特許第6728148号(P6728148)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6728148強化された電気化学的及び熱的安定性を有する有機ケイ素含有電解質組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6728148
(24)【登録日】2020年7月3日
(45)【発行日】2020年7月22日
(54)【発明の名称】強化された電気化学的及び熱的安定性を有する有機ケイ素含有電解質組成物
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0567 20100101AFI20200713BHJP
   H01M 10/0568 20100101ALI20200713BHJP
   H01M 10/0569 20100101ALI20200713BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20200713BHJP
   H01G 11/60 20130101ALI20200713BHJP
   H01G 11/62 20130101ALI20200713BHJP
   H01G 11/64 20130101ALI20200713BHJP
【FI】
   H01M10/0567
   H01M10/0568
   H01M10/0569
   H01M10/052
   H01G11/60
   H01G11/62
   H01G11/64
【請求項の数】22
【全頁数】43
(21)【出願番号】特願2017-518246(P2017-518246)
(86)(22)【出願日】2015年10月2日
(65)【公表番号】特表2017-538246(P2017-538246A)
(43)【公表日】2017年12月21日
(86)【国際出願番号】US2015053699
(87)【国際公開番号】WO2016054493
(87)【国際公開日】20160407
【審査請求日】2018年9月19日
(31)【優先権主張番号】62/058,803
(32)【優先日】2014年10月2日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514195610
【氏名又は名称】シラトロニクス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100162422
【弁理士】
【氏名又は名称】志村 将
(72)【発明者】
【氏名】ドゥ ポン
(72)【発明者】
【氏名】ポリーナ マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ウスレー モニカ
(72)【発明者】
【氏名】ギルバート デボラ
(72)【発明者】
【氏名】ジョウ リウ
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン トビアス
【審査官】 松村 駿一
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第104072533(CN,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2014−0067233(KR,A)
【文献】 中国特許出願公開第103579677(CN,A)
【文献】 国際公開第2014/039886(WO,A1)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組み合わせて、有機ケイ素化合物及びイミド塩を含み、且つLiPF6を含んでもよい電解質組成物であって、
前記有機ケイ素化合物が式I又は式II:
【化1】
【化2】
から成る群から選択され、
1、R2及びR3は、同一又は異なり、且つ独立してC1〜C6直鎖又は分岐アルキル及びハロゲンから成る群から選択され、ただしR1、R2又はR3の少なくとも1つはハロゲンであり、
「スペーサ」は、C1〜C6直鎖又は分岐アルキレン、アルケニレン又はアルキニレンから成る群から選択され、あるいは「スペーサ」は存在せず、ただし「スペーサ」が存在しない場合、Yは存在し、
Yは存在しないか、又は−(O−CH2−CH2n−及び
【化3】
から成る群から選択され、
各下付き文字「n」は、同一又は異なり、且つ1〜15の整数であり、下付き文字「x」は1〜15の整数であり、各R4は、同一又は異なり、且つシアノ(−CN)、シアネート(−OCN)、イソシアネート(−NCO)、チオシアネート(−SCN)及びイソチオシアネート(−NCS)から成る群から選択され、
Li/Li+電極に対してアルミニウムを含むカソード集電体を使用し、約3Vから約5Vの範囲の複数回のサイクルでのサイクリックボルタンメトリに供する場合、第2及びその後のサイクルについて約0.10mA/cm2以下の酸化腐食電流を示す、該電解質組成物。
【請求項2】
前記有機ケイ素化合物が式Iに示す構造を有する、請求項に記載の電解質組成物。
【請求項3】
組み合わせて、有機ケイ素化合物及びイミド塩を含み、且つLiPF6を含んでもよい電解質組成物であって、
前記有機ケイ素化合物が式II
【化4】
から成る群から選択され、
1及びR3は、同一又は異なり、且つ独立してC1〜C6直鎖又は分岐アルキル及びハロゲンから成る群から選択され、
各下付き文字「n」は、同一又は異なり、且つ1〜15の整数であり、各R4は、同一又は異なり、且つシアノ(−CN)、シアネート(−OCN)、イソシアネート(−NCO)、チオシアネート(−SCN)及びイソチオシアネート(−NCS)から成る群から選択され、
Li/Li+電極に対してアルミニウムを含むカソード集電体を使用し、約3Vから約5Vの範囲の複数回のサイクルでのサイクリックボルタンメトリに供する場合、第2及びその後のサイクルについて約0.10mA/cm2以下の酸化腐食電流を示す、該電解質組成物。
【請求項4】
前記イミド塩が、ビス(トリフルオロメタン)スルホンアミド(TFSI)アニオンを含む、請求項に記載の電解質組成物。
【請求項5】
組み合わせて、有機ケイ素化合物と、ビス(トリフルオロメタン)スルホンアミド(TFSI)アニオンを含むイミド塩とを含む電解質組成物であって、
前記有機ケイ素化合物が式I又は式II:
【化5】
【化6】
から成る群から選択され、
1、R2及びR3は、同一又は異なり、且つ独立してC1〜C6直鎖又は分岐アルキル及びハロゲンから成る群から選択され、
「スペーサ」は、C1〜C6直鎖又は分岐アルキレン、アルケニレン又はアルキニレンから成る群から選択され、あるいは「スペーサ」は存在せず、ただし「スペーサ」が存在しない場合、Yは存在し、
Yは存在しないか、又は−(O−CH2−CH2n−及び
【化7】
から成る群から選択され、
各下付き文字「n」は、同一又は異なり、且つ1〜15の整数であり、下付き文字「x」は1〜15の整数であり、各R4は、同一又は異なり、且つシアノ(−CN)、シアネート(−OCN)、イソシアネート(−NCO)、チオシアネート(−SCN)及びイソチオシアネート(−NCS)から成る群から選択される、
リチウムビス(オキサラト)ボレート(LiBOB)又はLiPF6をさらに含む解質組成物であって、
Li/Li+電極に対してアルミニウムを含むカソード集電体を使用し、約3Vから約5Vの範囲の複数回のサイクルでのサイクリックボルタンメトリに供する場合、第2及びその後のサイクルについて約0.10mA/cm2以下の酸化腐食電流を示す、該電解質組成物
【請求項6】
カーボネートをさらに含む、請求項に記載の電解質組成物。
