(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の具体的な実施形態(以下、「本実施の形態」という)について、以下の順序で詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更が可能である。
【0019】
≪1.廃水の処理方法について≫
本実施の形態に係る廃水の処理方法は、フッ素と共に、難分解性のBF
4−を含有する廃水を処理するための方法である。具体的に、この廃水の処理方法は、廃水に含まれる遊離フッ素イオンを除去するフッ素除去工程S1と、フッ素イオンを除去した廃水に含まれるBF
4−濃度を測定するBF
4−濃度測定工程S2と、測定されたBF
4−濃度に基づいてBF
4−を分解する分解工程S3とを有する。
【0020】
そして、この廃水の処理方法では、BF
4−濃度測定工程S2において、廃水のpHを4以下に調整して濃度を測定し、また分解工程S3においては、測定したBF
4−濃度に基づいて添加量を決定した多価金属又はその金属塩(多価金属塩)を廃水に添加してBF
4−を分解させることを特徴としている。
【0021】
このような廃水の処理方法によれば、廃水中のBF
4−の濃度の測定結果に基づいてそのBF
4−を分解するための薬剤である多価金属又はその金属塩の添加量を決定しているため、分解処理に伴って変動するBF
4−濃度に基づいて連続的に薬剤の使用量も制御することができ、従来に比してより効率的な廃水の処理を行うことができる。
【0022】
また、この廃水の処理方法においては、廃水に含まれるBF
4−濃度を測定するに先立ち、また廃水に多価金属塩等の薬剤を添加してBF
4−を分解するに先立ち、予め、その廃水に含まれる遊離フッ素イオン(遊離F
−)を除去していることにより、廃水に含まれる遊離F
−が強フッ酸になることを抑制し、より正確なBF
4−の濃度測定を行うことができる。また、遊離F
−を廃水中から除去することによって、BF
4−の分解のために添加した多価金属塩等の薬剤の無駄を抑制して、効率的な分解処理を行うことができる。
【0023】
以下では、この廃水の処理方法を実施するための廃水処理システムの構成の一例を示して、より具体的に説明する。
【0024】
≪2.廃水の処理システムについて≫
図1は、本実施の形態に係る廃水の処理方法を実施するための廃水処理システムの構成の一例を示す図である。
図1に示すように、廃水処理システム1は、大きく、処理対象となる廃水に含まれる遊離フッ素イオン(F
−)を除去するフッ素除去装置10と、遊離F
−を除去した廃水に含まれるBF
4−の濃度を測定するBF
4−濃度測定装置20と、その廃水中のBF
4−を分解して廃水を処理する分解処理装置30とから構成されている。
【0025】
<2−1.フッ素を除去するフッ素除去装置>
フッ素除去装置10は、上述した廃水の処理方法におけるフッ素除去工程S1を実行するための装置であって、処理対象となる廃水が最初に導入される場所となり、BF
4−の濃度測定及びBF
4−の分解処理に先立って、その廃水に含まれる遊離F
−を除去する。
【0026】
処理対象となる廃水は、フッ素を含有するとともに、難分解性のBF
4−を含有している。この廃水に含まれるBF
4−は、下記の反応式(v)に示すように経時的に分解されるが、この反応式に示すように廃水中にF
−が存在すると、BF
4−は安定するようになる。このことから、BF
4−の経時的な変化を抑制してその濃度を正確に測定するという観点からすると、廃水中にF
−が存在することの方が好ましいとも考えられる。
BF
4−+3H
2O⇔H
3BO
3+4F
−+3H
+ ・・(v)
【0027】
しかしながら、後述するように、BF
4−濃度測定装置20においては廃水のpHを4以下に調整してBF
4−の分解を抑制しながら濃度測定を行うが、そのpH4以下の廃液中にF
−が存在すると、そのF
−がフッ化水素となり、その廃水は強フッ酸溶液となる。すると、BF
4−濃度測定装置20に設けられた、濃度を測定するための廃水のpHを測定するためのガラス電極等からなるpH電極(pH計)が腐食されて適切なpH測定が困難となり、その結果としてBF
