【文献】
A Method to Calculate Boiling and Dryout in Debris Bed Using a Heat Conduction Code,Proceedings of the International Topical Meeting on FAST REACTOR SAFETY,1985年
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1データセット生成ステップにおいて、前記複数のデータセットに含まれる前記入力項目の値が、当該入力項目が取り得る値の範囲において、一様分布となるように前記複数のデータセットを生成する、
請求項1又は2に記載の高速炉デブリベッド冷却の解析方法。
前記評価結果取得ステップにおいて取得された前記燃料デブリの冷却性の評価結果に基づいて、異なる評価結果となる境界を含む境界領域を特定する境界領域特定ステップと、
特定された前記境界領域において、前記第1データセット生成ステップにおけるデータセットの生成密度よりも高い密度でデータセットを生成する第3データセット生成ステップと、
をさらに有し、
前記解析ステップにおいて、前記第3データセット生成ステップにおいて生成された前記データセットに基づいて、前記燃料デブリの冷却性の解析を行うことにより、前記燃料デブリの冷却性の評価結果を取得し、
前記モデル生成ステップにおいて、前記第3データセット生成ステップにおいて生成されたデータセットと、当該データセットに対応する前記評価結果との組み合わせを教師データとし、当該教師データに基づいて機械学習を行うことにより前記解析モデルを修正し、
前記評価結果取得ステップにおいて、前記第1の個数よりも多い第2の個数の前記データセットのそれぞれを修正後の前記解析モデルに入力し、当該データセットに対応する前記評価結果を前記解析モデルから取得する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の高速炉デブリベッド冷却の解析方法。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[高速炉デブリベッド冷却の解析装置の概要]
図1に示すように、原子炉容器100の下部プレナムには、炉心損傷事象に伴い発生した燃料デブリを受け止めるコアキャッチャー101が設けられている。炉心損傷事象に伴い発生した溶融燃料は、炉心領域外に排出され、冷却材との相互作用により分散・微粒化する。そして、溶融燃料は、最終的にはコアキャッチャー101にベッド状に堆積したデブリベッド102となる。
【0018】
第1実施形態に係る高速炉デブリベッド冷却の解析装置を説明するにあたり、まず、従来の高速炉デブリベッド冷却の解析手法について説明する。
図2は、従来の高速炉デブリベッド冷却の解析手法を説明するための図である。
【0019】
図2に示すように、従来の高速炉デブリベッド冷却の解析手法では、冷却性の解析に使用される複数の入力値のデータセットを受け付け、当該データセットに基づいて解析条件を設定し、当該条件の下で非定常熱伝導方程式を解くことにより、冷却性を評価する。
図2では、上部冷却材温度と、下部冷却材温度と、冷却性の判定結果との関係を評価する。従来の高速炉デブリベッド冷却の解析手法では、非定常熱伝導方程式の計算に時間がかかることから、計算回数が制限され、その結果、冷却性の評価結果についても荒い評価結果となってしまう。
【0020】
これに対し、第1実施形態に係る高速炉デブリベッド冷却の解析装置1は、機械学習を利用することにより、非定常熱伝導方程式に使用される入力値のデータセットが入力されると冷却性の評価結果を出力する解析モデルを生成し、当該解析モデルに基づいて当該データセットに対応する評価結果を取得する。高速炉デブリベッド冷却の解析装置1は、例えば、コンピュータである。以下の説明において、高速炉デブリベッド冷却の解析装置1を、単に解析装置1という。
【0021】
図3は、第1実施形態に係る高速炉デブリベッド冷却の解析手法を説明するための図である。
図3に示すように、解析装置1は、まず、冷却性の解析に使用される複数の入力値のデータセットを第1の個数生成し、各データセットに基づいて解析条件を設定し、当該条件の下で非定常熱伝導方程式を解くことにより、各データセットに対応する冷却性の評価結果を取得する。
