【実施例】
【0153】
以下、本発明を後述する実施例と実験例を通じて詳細に説明する。
【0154】
ただし、後述する実施例と実験例は、本発明を、一部例示するものであるだけで、本発明がこれに限定されるものではない。
【0155】
<実施例1> 5-クロロ-N4-(2-(イソプロピルスルホニル)フェニル)-N2-(2-メトキシ-4-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)ピペリジン-1-イル)フェニル)ピリミジン-2,4-ジアミンの製造
【0156】
【化40】
【0157】
表題化合物をWO2004080980、WO2005016894、WO2009102446、WO2012019132またはWO2015077602特許文献を参照して、準備した。
【0158】
<実施例2> N-(2-(2-(3-クロロ-4-メトキシフェニルアミノ)-5-フルオロピリミジン-4-アミノ)フェニル)メタンスルホンアミドの製造
【0159】
【化41】
【0160】
表題化合物をWO 2009127642特許文献を参照して、準備した。
【0161】
<実施例3> (R)-3-(4-(シクロヘキシルアミノ)-1H-ピラゾール[4,3-c]ピリジン-3-イル)-1-(3-フェニルピペリジン-1-イル)プロパン-1-オンの製造
【0162】
【化42】
【0163】
表題化合物をWO 2010106333特許文献を参照して、準備した。
【0164】
<実施例4> 2-(4-フルオロベンジルオキシ)-5-(1-(2-モルホリノエチル)-1H-ピラゾール-4-イル)-N-(ピリジン-3-イル)ベンゾアミドの製造
【0165】
【化43】
【0166】
表題化合物をWO 2011038572特許文献を参照して、準備した。
【0167】
<実施例5> 4-(4-(6-メチル-4-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イルオキシ)-1H-ピラゾール[4,3-c]ピリジン-3-イル)ピリジン-2-イル)モルホリンの製造
【0168】
【化44】
【0169】
表題化合物をWO 2011141756特許文献を参照して、準備した。
【0170】
<実施例6> (4-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル)(3-メトキシ-4-(4-(メチルアミノ)-5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2-イルアミノ)フェニル)メタノンの製造
【0171】
【化45】
【0172】
表題化合物をWO 2011151360特許文献を参照して、準備した。
【0173】
<実施例7> (S)-3-(シクロプロピルチオ)-7-メチル-1-(1H-ピラゾール-3-イル)-6,7-ジヒドロチエノ[3,4-c]ピリジン-4(5H)-オンの製造
【0174】
【化46】
【0175】
表題化合物をWO 2012058193特許文献を参照して、準備した。
【0176】
<実施例8> N4-エチル-N2-(1-(3-フルオロ-1-(オキセタン-3-イル)ピペリジン-4-イル)-3-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2,4-ジアミンの製造
【0177】
【化47】
【0178】
表題化合物をWO 2012062783特許文献を参照して、準備した。
【0179】
<実施例9> 3-(シクロペンチルチオ)-6,6-ジメチル-1-(1H-ピラゾール-3-イル)-6,7-ジヒドロベンゾ[c]チオフェン-4(5H)-オンの製造
【0180】
【化48】
【0181】
表題化合物をWO 2012118679特許文献を参照して、準備した。
【0182】
<実施例10> 2-[(2-メトキシ-4-[[4-(4-メチルピペラジン-1-イル)ピペリジン-1-イル]カルボニル]フェニル)アミノ]-5,11-ジメチル-5,11-ジヒドロ-6H-ピリミド[4,5-b] [1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンの製造
【0183】
【化49】
【0184】
表題化合物をWO 2010080712またはWO 2015176010特許文献を参照して、準備した。
【0185】
