(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記低濃度不純物層の厚さが2.18μm以下でありかつ前記対角寸法が2.61mm以上2.69mm以下であるか、または、前記低濃度不純物層の厚さが2.18μm以上2.24μm以下でありかつ前記対角寸法が2.69mm以上である場合に、
前記比は0.94以上1.15以下である、請求項2に記載の半導体装置。
前記低濃度不純物層の厚さが2.18μm以下でありかつ前記対角寸法が3.55mm以上3.63mm以下であるか、または、前記低濃度不純物層の厚さが2.18μm以上2.24μm以下でありかつ前記対角寸法が3.63mm以上である場合に、
前記比は0.43以上0.70以下である、請求項4に記載の半導体装置。
前記低濃度不純物層の厚さが2.75μm以下でありかつ前記対角寸法が3.84mm以上3.92mm以下であるか、または、前記低濃度不純物層の厚さが2.75μm以上2.81μm以下でありかつ前記対角寸法が3.92mm以上である場合に、
前記比が0.33以上0.56以下である、請求項6に記載の半導体装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(本開示の基礎となった知見)
マルチトランジスタチップにおけるオン抵抗の低減およびチップ反りの抑制について検討する。
【0014】
先行技術文献において検討されている単一の縦型MOSトランジスタでは、ドレイン電流は、裏面電極を厚さ方向に貫通して流れるので、オン抵抗を低減するために、裏面電極を薄くする必要がある。これに対し、マルチトランジスタチップでは、ドレイン電流がトランジスタ間で裏面電極内を流れるので、裏面電極を厚くすることにより、2つのトランジスタ間での電流経路の断面積を増やして、全体的なオン抵抗を下げることができる。つまり、オン抵抗が低いマルチトランジスタチップを得るために、裏面電極の厚さを従来よりも厚くすることが有効である。
【0015】
ただし、裏面電極は、一般的に、銀などの金属材料で構成され、金属材料はシリコンと比べて熱膨張係数が大きい。そのため、裏面電極を厚くすると半導体装置は反りやすくなる。したがって、低いオン抵抗を得ようとして裏面電極を厚くする場合、反りの抑制についても十分に検討される必要がある。
【0016】
単一の縦型MOSトランジスタにおいて裏面電極を厚くすることは、オン抵抗の低減に逆行するため、先行技術文献では、20μmを超える厚い裏面電極を有する半導体装置に関して反りを抑制するための好適な構造は検討されていない。また、先行技術文献に開示されているオン抵抗の具体例も、3mΩ程度にとどまる。
【0017】
そこで、本発明者は、鋭意検討の結果、従来よりも厚い厚さ30μm前後の裏面電極を有するマルチトランジスタチップについて、オン抵抗を所定の目標値以下に低減する第1の寸法要件および電極形状、およびチップ反りを所定の目標値以下に抑制する第2の寸法要件を見出すに至った。オン抵抗の目標値は、3mΩ未満の極めて低い値に設定され、第1および第2の寸法要件は、裏面電極の半導体基板に対する厚さの比に関する規定を含む。
【0018】
(開示される半導体装置の態様)
本開示に係る半導体装置の一態様は、シリコンからなり第1導電型の不純物を含む半導体基板と、前記半導体基板上に接して形成され、前記半導体基板の前記第1導電型の不純物の濃度より低い濃度の前記第1導電型の不純物を含む低濃度不純物層と、前記半導体基板の裏面上に接して形成された金属材料で構成された裏面電極と、前記低濃度不純物層内の第1の領域に形成された第1の縦型MOSトランジスタと、前記低濃度不純物層内の前記第1の領域に隣接する第2の領域に形成された第2の縦型MOSトランジスタと、を有し、前記第1の縦型MOSトランジスタは前記低濃度不純物層の表面に第1のソース電極と第1のゲート電極を有し、前記第2の縦型MOSトランジスタは前記低濃度不純物層の表面に第2のソース電極と第2のゲート電極を有し、前記半導体基板は、前記第1の縦型MOSトランジスタの第1のドレイン領域および前記第2の縦型MOSトランジスタの第2のドレイン領域の共通ドレイン領域として働き、前記裏面電極の厚さは25μm以上35μm以下であり、前記裏面電極の前記半導体基板と前記低濃度不純物層とを含む半導体層に対する厚さの比は0.32以上である。
【0019】
この構成によれば、実施の形態に係るモデルA、B、およびCのいずれのマルチトランジスタチップであっても、オン抵抗Rが、当該モデルのオン抵抗規格最大値以下に収まる。
【0020】
また、前記比は0.56以下であってもよい。
【0021】
この構成によれば、実施の形態に係るモデルA、B、およびCのいずれのマルチトランジスタチップであっても、オン抵抗Rが、当該モデルのオン抵抗規格最大値以下に収まり、かつチップ反りがチップ反り規格最大値以下に収まる。
【0022】
また、前記低濃度不純物層の厚さは2.75μm以上であってもよい。
【0023】
この構成によれば、実施の形態に係るモデルA、B、およびCのマルチトランジスタチップにおいて、20Vのドレイン耐圧が得られる。
【0024】
また、本開示に係る半導体装置の一態様は、シリコンからなり第1導電型の不純物を含む半導体基板と、前記半導体基板上に接して形成され、前記半導体基板の前記第1導電型の不純物の濃度より低い濃度の前記第1導電型の不純物を含む低濃度不純物層と、前記半導体基板の裏面上に接して形成された金属材料で構成された裏面電極と、前記低濃度不純物層内の第1の領域に形成された第1の縦型MOSトランジスタと、前記低濃度不純物層内の前記第1の領域に隣接する第2の領域に形成された第2の縦型MOSトランジスタと、を有し、前記第1の縦型MOSトランジスタは前記低濃度不純物層の表面に第1のソース電極と第1のゲート電極を有し、前記第2の縦型MOSトランジスタは前記低濃度不純物層の表面に第2のソース電極と第2のゲート電極を有し、前記半導体基板は、前記第1の縦型MOSトランジスタの第1のドレイン領域および前記第2の縦型MOSトランジスタの第2のドレイン領域の共通ドレイン領域として働き、前記裏面電極の厚さは25μm以上35μm以下であり、前記半導体基板の平面視における対角寸法をLmmとするとき、前記裏面電極の前記半導体基板と前記低濃度不純物層とを含む半導体層に対する厚さの比は(−0.48×L+2.45)以下である。
【0025】
この構成によれば、実施の形態に係る対角長Lなるマルチトランジスタチップにおいて、チップ反りがチップ反り規格最大値以下に収まる。
【0026】
また、本開示に係る半導体装置の一態様は、シリコンからなり第1導電型の不純物を含む半導体基板と、前記半導体基板上に接して形成され、前記半導体基板の前記第1導電型の不純物の濃度より低い濃度の前記第1導電型の不純物を含む低濃度不純物層と、前記半導体基板の裏面上に接して形成された金属材料で構成された裏面電極と、前記低濃度不純物層内の第1の領域に形成された第1の縦型MOSトランジスタと、前記低濃度不純物層内の前記第1の領域に隣接する第2の領域に形成された第2の縦型MOSトランジスタと、を有し、前記第1の縦型MOSトランジスタは前記低濃度不純物層の表面に第1のソース電極と第1のゲート電極を有し、前記第2の縦型MOSトランジスタは前記低濃度不純物層の表面に第2のソース電極と第2のゲート電極を有し、前記半導体基板は、前記第1の縦型MOSトランジスタの第1のドレイン領域および前記第2の縦型MOSトランジスタの第2のドレイン領域の共通ドレイン領域として働き、前記裏面電極の厚さは25μm以上35μm以下であり、前記半導体基板の平面視における対角寸法をLmmとするとき、前記裏面電極の前記半導体基板と前記低濃度不純物層とを含む半導体層に対する厚さの比は(−0.48×L+2.07)以上である。
【0027】
この構成によれば、実施の形態に係る対角長Lなるマルチトランジスタチップにおいて、オン抵抗Rがオン抵抗規格標準値以下に収まる。
【0028】
また、前記比は(−0.48×L+2.07)以上かつ(−0.48×L+2.45)以下であってもよい。
【0029】
この構成によれば、実施の形態に係る対角長Lなるマルチトランジスタチップにおいて、オン抵抗がオン抵抗規格標準値以下に収まり、かつチップ反りがチップ反り規格最大値以下に収まる。
【0030】
また、前記低濃度不純物層の厚さが2.18μm以下であり、かつ、前記半導体基板の平面視における対角寸法が2.69mm以上である場合に、前記比は0.78以上であってもよい。
【0031】
この構成によれば、実施の形態に係るモデルAのマルチトランジスタチップにおいて、オン抵抗規格標準値が達成される。
【0032】
また、前記低濃度不純物層の厚さが2.18μm以下でありかつ前記対角寸法が2.61mm以上2.69mm以下であるか、または、前記低濃度不純物層の厚さが2.18μm以上2.24μm以下でありかつ前記対角寸法が2.69mm以上である場合に、前記厚さの比は0.94以上であってもよい。
【0033】
この構成によれば、実施の形態に係るモデルAのマルチトランジスタチップで所定の寸法誤差があっても、オン抵抗Rが、モデルAのオン抵抗規格標準値以下に収まる。
【0034】
また、前記低濃度不純物層の厚さが2.18μm以下であり、かつ、前記半導体基板の平面視における対角寸法が3.63mm以上である場合に、前記厚さの比は0.33以上であってもよい。
【0035】
この構成によれば、実施の形態に係るモデルCのマルチトランジスタチップにおいて、オン抵抗規格標準値が達成される。
【0036】
また、前記低濃度不純物層の厚さが2.18μm以下でありかつ前記対角寸法が3.55mm以上3.63mm以下であるか、または、前記低濃度不純物層の厚さが2.18μm以上2.24μm以下でありかつ前記対角寸法が3.63mm以上である場合に、前記比は0.43以上であってもよい。
【0037】
この構成によれば、実施の形態に係るモデルCのマルチトランジスタチップで所定の寸法誤差があっても、オン抵抗Rが、モデルCのオン抵抗規格標準値以下に収まる。
【0038】
また、前記比は0.70以下であってもよい。
【0039】
この構成によれば、実施の形態に係るモデルCのマルチトランジスタチップにおいて、チップ反り規格最大値が達成される。
【0040】
