能的に結合された容器キャリアコンベヤ(34)であって、前記容器キャリアコンベヤ(34)は前記搬送平面(4)の上に配設されていない容器キャリア(1)を運搬するように構成された、容器キャリアコンベヤ(34)をさらに備える、請求項1に記載の研究室試料配送システム(100)。
【請求項3】
前記容器キャリアコンベヤ(34)はベルト駆動である、請求項2に記載の研究室試料配送システム(100)。
【請求項4】
前記搬送平面(4)の上の容器キャリア(1)の存在および/または位置を検知するための容器キャリア検知デバイスをさらに備える、請求項1から3のいずれか一項に記載の研究室試料配送システム(100)。
【請求項5】
前記少なくとも1つの移送デバイス(33)が、試料容器ラック(35)を収容するための試料容器ラック収容デバイス(38)を備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の研究室試料配送システム(100)。
【請求項6】
未処理の容器キャリア(1)が、前記移送領域(27)の中で待ち行列に入れられる、請求項1から5のいずれか一項に記載の研究室試料配送システム(100)。
【請求項7】
前記少なくとも1つの移送デバイス(33)がピックアンドプレースデバイス(42)である、請求項1から6のいずれか一項に記載の研究室試料配送システム(100)。
【請求項8】
前記少なくとも1つの移送デバイス(33)が多軸ロボットである、請求項1から7のいずれか一項に記載の研究室試料配送システム(100)。
【請求項9】
前記少なくとも1つの移送デバイス(33)がピッカである、請求項1から8のいずれか一項に記載の研究室試料配送システム(100)。
【請求項10】
前記少なくとも1つの移送デバイス(33)がピペッタである、請求項1から9のいずれか一項に記載の研究室試料配送システム(100)。
【請求項11】
前記試料容器ラック(35)のラック形式が前記研究室ステーション(22)に対応する、請求項5または請求項5を引用する請求項6から10のいずれか一項に記載の研究室試料配送システム(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研究室試料配送システム、研究室システム、および対応する動作方法を指す。
【背景技術】
【0002】
研究室試料配送システムは、研究室システムの分析前ステーション、分析ステーション、および分析後ステーションなどの種々の異なるステーションまたは検体処理機器の間で、試料または検体たとえば血液試料を配送するために使用される。
【0003】
US2005/0196320A1は、表面の下方にX/Y可動磁界を生成することによって、その表面上で検体容器のラックを前進させる働きをする駆動機構を開示する。この可動磁界は、X/Y可動磁気トラックアセンブリによって支持された永久磁石によって発生される。各々の磁石によって発生される磁界は、各々の検体−搬送ラックの基部部分内に支持されている磁気吸引部材と磁気的に結合する。磁石と磁気吸引部材との間のこの磁気結合は、X/Y平面内を磁気トラックアセンブリが移動するときに磁気結合ラックが追従するほど、十分に強い。X/Y可動磁気トラックアセンブリによって引き起こされる機械的制約により、複数の検体−搬送ラックが独立して同時に移動することは、実施が困難である。さらに、検体容器は、検体−搬送ラック量内で一緒に移動されることのみが可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、非常に柔軟であり高い搬送性能を与える、研究室試料配送システム、研究室システム、および動作方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、請求項1の特徴を有する研究室試料配送システムを提供することによって、この問題を解決する。好ましい実施形態は、従属請求項の主題である。
【0006】
研究室試料または検体配送システムは、いくつかの容器キャリア、たとえば50〜500の容器キャリアを備える。容器キャリアは自蔵動力式ではない。容器キャリアは、少なくとも1つの磁気的に活性な、すなわち磁気吸引性の、デバイスを備え、単一の試料容器を運ぶように適合される。さらに、システムは、二次元の搬送平面または支持表面を備え、この搬送平面または支持表面は、完全に平面であってよく、容器キャリアの少なくとも一部を運ぶように適合される。いくつかの電磁アクチュエータ、たとえば50〜5000の電磁アクチュエータは、搬送平面の下方に静止してまたは固定して配置される。電磁アクチュエータは、容器キャリアに、すなわち容器キャリアの磁気的活性デバイスに、磁力を印加または引き起こすことによって、搬送平面の上で少なくとも2つの異なる方向に容器キャリアを移動させるように適合される。
【0007】
搬送平面は、磁力によってガイドされる方向に沿った移動を可能にする方法で容器キャリアを支持する。したがって、搬送平面は、容器キャリアのスムーズな運動を可能にするように、少なくともこれらの移動方向で連続的である。多数の横方向に沿ったキャリアの柔軟な移送を可能にするために、平坦な搬送平面が有利である。顕微鏡的レベルでは、搬送平面と容器キャリアの底部表面との間の摩擦を軽減するために、多数の小さな突起を持つ表面を用いることが有利な場合がある。
【0008】
搬送平面はさらに、電磁アクチュエータの磁界を透過する必要がある。したがって、搬送平面は、たとえばガラスまたはプラスチックのような磁気透過性材料から作製される。さらに、搬送平面の厚さは、機械的安定性と磁気遮蔽の折り合いによる。2〜10mmの厚さを有する搬送平面が好適であることが示されている。
【0009】
磁気的活性デバイスは、磁力を対応する磁界と相互作用させるように適合されたデバイスであり、磁気的活性デバイスは、少なくとも1つの永久磁石を備えることができる。複数の電磁アクチュエータが対応する容器キャリアと個々に相互作用することによって、高い搬送柔軟性を提供する搬送平面上で所与の格子に沿って複数の個々の試料容器を独立してかつ同時に移動させることが可能であり、これは、単一の容器が互いから独立して搬送平面上の所望の場所に搬送できることを意味する。
【0010】
さらに、前記搬送平面と研究室ステーションとの間で試料品を、たとえば自動的に、移送または移動させるように配置された、少なくとも1つの、たとえば自動的な、移送デバイスが設けられ、前記試料品は、容器キャリア、試料容器、前記試料の一部、および/または前記試料一式である。「自動(的)」という用語は、移送に使用される必要なデバイスを制御するプロセス制御または制御デバイスを使用して前記移送が実行されることを意味する。自動移送の場合、人間または手動による相互作用は、前記移送に必要でない。研究室ステーションは、一般的に研究室システムで使用される、分析前ステーション、分析ステーション、および/または分析後ステーションとすることができる。分析ステーションまたは分析器は、たとえば、試料または試料の一部および試薬を使用して、測定可能な信号を生成し、この信号に基づいて、分析物の存在または濃度が判定できるように適合されてよい。
【0011】
移送デバイスは、搬送平面と研究室ステーションの間のインタフェースを提供する。移送デバイスは、搬送平面に隣接して配設された従来の研究室ステーションですら修正なしに搬送平面と容易に連携することができるように配置される。移送デバイスは、たとえば、容器キャリアまたは試料容器をつまみ上げるためのピッカを備えることができ、このピッカは、所定の軸に沿って、たとえば垂直軸Zに沿って、および単一の水平軸XまたはYに沿って、可動である。研究室ステーションが、ラックに基づいて動作する、すなわち特定の位置に配設された試料容器ラック内に設けられた試料または試料容器を処理する場合、移送デバイスは、搬送平面から試料容器ラックに、および試料容器ラックから搬送平面に、試料容器を移送することができる。移送デバイスはまた、ピペッタとして組み込まれてもよい。このピペッタは、たとえば、試料容器の中に含まれた試料の一部を取り込み、この試料を研究室ステーションに移送することができる。