【請求項7】
前記カーボネートが、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、プロピレンカーボネート(PC)及びフルオロエチレンカーボネート(FEC)から成る群から選択される、請求項に記載の電解質組成物。
【請求項8】
LiBOBを含む、請求項に記載の電解質組成物。
【請求項9】
組み合わせて、有機ケイ素化合物及びイミド塩を含み、且つLiPF6を含んでもよい電解質組成物であって、
前記有機ケイ素化合物が式I又は式II:
【化8】
【化9】
から成る群から選択され、
1、R2及びR3は、同一又は異なり、且つ独立してC1〜C6直鎖又は分岐アルキル及びハロゲンから成る群から選択され、
「スペーサ」は、C1〜C6直鎖又は分岐アルキレン、アルケニレン又はアルキニレンから成る群から選択され、あるいは「スペーサ」は存在せず、ただし「スペーサ」が存在しない場合、Yは存在し、
Yは存在しないか、又は−(O−CH2−CH2n−及び
【化10】
から成る群から選択され、
各下付き文字「n」は、同一又は異なり、且つ1〜15の整数であり、下付き文字「x」は1〜15の整数であり、各R4は、同一又は異なり、且つシアノ(−CN)、シアネート(−OCN)、イソシアネート(−NCO)、チオシアネート(−SCN)及びイソチオシアネート(−NCS)から成る群から選択され、
前記イミド塩は、ビス(トリフルオロメタン)スルホンイミドリチウム塩(LiTFSI)であり、及び
該電解質組成物は、リチウムビス(オキサラト)ボレート(LiBOB)又はLiPF6をさらに含み、且つカーボネートをさらに含み、
Li/Li+電極に対してアルミニウムを含むカソード集電体を使用し、約3Vから約5Vの範囲の複数回のサイクルでのサイクリックボルタンメトリに供する場合、第2及びその後のサイクルについて約0.10mA/cm2以下の酸化腐食電流を示す電解質組成物。
【請求項10】
前記有機ケイ素化合物が式1に示す構造を有する、請求項に記載の電解質組成物。
【請求項11】
前記有機ケイ素化合物が式IIに示す構造を有する、請求項に記載の電解質組成物。
【請求項12】
前記カーボネートが、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、プロピレンカーボネート(PC)及びフルオロエチレンカーボネート(FEC)から成る群から選択される、請求項に記載の電解質組成物。
【請求項13】
LiBOBをさらに含む、請求項12に記載の電解質組成物。
【請求項14】
前記イミド塩を欠く前記有機ケイ素化合物の対応する示差走査熱量測定(DSC)応答開始温度より少なくとも5℃高いDSC応答開始温度を示す、請求項1に記載の電解質組成物。
【請求項15】
前記有機ケイ素化合物が式Iに示す構造を有する、請求項14に記載の電解質組成物。
【請求項16】
組み合わせて、有機ケイ素化合物及びイミド塩を含み、且つLiPF6を含んでもよい電解質組成物であって、
前記有機ケイ素化合物が式II
【化11】
に示す構造を有
1及びR3は、同一又は異なり、且つ独立してC1〜C6直鎖又は分岐アルキル及びハロゲンから成る群から選択され、
各下付き文字「n」は、同一又は異なり、且つ1〜15の整数であり、各R4は、同一又は異なり、且つシアノ(−CN)、シアネート(−OCN)、イソシアネート(−NCO)、チオシアネート(−SCN)及びイソチオシアネート(−NCS)から成る群から選択され、
Li/Li+電極に対してアルミニウムを含むカソード集電体を使用し、約3Vから約5Vの範囲の複数回のサイクルでのサイクリックボルタンメトリに供する場合、第2及びその後のサイクルについて約0.10mA/cm2以下の酸化腐食電流を示し、
前記イミド塩を欠く前記有機ケイ素化合物の対応する示差走査熱量測定(DSC)応答開始温度より少なくとも5℃高いDSC応答開始温度を示す、該電解質組成物。
【請求項17】
前記イミド塩が、ビス(トリフルオロメタン)スルホンアミド(TFSI)アニオンを含む、請求項14に記載の電解質組成物。
【請求項18】
組み合わせて、有機ケイ素化合物及びイミド塩を含み、且つLiPF6を含んでもよい電解質組成物であって、
前記有機ケイ素化合物が式I又は式II:
【化12】
【化13】
から成る群から選択され、
1、R2及びR3は、同一又は異なり、且つ独立してC1〜C6直鎖又は分岐アルキル及びハロゲンから成る群から選択され、
「スペーサ」は、C1〜C6直鎖又は分岐アルキレン、アルケニレン又はアルキニレンから成る群から選択され、あるいは「スペーサ」は存在せず、ただし「スペーサ」が存在しない場合、Yは存在し、
Yは存在しないか、又は−(O−CH2−CH2n−及び
【化14】
から成る群から選択され、
各下付き文字「n」は、同一又は異なり、且つ1〜15の整数であり、下付き文字「x」は1〜15の整数であり、各R4は、同一又は異なり、且つシアノ(−CN)、シアネート(−OCN)、イソシアネート(−NCO)、チオシアネート(−SCN)及びイソチオシアネート(−NCS)から成る群から選択され、
Li/Li+電極に対してアルミニウムを含むカソード集電体を使用し、約3Vから約5Vの範囲の複数回のサイクルでのサイクリックボルタンメトリに供する場合、第2及びその後のサイクルについて約0.10mA/cm2以下の酸化腐食電流を示し、
前記イミド塩を欠く前記有機ケイ素化合物の対応する示差走査熱量測定(DSC)応答開始温度より少なくとも5℃高いDSC応答開始温度を示し、
リチウムビス(オキサラト)ボレート(LiBOB)又はLiPF6をさらに含む、電解質組成物。
【請求項19】
カーボネートをさらに含む、請求項18に記載の電解質組成物。
【請求項20】
前記カーボネートが、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、プロピレンカーボネート(PC)及びフルオロエチレンカーボネート(FEC)から成る群から選択される、請求項19に記載の電解質組成物。
【請求項21】
組み合わせて、有機ケイ素化合物と、ビス(トリフルオロメタン)スルホンアミド(TFSI)アニオンを含むイミド塩とを含み、且つLiPF6を含んでもよい電解質組成物であって、
前記有機ケイ素化合物が式I又は式II:
【化15】
【化16】
から成る群から選択され、
1、R2及びR3は、同一又は異なり、且つ独立してC1〜C6直鎖又は分岐アルキル及びハロゲンから成る群から選択され、
「スペーサ」は、C1〜C6直鎖又は分岐アルキレン、アルケニレン又はアルキニレンから成る群から選択され、あるいは「スペーサ」は存在せず、ただし「スペーサ」が存在しない場合、Yは存在し、
Yは存在しないか、又は−(O−CH2−CH2n−及び
【化17】
から成る群から選択され、
各下付き文字「n」は、同一又は異なり、且つ1〜15の整数であり、下付き文字「x」は1〜15の整数であり、各R4は、同一又は異なり、且つシアノ(−CN)、シアネート(−OCN)、イソシアネート(−NCO)、チオシアネート(−SCN)及びイソチオシアネート(−NCS)から成る群から選択され、
Li/Li+電極に対してアルミニウムを含むカソード集電体を使用し、約3Vから約5Vの範囲の複数回のサイクルでのサイクリックボルタンメトリに供する場合、第2及びその後のサイクルについて約0.10mA/cm2以下の酸化腐食電流を示し、
前記イミド塩を欠く前記有機ケイ素化合物の対応する示差走査熱量測定(DSC)応答開始温度より少なくとも5℃高いDSC応答開始温度を示し、
エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、プロピレンカーボネート(PC)及びフルオロエチレンカーボネート(FEC)から成る群から選択されるカーボネートを更に含み、
LiBOBを含む、電解質組成物。
【請求項22】
請求項1〜21のいずれか一項に記載の電解質組成物を含む電気化学デバイス。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願の相互参照
本願に援用される2014年10月2日に出願の仮特許出願第62/058803号の優先権をここに主張する。
【0002】
リチウムイオンバッテリ中の液状電解質は従来、リチウム塩(通常はLiPF6)をエチレンカーボネート(EC)と1種以上の共溶媒、例えばジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)又はエチルメチルカーボネート(EMC)との有機溶媒ブレンド物中に含む。残念ながら、LiPF6は、60℃を超えると、また充電電圧が4.3ボルトを超えるとこれらのカーボネート溶媒中で不安定となる。これらの温度又は電圧を超えた状態でリチウムイオンバッテリを使用すると電極材料及びバッテリ性能が急速に劣化する。加えて、現行のリチウムイオン電解質溶媒の引火点は35℃前後であり、リチウムイオンセルに極端な異常が生じた際に放出されるエネルギーの主な供給源である。これらの大きな制約を考えると、現行の電解質は、携帯用製品、電気駆動車(EDV)を含めた全ての用途及び発電所規模用途向けの進化したリチウムイオンバッテリの開発を妨げている。バッテリの故障率を劇的に低下させることも、大型リチウムイオンバッテリをEDV及び供給網での電気貯蔵における用途で効果的に役立てるために必要とされる。
【0003】
したがって、エネルギー貯蔵デバイス、例えばリチウムイオンバッテリにおける改善された電解質溶液が求められているが、そのニーズは長きにわたって満たされていない。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1】様々な有機ケイ素電解質組成物について電流(mA/cm2)対電位Ewe/Vを記録した一連のトレースを示す(詳細については本文を参照のこと)。トレースは、慣用の3電極構成において1.5mmのAl作用電極(「we」)を使用して生成した。
図2A】30℃でのサイクリックボルタモグラムトレースであり、図1の3電極構成(1.5mmのAl作用電極)を使用し、電解質組成物は1MのLiTFSI及びEC/EMCを含む。トレースは第10サイクルを記録する。
図2B】様々な有機ケイ素電解質組成物対Al作用電極について電流(mA/cm2)対電位Ewe/Vを記録した一連のトレースを示す(詳細については本文を参照のこと)。トレースは30℃で記録した。
図3図3A図3B図3C及び図3Dは、30℃での一連のボルタモグラムであり、本明細書で開示の有機ケイ素−及びイミド含有電解質の性能を対応するカーボネート含有電解質と比較している。完全な詳細については本文を参照のこと。
図4図4A図4B図4C及び図4Dは、50℃での一連のボルタモグラムであり、本明細書で開示の有機ケイ素−及びイミド含有電解質の性能を対応するカーボネート含有電解質と比較している。完全な詳細については本文を参照のこと。
図5】1.5mmのAl作用電極を備えた慣用の3電極セルを使用した1MのLiTFSI+EC/EMC電解質及び1MのLiTFSI/F1S3MN電解質についての50℃での一連のサイクリックボルタモグラムである。10サイクルを記録する。
図6図6A図6B及び図6Cは、図5に記載の装置を使用した30℃での一連のボルタモグラムであり、本明細書で開示の有機ケイ素−、カーボネート−及びイミド含有電解質の性能をカーボネート添加剤だけを含有する(すなわち、イミド添加剤なし)対応する電解質と比較している。完全な詳細については本文を参照のこと。
図7図7A図7B及び図7Cは、図5に記載の装置を使用した50℃での一連のボルタモグラムであり、本明細書で開示の有機ケイ素−、カーボネート−及びイミド含有電解質の性能をカーボネート添加剤だけを含有する(すなわち、イミド添加剤なし)対応する電解質と比較している。完全な詳細については本文を参照のこと。
図8】様々な電解質の存在下、脱リチウム化された市販のニッケル−コバルト−アルミニウム(「NCA」)カソード材料を使用した示差走査熱量測定(「DSC」)分析の結果を示す。全詳細については本文を参照のこと。
図9図9A及び9Bは、様々な電解質の存在下、脱リチウム化された市販のニッケルマンガンコバルト(「NMC」)カソード材料(具体的にはNMC「532」、すなわちLiNi1/2Mn3/10Co1/52である)を使用したDSC分析の一連の結果を示す。
図10】OS3電解質及びNMCカソードと組み合わせた0.1MのLiTFSIを他の電解質組成物と比較した別のDSC分析である。このトレースは重要である。OS3及びLiTFSIの組み合わせが、LiTFSI濃度0.1〜1.0MでのNMCでのDSC試験において相乗効果を有することを示すからである。これらの組成物は250℃を大きく超えた温度でも安定したままである。
図11】NMC/グラファイト電極を備えたコインセルで測定したイミド含有OS3電解質対慣用のカーボネート含有電解質の70℃でのサイクル安定性を示すトレースである。
図12
【化1】
(F1S3MN)電解質(単独及び20%ECとの組み合わせ)の70℃でのサイクル安定性を示すトレースであり、LiTFSI又はLiPF6を塩として使用している。測定は、リン酸鉄リチウム/グラファイト電極を備えたコインセルにおいて、1C充電/2C放電、3.8Vから2.5V、300サイクルで行った。
図13
【化2】

(F1S3M2)電解質(単独及び20%ECとの組み合わせ)の70℃でのサイクル安定性を示すトレースであり、LiTFSI又はLiPF6を塩として使用している。測定は、リン酸鉄リチウム/グラファイト電極を備えたコインセルにおいて、1C充電/2C放電、3.8Vから2.5V、300サイクルで行った。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本明細書で開示するのは、少なくとも1種の有機ケイ素化合物及び少なくとも1種のイミド含有化合物、典型的にはイミド塩を含む電解質組成物である。これらの組成物は予期せず上昇した熱安定性を示す。その多くは70℃を超えた、100℃を超えた、150℃を超えた、200℃を超えた、250℃さえも超えた温度で動作する。
【0006】
本明細書で開示するのは、数ある他の用途の中でもとりわけ、電気化学デバイスにおいて電解質溶媒として使用するための有機ケイ素(OS)化合物である。概して、OS化合物は環境に優しく、不燃性で高温耐性の材料である。こういった特徴がOS材料を、エネルギー貯蔵デバイスにおける電解質溶媒、バインダ及びコーティングとしての使用によく適したものにしている。OS系の電解質は、一次及び充電式バッテリを含めた全てのリチウム(Li)系電気化学系(すなわち、リチウムイオン、リチウム空気)及びキャパシタ(すなわち、スーパー/ウルトラキャパシタ)に適合する。OS系電解質をリチウムバッテリに取り入れる過程でのセルのデザインにおける変更は限られたものであり、これらの電解質は既存の製造工程及び設備での生産作業に組み入れることができる。
【0007】
