(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されない。以下で説明する実施形態の構成要素は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
【0018】
[タイヤの概要]
図1は、本実施形態に係るタイヤ1の一例を示す断面図である。タイヤ1は、空気入りタイヤである。タイヤ1は、トラック及びバスに装着される重荷重用タイヤである。トラック及びバス用タイヤ(重荷重用タイヤ)とは、日本自動車タイヤ協会(japan automobile tire manufacturers association:JATMA)から発行されている「日本自動車タイヤ協会規格(JATMA YEAR BOOK)」のC章に定められるタイヤをいう。なお、タイヤ1は、乗用車に装着されてもよいし、小型トラックに装着されてもよい。
【0019】
タイヤ1は、トラック及びバスのような車両に装着された状態で、回転軸AXを中心に回転して、路面を走行する。
【0020】
以下の説明においては、タイヤ1の回転軸AXと平行な方向を適宜、タイヤ幅方向、と称し、タイヤ1の回転軸AXに対する放射方向を適宜、タイヤ径方向、と称し、タイヤ1の回転軸AXを中心とする回転方向を適宜、タイヤ周方向、と称する。
【0021】
また、以下の説明においては、回転軸AXと直交し、タイヤ1のタイヤ幅方向の中心を通る平面を適宜、タイヤ赤道面CL、と称する。また、タイヤ赤道面CLとタイヤ1のトレッド部2の表面とが交差するセンターラインを適宜、タイヤ赤道線、と称する。
【0022】
また、以下の説明においては、タイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから遠い位置又は離れる方向を適宜、タイヤ幅方向外側、と称し、タイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLに近い位置又は近付く方向を適宜、タイヤ幅方向内側、と称し、タイヤ径方向において回転軸AXから遠い位置又は離れる方向を適宜、タイヤ径方向外側、と称し、タイヤ径方向において回転軸AXに近い位置又は近付く方向を適宜、タイヤ径方向内側、と称する。
【0023】
また、以下の説明においては、車両の車幅方向内側を適宜、車両内側、と称し、車両の車幅方向外側を適宜、車両外側、と称する。車両内側とは、車両の車幅方向において車両の中心に近い位置又は近付く方向をいう。車両外側とは、車両の車幅方向において車両の中心から遠い位置又は離れる方向をいう。
【0024】
図1は、タイヤ1の回転軸AXを通る子午断面を示す。
図1は、タイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLよりも一方側のタイヤ1の断面を示す。タイヤ1は、タイヤ幅方向において、タイヤ赤道面CLに対して対称な構造及び形状を有する。
【0025】
図1に示すように、タイヤ1は、トレッドパターンが形成されたトレッド部2と、トレッド部2のタイヤ幅方向両側に設けられたサイド部3と、サイド部3に接続されるビード部4とを備える。タイヤ1の走行において、トレッド部2が路面と接触する。
【0026】
また、タイヤ1は、カーカス5と、カーカス5よりもタイヤ径方向外側に配置されるベルト層6と、ビードコア7とを備える。カーカス5、ベルト層6、及びビードコア7は、タイヤ1の強度部材(骨格部材)として機能する。
【0027】
また、タイヤ1は、トレッドゴム8と、サイドゴム9とを備える。トレッド部2は、トレッドゴム8を含む。サイド部3は、サイドゴム9を含む。トレッドゴム8は、ベルト層6よりもタイヤ径方向外側に配置される。
【0028】
カーカス5は、タイヤ1の骨格を形成する強度部材である。カーカス5は、タイヤ1に空気が充填されたときの圧力容器として機能する。カーカス5は、有機繊維又はスチール繊維の複数のカーカスコードと、カーカスコードを被覆するカーカスゴムとを含む。カーカス5は、ビード部4のビードコア7に支持される。ビードコア7は、タイヤ幅方向においてカーカス5の一方側及び他方側のそれぞれに配置される。カーカス5は、ビードコア7において折り返される。
