(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記受電コイルと前記送電コイルとの間の送電距離が62mm以上132mm以下の時の送電可能なフィルムの前記アルミ蒸着層の合計の厚みをyとし、コイル径をxとする関係式y=ax+b(ただし、a及びbは整数)で表現される1次関数から得られる傾きの係数aが30以上45以下になること
を特徴とする請求項1に記載の真空断熱材。
前記非接触給電ユニットは、前記受電コイルと前記送電コイルとの間で発生する誘導磁束を利用して電力を伝送する方式である電磁誘導方式を用いたことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の真空断熱材。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記従来例のような真空断熱材は、厚みが10〜20mm程度であるから、その内部に搭載するある体積以下のセンサシステムには、薄い小型のバッテリーが必要となる。しかしながら、薄い小型のバッテリーからセンサシステムへの継続的な電力の供給には限界があるため、短期間でしかセンサからデータを受信することができず、長期間にわたってセンサからデータを受信するためには、その都度、充電しなければならなかった。また、バッテリーが供給する電力は、徐々に低下するためセンサからの出力信号が弱くなり、センサの出力値が低下することで正確な値を測定する事ができない懸念があった。
【0009】
そこで、本発明では、上記課題を解決するために、真空断熱材の内側に、圧力センサと、受電コイルと、DC/DCコンバータと、少なくとも圧力値を含む測定データを送信する送信ユニットとを含む小型無線真空計を設け、物理的な電気的接続なしに給電を行う非接触給電を、DC/DCコンバータによる降圧又は昇圧によって安定化させ、センサへの給電及びセンサとの通信に使用される受電コイルのコイル径を、送電コイルとの距離(送電距離)及びガスバリア性フィルムの厚みに応じて、適切に通信及び送電可能な範囲に設定することで、小型無線真空計への安定的な給電を実現し、小型無線真空計との通信が途切れることなく持続的に行うことができるように構成した真空断熱材を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る真空断熱材の1つの実施形態として、真空断熱材は、芯材と、前記芯材を覆うガスバリア性フィルムであるアルミ蒸着層と、前記アルミ蒸着層の外側に設けられた外層とを含み、内部を減圧密封した真空断熱材において、
前記真空断熱材は、前記外層よりも内側に、小型無線真空計を含み、
前記小型無線真空計は、圧力センサと、前記圧力センサに電力を供給するための非接触給電ユニットと、前記圧力センサで測定された、少なくとも圧力値を含む測定データを送信する送信ユニットと
を少なくとも含み、
前記非接触給電ユニットは、送電側の装置に含まれる送電コイルから非接触で給電される受電コイルと、前記受電コイルに接続されたDC/DCコンバータとを含み、
前記DC/DCコンバータは、前記受電コイルで生じた電気を、昇圧又は降圧することにより一定の電圧に維持することを特徴とする。
【0011】
本発明に係る真空断熱材の好ましい実施形態として、前記受電コイルと前記送電コイルとの間の送電距離が112mm以下の時の送電可能なフィルムの前記アルミ蒸着層の合計の厚みをyとし、コイル径をxとする関係式y=ax+b(ただし、a及びbは整数)で表現される1次関数から得られる傾きの係数aが30以上になることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る真空断熱材の好ましい実施形態として、前記アルミ蒸着層の合計の厚みが500Å以上6000Å以下で、前記受電コイルのコイル径が74mm以上200mm以下であることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る真空断熱材の好ましい実施形態として、前記アルミ蒸着層の合計の厚みが500Å以上2000Å以下で、前記受電コイルのコイル径が74mm以上200mm以下であることを特徴とする。
【0014】
本発明に係る真空断熱材の好ましい実施形態として、前記受電コイルと前記送電コイルとの間の送電距離が62mm以上132mm以下の時の送電可能なフィルムの前記アルミ蒸着層の合計の厚みをyとし、コイル径をxとする関係式y=ax+b(ただし、a及びbは整数)で表現される1次関数から得られる傾きの係数aが30以上45以下になることを特徴とする。
【0015】
本発明に係る真空断熱材の好ましい実施形態として、前記受電コイルのコイル径xが74mm≦x≦200mmであるときに、前記アルミ蒸着層の合計の厚みyが30x−4000≦y≦45x−2837であることを特徴とする。