【0022】
続いて、解析装置1は、各データセットと、当該データセットに対応する評価結果との組み合わせを教師データとして、データセットの入力に対して評価結果を出力する解析モデルを生成する。続いて、解析装置1は、任意のデータセットのそれぞれを解析モデルに入力し、当該データセットに対応する評価結果を解析モデルから取得する。本実施形態において、解析装置1は、第1の個数よりも多い第2の個数のデータセットのそれぞれを解析モデルにこれらのデータセットに対応する評価結果を解析モデルから取得する。
【0023】
解析モデルは、非定常熱伝導方程式を解くことによりデータセットに対応する冷却性の評価結果を取得する場合に比べて、評価結果を短時間で出力することができる。したがって、解析装置1は、解析モデルを用いることにより、冷却性評価モデルに対応する計算結果を短時間で得ることができる。解析装置1は、第1の個数よりも多い第2の個数のデータセットのそれぞれを解析モデルに入力しても、これらのデータセットに対応する評価結果を短時間で取得することができる。これにより、解析装置1は、
図3に示すように、冷却性の評価結果を高精度に取得することができる。
【0024】
[解析装置1の構成例]
続いて、解析装置1の構成について説明する。
図4は、第1実施形態に係る解析装置1の構成を示す図である。
解析装置1は、入力部11と、表示部12と、通信部13と、記憶部14と、制御部15とを備える。
【0025】
入力部11は、例えば、マウス又はキーボード等により構成されており、解析装置1のユーザから操作入力を受け付ける。
表示部12は、例えば、液晶ディスプレイや有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ等により構成される。表示部12は、制御部15の制御に応じて各種情報を表示する。
通信部13は、例えば、解析装置1が他の装置と通信するための通信インタフェースである。
【0026】
記憶部14は、例えば、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等である。記憶部14は、解析装置1を機能させるための各種プログラムを記憶する。例えば、記憶部14は、解析装置1の制御部15を、後述する第1データセット生成部151、解析部152、モデル生成部153、第2データセット生成部154、及び評価結果取得部155として機能させる高速炉デブリベッド冷却の解析プログラムを記憶する。
【0027】
制御部15は、例えばCPU(Central Processing Unit)である。制御部15は、記憶部14に記憶されている高速炉デブリベッド冷却の解析プログラムを実行することにより、第1データセット生成部151、解析部152、モデル生成部153、第2データセット生成部154、及び評価結果取得部155として機能する。
【0028】
第1データセット生成部151は、高速炉において、原子炉容器内に設けられたコアキャッチャーに堆積した粒子状の燃料デブリの冷却性の解析に使用される複数の入力項目のそれぞれの入力データの組み合わせであるデータセットを第1の個数生成する。
【0029】
複数の入力項目は、デブリベッドの冷却性に影響を与える複数のパラメータに対応しており、例えば、デブリベッドの初期温度、デブリベッドの高さ、デブリの粒子径、デブリベッドの空隙、上部冷却材温度、下部冷却材温度、スチール粒子の混入率である。複数の入力項目のうち、一部の入力項目の値は、固定値であってもよい。
【0030】
第1データセット生成部151は、複数のデータセットに含まれる複数の入力項目のうち、値を変化させる入力項目について、当該入力項目の値が、当該入力項目が取り得る値の範囲において、一様分布となるように複数のデータセットを生成する。例えば、第1データセット生成部151は、ラテン超方格法に基づいてサンプリングを行うことにより、第1の個数のデータセットを生成する。なお、第1データセット生成部151は、ラテン超方格法とは異なるサンプリング手法を用いて第1の個数のデータセットを生成してもよい。
【0031】
解析部152は、第1データセット生成部151が生成した第1の個数のデータセットのそれぞれについて、燃料デブリの冷却性の解析を行うことにより、燃料デブリの冷却性の評価結果を取得する。
