特許第6728510号(P6728510)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6728510減衰力発生機構、減衰力発生機構の製造方法、および圧力緩衝装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6728510
(24)【登録日】2020年7月3日
(45)【発行日】2020年7月22日
(54)【発明の名称】減衰力発生機構、減衰力発生機構の製造方法、および圧力緩衝装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/34 20060101AFI20200713BHJP
   F16F 9/50 20060101ALI20200713BHJP
   F16F 9/32 20060101ALI20200713BHJP
【FI】
   F16F9/34
   F16F9/50
   F16F9/32 L
【請求項の数】6
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2020-500222(P2020-500222)
(86)(22)【出願日】2019年4月22日
(86)【国際出願番号】JP2019016965
(87)【国際公開番号】WO2019239718
(87)【国際公開日】20191219
【審査請求日】2020年1月6日
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2018/022582
(32)【優先日】2018年6月13日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000146010
【氏名又は名称】株式会社ショーワ
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(72)【発明者】
【氏名】中野 剛太
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 力
【審査官】 大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2010/0044172(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0198172(US,A1)
【文献】 特開2014−011352(JP,A)
【文献】 特開2014−173714(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/34
F16F 9/32
F16F 9/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が流れる流路を形成する流路形成部と、
前記流路における前記液体の流れを制御するバルブと、
前記液体が流入することで前記バルブに背圧を与える背圧室の圧力を制御する背圧制御バルブと、
前記背圧制御バルブを閉じる方向に押し付ける押付部と、
前記押付部によって前記背圧制御バルブを閉じる方向に押し付けるために、通電状態に応じてプランジャを前記押付部に向かって押し出す動作部と、
一方側開口端が他方側開口端に比べて狭い筒状に形成され、前記背圧室を形成、前記バルブおよび前記背圧制御バルブを少なくとも収容すると共に、前記一方側開口端から延出して前記動作部を収容する拡張収容部を有する収容部と、
を備えることを特徴とする減衰力発生機構。
【請求項2】
液体が流れる流路を形成する流路形成部と、
前記流路における前記液体の流れを制御するバルブと、
前記液体が流入することで前記バルブに背圧を与える背圧室の圧力を制御する背圧制御バルブと、
一方側開口端が他方側開口端に比べて狭い筒状に形成され、前記背圧室を形成すると共に、前記バルブおよび前記背圧制御バルブを少なくとも収容する収容部と、
通電状態に応じて動作する動作部によって前記背圧制御バルブに押し付けられる押付部と、を備え、
前記押付部は、前記動作部が非通電状態となることで前記押付部と前記収容部とが接触した状態で前記収容部との間にて前記液体が流れることを可能にする溝部を有することを特徴とする減衰力発生機構。
【請求項3】
液体が流れる流路を形成する流路形成部と、
前記流路における前記液体の流れを制御するバルブと、
前記液体が流入することで前記バルブに背圧を与える背圧室の圧力を制御する背圧制御バルブと、
一方側開口端が他方側開口端に比べて狭い筒状に形成され、前記背圧室を形成すると共に、前記バルブおよび前記背圧制御バルブを少なくとも収容する収容部と、
通電状態に応じて動作する動作部によって前記背圧制御バルブに押し付けられる押付部と、を備え、
前記収容部は、前記動作部が非通電状態となることで前記押付部と前記収容部とが接触した状態で前記押付部との間にて前記液体が流れることを可能にする溝部を有することを特徴とする減衰力発生機構。
【請求項4】
前記収容部は、前記一方側開口端から延出する拡張収容部を備え、
前記拡張収容部は、前記動作部を収容することを特徴とする請求項2または3に記載の減衰力発生機構。
【請求項5】
一端側に開口部を有する収容部を準備する工程と、
前記収容部の前記開口部から、背圧室の背圧を制御する背圧制御バルブを挿入する工程と、
前記収容部の前記開口部から、前記背圧室を形成する背圧室形成部を挿入する工程と、
前記収容部の前記開口部から、液体の流れを制御するバルブを挿入する工程と、
前記収容部に収容した前記背圧制御バルブ、前記背圧形成部および前記バルブを、前記収容部に保持させる工程と、
を備えることを特徴とする減衰力発生機構の製造方法。
【請求項6】
液体を収容するシリンダと、
軸方向に移動するロッドに接続すると共に、前記シリンダ内にて移動するピストン部と、
前記ピストン部の移動に伴って前記液体が流れる流路を形成する流路形成部と、
前記流路における前記液体の流れを制御するバルブと、
前記液体が流入することで前記バルブに背圧を与える背圧室の圧力を制御する背圧制御バルブと、
前記背圧制御バルブを閉じる方向に押し付ける押付部と、
前記押付部によって、前記背圧制御バルブを閉じる方向に押し付けるために、通電状態に応じてプランジャを前記押付部に向かって押し出す動作部と、
一方側開口端が他方側開口端に比べて狭い筒状に形成され、前記背圧室を形成、前記バルブおよび前記背圧制御バルブを少なくとも収容すると共に、前記一方側開口端から延出し、前記動作部を収容する拡張収容部を備える収容部と、
を備えることを特徴とする圧力緩衝装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減衰力発生機構、減衰力発生機構の製造方法、および圧力緩衝装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、パイロット型の減衰力調整弁において、略円筒形の「パイロットピン」の一端側に「メインバルブ」の弁座が圧入され、他端側にパイロット圧調整弁の弁座が形成された「ケース部材」が圧入され、パイロット圧調整弁の弁体が「ケース部材」と「保持プレート」とによって保持されている。そして、これら構造によって、全体のサブアセンブリ化を可能とした減衰力調節弁を有する緩衝器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−11342号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような圧入を多用し全体を構成する構造は、要求される精度が高くなり、歩留まりの悪化によるコスト増加等を招く恐れがあった。
本発明は、減衰力発生機構や圧力緩衝装置の製造の容易化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的のもと、本発明は、液体が流れる流路を形成する流路形成部と、前記流路における前記液体の流れを制御するバルブと、前記液体が流入することで前記バルブに背圧を与える背圧室の圧力を制御する背圧制御バルブと、前記背圧制御バルブを閉じる方向に押し付ける押付部と、前記押付部によって前記背圧制御バルブを閉じる方向に押し付けるために、通電状態に応じてプランジャを前記押付部に向かって押し出す動作部と、一方側開口端が他方側開口端に比べて狭い筒状に形成され、前記背圧室を形成、前記バルブおよび前記背圧制御バルブを少なくとも収容すると共に、前記一方側開口端から延出して前記動作部を収容する拡張収容部を有する収容部と、を備えることを特徴とする減衰力発生機構である。
また、かかる目的のもと、本発明は、一端側に開口部を有する収容部を準備する工程と、前記収容部の前記開口部から、背圧室の背圧を制御する背圧制御バルブを挿入する工程と、前記収容部の前記開口部から、前記背圧室を形成する背圧室形成部を挿入する工程と、前記収容部の前記開口部から、液体の流れを制御するバルブを挿入する工程と、前記収容部に収容した前記背圧制御バルブ、前記背圧形成部および前記バルブを、前記収容部に保持させる工程と、を備えることを特徴とする減衰力発生機構の製造方法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、減衰力発生機構や圧力緩衝装置の製造の容易化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態の油圧緩衝装置の全体図である。
図2】第1実施形態の外側減衰部の断面図である。
図3】第1実施形態のメインバルブ部および減衰力調整部の斜視断面図である。
図4】第1実施形態のメインバルブ部および減衰力調整部の部分断面図である。
図5】第1実施形態のメインバルブシートの上面図である。
図6】(A)および(B)は、第1実施形態のコントロールバルブおよびコントロールバルブシートの説明図である。
図7】(A)および(B)は、第1実施形態の油圧緩衝装置の動作説明図である。
図8】(A)および(B)は、第1実施形態の外側減衰部におけるオイルの流れの説明図である。
図9】(A)および(B)は、第1実施形態の外側減衰部におけるオイルの流れの説明図である。
図10】(A)および(B)は、第1実施形態の外側減衰部におけるオイルの流れの説明図である。
図11】第1実施形態のメインバルブ部の減衰力特性の説明図である。
図12】(A)および(B)は、第1変形例の油圧緩衝装置の説明図である。
図13】第2変形例の油圧緩衝装置1の説明図である。
図14】第2実施形態の外側減衰部の断面図である。
図15】第2実施形態のメインバルブ部および減衰力調整部の部分断面図である。
図16】第2実施形態のメインバルブシートの説明図である。
図17】第2実施形態の背圧形成部の説明図である。
図18】第3変形例の油圧緩衝装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。
<第1実施形態>
[油圧緩衝装置1の構成・機能]
図1は、第1実施形態の油圧緩衝装置1の全体図である。
【0009】
