特許第6728191号(P6728191)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6728191-ポリアミド類の安定化 図000014
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6728191
(24)【登録日】2020年7月3日
(45)【発行日】2020年7月22日
(54)【発明の名称】ポリアミド類の安定化
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/20 20060101AFI20200713BHJP
   C08L 77/00 20060101ALI20200713BHJP
   C08K 5/34 20060101ALI20200713BHJP
   C08J 3/22 20060101ALI20200713BHJP
【FI】
   C08J3/20 ZCFG
   C08L77/00
   C08K5/34
   C08J3/22CFG
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-535755(P2017-535755)
(86)(22)【出願日】2015年12月18日
(65)【公表番号】特表2018-501381(P2018-501381A)
(43)【公表日】2018年1月18日
(86)【国際出願番号】EP2015080547
(87)【国際公開番号】WO2016110397
(87)【国際公開日】20160714
【審査請求日】2018年12月17日
(31)【優先権主張番号】102015000124.8
(32)【優先日】2015年1月7日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】517092075
【氏名又は名称】クラリアント・プラスティクス・アンド・コーティングス・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(72)【発明者】
【氏名】クレーンケ・クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ツェー・マティアス
【審査官】 石塚 寛和
(56)【参考文献】
【文献】 特表2006−505524(JP,A)
【文献】 特表2013−507358(JP,A)
【文献】 特開2004−018857(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/012829(WO,A1)
【文献】 特表2014−507438(JP,A)
【文献】 特開昭56−055438(JP,A)
【文献】 特表2000−509420(JP,A)
【文献】 特開2004−107536(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/00−3/28、99/00
C08L 1/00−101/14
C08K 3/00−13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミドを、加工前または加工の間に、有効量の式(1)の1種または複数種の化合物と混合することを含む、ポリアミドの安定化のための方法であって、式(1)の化合物が、安定化ポリアミドの全重量(100重量%)を基準として0.05〜10.0重量%の量でポリアミドに添加される方法
【化1】
[式中、部分RおよびRは、式(2a)、(2b)または(2c)に従う
【化2】
(式中、
は、H、C−CアルキルまたはC−C10アルコキシであり、
は、H、C−CアルキルまたはCシクロアルキルであり、そして
は、HまたはC−Cアルキルである)]。
【請求項2】
上記安定化が耐熱性、耐光性および/または耐薬品性にある、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
およびRが同一であるかまたは異なっており、それぞれ、式(2d)、(2e)または(2f)の部分である、請求項1または2に記載の方法
【化3】
[式中、
は、HまたはC−Cアルキルであり、そして
は、Hまたはメチルである]。
【請求項4】
式(1)の化合物が、安定化ポリアミドの全重量(100重量%)を基準として0.25〜1.0重量%の量でポリアミドに添加される、請求項1〜3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
ポリアミドが、ホモポリアミド、コポリアミド、ポリアミドの混合物またはポリアミドと1つもしくは複数の他のポリマーとの混合物である、請求項1〜4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
式(1)の化合物が、押出機またはニーダーにおいて、溶融もしくはスピニングの前もしくは間に、またはポリアミド自身の重縮合プロセスの前もしくは間に、後続のペレット化、スピニングもしくは成形プロセスを伴ってもしくは伴わないで、ポリアミドと混合される、請求項1〜5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