【0029】
ベルト層6は、タイヤ1の形状を保持する強度部材である。ベルト層6は、タイヤ幅方向においてカーカス5とトレッドゴム8との間に配置される。ベルト層6は、カーカス5を締め付ける。ベルト層6によって付与された締め付け力によってカーカス5の剛性が高められる。また、ベルト層6は、タイヤ1の走行における衝撃を緩和し、カーカス5を保護する。例えば、トレッド部2が損傷しても、ベルト層6により、カーカス5の損傷が防止される。
【0030】
ベルト層6は、タイヤ径方向に配置される複数のベルトプライを有する。本実施形態において、ベルト層6は、所謂4枚ベルトであり、4つのベルトプライを有する。ベルトプライは、最もタイヤ径方向内側に配置される第1ベルトプライ61と、第1ベルトプライ61に次いでタイヤ径方向内側に配置される第2ベルトプライ62と、第2ベルトプライ62に次いでタイヤ径方向内側に配置される第3ベルトプライ63と、最もタイヤ径方向外側に配置される第4ベルトプライ64とを含む。第1ベルトプライ61と第2ベルトプライ62とは隣り合う。第2ベルトプライ62と第3ベルトプライ63とは隣り合う。第3ベルトプライ63と第4ベルトプライ64とは隣り合う。
【0031】
タイヤ幅方向におけるベルトプライ61,62,63,64の寸法が異なる。タイヤ幅方向において、第2ベルトプライ62の寸法が最も大きく、第2ベルトプライ62に次いで第3ベルトプライ63の寸法が大きく、第3ベルトプライ63に次いで第1ベルトプライ61の寸法が大きく、第4ベルトプライ64の寸法が最も小さい。
【0032】
ベルトプライ61,62,63,64は、金属繊維の複数のベルトコードと、ベルトコードを被覆するベルトゴムとを含む。タイヤ径方向において隣り合う第2ベルトプライ62と第3ベルトプライ63とによって、クロスプライベルト層が形成される。第2ベルトプライ62と第3ベルトプライ63とは、第2ベルトプライ62のベルトコードと第3ベルトプライ63のベルトコードとが交差するように配置される。
【0033】
ビード部4は、カーカス5の両端部を固定する強度部材である。ビードコア7は、タイヤ1の内圧によって張力が付与されたカーカス5を支持する。ビード部4は、ビードコア7と、ビードフィラーゴム7Fとを有する。ビードコア7は、ビードワイヤ7Wがリング状に巻かれた部材である。ビードワイヤ7Wは、スチールワイヤである。
【0034】
ビードフィラーゴム7Fは、カーカス5をビードコア7に固定する。また、ビードフィラーゴム7Fは、ビード部4の形状を整え、ビード部4の剛性を高める。ビードフィラーゴム7Fは、カーカス5とビードコア7とによって形成される空間に配置される。ビードフィラーゴム7Fは、カーカス5のタイヤ幅方向端部がビードコア7の位置で折り返されることにより形成された空間に配置される。カーカス5が折り返されることによって形成された空間に、ビードコア7及びビードフィラーゴム7Fが配置される。
【0035】
トレッドゴム8は、カーカス5を保護する。トレッドゴム8は、アンダートレッドゴム81とキャップトレッドゴム82とを含む。アンダートレッドゴム81は、ベルト層6よりもタイヤ径方向外側に設けられる。キャップトレッドゴム82は、アンダートレッドゴム81よりもタイヤ径方向外側に設けられる。トレッドパターンは、キャップトレッドゴム82に形成される。
【0036】
サイドゴム9は、カーカス5を保護する。サイドゴム9は、キャップトレッドゴム82と接続される。
【0037】
トレッド部2は、タイヤ幅方向に複数設けられ、それぞれがタイヤ周方向に延在する周方向主溝10と、周方向主溝10によって区画され、路面と接触する接地面を有する複数の陸部20とを有する。周方向主溝10及び陸部20は、トレッドゴム8のキャップトレッドゴム82に形成される。陸部20は、タイヤ1の走行において路面と接触可能な接地面30を有する。
【0038】
周方向主溝10は、タイヤ周方向に延在する。周方向主溝10は、タイヤ赤道線と実質的に平行である。周方向主溝10は、タイヤ周方向に直線状に延在する。なお、周方向主溝10が、タイヤ周方向に波形状又はジグザグ状に設けられてもよい。
【0039】