また、前記低濃度不純物層の厚さが2.75μm以下であり、かつ、前記半導体基板の平面視における対角寸法が3.92mm以上である場合に、前記比が0.25以上であってもよい。
【0041】
この構成によれば、実施の形態に係るモデルBのマルチトランジスタチップにおいて、オン抵抗規格標準値が達成される。
【0042】
また、前記低濃度不純物層の厚さが2.75μm以下でありかつ前記対角寸法が3.84mm以上3.92mm以下であるか、または、前記低濃度不純物層の厚さが2.75μm以上2.81μm以下でありかつ前記対角寸法が3.92mm以上である場合に、前記比が0.33以上であってもよい。
【0043】
この構成によれば、実施の形態に係るモデルBのマルチトランジスタチップで所定の寸法誤差があっても、オン抵抗Rが、モデルBのオン抵抗規格標準値以下に収まる。
【0044】
また、前記比は0.56以下であってもよい。
【0045】
この構成によれば、実施の形態に係るモデルBのマルチトランジスタチップにおいて、チップ反り規格最大値が達成される。
【0046】
また、本開示に係る半導体装置の一態様は、シリコンからなり第1導電型の不純物を含む半導体基板と、前記半導体基板上に接して形成され、前記半導体基板の前記第1導電型の不純物の濃度より低い濃度の前記第1導電型の不純物を含む低濃度不純物層と、前記半導体基板の裏面上に接して形成された金属材料で構成された裏面電極と、前記低濃度不純物層内の第1の領域に形成された第1の縦型MOSトランジスタと、前記低濃度不純物層内の前記第1の領域に隣接する第2の領域に形成された第2の縦型MOSトランジスタと、を有し、前記第1の縦型MOSトランジスタは前記低濃度不純物層の表面に第1のソース電極と第1のゲート電極を有し、前記第2の縦型MOSトランジスタは前記低濃度不純物層の表面に第2のソース電極と第2のゲート電極を有し、前記半導体基板は、前記第1の縦型MOSトランジスタの第1のドレイン領域および前記第2の縦型MOSトランジスタの第2のドレイン領域の共通ドレイン領域として働き、前記第1のソース電極の前記裏面電極に対する厚さの比は0.28以下であり、前記第2のソース電極の前記裏面電極に対する厚さの比は0.28以下である。
【0047】
この構成によれば、裏面電極の厚さに対して第1および第2のソース電極の好適な厚さが規定されるので、導電性接合材との接合性、より低いオン抵抗、およびコスト削減をバランスよく達成したマルチトランジスタチップが得られる。
【0048】
また、本開示に係る半導体装置の一態様は、シリコンからなり第1導電型の不純物を含む半導体基板と、前記半導体基板上に接して形成され、前記半導体基板の前記第1導電型の不純物の濃度より低い濃度の前記第1導電型の不純物を含む低濃度不純物層と、前記半導体基板の裏面上に接して形成された金属材料で構成された裏面電極と、前記低濃度不純物層内の第1の領域に形成された第1の縦型MOSトランジスタと、前記低濃度不純物層内の前記第1の領域に隣接する第2の領域に形成された第2の縦型MOSトランジスタと、を有し、前記第1の縦型MOSトランジスタは前記低濃度不純物層の表面に第1のソース電極と第1のゲート電極を有し、前記第2の縦型MOSトランジスタは前記低濃度不純物層の表面に第2のソース電極と第2のゲート電極を有し、前記半導体基板は、前記第1の縦型MOSトランジスタの第1のドレイン領域および前記第2の縦型MOSトランジスタの第2のドレイン領域の共通ドレイン領域として働き、前記第1のソース電極と前記第2のソース電極とは、前記第1の領域と前記第2の領域との境界の全域に沿って配置されている。
【0049】
この構成によれば、2つの縦型MOSトランジスタ間を流れる電流の経路がより広くかつより短くなるので、マルチトランジスタチップのオン抵抗を低減できる。
【0050】
また、前記第1のソース電極と前記第2のソース電極との間隔が、前記第1のソース電極の幅および前記第2のソース電極の幅の何れよりも狭くてもよい。
【0051】
この構成によれば、2つの縦型MOSトランジスタ間を流れる電流の経路をさらに広くかつ短くできるので、マルチトランジスタチップのオン抵抗をより効果的に低減できる。
【0052】
また、前記第1のソース電極と前記第2のソース電極との間隔が、前記第1のソース電極の幅および前記第2のソース電極の幅の何れよりも広くてもよい。
【0053】
この構成によれば、はんだを配置しない領域を広く取ることができるので、2つの縦型MOSトランジスタ間を流れる電流の経路をより広くかつより短くしつつ、パターンショートを回避できる。
【0054】
また、本開示に係る半導体装置の一態様は、シリコンからなり第1導電型の不純物を含む半導体基板と、前記半導体基板上に接して形成され、前記半導体基板の前記第1導電型の不純物の濃度より低い濃度の前記第1導電型の不純物を含む低濃度不純物層と、前記半導体基板の裏面上に接して形成された金属材料で構成された裏面電極と、前記低濃度不純物層内の第1の領域に形成された第1の縦型MOSトランジスタと、前記低濃度不純物層内の前記第1の領域に隣接する第2の領域に形成された第2の縦型MOSトランジスタと、を有し、前記第1の縦型MOSトランジスタは前記低濃度不純物層の表面に第1のソース電極と第1のゲート電極を有し、前記第2の縦型MOSトランジスタは前記低濃度不純物層の表面に第2のソース電極と第2のゲート電極を有し、前記半導体基板は、前記第1の縦型MOSトランジスタの第1のドレイン領域および前記第2の縦型MOSトランジスタの第2のドレイン領域の共通ドレイン領域として働き、前記第1のソース電極は、前記第1の領域と前記第2の領域との境界と、前記第1の領域の前記境界の対向端である第1の対向端との間に、前記境界と交差する方向に並ぶ複数の第1のソース電極を含み、前記第1のゲート電極の中心点は、前記第1の領域の、前記境界から最遠の第1のソース電極の、前記境界に対する近端より前記第1の対向端側にあり、前記第2のソース電極は、前記境界と、前記第2の領域の前記境界の対向端である第2の対向端との間に、前記境界と交差する方向に並ぶ複数の第2のソース電極を含み、前記第2のゲート電極の中心点は、前記第2の領域の、前記境界から最遠の第2のソース電極の、前記境界に対する近端より前記第2の対向端側にある。
【0055】
この構成によれば、第1のゲート電極および第2のゲート電極が、境界からより遠くに配置されることとなるので、半導体基板にチップ反りが生じて境界の付近が実装基板から浮いた場合でも、第1のゲート電極および第2のゲート電極と実装基板との間ではんだオープンが起きにくい。
【0056】
また、本開示に係る半導体モジュールの一態様は、プリント配線基板と、前記プリント配線基板上に帯状に設けられ、長手方向に交差するギャップで第1の部分と第2の部分とに分離されている配線パターンと、前記ギャップ上に配置された前述の半導体装置と、を備え、前記半導体装置は、第1の領域と第2の領域とが前記配線パターンの長手方向に並ぶ向きで配置され、第1のソース電極および第2のソース電極は、前記配線パターンの前記第1の部分および前記第2の部分にそれぞれ接続されている。
【0057】
この構成によれば、配線幅を太くでき、配線抵抗を低減できる。また、電流経路が直線状となり、損失を低減できる。その結果、電力効率に優れた実装構造を有する半導体モジュールが得られる。
【0058】
また、本開示に係る半導体パッケージ装置の一態様は、前述の半導体装置が、第1のソース外部端子、第1のゲート外部端子、第2のソース外部端子、及び第2のゲート外部端子を有するパッケージに封止され、前記第1のソース外部端子、前記第1のゲート外部端子、前記第2のソース外部端子、及び前記第2のゲート外部端子は、前記半導体装置の前記第1のソース電極、前記第1のゲート電極、前記第2のソース電極、及び前記第2のゲート電極に、それぞれ電気的に接続されているものである。
【0059】
この構成によれば、オン抵抗の低減とチップ反りの抑制に優れたマルチトランジスタチップを有し、環境条件に対する耐久性の高い半導体パッケージ装置が得られる。
【0060】
また、本開示に係る半導体パッケージ装置の一態様は、前述の半導体装置が、第1のソース外部端子、第1のゲート外部端子、第2のソース外部端子、第2のゲート外部端子、及び共通ドレイン外部端子を有するパッケージに封止され、前記第1のソース外部端子、前記第1のゲート外部端子、前記第2のソース外部端子、前記第2のゲート外部端子、及び前記共通ドレイン外部端子は、前記半導体装置の前記第1のソース電極、前記第1のゲート電極、前記第2のソース電極、前記第2のゲート電極、及び前記裏面電極に、それぞれ電気的に接続されているものである。
【0061】
この構成によれば、オン抵抗の低減とチップ反りの抑制に優れたマルチトランジスタチップを有し、環境条件に対する耐久性が高く、かつ、共通ドレイン外部端子を、例えば、マルチトランジスタチップにおける第1および第2の縦型MOSトランジスタの共通のドレインの電圧モニタに利用可能な半導体パッケージ装置が得られる。
【0062】
以下、本開示に係る半導体装置について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0063】
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも本開示の一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置および接続形態などは、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0064】
(半導体装置の基本構造)
まず、準備として、本開示に係る半導体装置の基本的な構造について説明する。本開示に係る半導体装置は、半導体基板に2つの縦型MOSトランジスタを形成した、CSP(チップサイズパッケージ)型のマルチトランジスタチップである。
【0065】
図1は、マルチトランジスタチップ1の構造の一例を示す断面図である。
図1に示すように、マルチトランジスタチップ1は、半導体基板32と、低濃度不純物層33と、裏面電極31と、第1の縦型MOSトランジスタ10(以下、トランジスタ10)と、第2の縦型MOSトランジスタ20(以下、トランジスタ20)と、を有する。
【0066】
図2は、スマートホンなどの充放電回路であり、マルチトランジスタチップ1をこの充放電回路のローサイド側に挿入して、双方向の電流の導通を制御する充放電スイッチとして使用する場合を一応用例として示している。