4−濃度の正確な測定ができなくなる。
【0028】
また、後述する分解処理装置30における廃水中のBF
4−の分解は、BF
4−濃度の測定結果に基づいて使用量を決定した薬剤、具体的には多価金属塩等を添加することによって行われるが、その廃水中にF
−が存在した状態であると、添加した多価金属塩を構成する多価金属元素と廃水中のF
−とが反応してしまい、多価金属塩が消費されてしまう。すると、BF
4−の分解に用いられるべき多価金属塩の量が減少して効果的にBF
4−を分解させることができなくなるとともに、多価金属塩とF
−との反応により副生成した沈殿物(AlF
3)や、またBF
4−の分解ために過剰に添加した多価金属塩の水酸化物沈殿がフロックとなり、膨大な廃棄物となってしまう。
【0029】
そこで、本実施の形態においては、廃水中のBF
4−濃度を測定するに先立ち、また廃水に多価金属塩等の薬剤を添加してBF
4−を分解するに先立ち、フッ素除去装置10において、廃水中の遊離F
−を除去する処理を行う。このように、廃水中から遊離F
−を除去することにより、BF
4−濃度の測定時に用いるガラス電極等からなるpH電極の腐食を抑制して適切なpH調整と正確なBF
4−濃度の測定を可能にし、またBF
4−の分解に添加する多価金属塩の無駄を防いで、効果的に且つ効率的に廃水中のBF
4−を分解させることが可能になる。
【0030】
具体的に、フッ素除去装置10では、廃水中の遊離F
−濃度が0.1mol/L未満となるように、廃水中の遊離F
−を除去することが好ましい。また、遊離F
−濃度が0.01mol/L未満となるように、廃水中の遊離F
−を除去することがより好ましい。
【0031】
図1に示すように、フッ素除去装置10としては、例えば、廃水が導入され遊離F
−を除去するフッ素除去反応槽11と、フッ素を含む沈殿物を沈降分離する沈降槽12とを備えたものとすることができる。このように、廃水中の遊離F
−の除去方法としては、廃水に薬剤を添加して遊離F
−を不溶性物質(沈殿物)として固定化し、その沈殿物を廃水から分離除去する方法を挙げることができる。
【0032】
より具体的に、フッ素除去反応槽11においては、廃水にカルシウム塩を添加して遊離F
−をCaF
2の沈殿物とし、これを分離除去して遊離F
−を除去することができる。カルシウム塩としては、例えば、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、塩化カルシウム、酸化カルシウム、硫酸カルシウム等の無機系カルシウム塩が好適に用いられる。また、カルシウム塩を用いて遊離F
−を除去する場合、その添加量としては過剰量を添加することが好ましい。
【0033】
また、フッ素除去反応槽11において廃水中の遊離F
−を除去するにあたっては、廃水中のpHを4〜11に調整して行うことが好ましい。pHを4〜11に調整することで、例えばカルシウム塩の添加によりCaF
2の沈殿物を効率的に生成させることができる。
【0034】
フッ素除去装置10においては、例えばカルシウム塩を添加して生成した沈殿物を含むスラリーを沈降槽12等に移送し、生成したCaF
2等の沈殿物を沈降させ、F
−を除去した廃水と分離(固液分離)する。沈殿物を分離除去して得られた廃水、すなわち遊離F
−を除去した廃水は、続いてBF
4−濃度測定装置20に移送される。一方で、沈降したCaF
2等の沈殿物は払い出される。
【0035】
<2−2.BF
4−濃度を測定するBF
4−濃度測定装置>
BF
4−濃度測定装置20は、フッ素除去装置10から移送された、遊離F
−を除去した廃水が導入され、その廃水に含まれるBF
4−の濃度を測定する。
【0036】
BF
4−濃度測定装置20におけるBF
4−濃度の測定方法としては、特に限定されないが、例えばイオン電極を用いた方法を挙げることができる。
図1の構成図における点線囲み部で示したBF
4−濃度測定装置20は、イオン電極による濃度測定を行う装置を一例として挙げている。なお、イオン電極を用いたBF
4−濃度の測定に関しては、特許文献2を参照することができる。
【0037】
図1の一部に示すBF
4−濃度測定装置20は、BF
4−濃度の測定対象である廃水を収容する容器21と、BF