<実施例11> (4-(4-(エチルアミノ)-5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2-イルアミノ)-2-フルオロ-5-メトキシフェニル)(モルホリノ)メタノンの製造
【0186】
【化50】
【0187】
表題化合物をWO 2011151360特許文献を参照して、準備した。
【0188】
<実施例12> (3-メトキシ-4-(4-(メチルアミノ)-5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2-イルアミノ)フェニル)(モルホリノ)メタノン製造
【0189】
【化51】
【0190】
12-1.:(3-メトキシ-4-(4-(メチルアミノ)-5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2-イルアミノ)フェニル)(モルホリノ)メタノン製造-1
【0191】
表題化合物をWO 2011151360特許文献を参照して、準備した。
【0192】
12-2.:(3-メトキシ-4-(4-(メチルアミノ)-5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2-イルアミノ)フェニル)(モルホリノ)メタノン製造-2
【0193】
【化52】
【0194】
工程1.:2,4-ジクロロ-5-ヨードピリミジン(1.0当量)をTHFに溶解した後、0℃でメチルアミン(3.5wt%in EtOH、1.1当量)を添加した。前記混合物を0℃で2時間攪拌した後、溶媒を除去し、それ以上精製過程なしに次の工程で使用した(収率:100%)。
【0195】
工程2.:二口丸底フラスコ(Two-necked round-bottom flask)を窒素気体で満たした後、CuI(5.0当量)およびKF(5.0当量)を入れた。前記混合物を、150℃に温度を加熱した後、減圧状態で2時間攪拌した。反応後、温度を常温に下げ、窒素下でDMF/NMP(1:1)に溶解したトリメチル(トリフルオロメチル)シラン(5.0当量)をシリンジ(syringe)を用いて添加した。30分間反応させた後、DMF/NMP(1:1)に溶解した2-クロロ-5-ヨード-N-メチルピリミジン-4-アミン(1.0当量)をシリンジを用いて添加し、50℃で18時間反応させた。反応後、前記反応物に水を添加して沈殿物を形成させ、形成された沈殿物を濾過して除去した。得られた濾液からEtOAcを用いて有機物を抽出した(x3)。集めた有機層は、ブライン(brine)で洗浄し、Na
2SO
4で残りの水を除去した。水が除去された混合物をMPCL(EtOAc:Hex)を用いて精製することにより、黄色固体の目的化合物を得た(収率:70%)。
【0196】
工程3.:2-クロロ-N-メチル-5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-4-アミン(1.0当量)と(4-アミノ-3-メトキシフェニル)(モルホリノ)メタノン(1.0当量)をジオキサン(dioxane)に溶解し、室温でp-トルエンスルホン酸(p-toluensulfonic acid)(1.0当量)を添加した。これを100℃で16時間攪拌した後、常温に冷やした後、溶媒を除去し、氷水を添加した。有機物はEtOAcを用いて抽出した(x3)。集めた有機層は、ブラインで洗浄し、Na
2SO
4で残りの水を除去した。水が除去された混合物をMPCL(EtOAc:Hex)を用いて精製することにより、白色固体の目的化合物を得た(収率:70%)。
【0197】
<実施例13> (R)-4-(1-シクロプロピルエチルアミノ)-7-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)シンノリン-3-カルボクスアミドの製造
【0198】
【化53】
【0199】
表題化合物をWO 2012162254特許文献を参照して、準備した。
【0200】
<実施例14> 1-(5-クロロ-4-(4-(メチルアミノ)-5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2-イルアミノ)-1H-ピラゾール-1-イル)-2-メチルプロパン-2-オールの製造
【0201】
【化54】
【0202】
表題化合物をWO 2012062783特許文献を参照して、準備した。
【0203】
<実施例15> シクロプロピル[10,11,14,15-テトラヒドロ-1,16-エテノ-4,8-(メテノ)ピラゾール[3,4-j] [1,4,7、9]オキサトリアザシクロヘキサデシン-12(13H)-イル]メタノンの製造