式(1)の少なくとも1種の化合物が、マスターバッチの形態でポリアミドに混合される、請求項1〜6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
請求項1〜3のいずれか1つに記載される式(1)の1種または複数種の化合物を5〜95重量%、および熱可塑性キャリアーポリマーを95〜5重量%含む、安定剤マスターバッチ。
【請求項9】
上記の熱可塑性キャリアーポリマーがポリアミドである、請求項8に記載の安定剤マスターバッチ。
【請求項10】
請求項1〜3のいずれか1つに記載される式(1)の少なくとも1種の化合物を含む、安定化ポリアミド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミド類の耐熱性、耐光性および耐薬品性を高める方法に関する。
【0002】
本発明はまた、安定剤マスターバッチの組成物、およびまた上記方法により得ることができる改質されたポリアミド類に関する。
【背景技術】
【0003】
合成ポリアミド類は、特にスピニングプロセスにおいて、典型的には約270℃以上の温度で加工される。これらの温度において、ポリアミド類が熱によって分解されるという点で耐熱性の問題が生じ得る。ポリアミド類のさらなる欠陥には多くの場合、それらの乏しい耐光性、それらの酸化感受性による溶融加工におけるそれらの乏しい安定性、それらの乏しい熱時効、およびそれらの化学物質および酸化剤への乏しい耐性が含まれる。
【0004】
立体障害の環状アミン類が、ポリマーの安定剤として工業的に広く使用されている。特に興味深い出発材料には、イソフタル酸、およびN,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)−1,3−ベンゼンジカルボキサミドの製造に使用される芳香族誘導体、または他の立体障害の環状アミン誘導体が含まれる。4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピぺリジン(TAD)は、HALS系として知られているものの典型的なビルディングブロックである。TADは、例えば、EP0776887B1(特許文献1)に記載されるように、大規模な工業的規模で連続様式において得ることができる。
【0005】
EP1556350B1(特許文献2)には、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)−1,3−ベンゼンジカルボキサミドを製造するための最適化されたプロセスが記載されている。
【0006】
しかしながら、芳香族出発材料の大規模な工業生産はいつも、石油派生物であるキシレンから進められる。石油源は有限なので、このビルディングブロックの代わりに「環境にやさしい(green)」代替物を使用することが有利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】EP0776887B1
【特許文献2】EP1556350B1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明が取り組む課題は、少なくとも部分的に再生可能な原材料から得ることができるシントンから形成された添加剤を使用し、ポリアミド類において対応する安定化効果をもたらす、ポリアミド類の耐熱性、耐光性および耐薬品性を高める方法を提供することである。
【0009】
本発明が取り組む課題は、さらに、そのような添加剤を含む安定化マスターバッチを提供することである。
【0010】
本発明が取り組む課題は、さらに、相応に安定化されたポリアミド類を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
驚くべきことに、二価の芳香族カルボニル化合物2,5−フランジカルボン酸(FDCA)が、立体障害ピぺリジン化合物のためのビルディングブロックとして有用であり、ポリアミド類において所望の安定剤特性を有することが見出された。FDCAは5−ヒドロキシメチルフルフラール(5−HMF)から、例えばWO2011/043661A1またはUS−2011/0092720A1に記載されるような適切な方法により得ることができる。5−HMFは、再生可能な原材料から得ることができる。
【0012】
従って、本発明は、ポリアミド類を、加工前または加工の間に、有効量の式(1)の1種または複数種の化合物と混合することを含む、ポリアミド類の安定化のための方法を提供する。
【0013】
【化1】
[式中、RおよびRはそれぞれ、立体障害環状アミンを表す]。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、押出におけるトルクに関するグラフである。
【0015】
部分RおよびRはそれぞれ、好ましくは式(2a)、(2b)または(2c)に従う
【0016】
【化2】
[式中、
は、H、C−CアルキルまたはC−C10アルコキシであり、
は、H、C−CアルキルまたはCシクロアルキルであり、そして
は、HまたはC−Cアルキルである]。
【0017】
は、好ましくは、HまたはC−Cアルキル、特にHである。
【0018】
は、好ましくは、C−Cアルキル、特にメチルである。
【0019】
は、好ましくは、Hまたはメチル、特にHである。
【0020】
特に興味深いのは、式(I)の化合物であって、式中、RおよびRが同一であるかまたは異なっており、それぞれ、式(2d)、(2e)または(2f)の部分である化合物である