【0016】
本発明に係る真空断熱材の好ましい実施形態として、前記アルミ蒸着層の合計の厚みが500Å以上2000Å以下で、前記受電コイルのコイル径が100mm以上150mm以下であることを特徴とする。
【0017】
本発明に係る真空断熱材の好ましい実施形態として、前記非接触給電ユニットは、前記受電コイルと前記送電コイルとの間で発生する誘導磁束を利用して電力を伝送する方式である電磁誘導方式を用いたことを特徴とする。
【0018】
本発明に係る真空断熱材の好ましい実施形態として、前記受電コイル及び前記送電コイルは、それぞれ共振回路に含まれ、
前記非接触給電ユニットは、前記送電コイルに電流が流れることにより発生した磁場の振動が、同じ周波数で共振する前記受電コイルに伝わることで、磁界共鳴させて電力を伝送する方式である磁界共鳴方式を用いたことを特徴とする。
【0019】
本発明に係る真空断熱材の好ましい実施形態として、前記送信ユニットは、非接触給電で使用する周波数帯と同じ周波数帯又はそれ以下の周波数帯で、前記測定データの送信を行うことを特徴とする。
【0020】
本発明に係る真空断熱材の好ましい実施形態として、前記小型無線真空計は、温度センサ、湿度センサ、各種分子種を計測するセンサ及び内部時計のうち少なくとも1つをさらに含むことを特徴とする。
【0021】
本発明に係る真空断熱材の好ましい実施形態として、前記温度センサ及び前記湿度センサは、前記受電コイルから隔離されていることを特徴とする。
【0022】
本発明に係る真空断熱材の好ましい実施形態として、前記温度センサ及び前記湿度センサは、前記受電コイルから30mm以上離れていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明の1つの実施形態に係る真空断熱材は、外層よりも内側に設けた小型無線真空計に、外部電源との電気的な接続なしに、圧力センサに電力を供給するための非接触給電ユニットを設け、非接触給電ユニットにおける受電コイルに接続されたDC/DCコンバータによって、受電コイルで生じた電気を、降圧又は昇圧させることで、一定の電圧に維持することができる。このような非接触給電ユニットによって、残量低下に起因して一定の電圧を維持できないバッテリーを小型無線真空計に設ける必要がなくなり、圧力センサから出力信号を安定的に得ることができる。
【0024】
また、圧力センサへの給電及び圧力センサとの通信に使用される受電コイルのコイル径を、送電コイルとの距離(送電距離)及びガスバリア性フィルムであるアルミ蒸着層の厚みに応じて、適切に通信及び送電可能な範囲に設定することで、小型無線真空計への安定的な給電を実現し、小型無線真空計との通信が途切れることなく持続的に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。なお、実施の形態を説明するための全ての図において、同一部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0027】
図1は、本発明の一実施形態に係る真空断熱材に含まれる小型無線真空計の部品構成を示すブロック図である。小型無線真空計10は、受電コイル11と、DC/DCコンバータ12と、CPU・無線送信ユニット13と、A/Dコンバータ14と、オペアンプ(OP AMP)15と、圧力センサ16とを含むことができ、例えば、基板上にそれら部品を実装することができる。
【0028】
受電コイル11は、磁界共鳴方式、電磁誘導方式等の非接触給電方式によって送電装置(
図2参照)に含まれる送電コイルと作用して、電気を得るコイルである。電磁誘導方式は、受電コイルと送電コイルとの間で発生する誘導磁束を利用して電力を伝送する方式である。磁界共鳴方式は、送電コイルに電流が流れることにより発生した磁場の振動が、同じ周波数で共振する受電コイルに伝わることで、磁界共鳴させて電力を伝送する方式である。
【0029】
DC/DCコンバータ12は、受電コイル11及びCPU・無線送信ユニット13に電気的に接続され、受電コイル11と、CPU・無線送信ユニット13との間に設けられる。DC/DCコンバータ12は、電圧を昇圧又は降圧するための昇降圧コンバータである。非接触給電の際に、受電コイル11と送電コイル21(
図2参照)との距離が近く、大きな電圧を得た場合には降圧、距離が遠く、小さな電圧しか得られない場合には昇圧を目的として用いられる。本発明の一実施形態では、DC/DCコンバータ12は、受電コイル11で生じた電気を安定させるために、電圧を昇圧又は降圧することができる。以下、受電コイル11とDC/DCコンバータ12とを含む構成を非接触給電ユニットとも呼ぶ。
【0030】