【0204】
【化55】
【0205】
表題化合物をWO 2013046029特許文献を参照して、準備した。
【0206】
<実施例16> N2-(5-クロロ-1-((3S、4R)-3-フルオロ-1-(オキセタン-3-イル)ピペリジン-4-イル)-1H-ピラゾール-4-イル)-N4-メチル-5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2,4-ジアミンの製造
【0207】
【化56】
【0208】
表題化合物をJournal of Medicinal Chemistry(2014),57(3),921-936文献を参照して準備した。
【0209】
<実施例17> (4-(6-アミノ-5-(1-イソプロピル-1H-1,2,3-トリアゾール-4-イル)ピリジン-3-イル)-2-メトキシフェニル)(モルホリノ)メタノン製造
【0210】
【化57】
【0211】
表題化合物をWO 2014106612文献を参照して、準備した。
【0212】
<実施例18> 3-(6-(4-(2-フルオロエチル)ピペラジン-1-イル)ピリミジン-4-イル)-5-(1-メチルシクロプロポキシ)-1H-インダゾールの製造
【0213】
【化58】
【0214】
表題化合物をWO 2014137723文献を参照して、準備した。
【0215】
<実施例19> 6-(1-メチル-1H-ピラゾール-3-イルアミノ)-4-(3-メチル-4-(モルホリノメチル)フェニル)-1H-ピロロ[2,3- b]ピリジン-3-カルボニトリルの製造
【0216】
【化59】
【0217】
表題化合物をWO 2014170248文献を参照して、準備した。
【0218】
<実施例20>(2S、6R)-2,6-ジメチル-4-(6-(5-(1-メチルシクロプロポキシ)-1H-インダゾール-3-イル)ピリミジン-4-イル)モルホリンの製造
【0219】
【化60】
【0220】
表題化合物をWO 2014137723文献を参照して、準備した。
【0221】
<実施例21> 3-(4-モルホリノ-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-3-イル)ベンゾニトリルの製造
【0222】
【化61】
【0223】
表題化合物をWO 2015092592文献を参照して、準備した。
【0224】
<実施例22> 1-メチル-4-(4-モルホリノ-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-イル)-1H-ピロール-2-カルボニトリルの製造
【0225】
【化62】
【0226】
表題化合物をUSA 20140005183 A1文献を参照して、準備した。
【0227】
下記表1に、実施例1〜22で準備した化合物の構造を示した。
【0228】
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【0229】
<比較例> 2-メチル-2- [3-メチル-4-[[4-(メチルアミノ)-5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2-イル]アミノ]ピラゾール-1-イル]プロパンニトリル
【0230】
【化63】
【0231】
表題化合物をWO 2012062783文献を参照して、準備した。
【0232】
<実験例1> 脳腫瘍の癌幹細胞でLRRK2タンパク質の発現を確認
脳腫瘍の治療用標的タンパク質としてLRRK2タンパク質の可能性を確認するために、19人の脳腫瘍患者から得た癌組織を利用して、ウエスタンブロットを実行して、LRRK2タンパク質の発現を確認した。
【0233】
詳細には、脳腫瘍患者から癌組織を収得した後、ウエスタンブロットを実行して、LRRK2タンパク質の発現を確認し、その結果を
図1に示した。
【0234】
図1に示すように、脳腫瘍患者から得られた癌組織でLRRK2タンパク質が発現されることを確認し、これは脳腫瘍の悪性度が高いほど、発現量が増加した。したがって、前記からLRRK2タンパク質が脳腫瘍治療の標的として使用することができることを知ることができた。
【0235】
<実験例2> LRRK2タンパク質に対するリン酸化による脳腫瘍患者の予後の変化を確認