図1に示すように、油圧緩衝装置1は、オイルを収容するシリンダ部10と、他方側がシリンダ部10から突出して設けられるとともに一方側がシリンダ部10内にスライド可能に挿入されるロッド20と、を備える。また、油圧緩衝装置1は、ロッド20の一方側の端部に設けられるピストン部30と、シリンダ部10の一方側の端部に設けられるボトム部40と、を備える。さらに、油圧緩衝装置1は、シリンダ部10の外部に設けられて減衰力を発生させる外側減衰部100を備える。
【0010】
なお、以下の説明において、図1に示すシリンダ部10の長手方向は、「軸方向」と称する。また、軸方向におけるシリンダ部10の下側は、「一方側」と称し、シリンダ部10の上側は、「他方側」と称する。
また、図1に示すシリンダ部10の左右方向は、「半径方向」と称する。そして、半径方向において、中心軸側は、「半径方向内側」と称し、中心軸から離れる側は、「半径方向外側」と称する。
【0011】
〔シリンダ部10の構成・機能〕
シリンダ部10は、オイルを収容するシリンダ11と、シリンダ11の半径方向外側に設けられる外筒体12と、シリンダ11の半径方向外側であって外筒体12のさらに半径方向外側に設けられるダンパケース13とを有する。
【0012】
シリンダ11は、円筒状に形成され、他方側にシリンダ開口11Hを有する。
外筒体12は、円筒状に形成される。そして、外筒体12は、シリンダ11との間に、連絡路Lを形成する。また、外筒体12は、外側減衰部100との対向位置に、外筒体開口部12Hおよび外側接続部12Jを有する。外側接続部12Jは、オイルの流路を有するとともに、半径方向外側に向けて突出し外側減衰部100との接続箇所を形成する。
【0013】
ダンパケース13は、円筒状に形成される。そして、ダンパケース13は、外筒体12との間においてオイルが溜まるリザーバ室Rを形成する。リザーバ室Rは、ロッド20のシリンダ11に対する相対移動に伴って、シリンダ11内のオイルを吸収したり、シリンダ11内にオイルを供給したりする。また、リザーバ室Rは、外側減衰部100から流れ出たオイルを溜める。また、ダンパケース13は、外側減衰部100との対向位置に、ケース開口部13Hを有する。
【0014】
〔ロッド20の構成・機能〕
ロッド20は、軸方向に長く延びる棒状の部材である。ロッド20は、一方側にてピストン部30に接続する。また、ロッド20は、他方側にて図示しない連結部材等を介して例えば車体に接続する。ロッド20は、内側が空洞になっている中空状、または、内側に空洞を有さない中実状のいずれでも良い。
【0015】
〔ピストン部30の構成・機能〕
ピストン部30は、複数のピストン油路口311を有するピストンボディ31と、ピストン油路口311の他方側を開閉するピストンバルブ32と、ピストンバルブ32とロッド20の一方側端部との間に設けられるスプリング33とを有する。そして、ピストン部30は、シリンダ11内のオイルを第1油室Y1と第2油室Y2とに区画する。
【0016】
〔ボトム部40の構成・機能〕
ボトム部40は、バルブシート41と、バルブシート41の他方側に設けられるチェックバルブ部43と、軸方向に設けられる固定部材44と、を有する。そして、ボトム部40は、第1油室Y1とリザーバ室Rとを区分する。
【0017】
〔外側減衰部100の構成・機能〕
図2は、第1実施形態の外側減衰部100の断面図である。
図3は、第1実施形態のメインバルブ部50および減衰力調整部60の斜視断面図である。
図4は、第1実施形態のメインバルブ部50および減衰力調整部60の部分断面図である。
図5は、第1実施形態のメインバルブシート52の上面図である。
【0018】
以下の説明では、図2に示す外側減衰部100の長手方向(すなわち、シリンダ部10の軸方向(図1参照)に交差する交差方向(例えば、略直交方向))は、「第2軸方向」と称する。また、第2軸方向において外側減衰部100の左側は、「第2軸内側」と称し、外側減衰部100の右側は、「第2軸外側」と称する。
また、図2に示す外側減衰部100の上下方向(すなわち、第2軸方向に交差する方向)は、「第2半径方向」と称する。そして、第2半径方向において、第2軸に沿う中心軸側は、「第2半径方向内側」と称し、第2軸に沿う中心軸に対して離れる側は、「第2半径方向外側」と称する。
【0019】
図2に示すように、外側減衰部100は、第1実施形態の油圧緩衝装置1において主に減衰力を発生させるメインバルブ部50と、外側減衰部100にて発生させる減衰力の大きさを調整する減衰力調整部60と、を備える。さらに、外側減衰部100は、メインバルブ部50に対して並列流路を形成する連絡部80と、メインバルブ部50および連絡部80に対して連絡路Lからのオイルの流路を形成する接続流路部90と、外側減衰部100を構成する各種の部品を収容する外側ハウジング100Cを備える。
【0020】
(メインバルブ部50)
メインバルブ部50は、オイルの流れを絞るように制御することで減衰力を発生させるメインバルブ51と、メインバルブ51と対向しメインバルブ51が接触するメインバルブシート52(流路形成部の一例)と、を有する。
【0021】
図3に示すように、メインバルブ51は、第2半径方向内側に開口部51Hを有し、弾性変形する円盤形状の部材である。メインバルブ51の材料には、例えば鉄などの金属を用いることができる。
そして、図4に示すように、メインバルブ51の開口部51Hには、連絡部80が貫通する。また、メインバルブ51は、第2半径方向内側にて、メインバルブシート52とスペーサ部材684(後述)とに挟まれる。そして、メインバルブ51は、メインバルブシート52の第2軸外側に対向する。
【0022】
以上のように構成されるメインバルブ51は、連絡部80によって第2半径方向における位置の移動が制限される。また、メインバルブ51の第2半径方向内側は、メインバルブシート52およびスペーサ部材684(後述)によって第2軸方向における移動が制限される。一方、メインバルブ51の第2半径方向外側は、変形することで第2軸方向において移動可能になっている。そして、メインバルブ51は、メインバルブシート52の後述するメイン流路53におけるオイルの流れを絞って減衰力を発生させる。
【0023】
続いて、メインバルブシート52について説明する。
図3に示すように、メインバルブシート52は、第2半径方向内側に開口部52Hを有する円柱形状の部材である。そして、メインバルブシート52は、開口部52Hの一部に連絡部80が挿入される(図4参照)。
【0024】
図5に示すように、メインバルブシート52は、開口部52Hの周囲に中央シート部520を有する。また、メインバルブシート52は、中央シート部520よりも第2半径方向外側に設けられる内側シート部521(第1シート部の一例)と、内側シート部521よりも第2半径方向外側に設けられる外側シート部522(第2シート部の一例)とを有する。さらに、メインバルブシート52は、開口部52Hの第2半径方向外側に、第2軸方向に貫通するメイン流路53を有する。
【0025】
中央シート部520は、メインバルブ51側(本実施形態では、第2軸外側)に向けて円弧状に突出している。そして、中央シート部520には、メインバルブ51における第2半径方向内側の箇所が対向する。
【0026】
内側シート部521は、円環状に形成されている。そして、内側シート部521は、メインバルブ51側に向けて、流路口532よりも突出している。また、第1実施形態では、内側シート部521の突出高さは、中央シート部520および外側シート部522と略等しくなっている。
また、外側シート部522は、円環状に形成されている。そして、外側シート部522は、メインバルブ51側に向けて、流路口532よりも突出している。
そして、内側シート部521および外側シート部522は、メインバルブ51との接触箇所を形成する(図4参照)。
【0027】
さらに、第1実施形態の内側シート部521は、第2半径方向に沿って形成される複数の溝部521T(流通部の一例)を有する。各々の溝部521Tの流路断面積は、比較的小さく形成されている。すなわち、溝部521Tは、所謂オリフィス流路を構成する。そして、各々の溝部521Tは、内側シート部521にメインバルブ51が接触した状態で、内側シート部521の第2半径方向内側から内側シート部521の第2半径方向外側にオイルが流れる経路を形成する。つまり、各々の溝部521Tは、内側シート部521にメインバルブ51が接触した状態で、メイン流路53からのオイルが、内側シート部521と外側シート部522との間に流れ込むことを可能にする。
【0028】
メイン流路53は、コントロールバルブシート75の後述する背圧流路77および低速流路78に対して、並列流路を構成する(図4参照)。また、第1実施形態のメイン流路53は、複数設けられる(図5参照)。そして、各々のメイン流路53の第2軸内側の流路口531は、開口部52Hに連絡するとともに、接続流路部90と対向する。また、各々のメイン流路53の第2軸外側の流路口532(流路口の一例)は、中央シート部520と内側シート部521との間に位置する。
【0029】
(減衰力調整部60)
図3に示すように、減衰力調整部60は、後述のコントロールバルブ70をコントロールバルブシート75に対して進退させる進退部61と、メインバルブ部50などの各種部品を覆うキャップ部67と、メインバルブシート52に対するメインバルブ51の変形し易さを変更する背圧生成機構68とを有している。また、減衰力調整部60は、連絡部80におけるオイルの流れを絞って制御するコントロールバルブ70と、コントロールバルブ70と対向しコントロールバルブ70が接触するコントロールバルブシート75と、オイルの流れを絞る絞り部材79と、を有する。
【0030】
−進退部61−
図2に示すように、進退部61は、電磁石を用いて、後述のプランジャ64を進退させるソレノイド部62と、押付部材65とコントロールバルブ70との間に設けられる圧縮コイルバネ63と、第2軸方向に沿って進退するプランジャ64と、コントロールバルブ70をコントロールバルブシート75に対して押し付ける押付部材65と、を有する。また、進退部61は、進退部61を構成する部品を収容したり、支持したりするソレノイドケース60Cを有している。
【0031】
ソレノイド部62は、電磁石が通電状態になることで、プランジャ64を押付部材65側に向けて押し出す。
圧縮コイルバネ63は、第2軸内側にてコントロールバルブ70に接触し、第2軸外側にて押付部材65に接触する。そして、圧縮コイルバネ63は、押付部材65とコントロールバルブ70とが互いに離れる方向の力を、押付部材65およびコントロールバルブ70にそれぞれ与える。
プランジャ64は、ソレノイド部62が通電状態のときに押付部材65に向けて押し出され、ソレノイド部62が非通電状態のときに圧縮コイルバネ63により引き戻される。
【0032】
図3に示すように、押付部材65は、コントロールバルブ70側(第2軸内側)に向けて突出するバルブ接触部651を有している。第1実施形態のバルブ接触部651は、環状に形成されている。さらに、バルブ接触部651は、コントロールバルブ70の第2対向部72(後述する図6参照)に対向する位置に形成されている。そして、バルブ接触部651は、第2対向部72に接触する。