【0032】
第1実施形態において、解析部152は、第1の個数のデータセットのそれぞれについて、以下に示すように燃料デブリの冷却性を解析する。まず、解析部152は、高速炉において、原子炉容器内に設けられたコアキャッチャー101上に、データセットに含まれる入力項目「デブリベッドの高さ」が示す高さのデブリベッドが堆積している場合を想定し、当該デブリベッドを分割することにより、第1サイズの複数のメッシュを生成する。第1実施形態では、解析部152は、コアキャッチャー101上の一点に堆積しているデブリベッドを、デブリベッドの高さ方向に第1サイズにより分割することにより、第1サイズの複数のメッシュを生成する。なお、第1実施形態では、解析部152は、デブリベッドを、デブリベッドの高さ方向に第1サイズにより分割することとしているが、これに限らず、デブリベッドを、高さ方向、水平方向(幅方向、奥行方向)のうち、一以上の方向に分割してもよい。
【0033】
続いて、解析部152は、生成した第1サイズの複数のメッシュのそれぞれについて、デブリベッドの未沸騰領域における等価熱伝導度と、デブリベッドの沸騰領域における等価熱伝導度よりも大きい、デブリベッドの沸騰領域における模擬的な等価熱伝導度とに基づいて各時間における非定常熱伝導方程式を解くことにより、デブリベッドの未沸騰領域の温度及び沸騰領域の範囲を過渡解析する。
【0034】
ここで、非定常熱伝導方程式は、以下の式(2)に示されるものとする。式(2)中の(ρC
p)
Bはデブリベッドの熱容量、T
Bはデブリベッドの温度、tは時間、Qはデブリベッドの発熱密度、k
eqは等価熱伝導度、zはデブリベッドの高さ方向の位置を示している。
【数2】
【0035】
図5は、第1実施形態に係る解析部152が非定常熱伝導方程式を解く場合に用いるデブリベッドの沸騰領域における模擬的な等価熱伝導度を示す図である。
図5における実線及び一点鎖線は模擬的な等価熱伝導度を示しており、破線は、デブリベッドの等価熱伝導度を示している。
図5に示すように、模擬的な等価熱伝導度は、デブリベッドの沸騰領域の開始温度から所定範囲内を示す範囲R1内において、最低の熱伝導度である。
【0036】
また、模擬的な等価熱伝導度は、デブリベッドの沸騰領域の開始温度から所定範囲外の温度を示す範囲R2内の温度において、破線で示すデブリベッドの等価熱伝導度よりも高い熱伝導度である。デブリベッドの沸騰領域の開始温度から所定範囲外の温度における模擬的な等価熱伝導度は、例えば、同温度範囲におけるデブリベッドの等価熱伝導度のピーク値に対して数倍以上高い値を有している。また、模擬的な等価熱電導度は、一点鎖線で示すように、最低の熱伝導度から、破線で示されるデブリベッドの等価熱伝導度よりも高い熱伝導度に移行するまでの間に極端に不連続な値とならないように定義される。
【0037】
図5に示すように、沸騰領域の広い範囲における模擬的な等価熱伝導度を、デブリベッドの等価熱伝導度に比べて大きい値とすることにより、メッシュサイズを大きくしてもメッシュ間で熱が十分に伝わるという前提で解析することができる。これにより、解析部152は、デブリベッドの温度及び水率の過渡解析を高速に行うことができる。
【0038】
解析部152が各メッシュについて温度を算出した結果、沸騰点よりも低い温度となるメッシュに対応する位置のデブリベッドは未沸騰領域に属し、沸騰点以上の温度となるメッシュに対応する位置のデブリベッドは沸騰領域に属する。また、未沸騰領域の水率は1となり、沸騰領域の水率は1以下となる。
【0039】
ここで、解析部152は、
図5に示す模擬的な等価熱伝導度を用いてデブリベッドの温度及び水率を算出するので、沸騰領域の温度及び水率の精度が低くなってしまう。沸騰領域において、沸騰点からドライアウト(等価熱伝導度が再びほぼゼロとなる温度)までの温度差は数℃しかなく、その間の等価熱伝導度の平均値は非常に大きいことから、沸騰領域は、過渡状態においても定常的な挙動を示すと考えられる。そこで、解析部152は、沸騰領域の範囲に対して、
図5において破線で示すデブリベッドの等価熱伝導度に基づく定常解析を行い、沸騰領域の温度及び水率の分布を解析する。
【0040】