本明細書に記載のOS含有電解質は、伝統的なリチウムイオンバッテリ中のカーボネート系溶媒系に代わる液状電解質溶媒として使用できる。このOS系溶媒によりリチウムイオンバッテリの性能及び酷使に対する耐性は大幅に改善され、改善点にはより長い寿命にわたって高温での熱安定性が向上すること、電解質引火点が上昇して安全性が改善されること、電圧安定性が向上するため高電圧カソード材料の使用及びより高いエネルギー密度の達成が可能になること、電気駆動車及び供給網での電気貯蔵用途で使用する大型リチウムバッテリの要件と一致する低いバッテリ故障率並びに現行のデザインで採用し易くするための、リチウムイオンバッテリで現在使用されている材料との適合性が含まれる。電気二重層キャパシタ(EDLC)デバイスもOS系電解質で機能すると実証されている。工業、軍事及び消費者向け製品デバイスにおける特定用途の要件を満たすように、本明細書に記載のOS化合物をOS系電解質ブレンド物において使用できる。
【0008】
本明細書で特に開示するのは以下である。
1.組み合わせて、有機ケイ素化合物及びイミド塩を含み、且つLiPF6を含んでもよい電解質組成物であって、
Li/Li+電極に対してアルミニウムを含むカソード集電体を使用し、約3Vから約5Vの範囲の複数回のサイクルでのサイクリックボルタンメトリに供する場合、第2及びその後のサイクルについて約0.10mA/cm2以下の酸化腐食電流を示す、該電解質組成物。
【0009】
2.有機ケイ素化合物は式I又は式II:
【化3】
式I
【化4】
式II
から成る群から選択され、
1、R2及びR3は同一又は異なり且つ独立してC1〜C6直鎖又は分岐アルキル及びハロゲンから成る群から選択され、
「スペーサ」はC1〜C6直鎖又は分岐アルキレン、アルケニレン又はアルキニレンから成る群から選択され、あるいは「スペーサ」は存在せず、ただし「スペーサ」が存在しない場合、Yは存在し、
Yは存在しないか、又は−(O−CH2−CH2n−及び
【化5】
から成る群から選択され、
各下付き文字「n」は同一又は異なり且つ1〜15の整数であり、下付き文字「x」は1〜15の整数であり、各R4は同一又は異なり且つシアノ(−CN)、シアネート(−OCN)、イソシアネート(−NCO)、チオシアネート(−SCN)及びイソチオシアネート(−NCS)から成る群から選択される、請求項1に記載の電解質組成物。
【0010】
3.有機ケイ素化合物は式Iに示す構造を有する、請求項2に記載の電解質組成物。
【0011】
4.有機ケイ素化合物は式IIに示す構造を有する、請求項2に記載の電解質組成物。
【0012】
5.イミド塩はビス(トリフルオロメタン)スルホンアミド(TFSI)アニオンを含む、請求項2に記載の電解質組成物。
【0013】
6.リチウムビス(オキサラト)ボレート(LiBOB)又はLiPF6をさらに含む、請求項5に記載の電解質組成物。
【0014】
7.カーボネートをさらに含む、請求項6に記載の電解質組成物。
【0015】
8.カーボネートは、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、プロピレンカーボネート(PC)及びフルオロエチレンカーボネート(FEC)から成る群から選択される、請求項7に記載の電解質組成物。
【0016】
9.LiBOBを含む、請求項7に記載の電解質組成物。
【0017】
10.有機ケイ素化合物は式I又は式II:
【化6】
式I
【化7】
式II
から成る群から選択され、
1、R2及びR3は同一又は異なり且つ独立してC1〜C6直鎖又は分岐アルキル及びハロゲンから成る群から選択され、
「スペーサ」はC1〜C6直鎖又は分岐アルキレン、アルケニレン又はアルキニレンから成る群から選択され、あるいは「スペーサ」は存在せず、ただし「スペーサ」が存在しない場合、Yは存在し、
Yは存在しないか、又は−(O−CH2−CH2n−及び
【化8】
から成る群から選択され、
各下付き文字「n」は同一又は異なり且つ1〜15の整数であり、下付き文字「x」は1〜15の整数であり、各R4は同一又は異なり且つシアノ(−CN)、シアネート(−OCN)、イソシアネート(−NCO)、チオシアネート(−SCN)及びイソチオシアネート(−NCS)から成る群から選択され、
イミド塩はビス(トリフルオロメタン)スルホンイミドリチウム塩(LiTFSI)であり、
リチウムビス(オキサラト)ボレート(LiBOB)又はLiPF6をさらに含み、またカーボネートをさらに含む、請求項1に記載の電解質組成物。
【0018】
11.有機ケイ素化合物は式1に示す構造を有する、請求項10に記載の電解質組成物。
【0019】
12.有機ケイ素化合物は式IIに示す構造を有する、請求項10に記載の電解質組成物。
【0020】
13.カーボネートは、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、プロピレンカーボネート(PC)及びフルオロエチレンカーボネート(FEC)から成る群から選択される、請求項10に記載の電解質組成物。
【0021】
14.LiBOBをさらに含む、請求項13に記載の電解質組成物。
【0022】
15.イミド塩が不在である有機ケイ素化合物の対応するDSC応答開始温度より少なくとも5℃高い示差走査熱量測定(DSC)応答開始温度を示す、請求項1に記載の電解質組成物。
【0023】
16.有機ケイ素化合物は式I又は式II:
【化9】
式I
【化10】
式II
から成る群から選択され、
1、R2及びR3は同一又は異なり且つ独立してC1〜C6直鎖又は分岐アルキル及びハロゲンから成る群から選択され、
「スペーサ」はC1〜C6直鎖又は分岐アルキレン、アルケニレン又はアルキニレンから成る群から選択され、あるいは「スペーサ」は存在せず、ただし「スペーサ」が存在しない場合、Yは存在し、
Yは存在しないか、又は−(O−CH2−CH2n−及び
【化11】
から成る群から選択され、
各下付き文字「n」は同一又は異なり且つ1〜15の整数であり、下付き文字「x」は1〜15の整数であり、各R4は同一又は異なり且つシアノ(−CN)、シアネート(−OCN)、イソシアネート(−NCO)、チオシアネート(−SCN)及びイソチオシアネート(−NCS)から成る群から選択される、請求項15に記載の電解質組成物。
【0024】
17.有機ケイ素化合物は式Iに示す構造を有する、請求項16に記載の電解質組成物。
【0025】
18.有機ケイ素化合物は式IIに示す構造を有する、請求項16に記載の電解質組成物。
【0026】
19.イミド塩はビス(トリフルオロメタン)スルホンアミド(TFSI)アニオンを含む、請求項16に記載の電解質組成物。
【0027】
20.リチウムビス(オキサラト)ボレート(LiBOB)又はLiPF6をさらに含む、請求項19に記載の電解質組成物。
【0028】
21.カーボネートをさらに含む、請求項20に記載の電解質組成物。
【0029】
22.カーボネートは、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、プロピレンカーボネート(PC)及びフルオロエチレンカーボネート(FEC)から成る群から選択される、請求項21に記載の電解質組成物。
【0030】
23.LiBOBを含む、請求項22に記載の電解質組成物。
【0031】
24.請求項1〜23のいずれか一項に記載の電解質組成物を含む電気化学デバイス。
【0032】
本発明の化合物及び電解質調合物の目的及び利点は、以下の詳細な説明及び添付の図面から十二分に明らかとなる。
【0033】
用語「有機ケイ素化合物」及び省略形「OS」は同義であり、制限なく、少なくとも1つの炭素原子、水素原子及び少なくとも1つのケイ素原子を含む、電解環境で機能可能な任意の有機化合物を指す。有機ケイ素化合物は追加で(及び任意で)少なくとも1つの酸素原子、少なくとも1つの窒素原子、少なくとも1つのハロゲン原子及び/又は少なくとも1つの硫黄原子も含み得る。用語「有機ケイ素」に明確に含まれるのは、米国特許第8765295号明細書、第8076032号明細書、第8076031号明細書、第8027148号明細書、第7695860号明細書、第7588859号明細書、第7473491号明細書及び国際公開第2013/16836号A1パンフレットで開示の有機ケイ素化合物であり、これらの文献は全て参照により本明細書に援用される。