CPU・無線送信ユニット13は、DC/DCコンバータ12及びA/Dコンバータ14に電気的に接続され、DC/DCコンバータ12とA/Dコンバータ14との間に設けられる。CPU・無線送信ユニット13は、A/Dコンバータ14によって圧力センサ16からの出力信号(アナログ信号)が変換されたデジタル信号を受け取り、受け取ったデジタル信号を測定データとして、受電コイル11と送電コイル21間で給電時の周波数と同周波数又はそれ以下の周波数帯で通信し、UARTにてシリアル変換されたデータをPC23に送信する事ができる。
【0031】
A/Dコンバータ14は、CPU・無線送信ユニット13及びオペアンプ15と電気的に接続され、CPU・無線送信ユニット13とオペアンプ15との間に設けられる。A/Dコンバータ14は、オペアンプ15により増幅されたアナログ信号をデジタル信号に変換することができる。
【0032】
オペアンプ15は、A/Dコンバータ14及び圧力センサ16と電気的に接続され、A/Dコンバータ14と圧力センサ16との間に設けられる。オペアンプ15は、圧力センサ16により測定された圧力値のアナログ信号を増幅することができる。
【0033】
圧力センサ16は、オペアンプ15と電気的に接続され、真空断熱材内部の圧力を測定する。圧力センサ16は、微小電気機械システム(MEMS)で形成された熱電対型真空センサを用いることができる。また、圧力センサ16は、MEMSで形成されたピラニ真空計、隔膜真空計を用いることもできる。
【0034】
CPU・無線送信ユニット13にDC/DCコンバータ12を介して接続された受電コイル11は、非接触給電時にCPU・無線送信ユニット13及び該ユニットに電気的に接続されたその他の部品(素子)に電力を供給することができる。また、受電コイル11は、CPU・無線送信ユニット13、圧力センサ16等を動作させるための電力を供給することができる。DC/DCコンバータ12は、受電コイル11から得られる電圧を、CPU・無線送信ユニット13、圧力センサ16等の安定的な動作に必要な電圧に変換することができる。
【0035】
非接触給電ユニットは、
図1に示すように、給電機構として非接触給電用のコイル(
図1では、受電コイル11)を用いた場合、電磁誘導方式又は磁界共鳴方式によって生じた電力を、DC/DCコンバータ12を介してCPU・無線送信ユニット13、圧力センサ16等に供給することができる。例えば、電磁誘導方式の場合、非接触給電ユニットの受電コイル11は、真空断熱材の外部の電源等に接続された送電コイルとの間で発生する誘電磁束を利用して生じた電力を非接触給電ユニットで受け取ることができる。
【0036】
また、電界共鳴方式の場合、非接触給電ユニットは、受電側共振回路を含み、受電側共振回路に含まれる受電コイル11は、送電側共振回路に含まれる送電側コイルに電流が流れることにより発生した磁場の振動が、同じ周波数で共振する受電側共振回路に含まれる受電コイル11に伝わることで、磁界共鳴させて生じた電力をCPU・無線送信ユニット13、圧力センサ16等で受け取ることができる。
【0037】
小型無線真空計10は、真空断熱材の減圧密閉された内部に設けられる。真空断熱材は、芯材と、該芯材を覆うガスバリア性フィルムと、該ガスバリア性フィルムの外側に設けられた外層とを含み、小型無線真空計10は、真空断熱材の外層よりも内側、好ましくは、ガスバリア性フィルムの内側に含まれる。
【0038】
このように、小型無線真空計10は、外部電源との電気的な接続なしに安定的に給電できる非接触給電機構(例えば、受電コイル11とDC/DCコンバータ12)を含む非接触給電ユニットを設けたことで、小型無線真空計10が真空断熱材に内蔵されても、小型無線真空計10の圧力センサ16から測定データを取得する際に、一定の電圧で電力を、圧力センサ16及びCPU・無線送信ユニット13等に継続的に供給することができる。
【0039】
小型無線真空計10は必要に応じてMEMSで形成された温度センサ、湿度センサを搭載する事ができる。真空断熱材内部は真空状態である限り湿度が限りなく0%に近づく為、10%RH未満での測定精度が10パーセント以上の相対湿度下に比べ2.0%以内に収まるものが好ましい。また、温度センサ又は湿度センサを搭載する位置は、受電コイル11から少なくとも30mm離した位置にあることで、給電時にフィルム表面で引き起こされる誘導加熱による熱問題を解決する事ができる。30mm以内の位置にある場合、誘導加熱による熱で測定温湿度に悪影響を与える可能性がある。
【0040】