具体的には、解析部152は、解析された各時間の沸騰領域の範囲のうち、特定の時間における沸騰領域の範囲に対応するデブリベッドを第1サイズよりも小さい第2サイズの複数のメッシュに分割する。第1実施形態では、解析部152は、沸騰領域の範囲に対応するデブリベッドを高さ方向に分割することにより、第2サイズの複数のメッシュを生成する。なお、第1実施形態では、解析部152は、デブリベッドを、デブリベッドの高さ方向に第2サイズにより分割することとしているが、これに限らず、デブリベッドを、高さ方向、水平方向(幅方向、奥行方向)のうち、一以上の方向に分割してもよい。
【0041】
ここで、特定の時間は、解析装置1が、解析結果をユーザが閲覧可能な情報として出力するタイミングに対応する時間である。例えば、解析部152は、第1時間間隔ごとに第1サイズに分割された各メッシュに対する解析を行うのに対し、解析部152は、第1時間よりも長い第2時間間隔ごとに、第2サイズに分割された各メッシュに対する解析を行う。
【0042】
続いて、解析部152は、第2サイズの複数のメッシュのそれぞれについて、デブリベッドの沸騰領域における等価熱伝導度に基づく定常解析を行うことにより、特定の時間における沸騰領域の温度及び水率の分布を解析する。上述したとおり、沸騰領域は、過渡においても定常的な挙動を示すと考えられることから、式(2)の左辺のdT/dtがほぼ0となる。解析部152は、式(2)の左辺の値を0として式(2)を解くことにより、第2サイズの複数のメッシュのそれぞれに対応する温度及び水率を算出する。
【0043】
解析部152は、所定期間における温度及び水率を算出した結果に基づいて、燃料デブリの冷却性の評価結果を特定する。第1実施形態では、燃料デブリの冷却性の評価結果は、例えば、デブリベッドが沸騰することなく冷却できたか、デブリベッドが沸騰を伴いながら冷却できたか、デブリベッドが冷却できなかったか(ドライアウトしたか)のいずれかを示す冷却判定結果である。なお、第1実施形態では、解析部152は、燃料デブリの冷却性の評価結果として、冷却判定結果を特定することとしているが、これに限らず、所定期間におけるデブリベッドのピーク温度や、ピーク最低水率を燃料デブリの冷却性の評価結果として特定してもよい。
【0044】
解析部152は、上述のデブリベッドを第1サイズの複数のメッシュを生成してから分類するまでの処理を、複数のデータセットのそれぞれについて行うことにより、複数のデータセットのそれぞれに対応する燃料デブリの冷却性の評価結果を取得する。
【0045】
なお、解析部152は、上述した処理に従って燃料デブリの冷却性を解析するが、上述した処理とは異なる処理により燃料デブリの冷却性を解析してもよい。例えば、式(1)に示すデブリベッドの等価熱伝導度keqを用いた非定常熱伝導方程式を解くことにより燃料デブリの冷却性を解析したり、上述した処理よりも高速な手法に基づいて燃料デブリの冷却性を解析したりしてもよい。
【0046】
モデル生成部153は、第1の個数のデータセットのそれぞれと、当該データセットに対応する燃料デブリの冷却性の評価結果との組み合わせを教師データとすることにより、第1の個数の教師データを生成する。そして、モデル生成部153は、第1の個数の教師データに基づいて機械学習を行うことにより、データセットの入力に対して評価結果を出力する解析モデルを生成する。例えば、モデル生成部153は、所定の層数及びノード数のニューラルネットワークについて、第1の個数の教師データに基づいて機械学習を行うことにより解析モデルを生成する。なお、モデル生成部153は、ニューラルネットワークを用いた機械学習とは異なる手法により機械学習を行うことにより解析モデルを生成してもよい。
【0047】
評価結果取得部155は、任意のデータセットを解析モデルに入力することにより、当該データセットに対応する評価結果を解析モデルから取得する。
例えば、まず、第2データセット生成部154は、データセットを、第1の個数よりも多い第2の個数生成する。第2データセット生成部154は、複数のデータセットに含まれる複数の入力項目のうち、値を変化させる入力項目について、当該入力項目の値が、当該入力項目が取り得る値の範囲において、全ての組み合わせを網羅するように複数のデータセットを生成する。
【0048】
評価結果取得部155は、第2データセット生成部154が生成した第2の個数のデータセットのそれぞれを解析モデルに入力し、当該データセットのそれぞれに対応する評価結果を解析モデルから取得する。