【0034】
本明細書においては、用語「OS3」を使用して式I、II、III、VI及びV:
【化12】
式I
【化13】
式II
に示す構造を有する任意の化合物を指し、
1、R2及びR3は同一又は異なり且つ独立してC1〜C6直鎖又は分岐アルキル及びハロゲンから成る群から選択され、
「スペーサ」は存在しないか、又はC1〜C6直鎖若しくは分岐アルキレン、アルケニレン若しくはアルキニレンから成る群から選択され、ただし「スペーサ」が存在しない場合、Yは存在し、
Yは存在しないか、又は−(O−CH2−CH2n−及び
【化14】
から成る群から選択され、各下付き文字「n」は同一又は異なり且つ1〜15の整数であり、下付き文字「x」は1〜15の整数であり、各R4は同一又は異なり且つシアノ(−CN)、シアネート(−OCN)、イソシアネート(−NCO)、チオシアネート(−SCN)及びイソチオシアネート(−NCS)から成る群から選択される。
【0035】
本明細書では、「スペーサ」が存在し、Yが−(O−CH2−CH2n−である式Iの化合物も特に開示する。加えて、本明細書では、「スペーサ」が存在し、Yが
【化15】
である化合物も特に開示する。加えて、本明細書では、「スペーサ」が不在であり、Yが−(O−CH2−CH2n−である化合物を開示する。
【0036】
本明細書では、式III、IV及びV:
【化16】
式III、
【化17】
式IV、
及び
【化18】
式V
のいずれかで示す構造を有する化合物も開示し、
1、R2及びR3は同一又は異なり且つ独立してC1〜C6直鎖又は分岐アルキル及びハロゲンから成る群から選択され、「スペーサ」はC1〜C6直鎖又は分岐アルキレン、アルケニレン又はアルキニレンであり、各R4は同一又は異なり且つシアノ(−CN)、シアネート(−OCN)、イソシアネート(−NCO)、チオシアネート(−SCN)及びイソチオシアネート(−NCS)から成る群から選択され、各下付き文字「n」は同一又は異なり且つ1〜15の整数であり、「x」は1〜15の整数である。本発明には、本明細書に記載の式I〜Vの化合物の1種以上を塩、好ましくはリチウム含有塩と組み合わせて含む電解質組成物も含まれる。
【0037】
1、R2及びR3は任意でC1〜C3アルキル、クロロ及びフルオロから成る群から選択し得て、R4は任意でシアノになり得る。
【0038】
本発明の化合物が式IIを含む場合、R1及びR3は任意でC1〜C3アルキル(又は単純にメチル)、クロロ及びフルオロから成る群から選択し得る。各「n」は任意で且つ独立して1〜5の整数である。R4は任意でシアノになり得る。
【0039】
本発明の化合物が式III〜Vのいずれかを含む場合、R1、R2及びR3は任意でC1〜C3アルキル、クロロ及びフルオロから成る群から選択し得る。式III〜Vの化合物の幾つかのバージョンにおいて、R1、R2及びR3の少なくとも1つはハロゲンであり、式III〜Vの化合物の他のバージョンにおいて、R1、R2及びR3の少なくとも2つはハロゲンである。「スペーサ」は任意でC2〜C4直鎖又は分岐アルキレンになり得る。R4は任意でシアノになり得る。
【0040】
本発明の化合物が式III〜Vのいずれかを含む場合、R1、R2及びR3は任意でC1〜C3アルキル、クロロ及びフルオロから成る群から選択し得る。式I〜Vの化合物の幾つかのバージョンにおいて、R1、R2及びR3の少なくとも1つはハロゲンであり、式I〜Vの化合物の他のバージョンにおいて、R1、R2及びR3の少なくとも2つはハロゲンである。「スペーサ」は任意でC2〜C4直鎖又は分岐アルキレンになり得る。R4は任意でシアノになり得る。式IIの化合物の特定のバージョンにおいて、「x」は任意で1〜4になり得る。
【0041】
本発明の化合物の全てのバージョンにおいて、「ハロゲン」はフルオロ、クロロ、ブロモ及びヨードを含む。フルオロ及びクロロは好ましいハロゲン置換基である。用語「リチウム含有塩」には明確に、以下に限定するものではないが、LiClO4、LiBF4、LiAsF6、LiPF6、LiCF3SO3、Li(CF3SO22N、Li(CF3SO23C、LiN(SO2252、リチウムアルキルフルオロホスフェート及びリチウムビス(キラト(chelato))ボレートが含まれる。
【0042】
用語「カーボネート」とは、制限なく、少なくとも1つのCO3(すなわち、O−C(=O)−O)部分を含む任意の化合物のことであり、有機カーボネート、環状カーボネート等が含まれる。
【0043】
本明細書では、上で開示の化合物及びそのような化合物のそれぞれ又は組み合わせ全てを総称的に「OS」化合物と称する。
【0044】
本明細書では、これまでの段落に記載された1種以上のOS化合物をイミドと組み合わせて含む電解質組成物も開示する。本明細書では、そのような電解質組成物を含む電気化学デバイスも開示する。本明細書で開示の化合物は、ありとあらゆる種類の電荷貯蔵デバイス(例えば、セル、バッテリ、キャパシタ等)で使用するための電解質の調合に極めて有用である。
【0045】
明細書全体を通して、様々な有機ケイ素化合物をより簡単に記載するのに多数の省略した略語を用いる。以下の約束事を用いる。
【0046】
nNDnN化合物は一般式:
【化19】
を有し、R1及びR3は同一又は異なり且つ独立してC1〜C6アルキルから成る群から選択され、各R2は同一又は異なり且つ独立してシアノ(−CN)、シアネート(−OCN)、イソシアネート(−NCO)、チオシアネート(−SCN)及びイソチオシアネート(−NCS)から成る群から選択され、2つの下付き文字「n」は同一又は異なり且つ独立して1〜15である整数である。したがって、例えば、1ND1Nは、R1及びR3がメチル(すなわち、C1)であり両方の下付き文字「n」が1である化合物である。
【0047】
FnSnMN化合物は一般式:
【化20】
を有し、R1、R2及びR3は同一又は異なり且つ独立してC1〜C6アルキル(好ましくは、メチル)及びハロゲン(好ましくは、F)から成る群から選択され、「スペーサ」はC1〜C6直鎖又は分岐二価炭化水素(すなわち、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン)であり、R4はシアノ(−CN)、シアネート(−OCN)、イソシアネート(−NCO)、チオシアネート(−SCN)及びイソチオシアネート(−NCS)から成る群から選択される。SnMNと称される化合物は同じ構造を有し、R1、R2及びR3は同一又は異なり且つ独立してC1〜C6アルキル(好ましくは、メチル)から成る群から選択される。
【0048】
本明細書で開示の関連化合物は構造:
【化21】
を有し、R1、R2及びR3は同一又は異なり且つ独立してC1〜C6アルキル(好ましくは、メチル)及びハロゲン(好ましくは、F)から成る群から選択され、「スペーサ」はC1〜C6直鎖又は分岐二価炭化水素(すなわち、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン)であり、R4はシアノ(−CN)、シアネート(−OCN)、イソシアネート(−NCO)、チオシアネート(−SCN)及びイソチオシアネート(−NCS)から成る群から選択され、「x」は1〜15、好ましくは1〜4の整数である。
【0049】