【0012】
移送デバイスは、搬送平面および研究室ステーションとは別個に設けられてよく、すなわち、搬送平面、移送デバイス、および研究室ステーションは、別個のモジュールまたはデバイスとして設けられてよい。あるいは、移送デバイスは、研究室ステーションの一部であってよい。
【0013】
移送デバイスは、試料容器ラックフォーマッティングおよび/または再フォーマッティング動作を提供することができる。
フォーマッティングは、移送デバイスが搬送平面から1つまたは複数の試料容器ラックに試料容器を移送することを意味する。再フォーマッティングは、移送デバイスが1つまたは複数の試料容器ラックから搬送平面上の容器キャリアに試料容器を移送することを意味する。
【0014】
試料容器は、対応する個々に可動な容器キャリアによって運ばれるので、試料容器は、
高い柔軟性を持って搬送平面の上で移動させることができる。フォーマッティング/再フォーマッティング動作を実行する移送デバイスと共に、研究室ステーションは、最適化させたスループットでラックに基づいて動作することができる。
【0015】
試料容器ラックは異なるラック形式を有することができ、このラック形式は、とりわけ、試料容器ラック内に配設することができる試料容器の数、すなわち容器の容量を指定するものである。
【0016】
特定のラック形式は、特定の研究室ステーションに対応することができる。移送デバイスは、特定のラック形式に適合してもよい。移送デバイスは、たとえば適切なセンサによって、ラック形式を判定してもよい。ラック形式を判定した後、移送デバイスは、たとえば対応する数の試料容器を試料容器ラックへと配設することによって、ラック形式固有のフォーマッティング/再フォーマッティング動作を実行することができる。
【0017】
試料容器は、処理のために送達され、対応するデバイスによって自動的にまたは手動で専用移送デバイスに隣接する特定の場所に配設された入力用試料容器ラック内に備えられることができる。この移送デバイスは、入力用試料容器ラックから試料容器を取り込み、その試料容器を、たとえば実際に試料容器を運ばない容器キャリアを収容するように適合された1つまたは複数の緩衝領域内に設けられた対応する空の容器キャリアに配設することができる。処理された後、試料容器は、専用移送デバイスによって対応する出力用試料容器ラックに移送されることができ、入力用試料容器ラックの種類と出力用試料容器ラックの種類は異なってもよい。
【0018】
移送デバイスの動作、搬送平面の動作、および研究室ステーションの動作は、以下のように同期させることができる。
動作を同期させる1つの方法は、搬送平面と移送デバイスと研究室ステーションとの間のデータ通信を提供することである。搬送平面は、容器キャリアが特定の移送場所に配設されたことを移送デバイスに知らせることができる。その結果、移送デバイスは、試料容器は分析の準備が整ったことを、対応する研究室ステーションに知らせることができる。研究室ステーションは、次に、処理能力が利用できる場合、研究室ステーションに試料容器を移送するように移送デバイスに知らせることができる。
【0019】
搬送平面から研究室ステーションに試料容器を移送するためのワークフローは、搬送平面、移送デバイス、および研究室ステーションとデータ通信するマスタ制御デバイスによって制御されることもできる。
【0020】
このデータ通信は、ソフトウェア規格およびハードウェア規格を含む所定のデータ通信プロトコルに従って行われてよい。
これに加えて、またはこの代わりに、センサは、試料容器は移送の準備が整った、たとえば移送場所に到達したことを移送デバイスに知らせるために設けることができる。このようなセンサは、搬送平面上の特定の移送場所にある容器キャリアを検知する、光センサまたはたとえばホールセンサのような磁気センサであってよい。
【0021】
これに加えて、またはこの代わりに、搬送平面、移送デバイス、および研究室ステーションの動作を同期させるために、1つまたは複数の信号ラインが備えられてもよい。
たとえば、移送デバイスによって試料容器ラックを満たすことが可能な場合がある。試料容器ラックが完全に満たされた場合、移送デバイスは、この状況を、対応する信号ラインによって研究室ステーションに知らせることができる。次に、研究室ステーションが、この試料容器ラックを処理することができる。
【0022】
容器キャリアまたは試料容器がRFIDタグを備える場合、容器キャリアがRFIDリーダの読み取り距離の範囲内に入ると、RFIDリーダは、容器キャリアの存在を検出することができる。
【0023】
また、容器キャリア/試料容器の存在を判定するために、カメラを含む画像処理システムが設けられてもよい。
この画像処理システム、センサ、および/またはRFIDリーダは、移送デバイスの一部とすることができる。
【0024】
一実施形態によれば、搬送平面は移送デバイスに固定され、移送デバイスは研究室ステーションに固定される。これは、たとえば、品目を一緒にねじで留めることによって、ラッチまたはクランプによって、達成することができる。
【0025】
移送デバイスは、前記試料品を少なくとも2つの軸に沿って移送するように適合させることができる。種々の異なる移送位置にある容器キャリアを移動させることが可能な柔軟性の高い搬送平面により、移送デバイスが2つの軸のみに沿って試料品を移送するように適合される場合、基本的に十分である。これらの軸は、たとえば、搬送平面に垂直な方向の移送が可能な、すなわち高さの移動を提供するZ−軸、ならびに研究室ステーションへのおよび/または研究室ステーションからの移動を提供するX−軸またはY−軸とすることができる。
【0026】
柔軟な搬送システムにより、容器キャリアは、試料品を研究室ステーションに移送するために、研究室ステーションごとに単一の移送場所へと運搬されることができる。したがって、移送デバイスは、簡潔にされることができ、2つの軸のみに沿って動作するように縮小されることができる。
【0027】
移送デバイスは、複数の試料品を並列に移送するように適合され、それによって処理性能を増加させることができる。
搬送平面は、前記少なくとも1つの移送デバイスに隣接して位置する少なくとも1つの移送領域を備えることができる。この移送領域は、異なる位置に固定数または可変数の容器キャリアを収容するように適合させることができる。移送デバイスは、たとえば自動的に、前記移送領域の少なくとも1つの特定の移送場所と前記研究室ステーションとの間で試料品を移送するように構成することができる。移送領域は、対応する研究室ステーションのための動的な処理待ち行列を提供し、それによって、特定の研究室ステーションに対する柔軟な負荷平衡を可能にすることができる。この動的な処理待ち行列は、限られた処理能力を有する対応する研究室ステーションによって多数の試料が処理されなければならない場合、より長くなることがある。未処理の試料キャリアまたは試料は、移送領域の中で待ち行列に入れられ、場所の数は固定であってもよいし、可変であってもよい。数が可変の場合、移送領域の大きさは、処理を待つ容器キャリアの数に応じて、動的に増加されてもよい。
【0028】
移送領域は、優先領域を備えることができる。移送デバイスは、たとえば自動的に、優先領域の少なくとも1つの特定の優先場所と、優先権を持つ、すなわち従来の移送場所の試料品と比較して優先権を持つ、研究室ステーションとの間で試料品を移送するように構成することができる。優先領域は、研究室ステーション間で分散される緊急試料の扱いを高速化させ、それによって、緊急試料の全体的な処理時間を、優先順位付けのないシステムと比較して著しく減少させる。