【0049】
[検証結果]
続いて、従来の手法である非定常熱伝導方程式を解くことによる冷却性の評価結果と、第1実施形態に係る解析モデルによる冷却性の評価結果との比較結果について説明する。
図6は、従来の手法による冷却性の評価結果と、第1実施形態に係る解析モデルによる冷却性の評価結果との比較結果を示す図である。
【0050】
図6(a)は、デブリベッドの高さを18cmとした場合のデブリベッドの冷却性の評価結果を示す図である。
図6(b)は、デブリベッドの高さを20cmとした場合のデブリベッドの冷却性の評価結果を示す図である。
図6(a)、(b)では、第1実施形態に係る解析モデルによる冷却性の複数種類の評価結果を、領域A、領域B及び領域Cとして示している。領域Aは、沸騰することなく冷却できたことを示す領域であり、領域Bは、沸騰を伴いながら冷却できたことを示す領域であり、領域Cは、冷却できなかった(ドライアウトした)ことを示す領域である。また、
図6(a)、(b)における〇は、沸騰することなく冷却できたことを示す解析結果に対応し、△は、沸騰を伴いながら冷却できたことを示す解析結果に対応し、×は、冷却できなかった(ドライアウトした)ことを示す冷却結果に対応している。
図6(a)、(b)のいずれにおいても、従来の手法による冷却性の評価結果の大部分が、第1実施形態に係る解析モデルの冷却性の評価結果と一致していることが確認できる。
【0051】
[計算時間の比較]
続いて、従来の手法による冷却性の評価結果の算出時間と、第1実施形態に係る解析モデルによる冷却性の評価結果との算出時間とについて説明する。ここで、従来の手法として、第1実施形態に示す解析部152が行う解析手法を用いることとした。同等の性能のコンピュータを用いて同条件にて冷却性の評価を行った場合に、従来の手法において約1分かかる評価を、第1実施形態に係る解析モデルによりマイクロ秒オーダーで評価することができた。したがって、解析モデルを使用することにより、冷却性の評価結果を短時間で得ることが可能になった。この結果、冷却性の評価結果を瞬時に大量に取得することができるため、従来の手法において行われていたような、離散的な計算結果から入力値と結果を推測しながらの繰り返し作業が不要となり、冷却性評価を短時間で容易に検証することが可能となった。
【0052】
[冷却性の評価結果の可視化例]
続いて、冷却性の評価結果を可視化した例について説明する。
図7は、第1実施形態に係る解析モデルを用いて取得した冷却性の評価結果に基づいて、3つの入力項目と、冷却性の評価結果との関係を示す三次元マップを作成した例を示す図である。
図7における領域aは、沸騰することなく冷却できたことを示す領域であり、領域bは、沸騰を伴いながら冷却できたことを示す領域であり、領域cは、冷却できなかった(ドライアウトした)ことを示す領域である。
図7に示す3つの入力項目は、上部冷却材温度、下部冷却材温度、及びデブリベッドの高さである。第1実施形態に係る解析モデルを用いることにより、
図7に示すように、各入力項目が冷却性にどのように影響するのかを容易に把握することができる。
【0053】
[第1実施形態における効果]
以上のとおり、第1実施形態に係る解析装置1は、原子炉容器内に設けられたコアキャッチャー101に堆積した粒子状の燃料デブリの冷却性の解析に使用される複数の入力項目のそれぞれの入力データの組み合わせであるデータセットを第1の個数生成し、第1の個数のデータセットのそれぞれに基づいて、燃料デブリの冷却性の解析を行うことにより、燃料デブリの冷却性の評価結果を取得する。解析装置1は、第1の個数のデータセットのそれぞれと、当該データセットに対応する評価結果との組み合わせを教師データとし、当該教師データに基づいて機械学習を行うことにより、データセットの入力に対して評価結果を出力する解析モデルを生成する。そして、解析装置1は、任意のデータセットを解析モデルに入力し、当該データセットに対応する評価結果を解析モデルから取得する。
【0054】
解析モデルは、データセットの入力に対して短時間で評価結果を出力することができるので、解析装置1は、解析モデルを使用して評価結果を取得することにより、非定常熱伝導方程式を解く従来の冷却性評価モデルのみを用いて冷却性を評価する場合に比べて、冷却性評価モデルに対応する計算結果を短時間で得ることができる。