本明細書で開示の化合物は多数の異なる経路で生成できる。化合物の生成に用いることができる一般的なアプローチは以下の通りである。
【化22】

様々なR基は本明細書において定義した通りである。「n」は正の整数である。
【0050】
本明細書で開示の化合物は以下のアプローチでも生成できる。
【化23】
【0051】
本明細書で開示の化合物は、以下の反応スキームを含めた多数の特定の経路でも生成される。
【化24】
及び
【化25】
及び
【化26】
及び
【化27】
及び
【化28】
及び
【化29】
及び
【化30】
(R4は上で定義した通りである)及び
【化31】
【0052】
本明細書において、「イミド」は窒素原子に結合した2つのアシル基を含む化合物と定義され、すなわち:
【化32】
であり、R1、R2及びR3は同一又は異なり且つ極めて多種多様な原子になり得て、水素、ハロゲン、金属、脂肪族基(置換又は非置換、直鎖、分岐又は環状)、アリール基(置換又は非置換)、カーボネート、環状カーボネート等が含まれる。R1は不在にもなり得て、この場合、中心の窒素原子は負の電荷を有し且つ塩を形成できる。「x」は少なくとも1つのアシル基をサポートする任意の原子であり、例えば炭素(炭素原子1つあたり1つのアシル基しかサポートしない)又は硫黄であり、硫黄は硫黄原子1つあたり2つのアシル基をサポートできる(すなわち、X及びその付随アシル部分はスルホン基を規定する)。
【0053】
「イミド塩」は、本明細書で定義した「イミド」を含有する任意の塩である。この文脈での使用において、「塩」は、酸の塩基との反応で生じる化学化合物というその慣用的な意味を有する。本発明の電解質組成物で使用できる例示的なイミド塩には、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)(すなわち、ビス(トリフルオロメタン)スルホンイミドリチウム塩、Sigma−Aldrichカタログ番号449504)が含まれる。LiTFSIは、幾つかの国際的なサプライヤにより供給される市販品である。
【化33】
【0054】
TFSIアニオンは他にも多数のイミド塩を形成し、これらは明確に、「イオン液体」と称されることもあるイミド塩を含め、用語「イミド塩」の範囲内に含まれ、以下を含む。
テトラブチルアンモニウムビス−トリフルオロメタンスルホンイミデート(Flukaカタログ番号86838)
【化34】
1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(Flukaカタログ番号11291)
【化35】
ジエチルメチル(2−メトキシエチル)アンモニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(Sigma−Aldrichカタログ番号727679)
【化36】
メチル−トリオクチルアンモニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(Flukaカタログ番号00797)
【化37】
トリエチルスルホニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(Flukaカタログ番号8748)
【化38】
【0055】
本発明で使用できるイミド塩の追加の例は科学文献に記載されている。例えば、J.Phys.Chem.B2005,109,21576−21585を参照のこと。この文献には、以下の構造:
【化39】
を有するイミド塩が記載されている。J.Phys.Chem.B2007,111,4819−4829も参照のこと。
【0056】
構造的に関連したイミド塩も、Chem.Commun.,2011,47,11969−11971に記載されている。
【化40】
【0057】
さらなるイミド塩はIonics(2014)20:1207−1215に記載されており、本明細書で開示及び請求の組成物で使用し得て、
【化41】
を含む。
【0058】
「LiBOB」とは、リチウムビス(オキサラト)ボレートのことである。
【化42】
【0059】
明記されるか否かに関わらず、本明細書に記載の要素及び方法ステップは任意の組み合合わせで用いることができる。
【0060】
そうではないと明記されない限り又は組み合わせに言及した際の文脈から反対であるとはっきりと含意されない限り、本明細書における方法ステップの組み合わせは全て任意の順序で行うことができる。
【0061】
本明細書において、要旨から明らかにそうではない場合を除いて、単数形は複数の指示物を含む。
【0062】
本明細書における数値範囲には、具体的に開示されているか否かに関わらず、その範囲に含まれる全ての数字及び数字の部分集合が含まれるものとする。さらに、これらの数値範囲は、その範囲内の任意の数字又は数字の部分集合を対象とした請求項をサポートすると解釈される。例えば、1〜10と開示した場合、2〜8、3〜7、5〜6、1〜9、3.6〜4.6、3.5〜9.9等の範囲をサポートすると解釈される。
【0063】
本明細書で開示の化合物及び組成物は本明細書に図示及び記載のパーツの特定の構成及び配置に限定されず、請求項の範囲内となるようなその改変された形態をも含むと理解される。
【0064】
開示の電解質組成物で使用できる種類の有機ケイ素化合物は、炭素−窒素二重又は三重結合を含む1種以上の末端置換基の形態の共通する構造的特徴、例えばシアノ(R−C≡N)、シアネート(R−O−C≡N)、イソシアネート(R−N=C=O)、チオシアネート(R−S−C≡N)及び/又はイソチオシアネート(R−N=C=S)を有する有機ケイ素化合物である。好ましい化合物に含まれるのは、以下の構造体である。
【化43】

【0065】
本発明の電解質において特に注目すべきことは、OS化合物をイミド化合物全般(リチウム含有イミド塩)、特にはLiTFSIと調合した場合の、追加のカーボネート添加剤の存在下及び不在下の両方での、全く予期せぬ相乗作用である。イミド塩と混合したOS化合物を含む電解質組成物は、予期せず改善された電気化学的及び熱的性質を示す。したがって、本明細書で開示するのは、OS化合物をイミドと組み合わせて含む改善された電解質である。
【0066】
ここで図面を参照するが、イミド塩は、OS化合物とブレンドすると、カーボネート添加剤とだけ組み合わせたOS化合物から成る電解質より低いアルミニウム酸化電位を有する電解質組成物をもたらすことが判明している。後述するように、OS化合物とLiTFSIとの組み合わせは、NMC+LiTFSI、OS濃度約0.1〜約1.0MでのDSC試験で相乗効果を示す(この範囲を超える及び下回る濃度は明確に、添付の請求項の範囲内にある)。この結果は、完全なセル及び他の電気化学デバイスにおける、酷使に対する改善された耐性についての基本的な性質を示す。イミド塩は過去にもリチウムイオンバッテリで使用されたことがある。しかしながら、カーボネートだけの電解質と共に使用した場合の著しいアルミニウム腐食及び高電圧での電気化学的ブレークダウンから、その使用には限界があった。本明細書に記載の電解質、すなわちイミド塩と組み合わせたOS化合物は、イミド塩含有電解質による、リチウムイオンバッテリ及び他の電気化学デバイスにおける大きく改善された熱及び電気化学的安定性の達成を可能にする。
【0067】
