(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6728343
(24)【登録日】2020年7月3日
(45)【発行日】2020年7月22日
(54)【発明の名称】水不溶性接着剤における3−アジド−ヒドロキシアルキル基を有するセルロースエーテルの使用
(51)【国際特許分類】
C09J 101/26 20060101AFI20200713BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20200713BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20200713BHJP
C08B 11/145 20060101ALN20200713BHJP
【FI】
C09J101/26
C09J11/06
C09J11/04
!C08B11/145
【請求項の数】11
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-514306(P2018-514306)
(86)(22)【出願日】2016年9月13日
(65)【公表番号】特表2018-535285(P2018-535285A)
(43)【公表日】2018年11月29日
(86)【国際出願番号】EP2016071569
(87)【国際公開番号】WO2017046090
(87)【国際公開日】20170323
【審査請求日】2019年5月14日
(31)【優先権主張番号】102015115804.3
(32)【優先日】2015年9月18日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】509036584
【氏名又は名称】エスエー、テュローゼ、ゲゼルシャフト、ミット、ベシュレンクテル、ハフツング、ウント、コンパニー、コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】SE TYLOSE GMBH & CO.KG
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】マイク、クライナート
【審査官】
井上 能宏
(56)【参考文献】
【文献】
特開平07−157732(JP,A)
【文献】
特開平11−228601(JP,A)
【文献】
特開2014−070224(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エーテル結合を介してセルロースに結合した3−アジド−2−ヒドロキシプロピル基を有する、モル置換度MSAHPが0.001〜0.30の範囲である非イオン性水溶性セルロースエーテルであって、銅化合物および/またはルテニウム化合物により触媒作用を受けて、アルキンと反応し、紙、段ボール、木材、またはセルロース系の他の材料もしくはセルロースを含有する他の材料の表面どうしを互いに接着結合して水不溶性の固形接着物を製造するための、非イオン性水溶性セルロースエーテルの使用。
【請求項2】
前記セルロースエーテルは、アルキル基および/またはヒドロキシアルキル基、ならびに3−アジド−2−ヒドロキシプロピル基を有する、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記アルキル基は、直鎖(C1〜C6)アルキル基である、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
前記アルキル基は、メチル基またはエチル基である、請求項2に記載の使用。
【請求項5】
前記ヒドロキシアルキル基は、2−ヒドロキシエチル基または2−ヒドロキシプロピル基である、請求項2〜4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
前記MSAHPは、0.05〜0.25の範囲である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
3−アジド−2−ヒドロキシプロピル基を有するアルキルヒドロキシアルキルセルロースの場合、DS(アルキル)は、1.0〜2.5の範囲であり、MS(HEおよび/またはHP)は、0.01〜1.0の範囲である、請求項2〜6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