【0029】
搬送平面は、試料容器を実際に運んでいない容器キャリアを収容するように適合された少なくとも1つの緩衝領域を備えることができる。緩衝領域内に位置するこれらの空の容
器キャリアは、処理されるべき試料を備える試料容器で満たされることができる。ある容器キャリアIDを有する空の容器キャリアが、ある試料容器IDを有する試料容器で満たされる場合、合致する容器キャリアIDと試料容器IDを格納するデータベースが更新されることができる。格納されたID間の合致は、たとえば、対応する試料が分析される前に、および/または試料容器が搬送平面から除去される場合、チェックされることができる。IDの不合致は、たとえば試料容器を手動で交換することによって引き起こされうるが、この場合、エラーが生成されてよい。これによって、分析結果の誤りを防止することができる。
【0030】
試料容器を対応する容器キャリア内に満たすまたは配設することは、たとえば対応する移送デバイスが、処理されるべきいくつかの試料容器を備える試料容器ラックから試料容器をつまみ上げることによって、手動で、または自動的に行われることができる。試料容器ラックは、移送デバイスの動作範囲内に手動で配設することができる。
【0031】
システムは、搬送平面に機能的に結合された、すなわち、搬送平面とコンベヤとの間で容器キャリアおよび/または試料容器を移送するための搬送ゲートウェイを有する、容器キャリアコンベヤまたはコンベヤベルトシステムを備えることができる。容器キャリアコンベヤは、前記搬送平面の上に配設されていない容器キャリアを運搬するように構成することができる。容器キャリアコンベヤは、たとえば容器キャリアの長距離搬送に適している、従来の搬送システムであってよい。搬送平面とコンベヤの組み合わせは、必要に応じた試料の柔軟な配送と、長距離にわたる費用対効果に優れた迅速な配送を提供する。電磁アクチュエータは、搬送平面からコンベヤに移送されることを目的とした試料容器の速度がコンベヤの直線速度と一致するように制御されることができる。
【0032】
システムは、少なくとも1つのRFIDリーダを備えることができ、各々の容器キャリアは、一意のIDを格納するRFIDタグを備え、それによって、特定の容器キャリアの識別を容易に可能にする。
【0033】
システムは、少なくとも1つのバーコードリーダを備えることができ、各々の試料容器は、試料の識別情報を表すバーコードを持つ。
バーコードリーダは、前記少なくとも1つの移送デバイス内に備えられることができる。
【0034】
移送デバイスは、画像処理のためにカメラをさらに備えることができる。バーコードリーダおよび/またはカメラを使用することによって、移送デバイスは、移送のために与えられた前記試料品の特徴を決定することが可能であり、これらの特徴を移送プロセスで使用することができる。前記特徴は、管種、キャップの種類、流体レベル、試料の品質、試料の色、試料の識別情報などを備えることができる。
【0035】
移送デバイスはピックアンドプレースデバイスを備えることができ、前記ピックアンドプレースデバイスは、前記搬送平面から試料品または試料容器をつまみ上げ、前記試料品または前記試料容器を試料容器ラック内に配設するように適合される。それに加えて、または代替として、前記ピックアンドプレースデバイスは、試料容器ラックから試料品または試料容器をつまみ上げ、前記搬送平面上に配設された容器キャリア内に前記試料品または試料容器を配設するように適合させることができる。
【0036】
前記ピックアンドプレースデバイスは、前記試料容器を回転させて、たとえば移送デバイスの一部であるバーコードリーダが前記試料容器に取り付けられたバーコードを読み取ることを可能にするように適合させることができる。
【0037】
前記ピックアンドプレースデバイスは、垂直方向(Z)および1つの水平方向(XまたはY)にのみ把持器(grabber)を移動させることができる。
前記移送デバイスは、たとえば推進器(pusher)を有するコンベヤベルトの形をした、少なくとも1つのコンベヤを備えることができ、前記コンベヤは、ピックアンドプレースデバイスから研究室ステーションの方へ試料容器ラックを移動させるように、および/または研究室ステーションから前記ピックアンドプレースデバイスの方へ試料容器ラックを移動させるように適合される。このような配置によって、研究室ステーションの方への搬送は、コンベヤを用いて行われることが可能なので、1つの水平方向)にのみ垂直方向(および移動するピックアンドプレースデバイスを使用することが可能になる。
【0038】
移送デバイスは、試料容器ラックを収容するように適合された試料容器ラック収容デバイスを備えることができる。試料容器ラックは、いくつか(たとえば1〜128)の試料容器を含むように適合される。このような試料容器ラックは、一般的には、ラックに基づいて動作する研究室ステーションにおいて使用される。試料容器ラックは、たとえば対応する移送デバイスによって、手動でまたは自動的に満たされることができる。
【0039】
前記試料容器ラック収容デバイスは、試料容器ラックトレイを収容するように適合させることができ、各々の試料容器ラックトレイは、いくつか、たとえば2〜24の試料容器ラックを収容するように適合される。
【0040】
試料容器ラック収納デバイスはプッシュローディングドロワ(push loading drawer)を備えることができ、前記プッシュローディングドロワは、開状態と閉状態とを有し、前記開状態では、前記プッシュローディングドロワは、試料容器ラックおよび/または試料容器ラックトレイトレイで満たされるように適合される。閉状態では、前記プッシュローディングドロワは、必要ならば試料容器ラックまたは試料容器ラックトレイを供給するように適合させることができる。
【0041】
前記試料容器ラック収容デバイスは、前記搬送平面の搬送平面レベルの下の少なくとも1つの収容レベルで試料容器ラックまたは試料容器ラックトレイを収容するように適合させることができ、前記試料容器ラック収容デバイスは昇降デバイスを備え、前記昇降デバイスは、試料容器ラックまたは試料容器ラックトレイを前記少なくとも1つの収容レベルから前記搬送平面レベルに上げるように適合される。収容レベルを搬送平面レベルより下方に下げることによって、試料容器ラックまたは試料容器ラックトレイを収容するために搬送平面の下方の空間を使用することが可能になる。
【0042】
移送デバイスは、試料容器ラックを試料容器ラック収容デバイスから自動的に除去し、搬送平面から移送されるべき(前記試料容器ラックの収容能力に対応する)いくつかの試料容器を順次または並列に取り出して、それらの試料容器を試料容器ラックに挿入し、挿入された試料容器を含む試料容器ラックを研究室ステーションに提供するように適合させることができる。
【0043】
したがって、移送デバイスは、処理された試料容器を搬送平面から試料容器ラックへと戻すことができる。
研究室システムは、少なくとも1つの研究室ステーション、好ましくは分析前ステーション、分析ステーション、および/または分析後ステーションと、上記で説明した研究室試料配送システムとを備える。
【0044】
分析前ステーション、分析ステーション、および/または分析後ステーションは、キャップ除去ステーション、再キャップステーション、分取ステーション、遠心分離ステーション、アーカイブ保管ステーション、ピペッティングステーション、ソーティングステー
ション、管種識別ステーション、および試料品質判定ステーションのうち少なくとも1つを含むことができる。