【0033】
さらに、押付部材65(押付部の一例)は、第2軸外側に溝部653(溝部の一例)を有している。溝部653は、押付部材65が第2軸外側に移動してキャップ部67に接触した状態で、押付部材65とキャップ部67との間におけるオイルの流れを可能にする。
そして、第1実施形態において、溝部653におけるオイルの流路断面積は、ソレノイド部62(動作部の一例)の非通電状態の発生時に、後述する背圧室68Pのオイル圧を一定以上に高めるように設定されている。さらに、溝部653におけるオイルの流路断面積は、ソレノイド部62(動作部の一例)の非通電状態の発生時に、メインバルブ51がメイン流路53を開いてオイルの流れが生じる程度に溝部653にオイルが流れるように設定されている。
【0034】
上述したソレノイド部62の非通電状態の発生時におけるキャップ部67と押付部材65との間のオイルの流れを生じさせる構成は、溝部653に限定されない。例えば、キャップ部67に溝部を設けることで、押付部材65がキャップ部67に接触した状態で、押付部材65とキャップ部67との間におけるオイルの流れを可能にしても良い。もちろん、キャップ部67に溝部を形成するとともに、押付部材65に溝部653を設ける構成であっても良い。さらに、押付部材65がキャップ部67に接触した状態で、キャップ部67と押付部材65との間のオイルの流れを生じさせる構成は、溝部に限定されず、貫通孔であっても良い。
【0035】
−キャップ部67−
図3に示すように、キャップ部67は、第2軸内側に形成される第1開口部67H1と、第2軸外側に形成される第2開口部67H2とを有し、概形が円筒状に形成された部品である。また、第1開口部67H1の第1内径は、第2開口部67H2の第2内径よりも大きく形成されている。さらに、キャップ部67の内部には、それぞれ内径が異なる複数の内径部が形成されている。第1実施形態のキャップ部67において、複数の内径部のうち、第2軸内側に設けられる内径部は、第2軸外側に設けられる内径部よりも内径が大きくなるように形成されている。
【0036】
そして、図4に示すように、キャップ部67(収容部の一例)は、内部に、メインバルブ部50、減衰力調整部60および連絡部80を収容する。より詳細には、キャップ部67は、メインバルブ部50のメインバルブ51(バルブの一例)および、減衰力調整部60において背圧室68P(後述)の背圧を制御するコントロールバルブ70(背圧制御バルブの一例)を収容する。また、後述するように、キャップ部67の一部は、背圧生成機構68およびコントロールバルブシート75と共に、背圧室68Pを形成する。
【0037】
さらに、キャップ部67は、第2開口部67H2に、プランジャ64が貫通して設けられる。また、キャップ部67は、キャップ部67の内部において、第2開口部67H2に対して押付部材65が進退する。
【0038】
そして、図2に示すように、キャップ部67は、ソレノイドケース60Cと接続流路部90との間に挟み込まれることで固定される。また、キャップ部67は、ソレノイドケース60Cとの間にて、オイルが流れるキャップ流路67Rを形成する。キャップ流路67Rは、第2開口部67H2に連絡するとともに、後述のハウジング内流路111に連絡する。
【0039】
−背圧生成機構68−
図3に示すように、背圧生成機構68は、メインバルブ51に対してメインバルブシート52の反対側(すなわち、第2軸外側)に設けられる隔壁部材681(背圧室形成部の一例)と、キャップ部67と隔壁部材681との間をシール(すなわち、液密)するシール部材682と、を有する。さらに、背圧生成機構68は、隔壁部材681をメインバルブ51に押し付ける力を隔壁部材681に与える戻バネ683と、戻バネ683とメインバルブ51との間に介在するスペーサ部材684と、を有する。
【0040】
隔壁部材681の概形は、略環状に形成されている。また、図4に示すように、隔壁部材681は、キャップ部67との間に第2半径方向における隙間C1が形成される。そして、隔壁部材681は、第2軸方向において移動可能になっている。例えば、隔壁部材681は、メインバルブ51が第2軸外側に向けて変形する際、第2軸外側に移動する。また、隔壁部材681は、メインバルブ51が第2軸内側に向けて変形する際、第2軸内側に移動する。
【0041】
さらに、第1実施形態の隔壁部材681は、メインバルブ51に接触するメインバルブ接触部681Vと、シール部材682が設けられるシール接触部681Sとを有している。
【0042】
メインバルブ接触部681V(接触部の一例)は、隔壁部材681における第2軸内側に設けられる。第1実施形態のメインバルブ接触部681Vは、第2軸外側から第2軸内側に向けて次第に幅が狭まるように形成されている。このメインバルブ接触部681Vは、メインバルブ51に対して環状に接触する。そして、隔壁部材681は、メインバルブ51に対して、メインバルブシート52の反対側となる第2軸外側からのオイル圧(以下、背圧と呼ぶ)を作用させる背圧室68Pを形成する部品の一つを構成する。
【0043】
ここで、背圧室68Pは、オイルが流入することで、流入したオイル応じたオイル圧をメインバルブ51に作用させる部屋である。そして、背圧室68Pは、メインバルブ51に対してメインバルブ51をメインバルブシート52に押し付ける力を付与するように作用する。なお、第1実施形態の背圧室68Pは、キャップ部67、隔壁部材681、シール部材682、スペーサ部材684、およびコントロールバルブシート75とによって形成される。
【0044】
また、図4に示すように、メインバルブ接触部681Vは、メインバルブ51の第2半径方向において部分的にメインバルブ51と接触する。これによって、メインバルブ51に対して背圧が掛かる範囲は、第2半径方向において、スペーサ部材684の第2半径外側の端部からメインバルブ接触部681Vまでとなる。つまり、メインバルブ51におけるメインバルブ接触部681Vよりも第2軸外側には、背圧が掛からない。
【0045】
そして、第1実施形態では、メインバルブ接触部681Vは、メインバルブ51に対して、内側シート部521の対向箇所よりも第2半径外側であって外側シート部522の対向箇所よりも第2半径方向内側に接触する。
ここで、メインバルブ51は、メイン流路53を開く際、第2半径方向外側から開く。そして、第1実施形態の外側減衰部100は、メインバルブ接触部681Vが外側シート部522の対向箇所よりも第2半径方向内側に接触するように構成されている。従って、第1実施形態の外側減衰部100は、メイン流路53からのオイルの流れによってメインバルブ51が外側シート部522から離れるときの変形のし易さを調整可能な構造になっている。すなわち、第1実施形態の外側減衰部100は、メインバルブ接触部681Vを備えることで、メインバルブ51によって生じる減衰力特性を調整可能になっている。
【0046】
また、第1実施形態の隔壁部材681は、メインバルブ51に対するメインバルブ接触部681Vの接触箇所を変更することで、上述のメインバルブ51の変形のし易さを容易に調整することができる。このように、第1実施形態の隔壁部材681は、設計の自由度を高められる構成となっている。
【0047】
シール接触部681Sは、第2半径方向外側を向く面である第1面S1と、第2軸外側を向く面である第2面S2とを有している。
第1面S1の外径は、シール部材682の内径よりも小さくなっている。これによって、第1実施形態では、シール部材682の内周面682Nと第1面S1(外周面)との間に隙間C2が形成される。
第1実施形態では、内周面682Nと第1面S1との間に隙間C2を形成することで、背圧室68Pにおけるオイル圧がシール部材682の内周面682Nに掛かるようにしている。そして、第1実施形態では、シール部材682の内周面682Nに掛かるオイル圧によって、シール部材682の外周面682Gがキャップ部67の内周面に押し付けられるようにしている。
【0048】
また、第2面S2は、環状に形成される面である。そして、第2面S2には、シール部材682の端面682Tが接触する。特に、第1実施形態では、戻バネ683によってシール部材682の端面682Tが隔壁部材681の第2面S2に押し付けられる。
【0049】
図3に示すように、シール部材682は、環状に形成されている。また、シール部材682には、エンジニアプラスティックやゴムなどの弾性変形する樹脂材料を用いることができる。
そして、図4に示すように、シール部材682は、隔壁部材681とキャップ部67との間をシールする。より詳細には、シール部材682は、外周面682Gがキャップ部67の内周に接触する。また、シール部材682は、第2軸内側の端面682Tが隔壁部材681の第2面S2と接触する。これによって、シール部材682は、背圧室68P内のオイルが、隔壁部材681とキャップ部67との間を通って背圧室68P外に流出することを抑制する。
【0050】
図3に示すように、戻バネ683は、環状に形成される環状部683Rと、環状部683Rから第2半径方向外側に向けて突出する複数の腕部683Aと、を有する。また、戻バネ683の材料には、金属などの弾性部材を用いることができる。
そして、図4に示すように、戻バネ683は、環状部683Rに連絡部80が貫通するとともに、複数のスペーサ部材684によって第2軸方向おいて環状部683Rが挟み込まれる。また、戻バネ683は、腕部683Aがシール部材682に接触する。
【0051】
第1実施形態の戻バネ683は、環状部683Rがスペーサ部材684によって固定される位置と、腕部683Aがシール部材682に接触する位置とが第2軸方向において異なっている。そして、腕部683Aは、第2軸方向に対して傾斜した形状になる。さらに、腕部683Aは、シール部材682の第2軸外側であって第2半径方向内側の角部に接触している。これによって、腕部683Aは、シール部材682に対して、第2軸方向に沿った成分のバネ力と、第2半径方向に沿った成分のバネ力を付与する。
【0052】
まず、戻バネ683の腕部683Aは、第2軸方向に沿った成分の力によって、シール部材682に対して背圧生成機構68の隔壁部材681(背圧室形成部の一例)側に向けた力を付与する。これによって、戻バネ683は、シール部材682を介して、隔壁部材681をメインバルブ51に押し付ける。
【0053】
また、第1実施形態の戻バネ683(弾性部材の一例)の腕部683Aは、第2半径方向に沿った成分の力によって、シール部材682(シール部の一例)をキャップ部67(収容部の一例)に押し付ける。これによって、第1実施形態では、シール部材682とキャップ部67とのシール性が高められる。
【0054】
さらに、第1実施形態の戻バネ683は、腕部683Aが隔壁部材681にも接触している。そして、戻バネ683は、隔壁部材681に対して、第2軸方向に沿った成分のバネ力と、第2半径方向に沿った成分のバネ力を付与する。
【0055】
まず、腕部683Aは、第2軸方向に沿った成分のバネ力によって、隔壁部材681をメインバルブ51に押し付ける。