3−アジド−2−ヒドロキシプロピル基を有するヒドロキシアルキルセルロースの場合、MS(ヒドロキシアルキル)は、1.0〜4.0の範囲である、請求項2〜7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
AHP基により置換されたセルロースエーテルは、50〜4000の平均重合度DPnを有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
前記アルキンは、
a)下式の化合物
【化1】
(式中、R
4は、
− 直鎖もしくは分岐鎖(C
1〜C
18)アルキル基、
− 式 −[CH
2]
m−CH=CH
2(式中、mは、1〜8の整数である。)のアルケニル基、
− 式 −[CH
2]
n−CX
2Y(式中、nは0〜8の整数であり、Xは水素、フッ素、または塩素であり、Yは水素、フッ素、塩素、NH
2、OH、O−CH
3、CO
2H、またはCO
2CH
3であるが、XおよびYはいずれもが水素原子となることはない)の置換アルキル基、
− 式 −[CH
2−CH
2−O]
p−CH
2Z(式中、pは1〜8の整数であり、Zは水素原子またはメチル基である。)のポリオキシアルキレン基、
− 芳香基、
− 置換芳香基、芳香族炭素原子に結合した置換基であって、同一でも異なっていてもよく、−H、−F、−Cl、−NH
2、−CH
3、もしくは−OCH
3からなる群から選択され、但し、全ての置換基が水素原子ではない基、もしくは
− 複素環基
である。)
または、
b)下式のジイン
【化2】
(式中、R
5は、
− 二価の芳香基、または、
− 置換された二価の芳香基、芳香族炭素原子に結合した置換基であって、同一でも異なっていてもよく、H、F、Cl、NH
2、CH
3、もしくはOCH
3からなる群から選択され、但し、全ての置換基が水素原子ではない基である。)、
である、
請求項
9に記載の使用。
【請求項11】
前記アルキンは、フェニルアセチレン、プロパルギルアルコール、プロピオル酸、またはプロパルギル1H−イミダゾール−1−カルボキシレートである、請求項9または10に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水不溶性接着剤における3−アジドヒドロキシアルキル基を有するセルロースエーテルの使用に関する。セルロースエーテルは、具体的には、アジドヒドロキシアルキル置換基による共エーテル化を伴う、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)またはヒドロキシプロピルセルロース(HPC)などのヒドロキシアルキルセルロースに基づいた非イオン性混合エーテルである。接着剤は、特に、紙、段ボール、木材、または、セルロース系の他の材料もしくはセルロースを含有する他の材料を接着接合するのに適している。
【背景技術】
【0002】
3−アジド−2−ヒドロキシアルキル基、特に、3−アジド−2−ヒドロキシプロピル基(AHP基)を含有する非イオン性セルロースエーテル、およびそれらの調製方法については、すでに欧州特許第2712873号明細書に開示されている。そのようにして修飾されたセルロースエーテルは、水溶性である。前述の基を組み込むことで、アルキンとアジド末端とを反応させることにより、セルロースエーテルのレオロジー特性を広範囲に変更することができる。
【0003】
セルロースエーテルは、周知のように、接着剤(例えば、壁紙ののり)としての使用も含めて利用可能性を有している。水または水蒸気の影響下では、セルロースは程度の差はあるものの溶けるため、接着剤効果は著しく低下する。
【0004】
例えば、米国特許第2015/0232724号明細書は、その必須の構成要素が、Naカルボキシメチルセルロース、および、例えば、ポリアミドアミンとエピクロロヒドリンとの反応生成物などの第四級アミンポリマーであることを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】欧州特許第2712873号明細書
【特許文献2】米国特許第2015/0232724号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、課題は、湿潤な環境であっても、接着強度を損なわない接着接合を生成することのできる、セルロースエーテルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