【0067】
この場合、マルチトランジスタチップ1は、制御IC2から与えられる制御信号に応じて、電池3から負荷4への放電電流および負荷4から電池3への充電電流を制御する双方向トランジスタとして用いられ、放電電流は、トランジスタ10をオフ状態にすることにより遮断され、充電電流は、トランジスタ20をオフ状態にすることにより遮断される。
【0068】
MOSトランジスタには、そのデバイス構成上、ドレイン端子とソース端子の間に寄生素子としてボディダイオードが存在するため(例えば
図2でのトランジスタ10におけるBD1やトランジスタ20におけるBD2)、単一のMOSトランジスタではドレイン−ソース端子間の双方向の電流を遮断する事ができない。よって双方向の電流を遮断する時には2つのMOSトランジスタをドレイン端子かソース端子を向かい合わせに接続して使用するのが一般的である。
【0069】
図1に示すマルチトランジスタチップ1において、半導体基板32は、シリコンからなり、第1導電型の不純物を含む。
【0070】
低濃度不純物層33は、半導体基板32上に接して形成され、半導体基板32の第1導電型の不純物の濃度より低い濃度の第1導電型の不純物を含む。低濃度不純物層33は、一例として、エピタキシャル成長により半導体基板32上に形成されてもよい。
【0071】
半導体基板32と低濃度不純物層33とを含む半導体層の厚さ(Si厚とも言う)をbと表記し、低濃度不純物層33のみの厚さ(エピ厚とも言う)をcと表記する。
【0072】
裏面電極31は、半導体基板32の裏面(
図1での上側主面)に接して形成された金属材料で構成されている。裏面電極31は、限定されない一例として、銀、銅、金、アルミニウムのうちのいずれか1つ以上を含む金属材料で構成されてもよい。裏面電極31の厚さ(Ag厚とも言う)をaと表記する。
【0073】
トランジスタ10は、低濃度不純物層33内の第1の領域(
図1での右側半分領域)に形成され、低濃度不純物層33の表面(
図1での下側主面)に第1のソース電極11および別断面にある第1のゲート電極19を有する。
【0074】
低濃度不純物層33の第1の領域には、第1導電型と異なる第2導電型の不純物を含む第1のボディ領域18が形成されている。第1のボディ領域18には、第1導電型の不純物を含む第1のソース領域14、第1のゲート導体15、および第1のゲート絶縁膜16が形成されている。第1のソース電極11は第1の部分12と第2の部分13とからなり、第1の部分12は、第2の部分13を介して第1のソース領域14及び第1のボディ領域18に接続されている。第1のゲート電極19は、第1のゲート導体15に接続される。
【0075】
第1のソース電極11の第1の部分12は、実装時にはんだなどの導電性接合材と良好な接合性を示す層であり、限定されない一例として、ニッケル、チタン、タングステン、パラジウムのうちのいずれか1つ以上を含む金属材料で構成されてもよい。第1の部分12の表面には、金などのめっきが施されてもよい。
【0076】
第1のソース電極11の第2の部分13は、第1の部分12と半導体層とを接続する層であり、限定されない一例として、アルミニウム、銅、金、銀のうちのいずれか1つ以上を含む金属材料で構成されてもよい。
【0077】
第1のソース電極11の厚さをd1と表記する。第1のソース電極11の厚さd1には、第1のソース電極11の第1の部分12の厚さと第2の部分13の厚さとが含まれる。
【0078】
トランジスタ20は、低濃度不純物層33内の第2の領域(
図1での左側半分領域)に形成され、低濃度不純物層33の表面(
図1での下側主面)に第2のソース電極21および別断面にある第2のゲート電極29を有する。
【0079】
低濃度不純物層33の第2の領域には、第1導電型と異なる第2導電型の不純物を含む第2のボディ領域28が形成されている。第2のボディ領域28には、第1導電型の不純物を含む第2のソース領域24、第2のゲート導体25、および第2のゲート絶縁膜26が形成されている。第2のソース電極21は第1の部分22と第2の部分23とからなり、第1の部分22は、第2の部分23を介して第2のソース領域24及び第2のボディ領域28に接続されている。第2のゲート電極29は、第2のゲート導体25に接続される。
【0080】
第2のソース電極21の第1の部分22は、限定されない一例として、ニッケル、チタン、タングステン、パラジウムのうちのいずれか1つ以上を含む金属材料で構成されてもよく、第1の部分22の表面には、金などのめっきが施されてもよい。第2のソース電極21の第2の部分23は、限定されない一例として、アルミニウム、銅、金、銀のうちのいずれか1つ以上を含む金属材料で構成されてもよい。
【0081】
第2のソース電極21の厚さをd2と表記する。第2のソース電極21の厚さd2には、第2のソース電極21の第1の部分22の厚さと第2の部分23の厚さとが含まれる。第1のソース電極11の厚さd1と第2のソース電極21の厚さd2とは、等しくてもよい。
【0082】
半導体基板32は、トランジスタ10の第1のドレイン領域およびトランジスタ20の第2のドレイン領域の共通ドレイン領域として働く。
【0083】
図1に示すマルチトランジスタチップ1において、例えば第1導電型をN型、第2導電型をP型として、第1のソース領域14、第2のソース領域24、半導体基板32、および低濃度不純物層33はN型半導体であり、かつ、第1のボディ領域18および第2のボディ領域28はP型半導体であってもよい。
【0084】
また、例えば、第1導電型をP型、第2導電型をN型として、第1のソース領域14、第2のソース領域24、半導体基板32、および低濃度不純物層33はP型半導体であり、かつ、第1のボディ領域18および第2のボディ領域28はN型半導体であってもよい。
【0085】
以下の説明では断りのない限り、
図1に示すマルチトランジスタチップ1において、第1導電型をN型、第2導電型をP型とした、いわゆるNチャネル型トランジスタの場合として説明する。
【0086】
まずマルチトランジスタチップ1のオン状態について説明する。
【0087】
図1に示すマルチトランジスタチップ1において、第1のソース電極11に高電圧、第2のソース電極21に低電圧を印加し、第2のソース電極21を基準として第1のゲート電極19(第1のゲート導体15)および第2のゲート電極29(第2のゲート導体25)にしきい値以上の電圧を印加すると、第1のゲート絶縁膜16および第2のゲート絶縁膜26の近傍にチャネルが形成され、
図1の矢印で示す経路で第1のソース電極11−第2のソース電極21間に電流が流れる。
【0088】
これは
図2における充電電流の場合であり、トランジスタ10、20が導通してオン電流が流れるマルチトランジスタチップ1のオン状態である。
【0089】
トランジスタ10、20間でのオン電流は、
図1の矢印で示すように、裏面電極31を流れる。そのため、裏面電極31の厚さaを大きくすることで、オン電流の経路の断面積は拡大し、マルチトランジスタチップ1のオン抵抗は低下する。
【0090】
次に、マルチトランジスタチップ1のオフ状態について説明する。
【0091】
図1に示すマルチトランジスタチップ1において、第1導電型がN型、第2導電型がP型の場合、第1のボディ領域18−低濃度不純物層33間及び第2のボディ領域28−低濃度不純物層33間のPNジャンクションが各々、
図1にダイオード記号で示す極性方向のボディダイオードBD1、BD2となる。
【0092】
図1に示すマルチトランジスタチップ1において、第2のソース電極21を基準として第2のゲート電極29(第2のゲート導体25)の電圧がしきい値未満であれば、第1のソース電極11に高電圧、第2のソース電極21に低電圧を印加してもトランジスタ20のゲート絶縁膜26の近傍にチャネルは形成されず、オン電流が流れないオフ状態になる。このときトランジスタ10におけるバイアス状態は、ボディダイオードBD1に対して順方向のバイアス状態なので、第1のゲート電極19(第1のゲート導体15)に印加される電圧に依存せずトランジスタ10は導通状態となる。
【0093】
なお、第1のソース電極11と第2のソース電極21への電圧印加条件が逆の、第2のソース電極21に高電圧、第1のソース電極11に低電圧を印加した場合も、第1のソース電極11を基準として第1のゲート電極19(第1のゲート導体15)の電圧がしきい値未満であれば、トランジスタ10のゲート絶縁膜16の近傍にチャネルは形成されず、マルチトランジスタチップ1はオン電流が流れないオフ状態になる。
【0094】
(マルチトランジスタチップのソース−ソース間耐圧)
ここで、マルチトランジスタチップ1のソース−ソース間耐圧(ソース−ソース間ブレークダウン電圧とも言いBVSSと略記する)について説明する。
【0095】
マルチトランジスタチップ1のソース−ソース間耐圧とは、オフ状態のマルチトランジスタチップ1の第1のソース電極11と第2のソース電極21との間に、マルチトランジスタチップ1がブレークダウンしない範囲で印加することのできる最大電圧を言う。これは、ボディダイオードBD1、BD2がブレークダウンしない範囲で印加することのできる最大電圧であり、トランジスタ10、20単体でのドレイン耐圧と同義である。以下の説明では、簡潔のため、マルチトランジスタチップ1のソース−ソース間耐圧を、マルチトランジスタチップ1のドレイン耐圧と言うことがある。
【0096】
マルチトランジスタチップ1のドレイン耐圧について、より詳細に説明する。マルチトランジスタチップ1の第1のソース電極11に高電圧、第2のソース電極21へ低電圧を印加したときのドレイン耐圧は、トランジスタ20に内包されるボディダイオードBD2のPNジャンクションの境界両側に存在する空乏層と関係する。
【0097】
第1のソース電極11に高電圧、第2のソース電極21へ低電圧を印加したとき、トランジスタ20においては低濃度不純物層33(N型半導体)と第2のボディ領域28(P型半導体)とのPNジャンクションに対して逆方向電圧が印加されることになる。
【0098】
この場合、逆方向電圧なので、低濃度不純物層33から第2のボディ領域28へは電流が流れないが、印加電圧を徐々に大きくすると、PNジャンクションで雪崩降伏(アヴァランシェ・ブレークダウン、本明細書では単にブレークダウンと言う)が起こって一気に電流が流れる。この雪崩降伏が起こる直前の印加電圧がドレイン耐圧である。