周方向主溝10は、タイヤ幅方向に4つ設けられる。周方向主溝10は、タイヤ赤道面CLに対してタイヤ幅方向両側に1つずつ設けられるセンター主溝11と、タイヤ幅方向においてセンター主溝11それぞれの外側に設けられるショルダー主溝12とを含む。
【0040】
陸部20は、タイヤ幅方向に5つ設けられる。陸部20は、一対のセンター主溝11の間に設けられるセンター陸部21と、センター主溝11とショルダー主溝12との間に設けられるセカンド陸部22と、ショルダー主溝12よりもタイヤ幅方向外側に設けられるショルダー陸部23とを含む。
【0041】
センター陸部21は、タイヤ赤道面CLを含む。タイヤ赤道面CL(タイヤ赤道線)は、センター陸部21を通過する。セカンド陸部22は、タイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLの両側に1つずつ設けられる。ショルダー陸部23は、タイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLの両側に1つずつ設けられる。
【0042】
路面と接触可能な陸部20の接地面30は、センター陸部21の接地面31、セカンド陸部22の接地面32、及びショルダー陸部23の接地面33を含む。
【0043】
第4ベルトプライ64の一部は、センター主溝11の直下に配置される。第4ベルトプライ64は、ショルダー主溝12の直下には配置されない。ショルダー主溝12の直下には第3ベルトプライ63が配置される。なお、直下とは、タイヤ幅方向において同じ位置であって、タイヤ径方向内側の位置をいう。
【0044】
[用語の定義]
次に、本明細書で使用する用語について、
図1、
図2、
図3、
図4、及び
図5を参照して説明する。
図2は、本実施形態に係るトレッド部2の子午断面を示す図である。
図3は、
図2の一部を拡大した図である。
図4は、本実施形態に係るタイヤ1の一部を示す斜視図である。
図5は、本実施形態に係るタイヤ1の一部を破断した模式図である。トレッド部2の子午断面とは、回転軸AXを通り、回転軸AXと平行な断面をいう。タイヤ赤道面CLは、タイヤ幅方向においてトレッド部2の中心を通る。
【0045】
「日本自動車タイヤ協会規格」のG章に定義されているように、タイヤ1の外径とは、タイヤ1を適用リムに装着し、規定の空気圧とし、無負荷状態のタイヤ1の外径をいう。
【0046】
また、「日本自動車タイヤ協会規格」のG章に定義されているように、タイヤ1の総幅とは、タイヤ1を適用リムに装着し、規定の空気圧とし、無負荷状態のタイヤ1の側面の模様又は文字など、すべてを含むサイド部間の直線距離をいう。すなわち、タイヤ1の総幅とは、タイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLの一方側に配置されたタイヤ1を構成する構造物の最も外側の部位と、他方側に配置されたタイヤ1を構成する構造物の最も外側の部位との距離をいう。
【0047】
また、「日本自動車タイヤ協会規格」のG章に定義されているように、トレッド部2のトレッド幅とは、タイヤ1を適用リムに装着し、規定の空気圧とし、無負荷状態のタイヤ1のトレッド模様部分の両端の直線距離をいう。
【0048】
また、「日本自動車タイヤ協会規格」のG章に定義されているように、トレッド部2の接地幅とは、タイヤ1を適用リムに装着し、規定の空気圧とし、静止した状態で平板に対し垂直に置き、規定の質量に対応する負荷を加えたときの平板との接触面におけるタイヤ軸方向(タイヤ幅方向)最大直線距離をいう。すなわち、トレッド部2の接地幅とは、タイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLの一方側のトレッド部2の接地端Tと他方側のトレッド部2の接地端Tとの距離をいう。
【0049】
トレッド部2の接地端Tとは、タイヤ1を適用リムに装着し、規定の空気圧とし、静止した状態で平板に対し垂直に置き、規定の質量に対応する負荷を加えたときの平板と接触する部分のタイヤ幅方向の端部をいう。
【0050】