3−アジド−2−ヒドロキシプロピル基を有する水溶性セルロースエーテルは、アルキンと混合する場合、銅触媒と混合する場合、および/またはルテニウム触媒と混合する場合に、水分安定性接着接合を生成する。この場合、アジド基は、環化付加反応によって、アルキン基と反応し、[1,2,3]−トリアゾ−ル基を形成する。結果として、湿潤環境であってもその特性を維持する、固形接着剤が得られる。
【0008】
したがって、本発明の主題は、エーテル結合を介してセルロースまたはセルロースエーテルに結合した3−アジド−2−ヒドロキシプロピル基を有する、モル置換度MS
AHPが0.001〜0.30の範囲である、非イオン性水溶性セルロースエーテルの、水不溶性の固形接着剤を製造するための使用である。当該セルロースエーテルは、3−アジド−2−ヒドロキシプロピル基およびヒドロキシアルキル基のみならず、アルキル基、特に、直鎖または分岐鎖C
1〜C
6アルキル基、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、またはイソブチル基を有してもよい。ヒドロキシアルキル基は、好ましくは、2〜6個の炭素原子を有し、具体的には、それらは、2−ヒドロキシエチル基または2−ヒドロキシプロピル基である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
AHP基を有する水溶性セルロースエーテルを、アルキンまたはジアルキンと混合し、銅化合物および/またはルテニウム化合物による触媒作用を受けて、AHP基をアルキン基と反応させる場合、水不溶性の固相接着接合が得られる。
【0010】
したがって、好ましい出発物質は、水溶性、非イオン性セルロースエーテル、例えば、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、メチルヒドロキシエチルセルロース(MHEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、またはメチルヒドロキシプロピルセルロース(MHPC)である。メチルヒドロキシエチルセルロースおよびメチルヒドロキシプロピルセルロースの場合、DS(Me)は、一般的には1.0〜2.5であり、好ましくは1.2〜2.5であり、より好ましくは1.4〜1.9であり、MS(HEおよび/またはHP)は、一般的には0.01〜1.0であり、好ましくは0.05〜0.8であり、より好ましくは0.05〜0.6である。ヒドロキシエチルセルロースおよびヒドロキシプロピルセルロースの場合、MS(HEおよび/またはHP)は、一般的には1.0〜4.0であり、好ましくは1.5〜3.3である。
【0011】
本発明に関して「水溶性」とは、非修飾セルロースエーテルが、1.0%(質量/質量)以上、好ましくは10%(質量/質量)以上、より好ましくは20%(質量/質量)以上の程度まで、冷水(20℃)に溶解することを意味する。
【0012】
AHP基を有するセルロースエーテルは、対応するセルロースエーテルをグリシジルアジドと反応させることにより得られる。3−アジド−2−ヒドロキシプロピル基は、ここで、エチレングリコールおよび/もしくはプロピレングリコール側鎖のヒドロキシ基を介して、またはピラノース環上のヒドロキシ基を介して結合していてもよい。3−アジド−2−ヒドロキシプロピル基によるセルロースの置換度(MS
AHP)は、無水グルコース単位当たり、一般的には0.001〜0.30の範囲であり、MSは、好ましくは0.05〜0.25の範囲である。アジド基により置換されたセルロースエーテルは、有益には、50〜4000の、好ましくは100〜2500の、より好ましくは250〜1500の平均重合度DP
nを有する。
【0013】
3−アジド−2−ヒドロキシプロピル基を有するセルロースエステルはまた、1つの同一の反応器中で、従来の共エーテル化の形態で、アルカリ化したセルロースを、アルキレンオキシドおよびグリシジルアジドと、直ちに連続してまたは同時に、反応させる場合にも得られる。
【0014】