【0099】
ドレイン耐圧を大きくしようとする場合、低濃度不純物層33と第2のボディ領域28の境界両側にできる空乏層厚を大きくして雪崩降伏が起こりにくくなるようにする。このために十分に空乏層が広がることのできるデバイス構造を設計する。
【0100】
空乏層は低濃度不純物層33と第2のボディ領域28の境界を挟んで両側に広がるが、通常、低濃度不純物層33の不純物濃度を第2のボディ領域28の不純物濃度よりも低く設定するために、空乏層は低濃度不純物層33の側に大きく広がる。したがって、低濃度不純物層33は空乏層の広がりを考慮して余裕を持った厚さで設計する。
【0101】
また、半導体基板32からは、デバイス作成過程で生じる熱履歴のためにN型不純物が低濃度不純物層33へ拡散することが知られている。これは、低濃度不純物層33の実効的な膜厚が薄くなることを意味する。空乏層の十分な広がりを確保するためには、実効的な膜厚の減少も考慮して、低濃度不純物層33の層厚を設計する必要がある。
【0102】
なお、第1のソース電極11に低電圧、第2のソース電極21に高電圧を印加した場合、トランジスタ10の低濃度不純物層33と第1のボディ領域18について、同じ説明が成り立つ。
【0103】
以上を勘案して、マルチトランジスタチップ1では、次の設計例を採用することで、設計マージンを持って12Vまたは20Vのドレイン耐圧を確保する。
【0104】
半導体基板32における不純物(例えば、ヒ素またはリン)の濃度を3×10
20/cm
3とし、低濃度不純物層33における不純物(例えば、リン)の濃度を3.4×10
16/cm
3とする。また、第1のボディ領域18および第2のボディ領域28の不純物(例えば、ボロン)の濃度を5×10
17/cm
3とする。
【0105】
ドレイン耐圧を12Vとする場合、低濃度不純物層33の厚さcを2.18μm以上とする。ドレイン耐圧を20Vとする場合、低濃度不純物層33の厚さcを2.75μm以上とする。
【0106】
(マルチトランジスタチップの製品規格と設計例)
図3は、実施の形態に係るマルチトランジスタチップのモデルごとの仕様および設計例を示す図である。
【0107】
まず、本発明者は、
図3に示すように、実施の形態に係るマルチトランジスタチップの3つのモデルについて、ドレイン耐圧BVSS、オン抵抗R、およびチップ反りWに関する製品規格を設定した。ここで、ドレイン耐圧BVSSは、前述したマルチトランジスタチップ1のソース−ソース間耐圧である。オン抵抗Rとは、3.8Vのゲート−ソース間電圧の印加時の、マルチトランジスタチップ1のソース−ソース間の抵抗値である。チップ反りWとは、最高温度250℃の熱負荷印加により、マルチトランジスタチップ1のベアチップの対角線に沿って生じる最大の高低差である。
【0108】
モデルAは、ドレイン耐圧BVSSが12V、オン抵抗規格最大値R maxが2.85mΩ、チップ反り規格最大値W maxが40μmのノーマルモデルである。オン抵抗規格標準値R typの2.19〜2.38mΩは、オン抵抗規格最大値R maxを設計マージン係数1.3〜1.2で除した計算値である。
【0109】
モデルBは、ドレイン耐圧BVSSが20V、オン抵抗規格最大値R maxが2.85mΩ、チップ反り規格最大値W maxが40μmの高耐圧モデルである。オン抵抗規格標準値R typの2.19〜2.38mΩは、オン抵抗規格最大値R maxを設計マージン係数1.3〜1.2で除した計算値である。
【0110】
モデルCは、ドレイン耐圧BVSSが12V、オン抵抗規格最大値R maxが1.95mΩ、チップ反り規格最大値W maxが40μmの低抵抗モデルである。オン抵抗規格標準値R typの1.50〜1.63mΩは、オン抵抗規格最大値R maxを設計マージン係数1.3〜1.2で除した計算値である。
【0111】
図3に示すドレイン耐圧BVSSおよびオン抵抗規格最大値R maxは、応用回路(例えば、モバイル機器に搭載されるバッテリーの充放電回路)からの要求に基づいて規定した。
【0112】
また、チップ反り規格最大値W maxは、電子情報技術産業協会規格JEITA ED−7306「記載の昇温によるパッケージの反りの測定方法と最大許容値」(非特許文献1)に基づいて、次のように規定した。
【0113】
マルチトランジスタチップ1では、裏面電極31の熱膨張係数が半導体基板32の熱膨張係数より大きいから、昇温により、裏面電極31側に凸となるチップ反りが生じる。チップ反りが大きいと、マルチトランジスタチップ1の中央部は、実装時のリフロー加熱によって実装基板から浮き、実装の歩留まりが悪化する。
【0114】
非特許文献1では、例えばFLGA(フラットランドグリッドアレイ)パッケージの反り最大許容値を、溶融後のはんだペーストの高さとしている。実装工程において、一例として、厚さ80μmのステンシルを用いた印刷により高さ80μmのはんだペーストを配置する場合、溶融後のはんだペーストの高さは、面心立方格子の充填率である74%に相当する59μmまで低下すると見積もられる。そこで、本開示では、さらに設計マージン係数を約2/3とした40μmを、チップ反り規格最大値とする。
【0115】
次に、本発明者は、
図3の製品規格に基づき、モデルごとのマルチトランジスタチップの寸法要件および電極形状を、以下の方針で検討した。
【0116】
ドレイン耐圧BVSSは、低濃度不純物層33の厚さであるエピ厚cに応じて達成する。例えば、エピ厚cを2.18μm以上とすることで、ドレイン耐圧12Vを達成する。また、エピ厚cを2.75μm以上とすることで、ドレイン耐圧20Vを達成する。
【0117】
オン抵抗Rは、裏面電極31を厚く設けることで低減する。一例として、裏面電極31の厚さであるAg厚を30μmとし、裏面電極内の電流経路の断面積を増やすことによって、オン抵抗Rを低減する。半導体層の半導体基板32と低濃度不純物層33とを含む半導体層の厚さであるSi厚bは、一例として、モデルA、Cで、43μmとし、モデルBで78μmとする。このとき、Ag厚aのSi厚bに対する比Qは、モデルA、Cで、0.70であり、モデルBで0.38である。これらの比Qは、モデルA、B、Cのそれぞれで、オン抵抗Rおよびチップ反りWに関する製品規格を達成する代表的な一例である。
【0118】
パッケージサイズは、従来モデル(図示せず)と同等以下とする。面積抵抗率Ron・Aが低減するので、従来モデルと同等のオン抵抗Rをより小さいパッケージサイズで実現でき、また従来モデルと同等のパッケージサイズでより低いオン抵抗Rを実現できる。
【0119】
具体的に、モデルAのパッケージサイズは、平面視で縦1.96mm横1.84mmの矩形とした。モデルAのパッケージの対角線の長さ、つまり対角長Lは2.69mmである。モデルAでは、
図3において縦方向に示されている辺が長辺である。
【0120】
モデルBのパッケージサイズは、平面視で縦1.96mm横3.40mmの矩形とした。モデルBのパッケージの対角線の長さ、つまり対角長Lは3.92mmである。モデルBでは、
図3において横方向に示されている辺が長辺である。
【0121】
モデルCのパッケージサイズは、平面視で縦1.96mm横3.05mmの矩形とした。モデルCのパッケージの対角線の長さ、つまり対角長Lは3.63mmである。モデルCでは、
図3において横方向に示されている辺が長辺である。
【0122】
なお、マルチトランジスタチップ1がチップサイズパッケージであることから、パッケージサイズ、マルチトランジスタチップ1のサイズ、および半導体基板32のサイズは、全て同一である。つまり、パッケージの対角長は、半導体基板32の平面視における対角寸法によって表される。
【0123】
図3には、チップ概観として、パッケージを平面視したときのソースパッド(Sパッドと表記する)およびゲートパッド(Gパッドと表記する)の配置を示している。ここで、Sパッドとは、第1のソース電極11および第2のソース電極12のチップ表面への露出部であり、Gパッドとは、第1のゲート電極19および第2のゲート電極29のチップ表面への露出部である。
【0124】
モデルAでは、Gパッドはチップ長辺に対して中央寄りに配置され、Sパッドは、トランジスタ境界に沿って2つの部分に分離して配置されている。モデルBおよびモデルCでは、Gパッドはチップ長辺に対して端寄りに配置され、Sパッドは、トランジスタ境界に対して全域で近接して配置されている。パッケージの実装工程においては、SパッドおよびGパッドが、はんだなどの導電性接合材を用いて、実装基板に取り付けられる。
【0125】
なお、
図3に示されているSパッドおよびGパッドの配置の技術的な意義については、後ほど詳しく説明する。
【0126】
次に、オン抵抗Rの低減とチップ反りWの抑制とがトレードオフの関係にあることを考慮し、裏面電極31の厚さ(Ag厚)aの半導体基板32と低濃度不純物層33とを含む半導体層の厚さ(Si厚)bに対する比Qの好適範囲を詳細に検討する。
【0127】
(比Qの好適条件を求める実験)
本発明者は、比Qの好適範囲を実験により求めた。実験では、モデルごとに、
図3に示すエピ厚cおよびパッケージサイズ(対角長L)で、かつAg厚aおよびSi厚bが異なる複数のサンプルを作製した。そして、個々のサンプルのオン抵抗とチップ反りとを実測し、製品規格を満たすか否かを確認した。
【0128】
オン抵抗Rは、サンプルごとに、サンプルを評価基板に実装した状態で測定する第1の方法、およびベアチップの状態のサンプルにプローブを当てて行う第2の方法の何れかで行った。測定方法の違いで生じる測定値の差異は、適宜補正した。
【0129】
チップ反りWについては、ベアチップの状態のサンプルを、リフロー工程を模した最高温度250℃の熱負荷サイクル下に置き、モアレ法によりベアチップの形状を測定し、測定されたチップ反りの最大値を記録した。
【0130】
図4Aは、モデルAのサンプルのオン抵抗および反りの測定値を示す図である。モデルAでは、Ag厚aが25μm、30μm、および35μmのそれぞれについて、Si厚bが28μmから93μmの間にある複数のサンプルを作製した。モデルAの何れのサンプルも、エピ厚cは2.18μmであり、対角長Lは2.69mmである。