複数の周方向主溝10のうちトレッド部2の接地端Tに最も近い周方向主溝10は、ショルダー主溝12である。ショルダー陸部23は、ショルダー主溝12よりもタイヤ幅方向外側に配置されている。複数の陸部20のうちトレッド部10の接地端Tに最も近い陸部20は、ショルダー陸部23である。ショルダー陸部23は、接地端Tを含む。すなわち、接地端Tは、ショルダー陸部23に設けられる。複数の陸部20のうちトレッド部2のタイヤ赤道面CLに最も近い陸部20は、センター陸部21である。センター陸部21は、タイヤ赤道面CLを含む。タイヤ赤道面CLは、センター陸部21を通過する。
【0051】
なお、以下で説明する用語は、新品時のタイヤ1を適用リムに装着し、規定の空気圧とし、無負荷状態のときの条件における用語とする。なお、上述したように、接地幅及び接地端Tは、タイヤ1を適用リムに装着し、規定の空気圧とし、静止した状態で平板に対し垂直に置き、規定の質量に対応する負荷を加えたときに測定された寸法及び位置である。規定の質量に対応する負荷を加えたときに接地端Tが測定され、その測定された接地端Tの位置が、無負荷状態のときのトレッド部2の表面に位置付けられる。
【0052】
ショルダー陸部23の表面は、接地端Tよりもタイヤ幅方向内側に配置される接地面33と、接地端Tよりもタイヤ幅方向外側に配置される側面34とを含む。接地面33及び側面34は、トレッドゴム8のキャップトレッドゴム82に配置される。接地面33と側面34とは、キャップトレッドゴム82に形成された角部を介して接続される。接地面33は、回転軸AX(路面)と実質的に平行である。側面34は、回転軸AXと平行な軸と交差する。路面と側面34とがなす角度は、実質的に45[°]よりも大きく、接地面33と側面34とがなす角度は、実質的に225[°]よりも大きい。ショルダー陸部23の側面34とサイド部3の表面35とは、実質的に同方向を向く。接地端Tよりもタイヤ幅方向外側のショルダー陸部23の側面34は、サイド部3の表面35と接続される。
【0053】
ショルダー主溝12は、内面を有する。ショルダー主溝12の内面のタイヤ径方向外側に開口端部12Kが設けられる。開口端部12Kは、ショルダー主溝12と接地面30との境界部である。開口端部12Kは、タイヤ幅方向内側の開口端部12Kaと、タイヤ幅方向外側の開口端部12Kbとを含む。
【0054】
ショルダー主溝12の内面は、底部12Bと、開口端部12Kと底部12Bとを結ぶ側壁部12Sとを含む。ショルダー主溝12の側壁部12Sは、タイヤ幅方向内側の側壁部12Saと、タイヤ幅方向外側の側壁部12Sbとを含む。側壁部12Saは、開口端部12Kaと底部12Bとを結ぶ。側壁部12Sbは、開口端部12Kbと底部12Bとを結ぶ。開口端部12Kaは、側壁部12Saと接地面32との境界部である。開口端部12Kbは、側壁部12Sbと接地面33との境界部である。
【0055】
ショルダー主溝12の底部12Bとは、ショルダー主溝12の内面のうち、タイヤ径方向においてショルダー主溝12の開口端部12Kから最も遠い部位をいう。すなわち、ショルダー主溝12の底部12Bとは、ショルダー主溝12において最も深い部位をいう。底部12Bとは、ショルダー主溝12の内面のうち、回転軸AXに最も近い部位ともいえる。
【0056】
図2に示すように、トレッド部2の子午断面において、ショルダー主溝12の底部12Bは円弧状である。トレッド部2の子午断面において、側壁部12Saは、タイヤ径方向外側に向かってタイヤ幅方向内側に傾斜する。側壁部12Sbは、タイヤ径方向外側に向かってタイヤ幅方向外側に傾斜する。
【0057】
図2に示すように、トレッド部2の子午断面において、陸部20の接地面30を通る仮想線を、第1仮想線VL1、と定義する。第1仮想線VL1は、タイヤ1を適用リムに装着し、規定の空気圧とし、無負荷状態のときのタイヤ1の接地面30のプロファイルを示す。
【0058】
図2に示すように、トレッド部2の子午断面において、ショルダー主溝12の底部12Bを通り、第1仮想線VL1と平行な仮想線を、第2仮想線VL2、と定義する。すなわち、第2仮想線VL2は、タイヤ1を適用リムに装着し、規定の空気圧とし、無負荷状態において、第1仮想線VL1がショルダー主溝12の底部12Bに配置されるまで、第1仮想線VL1をタイヤ径方向内側に平行移動した仮想線である。
【0059】