熱により誘導されるHuisgen環化付加は、位置異性体の混合物を生成する。したがって、アルキンへのアジドの1,3−双極子環化付加(Huisgen反応)は、Cu(I)触媒により有効に行われる。この場合、位置選択的に、1,4−二置換[1,2,3]−トリアゾールが生成される。好適には、例えば、Cu(I)臭化物、Cu(I)ヨウ化物、またはCu(I)酢酸塩である。また、触媒的に活性なCu(I)塩は、例えば、水溶液中でのアスコルビン酸による還元によって、硫酸銅(II)からその場で調製することができる。金属触媒反応は、一般に、室温でも進行する。液体または流体の出発物質の固形接着剤への転換は、室温でも数秒以内、一般的には60秒未満、好ましくは10秒未満で生じる。
【0015】
また、アジド−アルキン環化付加は、ビス(トリフェニルホスフィン)シクロペンタジエニルルテニウムクロリドなどのルテニウム化合物により触媒を受け得る。しかしながら、この場合、銅触媒反応とは対照的に、位置選択的に、1,5−二置換[1,2,3]−トリアゾールが得られる。
【0016】
特に好適なアルキンは、フェニルアセチレン、プロパルギルアルコール、プロピオル酸、および末端C−C三重結合を有する他の化合物である。また、2つの炭素−炭素三重結合を有する化合物(ジイン)を使用することもできる。
【0017】
Huisgen反応中のアルキンビルディングブロックとして、一般的に好ましいのは、
a)下式のアルキン
【化1】
(式中、R
4は、
− 直鎖もしくは分岐鎖(C
1〜C
18)アルキル基、
− 式 −[CH
2]
m−CH=CH
2(式中、mは、1〜8の整数である。)のアルケニル基、
− 式 −[CH
2]
n−CX
2Y(式中、nは0〜8の整数であり、Xは水素、フッ素、または塩素であり、Yは水素、フッ素、塩素、NH
2、OH、O−CH
3、CO
2H、またはCO
2CH
3であるが、XおよびYのいずれもが水素原子となることはない。)の置換アルキル基、
− 式 −[CH
2−CH
2−O]
p−CH
2Z(式中、pは1〜8の整数であり、Zは水素原子またはメチル基である。)のポリオキシアルキレン基、
− 芳香基、好ましくはフェニル基、ビフェニル基、またはナフチル基、
− 置換芳香基、芳香族炭素原子に結合した置換基であって、同一でも異なっていてもよく、H、F、Cl、NH
2、CH
3、もしくはOCH
3からなる群から選択され、但し、全ての置換基が水素原子ではない基、もしくは
− 1H−イミダゾール−1−カルボニルオキシメチルなどの複素環基
である。)
または、
b)下式のジイン
【化2】
(式中、R
5は、
− 二価の芳香基、例えば、オルト−、メタ−、もしくはパラ−フェニレン、ビフェニル−4,4’−ジイル、もしくはナフタレン−1,4−ジイル、または、
− 置換された二価の芳香基、芳香族炭素原子に結合した置換基であって、同一でも異なっていてもよく、H、F、Cl、NH
2、CH
3、もしくはOCH
3からなる群から選択され、異なる置換基を組み合わせることもできるが、但し、全ての置換基が水素原子ではない基である。)、
である。
【0018】
環化付加反応は、多数の異なるアルキンを用いて行うことができる。したがって、様々な特性を有する固体接着剤は、簡単な方法によって入手可能である。このことは、従来のグラフト反応よりも、該反応を著しく柔軟性のあるものにしている。該反応は、水、有機溶媒、または水および有機溶媒の混合物の存在下で実施することができる。適切な有機溶媒は、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、塩化メチレン、クロロホルム、メタノール、エタノール、tert−ブタノール、酢酸エチル、アセトン、またはジメチルホルムアミドである。
【0019】
AHP−HECは、水に高度に溶解性であり、水中で透明な粘性のある溶液を形成する。驚くべきことに、溶解したAHP−HECのレオロジー特性は、例えば、フェニルアセチレンなどのアルキンビルディングブロックとの反応の後で、完全に反転させることができることを見出した。粘性のある流体から、上記の方法により、構造的に弾性的挙動を有する固体が得られる。
【0020】
アルキン成分に共有結合的に結合した更なる基が存在していてもよい。したがって、環化付加反応からの生成物は、イオン性または非イオン性であり得る。更なる基はまた、反応染料、発色団、架橋ビルディングブロック、または接着剤に特定の性質を付与する他の基を含んでいてもよい。
【0021】