【0131】
サンプルごとに、オン抵抗Rとチップ反りWの両方を測定するか、またはチップ反りWのみを測定した。
図4Aには、サンプルのAg厚a、Si厚b、比Qとともに、オン抵抗Rおよびチップ反りWの測定値を示している。
【0132】
図4Bは、モデルBのサンプルのオン抵抗およびチップ反りの測定値を示す図である。モデルBでは、Ag厚aが25μm、30μm、および35μmのそれぞれについて、Si厚bが28μmから93μmの間にある複数のサンプルを作製した。モデルBの何れのサンプルも、エピ厚cは2.75μmであり、対角長Lは3.92mmである。
【0133】
サンプルごとに、オン抵抗Rとチップ反りWの両方を測定するか、またはチップ反りWのみを測定した。
図4Bには、サンプルのAg厚a、Si厚b、比Qとともに、オン抵抗Rおよびチップ反りWの測定値を示している。
【0134】
図4Cは、モデルCのサンプルのオン抵抗およびチップ反りの測定値を示す図である。モデルCでは、Ag厚aが25μm、30μm、および35μmのそれぞれについて、Si厚bが28μmから93μmの間にある複数のサンプルを作製した。モデルCの何れのサンプルも、エピ厚cは2.18μmであり、対角長Lは3.63mmである。
【0135】
サンプルごとに、オン抵抗Rとチップ反りWの両方を測定するか、またはチップ反りWのみを測定した。
図4Cには、サンプルのAg厚a、Si厚b、比Qとともに、オン抵抗Rおよびチップ反りWの測定値を示している。
【0136】
以下、
図4A〜
図4Cに示す測定結果に基づき、異なる複数の視点から、比Qの様々な好適条件を規定する。
【0137】
(全モデルでのオン抵抗規格最大値およびチップ反り規格最大値達成条件)
図5は、チップ反りWの比Q依存性およびオン抵抗Rの比Q依存性を示すグラフである。
図5の左側の縦軸はチップ反りWを表し、右側の縦軸はオン抵抗Rを表し、横軸は比Qを表している。
【0138】
図5には、
図4A〜
図4Cに示される全ての測定結果がプロットされている。
【0139】
モデルA、B、Cのいずれにおいても、比Qが同じサンプルのなかではAg厚aが薄いサンプルほどチップ反りWが大きく、Ag厚a=25μmのサンプルが、チップ反りWの分布の上限(最悪値)に位置している。これは、Ag厚aが薄いサンプルではSi厚bも薄いため、チップ反りWが大きくなるものと考えられる。そこで、モデルごとのAg厚25μmのサンプルのチップ反りWの回帰曲線を求め、チップ反りWの最悪値を表す曲線W(A)worst、W(B)worst、およびW(C)worstとして利用する。各曲線を表す数式がグラフ中に記載されている。
【0140】
また、モデルA、B、Cのいずれにおいても、比Qが同じサンプルのなかではAg厚aが厚いサンプルほどオン抵抗Rが大きく、Ag厚a=35μmのサンプルが、オン抵抗Rの分布の上限(最悪値)に位置している。これは、Ag厚aが厚いサンプルではSi厚bも厚いため、オン抵抗Rが大きくなるものと考えられる。そこで、モデルごとのAg厚35μmのサンプルのオン抵抗Rの回帰曲線を求め、オン抵抗Rの最悪値を表す曲線R(A)worst、R(B)worst、およびR(C)worstとして利用する。各曲線を表す数式がグラフ中に記載されている。
【0141】
図5には、さらに、モデルA、Bのオン抵抗規格最大値を示す直線R(A,B)maxおよびオン抵抗規格標準値を示す直線R(A,B)typを表示している。また、モデルCのオン抵抗規格最大値を示す直線R(C)maxおよびオン抵抗規格標準値を示す直線R(C)typを表示している。また、全モデルのチップ反り規格最大値を示す直線W(ALL)maxを表示している。
【0142】
ここで、曲線R(A)worstと直線R(A,B)maxとの交点P1に着目する。交点P1における比Q=0.32は、モデルAのマルチトランジスタチップがオン抵抗規格最大値2.85mΩを達成する比Qの最小値である。すなわち、比Q≧0.32を満たすモデルAのマルチトランジスタチップは、オン抵抗規格最大値2.85mΩを達成する。
【0143】
比Q≧0.32において、曲線R(B)worstは直線R(A,B)maxの下方にあり、曲線R(C)worstは直線R(C)maxの下方にある。したがって、比Q≧0.32を満たすモデルBおよびCのマルチトランジスタチップのオン抵抗Rは、それぞれのオン抵抗規格最大値2.85mΩおよび1.95mΩを達成する。
【0144】
このことから、本開示に係る半導体装置の一態様は、実施の形態に係るマルチトランジスタチップであって、裏面電極の半導体基板と低濃度不純物層とを含む半導体層に対する厚さの比Qは0.32以上のものとする。
【0145】
この構成によれば、実施の形態に係るモデルA、B、およびCのいずれのマルチトランジスタチップであっても、オン抵抗Rが、当該モデルのオン抵抗規格最大値以下に収まる。
【0146】
次に、曲線W(B)worstと直線W(ALL)maxとの交点P2に着目する。交点P2における比Q=0.56は、モデルBのマルチトランジスタチップがチップ反り規格最大値40μmを達成する比Qの最大値である。すなわち、比Q≦0.56を満たすモデルBのマルチトランジスタチップは、チップ反り規格最大値40μmを達成する。
【0147】
比Q≦0.56において、曲線W(A)worstおよびW(C)worstのいずれも直線W(ALL)maxの下方にある。したがって、比Q≦0.56を満たすモデルA、Cの何れのマルチトランジスタチップのチップ反りWも、チップ反り規格最大値40μmを達成する。
【0148】
このことから、前述した比Qの下限0.32に加えて、比Qの上限0.56を設けてもよい。すなわち、本開示に係る半導体装置の一態様は、実施の形態に係るマルチトランジスタチップであって、裏面電極の半導体基板と低濃度不純物層とを含む半導体層に対する厚さの比Qは0.32以上0.56以下としてもよい。
【0149】
この構成によれば、実施の形態に係るモデルA、B、およびCのいずれのマルチトランジスタチップであっても、オン抵抗Rが、当該モデルのオン抵抗規格最大値以下に収まり、かつチップ反りがチップ反り規格最大値以下に収まる。
【0150】
本開示に係る半導体装置の一態様では、さらに、低濃度不純物層の厚さcを2.75μm以上としてもよい。
【0151】
この構成によれば、先に説明したとおり、マルチトランジスタチップ1のドレイン耐圧を20Vとすることができる。ドレイン耐圧は、その発生原理から、低濃度不純物層33の厚さcで決まり、パッケージサイズ(対角長L)には依存しない。そのため、低濃度不純物層33の厚さcを2.75μm以上とする限定は、対角長Lが互いに異なるモデルA、B、およびCのいずれのマルチトランジスタチップにも適用され、当該マルチトランジスタチップのドレイン耐圧を20Vに引き上げることができる。
【0152】
(対角長L依存の比Qの好適条件)
上記では、全モデルでのオン抵抗規格最大値を達成する比Qの下限値およびチップ反り規格最大値を達成する比Qの上限値を、定数で規定した。これに対し、以下では、比Qの下限値および上限値を、対角長Lに依存して(つまり、対角長Lの関数で)規定することを検討する。
【0153】
先に説明したとおり、
図5において、曲線W(B)worstと直線W(ALL)maxとの交点P2における比Q=0.56は、モデルBのマルチトランジスタチップがチップ反り規格最大値40μmを達成する比Qの最大値である。同様に、曲線W(C)worstと直線W(ALL)maxとの交点P5における比Q=0.70は、モデルCのマルチトランジスタチップがチップ反り規格最大値40μmを達成する比Qの最大値である。
【0154】
ここで、モデルB、Cのマルチトランジスタチップの対角長Lが、それぞれ3.92mm、3.63mmであることから、交点P2、P5での0.56および0.70なる比Qを、対角長Lについて線形補間(比例配分)する。モデルB、Cのマルチトランジスタチップではエピ厚が互いに異なり、それぞれ2.75μm、2.18μmであるが、エピ厚はチップ反りには実質的に影響しないので、この補間は有効である。
【0155】
図6は、比Qの対角長L依存性を示すグラフである。
図6において、縦軸は比Qを表し、横軸は対角長Lを表している。
図6の上側に示される直線Qmaxは、
図5の交点P2および交点P5のそれぞれでの比Qおよび対応するサンプルの対角長Lからなる座標点を線形補間して得た直線であり、Qmax=−0.48L+2.45と表される。Qmaxの外挿部分は、破線で示されている。
【0156】
直線Qmax上の点は、対角長Lのマルチトランジスタチップがチップ反り規格最大値40μmを達成する比Qの最大値である。すなわち、比Q≦−0.48L+2.45を満たす対角長Lのマルチトランジスタチップは、チップ反り規格最大値40μmを達成する。
【0157】
このことから、本開示に係る半導体装置の一態様は、実施の形態に係るマルチトランジスタチップであって、半導体基板の対角寸法をLmmとするとき、裏面電極の半導体基板と低濃度不純物層とを含む半導体層に対する厚さの比が(−0.48L+2.45)以下のものとする。
【0158】
この構成によれば、実施の形態に係る対角長Lなるマルチトランジスタチップにおいて、チップ反りがチップ反り規格最大値40μm以下に収まる。
【0159】
なお、チップ反りは、半導体の導電型には依存しない。したがって、チップ反り規格最大値を達成する上述の構成は、マルチトランジスタチップがNチャネル型およびPチャネル型のいずれであっても適用される。
【0160】
次に、比Qの対角長L依存の下限値を規定する。ここでは、オン抵抗規格標準値を達成する視点から、
図5の曲線R(C)worstと直線R(C)typとの交点P4、および曲線R(A)worstと直線R(A)typとの交点P6に着目する。交点P4における比Q=0.33は、モデルCのマルチトランジスタチップがオン抵抗規格標準値1.63mΩを達成する比Qの最小値である。交点P6における比Q=0.78は、モデルAのマルチトランジスタチップがオン抵抗規格標準値2.38mΩを達成する比Qの最小値である。
【0161】
ここで、モデルA、Cのマルチトランジスタチップの対角長Lが、それぞれ2.69mm、3.63mmであることから、交点P4、P6での0.33および0.78なる比Qを、対角長Lについて線形補間(比例配分)する。オン抵抗に影響するエピ厚は、モデルA、Cのマルチトランジスタチップではいずれも2.18μmで等しいため、この補間は有効である。