図2に示すように、トレッド部2の子午断面において、第2仮想線VL2と接地端Tよりもタイヤ幅方向外側のショルダー陸部23の側面34との交点を、交点P、と定義する。交点Pは、タイヤ1を適用リムに装着し、規定の空気圧とし、無負荷状態のときの、第2仮想線VL2と側面34との交点である。
【0060】
図2に示すように、トレッド部2の子午断面において、タイヤ幅方向におけるタイヤ赤道面CLと交点Pとの距離を、距離A、と定義する。距離Aは、タイヤ1を適用リムに装着し、規定の空気圧とし、無負荷状態のときの、タイヤ赤道面CLと交点Pとの距離である。
【0061】
図2に示すように、トレッド部2の子午断面において、ショルダー主溝12の溝深さを、溝深さB、と定義する。溝深さBは、タイヤ1を適用リムに装着し、規定の空気圧とし、無負荷状態のときの、タイヤ径方向におけるショルダー主溝12の開口端部12Kとショルダー主溝12の底部12Bとの距離である。なお、ショルダー主溝12の開口端部12Kaと開口端部12Kbとのタイヤ径方向の位置が異なる場合、2つの開口端部12Ka,12Kbのうち回転軸AXから遠い方の開口端部12Kとショルダー主溝12の底部12Bとの距離を溝深さBとしてもよい。あるいは、タイヤ径方向外側の開口端部12Kbとショルダー主溝12の底部12Bとの距離を溝深さBとしてもよい。あるいは、タイヤ径方向における開口端部12Kaと底部12Bとの距離と開口端部12Kbと底部12Bとの距離との平均値を溝深さBとしてもよい。なお、開口端部12Kaと開口端部12Kbとのタイヤ径方向の位置が実質的に等しい場合、2つの開口端部12Ka,12Kbのうちいずれか一方の開口端部12Kとショルダー主溝12の底部12Bとの距離を溝深さBとしてもよい。
【0062】
なお、タイヤ1を適用リムに装着し、規定の空気圧とし、静止した状態で平板に対し垂直に置き、規定の質量に対応する負荷を加えたときにおいて、タイヤ径方向における開口端部12Kaの位置と開口端部12Kbの位置とは実質的に等しくなる。タイヤ1を適用リムに装着し、規定の空気圧とし、静止した状態で平板に対し垂直に置き、規定の質量に対応する負荷を加えたときの、タイヤ径方向における開口端部12Ka又は開口端部12Kbと底部12Bとの距離を溝深さBとしてもよい。
【0063】
図2に示すように、トレッド部2の子午断面において、タイヤ幅方向におけるタイヤ赤道面CLと接地端Tとの距離を、距離C、と定義する。接地端Tの位置は、規定の質量に対応する負荷を加えたときに測定され、その測定された位置が無負荷状態のときのトレッド部2の表面に位置付けられることによって規定される。距離Cは、タイヤ1を適用リムに装着し、規定の空気圧とし、無負荷状態のときの、タイヤ赤道面CLとプロットされた接地端Tとの距離である。距離Cは、接地幅の半分の値である。
【0064】
図2に示すように、トレッド部2の子午断面において、タイヤ幅方向におけるタイヤ赤道面CLとショルダー主溝12のタイヤ幅方向外側の開口端部12Kbとの距離を、距離D、と定義する。距離Dは、タイヤ1を適用リムに装着し、規定の空気圧とし、無負荷状態のときの、タイヤ赤道面CLと開口端部12Kbとの距離である。
【0065】
図3に示すように、トレッド部2の子午断面において、接地端Tと交点Pとを通る仮想線を、第3仮想線VL3、と定義する。第3仮想線VL3は、タイヤ1を適用リムに装着し、規定の空気圧とし、無負荷状態のときの、接地端Tと交点Pとを通る直線である。
【0066】
図3に示すように、トレッド部2の子午断面において、タイヤ赤道面CLと平行であり交点Pを通る仮想線を、第4仮想線VL4、と定義する。第4仮想線VL4は、タイヤ1を適用リムに装着し、規定の空気圧とし、無負荷状態のときの、交点Pを通る直線である。
【0067】
図3に示すように、トレッド部2の子午断面において、第3仮想線VL3と第4仮想線VL4とがなす角度を、角度θa、と定義する。
【0068】
図2に示すように、トレッド部2の子午断面において、タイヤ幅方向におけるショルダー主溝12の底部12Bと交点Pとの距離を、距離E、と定義する。距離Eは、タイヤ1を適用リムに装着し、規定の空気圧とし、無負荷状態のときの、底部12Bと交点Pとの距離である。
【0069】