【0045】
研究室システムは、容器キャリアに対応する一意のIDとその容器キャリアによって保有される容器IDからなる合致するペアを記憶するメモリデバイスを備えることができ、搬送平面にわたって試料容器の経路を制御および追跡することを可能にする。
【0046】
研究室システムを動作する方法は、前記電磁アクチュエータによって前記搬送平面の上で開始場所から宛先場所に容器キャリアを移動するステップと、前記移送デバイスを用いて前記宛先場所と前記宛先場所に隣接する研究室ステーションとの間で試料品を移送するステップと、前記研究室ステーションを用いて分析前機能、分析機能、および/または分析後機能を実行するステップとを含む。この開始場所は、研究室システムに容器キャリアを取り込むことを目的とした、搬送平面上の場所であってよい。これらの取り込まれた容器キャリアは、分析を目的とした試料を備える試料容器を運ぶ。さらに、開始場所は、容器キャリアがステーションによるサービスを受けた後に配設される場所であってよい。宛先場所は、たとえば、移送領域内に位置してよい。言い換えれば、容器キャリアは、搬送平面上で、意図される分析のために必要とされる研究室ステーションの間を動く。移送デバイスによって、試料品がステーションに移送される。試料容器の場合、移送デバイスは、容器を搬送平面上の容器キャリアに戻すこともできる。これを行うために、試料容器が以前その中にあった同じ容器キャリアが使用されてもよいし、新しい容器キャリアが用いられてもよい。
【0047】
方法は、試料容器を前記研究室システムに手動でまたは自動的に送るステップと、前記試料容器の中に含まれる試料を処理するために必要とされる研究室ステーションを決定するステップと、前記決定された研究室ステーションに前記試料容器を移動させるステップと、前記決定された研究室ステーションを用いて前記試料容器および/または前記試料を処理するステップとをさらに含むことができる。処理のために必要とされる研究室ステーションは、試料容器に取り付けられた試料情報を読み取ることによって決定することができる。試料容器に取り付けられた試料情報は、試料容器に取り付けられたバーコードの形態で組み込まれることができる。
【0048】
容器キャリアの少なくとも1つの永久磁石は球形であってよく、球形の永久磁石のN極またはS極は搬送平面に向けられる。言い換えれば、球形の永久磁石の両極を通って延在する軸は、搬送平面に垂直である。球形の永久磁石の直径は、約12mmとすることができる。球形の永久磁石によって、たとえば棒磁石と比較して最適化された磁界が電磁アクチュエータと相互作用し、その結果、側方移動方向における磁気成分がより大きくなる。
【0049】
永久磁石は、現在隣接する起動されていない電磁アクチュエータの強磁性コアと共に、望ましくない磁気保持力を起こす。この保持力によって、現在隣接する起動されていない電磁アクチュエータから起動されている電磁アクチュエータの方へ離れる容器キャリアの所望の移動が妨害される。永久磁石と搬送平面の間の距離を増加させる、すなわち永久磁石と電磁アクチュエータの間の距離も増加させることによって、この磁気保持力が減少する。好ましくないことに、距離を増加させると、側方移動方向への所望の磁気搬送力も低下する。したがって、少なくとも1つの永久磁石の中心と容器キャリアの底部表面の間の距離は、5mm〜50mmの範囲内にあるように選択されることができ、この底部表面は、搬送平面と接触するように適合される。所与の距離範囲は、移動方向における所望の磁気搬送力と望ましくない磁気保持力との間の最適条件を提供する。
【0050】
容器キャリアは、容器キャリアの台(stand)の中央に配置された第1の永久磁石と、この第1の永久磁石を囲む台の中に配置された環状形状を有する第2の永久磁石とを
備えることができる。この配置は、特に複数の電磁アクチュエータが所与の時刻に起動される場合に、押す磁力および引っ張る磁力を引き起こす際の高い柔軟性を提供する。
【0051】
第1の永久磁石と第2の永久磁石は逆の極性を有することができ、すなわち第1の永久磁石のS極と第2の永久のN極は搬送平面を指すことができ、または第1の永久磁石のN極と第2の永久のS極は搬送平面を指すことができる。環状形状の第2の永久磁石は、搬送平面の電磁アクチュエータの軸間の距離よりも小さい直径を有する円形領域を配置することができる。
【0052】
容器キャリアは、一意のIDを格納するRFIDタグを備えることができる。これによって、試料容器IDたとえばバーコードと、対応する容器キャリアの間の合致が可能になる。一意のキャリアIDは、任意選択のRFIDリーダによって読み取られることができる、RFIDリーダはシステムの一部であり、システム内の1つまたは複数の特定の場所に配設される。
【0053】
RFIDタグは、容器キャリアの台の中に配置された環状形状のアンテナを備えることができる。このアンテナ配置によって、搬送平面の下方にあるRFIDリーダアンテナによってRFIDタグを読み取ることが可能になる。したがって、邪魔になるRFIDリーダアンテナのない搬送平面そのものおよび/または搬送平面より上方の領域が設計されることができる。
【0054】
容器キャリアの台は、約3.5cm〜4.5cmの直径を有する円形断面を有する。台の断面が円形であることによって、異なる方向に隣接して移動する容器キャリアの台が衝突する可能性が低下する。これによって、たとえば方形の台と比較して、位置に隣接する必要な安全距離および位置決め精度に関する要件が減少する。さらに、円形の台は、容器キャリアの自立性を改善し、たとえば容器キャリアが通常の動作条件下で傾くことを防止する。
【0055】
電磁アクチュエータは、磁界を誘導および増幅する強磁性コアを備えることができる。電磁アクチュエータは、中央の指部と4つの側方指部とを有することができ、指部の各々は、搬送平面に垂直に延在する。中央の指部のみは、動作電流によって駆動されるコイルによって囲まれることができる。この配置は、電磁アクチュエータを起動するために必要なコイルの数を減少させ、中央の指部と側方の指部は、有利には、特に容器キャリアが、台の中央に配置された第1の永久磁石と、第1の永久磁石を囲む台の中に配置された環状形状を有する第2の永久磁石を備える場合、それぞれ押す力および引っ張る力を提供することによって相互作用する。
【0056】
システムは、搬送平面上に位置する容器キャリアの存在および/または位置を検知するように適合された容器キャリア検知デバイスをさらに備えることができる。この容器キャリア検知デバイスは、搬送平面の上に配設された容器キャリアの最適化された追跡を提供する。
【0057】
容器キャリア検知デバイスは、赤外線(IR)主体の反射光バリアに基づいて実施されることができる。これらの光バリアは、搬送平面の凹部内に配置されてもよいし、用いられた光を少なくとも部分的に透過する搬送平面の下方に配置されてもよい。後者の場合、とりわけ清掃がより容易な、閉じた搬送平面は、設けることができる。
【0058】
電磁アクチュエータは、アクティブな搬送フィールドの格子またはマトリックスを形成する行と列の形で配置されることができる。一実施形態によれば、この行および列は、第1の格子寸法g1または第2の格子寸法g2のどちらかを有し、g2=2×g1である。
隣接する行と隣接する列は、異なる格子寸法を有する。格子寸法は、所与の行または列における隣接するまたは連続的な電磁アクチュエータ距離を指定する。言い換えれば、電磁アクチュエータは、格子またはマトリックスの形で配置され、この格子またはマトリックスは、電磁アクチュエータの省略を表すブランク位置を有する。この配置では、特定の宛先は前記行および列に沿った移動に基づいて到達できるので、搬送平面上の特定の宛先に到達するためには、容器キャリアの対角移動は必要ではないと考える。電磁アクチュエータの前述の配置によって、必要とされる電磁アクチュエータの数が、一定の格子寸法を有する解決策と比較して、著しく(たとえば33%)減少する。それにもかかわらず、対角移動が必要とされる場合、たとえば等しい寸法を持つアクティブな搬送フィールドに分割される搬送平面を形成する一定の格子寸法を有する行および列が設けることができることは自明である。