4−電極22aと比較電極22bとを有したイオン電極装置部22と、容器21からイオン電極装置部22に廃水を送液する送液部23と、BF
4−電極22aに接触した廃水に含まれるBF
4−濃度を測定する濃度測定部24とを備える。このBF
4−濃度測定装置20は、容器21に収容された廃水のBF
4−濃度を連続的に測定しながら、その測定結果を後述する分解処理装置30に送り、分解処理装置30にて使用するBF
4−を分解するための薬剤添加量を適切に制御することを可能にしている。
【0038】
(容器)
容器21は、BF
4−濃度の測定対象である廃水を収容するものであり、後述する送液部23により、当該容器21内に収容された廃水の一部がイオン電極装置部22に送液される。この容器21は、BF
4−の分解処理を実行する分解処理装置30のBF
4−分解反応槽31とすることもでき、これにより、リアルタイムで廃水中のBF
4−濃度を測定しながら、その濃度測定結果に基づいてBF
4−の分解のため薬剤(多価金属又はその多価金属の塩)の使用量を制御することができる。
【0039】
(イオン電極装置部)
イオン電極装置部22は、BF
4−電極22aと、比較電極22bを備えており、そのBF
4−電極22aにBF
4−濃度の測定対象である廃水を接触させる。例えば、BF
4−電極22aとしては、東亜ディーケーケー社製のイオン電極を用いることができる。このよう、BF
4−電極22aに廃水を接触させることで、後述する濃度測定部24において廃水中のBF
4−濃度が測定される。
【0040】
また、イオン電極装置部22には、ガラス電極等からなるpH電極(pH計)22Aが設けられている。このpH電極22Aを設けることによって、廃水のpHを適宜モニタリングすることができる。これにより、BF
4−濃度を測定するための廃水のpHを4以下に安定的に調整可能にし、その廃水中のBF
4−濃度を正確に測定できるようにしている。なお、BF
4−濃度測定時におけるpH調整については後で詳述する。
【0041】
なお、このイオン電極装置部22を容器21(BF
4−分解反応槽31)に付帯する装置としてもよく、この場合、後述するような送液部23を設けなくてもよい。
【0042】
(送液部)
送液部23は、容器21に収容された廃水をイオン電極装置部22に送液するためのものである。送液部23としては、例えば、所望とする送液速度で廃水を送液させることが可能な送液ポンプにより構成される。なお、イオン電極装置部22にてBF
4−濃度を測定した後、この送液部23を介して、容器21に廃水を戻すようにしてもよい。
【0043】
(濃度測定部)
濃度測定部24は、イオン電極装置部22におけるBF
4−電極22aと接触した廃水に含まれるBF
4−濃度を測定する。濃度測定部24としては、例えば、BF
4−電極22aに接触した廃水の電気伝導度を交流電極法により測定するものとすることができる。
【0044】
ここで、BF
4−濃度測定装置20では、廃水のpHを4以下に調整してBF
4−濃度の測定を行う。好ましくは、pH2〜3に調整してBF
4−濃度を測定する。廃水のpHが4を超えると、廃水中のBF
4−の経時的な分解を十分に抑制できなくなり、正確な濃度測定を行うことができない。その結果、分解処理装置30において添加するBF
4−の分解するための薬剤の使用量を適切に制御することができなくなる。
【0045】
廃水のpH調整においては、pHを4以下に調整できるものであれば特に限定されず、例えば、硫酸、塩酸、硝酸等の各種無機酸、又は各種有機酸を用いることができる。これらのpH調整のための酸は、容器21に添加することができる。なお、廃水のpHは、イオン電極装置部22に設けられたpH電極22Aにより測定することができる。また、pH電極をさらに容器21に設けるようにしてpHを測定可能としてもよい。
【0046】
濃度測定部24は、後述する分解処理装置30を構成する制御部32と接続されており、測定した廃水中のBF
4−濃度に関する情報を送信することが可能となっている。これにより、BF
4−濃度の測定結果に基づいて、分解処理装置30にて使用するBF
4−を分解するための薬剤(多価金属塩等)の量を制御するができる。特に、本実施の形態においては、このBF