【0162】
図6の下側に示される直線Qminは、
図5の交点P4および交点P6のそれぞれでの比Qおよび対応するサンプルの対角長Lからなる座標点を線形補間して得た直線であり、Qmin=−0.48L+2.07と表される。Qminの外挿部分は、破線で示されている。
【0163】
直線Qmin上の点は、対角長Lのマルチトランジスタチップがオン抵抗規格標準値を達成する比Qの最小値である。すなわち、比Q≧−0.48L+2.07を満たす対角長Lのマルチトランジスタチップは、オン抵抗規格標準値を達成する。
【0164】
このことから、本開示に係る半導体装置の一態様は、実施の形態に係るマルチトランジスタチップであって、半導体基板の対角寸法をLmmとするとき、裏面電極の半導体基板と低濃度不純物層とを含む半導体層に対する厚さの比Qが(−0.48L+2.07)以上のものとする。
【0165】
この構成によれば、実施の形態に係る対角長Lなるマルチトランジスタチップにおいて、オン抵抗Rがオン抵抗規格標準値以下に収まる。
【0166】
上記で規定した比Qの対角長L依存の上限値と下限値とは、組み合わせて用いてもよい。すなわち、本開示に係る半導体装置の一態様は、半導体基板の対角寸法をLmmとするとき、裏面電極の半導体基板と低濃度不純物層とを含む半導体層に対する厚さの比Qが(−0.48L+2.07)以上(−0.48L+2.45)以下のものとしてもよい。
【0167】
この構成によれば、実施の形態に係る対角長Lなるマルチトランジスタチップにおいて、オン抵抗Rがオン抵抗規格標準値以下に収まり、かつチップ反りがチップ反り規格最大値以下に収まる。
【0168】
(モデルごとの比Qの好適条件)
上記では、全モデルに共通して適用される比Qの好適条件を規定した。これに対し、以下では、モデルA、B、およびCのうちのいずれか1つに限定して適用される比Qの好適条件を検討する。
【0169】
(モデルAにおける比Qの好適条件)
モデルAのマルチトランジスタチップに限定して適用される比Qの好適条件について検討する。
【0170】
まず、モデルAのマルチトランジスタチップのオン抵抗規格標準値を達成する視点から、再び
図5の交点P6に着目する。交点P6における比Q=0.78は、モデルAのマルチトランジスタチップがオン抵抗規格標準値2.38mΩを達成する比Qの最小値である。つまり、比Q≧0.78を満たすモデルAのマルチトランジスタチップは、オン抵抗規格標準値2.38mΩを達成する。
【0171】
比Q≧0.78なる条件がモデルAのマルチトランジスタに適用されることは、エピ厚cが2.18μm以下であり、かつ、対角長Lが2.69mm以上であるモデルAの寸法を前提条件として、比Q≧0.78なる条件を規定することで明確化する。
【0172】
このことから、本開示に係る半導体装置の一態様は、実施の形態に係るマルチトランジスタチップであって、低濃度不純物層の厚さが2.18μm以下であり、かつ、半導体基板の平面視における対角寸法が2.69mm以上である場合に、裏面電極の半導体基板と低濃度不純物層とを含む半導体層に対する厚さの比Qが0.78以上のものとする。
【0173】
この構成によれば、実施の形態に係るモデルAのマルチトランジスタチップにおいて、オン抵抗規格標準値が達成される。
【0174】
次に、モデルAのマルチトランジスタチップについて、エピ厚cまたは対角長Lの寸法ばらつきによるオン抵抗Rの増加を補償してオン抵抗規格標準値を達成するように比Qを規定することを考える。具体的には、オン抵抗Rを増加させる寸法誤差があるエピ厚cまたは対角長Lを前提条件として、オン抵抗規格標準値より小さいオン抵抗を実現する比Qを規定する。エピ厚cまたは対角長Lの寸法誤差によるオン抵抗の増加分と、比Qが規定するオン抵抗のオン抵抗規格標準値からの減少分とを一致させることで、オン抵抗の増減が相殺され、オン抵抗規格標準値が達成される。理解の便宜のため、以下では、相殺されるオン抵抗の増減量を、一例として0.1mΩとして説明する。
【0175】
図7は、エピ厚cまたは対角長Lの寸法ばらつきに起因するオン抵抗の超過を相殺する比Qの導出を説明するグラフである。
【0176】
まず、オン抵抗を0.1mΩ増加させるエピ厚cの誤差および対角長Lの寸法誤差を、次のようにして割り出す。
【0177】
Ag厚aが同一でかつ比Qが同一のサンプルがモデルA、B、およびCについて揃っているサンプル組を選ぶ。
【0178】
モデルA(エピ厚c=2.18μm、対角長L=2.69mm)のサンプルのオン抵抗Rと、モデルC(エピ厚c=2.18μm、対角長L=3.63mm)のサンプルのオン抵抗Rとを、対角長Lで比例配分することにより(
図7の細矢印)、エピ厚c=2.18μm、対角長L=3.92mm相当のオン抵抗値を外挿する(
図7の破線囲み)。このときに算出される対角長Lとオン抵抗Rとの比例係数から、0.1mΩに対応する対角長Lの大きさを求める。本開示の実験データによれば、0.08mmと求まる。これは、同じエピ厚cで、対角長Lが0.08mm小さくなると、オン抵抗Rが最大で0.1mΩ大きくなることを意味している。
【0179】
外挿したオン抵抗R(エピ厚c=2.18μm、対角長L=3.92mm相当)とモデルB(エピ厚c=2.75μm、対角長L=3.92mm)のサンプルのオン抵抗Rとから、エピ厚cとオン抵抗Rとの比例係数を求め(
図7の太矢印)、0.1mΩに対応するエピ厚cを求める。本開示の実験データによれば、0.06μmと求まる。これは、同じ対角長Lで、エピ厚cが0.06μm大きくなると、オン抵抗Rが最大で0.1mΩ大きくなることを意味している。
【0180】
これらより、エピ厚cが2.18μm以下でありかつ対角長Lが2.61mm以上2.69mm以下であるか、または、エピ厚が2.18μm以上2.24μm以下でありかつ対角長Lが2.69mm以上である場合のオン抵抗は、エピ厚cが2.18μm以下でありかつ対角長Lが2.69mm以上である正規の寸法でのオン抵抗と比べて、最大で0.1mΩ増加すると見込まれる。
【0181】
この理解を基に、モデルAのマルチトランジスタチップにおいてオン抵抗規格標準値2.38mΩより0.1mΩ小さいオン抵抗R=2.28mΩが得られる比Qを、最大で0.1mΩのオン抵抗の増加が見込まれる条件下で適用する。なお、オン抵抗R=2.28mΩが得られる比Qは、具体的に、
図7の曲線R(A)worstと、直線R(A,B)typを0.1mΩシフトダウンした直線R=2.28との交点P7における比Q=0.94によって得られる。
【0182】
このことから、本開示に係る半導体装置の一態様は、実施の形態に係るマルチトランジスタチップであって、低濃度不純物層の厚さが2.18μm以下でありかつ半導体基板の平面視における対角寸法が2.61mm以上2.69mm以下であるか、または、低濃度不純物層の厚さが2.18μm以上2.24μm以下でありかつ半導体基板の平面視における対角寸法が2.69mm以上である場合に、裏面電極の半導体基板と低濃度不純物層とを含む半導体層に対する厚さの比が0.94以上のものとする。
【0183】
この構成によれば、実施の形態に係るモデルAのマルチトランジスタチップで所定の寸法誤差があっても、オン抵抗Rが、モデルAのオン抵抗規格標準値以下に収まる。
【0184】
(モデルBにおける比Qの好適条件)
次に、モデルBのマルチトランジスタチップに限定して適用される比Qの好適条件について検討する。
【0185】
まず、モデルBのマルチトランジスタチップのオン抵抗規格標準値を達成する視点から、
図5の曲線R(B)worstと直線R(A,B)typとの交点P3に着目する。交点P3における比Q=0.25は、モデルBのマルチトランジスタチップがオン抵抗規格標準値2.38mΩを達成する比Qの最小値である。つまり、比Q≧0.25を満たすモデルBのマルチトランジスタチップは、オン抵抗規格標準値2.38mΩを達成する。
【0186】
比Q≧0.25なる条件がモデルBのマルチトランジスタに適用されることは、エピ厚cが2.75μm以下であり、かつ、対角長Lが3.92mm以上であるモデルBの寸法を前提条件として、比Q≧0.25なる条件を規定することで明確化する。
【0187】
このことから、本開示に係る半導体装置の一態様は、実施の形態に係るマルチトランジスタチップであって、低濃度不純物層の厚さが2.75μm以下であり、かつ、半導体基板の平面視における対角寸法が3.92mm以上である場合に、裏面電極の半導体基板と低濃度不純物層とを含む半導体層に対する厚さの比Qが0.25以上のものとする。
【0188】
この構成によれば、実施の形態に係るモデルBのマルチトランジスタチップにおいて、オン抵抗規格標準値が達成される。
【0189】
次に、モデルBのマルチトランジスタチップについて、エピ厚cまたは対角長Lの寸法ばらつきによるオン抵抗Rの増加を補償してオン抵抗規格標準値を達成するように比Qを規定する。モデルAと同様の考え方で、モデルBのマルチトランジスタチップにおいてオン抵抗規格標準値より0.1mΩ低いオン抵抗が得られる比Qを、最大で0.1mΩのオン抵抗の増加が見込まれる条件下で適用する。
【0190】
モデルBのマルチトランジスタチップでは、エピ厚cが2.75μm以下でありかつ対角長Lが3.84mm以上3.92mm以下であるか、または、エピ厚cが2.75μm以上2.81μm以下でありかつ対角長Lが3.92mm以上である場合のオン抵抗は、エピ厚cが2.75μm以下でありかつ対角長Lが3.92mm以上である正規の寸法でのオン抵抗と比べて、最大で0.1mΩ増加すると見込まれる。
【0191】
この理解を基に、モデルBのマルチトランジスタチップにおいてオン抵抗規格標準値2.38mΩより0.1mΩ小さいオン抵抗R=2.28mΩが得られる比Qを、最大で0.1mΩのオン抵抗の増加が見込まれる条件下で適用する。なお、オン抵抗R=2.28mΩが得られる比Qは、具体的に、
図7の曲線R(B)worstと、直線R(C)typを0.1mΩシフトダウンした直線R=2.28との交点P8における比Q=0.33によって得られる。
【0192】