LRRK2タンパク質は、リン酸化がすることによってその活性を示す。そこで、脳腫瘍細胞でLRRK2タンパク質に対するリン酸化に起因する脳腫瘍の予後の変化を確認した。
【0236】
詳細には、200人余りの脳腫瘍3期および4期患者から組織サンプルを得て、得られた組織サンプルでリン酸化したLRRK2タンパク質の発現を免疫染色を通じて確認した。
【0237】
その結果、
図2に示すように、LRRK2タンパク質に対するリン酸化は、脳腫瘍の悪性度が増加するにつれて、つまり3期から4期に脳腫瘍が進むにつれて増加した。したがって、前記から悪性度の高い脳腫瘍の治療のためにリン酸化したLRRK2タンパク質を標的タンパク質として使用することができることを知ることができた。
【0238】
<実験例3> LRRK2タンパク質の突然変異体と脳腫瘍との相関関係を確認
従来の研究によれば、LRRK2タンパク質に発生した突然変異によって、様々な癌が発生し得、LRRK2タンパク質と関連することが知られているパーキンソン病もまた、LRRK2タンパク質の突然変異によって発生することが報告された。そこで、前記の実験例では脳腫瘍細胞で過発現したことが確認されたLRRK2タンパク質がその突然変異であるかどうかを確認した。詳細には、5人の患者から得た脳腫瘍細胞を用いて配列分析を行い、その際に、下記表2に記載されたようなプライマーを使用した。
【0239】
【表2-1】
【表2-2】
【0240】
その結果、
図3に示すように、脳腫瘍細胞で発現したLRRK2タンパク質をコードする核酸配列は、従来知られている単一塩基多型(SNP)を除いては、パーキンソン病で主に確認されるような特異的な突然変異がなかった。したがって、前記から、パーキンソン病や他の種類の癌とは異なり、脳腫瘍の場合、通常のLRRK2タンパク質が過発現することによって、癌が発生することを確認できた。
【0241】
<実験例4> LRRK2タンパク質の過発現による腫瘍形成能を確認
実験例3で確認されたように、脳腫瘍がLRRK2タンパク質の過発現によって発生するかどうかを確認するために、LRRK2タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むレンチウイルスベクター(pLenti CMV GFP DEST(736-1),Addgene #19732)を作製したあと、これを528NS,464T(サムスンソウル病院、大韓民国)およびex-vivo細胞株にそれぞれ感染させ、腫瘍の形成を確認した。このとき、LRRK2タンパク質を発現しないレンチウイルスベクターを、対照群として感染させた。
【0242】
その結果、
図4に示すように、対照群に比べてLRRK2タンパク質を発現するレンチウイルスに感染した528NS,464Tまたはex-vivo細胞株でGSC(glioma stem cell)球の大きさが増加した。このことから、LRRK2タンパク質の過発現で腫瘍が形成されることが分かった。
【0243】
<実験例5> 化合物のLRRK2タンパク質に対するリン酸化阻害活性の評価(in vitro)-(1)
in vitroでの薬効評価のために脳腫瘍患者由来細胞株であるNCC01細胞を用いてウエスタンブロット実験を行った。
【0244】
より詳細には、7.5x10
5〜1.0x10
6個のNCC01細胞に実施例10、11、12、20、21、および22で製造した化合物を、100または1,000nMの濃度でそれぞれ処理し、1日が経過した後、サンプルを収集してウエスタンブロットを介してLRRK2タンパク質に対するリン酸化阻害活性を評価した。実施例化合物を処理していない群を無処理群(Vehicle)とした。その結果を
図5および6に示した。
【0245】
図5および6に示すように、本発明に係る実施例10、11、12、20、21、および22の化合物は、無処理群(Vehicle)に比べて脳腫瘍患者由来細胞株であるNCC01細胞でLRRK2タンパク質に対するリン酸化を大幅に抑制した。
【0246】
従って、本発明に係る化合物が脳腫瘍患者由来細胞株で発現するLRRK2タンパク質に対するリン酸化を抑制することを確認した。
【0247】
<実験例6> 化合物の濃度によるLRRK2タンパク質に対するリン酸化阻害活性の評価(in vitro)-(1)
先の<実験例1>のLRRK2タンパク質に対するリン酸化阻害活性の評価と同様に実験を行って、本発明に係る実施例の化合物が詳細にはどのような濃度範囲で効能が優れているのかを確認するために実験を行った。
【0248】
より詳細には、7.5x10