4−濃度の測定に先立ち、フッ素除去装置10において廃水中の遊離F
−を除去している。これにより、その遊離F
−による、BF
4−濃度の測定時に用いるガラス電極等からなるpH電極22Aの腐食を防いで、適切にpHを調整することができるとともにBF
4−濃度の測定を効果的に且つ効率的に行うことでき、分解処理装置30において使用する薬剤の使用量を適切に制御することが可能となる。
【0047】
<2−3.BF
4−を分解する分解処理装置>
分解処理装置30では、廃水に含まれるBF
4−を分解する。具体的に、この分解処理装置30では、BF
4−濃度測定装置20にて測定されたBF
4−濃度の測定結果に基づいてBF
4−を分解するための薬剤の添加量を決定し、BF
4−の分解処理を行う。このように、本実施の形態においては、BF
4−濃度の測定結果に基づいて薬剤量を制御して連続的にBF
4−の分解処理を行うようにしている。そのため、適切な量の薬剤を使用して、効率的な処理を行うことができる。
【0048】
図1の一部に示す分解処理装置30は、廃水を収容しBF
4−の分解処理を行うBF
4分解反応槽31と、廃水中のBF
4−濃度に基づいて薬剤(多価金属塩)の使用量を決定する制御部32と、制御部32にて決定した使用量に基づいて多価金属塩をBF
4分解反応槽31に添加する薬剤添加部33とを備える。また、分解処理装置30は、BF
4−を分解して生成したフッ素を固定化する脱フッ素(F)処理槽34と、ホウ素を固定化する脱ホウ素(B)処理槽35と、不溶性物質を凝集させる凝集槽36と、不溶性物質を沈降させて処理後水を得る沈降槽37とを備えた構成とすることができる。
【0049】
ここで、
図1に示すように、分解処理装置30を構成するBF
4−分解反応槽は、BF
4−濃度測定装置20における容器21と同一である。したがって、分解処理装置30では、BF
4−濃度測定装置20にて測定された廃水中のBF
4−濃度が定期的に送られ、そのリアルタイムで測定されたBF
4−濃度に基づいて連続的に薬剤添加量を決定して、BF
4−の分解処理を行うことができる。
【0050】
(1)BF
4−の分解処理についての構成
[BF
4−分解反応槽]
BF
4−分解反応槽31は、処理対象である廃水が収容され、その廃水に含まれるBF
4−を分解する反応場となる。このBF
4−分解反応槽では、収容された廃水中のBF
4−濃度に基づいて決定された添加量の薬剤が添加されて、BF
4−の分解処理を行う。
【0051】
より具体的に、BF
4分解反応槽31では、廃水に対して多価金属塩が添加されて、BF
4−の分解反応が生じる。BF
4分解反応槽31では、下記一般式(i)〜(iv)の反応が進行してBF
4−が分解される。
【0052】
HBF
4+H
2O→HBF
3(OH)+HF ・・(i)
HBF
3(OH)+H
2O→HBF
2(OH)
2+HF ・・(ii)
HBF
2(OH)
2+H
2O→HBF(OH)
3+HF ・・(iii)
HBF(OH)+H
2O→H
3BO
3+HF ・・(iv)
【0053】
多価金属塩は、BF
4−を分解するための薬剤であって、より詳しくは、BF
4−の最終分解生成物である遊離フッ化水素を系外へ除去し、BF
4−の分解反応(上記反応式(i)〜(iv))を促進させるため薬剤である。
【0054】
多価金属塩を構成する多価金属元素としては、アルミニウム、鉄、チタニウム等から選択される少なくとも1種である。具体的に、多価金属塩としては、遊離フッ化水素と反応する物質であれば特に限定されず、例えば硫酸アルミニウムなどのアルミニウム塩、塩化第二鉄、硫酸第二鉄などの第二鉄塩、又は塩化チタニウムなどの第二チタニウム塩等を挙げることができる。
【0055】
多価金属塩は、それを構成する多価金属元素がアルミニウム又は鉄の場合には、廃水に含まれるBF
4−1モルに対して、アルミニウムイオン又は鉄イオンが0.8〜5モルとなるように添加される。また、多価金属塩を構成する多価金属元素がチタニウムの場合には、廃水に含まれるBF
4−1モルに対して、チタニウムイオンが0.4〜3モルとなるように添加される。
【0056】
ここで、本実施の形態においては、多価金属塩の添加量を、BF