このことから、本開示に係る半導体装置の一態様は、実施の形態に係るマルチトランジスタチップであって、低濃度不純物層の厚さが2.75μm以下でありかつ半導体基板の平面視における対角寸法が3.84mm以上3.92mm以下であるか、または、低濃度不純物層の厚さが2.75μm以上2.81μm以下でありかつ半導体基板の平面視における対角寸法が3.92mm以上である場合に、裏面電極の半導体基板と低濃度不純物層とを含む半導体層に対する厚さの比が0.33以上のものとする。
【0193】
この構成によれば、実施の形態に係るモデルBのマルチトランジスタチップで所定の寸法誤差があっても、オン抵抗Rが、モデルBのオン抵抗規格標準値以下に収まる。
【0194】
また、モデルBのマルチトランジスタチップでは、チップ反り規格最大値を達成する視点から、比Qは0.56以下であるとしてもよい。比Q=0.56は、
図5の交点P2から得られる。
【0195】
この構成によれば、実施の形態に係るモデルBのマルチトランジスタチップにおいて、チップ反り規格最大値が達成される。
【0196】
(モデルCにおける比Qの好適条件)
次に、モデルCのマルチトランジスタチップに限定して適用される比Qの好適条件について検討する。
【0197】
まず、モデルCのマルチトランジスタチップのオン抵抗規格標準値を達成する視点から、再び
図5の交点P4に着目する。交点P4における比Q=0.33は、モデルCのマルチトランジスタチップがオン抵抗規格標準値1.63mΩを達成する比Qの最小値である。つまり、比Q≧0.33を満たすモデルCのマルチトランジスタチップは、オン抵抗規格標準値1.63mΩを達成する。
【0198】
比Q≧0.33なる条件がモデルCのマルチトランジスタに適用されることは、エピ厚cが2.18μm以下であり、かつ、対角長Lが3.63mm以上であるモデルCの寸法を前提条件として、比Q≧0.33なる条件を規定することで明確化する。
【0199】
このことから、本開示に係る半導体装置の一態様は、実施の形態に係るマルチトランジスタチップであって、低濃度不純物層の厚さが2.18μm以下であり、かつ、半導体基板の平面視における対角寸法が3.63mm以上である場合に、裏面電極の半導体基板と低濃度不純物層とを含む半導体層に対する厚さの比Qが0.33以上のものとする。
【0200】
この構成によれば、実施の形態に係るモデルCのマルチトランジスタチップにおいて、オン抵抗規格標準値が達成される。
【0201】
次に、モデルCのマルチトランジスタチップについて、エピ厚cまたは対角長Lの寸法ばらつきによるオン抵抗Rの増加を補償してオン抵抗規格標準値を達成するように比Qを規定する。モデルAと同様の考え方で、モデルCのマルチトランジスタチップにおいてオン抵抗規格標準値より0.1mΩ低いオン抵抗が得られる比Qを、最大で0.1mΩのオン抵抗の増加が見込まれる条件下で適用する。
【0202】
モデルCのマルチトランジスタチップでは、エピ厚cが2.18μm以下でありかつ対角長Lが3.55mm以上3.63mm以下であるか、または、エピ厚cが2.18μm以上2.24μm以下でありかつ対角長Lが3.63mm以上である場合のオン抵抗は、エピ厚cが2.18μm以下でありかつ対角長Lが3.63mm以上である正規の寸法でのオン抵抗と比べて、最大で0.1mΩ増加すると見込まれる。
【0203】
この理解を基に、モデルCのマルチトランジスタチップにおいてオン抵抗規格標準値1.63mΩより0.1mΩ小さいオン抵抗R=1.53mΩが得られる比Qを、最大で0.1mΩのオン抵抗の増加が見込まれる条件下で適用する。なお、オン抵抗R=1.53mΩが得られる比Qは、具体的に、
図7の曲線R(C)worstと、直線R(C)typを0.1mΩシフトダウンした直線R=1.53との交点P9における比Q=0.43によって得られる。
【0204】
このことから、本開示に係る半導体装置の一態様は、実施の形態に係るマルチトランジスタチップであって、低濃度不純物層の厚さが2.18μm以下でありかつ半導体基板の平面視における対角寸法が3.55mm以上3.63mm以下であるか、または、低濃度不純物層の厚さが2.18μm以上2.24μm以下でありかつ半導体基板の平面視における対角寸法が3.63mm以上である場合に、裏面電極の半導体基板と低濃度不純物層とを含む半導体層に対する厚さの比が0.43以上のものとする。
【0205】
この構成によれば、実施の形態に係るモデルCのマルチトランジスタチップで所定の寸法誤差があっても、オン抵抗Rが、モデルCのオン抵抗規格標準値以下に収まる。
【0206】
また、モデルCのマルチトランジスタチップでは、チップ反り規格最大値を達成する視点から、比Qは0.70以下であるとしてもよい。比Q=0.70は、
図5の交点P5から得られる。
【0207】
この構成によれば、実施の形態に係るモデルCのマルチトランジスタチップにおいて、チップ反り規格最大値が達成される。
【0208】
(第1および第2のソース電極と裏面電極の厚さの比に関する好適条件)
再び
図1を参照して、第1のソース電極11および第2のソース電極21と裏面電極31との厚さの比に関する好適条件について説明する。
【0209】
第1および第2のソース電極11、21の第1の部分12、22は、実装時にはんだなどの導電性接合材との良好な接合性が得られる十分な厚さに設けられる。
【0210】
また、第1のソース電極11の第2の部分13は、第1のソース電極11の第1の部分12と半導体層との接続を取ることができる十分な厚さに設けられ、第2のソース電極21の第2の部分23は、第2のソース電極21の第1の部分22と半導体層との接続を取ることができる十分な厚さに設けられる。
【0211】
また、第2の部分13、23が厚いほどマルチトランジスタチップのオン抵抗が低下することも分かっている。このことは、第2の部分13、23の厚さが異なる複数のサンプルを作製し、各サンプルのオン抵抗を測定した実験で確認されている。オン抵抗は、第2の部分13、23の厚さが2μmから4μmまでの間で急速に低下し、4μm以上では低下は緩慢になる。
【0212】
また、第1の部分12、22および第2の部分13、23の何れの厚さも、材料コストおよび製造コストの観点では薄いほうが好ましい。
【0213】
これらの知見に基づき、モデルA、B、Cの何れにも適用でき、かつ、導電性接合材との接合性、より低いオン抵抗、およびコスト削減をバランスよく達成する設計例を検討した結果、第1の部分12、22の厚さを3μmとし、第2の部分13、23の厚さを4μmとする好適条件が見出された。この場合の第1および第2のソース電極11、21の厚さd1、d2は、何れも7μmである。
【0214】
第1および第2のソース電極11、21の厚さd1、d2が何れも7μmであり、かつ裏面電極31の厚さが、25μm、30μmおよび35μmであるマルチトランジスタチップにおいて、第1および第2のソース電極11、21の裏面電極31に対する厚さの比は、それぞれ0.28、0.23、および0.20である。
【0215】
このことから、本開示に係る半導体装置の一態様は、実施の形態に係るマルチトランジスタチップであって、第1のソース電極の裏面電極に対する厚さの比が0.28以下であり、第2のソース電極の裏面電極に対する厚さの比が0.28以下であるものとする。
【0216】
この構成によれば、裏面電極31の厚さ25μm、30μmおよび35μmに対して第1および第2のソース電極11、12の好適な厚さが規定されるので、導電性接合材との接合性、より低いオン抵抗、およびコスト削減をバランスよく達成したマルチトランジスタチップが得られる。
【0217】
なお、第1および第2のソース電極11、12と裏面電極31との厚さの比は、半導体の導電型には依存しない。したがって、上述の構成は、マルチトランジスタチップがNチャネル型およびPチャネル型のいずれであっても適用される。
【0218】
(オン抵抗を低減する電極配置)
次に、オン抵抗を低減する電極配置について説明する。
【0219】
図8A、
図8Bは、それぞれモデルB、モデルCのマルチトランジスタチップの電極配置の一例を示す上面図である。
図8A、
図8Bには、電極の要部の寸法を、mm単位で示している。なお、
図8A、
図8Bでは、
図3の説明でのSパッドおよびGパッドを、電極として示している。
【0220】
図8A、
図8Bにおいて、長円形の電極が第1のソース電極11および第2のソース電極21であり、円形の電極が第1のゲート電極19および第2のゲート電極29である。第1のソース電極11は、第1のソース電極S11〜S14を含み、第2のソース電極21は、第2のソース電極S21〜S24を含む。第1のゲート電極19は、第1のゲート電極G1を含み、第2のゲート電極29は、第2のゲート電極G2を含む。
【0221】
図8A、
図8Bに示すように、第1のソース電極S11と第2のソース電極S21とは、トランジスタ10が形成されている第1の領域10aとトランジスタ20が形成されている第2の領域20aとの境界Mの全域に沿って配置されている。
【0222】
ここで全域とは、境界Mの全長の90%以上を占める部分としてもよい。
図8A、
図8Bの具体例では、境界Mの全長(チップの縦方向寸法)が1.96mmであるところ、第1のソース電極S11および第2のソース電極S21の長さは1.81mmであり、境界Mの全長の92%を占めている。また、境界Mに沿って配置されるとは、境界Mと同一方向に延設され、境界Mと第1のソース電極S11との間、および境界Mと第2のソース電極S21との間に他の電極がないことと定義してもよい。
【0223】
これにより、トランジスタ10とトランジスタ20とを流れる電流の経路がより広くかつより短くなるので、マルチトランジスタチップのオン抵抗を低減できる。
【0224】
また、
図8Aに示すように、第1のソース電極S11と第2のソース電極S21との間隔が、第1のソース電極S11の幅および第2のソース電極S21の幅の何れよりも狭くてもよい。
図8Bの具体例では、第1のソース電極S11と第2のソース電極S21との間隔は0.25mm(=0.60mm−0.35mm)であり、第1のソース電極S11および第2のソース電極S21のいずれの幅0.35mmより狭い。
【0225】
これにより、トランジスタ10とトランジスタ20とを流れる電流の経路をさらに広くかつ短くできるので、マルチトランジスタチップのオン抵抗をより効果的に低減できる。
【0226】
また、