【0059】
搬送平面は、複数の下位平面(sub plane)に分割されることができ、各々の下位平面は、第1の外面と、第2の外面と、第3の外面と、第4の外面とを有し、搬送平面を形成するように、さらなる平面が敷き詰められた形で配置されることができる。したがって、この手法は、所望の形状の搬送平面を提供する能力を提供する。これは、現在の研究室ステーションにより、または空間的な制約により、個々の研究室が持ちうるニーズに対応する大きな利点である。
【0060】
下位平面から搬送平面を構築する手法は、異なる格子寸法を有する行という概念と組み合わせて、必要な電磁アクチュエータの数を減少させることができる。下位平面は、第1の外面および第2の外面に沿って電磁アクチュエータが第1の格子寸法g1に配置され、第3の外面および第4の外面に沿って電磁アクチュエータが第2の格子寸法g2に配置される場合に、用いられることができ、g2=2×g1である。複数の下位平面は、敷き詰められた形で隣接して配置されることができ、異なる下位平面の隣接する外面は異なる格子寸法を有する。
【0061】
システムは、隣接する電磁アクチュエータ間の磁気結合を提供するように適合された磁化可能な結合要素を備えることができる。この結合要素により、起動された電磁アクチュエータは、逆の極性を有する隣接するアクチュエータ内で磁界を自動的に発生させる。これは、単一の電磁アクチュエータのみがたとえば対応する励磁電流によって起動される場合ですら、それぞれの引っ張る力および押す力を自動的に提供する。
【0062】
容器キャリアの表面および搬送平面の表面は、たとえば容器キャリアおよび/または搬送平面をコーティングすることによって、表面間の摩擦を減少させるように構成することができる。
【0063】
システムは、搬送平面を覆う、特に搬送平面を形成する複数の下位平面を覆うカバープロファイルを備えることができ、このカバー平面は液密である。カバー平面は搬送平面の清掃を簡略化し、複数の隣接する下位平面搬送平面から形成されるとき、隣接する下位平面間の間隙の邪魔となることを回避する。さらに、カバープロファイルは、隣接する下位平面間の高低差を軽減する。カバープロファイルは、搬送平面の上に重なるだけでもよいし、配置を安定させ、磁力を減少させる離間を防止するように、下位平面の上部表面に接着されてもよい。
【0064】
試料容器の用途の広い(versatile)搬送のための方法は、上記で説明したいくつかの容器キャリアを備える研究室試料配送システムを用いて達成することができる。この容器キャリアは、少なくとも1つの磁気的活性デバイスを備え、試料容器を運ぶように適合される。研究室試料配送システムは、前記容器キャリアを運ぶように適合された搬送平面と、前記搬送平面の下方に静止して配置されたいくつかの電磁アクチュエータとを
さらに備える。この電磁アクチュエータは、前記容器キャリアに磁力を印加することによって前記搬送平面の上で容器キャリアを移動させるように適合される。この方法は、前記電磁アクチュエータのうち少なくとも1つを起動して、前記少なくとも1つの起動された電磁アクチュエータの動作距離内の容器キャリアに磁力を印加するステップを含む。電磁アクチュエータを起動することは、磁界が電磁アクチュエータによって生成されることを意味する。起動は、強磁性コアを囲むコイルに印加される駆動電流を生成するによって行われることができる。
【0065】
搬送平面上で移動する容器キャリアの速度は、隣接する電磁アクチュエータの連続した起動の間の時間を設定することによって設定されることができる。この持続時間が、より短く設定される場合、速度は増加し、この持続時間が、より長く設定される場合、速度は減少する。持続時間を動的に変更することによって、容器キャリアは加速または減速されることができる。
【0066】
電磁アクチュエータは、前記磁力を用いて印加されるべき前記容器キャリアの検知された位置に応じて起動されることができる。電磁アクチュエータは、生成された磁界の極性が電磁アクチュエータに対する容器キャリアの位置によって決まるように起動されることができる。これによって、位置に依存した引っ張る力と押す力が生じる。第1の位置範囲では、容器キャリアが、起動された電磁アクチュエータの方へ移動しているとき、引っ張る力が、起動された電磁アクチュエータの方へ容器キャリアを引きつけることができる。第2の位置範囲では、容器キャリアが電磁アクチュエータを横断すると、今度は押す力が、反対の極性を有する磁界を生成する起動された電磁アクチュエータから離れるように容器キャリアを押す。さらに、磁界強度は、容器キャリアの安定した移動を提供するように、検知された位置に応じて変更されてよい。電磁アクチュエータは、単一の極性のみを有する磁界を生成してシステムを簡略化するように適合させることができる。この場合、容器キャリアが、起動された電磁アクチュエータの方へ移動しているとき、起動された電磁アクチュエータは、第1の位置範囲で引っ張る力を生成することができる。第2の位置範囲では、容器キャリアが電磁アクチュエータを横断したとき、電磁アクチュエータは停止されることができる。
【0067】
第1の搬送経路に沿って第1の容器キャリアを移動させるため、電磁アクチュエータの第1のグループが、第1の搬送経路に沿って起動されることができる。第2の搬送経路に沿って第2の容器キャリアを独立して、かつ少なくとも部分的に同時に移動させるため、複数の電磁アクチュエータからなる第2のグループが、第2の搬送経路に沿って起動されることができる。「同時に」という用語は、特定の時間間隔中に第1の容器キャリアと第2の容器キャリアの両方が移動することを意味する。第1のグループまたは第2のグループの電磁アクチュエータは、それぞれの搬送経路に沿って次々と起動されてよい。あるいは、それぞれの搬送経路に沿った2つ以上の隣接する電磁アクチュエータが、少なくとも部分的に時間的に重複して起動されてもよい。
【0068】
第1の電磁アクチュエータの上のフィールド上に配設された容器キャリアの、第2の電磁アクチュエータの上の隣接するフィールドへの移動は、第1のアクチュエータと、第2の電磁アクチュエータと、ならびに第1の電磁アクチュエータに隣接し、第2の電磁アクチュエータの反対側にあり、第1の電磁アクチュエータおよび第2の電磁アクチュエータと同じ行または列の一部である第3の電磁アクチュエータを所定の順序で起動することを含むことができる。
【0069】
容器キャリアが、容器キャリアの台の中央に配置された第1の永久磁石と、この第1の永久磁石を囲む台内に配置された環状形状を有する第2の永久磁石とを備える場合、方法は、結果として生成される、環状形状を有する前記第2の永久磁石に関する引っ張る力が
生成されるように前記第2の電磁アクチュエータを起動し、結果として生成される、前記第2の永久磁石に関する押す力が生成されるように前記第3の電磁アクチュエータを起動するステップと、所定の時間間隔の後で、または容器キャリアの所定の位置で、結果として生成される、前記第2の永久磁石に関する引っ張る力が生成され、結果として生成される、前記第1の永久磁石に関する押す力が生成されるように、前記第1の電磁アクチュエータを起動するステップと、第2の所定の時間間隔の後で、または容器キャリアの第2の所定の位置で、結果として生成される、前記第2の永久磁石に関する引っ張る力が生成されるように前記第2の電磁アクチュエータを起動するステップとをさらに含むことができる。隣接する電磁アクチュエータ間の移動は、3つの隣接する電磁アクチュエータに関する一連の3つの起動パターンで行われる。これにより、高い位置決め精度を持つ連続した一様な移動が行われる。第1の時間間隔および第2の時間間隔または第1の位置および第2の位置は、容器キャリア検知デバイスによって提供される容器キャリアの検知された位置に基づいて決定されることができる。