図1は、本明細書で開示の電解質組成物が示す上昇したAl酸化電位を示す。図1は、様々な有機ケイ素電解質組成物について電流(mA/cm2)対電位Ewe/Vを記録した一連のトレースを示す。トレースは、慣用の3電極構成において1.5mmのAl作用電極(「we」)を使用して生成した(本明細書で提示したサイクリックボルタンメトリデータは全てこの同じ1.5mmのAl作用電極を使用して収集した)。試験した電解質組成物には、カーボネート添加剤及びLiTFSI及びLiPF6と組み合わせたOS化合物が含まれる。図1において特に関連しているのは、試験した組成物で見られた最も低いAl腐食が0.25MのLiTFSI及びOSについてであったことである。加えて、OS+LiTFSIは、カーボネート+LiTFSI塩、LiTFSI+LiPF6塩とブレンドしたカーボネートだけから成る組成物より低い腐食度を有した。試験した様々な電解質組成物を表1.1にまとめる。得られた酸化電圧を表1.2に示す。表1.3は、試験した様々な電解質組成物を試験結果を提示した図とマッチさせている。
【0068】
【表1】
【0069】
【表2】
【0070】
【表3】

【0071】
図2A及び2Bは、LiTFSIと組み合わせたOS3を含む電解質組成物がAlと安定であり且つ酸化孔食(カーボネート/OS電解質で起きる問題点である)を起こさないことを示す。図2Aは30℃でのサイクリックボルタモグラムトレースであり、図1の3電極構成(1.5mmのAl作用電極)を使用し、電解質組成物は1MのLiTFSI及びEC/EMCを含む。トレースは第10サイクルを記録する。図2Bは、様々な有機ケイ素電解質組成物対Al作用電極について電流(mA/cm2)対電位Ewe/Vを記録した一連のトレースを示す(詳細については本文を参照のこと)。トレースは30℃で記録した。全ての測定を慣用の3電極セルにおける1.5mmのAl作用電極で第10サイクルについて行った。図2Aは、1MのLiTFSI+EC/EMC(3:7v)についての結果を示す。図2Aは、
1)1MのLiTFSI+F1S3MN
2)0.25MのLiTFSI+0.75MのLiPF6+EC/EMC(3/7v)
3)0.25MのLiTFSI+0.75MのLiPF6+F1S3MN
についての結果を示す。
【0072】
図3A図3B図3C及び図3Dは30℃での一連のボルタモグラムであり、本明細書で開示の有機ケイ素−及びイミド含有電解質の性能を対応するカーボネート含有電解質と比較している。前述の3電極セルをデータの生成に使用した。この一連のグラフは、カーボネートのみ/イミド系と比較して、本明細書で開示のOS3/イミド溶媒系ではアルミニウム酸化が低下することをはっきりと示している。図3Aは、1MのLiTFSI+EC/EMC、3:7vについての結果を示す。図3Bは、1MのLiTFSI+F1S3MNについての結果を示す。図3Cは、0.25MのLiTFSI+0.75MのLiPF6+EC/EMC、3:7vについての結果を示す。図3Dは、0.25MのLiTFSI+0.75MのLiPF6+F1S3MNについての結果を示す。
【0073】
図4A、4B、4C、4Dの一連のトレースは図3A、3B、3C及び3Dのものに対応するが、(30℃ではなく)50℃で行われた。図4Aは、1MのLiTFSI+EC/EMC、3:7vについての結果を示す。図4Bは、1MのLiTFSI+F1S3MNについての結果を示す。図4Cは、1MのLiTFSI+EC/EMC(3:7v)の第1サイクルを1MのLiTFSI+F1S3MNについての対応するトレース上に重ねたものを示す。図4Dは、第10サイクルでの図4Cと同じトレースを示す。
【0074】
図5はさらに、LiTFSIと組み合わせた開示のOS3及びカーボネート電解質を使用した場合の50℃でのAlの酸化安定性を示す。図5は、OS3電解質がLiTFSI系中のカーボネートより、特には50℃ではるかに有利であることをはっきりと示している。図は、1.5mmのAl作用電極を備えた慣用の3電極セルを使用した、1MのLiTFSI+EC/EMC電解質及び1MのLiTFSI/F1S3MN電解質についての50℃での重ね合わせたボルタモグラムである。10サイクルを記録する。
【0075】
図6A、6B及び6Cは、本明細書で開示の電解質組成物を使用した場合の30℃でのAlの酸化安定性を示す。簡潔に言うと、OS3化合物をEMC及びLiTFSIとブレンドした場合、低下したアルミニウム酸化も観察された。第1サイクル中の電流密度はOS3とブレンドしたEMCの量に伴って上昇する。10サイクル後、電流密度は同じレベルまで低下する。図6Aは、1MのLiTFSI+F1S3MNについてのトレースである。図6Bは、1MのLiTFSI+F1S3MN/EMC(8/2v)についてのトレースである。図6Cは、1MのLiTFSI+F1S3MN/EMC(5/5v)についてのトレースである。
【0076】
図7A、7B及び7Cは図6A、6B及び6Cに示す結果に対応するが、50℃で行った。図7Aは、1MのLiTFSI+F1S3MNについてのトレースである。図7Bは、1MのLiTFSI+F1S3MN/EMC(8/2v)についてのトレースである。図7Cは、1MのLiTFSI+F1S3MN/EMC(5/5v)についてのトレースである。これらの図が証明するように、OSをEMC及びLiTFSIとブレンドした場合、低下したアルミニウム酸化も観察された。30℃での結果と同様に、50℃で、第1サイクル中の電流密度はOS3とブレンドしたEMCの量に伴って上昇する。10サイクル後、電流密度は同じレベルまで低下する。
【0077】
本明細書で開示の電解質組成物は、予期せぬ改善された熱安定性も示す。様々な例示的な組成物の熱安定性を示差走査熱量測定(DSC)を用いて試験することで高温に対するロバスト性を評価した。
【0078】
例えば図8はDSC熱安全性評価である。本明細書に記載の様々な電解質組成物の存在下、脱リチウム化されたNCAカソード材料を評価した。OS3とLiTFSIとの組み合わせは、0.25MのLiTFSI濃度でのNCAでのDSC試験において相乗的な改善を示した。以下の調合物を試験した:EC/EMC(3/7v)電解質+0.25MのLiTFSI+0.75MのLiPF6(1)、1MのLiPF6(2)、OS3/EC/EMC(2/2/6v)電解質+0.25MのLiTFSI+0.75MのLiPF6(3)、1MのLiPF6(4)、OS3/EMC(1/1v)電解質+0.25MのLiTFSI+0.75MのLiPF6(5)、1MのLiPF6(6)、OS3/EC(8/2v)電解質+0.25MのLiTFSI+0.75MのLiPF6(7)、1MのLiPF6(8)。
【0079】
図9A及び9Bは、様々な電解質の存在下での脱リチウム化されたNMC(532)カソード材料を使用したDSC熱安全性モデリングを示す。完全な詳細については図それ自体を参照のこと。OS3とLiTFSIとの組み合わせは、LiTFSI濃度約0.1〜約1.0MでのNMCでのDSC試験において熱安定性の相乗的な改善を示す。
【0080】
図10は別のDSC分析であり、OS3電解質及びNMCカソードと組み合わせた0.1MのLiTFSIを他の電解質組成物と比較している。このトレースは重要である。OS3及びLiTFSIの組み合わせが、LiTFSI濃度0.1〜1.0MでのNMCでのDSC試験において相乗効果を有することを示すからである。
【0081】
全体として、イミドと組み合わせたOS電解質でのDSC実験は、エネルギー充電した(脱リチウム化)カソードの存在下、強化された熱安定性を示す。予備的なDSC実験(データは示さず)を、充電したNMC及びNCAカソード材料で行っている。OS系電解質+LiTFSIをLiPF6、OS3+LiPF6及びカーボネート+LiTFSIでのカーボネートベースラインと比較した場合、発熱開始温度における著しい改善が達成された。
【0082】