また、腕部683Aは、第2半径方向に沿った成分のバネ力によって、隔壁部材681に対して第2半径方向外側に向けた力を付与する。第1実施形態において腕部683Aは、周方向において複数設けられている(図3参照)。従って、腕部683Aは、隔壁部材681を第2半径方向における予め定められた位置に位置決めする。
【0056】
−コントロールバルブ70−
図6は、第1実施形態のコントロールバルブ70およびコントロールバルブシート75の説明図である。
【0057】
図6(A)に示すように、コントロールバルブ70は、弾性変形する略円形状の板状部材である。コントロールバルブ70の材料には、例えば鉄などの金属を用いることができる。そして、コントロールバルブ70は、コントロールバルブシート75(他の流路形成部の一例)の第2軸外側に対向して設けられる。
そして、第1実施形態のコントロールバルブ70(第2バルブの一例)は、メインバルブ部50のメイン流路53とは並列であって異なる流路となる低速流路78(他の流路の一例)や背圧流路77(他の流路の一例)におけるオイルの流れを制御する。
【0058】
コントロールバルブ70は、環状に形成される外側環状部70Cと、背圧流路77に対向する第1対向部71と、低速流路78に対向する第2対向部72とを有する。さらに、コントロールバルブ70は、第2半径方向内側に設けられコントロールバルブ70を第2軸方向において変形し易くする内側開口部73と、内側開口部73よりも第2半径方向外側に設けられコントロールバルブ70を第2軸方向において変形し易くする外側開口部74と、を有する。
【0059】
外側環状部70Cは、第2半径方向外側に設けられる。そして、外側環状部70Cは、キャップ部67とコントロールバルブシート75との間に挟み込まれる部分として機能する。第1実施形態のコントロールバルブ70は、外側環状部70Cが挟み込まれることで、コントロールバルブシート75に保持される(図4参照)。
【0060】
第1対向部71は、円形状であって板状に形成される。そして、第1対向部71は、背圧流路77の内径よりも大きく形成され、背圧流路ラウンド77Rを覆うことが可能になっている。第1実施形態において、第1対向部71は、コントロールバルブ70の中央部(すなわち、第2半径方向内側)に形成している。
【0061】
第2対向部72は、円環状であって板状に形成される。そして、第2対向部72は、低速流路78の内径よりも大きく形成され、低速流路ラウンド78Rを覆うことが可能になっている。第2対向部72は、第1対向部71よりも第2半径方向外側に形成される。また、第2対向部72は、コントロールバルブ70において円環状の領域として形成される。これによって、第1実施形態では、コントロールバルブシート75に対するコントロールバルブ70の周方向における位置にかかわらず、第2対向部72は、低速流路78と常に対向するようになっている。
【0062】
内側開口部73は、コントロールバルブ70の周方向に沿って長く延びて設けられる。また、内側開口部73は、複数設けられる。そして、隣り合う2つの内側開口部73の間には、内側腕部73Aが形成される。各々の内側腕部73Aは、少なくとも一部が周方向に沿って延びるように形成される。第1実施形態において、複数の内側腕部73Aは、全体として、螺旋状に形成されている。また、内側腕部73Aは、コントロールバルブ70において、第1対向部71よりも第2半径方向外側であって第2対向部72よりも第2半径方向内側に設けられる。すなわち、内側腕部73Aは、第2半径方向において、第1対向部71および第2対向部72の間に設けられる。
【0063】
また、内側腕部73Aは、第1対向部71に近い側の幅B11が、第1対向部71から遠い側の幅B12よりも大きくなっている。さらに、内側腕部73Aは、第2対向部72に近い側の幅B13が、第2対向部72から遠い側の幅B12よりも大きくなっている。
【0064】
図6(A)に示すように、外側開口部74は、コントロールバルブ70の周方向に延びて設けられる。また、外側開口部74は、複数設けられるとともに、周方向において略等間隔に並べられている。さらに、第1実施形態のコントロールバルブ70では、第2半径方向において、異なる2つの外側開口部74が重なるように配置されている。
そして、図6(B)に示すように、外側開口部74は、第2対向部72よりも第2半径方向外側であって、外側環状部70Cよりも第2半径方向内側に形成される。
【0065】
また、隣り合う2つの外側開口部74の間には、外側腕部74Aが形成される。そして、各々の外側腕部74Aは、少なくとも一部が周方向に沿って延びるように形成される。また、第1実施形態において、複数の外側腕部74Aは、全体として、螺旋状に形成されている。そして、外側腕部74Aは、コントロールバルブ70において、第2対向部72の第2半径方向外側であって、外側環状部70Cよりも第2半径方向内側に設けられる。すなわち、外側腕部74Aは、第2半径方向において、第2対向部72および外側環状部70Cの間に設けられる。
【0066】
さらに、図6(A)に示すように、各々の外側開口部74は、外側腕部74Aの第2半径方向内側に形成される内側領域741の幅H1が、外側腕部74Aの第2半径方向外側に形成される外側領域742の幅H2よりも大きくなっている。そして、外側開口部74の開口の面積は、コントロールバルブ70に形成される他の開口と比較して、最も大きくなっている。第1実施形態では、外側開口部74の内側領域741がコントロールバルブ70を貫通して流れるオイルの主な流路を構成する。
【0067】
また、第1実施形態のコントロールバルブ70において、外側腕部74Aは、開口面積がより大きい外側開口部74の内側領域741の第2半径方向外側に配置している。第1実施形態のコントロールバルブ70においては、後述するようにオイルが流れた際、第2半径方向外側における流速が第2半径方向内側よりも小さくなる。そこで、第1実施形態では、外側腕部74Aを外側開口部74の内側領域741よりも第2半径方向外側に配置することで、剛性がより低く構成された外側腕部74Aに対して、外側開口部74を流れるオイルの動圧の影響が小さくなるようにしている。
【0068】
さらに、図6(B)に示すように、外側腕部74Aは、第2対向部72に近い側の幅B21が、第2対向部72から遠い側の幅B22よりも大きくなっている。さらに、外側腕部74Aは、外側環状部70Cに近い側の幅B23が、外側環状部70Cから遠い側の幅B22よりも大きくなっている。
【0069】
そして、第1実施形態のコントロールバルブ70は、内側腕部73Aや外側腕部74Aが形成される箇所の剛性が低下し、内側腕部73Aや外側腕部74Aが形成される箇所が変形し易くなる。特に、第1実施形態では、例えば内側腕部73Aや外側腕部74Aは、それぞれ周方向に沿って延びるように形成され、変形可能な腕の長さが確保され、より変形し易くなっている。
【0070】
−コントロールバルブシート75−
図6(A)に示すように、コントロールバルブシート75は、コントロールバルブ70を保持する外側シート部76と、背圧室68P(図4参照)におけるオイルの圧力を調整するためのオイルの流路を形成する背圧流路77と、低速時のオイルの流路を形成する低速流路78と、を有する。
さらに、図4に示すように、コントロールバルブシート75は、背圧流路77に連絡する連絡室82と、連絡室82と背圧室68Pとをつなぐ背圧連絡路83と、低速流路78と流入流路81とをつなぐ低速連絡路85と、を有する。
【0071】
連絡室82は、第2軸内側にて背圧オリフィス流路84に連絡し、第2軸外側にて背圧流路77に連絡し、第2半径方向において背圧連絡路83に対向する。
背圧連絡路83は、第2半径方向内側にて連絡室82に連絡し、第2半径方向外側にて背圧室68Pに連絡する。
低速連絡路85は、低速流路78よりもオイルの流路断面積が大きくなっている。第1実施形態では、後述する低速時におけるオイルの流れについては、低速流路78において調整するようにしている。従って、低速流路78よりもオイルの流れにおける上流側にてオイルの流れを絞らないようにしている。
【0072】
−絞り部材79−
図4に示すように、絞り部材79は、流入流路81と連絡室82とをつなぐ背圧オリフィス流路84を有する。背圧オリフィス流路84は、オイルの流路断面積が背圧連絡路83および背圧流路77よりも小さく形成される。そして、背圧オリフィス流路84は、背圧室68P内のオイルが流入流路81に戻り難くしている。
【0073】
(連絡部80)
図3に示すように、第1実施形態の連絡部80は、連絡路Lからのオイルが流入する流入流路81と、コントロールバルブシート75と接続する接続部89と、を有する。
接続部89の内径は、コントロールバルブシート75の第2軸内側の外径と略等しくなっている。そして、接続部89には、コントロールバルブシート75の第2軸内側の端部が挿入される。なお、連絡部80を、コントロールバルブシート75の内側へ挿入する構成としても良い。
【0074】
(接続流路部90)
図2に示すように、接続流路部90は、第2半径方向内側に設けられる内側流路91と、第2半径方向外側に設けられる外側流路92とを有する。
【0075】
内側流路91は、第2軸内側にて外筒体開口部12Hに連絡し、第2軸外側にて連絡部80の流入流路81およびメインバルブシート52のメイン流路53にそれぞれ連絡する。
外側流路92は、第1実施形態では複数設けられている。そして、外側流路92は、第2軸内側にてケース開口部13Hに連絡し、第2軸外側にてハウジング内流路111に連絡する。
【0076】
(外側ハウジング100C)
図2に示すように、外側ハウジング100Cは、略円筒形状の部材である。外側ハウジング100Cは、第2軸内側にて、例えば溶接等によってダンパケース13に固定される。
また、外側ハウジング100Cは、メインバルブ部50および減衰力調整部60の第2半径方向外側に、外側ハウジング100C内におけるオイルの流路であるハウジング内流路111を形成する。
ハウジング内流路111には、キャップ部67の第2開口部67H2から流れ出たオイル、およびメインバルブ51を開いてメインバルブシート52のメイン流路53から流れ出たオイルが流入するようになっている。
【0077】
[減衰力調整部60の調整動作]
次に、減衰力調整部60における調整動作について説明する。
図4に示すように、押付部材65を第2軸内側に向けて押し込むことにより、コントロールバルブ70がコントロールバルブシート75に押し付けられる。そして、押付部材65の押付力は、ソレノイド部62(図2参照)に流す電流量に応じて変化する。
【0078】
例えば、減衰力調整部60において、押付部材65の押付力を最も大きくした状態を形成する。このとき、コントロールバルブ70は、コントロールバルブシート75に対して最も強く押し付けられる。このとき、押付部材65のバルブ接触部651は、第2対向部72を低速流路78に近づけ、低速流路78(低速流路ラウンド78R)に第2対向部72を押し付ける。
【0079】