【0070】
本発明の実施形態は略図に示されている。
【図面の簡単な説明】
【0071】
図1】複数の下位平面から形成された搬送平面を有する研究室試料配送システムを備える研究室システムを示す図である。
図2図1に示される例示的な下位平面に関する上面図である。
図3図2に示される下位平面のより詳細な側面斜視図である。
図4】第1の実施形態による容器キャリアを示す図である。
図5】第2の実施形態による容器キャリアおよび対応する電磁アクチュエータを示す図である。
図6】起動されていない電磁アクチュエータおよび起動されている隣接する電磁アクチュエータの上に容器キャリアが設置された場合のシミュレートされた磁束密度を示す図である。
図7】隣接する電磁アクチュエータ間の磁気結合を提供する磁化可能な結合要素を備える下位平面の一実施形態の側面図である。
図8】第1の実施形態による、容器キャリアの移動および対応する電磁アクチュエータの起動順序を示す図である。
図9】第2の実施形態による、容器キャリアの移動および対応する電磁アクチュエータの起動順序を示す図である。
図10】移送デバイスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0072】
図1は、たとえばキャップ除去ステーション、再キャップステーション、分取ステーション、遠心分離ステーション、アーカイブ保管ステーション、ピペッティングステーション、ラベリングステーション、ソーティングステーション、管種識別ステーション、分析器、およびプローブ品質決定ステーションの形態をした、分析前ステーション、分析ステーション、および分析後ステーション22と、研究室試料配送システム100とを備える研究室システム1000を示す。図1は2つの例示的な研究室ステーション22のみを示しているが、3つ以上の研究室ステーションが設けられてよいことは自明である。
【0073】
研究室試料配送システム100は、試料容器3内に含まれる試料または検体たとえば血液試料を異なる研究室ステーション22間で配送するために使用される。
研究室試料配送システム100は、各々が搬送平面4にわたって対応する試料容器3を支持するように適合されたいくつかの容器キャリアまたは単一管キャリア1を備える。搬送平面4の下方には、複数の電磁アクチュエータ5(図2および3を参照されたい)が静止して配置される。電磁アクチュエータ5の各々は、容器キャリア1に磁力を印加するこ
とによって、対応する電磁アクチュエータ5の動作距離内で容器キャリア1を移動させるように適合される。
【0074】
システムは、バーコードリーダ31と、RFIDリーダ32と、研究室ステーション22に対応する移送デバイス33と、操作上は搬送平面4に結合された従来のベルト駆動容器キャリアコンベヤ34とをさらに備える。
【0075】
図示の搬送平面4は4つの方形の下位平面23に分割され、この下位平面23は互いに隣接して配置される。搬送平面は任意選択のカバープロファイル24によって覆われ、このカバープロファイル24は液密であり、間隙を覆い、隣接する下位平面23間の高低差を軽減する。カバープロファイル24の材料は、低い摩擦係数を提供する。カバープロファイル24は、たとえば、ガラス板であってもよいし、ポリエチレンまたはPTFE(ポリ−テトラ−フルオロ−エチレン)のホイルであってもよい。
【0076】
移送デバイス33は、搬送平面4と対応する研究室ステーション22との間で試料品を移送するように適合される。この試料品は、容器キャリア1ならびに対応する試料容器3であってよく、試料容器3は、試料、試料の一部、または対応する試料容器3のない試料一式を含む。
【0077】
各々の移送デバイス22は、少なくとも2つの軸に沿って、たとえばZ−軸およびY−軸に沿って、前記試料品を移送するように適合される。移送デバイス22の少なくともいくつかは、複数の試料品を並列に移送して、移送能力を高速化するように適合させることができる。移送デバイス22は、ピックアンドプレースデバイス、ピッカ(picker)を有する多軸ロボット、ピペッタなどであってよい。
【0078】
移送デバイスを使用することによって、従来の研究室デバイスを、既存の研究室デバイスを再設計したり既存の研究室デバイスを特に搬送システムに適合させたりする必要なく搬送システムと共に用いることが可能となる。
【0079】
処理待ち行列を提供するために、搬送平面4は、対応する移送デバイス22に隣接して位置する移送領域27を備える。移送領域27は、いくつか、たとえば10〜20の容器キャリア1を一次元または二次元の待ち行列に記憶するように適合され、対応する移送デバイス33は、移送領域27内の少なくとも1つの特定の移送場所28と対応する研究室ステーション22との間で試料品を移送するように配置され、その逆も同様である。
【0080】
緊急試料について最適化された処理経路を提供するために、各々の移送領域27は優先領域29を備える。対応する移送デバイス33は、優先領域29内の特定の優先場所30と優先権を持つ対応する研究室ステーション22との間で、すなわち、優先順位の付けられていない移送場所28の上に前記試料品が配設される前に、これらの試料品を移送するように配置される。
【0081】
試料容器を実際に運んでいない容器キャリアを扱うために、搬送平面4は、試料容器を実際に運んでいない容器キャリア3を収容するように適合された緩衝領域37を備える。あるいは、またはこれに加えて、搬送平面に隣接して位置する、荷を積んでいない容器キャリアのための緩衝ユニットが設けられてよい。この緩衝ユニットは、緩衝ユニットから搬送平面上に容器キャリアを移送するための内蔵移送機構を有することができ、または上記で説明した移送デバイスは、緩衝ユニットと搬送平面との間で使用されることができる。
【0082】
RFIDリーダ32は、各々の容器キャリア1の中に備えられるRFIDタグ9(図5
を参照されたい)と相互作用するために使用される。バーコードリーダ31は、試料特性を表す、試料容器3上のバーコード(図示せず)を読み取るように適合される。研究室システム1000は、処理経路にわたって試料容器3を追跡するために容器キャリアに対応する一意のIDと容器キャリアによって保有される試料容器のバーコードとからなる合致するペアを記憶するメモリデバイスを、研究室システム制御デバイス(図示せず)の一部として備える。
【0083】
従来のベルト駆動容器キャリアコンベヤ34は、搬送ゲートウェイ36を用いて搬送平面4に機能的に結合され、前記容器キャリアコンベヤ34は、対応するラック35内で搬送平面4の上に配設されない容器キャリア3を運搬するように配置される。
【0084】
図2は、図1の例示的な下位平面23に関する概略上面図である。下位平面は、第1の外面20と、第2の外面21と、第3の外面18と、第4の外面19とを有する。第1の外面20および第2の外面21に沿って、電磁アクチュエータ5が第1の格子寸法g1で配置される。電磁アクチュエータ5は、第3の外面18および第4の外面19に沿って第2の格子寸法g2で配置され、ここでg2=2×g1である。格子寸法g1は、たとえば20mmとすることができる。
【0085】