真空断熱材の芯材としては、真空断熱材分野で用いられているものを特に制限なく用いることができる。具体例としては、連続気泡硬質ポリウレタンフォーム、無機繊維、有機繊維、無機粉体、エアロゲル等を使用することができる。ハンドリング、断熱性の観点から、シート状に形成された無機繊維が好ましい。無機繊維としては、ガラス繊維、アルミナやシリカ等のセラミック繊維、スラグウール繊維、ロックウール繊維等が挙げられる。これらの中では、断熱性、成形加工性等の観点から、ガラス繊維が好ましい。なお、芯材の耐熱性を向上させるため、ステンレス鋼、クロム−ニッケル系合金、高ニッケル合金、高コバルト合金等の耐熱性金属繊維を少量混合することもできる。芯材は公知であり、市場において容易に入手することができるか、又は調製可能である。
【0041】
本発明の一実施形態に係る真空断熱材において、吸着剤が芯材と共に袋状のガスバリア性フィルムに封入されてもよい。吸着剤は、例えば、窒素、酸素、二酸化炭素等のガス、及び/又は水分を吸着する物質である。吸着剤としては、酸化カルシウム、シリカゲル、ゼオライト、活性炭、酸化バリウム、バリウム−リチウム合金又はこれらの混合物等が挙げられる。ガス吸着性能及び生産性の観点から、酸化カルシウムが好ましい。吸着剤は公知であり、市場において容易に入手することができるか、又は調製可能である。
【0042】
本発明に用いられるガスバリア性フィルムは、ガスバリア性を有するフィルムであれば特に制限はないが、シール層及びガスバリア層を積層したものが好ましく、芯材に接する側から順にシール層、ガスバリア層及び1層以上の樹脂フィルム層を積層したものがより好ましい。ガスバリア性フィルムの厚さは、特に制限はないが、通常50〜200μmであり、好ましくは60〜180μmである。
【0043】
ガスバリア層は、ガスを透過しない層であり、真空断熱材の真空度の低下を防ぐ観点から用いられる。ガスバリア層としては、金属箔や、樹脂フィルム上に蒸着膜を形成した蒸着フィルム等が挙げられる。蒸着フィルムは、蒸着法、スパッタ法等により、基材上に蒸着膜を形成することにより得られる。ガスバリア性及び経済的観点から、金属箔及び蒸着材料のいずれにおいても、好ましくは、アルミニウムが用いられる。
【0044】
金属箔をガスバリア層として用いた場合、金属箔のカスバリア層を備えたフィルム側に設けた受電コイルは、送電コイルとの非接触給電時に強い誘導加熱が引き起こされ、その熱でフィルムが溶ける可能性がある。そのため、受電コイル側には金属箔を用いたガスバリア性フィルムを使用することはできない。そこで、ガス透過量の観点から一方の面にガスバリア層として蒸着層のみを使用したフィルム、他方の面に金属箔を用いたフィルムを使用し、受電コイルを蒸着層側に設けることで、送電コイルとの非接触給電の際に、蒸着層側の受電コイルからは、誘導加熱が生じることがないため、ガス透過量と給電の両観点から好ましい構成となる。
【0045】
蒸着フィルムの基材となる樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等の芳香族ポリエステル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、オレフィン共重合体等のポリオレフィン系樹脂;ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体等の塩化ビニル系樹脂;ナイロン6、ナイロン66、メタキシリレンジアミン・アジピン酸縮合体等のポリアミド樹脂;アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、アクリロニトリル・スチレン共重合体等のスチレン系樹脂;ポリメチルメタクリレート、アクリル酸エステルとメチルメタクリル酸エステル共重合体等のアクリル系樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール及びポリ酢酸ビニルを部分ケン化した物等の熱可塑性樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂等の熱硬化性樹脂から製造されるフィルムが用いられる。
【0046】
ガスバリア層の厚さは特に制限はないが、金属箔の場合は、1〜60μmであり、好ましくは5〜30μmである。厚さが1μm以上であれば、金属箔の強度が高く、ピンホールの形成等が抑えられる。蒸着フィルムの場合は、ガスバリア層の厚さは、10〜60μm、好ましくは12〜30μmであり、そのうち蒸着膜の厚さは、0.02〜0.6μm、好ましくは0.02〜0.4μmである。蒸着膜の厚さが0.02μm以上であればガスバリア性を発揮でき、0.4μm以下であれば膜形成の技術的な困難さは大きくはなく、非接触給電時に発生する誘導加熱や、通信の障害も少ない。ガスバリア層に用いられる金属箔や蒸着フィルムは公知であり、市場において容易に入手することができるか、又は調製可能である。
【0047】