さらに、第1実施形態の第2対向部72は、内側腕部73Aを介して第1対向部71につながっている。そのため、押付部材65のバルブ接触部651が第2対向部72を移動させることに伴って、第1対向部71が背圧流路77に近づく。そして、背圧流路77には、第1対向部71(背圧流路ラウンド77R)が押し付けられる。ここで、第1実施形態では、背圧流路77は、低速流路78よりも高く突出している。そのため、第1実施形態では、第1対向部71によって、背圧流路77がより確実に押さえ付けられた状態が形成される。
以上のようにして、第1対向部71が背圧流路ラウンド77Rに接触し、背圧流路77が閉じられる。同時に、第2対向部72が低速流路ラウンド78Rに接触し、低速流路78が閉じられる。
【0080】
また、例えば、減衰力調整部60において、押付部材65の押付力を最も小さくした状態を形成する。このとき、減衰力調整部60では、第1対向部71が背圧流路ラウンド77Rから離れ、背圧流路77が開けられた状態になる。同時に、第2対向部72が低速流路ラウンド78Rから離れ、低速流路78が開けられた状態になる。
【0081】
さらに、例えば、減衰力調整部60において、押付部材65の押付力を最も小さくする状態と最も大きくする状態との間の状態にする。この状態の場合、減衰力調整部60では、第1対向部71は、押付力が最も大きい状態よりは背圧流路ラウンド77Rから離れ、押付力が最も小さい状態よりは背圧流路ラウンド77Rに近づく。同時に、第2対向部72は、押付力が最も大きい状態よりは低速流路ラウンド78Rから離れ、押付力が最も小さい状態よりは低速流路ラウンド78Rに近づく。
【0082】
なお、上述した第1実施形態では、低速流路78が背圧流路77よりも突出高さが低く、低い方の低速流路78に対向する第2対向部72を押付部材65によって押すようにしている。これに対して、背圧流路77の突出高さを低速流路78よりも低くした場合には、低い方の背圧流路77に対向する第1対向部71を押付部材65によって押すようにすれば良い。
さらに、押付部材65のバルブ接触部651を第1対向部71および第2対向部72の両方に接触させて、低速流路78および背圧流路77に対して進退させても良い。
【0083】
[油圧緩衝装置1の動作]
図7は、第1実施形態の油圧緩衝装置1の動作説明図である。なお、図7(A)は伸張行程時におけるオイルの流れを示し、図7(B)は圧縮行程時におけるオイルの流れを示す。
【0084】
まず、油圧緩衝装置1の伸張行程時における動作を説明する。
図7(A)に示すように、伸張行程時において、ロッド20は、シリンダ11に対して他方側に移動する。このとき、ピストンバルブ32は、ピストン油路口311を塞いだままである。また、ピストン部30の他方側への移動によって、第2油室Y2の容積は、減少する。そして、第2油室Y2のオイルは、シリンダ開口11Hから連絡路Lに流れ出る。
【0085】
さらに、オイルは、連絡路Lおよび外筒体開口部12Hを通って、外側減衰部100に流れ込む。そして、外側減衰部100において、オイルは、先ず、接続流路部90の内側流路91に流れ込む。その後、外側減衰部100において、メインバルブ51またはコントロールバルブ70において減衰力が発生する。なお、このときのオイルの流れについては、後に詳しく説明する。
【0086】
その後、メインバルブ51またはコントロールバルブ70に流れたオイルは、ハウジング内流路111に流れ出る。さらに、オイルは、接続流路部90の外側流路92を通ってケース開口部13Hからリザーバ室Rに流れ込む。
【0087】
また、第1油室Y1の圧力は、リザーバ室Rに対して相対的に低くなる。そのため、リザーバ室Rのオイルは、ボトム部40を通って、第1油室Y1に流れ込む。
【0088】
次に、油圧緩衝装置1の圧縮行程時における動作を説明する。
図7(B)に示すように、圧縮行程時において、ロッド20は、シリンダ11に対して一方側に相対移動する。ピストン部30においては、第1油室Y1と第2油室Y2との差圧によって、ピストン油路口311を塞ぐピストンバルブ32が開く。そして、第1油室Y1のオイルは、ピストン油路口311を通って第2油室Y2に流れ出る。ここで、第2油室Y2には、ロッド20が配置されている。そのため、第1油室Y1から第2油室Y2に流れ込むオイルは、ロッド20の体積分だけ過剰になる。従って、このロッド20の体積分に相当する量のオイルが、シリンダ開口11Hから連絡路Lに流出する。
【0089】
さらに、オイルは、連絡路L、外筒体開口部12Hを通って、外側減衰部100に流れ込む。なお、外側減衰部100におけるオイルの流れは、上述した伸張行程時におけるオイルの流れと同様である。すなわち、第1実施形態の油圧緩衝装置1では、圧縮行程時および伸張行程時との両方において、外側減衰部100においてオイルが流れる方向は同じになる。
【0090】
以上のとおり、第1実施形態の油圧緩衝装置1では、圧縮行程時および伸張行程時の両行程において外側減衰部100にて減衰力を発生させる。
【0091】
次に、第1実施形態の外側減衰部100におけるオイルの流れについて詳細に説明する。
まず、押付部材65の押付力が比較的小さい状態でのオイルの流れを説明する。なお、以下では、コントロールバルブ70が、背圧流路ラウンド77Rおよび低速流路ラウンド78Rから離れた状態の例を用いて説明する。
【0092】
図8は、第1実施形態の外側減衰部100におけるオイルの流れの説明図である。なお、図8(A)は、押付部材65の押付力が比較的小さい状態であって低速時のオイルの流れを示し、図8(B)は、押付部材65の押付力が比較的小さい状態であって高速時のオイルの流れを示す。
【0093】
(低速時)
図8(A)に示すように、ピストン部30(図1参照)の移動速度が低速である場合、内側流路91に流れたオイルは、流入流路81およびメイン流路53に流れ込む。ここで、ピストン部30の移動速度が低速であるため、メイン流路53においてメインバルブ51を開くオイルの流れは生じない。
一方、流入流路81に流れ込んだオイルは、低速連絡路85、低速流路78、低速流路ラウンド78R、主に外側開口部74(図6(A)および図6(B)参照)、第2開口部67H2およびキャップ流路67Rの順に流れる。そして、オイルは、ハウジング内流路111からリザーバ室Rに流れ出る。
以上のように、ピストン部30の移動速度が低速である場合、減衰力は、低速流路78の低速流路ラウンド78Rとコントロールバルブ70との隙間によってオイルの流れが絞られることによって発生する。
【0094】
(高速時)
図8(B)に示すように、ピストン部30(図1参照)の移動速度が高速である場合、内側流路91に流れたオイルは、流入流路81およびメイン流路53に流れ込む。メイン流路53に流れ込んだオイルは、メインバルブ51を開いてリザーバ室Rに流れ出る。
なお、移動速度が高速である場合も、流入流路81に流れ込んだオイルは、低速時と同様に、低速流路ラウンド78R(図6(A)および図6(B)参照)とコントロールバルブ70との隙間によって流量を絞られることによって差圧を発生させながらハウジング内流路111まで流れ、さらにリザーバ室Rに流れ出る。
【0095】
以上のように、ピストン部30の移動速度が高速である場合、減衰力は、主に、メインバルブシート52のメイン流路53におけるオイルの流れにより発生する。
【0096】
また、流入流路81に流れ込んだオイルは、背圧オリフィス流路84および背圧連絡路83を通じて、背圧室68Pに圧力を伝達する。ただし、背圧室68Pに連絡する背圧流路77は、コントロールバルブ70によって開かれた状態になっている。そのため、背圧室68Pの圧力は、背圧流路77に対してコントロールバルブ70が押さえ付けられた状態の場合と比較して低くなっている。そして、背圧生成機構68に接触しているメインバルブ51は、メイン流路53を比較的開き易くなっている。従って、押付部材65の押付力が比較的小さい状態では、メインバルブ51を開くメイン流路53におけるオイルの流れにより発生する減衰力は、比較的小さくなる。
【0097】
次に、押付部材65の押付力が比較的大きい状態でのオイルの流れを説明する。
なお、以下では、コントロールバルブ70が、背圧流路ラウンド77Rおよび低速流路ラウンド78Rに押さえ付けられた状態の例を用いて説明する。
【0098】
図9は、第1実施形態の外側減衰部100におけるオイルの流れの説明図である。なお、図9(A)は、押付部材65の押付力が比較的大きい状態であって低速時のオイルの流れを示し、図9(B)は、押付部材65の押付力が比較的大きい状態であって高速時のオイルの流れを示す。
【0099】
(低速時)
図9(A)に示すように、ピストン部30の移動速度が低速である場合、内側流路91に流れたオイルは、流入流路81およびメイン流路53に流れ込む。ここで、ピストン部30の移動速度が低速であるため、メインバルブ51を開いてメイン流路53を流れるオイルの流れは生じない。
一方、流入流路81に流れ込んだオイルは、低速連絡路85を通り、低速流路78に流れる。そして、オイルは、コントロールバルブ70を開きながら低速流路78および低速流路ラウンド78R(図6(A)および図6(B)参照)を流れる。さらに、オイルは、主に外側開口部74(図6(A)および図6(B)参照)、第2開口部67H2およびキャップ流路67Rの順に流れる。そして、オイルは、ハウジング内流路111からリザーバ室Rに流れ出る。
【0100】
以上のように、ピストン部30(図1参照)の移動速度が低速である場合、減衰力は、コントロールバルブシート75の低速流路ラウンド78Rにおいてオイルがコントロールバルブ70を開きながら流れることにより発生する。この低速流路ラウンド78Rを流れる際の減衰力は、低速流路ラウンド78Rに対してコントロールバルブ70が離れている場合と比較して高くなる。
【0101】
(高速時)
図9(B)に示すように、ピストン部30の移動速度が高速である場合、内側流路91に流れたオイルは、流入流路81およびメイン流路53に流れ込む。メイン流路53に流れ込んだオイルは、メインバルブ51を開いてリザーバ室Rに流れ出る。
なお、移動速度が高速である場合も、流入流路81に流れ込んだオイルは、進退部材65の押付力が比較的小さい時と同様に、低速流路ラウンド78R(図6(A)および図6(B)参照)とコントロールバルブ70との隙間によって流量を絞られることによって差圧を発生させながらハウジング内流路111まで流れ、さらにリザーバ室Rに流れ出る。
以上のように、ピストン部30の移動速度が高速である場合、減衰力は、主に、メインバルブシート52のメイン流路53におけるオイルの流れにより発生する。
【0102】
また、流入流路81に流れ込んだオイルは、背圧オリフィス流路84および背圧連絡路83を通じて、背圧室68Pに圧力を伝達する。そして、背圧室68Pに連絡する背圧流路77は、コントロールバルブ70により押さえ付けられた状態になっている。そのため、背圧室68Pの圧力は、背圧流路77が開かれた状態の場合と比較して高くなる。そして、背圧生成機構68に接触しているメインバルブ51は、メイン流路53を比較的開き難くなっている。従って、押付部材65の押付力が比較的高い状態では、メインバルブ51を開くメイン流路53におけるオイルの流れにより発生する減衰力は、比較的大きくなる。