電磁アクチュエータ5は、行と列、たとえば16行と16列の形で配置され、この行および列は第1の格子寸法g1または第2の格子寸法g2のどちらかを有し、ここでg2=2×g1である。隣接する行は異なる格子寸法を有し、隣接する列は異なる格子寸法を有する。搬送平面上のある位置またはフィールドが、目的の宛先としてアクセス可能でなければならない場合、その目的の宛先の下に、対応する電磁アクチュエータが設けられる。特定のフィールドまたは領域がアクセス可能である必要がない場合、その位置における電磁アクチュエータは省略されてもよい。
【0086】
図3は、図2に示される下位平面23のより詳細な側面斜視図である。
図示のように、各々の電磁アクチュエータ5はキャリア板26上に固定され、搬送平面4に基本的に垂直に延在する強磁性円筒形コア5aを備える。強磁性円筒形コア5aを、コイル5bが囲む。コイル5bは、電気接点5cを介してドライバユニット(図示せず)によって供給される動作電流により印加されることができる。動作電流によって駆動される場合、各々の電磁アクチュエータ5は磁界を生成する。この磁界が、容器キャリア1内に配置された永久磁石2(図4を参照されたい)と相互作用すると、この磁界は、搬送平面4に沿って容器キャリア1を移動させる駆動力を提供する。強磁性円筒形コア5aは、コイル5bによって生成された磁界を束ね、増幅する。
【0087】
最も単純な形態では、各々の容器キャリア1は、対応する容器キャリア1に近接した単一の起動された電磁アクチュエータ5によって生成される駆動力にさらされ、それによって、起動された電磁アクチュエータ5の方へ容器キャリア1を引っ張ることができる。さらに、対応する容器キャリア1に近接した複数の電磁アクチュエータ5の押す駆動力と引く駆動力を重ね合わせることが可能である。
【0088】
さらに、複数の電磁アクチュエータ5を同時に起動して、搬送平面4にわたって所定の経路に沿って、複数の異なる容器キャリア1を互いとは無関係に移動させることが可能である。
【0089】
搬送平面4上に位置する容器キャリア1の存在および位置を検知するために、容器キャリア検知デバイスが設けられる。図示の実施形態は、図3に示されるように、格子の形で上に配置された複数のIRベース反射光バリア17を有するプリント回路基板25を備える。
【0090】
容器キャリア1は、IRベースの反射光バリア17によって放出されたIR放射を反射するように配置されるので、光バリア17は、対応する光バリア17の上に配設された容器キャリア1を検出する。容器キャリアが存在しない場合、反射されたIR光は、対応する光バリア17のIRセンサに入らない。
【0091】
図4は、第1の実施形態による容器キャリア1を示す図である。容器キャリア1は、球形の永久磁石2を備える。前記少なくとも1つの永久磁石2の中心と前記容器キャリアの底部表面8aとの間の距離Iは5mm〜50mmの範囲内にあり、約12mmであってよく、前記底部表面8aは、前記搬送平面4と接触するように適合される。
【0092】
永久磁石2は、硬い強磁性材料から作製されてよい。これらには、たとえば、鉄鉱石(磁鉄鉱または天然磁石)、コバルトおよびニッケル、ならびに希土類金属がある。永久磁石2のN極Nは、搬送平面に向けられる。
【0093】
図示の容器キャリアの台8は、5つの電磁アクチュエータ5によって形成された十字の中心に設置される場合、5つの電磁アクチュエータ5をほぼ覆う約3.5cm〜4.5cmの直径を有する円形断面を有する。十字の中心にある電磁アクチュエータは完全に覆われ、4つの側方の電磁アクチュエータは半分だけほぼ覆われる。このため、隣接するトラックを進む2つのキャリアは、衝突することなく互いに通過することができる。一方、占有面積は、あまり傾斜しないスムーズな搬送を提供するのに十分な大きさである。したがって、容器キャリアは、搬送平面の格子距離よりも5〜30%小さな半径を持つ最適化された円形の底部表面8aを有することができる。
【0094】
容器キャリアは、たとえば可撓性の板ばね43の形態で組み込むことができる試料容器固定手段を備えることができる。可撓性の板ばね43は、容器キャリア3の円筒形開口の側壁に配置される。可撓性の板ばね43は、試料容器3が対応する開口よりも小さな直径を有する場合でも、容器キャリア1の内部で試料容器3を安全に固定する。
【0095】
異なる種類の、たとえば異なるフォームファクタを有する、試料容器が使用される場合、それぞれの種類の試料容器に対応する異なる内径を持つ特定の容器キャリアを提供することすら可能である。
【0096】
図5は、異なる磁石配置を有する、第2の実施形態による容器キャリア1’、および対応する電磁アクチュエータ5’を示す図である。
容器キャリア1’は、前記容器キャリア1’の台8の中央に配置された第1の永久磁石6と、前記第1の永久磁石6を囲む前記台8内に配置された環状形状を有する第2の永久磁石7とを備える。永久磁石6と7は、逆の極性を有する。中央の永久磁石6のN極および環状形状の永久磁石7のS極は、搬送平面4に向けられる。
【0097】
さらに、容器キャリア1’は、特定の容器キャリアに対応する一意のIDを格納するRFIDタグ9を備える。RFIDタグ9は、容器キャリア1’の台8の中で第1の永久磁石6と第2の永久磁石7の間に配置された環状形状のアンテナ10を備える。
【0098】
対応する電磁アクチュエータ5’は、中央の指部11と4つの側方指部12、13、14、および15とを有する強磁性コアを備え、指部の各々は搬送平面4に垂直に延在し、中央の指部11のみが、動作電流Iaによって駆動されるコイル16によって囲まれる。この配置は、図3に示される実施形態と比較して、電磁アクチュエータ5’を起動するために必要なコイルの数を減少させ、特に容器キャリア1’が図示のように配置される場合、中央の指部11と側方の指部12〜15は、有利には、それぞれ押す力および引っ張る
力を提供することによって相互作用する。
【0099】
図6は、起動されていない電磁アクチュエータ5_2および起動されている隣接する電磁アクチュエータ5_3の上に、図4に示されている容器キャリアが設置された場合のシミュレートされた磁束密度を概略的に示す図である。異なる磁束密度Bは、対応するケバによって表される。
【0100】
図示のように、球形の永久磁石2は、起動されていない電磁アクチュエータ5_2の強磁性コアと共に、起動されていない電磁アクチュエータ5_2の強磁性コアの方へ永久磁石2を引っ張る望ましくない磁気保持力F2を引き起こし、それによって、所望の移動の反対方向の望ましくない力成分を引き起こし、加えて、搬送平面の対応する表面と台との間の摩擦を増加させる。起動された電磁アクチュエータ5_3は、力F1を生成する。
【0101】
これらの望ましくない効果を軽減するために、容器キャリアを押す電磁アクチュエータ5_2を逆に起動することによって対向する磁界を生成し、それによって摩擦を減少させることが可能である。
【0102】
あるいは、またはこれに加えて、永久磁石2と搬送平面の間の最適化された距離を選ぶことが可能であり、図4に関する説明も参照されたい。
それにもかかわらず、球形の永久磁石2を使用する所望の移動方向の磁力は、棒磁石に比べて高い。棒磁石は、横方向の磁界密度が低くなるように、一方向に磁界を束ねる。したがって、横方向の搬送に必要とされる横方向の磁力は比較的低いが、望ましくない保持力は比較的高い。球形磁石の磁界の磁束密度があまり高くない場合、横方向の磁界密度は、搬送平面の方向における磁界密度に類似する。したがって、より高い横力が生成されることが可能であり、望ましくない保持力は低くなる。
【0103】
図7は、隣接する電磁アクチュエータ5間の磁気結合を提供する磁化可能な結合要素27を備える下位平面の一実施形態の側面図である。