4−濃度測定装置20にて測定したBF
4−濃度の測定結果に基づいて決定することを特徴としている。具体的には、BF
4−濃度測定装置20において、BF
4−分解反応槽31(容器21)に収容された廃水に含まれるBF
4−の濃度がイオン電極装置部22に設けられたBF
4−電極22aと接触することによって測定されると、濃度測定部24からBF
4−濃度の測定結果に関する情報が制御部32に送信され、制御部32においてそのBF
4−濃度に基づく多価金属塩の添加量が決定される。詳しくは後述する。
【0057】
廃水に対して多価金属塩を添加すると、下記反応式(v)に示すように、その多価金属イオンがBF
4−を分解して生じた遊離フッ化水素と反応し、例えばAlF
n3−n、FeF
n3−n、TiF
n4−nを生成させる。これにより、上述した反応式(i)〜(iv)に示すBF
4−の分解反応を促進させる。なお、下記一般式(v)は、多価金属元素としてアルミニウムを添加した場合を例とした反応式である。
【0058】
6HF+Al
3++3OH
−→H
3AlF
6+3H
2O ・・(v)
【0059】
なお、BF
4−の分解反応を促進させる薬剤としては、多価金属塩に限られず、同種の多価金属元素からなる多価金属を添加することもできる。すなわち、例えば、アルミニウム、鉄、チタニウム等の多価金属を添加することができ、この場合においても、BF
4−濃度に基づく添加量で添加することができる。
【0060】
また、BF
4−を含む廃水に対しては、多価金属塩を添加するとともにpH調整剤を添加し、廃水のpH条件を酸性条件下に調整することが好ましい。具体的には、pH4以下とすることが好ましく、pH3以下とすることがより好ましく、pH2以下に調整することが特に好ましい。このようにpH調整剤を添加して廃水のpHを4以下に調整することで、BF
4−をより効率的に分解することができる。なお、pH調整剤としては、例えば硫酸、塩酸、硝酸等の酸薬剤や、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等のアルカリ薬剤を使用することができる。
【0061】
また、廃水に含まれるBF
4−の分解処理では、その廃水の紫外線を照射して行うことが好ましい。廃水に対して紫外線を照射することで、紫外線の強力なエネルギーによりBF
4−のフッ素(F)とホウ素(B)との結合が切断されやすくなり、分解反応効率を向上させることができる。
【0062】
また、BF
4分解反応槽31においては、廃水1を攪拌しながらBF
4−の分解処理を行うことが好ましい。廃水を攪拌することにより、分解反応効率が向上するとともに、紫外線を照射する場合においても照射面積を増やして照射分布を均一にすることができ、より短時間で処理することができる。攪拌処理においては、例えば擢型攪拌機、タービン型攪拌機、プロペラ型攪拌機のような機械式のもののほか、ポンプ等を用いた噴流攪拌機、さらにはガス吹込攪拌等を用いて行うことができる。
【0063】
[制御部]
制御部32では、BF
4−濃度測定装置20における濃度測定部24にて測定された廃水中のBF
4−濃度に関する情報を受信し、そのBF
4−濃度に基づいて、BF
4分解反応槽31に添加する多価金属塩の量とする。このように、本実施の形態においては、分解処理装置30おけるBF
4−の分解処理に使用する多価金属塩の添加量を、BF
4−濃度測定装置20にて測定したBF
4−濃度の測定結果に基づいて決定することを特徴としている。
【0064】
これにより、分解処理装置30では、廃水に含まれるBF
4−濃度をリアルタイムに認識して、その経時的に変化するBF
4−濃度に基づいて連続的に薬剤添加量を決定して、BF
4−の分解処理を行うことができる。このため、変化するBF
4−濃度に合わせて薬剤添加量を制御することができ、より適切に且つ効率的な処理を行うことができる。
【0065】
具体的に、制御部32においては、BF
4−濃度の測定結果に基づいて、多価金属塩の添加量を以下のようにして決定する。例えば、制御部32は、BF
4−濃度測定装置20における濃度測定部24からBF
4−濃度に関する情報を受信すると、そのBF