【0021】
【化3】
[式中、RおよびRはそれぞれ上記の定義どおりである]。
【0022】
特に非常に興味深いのは、式(I)の化合物であって、式中、RおよびRが同一であるかまたは異なっており、それぞれ、式(2e)または(2f)の部分である化合物、例えば化合物N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)−2,5−フランジカルボキサミドおよびN,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)2,5−フランジカルボキシレートである。
【0023】
式(1)の化合物は、今のところ未公開出願であるPCT/EP2014/002034に記載されるように、2,5−フランジカルボニルジクロリドまたは2,5−フランジカルボン酸エステルと、2当量の式H−Rおよび/またはH−Rの立体障害環状アミンとの縮合により得ることができる。
【0024】
有効量の上記添加剤のポリアミド類、特に合成ポリアミド類への添加は、該ポリアミド類における耐熱性、耐光性および耐薬品性を、ポリアミドの他の所望の物理的特性、例えば相対粘度および重合度を損なうことなしに増強する。このように添加剤を添加されたポリアミドはさらに、黄色になる傾向が低く、より高い伸長性およびテナシティを有する。
【0025】
式(1)の添加剤は、有利には、安定化ポリアミドの全重量(100重量%)を基準として、0.05〜10.0重量%、好ましくは0.1〜5.0重量%、より好ましくは0.2〜2.5重量%、特に0.25〜1.0重量%の量でポリアミドに添加される。
【0026】
安定化すべきポリアミドは、ホモポリアミド、コポリアミド、ポリアミドの混合物、またはポリアミドと1つまたは複数の他のポリマーとの間の混合物であってもよい。
【0027】
ω−アミノヘキサン酸、ω−アミノヘプタン酸、ω−アミノオクタン酸、ω−アミノペラルゴン酸、ω−アミノデカン酸、ω−アミノウンデカン酸、ω−アミノラウリン酸、カプロラクタム、ラクタム−7、ラクタム−8、ラクタム−9、ラクタム−10、ラクタム−11および/またはラウロラクタムから得ることができるホモポリアミドおよび/またはコポリアミドが好ましい。
【0028】
安定化されるべきポリアミドはまた、ジメチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ポリエーテルジアミンおよびまたそれらの混合物の群のジアミン、およびシュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、二量体化脂肪カルボン酸およびまたそれらの混合物の群からのジカルボン酸から得ることもできる。
【0029】
本発明はさらに、5〜95重量%、好ましくは10〜90重量%、より好ましくは20〜80重量%、特に30〜70重量%の式(1)の1種または複数種の化合物、および95〜5重量%、好ましくは90〜10重量%、より好ましくは80〜20重量%、特に70〜30重量%の熱可塑性キャリアーポリマーを含む、安定剤マスターバッチを提供する。上記の熱可塑性キャリアーポリマーは、安定化されるポリアミドと同一であるかまたは少なくとも相容性であり、好ましくはポリアミドである。安定剤マスターバッチは、個々の構成成分を、好ましくは粉末もしくはペレット形態で、混合し、任意選択的に一緒に溶融し、次いでペレット化することにより得ることができる。
【0030】
安定化したポリアミドは、例えば、式(1)の添加剤または上記の安定剤マスターバッチを、適切な容器(例えば押出機またはニーダー)において、溶融もしくはスピニングの前もしくは間に、またはポリアミド自身の重縮合プロセスの前もしくは間に、後続のペレット化、スピニングもしくは成形プロセスを伴ってもしくは伴わないで、ポリアミドと混合することによって、得ることができる。
成形プロセスは、例えば、押出プロセス、射出成形、ブロー成形、カレンダー成形、特にインフレーション成形、パイプ/異型押出成形を含む。
【0031】
本発明はさらに、少なくとも1種の式(1)の化合物を、有利には安定化ポリアミドの全重量(100重量%)を基準として0.05〜10.0重量%、好ましくは0.1〜5.0重量%、より好ましくは0.2〜2.5重量%、特に0.25〜1.0重量%の量で、含む安定化ポリアミドを提供する。
【0032】
安定化ポリアミドは、粉末、ペレット、繊維または任意の成形品、例えば自己支持性フィルム/シーティング、容器、射出成形品、管またはプロファイルであってもよい。
【0033】
本発明の安定化ポリアミドは、追加的にさらなる通例の安定剤、例えば抗酸化剤、光安定剤、特にHALS化合物およびUV吸収剤を含んでいてもよい。
なお、本願は、特許請求の範囲に記載の発明に関するものであるが、他の態様として以下も包含し得る。
1.ポリアミドを、加工前または加工の間に、有効量の式(1)の1種または複数種の化合物と混合することを含む、ポリアミドの安定化のための方法
【化4】
[式中、RおよびRはそれぞれ、立体障害環状アミンを表す]。
2.上記安定化が耐熱性、耐光性および/または耐薬品性にある、上記1に記載の方法。
3.部分RおよびRが、式(2a)、(2b)または(2c)に従う、上記1または2に記載の方法
【化5】
[式中、