シール層は、加熱により融着可能な樹脂である。熱融着可能な樹脂であれば、特に制限はない。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリアクリロニトリル、PET、エチレン−ビニルアルコール共重合体、又はそれらの混合体からなるフィルム等を用いることができる。好ましくはポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-ビニルアルコール共重合体が用いられる。ポリエチレンは、0.90〜0.98g/cm3の密度のものが好ましい。ポリプロピレンは、0.85〜0.95g/cm3の密度のものが好ましい。シール層の厚さは特に制限はないが、通常10〜100μmであり、好ましくは25〜60μmである。シール層に用いられる樹脂は公知であり、市場において容易に入手することができるか、又は調製可能である。
【0048】
樹脂フィルム層は、ガスバリア層を保護する目的で、ガスバリア層上に任意に設けられる層である。樹脂フィルム層としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等の芳香族ポリエステル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、オレフィン共重合体等のポリオレフィン系樹脂;ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体等の塩化ビニル系樹脂;ナイロン6、ナイロン66、メタキシリレンジアミン・アジピン酸縮合体等のポリアミド樹脂;ポリビニルアルコール、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、アクリロニトリル・スチレン共重合体等のスチレン系樹脂;ポリメチルメタクリレート、アクリル酸エステルとメチルメタクリル酸エステル共重合体等のアクリル系樹脂等の熱可塑性樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂等の熱硬化性樹脂から製造されるフィルムが用いられる。好ましくは、PET、ナイロン6又はナイロン66である。これらの樹脂フィルムには、有機質、無機質のフィラーを添加することもできる。これらの樹脂は単独で又は2種以上を混合して用いることができる。樹脂フィルム層には、ガスバリア性フィルムのガスバリア性能を更に向上させるために、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、ビニルアルコール等のビニルモノマーを重合、共重合させて得られるガスバリア性樹脂を塗布したり、積層したり、それらの粒子を樹脂フィルム層中に混合分散させることもできる。樹脂フィルム層の厚さは特に制限はないが、通常5〜40μmであり、好ましくは10〜30μmである。樹脂フィルム層に用いられる樹脂は公知であり、市場において容易に入手することができるか、又は調製可能である。
【0049】
ガスバリア性フィルムは、袋状に形成される。袋状とは、中に芯材及び吸着剤を入れられる形状である。ガスバリア性フィルムを袋状に形成する工程には、特に制限はない。例えば、ガスバリア性フィルムがシール層有する場合に、互いのシール層が接するように2枚のガスバリア性フィルムを重ねて、芯材及び吸着剤を納める部位の周りを、芯材及び吸着剤の挿入のための開口部を残して熱融着することにより、ガスバリア性フィルムを袋状に形成してもよい。
【0050】
本発明に用いられる外層は、紙及び/又は不織布である。紙とは、植物繊維その他の繊維を膠着させて製造した物である。有機繊維及び無機繊維のいずれも紙の材料として使用し得る。紙の材料となる有機繊維としては、例えば、植物由来の繊維、合成繊維等があり、紙の材料となる無機繊維は、例えば、鉱物、金属からなる繊維、合成繊維等がある。不織布とは、繊維シート、ウェブまたはバットで、線が一方向またはランダムに配向しており、交流、及び/又は融着、及び/又は接着によって繊維間が結合されたものである。有機繊維及び無機繊維のいずれも不織布の材料として使用し得る。
【0051】
不織布の材料となる有機繊維は天然繊維及び化学繊維を含み、天然繊維としては綿、羊毛、フェルト、麻、パルプ、絹等があり、化学繊維としてはレーヨン、ポリアミド、ポリエステル、ポリプロピレン、アクリル繊維、ビニロン、アラミド繊維、アセテート等がある。不織布の原料となる無機繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、鉱物繊維等がある。好ましい材料は、ポリアミド、ポリエステル、ポリプロピレンである。紙及び不織布は公知であり、市場において容易に入手することができるか、又は調製可能である。
【0052】
外層の厚さは、0.01mm〜3mmであり、好ましくは0.03〜0.5mmである。外層の目付は特に制限はないが、好ましくは10〜200g/m