【0103】
上述したように、第1実施形態の油圧緩衝装置1では、押付部材65を操作することで、低速時における減衰力の調整と、高速時における減衰力の調整との両方を行うようにしている。すなわち、第1実施形態の油圧緩衝装置1は、押付部材65によってコントロールバルブシート75に対するコントロールバルブ70の押付力を変更することで、低速時におけるオイルの流路である低速流路78の流路面積と、高速時におけるオイルの流路面積に係わる背圧室68Pの圧力を調整する背圧流路77の流路面積とを調整する。
【0104】
また、第1実施形態の油圧緩衝装置1では、単一のコントロールバルブ70によって背圧流路77におけるオイルの流れと低速流路78におけるオイルの流れとを同時に制御することができる。特に、第1実施形態の油圧緩衝装置1では、低速流路78における低速時のオイルの流れを制御できるため、メインバルブ51がメイン流路53を開くとき(所謂、ブローポイント)の調整ができるようになり、従来技術よりも、きめの細かい減衰力の制御が可能になっている。
【0105】
なお、上述した動作例では、押付部材65の押付力が比較的大きい状態と比較的小さい状態との2パターンについて説明したが、上述した2パターンに限定されない。ソレノイド部62に対する電流量に応じて押付部材65の押付力を調整可能な範囲で任意に設定することができる。そして、この設定に伴って、第1実施形態の減衰力調整部60では、低速時における減衰力と高速時における減衰力とについても複数段階の調整が可能になる。
【0106】
次に、ソレノイド部62が非通電状態となっている場合におけるオイルの流れを説明する。
図10は、外側減衰部100におけるオイルの流れの説明図である。なお、図10(A)は、ソレノイド部62が非通電状態であって低速時のオイルの流れを示し、図10(B)は、ソレノイド部62が非通電状態であって高速時のオイルの流れを示す。
【0107】
図10(A)および図10(B)に示すように、ソレノイド部62が非通電状態であると、圧縮コイルバネ63によってプランジャ64が第2軸外側に押し戻される。これに伴って、プランジャ64に固定された押付部材65は、キャップ部67に押し付けられた状態になる。
【0108】
(低速時)
図10(A)に示すように、ピストン部30の移動速度が低速である場合、図8(A)を参照しながら説明したオイルの流れと同様に、流入流路81に流れ込んだオイルは、低速連絡路85、低速流路78、低速流路ラウンド78R、内側開口部73または外側開口部74(図6(A)および図6(B)参照)、溝部653、キャップ流路67Rの順に流れる。そして、オイルは、ハウジング内流路111に流れ出る。
そして、ピストン部30の移動速度が低速である場合、減衰力は、溝部653におけるオイルの流れにより発生する。第1実施形態では、溝部653の流路断面積は、低速流路78よりも小さくなっている。従って、溝部653におけるオイルの流れによって生じる減衰力は、例えば低速流路78におけるオイルの流れにより生じる減衰力よりも大きくなる。
【0109】
(高速時)
図10(B)に示すように、ピストン部30の移動速度が高速である場合、図8(B)を参照しながら説明したオイルの流れと同様に、内側流路91に流れたオイルは、流入流路81およびメイン流路53に流れ込む。メイン流路53に流れ込んだオイルは、メインバルブ51を開いてハウジング内流路111に流れ出る。
なお、移動速度が高速である場合も、流入流路81に流れ込んだオイルは、低速時と同様に、溝部653によって流量を絞られることによって差圧を発生させながらハウジング内流路111まで流れ、さらにリザーバ室Rに流れ出る。
以上のように、ピストン部30の移動速度が高速である場合、減衰力は、主に、メインバルブシート52のメイン流路53におけるオイルの流れにより発生する。
【0110】
ここで、流入流路81に流れ込んだオイルは、背圧オリフィス流路84および背圧連絡路83を通じて、背圧室68Pに圧力を伝達する。背圧室68Pは、背圧流路77を介してハウジング内流路111と連絡している。ここで、背圧室68Pとハウジング内流路111との間のオイルの流れは、溝部653を通る必要がある。そして、溝部653によってオイルの流れが絞られることで、背圧室68Pからのオイルの流出が抑制され、背圧室68Pの圧力が比較的高い状態に維持される。そして、隔壁部材681に接触しているメインバルブ51は、メイン流路53を比較的開き難くなっている。従って、ソレノイド部62が非通電状態では、メインバルブ51を開くメイン流路53におけるオイルの流れにより発生する減衰力は、比較的大きくなる。
【0111】
以上のとおり、第1実施形態の油圧緩衝装置1では、ソレノイド部62に通電が行われない状態になった場合であっても、低速時における減衰力および高速時における減衰力の両方が比較的高くなるようにしている。
【0112】
続いて、第1実施形態におけるメインバルブ部50にて発生する減衰力について詳細に説明する。
図11は、第1実施形態のメインバルブ部50の減衰力特性の説明図である。
【0113】
メインバルブシート52は、中央シート部520と、内側シート部521と、外側シート部522とを有している(図4および図5参照)。そして、内側シート部521には、溝部521Tが設けられている。そのため、内側シート部521の第2半径方向内側に設けられるメイン流路53を流れてきたオイルは、まず、中央シート部520と内側シート部521との間に流れ込む。さらに、オイルは、溝部521Tを通って、内側シート部521と外側シート部522との間に流れ込む。このとき、メインバルブ51は、内側シート部521および外側シート部522の両方に接触した状態である(以下、第1状態と呼ぶ)。
【0114】
その後、第1状態を経て、内側シート部521と外側シート部522との間にオイルが溜まることで、メインバルブ51が外側シート部522から離れた状態になる(以下、第2状態と呼ぶ)。このとき、メインバルブ51と外側シート部522との間におけるオイルの流路断面積は、溝部521Tのオイルの流路断面積よりも小さくなっている。従って、第2状態では、オリフィス特性の減衰力が発揮される。
【0115】
さらにその後、流量が大きくなってメイン流路53からオイルが流れ込むと、メインバルブ51が内側シート部521からも離れた状態になる(以下、第3状態と呼ぶ)。このとき、メインバルブ51と外側シート部522との間におけるオイルの流路断面積は、溝部521Tのオイルの流路断面積以上になっている。
【0116】
そして、図11に示すように、第1実施形態のメインバルブ部50における減衰力特性は、以下のようになる。第1状態は、メインバルブ51が内側シート部521および外側シート部522の両方に接触している状態から、メインバルブ51と外側シート部522との間に僅かな隙間が発生している状態までである。すなわち、第1状態は、外部へのオイルの流出が全くない状態から微小な流出のみが発生している状態までである。そのため、第1状態において発生する減衰力は、最も小さくなる。
【0117】
また、メインバルブ51が内側シート部521には接触し、外側シート部522から離れている第2状態においては、メインバルブ51の受圧面積が第2半径方向において中央シート部520から外側シート部522までとなる(図4参照)。そのため、第2状態において発生する減衰力は、第1状態より高く、第3状態より低くなる。また、第2状態では、流量に応じた減衰力の変化量は、第1状態および第3状態と比較して小さくなる。
【0118】
そして、メインバルブ51が内側シート部521および外側シート部522の両方に対して離れている第3状態においては、メインバルブ51の受圧面積が第2半径方向において中央シート部520から内側シート部521までとなる(図4参照)。そのため、第3状態において発生する減衰力は、第1状態および第2状態より高くなる。また、第3状態では、流量に応じた減衰力の変化量は、第1状態より小さく、第2状態より大きくなる。
【0119】
以上のとおり、第1実施形態のメインバルブ部50では、少なくとも一のメインバルブシート52に対して一のメインバルブ51を用いることで、流量に応じて減衰力が段階的に変化する減衰力特性が実現される。
特に、第1実施形態のメインバルブ部50では、比較的シンプルな構造であるメインバルブ51およびメインバルブシート52によって、上述の減衰力特性を実現している。
【0120】
続いて、第1実施形態の油圧緩衝装置1の製造方法について説明する。以下では、第1実施形態の外側減衰部100の組立て方法について具体的に説明する。
図3に示すように、第1実施形態の外側減衰部100の組立てに際しては、まず、キャップ部67を準備する。そして、キャップ部67の第1開口部67H1側から押付部材65が取り付けられたプランジャ64を挿入し、第2開口部67H2に貫通させる。そして、押付部材65に圧縮コイルバネ63を嵌め込む。さらに、キャップ部67の第1開口部67H1側からコントロールバルブ70、コントロールバルブシート75および絞り部材79を、これらの順に挿入する。そして、第1実施形態では、コントロールバルブシート75をキャップ部67に挿入する。
【0121】
さらに、キャップ部67の第1開口部67H1側から連絡部80を挿入し、接続部89にコントロールバルブシート75の第2軸方向内側の端部を挿入する。そして、連絡部80に、スペーサ部材684、戻バネ683を取り付ける。また、キャップ部67の第1開口部67H1側からシール部材682、隔壁部材681、メインバルブ51をこれらの順に挿入し、これらの部品を取り付ける。そして、キャップ部67の第1開口部67H1側からメインバルブシート52を挿入し、メインバルブシート52の開口部52Hに連絡部80を挿入する。
以上のようにして、キャップ部67の内部に各種の部品を収容することで、メインバルブ部50および減衰力調整部60を一纏めにする。
【0122】
そして、キャップ部67の内部に収容する各種部品のキャップ部67における保持は、キャップ部67の第2軸内側の端部を加締めたり、キャップ部67にメインバルブシート52をネジ締結したり、キャップ部67にメインバルブシート52を圧入したりすることで、行うことができる。
【0123】
さらに、図2に示すように、外側ハウジング100Cの第2軸外側から接続流路部90、キャップ部67により一纏めになったメインバルブ部50および減衰力調整部60を、これらの順に挿入する。さらに、外側ハウジング100Cの第2軸外側から、ソレノイドケース60Cを挿入し、ソレノイドケース60Cを外側ハウジング100Cにネジ締結や圧入等によって固定する。そして、ソレノイドケース60Cにソレノイド部62を嵌め込むことで、外側減衰部100の組立てが完了する。
【0124】
また、組立てが完了した外側減衰部100は、接続流路部90が外筒体12の外側接続部12Jを貫通するように取り付けられ、例えば溶接等によってダンパケース13に固定される。
【0125】