5〜1.0x10
6個のNCC01細胞に実施例10および12で製造した化合物を0.5、1、5、10、50、および100nMの濃度で処理し、1日が経過した後、サンプルを収集してウエスタンブロットを介してLRRK2タンパク質に対するリン酸化阻害活性を評価した。実施例化合物を処理していない群を無処理群(Vehicle)とした。その結果を
図7〜10に示した。
【0249】
図7〜10に示すように、実施例10の化合物は、100nMでの濃度でもリン酸化されたLRRK2タンパク質が検出されたが、実施例12の化合物は、50および100nMの濃度でLRRK2タンパク質に対するリン酸化をほとんど抑制した。
【0250】
このことから、本発明に係る化合物は、nM単位の低濃度でもLRRK2タンパク質に対するリン酸化を顕著に抑制することを確認した。
【0251】
<実験例7> 化合物の処理時間によるLRRK2タンパク質に対するリン酸化阻害活性の評価(in vitro)
先の<実験例1>のLRRK2タンパク質に対するリン酸化阻害活性の評価と同様に実験を行って、本発明に係る実施例の化合物を処理した後、時間の経過によって活性がどのように変化するかを確認するために実験を行った。
【0252】
より詳細には、7.5x10
5〜1.0x10
6個のNCC01細胞に実施例12で製造した化合物を、100nMの濃度で処理し、1日、4日、8日が経過した後にサンプルを収集し、ウエスタンブロットを介してLRRK2タンパク質に対するリン酸化阻害活性を評価した。実施例化合物を処理していない群を無処理群(Vehicle)とした。その結果を
図11および12に示す。
【0253】
図11および12に示すように、実施例12の化合物を脳腫瘍患者由来細胞株であるNCC01細胞に処理して、1日が経過した後からLRRK2タンパク質に対するリン酸化レベルが急激に減少し、これは時間が経過した後も持続した。
【0254】
このことから、本発明に係る実施例の化合物が長期間継続的にLRRK2タンパク質に対するリン酸化を抑制することを確認した。
【0255】
<実験例8> LRRK2タンパク質に対するリン酸化の抑制による細胞内シグナル伝達経路の変化の評価(in vitro)
癌幹細胞の成長のための細胞内シグナル伝達経路で本発明に係る実施例の化合物の影響を確認するために実験を行った。
【0256】
より詳細には、1.0x10
6個のNCC01細胞に実施例12で製造した化合物を50、100、500、1000、および2000nMの濃度で処理し、1日が経過した後にサンプルを収集し、ウエスタンブロットを介して細胞内シグナル伝達経路に関与する癌の幹細胞マーカーであるNESTINタンパク質の発現を確認した。実施例化合物を処理していない群を無処理群(Vehicle)とした。その結果を
図13〜15に示した。
【0257】
図13〜15に示すように、実施例12の化合物によってNCC01細胞でLRRK2タンパク質に対するリン酸化が抑制され、これは処理された化合物の濃度に依存的に減少した。
【0258】
このことから、本発明に係る実施例12の化合物が脳腫瘍患者由来の細胞でLRRK2タンパク質によるシグナル伝達を阻害し、これにより、腫瘍幹細胞の成長に関与するNESTINタンパク質の発現を減少させ、細胞の成長を抑制することを確認した。
【0259】
<実験例9> LRRK2タンパク質の活性抑制を通じたミトコンドリアの機能変化を確認
LRRK2タンパク質は、ミトコンドリアの外膜に位置し、ミトコンドリアの切片化および膜電位(membrane potential)の調節に関与することが報告されている。したがって、前記実施例で製造したLRRK2タンパク質を阻害する化合物が、ミトコンドリアの機能にどのような影響を与えるかを確認する実験を行った。
【0260】
詳細には、NCC01細胞株に1μMの実施例12の化合物を処理して、1日が経過した後、活性化したミトコンドリアを染色するTMRE(tetramethylrhodamine ethylester)染色薬を添加してミトコンドリアの機能変化を確認した。ここで、実施例化合物を処理していない群を無処理群(control)とした。染色された結果を顕微鏡で撮影して
図16に示した。
【0261】
図16に示すように、対照群の細胞は、細胞内に存在するミトコンドリアの活性が維持されてTMRE染色薬の発色が明確になった。しかし、実施例12の化合物を処理した細胞は、TMRE染色薬の発色程度が減少したのみならず、細胞内に存在する核の切片化が起こることを確認した。このことから、本発明に係る実施例12の化合物がミトコンドリアの活性を阻害することにより、脳腫瘍細胞の死滅に影響を与えることが分かった。