2であり、より好ましくは20〜100g/m
2である。
【0053】
外層は、例えば、ラミネートによって、ガスバリア性フィルムの、芯材と接しない側(真空断熱材の外側)に接着される。ラミネートの方法としては、ドライラミネート、押し出しラミネート、ホットメルトラミネート、ウェットラミネート、サーマルラミネート等が挙げられる。
【0054】
本発明の一実施形態に係る真空断熱材は、板状である。板状とは、薄く平たい形状を言い、対向する2つの面及びこれら2つの面を接続する側周面を有する。外層は、板状の真空断熱材の少なくとも片面の一部を覆っており、好ましくは、使用する際に熱源側に配置される面の縁を枠状に覆っている。外層は、好ましくは真空断熱材の側周面も覆っており、より好ましくは真空断熱材の全面(すなわち、両面及び側周面)を覆っている。また、複数の真空断熱材を組み合わせて用いる場合には、真空断熱材同士の継ぎ目部分における熱の漏洩を防ぐために、側周面を外層で覆うことが有利である。
【0055】
図2は、
図1に示す小型無線真空計に電力を供給する送電装置の構成を示すブロック図である。送電装置20は、送電コイル21と、DC/DCコンバータ22と、PC/安定化電源23とを含むことができ、例えば、基板上にそれら部品を実装することができる。
【0056】
送電コイル21は、磁界共鳴方式、電磁誘導方式等の非接触給電方式によって、小型無線真空計(
図1参照)に含まれる受電コイル11と作用して、受電コイル11に電気を生じさせるコイルである。
【0057】
DC/DCコンバータ22は、送電コイル21及びPC/安定化電源23に電気的に接続され、送電コイル21と、PC/安定化電源23との間に設けられる。本発明の一実施形態では、DC/DCコンバータ22は、電圧を昇圧又は降圧するための昇降圧コンバータであるが、送電装置20では、主に、昇圧を目的として用いられる。
【0058】
小型無線真空計10に含まれるDC/DCコンバータ12及び送電装置20に含まれるDC/DCコンバータ22を用いる主な目的は、このような昇降圧コンバータを用いて安定化された電圧下の元でセンサを駆動させることで、センサの出力信号の安定化及びガスバリア性フィルム(以下、「VIP用フィルム」とも称する。)表面の誘導加熱をなるべく小さい中で電力を供給させるためである。
【0059】
PC/安定化電源23は、DC/DCコンバータ22に電気的に接続される。送電装置20における電源は安定化電源から供給させることができるが、パソコン(PC)を用いてPC側から供給される電気の電圧をDC/DCコンバータ22で昇圧させても良い。
【0060】
図3は、本発明の一実施形態に係る真空断熱材に含まれる小型無線真空計と送電装置との間の真空断熱材を介した非接触給電及び無線通信の様子を示すブロック図である。小型無線真空計10は断熱材内部に設けられ、送電装置20は断熱材外部に設けられる。非接触給電の際には、
図3に示すように、小型無線真空計10の受電コイル11は、断熱材を構成する石膏ボード31、発泡体(XPS)32、及びガスバリア性フィルムであるアルミ蒸着層33を挟んで、送電装置20の送電コイル21に向かい合う。
【0061】
以下、本発明の真空断熱材について、実施例により詳細に説明する。しかしながら、本発明は、実施例に制限されるものではない。
【実施例】
【0062】
小型無線真空計への給電試験
図4は、非接触給電及び無線通信の性能実験に用いた真空断熱材の構成例を示す図である。受電コイル11と送電コイル21とによる非接触給電を、石膏ボード31、発泡体(XPS)32及びガスバリア性フィルムであるアルミ蒸着層33を含む断滅材をそれらの間に介して行う実験を行う。本実験では、
図3に示すとおりように、基本的には、受電コイル11側を断熱材内部と想定し、送電コイル21側を断滅材外部と想定し、真空断熱材の内部に設置されたセンサが、離れた部位で給電及び通信が確認できるかどうか観測する。
【0063】
本実験で用いる、石膏ボード31、発泡体(XPS)32、及びアルミ蒸着層33の大きさをそれぞれ450mm角とした。石膏ボード31の厚さを12mmとし、発泡体(XPS)32の厚さを、50mm、70mm、100mm、120mmと変化させ、アルミ蒸着層33の厚さは、0Å、500Å、2000Å、4000Å、6000Å、65000Åと変化させることで、受電コイル11と送電コイル21との間の送電距離を変化させて、非接触給電による給電が可能か否か、及び、データの通信が可能か否かを観測した。
【0064】
具体的には、石膏ボード31は、吉野石膏社製のタイガーボードを使用し、発泡体(XPS)32は、ダウ化工社製のスタイロフォームIBを使用した。発泡体(XPS)32の厚さを50m〜120mmの間で、1枚以上積層して実験に使用する発泡体の厚さを調整した。