4−濃度の測定結果と、また0.1mol/L未満に制御した遊離F
−濃度等から、所定の係数を乗じて得られる値を多価金属塩の添加量とする。
【0066】
このように制御部32において多価金属塩の添加量が決定されると、その算出された添加量に関する情報が薬剤添加部33に送信される。
【0067】
[薬剤添加部]
薬剤添加部33では、制御部32からの多価金属塩の添加量に関する情報を受信すると、その添加量、すなわちBF
4−濃度の測定結果に基づく添加量の多価金属塩を、BF
4−分解反応槽31に収容された廃水に添加する。
【0068】
薬剤添加部33は、例えば多価金属塩を供給する多価金属塩供給槽と接続されており、多価金属塩供給槽から所定の割合の多価金属塩が供給されて、その所定量を貯留する。薬剤添加部33では、制御部32からの添加量に関する情報に基づいて、貯留した多価金属塩からその添加量の分の多価金属塩をBF
4−分解反応槽31に添加する。
【0069】
本実施の形態においては、上述したように、BF
4−濃度測定装置20において廃水のpHを4以下に調整してBF
4−濃度を測定し、その測定結果を分解処理装置30に送信して、分解処理装置30においてBF
4−濃度に基づいた薬剤の添加量を決定するようにしている。このような廃水の処理方法によれば、経時的に変動する廃水中のBF
4−濃度に基づいて連続的に薬剤の使用量を制御することができるため、より効率的な廃水の処理を行うことができる。
【0070】
また、本実施の形態においては、廃水に含まれるBF
4−濃度を測定するに先立ち、また廃水に多価金属塩等の薬剤を添加してBF
4−を分解するに先立ち、予め、その廃水に含まれる遊離F
−を除去していることにより、廃水に含まれる遊離F
−が強フッ酸になることを抑制し、より正確なBF
4−の濃度測定を行うことができる。また、遊離F
−を廃水中から除去することによって、BF
4−の分解のために添加した多価金属塩等の薬剤の無駄を抑制して、効率的な分解処理を行うことができる。
【0071】
(2)Fの除去処理について(脱フッ素処理槽)
次に、分解処理装置30においては、廃水に含まれるBF
4−を分解して得られたフッ素を除去する脱フッ素処理を行うようにすることができる。
図1の構成図に示すように、この脱フッ素処理は、脱フッ素(F)処理槽にて行うようにすることができる。
【0072】
具体的に、脱フッ素処理槽34における脱フッ素処理では、BF
4−を分解した廃水に対して、消石灰等のカルシウム塩とpH調整剤とを添加して、廃水に含まれるフッ素を不溶化させる(フッ素不溶化処理)。すなわち、BF
4−の分解によって生じたフッ素イオンを不溶化させる。
【0073】
ここで、カルシウム塩は、フッ素イオンを不溶性物質に転換させるために添加される。具体的に、前段のBF
4−分解反応槽31において多価金属塩としてアルミニウム塩、第二鉄塩、第二チタニウム塩等を用いてBF
4−を分解させると、可溶性のAlF
n3−n、FeF
n3−n、TiF
n4−nの錯体が生成されるが、これらの錯体が形成された廃水に対してカルシウム塩を添加することで、フッ素イオンをCaF
2に転換して不溶化させることができる。または、固体水酸化カルシウム又はカルシウム塩の加水分解生成物の水酸化カルシウムへのフッ素イオンの吸着反応によって、フッ素イオンをCaF
2に転換して不溶化させることもできる。このようにしてフッ素成分を不溶性のCaF
2に転換して不溶化させることにより、後述する凝集槽36においてフッ素成分を容易にフロック化させて除去することができる。
【0074】
カルシウム塩としては、塩化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、硫酸カルシウム等の無機系カルシウム塩を用いることが好ましい。
【0075】
また、pH調整剤は、脱フッ素処理槽34内における廃水のpH条件を調整するために添加されるが、上述したカルシウム塩の添加により生成した反応生成物を沈殿させ得るpH条件に調整することが好ましい。例えば、多価金属塩としてアルミニウム塩を用いた場合にはpH4〜8に調整することが好ましく、第二鉄塩及び第二チタニウム塩を用いた場合にはpH4以上に調整することが好ましい。これにより、効率的に廃水中のフッ素成分を不溶化させて除去することができる。