上述のとおり、第1実施形態の油圧緩衝装置1は、キャップ部67の内部に、メインバルブ部50を構成するメインバルブ51や、減衰力調整部60を構成するコントロールバルブ70を収容する。このように、一のキャップ部67内にメインバルブ51やコントロールバルブ70を一纏めに収容する構成を採用することで、キャップ部67の単位で取扱うことができるため、油圧緩衝装置1の組立性が向上する。
【0126】
<第1変形例>
次に、第1変形例が適用される油圧緩衝装置1について説明する。
図12は、第1変形例の油圧緩衝装置1の説明図である。なお、図12(A)は、第1変形例のメインバルブ部50および減衰力調整部60の部分断面図であり、図12(B)は、第1変形例のシール部材682の上面図である。
【0127】
図12(A)に示すように、第1変形例の外側減衰部100は、シール部材682に代えて、シール部材1682を備えている。
シール部材1682の基本構成は、シール部材682と同様である。ただし、シール部材1682は、内周面682Nから第2半径方向内側に向けて突出する複数の突出部682P(突出部の一例)を有している。複数の突出部682Pは、シール部材1682の周方向において略等間隔に離れて設けられる。
そして、図12(B)に示すように、シール部材1682は、突出部682Pが隔壁部材681の第1面S1に接触するように設けられる。
【0128】
図4を参照しながら説明したように、外側減衰部100では、シール部材1682と隔壁部材681との間に隙間C2を設けることで、シール部材1682がキャップ部67の内周に押し付けられるようにしている。ただし、隔壁部材681は、例えばメインバルブ51が片浮きしてメインバルブ51と共に傾いてしまったとしても、キャップ部67に対してかじり等が発生しないように、キャップ部67に対しても隙間C1を有している。従って、隔壁部材681は、第2半径方向においても移動する可能性がある。そこで、第1変形例の外側減衰部100は、シール部材1682の突出部682Pによって、第2半径方向内側において隔壁部材681を位置決めしている。
【0129】
<第2変形例>
次に、第2変形例が適用される油圧緩衝装置1について説明する。
図13は、第2変形例の油圧緩衝装置1の説明図である。
図13に示すように、第2変形例の外側減衰部100は、戻バネ683に代えて、戻バネ1683を備えている。
戻バネ1683の基本構成は、戻バネ683と同様である。ただし、戻バネ1683は、スペーサ部材684によって固定される環状部683Rの位置と、シール部材682に接触する腕部683Aが位置とが第2軸方向において略同じになっている。
【0130】
そして、第2変形例の外側減衰部100は、メインバルブ51が変形して第2軸外側に移動したときに、戻バネ1683のバネ力がシール部材682および隔壁部材681に作用するようにしている。これによって、第2変形例の油圧緩衝装置1では、戻バネ1683が常に変形した状態に維持されるのではなく、メインバルブ51が動作したときにだけ変形するようにしている。そして、第2変形例の外側減衰部100では、戻バネ1683が塑性変形することを抑制している。
【0131】
<第2実施形態>
続いて、第2実施形態の油圧緩衝装置1について説明する。
図14は、第2実施形態の外側減衰部200の断面図である。
図15は、第2実施形態のメインバルブ部250および減衰力調整部260の部分断面図である。
図16は、第2実施形態のメインバルブシート55の説明図である。
図17は、第2実施形態の背圧生成機構69の説明図である。
なお、第2実施形態の説明において、第1実施形態と同様な構成については同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0132】
図14に示すように、外側減衰部200は、第2実施形態の油圧緩衝装置1において主に減衰力を発生させるメインバルブ部250と、外側減衰部200にて発生させる減衰力の大きさを調整する減衰力調整部260と、を備える。さらに、外側減衰部200は、メインバルブ部250に対して連絡路Lからのオイルの流路を形成する接続流路部90と、外側減衰部200を構成する各種の部品を収容する外側ハウジング100Cを備える。
【0133】
(メインバルブ部250)
図15に示すように、メインバルブ部250は、オイルの流れを絞るように制御することで減衰力を発生させるメインバルブ51と、メインバルブ51と対向しメインバルブ51が接触するメインバルブシート55と、を有する。
【0134】
図16に示すように、メインバルブシート55は、第2半径方向内側に開口部55Hを有する円柱形状の部材である。そして、メインバルブシート55は、開口部55Hの一部に後述するコントロールバルブシート275の流入部281が挿入される(図15参照)。
【0135】
また、図16に示すように、メインバルブシート55は、開口部55Hの周囲に中央シート部550を有する。そして、メインバルブシート55は、中央シート部550よりも第2半径方向外側に設けられる内側シート部551と、内側シート部551よりも第2半径方向外側に設けられる外側シート部552と、を有する。さらに、メインバルブシート55は、中央シート部550の第2半径方向外側であって内側シート部551の第2半径方向内側に共用部553を有する。
そして、メインバルブシート55は、開口部55Hの第2半径方向外側に、第2軸方向に貫通するメイン流路53を有する。
【0136】
中央シート部550は、円弧状に形成されている。また、中央シート部550は、メインバルブ51側(本実施形態では、第2軸外側)に向けて、流路口532よりも突出している。そして、中央シート部550には、メインバルブ51における第2半径方向内側の箇所が対向する。
【0137】
内側シート部551は、円弧状に形成されている。そして、内側シート部551は、メインバルブ51側に向けて、流路口532よりも突出している。また、第2実施形態では、内側シート部551の突出高さは、中央シート部550および外側シート部552と略等しくなっている。
外側シート部552は、U字状に形成されている。そして、外側シート部552は、メインバルブ51側に向けて、流路口532よりも突出している。また、第2実施形態のメインバルブシート55では、内側シート部551と外側シート部552とが接続している。
【0138】
共用部553(共用部の一例)は、メインバルブ51側に向けて直線状に突出している。また、各々の共用部553は、第2半径方向に略平行に延びている。共用部553は、中央シート部550と内側シート部551および外側シート部552の接続箇所とに接続している。そして、共用部553は、内側シート部551と外側シート部552とに共用されてメインバルブ51と接触する箇所を形成する。
【0139】
さらに、第2実施形態のメインバルブシート55において、共用部553は、溝部553T(流通部の一例)を有する。各々の溝部553Tの流路断面積は、比較的小さく形成されている。すなわち、溝部553Tは、所謂オリフィス流路を構成する。そして、各々の溝部553Tは、共用部553にメインバルブ51が接触した状態で、メイン流路53から中央シート部550と内側シート部551との間に流れたオイルが、中央シート部550と外側シート部552との間に流通することを可能にする。
【0140】
図15に示すように、メイン流路53は、コントロールバルブシート275の背圧流路77および低速流路78に対して並列流路を構成する。また、第2実施形態のメイン流路53は、複数設けられる。そして、各々のメイン流路53の第2軸内側の流路口531は、開口部55Hに連絡するとともに、接続流路部90と対向する。また、各々のメイン流路53の第2軸外側の流路口532は、中央シート部550および内側シート部551との間に位置する(図16参照)。
【0141】
以上のように構成される第2実施形態のメインバルブ部250においても、第1実施形態のメインバルブ部50と同様に、流量に応じて減衰力が段階的に変化する減衰力特性が実現される。
【0142】
(減衰力調整部260)
図15に示すように、減衰力調整部260は、コントロールバルブ70をコントロールバルブシート275に対して進退させる進退部261と、メインバルブシート55に対するメインバルブ51の変形し易さを変更する背圧生成機構69とを有している。また、減衰力調整部260は、メインバルブ部50などの各種部品を覆うキャップ部267と、コントロールバルブ70と、コントロールバルブシート275と、を有する。さらに、減衰力調整部260は、コントロールバルブ70の第2軸外側に、コントロールバルブ70を支持するバルブ保持部材367を有している。
【0143】
そして、第2実施形態の減衰力調整部260の基本構成は、第1実施形態の減衰力調整部60と同様である。ただし、第2実施形態の減衰力調整部260は、キャップ部267が第1実施形態のキャップ部67と異なる。
【0144】
図14に示すように、第2実施形態のキャップ部267(収容部の一例)は、第2軸内側に形成される第1開口部267H1と、第1開口部267H1よりも第2軸外側に形成される第2開口部267H2と、第2開口部267H2よりも第2軸外側に形成される第3開口部267H3と、を有する。そして、キャップ部267は、第2軸方向において第1開口部267H1から第2開口部267H2までの部分である第1キャップ部2671と、第2軸方向において第2開口部267H2から第3開口部267H3までの部分である第2キャップ部2672と、を有している。
【0145】
第1キャップ部2671は、概形が円筒状に形成されている。また、第1開口部267H1の第1内径は、第2開口部267H2の第2内径よりも大きく形成されている。さらに、第1キャップ部2671の内部には、それぞれ内径が異なる複数の内径部が形成されている。第1キャップ部2671において、複数の内径部のうち、第2軸内側に設けられる内径部は、第2軸外側に設けられる内径部よりも内径が大きくなるように形成されている。そして、第1キャップ部2671は、少なくともメインバルブ部250のメインバルブ51(バルブの一例)、およびコントロールバルブ70(背圧制御バルブの一例を収容する。
【0146】
第2キャップ部2672(拡張収容部の一例)は、概形が円筒状に形成されている。また、第3開口部267H3の第3内径は、第2開口部267H2の第2内径よりも大きく形成されている。そして、第2キャップ部2672は、第2開口部267H2から第2軸外側に向けて延出することで、第1キャップ部2671から拡張するように形成される。そして、第2キャップ部2672は、ソレノイド部62(動作部の一例)およびプランジャ64を収容する。
【0147】
以上のように構成される第2実施形態のキャップ部267は、複数に分割された部品によって構成されず、単体で、ソレノイド部62、プランジャ64、メインバルブ部250のメインバルブ51、およびコントロールバルブ70を収容する。
また、第2実施形態のキャップ部267の一部は、背圧生成機構69およびコントロールバルブシート275と共に、背圧室68Pを形成する。
【0148】
そして、第2実施形態においても、一のキャップ部267内にメインバルブ51やコントロールバルブ70を一纏めに収容することで、キャップ部267の単位で取扱うことができるため、油圧緩衝装置1の組立性が向上する。