図4に示すとおり、石膏ボード31、発泡体(XPS)32及びアルミ蒸着層33を含む断熱材に相当する積層体の上下に、センサに接続された受電コイル11、及びPCと安定化電源に接続された送電コイル21を配置して、給電及び通信が可能か否かを確認した。
【0065】
安定化電源から5Vの電圧をかけ、送電コイル21にあるDC/DCコンバータ22から昇圧させた。電流値として0,5Aになるように距離に応じて昇圧を行った。送電側をV=5V、A=0.5Aとした時の受電コイル11での送電効率(非昇圧時の電圧で観測)を計算した。送電効率は、次の式で求めることができる。
送電効率(%)=受電側電力(W)/送電側電力(W)×100
【0066】
受電コイル11及び送電コイル21のコイル径を70mmとした場合に、送電距離、送電効率、アルミ蒸着層の厚み(以下、単に、アルミの厚みともいう)、給電可能であるか否か、通信可能であるか否かを表1に示す。給電可能であれば“〇”、給電不可能であれば“×”で表し、同様に、通信可能であれば“〇”、通信不可能であれば“×”を表す。“〇”、“×”の記号については、その他の実験結果の表においても同じ意味である。
【表1】
【0067】
受電コイル11及び送電コイル21のコイル径を100mmとした場合に、送電距離、送電効率、アルミ蒸着層の厚み、給電可能であるか否か、通信可能であるか否かを表2に示す。
【表2】
【0068】
受電コイル11及び送電コイル21のコイル径を150mmとした場合に、送電距離、送電効率、アルミ蒸着層の厚み、給電可能であるか否か、通信可能であるか否かを次の表に示す。
【表3】
【0069】
受電コイル11及び送電コイル21のコイル径を200mmとした場合に、送電距離、送電効率、アルミ蒸着層の厚み、給電可能であるか否か、通信可能であるか否かを次の表に示す。ここで、給電可能であるか否かについて、“△”の記号は、給電又は通信が失敗するときと成功するときがあり、不安定な状態を意味する。
【表4】
【0070】
コイル径を70mm、100mm、150mm、200mmとした場合に得られた表1から4に示す結果から、コイル径と送電距離とアルミの厚み(アルミ蒸着厚み)の関係をまとめたものを次の表5に示す。
【表5】
【0071】
表5をグラフにプロットしたものを
図5に示す。
図5は、小型無線真空計の非接触給電の送電距離を変化させて得られた実験結果に基づく給電可能なコイル径と蒸着厚みとの関係を示すグラフである。コイル径が150mm、200mmであるときに、送電距離92mmと112mmのアルミの厚みは同じであるから、
図5のグラフでは、送電距離112mmについての実験結果のプロットは省略する。
【0072】
図5を参照すると、本実験で得られた結果では送電距離を伸ばしていくと、アルミ蒸着層の合計の厚み(蒸着厚み)を y とし、コイル径を x とすると、蒸着厚みとコイル径の関係式(一次関数) y = ax+b (ただし、a、bは整数) の係数(傾き) a が小さくなる事が確認された。これは、送電距離が伸びると送電効率が低下し、アルミの層が厚いと電力が供給できなくなる為である。
【0073】
例えば、コイル径を150mmにしたに得られた表3に示す結果から、送電距離別に送電効率をまとめた結果を表6に示す。表6は、送電距離が伸びると送電効率が低下する傾向を示している。
【表6】
150mmのコイル径で2000Åのアルミ蒸着層の合計の厚みをもったフィルムに対し、112mmの給電・通信距離で送電効率10%以上を達成する事を確認した。これ以上出力が落ちると、安定した通信が不可能であった。コイル径を小さくすることで磁界が弱まる為、送電距離は低下した。
【0074】
再び、
図5を参照すると、小型無線真空計10が良好に、非接触給電及び無線通信を行える範囲は、真空断熱材のガスバリア性を担うアルミ蒸着の合計の厚みが500Å以上6000Å以下で、受電コイル11及び送電コイル21の直径が74mm以上200mm以下である。この範囲は、熱橋(ヒートブリッジ)の影響を受けるが、分厚い構成においてもある程度の送電が可能な構成である。熱橋とは、外壁と内壁の間にある柱・梁などが熱を伝える現象であり、 断熱材以外の柱・梁などは、建物内外を熱が伝わりやすく、熱橋と呼ばれる。
【0075】
熱橋の影響がより少ない、より好ましい範囲は、真空断熱材のガスバリア性を担うアルミ蒸着層の厚みが500Å以上2000Å以下で、受電コイル11及び送電コイル21の直径が74mm以上200mm以下である。アルミ蒸着層の合計の厚み(蒸着厚み)は、真空断熱材において良好なガスバリア性を得る為には少なくとも500Å厚以上必要であるが、2000Åを超えると、金属部を伝って熱が回り込む熱橋の影響が大きくなる。また、アルミ蒸着層の合計の厚みが500Å以上2000Å以下で、受電コイル11及び送電コイル21のコイル径が100mm以上150mm以下である範囲も、安定的に非接触給電及び無線通信を行うことが可能なより好ましい範囲である。