1,3−双極子環化付加反応は、一般的に、最小限の量の触媒を用いて数秒以内に生じる。触媒は、AHP−セルロースエーテルおよびアルキンと、直接的に混合する必要はない。1,3−双極子環化付加反応を生じさせるためには、接合される被加工材の内の一方が、銅化合物もしくはルテニウム化合物を含むか、または接合される被加工材の内の一方を銅化合物もしくはルテニウム化合物に含浸させて、AHP−セルロースエーテルおよびアルキンの混合物と接触させれば十分である。代替的な実施態様において、触媒を、AHP−セルロースエーテルまたはアルキンと、事前に混合する。
【0022】
以下の実施例は、本発明を説明するものである。パーセンテージは、別段の指示がある場合または文脈から一見して明らかである場合ではない限り、重量パーセントである。DSおよびMS値は、Zeisel法によって測定した。
【実施例】
【0023】
実施例1:アジドヒドロキシプロピルヒドロキシエチルセルロース(AHP−HEC)とフェニルアセチレンとの銅触媒カップリング、および木材の接合のための銅触媒作用
10.0gのAHP−HEC(5%の水分含有量、MS(HE)=1.10、MS(GA)=0.15)を、1000mLの冷たい飲用水中に攪拌しながら添加し、室温で攪拌することにより溶解させた。透明な溶液は、約250mPasの粘度を有していた(Brookfield、LV)。そこに、攪拌しながら、2.0gのフェニルアセチレンを添加したところ、粘度に測定可能な変化は生じなかった。この低流動性の、僅かに不透明な混合物の一部(約50mL)を、次に、ブラシにより、乾燥した滑らかな2枚のトウヒ材の表面に塗布した。木材中の細孔中への溶液の部分的な吸収のために約5分間待った後、2枚の木材表面の一方に、60mLの脱気した脱塩水中の10.0gの硫酸銅五水和物および18.0gのアスコルビン酸からなる溶液を、市販のスプレーボトルを用いて噴霧し、もう一方の木材表面を直ちに同様に接着剤でコートして、軽い擦り込み動作によって押しつけて密着させ、木材の従来の接着において実施されるようにして行った。
【0024】
次の日、接合は乾燥し、木片は互いに動いたり、または互いに取り外したりすることができなくなった。接合された木材の板を水に18時間以上浸水しても、接着材接合は著しい影響を受けず、そして、相当な力が加わった時に、接合が破壊される可能性があり、さらにその破壊は一方の被加工材から繊維の引き剥がれを引き起こした。
【0025】
実施例2:触媒を使用しないこと以外は、上記の実施例1と同じようにして行う木材の接合
触媒水溶液を噴霧することを除き、上記の実施例1に記載の手順に、完全に同様に従った。2つの木材被加工材を同様に組み立て、お互いに密着させながら一晩固定した。ここで再び、約18時間乾式貯蔵した後、2片の木材の間に形成された接合は、特定の手動力をかけると再び分けることができるが、繊維の引き剥がれは起こらなかった。
【0026】
結合を分割するために力をかける代わりに、結合した被加工材を、最初に、約6時間水に浸漬することにより実験を行ったところ、「接着された接合」は完全に溶解することを示した。
【0027】
実施例3:アジドヒドロキシプロピルヒドロキシエチルセルロース(AHP−HEC)と1,4−ジエチニルベンゼンの銅触媒カップリング、および木材の結合のための銅触媒作用
10.0gのAHP−HEC(5%WC、MS(HE)=1.1、MS(GA)=0.15)を、1000mLの冷たい飲用水中に攪拌しながら添加し、室温で攪拌することにより溶解させた。透明な溶液は、約250mPasの粘度を有していた(Brookfield、LV)。そこに攪拌しながら2.0gのジエチニルベンゼン[935−14−8]を添加したところ、粘度に測定可能な変化は生じなかった。この低流動性の、僅かに不透明な混合物の一部(約50mL)を、次に、ブラシにより、乾燥した滑らかな2枚のトウヒ材の表面に塗布した。木材中の細孔中への溶液の部分的な吸収のために約5分間待った後、2枚の木材表面の一方に、60mLの脱気した、脱塩水中の10.0gの硫酸銅五水和物および18.0gのアスコルビン酸からなる溶液を、市販のスプレーボトルを用いて噴霧し、もう一方の木材表面を直ちに同様に接着剤でコートして、軽い擦り込み動作によって押しつけて密着させ、木材の従来の接着において実施されるようにして行った。
【0028】
次の日、接合は乾燥し、木片は互いに動いたり、または互いに取り外したりすることができなくなった。接合された木材の板を水に18時間以上浸水しても、接着材接合は著しい影響を受けず、そして、相当な力が加わった時に、接合が破壊される可能性があり、それぞれの場合において、さらにその破壊は一方の被加工材から繊維の引き剥がれを引き起こした。