【0055】
<第2実施形態>
[境界領域に対応するデータセット及び解析結果に基づいて解析結果を修正する]
続いて、第2実施形態に係る解析装置1について説明する。解析モデルの生成にあたり、重要な教師データは、判定結果が変化する境界付近のデータである。このため、当該境界付近の教師データを重点的に生成することにより、解析モデルの精度を向上させることができる。そこで、第2実施形態に係る解析装置1は、境界領域に対応するデータセット及び解析結果に基づいて解析モデルを修正する点で第1実施形態と異なる。以下、第2実施形態に係る解析装置1について説明する。なお、第1実施形態と同じ部分については適宜説明を省略する。
【0056】
図8は、第2実施形態に係る解析装置1の構成を示す図である。
図8に示すように、第2実施形態に係る解析装置1の制御部15は、境界領域特定部156と、第3データセット生成部157とをさらに備える。
【0057】
第1データセット生成部151は、第1実施形態と同様に、燃料デブリの冷却性の解析に使用される複数の入力項目のそれぞれの入力データの組み合わせであるデータセットを第1の個数生成する。
【0058】
解析部152は、第1の個数のデータセットのそれぞれについて、燃料デブリの冷却性の解析を行うことにより、燃料デブリの冷却性の評価結果を取得する。モデル生成部153は、第1実施形態と同様に、第1の個数のデータセットのそれぞれと、当該データセットに対応する評価結果との組み合わせを教師データとし、当該教師データに基づいて機械学習を行うことにより解析モデルを生成する。第2データセット生成部154は、第2の個数のデータセットを生成し、評価結果取得部155は、第2の個数のデータセットのそれぞれを解析モデルに入力し、当該データセットに対応する評価結果を解析モデルから取得する。
【0059】
境界領域特定部156は、評価結果取得部155が取得した燃料デブリの冷却性の評価結果に基づいて、異なる評価結果となる境界を含む境界領域を特定する。例えば、境界領域特定部156は、所定の入力項目に対応する入力値について、評価結果が変化する2つ入力値を特定し、当該2つの入力値のいずれか一方から所定範囲を、当該所定の入力項目の境界領域と特定する。境界領域特定部156は、複数の入力項目のそれぞれについて境界領域を特定する。
【0060】
第3データセット生成部157は、境界領域特定部156が特定した境界領域において、第1データセット生成部151によるデータセットの生成密度よりも高い密度でデータセットを生成する。
【0061】
解析部152は、第3データセット生成部157が生成したデータセットに基づいて、第1実施形態と同様に燃料デブリの冷却性の解析を行うことにより、燃料デブリの冷却性の評価結果を取得する。
【0062】
モデル生成部153は、第3データセット生成部157が生成したデータセットと、当該データセットに対応する評価結果との組み合わせを新たな教師データとする。そして、モデル生成部153は、当該教師データに基づいて機械学習を行うことにより解析モデルを修正する。このようにすることで、境界付近の教師データにより解析モデルが修正されるので、解析装置1は、解析モデルの精度を向上させることができる。
【0063】
なお、モデル生成部153は、第3データセット生成部157が生成したデータセットと、当該データセットに対応する評価結果とを組み合わせた教師データに基づいて機械学習を行うことにより解析モデルを修正することとしたが、これに限らない。モデル生成部153は、第3データセット生成部157が生成したデータセットと、当該データセットに対応する評価結果とを組み合わせた教師データに基づいて、既に生成した解析モデルよりもニューラルネットワークにおける層数及びノード数の少なくともいずれかを多くした機械学習を行うことにより第2解析モデルを生成してもよい。
【0064】
この場合において、モデル生成部153は、第1の個数の教師データと、第3データセット生成部157が生成したデータセットと、当該データセットに対応する評価結果とを組み合わせた教師データとに基づいて、第2解析モデルを生成してもよい。ニューラルネットワークにおける層数及びノード数の少なくともいずれかを多くすることにより、第2解析モデルを生成するまでにかかる時間が増加するものの、解析装置1は、モデルの精度を向上させることができる。