は、H、C−CアルキルまたはC−C10アルコキシであり、
は、H、C−CアルキルまたはCシクロアルキルであり、そして
は、HまたはC−Cアルキルである]。
4.RおよびRが同一であるかまたは異なっており、それぞれ、式(2d)、(2e)または(2f)の部分である、上記1〜3のいずれか1つに記載の方法
【化6】
[式中、
は、HまたはC−Cアルキルであり、そして
は、Hまたはメチルである]。
5.式(1)の化合物が、安定化ポリアミドの全重量(100重量%)を基準として0.05〜10.0重量%の量でポリアミドに添加される、上記1〜4のいずれか1つに記載の方法。
6.式(1)の化合物が、安定化ポリアミドの全重量(100重量%)を基準として0.25〜1.0重量%の量でポリアミドに添加される、上記1〜5のいずれか1つに記載の方法。
7.ポリアミドが、ホモポリアミド、コポリアミド、ポリアミドの混合物またはポリアミドと1つもしくは複数の他のポリマーとの混合物である、上記1〜6のいずれか1つに記載の方法。
8.式(1)の化合物が、押出機またはニーダーにおいて、溶融もしくはスピニングの前もしくは間に、またはポリアミド自身の重縮合プロセスの前もしくは間に、後続のペレット化、スピニングもしくは成形プロセスを伴ってもしくは伴わないで、ポリアミドと混合される、上記1〜7のいずれか1つに記載の方法。
9.式(1)の少なくとも1種の化合物が、マスターバッチの形態でポリアミドに混合される、上記1〜8のいずれか1つに記載の方法。
10.上記1〜4のいずれか1つに記載される式(1)の1種または複数種の化合物を5〜95重量%、および熱可塑性キャリアーポリマーを95〜5重量%含む、安定剤マスターバッチ。
11.上記の熱可塑性キャリアーポリマーがポリアミドである、上記10に記載の安定剤マスターバッチ。
12.上記1〜4のいずれか1つに記載される式(1)の少なくとも1種の化合物を含む、安定化ポリアミド。
【実施例】
【0034】
合成例
合成例1:N,N‘−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)−2,5−フランジカルボキサミド
10ml(57.1mmol、2.2当量)の4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピぺリジンを、室温で40mlのN−メチルピロリドンに溶解し、0℃に冷却する。5.0g(25.9mmol)の2,5−フランジカルボニルジクロリドを複数回に分けて添加する。発熱反応が、反応混合物中に微粉化された淡い色の析出物の形成をもたらし、これを25℃で1時間、100℃でさらに4時間撹拌する。冷却後、混合物をシクロヘキサンに注ぎ入れ、析出した生成物をろ別し、シクロヘキサンで繰り返し洗浄し、乾燥する。
【0035】
収量:12.9gのビスピペリジニウム二塩酸塩
遊離塩基(ビスピぺリジン)を、6.7gのビスピペリジニウム二塩酸塩を温かい蒸留水に溶解し、当該溶液を25重量%アンモニア水溶液でpH11.5に調節することにより製造する。形成した無色の析出物をろ別し、水で洗浄する。乾燥後の収量:無色、結晶質、無臭の固体材料として4.9g(11.3mmol、理論の84%)。融点240℃。
【0036】
合成例2:N,N‘−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)2,5−フランジカルボキシレート
蒸留頭部を取り付けたガラス製フラスコにおいて、10.1g(37.6mmol)のジブチル2,5−フランジカルボキシレート、15.1g(95.6mmol、2.5当量)の4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピぺリジンおよび300μlのテトラブチルチタネートを撹拌しながらゆっくりとした窒素流下で150℃に加熱し、透明な溶融物を形成させる。短時間後に、ブタノールが留去し始める。4時間の間に、温度を180℃に上昇させる。冷却後、冷溶融物をトルエンで処理し、含まれていたチタン化合物を加水分解的に析出させる。最後に、溶媒を真空中で留去する。粗製生成物をクロマトグラフィーにより精製する。
【0037】
=0.84(3:1 メタノール/ジクロロメタン)。
【0038】
合成例3:
5g(27.2mmol)のジメチル2,5−フランジカルボキシレートを50mlのキシレンに撹拌下で溶解し、9.3g(59.8mmol、2.2当量)の3,3,5,5−テトラメチル−2−ピペラジノンを添加する。当該混合物を60℃に加熱し、2.5mlの30重量%ナトリウムメトキシドのメタノール溶液を添加する。混合物を110〜120℃に5時間加熱し、メタノールを留去する。真空下での蒸発乾固により黄色がかった粉末が残り、これを酢酸エチルとともに粉砕して、ろ過し、乾燥する。
【0039】
使用例:
「S−EED」:N,N‘−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)−1,3−ベンゼンジカルボキサミド(比較用);
「Green S−EED」:合成例1からの本発明による添加剤。
【0040】
A)試験サンプルの調製:
ナイロン−6(「Ultramid(登録商標)B27 E 01」;BASF製)を試験基材として使用した。試験試料を調製するために使用する前に、当該ポリアミドを粉砕システム(Pallmann製)を用いて粉砕システム最大スピードで粉砕した。添加剤を、Kenwoodブレンダーを用いて、遅い回転スピードで5分間、粉末形態または粉末の安定剤マスターバッチの形態のポリアミド粉末と混合した(ナイロン−6において60重量%)。バッチサイズは0.8〜1.5kgであった。添加剤は、安定化ポリアミドにおいて以下に報告する最終濃度が達成されるような量で混合した。
【0041】
粉末状の全調製物を、それぞれエバキュエータブル(evacuatable)オーブン(Binder製)において80℃で、<0.1重量パーセントの水分レベルに制御された条件下、12時間乾燥した。冷却後、窒素を導入し、その後サンプルを配合のために、射出成形プラークの製造のために(下記参照)およびまたナイロン−6繊維の製造のために(下記参照)、使用した。
【0042】
水浴を備えたCollin単軸スクリュー押出機(30x25D;スクリュー直径30mm、2つのスクリューエレメント輸送部、1つの放圧部;L/D=5;出口スロットの直径3mm;スクリューの回転スピード65/分、トルクの連続測定)において、2部分からなる予備押出(第1部および第2部)を実施した。
【0043】
第1部 バレル温度
供給ゾーン −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−> 出口
ゾーン1 ゾーン2 ゾーン3 ゾーン4 ゾーン5 ゾーン6
224℃ 236℃ 236℃ 240℃ 240℃ 240℃
第2部 バレル温度
供給ゾーン −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−> 出口
ゾーン1 ゾーン2 ゾーン3 ゾーン4 ゾーン5 ゾーン6
233℃ 241℃ 245℃ 260℃ 260℃ 260℃
ペレット化を最大スピードで行った。
【0044】
予備押出を、トルクを測定することにより個々の調製物におけるおよびスループットにおける添加剤の影響を調べるために使用した。
【0045】
B)押出におけるトルクの決定:
安定化していないナイロン−6が、出口ダイでの圧力において望ましくない変動を引き起こすことが判明した。これらの変動は、本発明の添加剤の添加において、事実上完全に排除された。T=260°におけるトルクに関して、本発明の化合物を含む調製物は、図から明らかなように、より高くより一定の値を有していた。
【0046】
C)押出におけるスループットの決定:
本発明の化合物を含む調製物を用いることによる利点は、スループットに関しても明らかである。以下の表1が示すように、このことは240℃の押出温度だけでなく、260℃にも当てはまる:
【0047】
【表1】
【0048】
D)耐候性および耐光性試験
耐候性試験暴露(長期試験)後の試験サンプルの退色が、ポリアミドの光誘起分解に関する1つの試験基準である。光誘起分解に対する長期安定性は、ウェザロメーター(WOM)における促進標準化試験によって調べることができる。この目的のために、試験サンプルを定められた形状に調製し、その後耐候性試験に付す。
【0049】
射出成形による試験プラークの製造
種々の添加剤(組成は表2参照)を上記のようにナイロン−6に組み込み、Allrounder 320K射出成形機(Arburg製)において射出成形プラーク(厚さ1mm)に加工した。
【0050】
個々の機械パラメーターは以下のとおりであった:
−射出温度:入口ゾーン270℃、ゾーン2〜4:280℃;出口ゾーン295℃
−計量容積21.5cm
−射出速度3.5cm/s
−射出圧力2000bar
−保持相:各0.5s;保圧圧力1:2200bar、保圧圧力2:25bar
−圧縮モールドの温度:80℃
−冷却時間:30s
【0051】
耐候性試験の実施
耐候性試験は、DIN 53 387−Aに従って行った。
【0052】
使用した試験基準は、色の発生(「黄色度(Yellowness Index)」=YI)であった。結果を以下の表2にまとめる:
【0053】
【表2】
【0054】
合成例1からの、本発明のフラン類似の「S−EED」化合物(「Green S−EED」)では、耐候性試験暴露後の試験試料は、比較用の調製物よりも黄色くならない。
【0055】
ナイロン−6繊維の製造、仕上げおよび曝露
繊維製造に使用したナイロン−6サンプルは、0.30重量%のNylostab S−EED(比較用)または0.30重量%の合成例1〜3からの各本発明化合物を含んでいた。紡糸ノズルアタッチメントを有する二軸スクリュー押出機において、290℃の温度で繊維を製造した。紡糸ノズルダイにおける圧力は100+/−3barであった。紡糸ノズルダイから出た後に、繊維を19+/−2℃の温度、85%の相対湿度および0.2+/−0.02m/sの流速で気流に供した。最後に繊維束を、15%の濃度でFasavin(登録商標)2733タイプの紡糸仕上剤を含有する水浴に移した。
【0056】
乾燥後、ワインディング装置を用いて支持体上にスピードを増加させながら(4200−4800−5400m/分)繊維を巻き付け、巻き付けたパッケージを耐候性試験装置(「ウェザロメーター」=WOM)に移し、そこで4000時間暴露した。耐候性試験暴露時間の完了時に、繊維を個々にほどいた。それらのテナシティを、DIN 53455に従う方法によって決定した。結果を表3に報告する。
【0057】
【表3】
図1