図8Bに示すように、第1のソース電極S11と第2のソース電極S21との間隔が、第1のソース電極S11の幅および第2のソース電極S21の幅の何れよりも広くてもよい。
図8Bの具体例では、第1のソース電極S11と第2のソース電極S21との間隔は0.25mm(0.475mm−0.225mm)であり、第1のソース電極S11および第2のソース電極S21のいずれの幅0.225mmより広い。
【0227】
これにより、はんだを配置しない領域を広く取ることができるので、トランジスタ10とトランジスタ20とを流れる電流の経路をより広くかつより短くしつつ、パターンショートを回避できる。
【0228】
(接続信頼性を向上する電極配置)
次に、接続信頼性を向上する電極配置について説明する。
【0229】
図8A、
図8Bに示すように、モデルB、モデルCのマルチトランジスタチップでは、第1のソース電極S11〜S14は、境界Mと、第1の領域10aの境界Mの対向端Tとの間に、境界Mと交差する方向に並んで配置されている。第1のゲート電極G1の中心点は、第1の領域10aの、境界Mから最遠の第1のソース電極S13、S14の近端より対向端T側にある。
【0230】
また、第2のソース電極S21〜S24は、境界Mと、第2の領域20aの境界Mの対向端Uとの間に、境界Mと交差する方向に並んで配置されている。第2のゲート電極G2の中心点は、第2の領域20aの、境界Mから最遠の第2のソース電極S23、S24の近端より対向端U側にある。
【0231】
これにより、第1のゲート電極G1および第2のゲート電極G2が、境界Mからより遠くに配置されることとなるので、半導体基板にチップ反りが生じて境界Mの付近が実装基板から浮いた場合でも、第1のゲート電極G1および第2のゲート電極G2と実装基板との間ではんだオープンが起きにくい。
【0232】
以上、第1および第2のソース電極及び第1および第2のゲート電極の配置に関して、複数の特徴的な構成を説明した。
【0233】
なお、第1および第2のソース電極及び第1および第2のゲート電極の配置は、半導体の導電型には依存しない。したがって、第1および第2のソース電極及び第1および第2のゲート電極の配置に関する上述の構成は、マルチトランジスタチップがNチャネル型およびPチャネル型のいずれであっても適用される。
【0234】
(電力効率および信頼性に優れた半導体装置の実装構造)
次に、オン抵抗を低減する半導体装置の実装構造について説明する。
【0235】
図9Aは、実施の形態に係るマルチトランジスタチップの実装構造の一例を示す斜視図であり、マルチトランジスタチップを実装した半導体モジュール50の例を示している。
【0236】
半導体モジュール50は、プリント配線基板51と、配線パターン52と、半導体装置56とを備える。
【0237】
配線パターン52は、プリント配線基板51上の帯状領域に設けられ、長手方向に交差するギャップ53で第1の部分54と第2の部分55とに分離されている。
【0238】
半導体装置56は、前述したマルチトランジスタチップ1であり、プリント配線基板51上のギャップ53上に配置されている。
【0239】
半導体装置56は、第1の領域10aと第2の領域20aとが配線パターン52の長手方向に並ぶ向きで配置され、半導体装置56の第1のソース電極11および第2のソース電極21は、配線パターン52の第1の部分54および第2の部分55にそれぞれ接続されている。
【0240】
図9Bは、比較例に係る半導体モジュール59の実装構造の一例を示す斜視図である。半導体モジュール59では、半導体モジュール50と比べて、半導体装置56の第1の領域10aと第2の領域20aとが配線パターン52の長手方向と平行な向きで配置されている点で相違する。
【0241】
半導体モジュール50、59は、例えば、スマートホンの電源モジュールであってもよい。この場合、半導体モジュール50、59は、スマートホンの筐体内に、プリント配線基板51の短辺をスマートホンの厚さ方向に立てて配置される。そのため、プリント配線基板51の短辺の長さ、つまり基板幅は2mm程度に抑えられる。基板幅の上限が厳しく制限されるこのような応用では、配線パターン52を基板幅全体に設けることが、配線抵抗を減らし、電力効率を向上するために有効である。
【0242】
半導体モジュール50では、半導体装置56を、トランジスタ10、20が配線パターン52の長手方向に並ぶ向きで配置しているので、基板幅全体に設けられた配線パターン52と半導体装置56との接続を基板幅全体で取ることができる。そのため、配線パターン52をプリント配線基板51の幅全体に設け、配線抵抗(半導体装置56との接続抵抗を含む)を有効に低減することができる。
【0243】
これに対し、半導体モジュール59では、トランジスタ10、20を、配線パターン52の長手方向と交差する向きで配置しているので、配線パターン52と半導体装置56との接続は、例えば、基板幅の半分でしか取ることができない。そのため、配線パターン52を基板幅全体に設けたとしても、半導体装置56との接続抵抗を有効に低減することができない。
【0244】
また、半導体モジュール59では、電流の経路がクランク状(
図9Bでの白抜き矢印)になるため、配線パターン52の部分52aにはあまり電流が流れず、半導体装置56は、サイズに見合った能力を発揮できない。逆に、配線パターン52の部分52bには電流が集中し、例えば、エレクトロマイグレーションによるプリント配線基板51の信頼性の低下が起こり得る。電流の経路が直線状(
図9Aでの白抜き矢印)になる半導体モジュール50では、電流密度に大きな偏りが生じないので、これらの問題は起きにくい。
【0245】
このように、半導体装置56を、第1の領域10aと第2の領域20aとが配線パターン52の長手方向に並ぶ向き、つまり、トランジスタ10、20が配線パターン52の長手方向に並ぶ向きで配置した半導体モジュール50によれば、電力効率および信頼性に優れた半導体装置の実装構造が得られる。
【0246】
なお、上述した半導体装置の実装構造は、半導体の導電型には依存しない。したがって、上述の構成は、マルチトランジスタチップがNチャネル型およびPチャネル型のいずれであっても適用される。
【0247】
(半導体パッケージ装置)
上記では、マルチトランジスタチップ1を、チップサイズパッケージとして説明したが、マルチトランジスタチップ1は、チップサイズパッケージには限られない。マルチトランジスタチップ1は、樹脂パッケージなどに封止され、半導体パッケージ装置として構成されてもよい。このような半導体パッケージ装置は、例えば、
図1および
図2に示すマルチトランジスタチップ1を単純に樹脂パッケージなどに封止したものであってもよい。
【0248】
すなわち、本開示に係る半導体パッケージ装置の一態様は、前述の半導体装置、つまりマルチトランジスタチップ1が、第1のソース外部端子、第1のゲート外部端子、第2のソース外部端子、及び第2のゲート外部端子を有するパッケージに封止されたものである。パッケージの第1のソース外部端子、第1のゲート外部端子、第2のソース外部端子、及び第2のゲート外部端子は、マルチトランジスタチップ1の第1のソース電極11、第1のゲート電極19、第2のソース電極21、及び第2のゲート電極29に、それぞれ電気的に接続される。
【0249】
この構成によれば、オン抵抗の低減とチップ反りの抑制に優れたマルチトランジスタチップ1を有し、環境条件に対する耐久性の高い半導体パッケージ装置が得られる。
【0250】
次に、マルチトランジスタチップ1のトランジスタ10、20の共通のドレインに接続された外部端子を有する半導体パッケージ装置について説明する。
【0251】
図10は、
図2と同様、スマートホンなどの充放電回路であり、マルチトランジスタチップ1をパッケージに封止した半導体パッケージ装置1aをこの充放電回路のローサイド側に挿入して、双方向の電流の導通を制御する充放電スイッチとして使用する場合を一応用例として示している。
図10の応用例では、
図2の応用例と比べて、半導体パッケージ装置1aが共通ドレイン外部端子39を有する点が相違する。共通ドレイン外部端子39は、
図1に示すマルチトランジスタチップ1の裏面電極31に電気的に接続されている。
【0252】
図10の充放電回路では、共通ドレイン端子39は、マルチトランジスタチップ1のトランジスタ10、20に共通のドレイン電圧のモニタ端子として利用される。制御IC2aは、電池3の充電電流及び放電電流を制御する際に、共通ドレイン端子39の電圧を監視し、当該電圧が、電池3の正常電圧範囲(例えば3.5V〜4.5Vの範囲)を外れると、異常状態と判断して充放電動作を停止する。これにより、電池3の過放電及び過充電を防止する。
【0253】
また、図示は省略するが、共通ドレイン端子39をプリチャージ電流の経路として利用する充電回路、および共通ドレイン端子39を放電電流の経路として利用する放電回路を構成することもできる。
【0254】
このように、本開示に係る半導体パッケージ装置の一態様は、前述の半導体装置、つまりマルチトランジスタチップ1が、第1のソース外部端子、第1のゲート外部端子、第2のソース外部端子、第2のゲート外部端子、及び共通ドレイン外部端子を有するパッケージに封止されたものである。パッケージの第1のソース外部端子、第1のゲート外部端子、第2のソース外部端子、第2のゲート外部端子、及び共通ドレイン外部端子は、マルチトランジスタチップ1の第1のソース電極11、第1のゲート電極19、第2のソース電極21、第2のゲート電極29、及び裏面電極31に、それぞれ電気的に接続される。
【0255】
この構成によれば、オン抵抗の低減とチップ反りの抑制に優れたマルチトランジスタチップを有し、環境条件に対する耐久性が高く、かつ、共通ドレイン外部端子を、例えば、マルチトランジスタチップにおける第1および第2の縦型MOSトランジスタの共通のドレインの電圧モニタに利用可能な半導体パッケージ装置が得られる。
【0256】
以上、本開示の1つまたは複数の態様に係る半導体装置について、実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、この実施の形態に限定されるものではない。本開示の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本開示の1つまたは複数の態様の範囲内に含まれてもよい。