DSCデータは、OS溶媒系電解質とイミド塩全般、特にはLiTFSIとの間での明瞭な相乗作用をはっきりと示している。酷使に対する耐性を試験するDSCで認められた基本的な利点は、完全なセル構成での安全性及び酷使に関わる利点であると言い換えることができる。1MのLiTFSI及び0.25MのLiTFSI+0.75MのLiPF6塩調合物の両方が、OS及びブレンドしたOS/カーボネート溶媒と、全ての他の変化形より高い発熱開始温度を示した。一部の調合物に関しては、総熱出力も低かった。電解質組成物をOS電解質中の限られた量(0.1M)のLiTFSI塩で調合しても系の反応性への影響は大きく、カーボネート電解質より安全上の利点が得られる。NMC/グラファイト電極を備えたコインセルで測定したイミド含有OS3電解質対慣用のカーボネート含有電解質の70℃でのサイクル安定性を示すトレースである図11を特に参照のこと。図11に示すように、0.1MのLiTFSIを含有する電解質は優れた高温サイクル性能を有する。
【0083】
図12及び13は同様に、イミド、例えばLiTFSI又はリチウム化合物、例えばLiPF6と組み合わせてOS3化合物を含む電解質組成物は70℃での300充電/放電サイクル(3.8Vから2.5V)にわたって見事に機能することを示す。これは、慣用の電解質組成物と比較すると、この温度での際立った予期せぬ良好な性能である。
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕組み合わせて、有機ケイ素化合物及びイミド塩を含み、且つLiPF6を含んでもよい電解質組成物であって、
Li/Li+電極に対してアルミニウムを含むカソード集電体を使用し、約3Vから約5Vの範囲の複数回のサイクルでのサイクリックボルタンメトリに供する場合、第2及びその後のサイクルについて約0.10mA/cm2以下の酸化腐食電流を示す、該電解質組成物。
〔2〕前記有機ケイ素化合物が式I又は式II:

から成る群から選択され、
1、R2及びR3は、同一又は異なり、且つ独立してC1〜C6直鎖又は分岐アルキル及びハロゲンから成る群から選択され、
「スペーサ」は、C1〜C6直鎖又は分岐アルキレン、アルケニレン又はアルキニレンから成る群から選択され、あるいは「スペーサ」は存在せず、ただし「スペーサ」が存在しない場合、Yは存在し、
Yは存在しないか、又は−(O−CH2−CH2n−及び
から成る群から選択され、
各下付き文字「n」は、同一又は異なり、且つ1〜15の整数であり、下付き文字「x」は1〜15の整数であり、各R4は、同一又は異なり、且つシアノ(−CN)、シアネート(−OCN)、イソシアネート(−NCO)、チオシアネート(−SCN)及びイソチオシアネート(−NCS)から成る群から選択される、前記〔1〕に記載の電解質組成物。
〔3〕前記有機ケイ素化合物が式Iに示す構造を有する、前記〔2〕に記載の電解質組成物。
〔4〕前記有機ケイ素化合物が式IIに示す構造を有する、前記〔2〕に記載の電解質組成物。
〔5〕前記イミド塩が、ビス(トリフルオロメタン)スルホンアミド(TFSI)アニオンを含む、前記〔2〕に記載の電解質組成物。
〔6〕リチウムビス(オキサラト)ボレート(LiBOB)又はLiPF6をさらに含む、前記〔5〕に記載の電解質組成物。
〔7〕カーボネートをさらに含む、前記〔6〕に記載の電解質組成物。
〔8〕前記カーボネートが、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、プロピレンカーボネート(PC)及びフルオロエチレンカーボネート(FEC)から成る群から選択される、前記〔7〕に記載の電解質組成物。
〔9〕LiBOBを含む、前記〔7〕に記載の電解質組成物。
〔10〕前記有機ケイ素化合物が式I又は式II:

から成る群から選択され、
1、R2及びR3は、同一又は異なり、且つ独立してC1〜C6直鎖又は分岐アルキル及びハロゲンから成る群から選択され、
「スペーサ」は、C1〜C6直鎖又は分岐アルキレン、アルケニレン又はアルキニレンから成る群から選択され、あるいは「スペーサ」は存在せず、ただし「スペーサ」が存在しない場合、Yは存在し、
Yは存在しないか、又は−(O−CH2−CH2n−及び
から成る群から選択され、
各下付き文字「n」は、同一又は異なり、且つ1〜15の整数であり、下付き文字「x」は1〜15の整数であり、各R4は、同一又は異なり、且つシアノ(−CN)、シアネート(−OCN)、イソシアネート(−NCO)、チオシアネート(−SCN)及びイソチオシアネート(−NCS)から成る群から選択され、
前記イミド塩は、ビス(トリフルオロメタン)スルホンイミドリチウム塩(LiTFSI)であり、及び
リチウムビス(オキサラト)ボレート(LiBOB)又はLiPF6をさらに含み、且つカーボネートをさらに含む、前記〔1〕に記載の電解質組成物。
〔11〕前記有機ケイ素化合物が式1に示す構造を有する、前記〔10〕に記載の電解質組成物。
〔12〕前記有機ケイ素化合物が式IIに示す構造を有する、前記〔10〕に記載の電解質組成物。
〔13〕前記カーボネートが、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、プロピレンカーボネート(PC)及びフルオロエチレンカーボネート(FEC)から成る群から選択される、前記〔10〕に記載の電解質組成物。
〔14〕LiBOBをさらに含む、前記〔13〕に記載の電解質組成物。
〔15〕前記イミド塩を欠く前記有機ケイ素化合物の対応する示差走査熱量測定(DSC)応答開始温度より少なくとも5℃高いDSC応答開始温度を示す、前記〔1〕に記載の電解質組成物。
〔16〕前記有機ケイ素化合物が式I又は式II:

から成る群から選択され、
1、R2及びR3は、同一又は異なり、且つ独立してC1〜C6直鎖又は分岐アルキル及びハロゲンから成る群から選択され、
「スペーサ」は、C1〜C6直鎖又は分岐アルキレン、アルケニレン又はアルキニレンから成る群から選択され、あるいは「スペーサ」は存在せず、ただし「スペーサ」が存在しない場合、Yは存在し、
Yは存在しないか、又は−(O−CH2−CH2n−及び
から成る群から選択され、
各下付き文字「n」は、同一又は異なり、且つ1〜15の整数であり、下付き文字「x」は1〜15の整数であり、各R4は、同一又は異なり、且つシアノ(−CN)、シアネート(−OCN)、イソシアネート(−NCO)、チオシアネート(−SCN)及びイソチオシアネート(−NCS)から成る群から選択される、前記〔15〕に記載の電解質組成物。
〔17〕前記有機ケイ素化合物が式Iに示す構造を有する、前記〔16〕に記載の電解質組成物。
〔18〕前記有機ケイ素化合物が式IIに示す構造を有する、前記〔16〕に記載の電解質組成物。
〔19〕前記イミド塩が、ビス(トリフルオロメタン)スルホンアミド(TFSI)アニオンを含む、前記〔16〕に記載の電解質組成物。
〔20〕リチウムビス(オキサラト)ボレート(LiBOB)又はLiPF6をさらに含む、前記〔19〕に記載の電解質組成物。
〔21〕カーボネートをさらに含む、前記〔20〕に記載の電解質組成物。
〔22〕前記カーボネートが、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、プロピレンカーボネート(PC)及びフルオロエチレンカーボネート(FEC)から成る群から選択される、前記〔21〕に記載の電解質組成物。
〔23〕LiBOBを含む、前記〔22〕に記載の電解質組成物。
〔24〕前記〔1〕〜〔23〕のいずれか一項に記載の電解質組成物を含む電気化学デバイス。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C
図8
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13