【0262】
<実験例10> 脳腫瘍幹細胞でLRRK2タンパク質に対するリン酸化阻害活性の評価
腫瘍の転移に関連することが知られている腫瘍幹細胞でLRRK2のタンパク質のリン酸化を抑制することにより、幹細胞の細胞死滅を誘導するかどうかを確認するための実験を行った。
【0263】
詳細には、脳腫瘍幹細胞株であるNCC01細胞株に実施例12で製造された化合物を0.1または1μMの濃度で添加し、1日が経過した後、<実験例9>に記載したように、ミトコンドリアを染色してその機能変化を確認した。ここで、実施例化合物を処理していない群を無処理群(Vehicle)とした。染色された結果を顕微鏡で撮影して
図17に示した。
【0264】
図17に示すように、対照群に比べて、実施例12の化合物を処理した群では、脳腫瘍幹細胞に存在するミトコンドリアの活性が抑制された。したがって、前記から、本発明に係る化合物は、ミトコンドリアの活性を抑制することにより、脳腫瘍幹細胞の死滅を誘導することにより、腫瘍の転移を抑制することができることを確認した。
【0265】
<実験例11> 脳腫瘍幹細胞でLRRK2タンパク質阻害剤によるTRAP1発現抑制活性の評価
<実験例10> で確認された本発明に係るLKKR2タンパク質の阻害剤の脳腫瘍幹細胞でミトコンドリアの活性を抑制することが、ミトコンドリアの機能調節に関与することが知られているTRAP1(TNF receptor associated protein 1)タンパク質の発現の変化に関与しているかどうかを確認する実験を行った。
【0266】
詳細には、脳腫瘍幹細胞株であるNCC01細胞株に実施例12で製造された化合物を、100または1,000nMの濃度で添加し、1日が経過した後、ウエスタンブロットの方法を介してTRAP1タンパク質の発現の変化を確認した。ここで、実施例化合物を処理していない群を無処理群(Vehicle)とした。
【0267】
その結果、
図18に示すように、実施例12の化合物によってTRAP1タンパク質の発現が抑制された。このことから、本発明に係る化合物がTRAP1タンパク質の発現を抑制することにより、ミトコンドリアの活性を抑制することが分かった。
【0268】
<実験例12> 低酸素状態でのLRRK2タンパク質発現の変化を確認
従来の研究を通じてGSCの機能で低酸素条件が重要であることが分かった。したがって、低酸素状態でのLRRK2タンパク質の発現の変化およびその発現を抑制したときのGSC球の大きさを確認した。
【0269】
詳細には、NCC01および528NS細胞株を低酸素条件に露出させた後、そこにLRRK2遺伝子に対する2種類のshRNAを処理した後、球の大きさの変化を確認した。ここで、対照群としてはルシフェラーゼのshRNA(shNT)を使用した。
【0270】
【表3】
【0271】
その結果、
図19に示すように、低酸素条件に露出したNCC01(aおよびb)および528NS(cおよびd)細胞株の球の大きさは、対照群に比べて増加したが、これはLRRK2遺伝子のshRNAであるLRRK2 shRNA-1およびLRRK2 shRNA-2によって抑制された。このことから、低酸素条件下で生成されたGSCがLRRK2タンパク質の発現抑制により成長が抑制されることが分かった。
【0272】
<実験例13> LRRK2タンパク質に対するリン酸化の抑制を通じた細胞死滅誘導活性の評価(in vitro)
LRRK2タンパク質に対するリン酸化を阻害することにより、脳腫瘍細胞の細胞死滅を誘導するかどうかを評価するためにFACS(Fluorescence-activated cell sorting)を用いて実験を行った。
【0273】
より詳細には、7.5x10
5〜1.0x10
6個のNCC01細胞に実施例11、12および21で製造した化合物を、100nMの濃度でそれぞれ処理し、1日が経過した後にサンプルを収集し、FACSを実行することにより、細胞死滅誘導活性を評価した。実施例化合物を処理していない群を無処理群(Control)とした。その結果を
図20および21に示す。
【0274】
図20および21に示すように、実施例11、12および21の化合物がNCC01細胞の細胞死を誘導した。特に、実施例12の化合物が実施例11および21の化合物に比べて約3倍高い細胞死滅率を示した。このことから、本発明に係る実施例12の化合物は、他の実施例の化合物に比べて、細胞死滅の誘導効果が顕著に優れていることが分かった。