図示のように、対応するコイルを駆動電流により駆動することによって電磁アクチュエータ5_3のみが起動され、電磁流を引き起こす。この電磁流は、結合要素27によって誘導され、起動されていない電磁アクチュエータ5_2および5_3の強磁性コアの中を延在する。その結果、磁気的な押す力が、永久磁石2と相互作用する電磁アクチュエータ5_2によって生成され、摩擦を減少させ、起動された電磁アクチュエータ5_3によって生成された引っ張る力と所望の方向に重なり合う。
【0104】
図8は、第1の実施形態による、容器キャリア1の移動および対応する電磁アクチュエータ5_1〜5_5の起動順序を示す図である。
図示のように、時刻t=0では、電磁アクチュエータ5_2のみが起動され、したがって、電磁アクチュエータ5_2は、容器キャリア1を図示の方向に移動させる引っ張る力を生成する。
【0105】
時刻t=1では、容器キャリア1は、たとえば容器キャリア検知デバイスによって検知できる電磁アクチュエータ5_2の上に存在するように移動した。移動を継続するために、電磁アクチュエータ5_2が停止され、電磁アクチュエータ5_3が起動され、それによって、容器キャリア1を前方に引っ張る。
【0106】
時刻t=2では、容器キャリア1は、電磁アクチュエータ5_3の上に存在するように移動した。移動を継続するために、電磁アクチュエータ5_3が停止され、電磁アクチュエータ5_4が起動され、それによって、容器キャリア1を前方に引っ張る。
【0107】
上記のステップは、移動が所望される限り、繰り返される。完了すると、搬送経路に沿った複数の電磁アクチュエータ5_1〜5_5からなるグループが順次起動され、前記第1の搬送経路に沿って容器キャリア1を移動させる。
【0108】
電磁アクチュエータ5は独立して起動されることができるので、異なる経路に沿って複数の異なる容器キャリア1を独立してかつ同時に移動させることが可能であり、自明のことながら、衝突は回避されなければならない。
【0109】
図9は、第2の実施形態による、容器キャリア1’の移動および対応する電磁アクチュエータ5_1〜5_3の起動順序を示す図である。図5は、容器キャリア1’をより詳細に示す。
【0110】
図示の実施形態では、第1の電磁アクチュエータ5_2上に配設された容器キャリア1’の、隣接する第2の電磁アクチュエータ5_3への移動は、第1の電磁アクチュエータ5_2および第2の電磁アクチュエータ5_3、ならびに、第1の電磁アクチュエータ5_2に隣接する第3の電磁アクチュエータ5_1を特定の順序および極性で起動することを含む。電磁アクチュエータ5_1〜5_3は同じ行または列の一部であり、容器キャリア1’の方を指すS極(S)またはN極(N)を生成して起動されることができる。
【0111】
t=0における第1のステップでは、第2の電磁アクチュエータ5_3は、結果として生成される、環状形状を有する第2の永久磁石7に関する引っ張る力が生成されるように起動され、第3の電磁アクチュエータ5_1は、結果として生成される、前記第2の永久磁石7に関する押す力が生成されるように起動される。
【0112】
時刻t=1で容器キャリア1’が、たとえば容器キャリア検知デバイスによって検知されることができる、第1の所定の位置に到達した後、結果として生成される、第2の永久磁石7に関する引っ張る力が生成され、結果として生成される、前記第1の永久磁石6に関する押す力が生成されるように、第2の電磁アクチュエータ5_3および第3の電磁アクチュエータ5_1は停止され、第1の電磁アクチュエータ5_2は起動される。
【0113】
容器キャリア1’が時刻t=2において第2の所定の位置に到達した後、結果として生成される、第2の永久磁石7に関する引っ張る力が生成されるように、第1の電磁アクチュエータ5_2および第3の電磁アクチュエータ5_1が停止され、第2の電磁アクチュエータ5_3が起動される。
【0114】
図示の実施形態では、隣接する電磁アクチュエータ5_2と5_3の間の移動は、3つの隣接する電磁アクチュエータ5_1〜5_3に関する一連の3つの起動パターンで実行される。これにより、高い位置決め精度を持つ連続した一様でスムーズな移動が行われる。
【0115】
図10は、移送デバイス33を示す図である。移送デバイス33は、搬送平面4(部分的に重複する)に隣接してまたは部分的にその上に、および研究室ステーション22に隣接して、配置されることができる(図1も参照されたい)。
【0116】
移送デバイス33は、垂直方向(Z方向)および水平方向(X方向および/またはY方向)に可動なピックアンドプレースデバイス42を備える。さらに、移送デバイス33は、試料容器3を垂直軸に沿って回転させるように適合させることができる。移送デバイス33は、試料容器本体上で試料容器3のみをつまみ上げまたは把持して、試料容器のキャップをつまみ上げるのを回避するようにさらに適合させることができる。
【0117】
ピックアンドプレースデバイス42は、フォーマッティング動作中に、搬送平面4上に配設された容器キャリア1から試料容器3をつまみ上げて、試料容器3をラック35試料容器の中に配設するように適合される。再フォーマッティング動作では、ピックアンドプレースデバイス42は、試料容器ラック35から試料容器3をつまみ上げて、前記試料容器3を前記搬送平面4上に配設された空の容器キャリア1の中に配設するように適合される。
【0118】
移送デバイス33は、試料容器ラック35をピックアンドプレースデバイス42より下方のフォーマッティング位置から研究室ステーション22の方へ移動させるように、および試料容器ラック35を研究室ステーション22から前記ピックアンドプレースデバイス42の下の再フォーマッティング位置の方へ移動させるように適合された第1のコンベヤベルトおよび第2のコンベヤベルト41を備える。
【0119】
移送デバイス33は、試料容器ラックトレイ40の中に試料容器ラック35を収容するように適合された試料容器ラック収容デバイス38を備える。
試料容器ラック収容デバイス38はプッシュローディングドロワを備え、前記プッシュローディングドロワは、開状態と閉状態とを有し、前記開状態では、前記プッシュローディングドロワは、試料容器ラックトレイ40で満たされるように適合される。
【0120】
試料容器ラック収容デバイス38は、前記搬送平面4の搬送平面レベルより下の3つの異なる収容レベルで試料容器ラックトレイ40を収容するように適合される。
試料容器ラック収容デバイス38は昇降デバイス39を備え、前記昇降デバイス39は、試料容器ラック35を前記収容レベルのうち1つから前記搬送平面レベルまで上げるように適合される。
【0121】
閉状態では、前記プッシュローディングドロワは、試料容器ラックトレイを昇降デバイス39に届けるように適合され、昇降デバイス39は、試料容器ラック35を試料容器ラックトレイから順次除去し、試料容器ラック35を搬送平面レベルまで順次上げる。
【0122】
完了すると、移送デバイス33は、試料容器ラック35を試料容器ラック収容デバイス38から除去し、搬送平面4から移送されるべきいくつかの試料容器3を(順次)取り出して、それらの試料容器3を試料容器ラック35に挿入するように適合される。前記試料容器ラック35が一杯になると、前記挿入された試料容器を含む試料容器ラック35が第1のコンベヤベルト41によって研究室ステーション22に移送される。
【0123】
研究室ステーションは、処理された後、試料容器ラック35を出力する。試料容器ラック35は、次に、第2のコンベヤベルト41によってピックアンドプレースデバイス42に移送される。
【0124】
最終的に、ピックアンドプレースデバイス42は、試料容器3を、搬送平面4の上のピックアンドプレースデバイス42の下に配設された対応する容器キャリア1に戻す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10