【0076】
pH調整剤としては、硫酸、塩酸、硝酸等の酸薬剤や、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等のアルカリ薬剤を用いることができる。
【0077】
(3)Bの除去処理について(脱ホウ素処理槽)
廃水中におけるフッ素を不溶化させると、次に、その廃水に含まれるホウ素を不溶化させる脱ホウ素処理を行うことができる。
図1の構成図に示すように、この脱ホウ素処理は、脱ホウ素(B)処理槽35にて行うようにすることができる。
【0078】
具体的に、脱ホウ素処理槽35における脱ホウ素処理では、廃水に対して、さらに消石灰等のカルシウム塩とpH調整剤とを添加して、廃水に含まれるホウ素を不溶化させる(ホウ素不溶化処理)。すなわち、BF
4−の分解によって生じたホウ素イオンを不溶化させる。
【0079】
ここで、カルシウム塩は、ホウ素イオン(ホウ酸イオン)を、上述した脱フッ素処理槽34におけるカルシウム塩の反応生成物やBF
4−分解反応槽31で添加された多価金属イオンの水酸化物によって包み込むように作用し、これによりホウ素イオンが不溶化する。このようにしてホウ素成分をカルシウム塩の反応生成物や多価金属イオンの水酸化物によって包み込んで不溶化させることにより、後述する凝集槽36においてホウ素成分を容易にフロック化させて除去することができるようになる。
【0080】
なお、カルシウム塩やpH調整剤は、脱フッ素処理槽34にて添加したものと同様のものを用いることができる。また、上述した脱フッ素処理槽34と脱ホウ素処理槽35とを一体として、脱フッ素処理と脱ホウ素処理とを併せて行うようにしてもよい。
【0081】
(4)凝集処理について(凝集槽)
次に、脱フッ素処理槽34、脱ホウ素処理槽35において、不溶性物質として沈殿した廃水中のフッ素及びホウ素の反応生成物を凝集させてフロック化する(凝集処理)。
図1の構成図に示すように、この凝集処理は、凝集槽36にて行うようにすることができる。
【0082】
具体的に、凝集槽36における凝集処理では、廃水に対して、アニオン系高分子凝集剤等の凝集剤を添加して、廃水中の反応生成物の粒子を粗大化(フロック化)させる。すなわち、BF
4−分解反応槽31において分解生成し、脱フッ素処理槽34及び脱ホウ素処理槽35にて不溶化されたフッ素イオンやホウ素イオンをフロック化する。
【0083】
ここで、凝集剤は、脱フッ素処理槽34や脱ホウ素処理槽35にて生成した不溶性物質の粒子をフロック化させるために添加する。具体的に、凝集剤としては、酸性領域ではノニオン性高分子凝集剤を用い、酸性から弱酸性領域では弱アニオン系高分子凝集剤を用い、また弱酸性から弱アルカリ性領域では中性アニオン系高分子凝集剤を用いることが好ましいが、得られるフロックの沈降性や清澄性等に応じて適宜選択することが望ましい。また、凝集剤は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。さらに、凝集剤としては、高分子凝集剤に限られず、不溶性物質をフロック化させ得るものであれば、無機凝集剤を用いてもよい。なお、凝集剤の添加量としては、処理する廃水に対して、例えば0.5mg/L〜15mg/Lの濃度範囲とする。
【0084】
凝集槽36においては、凝集剤を添加した後、例えばタービン型攪拌機、プロペラ型攪拌機等によって廃水を攪拌しながら処理することが好ましい。このように攪拌することで、凝集剤によるフロック化を促進させることができる。
【0085】
(5)沈降処理について(沈降槽)
このようにして、凝集槽36において不溶性物質がフロック化されると、その沈降性を有したフロックが沈降槽37内において沈降し、清澄な上澄水、すなわち処理後水が得られるようになる(沈降分離処理)。
【0086】
具体的には、沈降槽37においては、廃水に含有されていたフッ素はCaF
2として、またホウ素はホウ酸として沈降分離され、上澄水中のフッ素及びホウ素が低濃度まで処理されて、処理後水が得られるようになる。なお、固液分離された固体成分、すなわちフッ素やホウ素を含んだフロックは、沈殿物として沈降槽37から払い出される。