【0275】
<実験例14> 動物モデルでの化合物の脳腫瘍細胞に対する成長阻害活性の評価-(1)
本発明に係る実施例の化合物が、動物モデルで脳腫瘍細胞に対する成長抑制活性を示すかどうかを確認するために実験を行った。
【0276】
より詳細には、Balb/c-nudeマウスモデルに脳腫瘍患者由来細胞株であるNCC01を1.0x10
4個になるように脳内に注入し、3日が経過した後、実施例12で製造した化合物を10mg/kgまたは60mg/kgで経口投与した。化合物を投与した後、生存期間によるマウスの生存率とMRIを用いて前記マウスに生成された腫瘍の大きさを測定した。実施例の化合物を処理していない群を無処理群(Vehicle)とした。その結果を
図22および23に示す。
【0277】
図22に示すように、無処理群のグループでは、マウスの平均生存期間が54日であるのに対し、実施例12の化合物を10mg/kgで経口投与したグループは、平均生存が71日になり、実施例12の化合物を60mg/kgで経口投与したグループは、すべての個体が100日まで生存した(Vehicle vs 10mg/kg:p=0.032、Vehicle vs 60mg/kg:p〈0.001)。
【0278】
また、
図23に示すように、化合物を処理していない無処理群では、NCC01細胞を注入した位置に腫瘍が形成されたが、実施例12の化合物を10mg/kgまたは60mg/kg経口投与した群では、腫瘍の形成が観察されなかった。
【0279】
このことから、本発明に係る実施例の化合物は、脳腫瘍細胞から由来した腫瘍の形成を動物モデルで顕著に抑制することが分かった。
【0280】
<実験例15> 化合物およびアバスチンの併用処理による脳腫瘍の治療効果の評価
本発明に係る実施例の化合物を脳腫瘍の治療薬として処方されているアバスチンと併用処理したとき、動物モデルでその効果を確認するために実験を行った。
【0281】
より詳細には、5週齢のBalb/c-nudeマウスを利用して、同所性マウスモデル(orthotopic mouse model)を製造した。ここで、脳腫瘍細胞株であるU87MG細胞(ATCC、米国)を定位方法の装置(stereotaxic device)を利用して、ブレグマ(bregma)を基準に左2.2mm、後ろ0.5mmおよび深さ3.5mmで注入した。細胞を注入し、3日後、マウスを5匹ずつ3つの群(対照群(Vehicle)、アバスチン群、または実施例12の化合物とアバスチン投与群)に分けて、薬物を投与した。実施例12の化合物は、30mg/kgの投与量を経口投与し、アバスチンは10mg/kgの投与量を腹腔内に注射した。以後、前記のマウスが全体の体重の20%以上が減少したり、異常行動を示すなどの腫瘍形成所見を示せば生存期間を測定した。その結果、統計プログラムを利用して示した生存グラフを
図24に示した。
【0282】
その結果、
図24に示すように、実施例12の化合物をアバスチンと併用処理する場合には、アバスチンによる脳腫瘍の治療効果がさらに顕著に増加することが分かった。
【0283】
<実験例16> 比較例化合物のLRRK2タンパク質に対するリン酸化阻害活性の評価(in vitro)
LRRK2タンパク質阻害剤として公知の化合物である比較例化合物のin vitroでの薬効評価のために脳腫瘍患者由来細胞株であるNCC01細胞を用いてウエスタンブロット実験を行った。
【0284】
より詳細には、7.5x10
5〜1.0x10
6個の細胞に比較例で製造した化合物を0.1または1.0μMの濃度でそれぞれ処理し、1日が経過した後にサンプルを収集し、ウエスタンブロットを介してLRRK2タンパク質に対するリン酸化阻害活性を評価した。実施例化合物を処理していない群を無処理群(Vehicle)とした。その結果を
図25に示した。
【0285】
図25に示すように、本発明に係る比較例化合物は、LRRK2タンパク質を阻害することが知られているが、LRRK2タンパク質に対するリン酸化は抑制しないことを確認した。
【0286】
<実験例17> 化合物のLRRK2タンパク質に対するリン酸化阻害活性の評価(in vitro)-(2)