【0065】
第2実施形態に係る評価結果取得部155は、第2の個数のデータセットのそれぞれを修正後の解析モデルに入力し、当該データセットに対応する評価結果を解析モデルから取得する。なお、評価結果取得部155は、第2解析モデルを生成した場合、第2の個数のデータセットのそれぞれを第2解析モデルに入力し、当該データセットに対応する評価結果を第2解析モデルから取得する。
【0066】
[第2実施形態における効果]
以上のとおり、第2実施形態に係る解析装置1は、境界付近の教師データにより解析モデルを修正するので、解析モデルの精度を高めることができる。そして、解析装置1は、第2の個数のデータセットのそれぞれを修正後の解析モデルに入力し、当該データセットに対応する評価結果を解析モデルから取得するので、冷却性の評価を精度良く行うことができる。
【0067】
なお、第2実施形態に係る第1の個数は、第1実施形態に係る第1の個数よりも少ない個数(例えば、第3の個数)であってもよい。第1の個数が第1実施形態に係る第1の個数よりも少ない場合、解析モデルの精度は、第1実施形態に係る解析モデルの精度よりも低くなる。しかしながら、第2実施形態に係る解析装置1は、解析モデルを生成した後に、境界付近の教師データにより解析モデルを修正し、解析モデルの精度を向上させることができる。よって、解析装置1は、第1の個数の数を少なくしても、解析モデルの精度を維持することができる。
【0068】
<第3実施形態>
[第1の個数のデータセットの解析結果に基づいて境界領域を特定する]
続いて、第3実施形態に係る解析装置1について説明する。第2実施形態に係る解析装置1が、評価結果取得部155が取得した燃料デブリの冷却性の評価結果に基づいて境界領域を特定したのに対して、第3実施形態に係る解析装置1は、第1の個数のデータセットの解析結果に基づいて境界領域を特定する点で第2実施形態と異なる。
【0069】
図9は、第3実施形態に係る解析装置1の構成を示す図である。第3実施形態に係る解析装置1は、第2実施形態に係る解析装置1の構成と同じであるが、
図9に示すように、処理の順序が、第2実施形態に係る解析装置1に係る処理の順序と異なる。
【0070】
第3実施形態に係る境界領域特定部156は、解析部152において、第1の個数のデータセットに基づく燃料デブリの冷却性の解析を行うことにより取得された燃料デブリの冷却性の評価結果に基づいて、異なる評価結果となる境界を含む境界領域を特定する。
【0071】
第3データセット生成部157は、境界領域特定部156が特定した境界領域において、第1データセット生成部151によるデータセットの生成密度よりも高い密度でデータセットを生成する。
【0072】
第3実施形態に係る解析部152は、第2実施形態と同様に、第3データセット生成部157が生成したデータセットに基づいて、第1実施形態と同様に燃料デブリの冷却性の解析を行うことにより、燃料デブリの冷却性の評価結果を取得する。
【0073】
第3実施形態に係るモデル生成部153は、第1の個数のデータセットのそれぞれと、当該データセットに対応する評価結果との組み合わせを教師データとするとともに、第3データセット生成部157が生成したデータセットと、当該データセットに対応する評価結果との組み合わせを新たな教師データとする。そして、モデル生成部153は、これらの教師データに基づいて機械学習を行うことにより解析モデルを生成する。
【0074】
[第3実施形態における効果]
以上のとおり、第3実施形態に係る解析装置1は、境界領域付近の教師データに基づいて機械学習を行うことにより学習が強化された解析モデルを生成することができるので、第1実施形態に係る解析モデルに比べて精度を向上させることができる。また、第3実施形態に係る解析装置1は、第2実施形態に係る解析装置1のように、解析モデルを修正する処理を行わないので、第2実施形態に比べて短い時間で解析モデルを作成することができる。
【0075】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。また、装置の分散・統合の具体的な実施の形態は、以上の実施の形態に限られず、その全部又は一部について、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を合わせ持つ。