【0076】
図5に示す実験結果に鑑みると、受電コイル11と前記送電コイル21との間の送電距離が112mm以下の時の送電可能なフィルムのアルミ蒸着層の合計の厚みをyとし、コイル径をxとする関係式y=ax+b(ただし、a及びbは整数)で表現される1次関数から得られる傾きの係数aが30以上になる範囲が非接触給電及び無線通信を行う範囲として好ましい範囲である。また、受電コイル11と送電コイル21との間の送電距離が62mm以上132mm以下の時の送電可能なフィルムのアルミ蒸着層の合計の厚みをyとし、コイル径をxとする関係式y=ax+bで表現される1次関数から得られる傾きの係数aが30以上45以下になる範囲が非接触給電及び無線通信を行う範囲として好ましい範囲である。さらに、受電コイル11のコイル径xが74mm≦x≦200mmであるときに、アルミ蒸着層の合計の厚みyが30x−4000≦y≦45x−2837である範囲が非接触給電及び無線通信を行う範囲として好ましい範囲である。
【0077】
図6は、本発明の別の実施形態に係る真空断熱材に含まれる小型無線真空計の部品構成を示すブロック図である。別の実施形態に係る小型無線真空計10’は、例えば、基板上に、受電コイル11と、DC/DCコンバータ12と、CPU・無線送信ユニット13と、A/Dコンバータ14と、オペアンプ(OP AMP)15と、圧力センサ16とを備え、さらに、温湿度センサ・内部時計17を含むことができる。CPU・無線送信ユニット13に接続された温湿度センサ・内部時計17は、例えば、I2C通信等のシリアル通信で直接CPUに信号を送信することができる。
【0078】
CPU・無線送信ユニット13は、温湿度センサ・内部時計17からの信号を無線で外部の受信ユニットに送信することができる。なお、温湿度センサについては無くても、圧力センサ16により真空断熱材の内側の圧力を測定することが可能な為、必要がない場合には、小型無線真空計10’の構成に含めなくてもよい。つまり、温湿度センサは、真空断熱材の内部に侵入する水蒸気圧の問題を確認する等の必要な場合に応じて、小型無線真空計10’に含めることができる。さらに、各種分子種(二酸化炭素、一酸化炭素、酸素、VOC等)を計測するセンサも小型無線真空計10’に含めることができる。すなわち、小型無線真空計10’は、温度センサ、湿度センサ、各種分子種を計測するセンサ及び内部時計のうち少なくとも1つをさらに含むことができる。なお、温度センサ及び湿度センサは、誘導加熱等により生じ得る熱の影響を受けるため、受電コイル11から隔離して設けることができる。例えば、温度センサ及び湿度センサは、熱の影響を受けないために、受電コイル11から30mm以上離して設けることができる。
【0079】
本発明の一実施形態及び別の実施形態に係る小型無線真空計を含む真空断熱材は、外層よりも内側に設けた小型無線真空計に、外部電源との電気的な接続なしに、圧力センサに電力を供給するための非接触給電ユニットを設け、非接触給電ユニットにおける受電コイルに接続されたDC/DCコンバータによって、受電コイルで生じた電気を、降圧又は昇圧させることで、一定の電圧に維持することができる。このような非接触給電ユニットによって、残量低下に起因して一定の電圧を維持できないバッテリーを小型無線真空計に設ける必要がなくなり、圧力センサから出力信号を安定的に得ることができる。
【0080】
また、圧力センサへの給電及び圧力センサとの通信に使用される受電コイルのコイル径を、送電コイルとの距離(送電距離)及びガスバリア性フィルムであるアルミ蒸着層の厚みに応じて、適切に通信及び送電可能な範囲に設定することで、小型無線真空計への安定的な給電を実現し、小型無線真空計との通信が途切れることなく持続的に行うことができる。
【課題】センサ等を用いて内部の物性が測定可能な真空断熱材の従来例では、その内部に搭載しれたセンサシステムへの継続的な電力の供給をバッテリーで行うには限界があり、センサからのデータを長期間受信するためには、その都度、充電しなければならなかった。
【解決手段】本発明では、空断熱材の内側に、圧力センサと、受電コイルと、DC/DCコンバータと、少なくとも圧力値を含む測定データを送信する送信ユニットとを含む小型無線真空計を設け、非接触給電による電気の電圧を、DC/DCコンバータによって安定化させ、センサへの給電及びセンサとの通信に使用される受電コイルのコイル径を、送電コイルとの送電距離及びガスバリア性フィルムの厚みに応じて、適切に通信及び送電可能な範囲に設定することで、安定的な給電を実現し、通信が途切れることなく持続的に行うことが可能な真空断熱材を提供する。