in vitroでの薬効評価のために脳腫瘍患者由来細胞株である448Tを利用して、ウエスタンブロット実験を行った。実験はNCC01細胞の代わりに448T細胞(サムスンソウル病院、大韓民国)を使用して、実施例10、11、12、20および21で製造した化合物を処理したことを除いては、実験例5と同様の条件および方法で行った。
【0287】
その結果、
図26に示すように、本発明に係る実施例10、11、12、20および21の化合物は、無処理群(Vehicle)に比べて脳腫瘍患者由来細胞株である448T細胞でLRRK2タンパク質に対するリン酸化を顕著に抑制した。
【0288】
従って、本発明に係る化合物が脳腫瘍患者由来細胞株で発現されるLRRK2タンパク質に対するリン酸化を抑制することを再確認した。
【0289】
<実験例18> 化合物の濃度によるLRRK2タンパク質に対するリン酸化阻害活性の評価(in vitro)-(2)
本発明に係る実施例の化合物が448T細胞に対して詳細にはどのような濃度範囲で効能が優れているのかを確認するために実験を行った。実験はNCC01細胞の代わりに448T細胞を使用して、実施例12で製造した化合物を50、100、500、1000、2000nMの濃度で処理したことを除いては、実験例6と同じ条件および方法で行った。
【0290】
その結果、
図27に示すように、実施例12の化合物は、50nMの濃度でLRRK2タンパク質に対するリン酸化をほとんど抑制させた。
【0291】
このことから、本発明に係る化合物は、nM単位の低濃度でもLRRK2タンパク質に対するリン酸化を顕著に抑制することを再確認した。
【0292】
<実験例19> 動物モデルでの化合物の脳腫瘍細胞の成長阻害活性の評価-(2)
本発明に係る実施例の化合物が、動物モデルで脳腫瘍細胞の成長抑制活性を示すことを確認するために実験を行った。実験はNCC01細胞の代わりに448T細胞を使用して、実施例12、20および21で製造した化合物を60mg/kgで経口投与したことを除いては、実験例14と同じ条件および方法で行った。
【0293】
その結果、28に示すように、化合物を処理していない無処理群では、448T細胞を注入した位置に腫瘍が形成されたが、実施例12、20および21で製造した化合物を経口投与した群では、腫瘍の形成が観察されなかった。
【0294】
このことから、本発明に係る実施例の化合物は、脳腫瘍細胞から由来した腫瘍の形成を動物モデルで顕著に抑制することを再確認した。
【0295】
<実験例20> 実施例および比較例の化合物のLRRK2タンパク質に対するリン酸化阻害活性の評価(in vitro)
LRRK2タンパク質阻害剤として公知の化合物である比較例化合物のin vitroでの薬効を評価するために実験を行った。実験はNCC01細胞の代わりに448T細胞を使用して、実施例1、11および12で製造した化合物を処理したことを除いては、実験例16と同じ条件および方法で行った。
【0296】
その結果、
図29に示すように、比較例化合物は、LRRK2タンパク質を阻害することが知られているが、本発明に係る実施例1、11、および12の化合物とは異なり、LRRK2タンパク質に対するリン酸化は抑制しないことを確認した。
【0297】
<製剤例1> 薬学的製剤の製造
1-1.散剤の製造
本発明のLRRK2タンパク質阻害剤500mg
乳糖100mg
タルク10mg
前記の成分を混合して気密包に充填して散剤を製造する。
【0298】
1-2.錠剤の製造
本発明のLRRK2タンパク質阻害剤500mg
トウモロコシのでんぷん100mg
乳糖100mg
ステアリン酸マグネシウム2mg
前記の成分を混合した後、通常の錠剤の製造方法によって打錠して錠剤を製造する。
【0299】
1-3.カプセル剤の製造
本発明のLRRK2タンパク質阻害剤500mg
トウモロコシのでんぷん100mg
乳糖100mg
ステアリン酸マグネシウム2mg
通常のカプセル剤の製造方法によって、前記の成分を混合して、ゼラチンカプセルに充填してカプセル剤を製造する。
【0300】
1-4.注射剤の製造
本発明のLRRK2タンパク質阻害剤500mg
注射滅菌蒸留水 適量
pH調整剤 適量
通常の注射剤の製造方法によって、1アンプルあたり(2ml)前記の成分含量で製造する。
【0301】
1-5.液剤の製造
本発明のLRRK2タンパク質阻害剤100mg
異性化糖10g
マンニトール5g
精製水 適量
通常の液剤の製造方法によって精製水にそれぞれの成分を加えて溶解させ、レモンの香りを適量加えた後、前記の成分を混合した後、精製水を加えて全体100mlに調節した後、茶色の瓶に充填し、滅菌して液剤を製造する。