【0149】
第2実施形態の押付部材65は、溝部653を有している。そして、第2実施形態の溝部653は、ソレノイド部62の非通電状態の発生時に、押付部材65が第2軸外側に移動してバルブ保持部材367またはキャップ部267に接触した状態で、押付部材65とバルブ保持部材367またはキャップ部267との間におけるオイルの流れを可能にする。
なお、第2実施形態においても、上述したソレノイド部62の非通電状態の発生時におけるバルブ保持部材367またはキャップ部267と押付部材65との間のオイルの流れを生じさせるために、バルブ保持部材367またはキャップ部267に溝部や貫通孔を設けても良い。
【0150】
−背圧生成機構69−
図15に示すように、背圧生成機構69は、メインバルブ51に対してメインバルブシート55の反対側(第2軸外側)に設けられる接触部材691と、キャップ部267と接触部材691との間をシールするシール部材692と、を有する。さらに、背圧生成機構69は、接触部材691およびシール部材692をメインバルブ51に押し付ける力を接触部材691およびシール部材692に付与する戻バネ693と、戻バネ693とコントロールバルブシート275と間に介在するスペーサ部材694と、を有する。
【0151】
図17に示すように、接触部材691は、例えば鉄などの金属を用いた弾性部材である。そして、接触部材691は、第2半径方向内側にて環状に形成される内側環状部691Uと、内側環状部691Uの第2半径方向外側にて環状に形成される外側環状部691Sと、を有している。また、接触部材691は、第2半径方向に延びて、内側環状部691Uおよび外側環状部691Sを接続する接続部691Jと、メインバルブ51に接触するメインバルブ接触部691Vと、を有する。そして、第2実施形態の接触部材691は、全体として、板状に形成された部品となっている。
【0152】
図15に示すように、内側環状部691Uには、コントロールバルブシート275の流入部281(後述)が挿入される。そして、内側環状部691Uは、スペーサ部材694とメインバルブ51とに挟み込まれて固定される。
外側環状部691Sは、第2軸外側にてシール部材692が接触する。
メインバルブ接触部691Vは、接触部材691において外側環状部691Sに対応する箇所に設けられる。そして、メインバルブ接触部691Vは、メインバルブ51に向けて環状に突出している。第2実施形態のメインバルブ接触部691Vは、メインバルブ51に対して、内側シート部551の対向箇所よりも第2半径外側であって外側シート部552の対向箇所よりも第2半径方向内側に接触する。
【0153】
図17に示すように、シール部材692は、環状に形成されている。また、シール部材692には、エンジニアプラスティックやゴムなどの弾性変形する樹脂材料を用いることができる。そして、図15に示すように、シール部材692は、接触部材691とキャップ部267との間をシールする。より詳細には、シール部材692は、外周面692Gがキャップ部267の内周に接触する。また、シール部材692は、第2軸内側の第1端面692T1が接触部材691の外側環状部691Sと接触する。これによって、シール部材692は、背圧室68P内のオイルが、接触部材691とキャップ部267との間を通って背圧室68P外に流出することを抑制する。
【0154】
また、図17に示すように、第2実施形態のシール部材692は、第2軸内側の第1端面692T1と第2軸外側の第2端面692T2とに、それぞれ、凹部69K(液体溜まり部の一例)を有している。凹部69Kは、シール部材692の環状に形成される第1凹部K1と、第2半径方向外側から第1凹部K1に向けて線状に形成される第2凹部K2とを有する。
【0155】
ここで、シール部材692の第2端面692T2には、背圧室68Pにおける高いオイル圧が掛かる。一方、シール部材692の第1端面692T1には、背圧室68Pよりも低いオイル圧が掛かる。そして、第2実施形態のシール部材692は、第1端面692T1に凹部69Kを設けることによって、第1端面692T1に低いオイル圧が掛かる面積を、凹部69Kを設けない場合よりも大きくしている。これによって、シール部材692は、第1端面692T1側と第2端面692T2側のオイル圧の圧力差により、接触部材691に対する押付力が高められる。
【0156】
なお、第2実施形態のシール部材692は、接触部材691と接触しない側である第2端面692T2に凹部69Kを有しているが、上述した圧力差を生じさせるという点においては、第2端面692T2の凹部69Kは、必須の構成ではない。ただし、第1端面692T1および第2端面692T2の両方に凹部69Kを設けておくことで、油圧緩衝装置1の組立ての際に、接触部材691に対するシール部材692の向きを考慮せずに取り付けることが可能になる。
【0157】
また、第2実施形態では、シール部材692に凹部69Kを設けることで、シール部材692と接触部材691との間にオイルが流入するように構成しているが、この態様に限定されない。例えば、接触部材691(背圧室形成部の一例)は、シール部材692と対向する側である第2軸外側の端面に、オイルが流入する溝部(液体溜まり部の一例)を有していても良い。この場合であっても、シール部材692は、第1端面692T1側と第2端面692T2側のオイル圧の圧力差により、接触部材691に対する押付力が高められる。
【0158】
図17に示すように、戻バネ693(弾性部材の一例)は、第2半径方向外側にて環状に形成される環状部693R(環状部の一例)と、環状部693Rから第2半径方向内側に向けて延びる複数の腕部693Aと、を有している。また、戻バネ693の材料には、金属などの弾性部材を用いることができる。
そして、腕部693Aは、第2半径方向内側の端部がスペーサ部材694に支持される。また、環状部693Rは、シール部材692の第2軸外側に接触する。
【0159】
第2実施形態において、戻バネ693の腕部693Aは、第2半径方向に沿った成分の力によって、シール部材692をキャップ部267に押し付ける。これによって、第2実施形態においても、シール部材692とキャップ部267とのシール性が高められる。
【0160】
−コントロールバルブシート275−
図15に示すように、第2実施形態のコントロールバルブシート275の基本構成は、第1実施形態のコントロールバルブシート75と同様である。ただし、第2実施形態のコントロールバルブシート275は、第1実施形態の絞り部材79および連絡部80の機能を一体的に有している。
【0161】
第2実施形態のコントロールバルブシート275は、外側シート部76と、背圧流路77と、低速流路78と、を有する。なお、第2実施形態のコントロールバルブシート275は、背圧流路77と低速流路78との第2半径方向における位置関係が、第1実施形態のコントロールバルブシート75とは逆になっている。また、この位置関係に応じて、コントロールバルブ70における第1対向部71と第2対向部72との機能についても、第2実施形態のコントロールバルブ70は、第1実施形態のコントロールバルブ70とは逆の関係になる。
【0162】
また、第2実施形態のコントロールバルブシート275は、連絡路Lからオイルが流入する流入部281と、流入部281と背圧室68Pとをつなぐ第1背圧連絡路283と、を有する。コントロールバルブシート275は、第1背圧連絡路283に設けられてオイルの流れを絞る絞り部279と、背圧室68Pと背圧流路77とをつなぐ第2背圧連絡路285と、を有する。
【0163】
流入部281は、第2軸内側にてメインバルブシート55の開口部55Hに連絡し、第2軸外側にて低速流路78に連絡する。
第1背圧連絡路283は、第2半径方向内側にて流入部281に連絡し、第2半径方向外側にて背圧室68Pに連絡する。
絞り部279は、オイルの流路断面積が第1背圧連絡路283および背圧流路77よりも小さく形成される。そして、絞り部279は、背圧室68P内のオイルが流入部281に戻り難くしている。
第2背圧連絡路285は、第2軸内側にて背圧室68Pに連絡し、第2軸外側にて低速流路78に連絡する。
【0164】
以上のように構成される第2実施形態の油圧緩衝装置1においても、押付部材65を操作することで、低速時における減衰力の調整と、高速時における減衰力の調整との両方を行うことができる。
【0165】
<第3変形例>
次に、第3変形例が適用される油圧緩衝装置1について説明する。
図18は、第3変形例の油圧緩衝装置1の説明図である。
【0166】
第3変形例の外側減衰部200は、第2実施形態の接触部材691を備えていない点が上述した例とは異なる。
図18に示すように、第3変形例のシール部材692は、メインバルブ51に直接的に接触している。そして、第3変形例において、シール部材692は、接触部材691(背圧室形成部の一例)の機能を兼ねることで、シール部材692自体が背圧室68Pを形成する主要な部品となっている。
【0167】
また、戻バネ693は、シール部材692の第2軸外側であって第2半径方向内側の角部に接触している。そして、戻バネ693は、シール部材692に対して、第2軸方向に沿った成分の力と、第2半径方向に沿った成分の力を付与する。これによって、シール部材692を、キャップ部267の内周に押付けるとともに、メインバルブ51に対しても押付ける。
【0168】
以上のように構成される第3変形例では、例えば第2実施形態の背圧生成機構69と比較して部品点数の削減を図ることができる。
【0169】
なお、第1実施形態、第2実施形態、第1変形例、第2変形例および第3変形例において、ピストン部30およびボトム部40は、上記の実施形態で示した構造に限らず、減衰機構としての機能を満たすのであれば、他の形状や他の構成でも良い。
また、第1実施形態、第2実施形態、第1変形例、第2変形例および第3変形例で説明した各々の構成部は、組み合わせたり、相互に入れ替えたりしても良い。
【0170】
さらに、シリンダ11の外部に設けられた外側減衰部100の機能を、シリンダ11の内部のピストン部30等に設けても良い。同様に、シリンダ11の外部に設けられた外側減衰部100の機能を、ボトム部40等に設けても良い。そして、第1実施形態、第2実施形態、第1変形例、第2変形例および第3変形例の油圧緩衝装置1は、シリンダ11、外筒体12およびダンパケース13のそれぞれ筒形状にて構成された所謂三重管構造に限定されず、シリンダ11とダンパケース13とによる所謂二重管構造であっても良い。
【符号の説明】
【0171】
1…油圧緩衝装置、11…シリンダ、20…ロッド、30…ピストン部、50…メインバルブ部、51…メインバルブ、52…メインバルブシート、53…メイン流路、60…減衰力調整部、65…押付部材、67…キャップ部、68…背圧生成機構、68P…背圧室、70…コントロールバルブ、75…コントロールバルブシート、100…外側減衰部、521…内側シート部、522…外側シート部、681…隔壁部材、682…シール部材、683…戻バネ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18