図2に示すように、トレッド部2の子午断面において、側壁部12Sbを通り、タイヤ赤道面CLと平行な仮想線を、第5仮想線VL5、と定義する。第5仮想線VL5は、タイヤ1を適用リムに装着し、規定の空気圧とし、無負荷状態のときの、側壁部12Sbを通る直線である。
【0070】
図2に示すように、トレッド部2の子午断面において、側壁部12Sbは、第5仮想線VL5に対して、タイヤ径方向外側に向かってタイヤ幅方向外側に傾斜する。トレッド部2の子午断面において、第5仮想線VL5と、ショルダー主溝12のタイヤ幅方向外側の側壁部12Sbとがなす角度を、角度θb、と定義する。
【0071】
図2に示すように、トレッド部2の子午断面において、タイヤ幅方向におけるショルダー主溝12のタイヤ幅方向外側の開口端部12Kbと接地端Tとの距離を、距離F、と定義する。距離Fは、タイヤ幅方向におけるショルダー陸部23の接地面33の寸法である。距離Fは、タイヤ1を適用リムに装着し、規定の空気圧とし、無負荷状態のときの、開口端部12Kbと接地端Tとの距離である。
【0072】
図2に示すように、トレッド部2の子午断面において、タイヤ幅方向におけるセンター陸部21の寸法を、寸法G、と定義する。寸法Gは、タイヤ1を適用リムに装着し、規定の空気圧とし、無負荷状態のときの、センター陸部21の寸法である。寸法Gは、タイヤ幅方向におけるセンター陸部21の接地面31の寸法である。
【0073】
図1に示すように、トレッド部2の子午断面において、タイヤ幅方向におけるタイヤ赤道面CLと最もタイヤ幅方向外側のサイド部3の部位との距離を、距離H、と定義する。距離Hは、タイヤ1を適用リムに装着し、規定の空気圧とし、無負荷状態のときの、タイヤ赤道面CLと最もタイヤ幅方向外側のサイド部3の部位との距離である。距離Hは、総幅の半分の値である。
【0074】
図1に示すように、トレッド部2の子午断面において、タイヤ赤道面CLにおけるタイヤ外径を、タイヤ外径J、と定義する。タイヤ外径Jは、タイヤ1を適用リムに装着し、規定の空気圧とし、無負荷状態のときの、タイヤ赤道面CLにおけるタイヤ1の直径である。
【0075】
図1に示すように、トレッド部2の子午断面において、ショルダー主溝12のタイヤ幅方向内側の開口端部12Kaにおけるタイヤ外径を、タイヤ外径K、と定義する。タイヤ外径Kは、タイヤ1を適用リムに装着し、規定の空気圧とし、無負荷状態のときの、開口端部12Kaにおけるタイヤ1の直径である。
【0076】
図1に示すように、トレッド部2の子午断面において、接地端Tにおけるタイヤ外径を、タイヤ外径L、と定義する。タイヤ外径Lは、タイヤ1を適用リムに装着し、規定の空気圧とし、無負荷状態のときの、接地端Tにおけるタイヤ1の直径である。
【0077】
図2に示すように、トレッド部2の子午断面において、タイヤ径方向におけるショルダー主溝12の底部12Bとベルト層6との距離を、距離M、と定義する。本実施形態において、ショルダー主溝12の底部12Bの直下に第3ベルトプライ63が配置される。距離Mは、タイヤ1を適用リムに装着し、規定の空気圧とし、無負荷状態のときの、ショルダー主溝12の底部12Bと、その底部12Bの直下に配置される第3ベルトプライ63の外面との距離である。
【0078】
図2に示すように、トレッド部2の子午断面において、タイヤ径方向におけるショルダー陸部23の接地面33とクロスプライベルト層を形成する第2ベルトプライ62及び第3ベルトプライ63のうちタイヤ径方向外側に配置される第3ベルトプライ63の端部との距離を、距離N、と定義する。距離Nは、タイヤ1を適用リムに装着し、規定の空気圧とし、無負荷状態のときの、タイヤ幅方向における第3ベルトプライ63の端部と、接地面33のうち第3ベルトプライ63の端部の直上の部位との、タイヤ径方向における距離である。
【0079】
図2に示すように、トレッド部2の子午断面において、タイヤ幅方向におけるタイヤ赤道面CLとクロスプライベルト層を形成する第2ベルトプライ62及び第3ベルトプライ63のうちタイヤ幅方向における寸法が短い第3ベルトプライ63の端部との距離を、距離Q、と定義する。距離Qは、タイヤ1を適用リムに装着し、規定の空気圧とし、無負荷状態のときの、タイヤ赤道面CLと、タイヤ幅方向における第3ベルトプライ63の端部との、タイヤ幅方向における距離である。
【0080】
図2に示すように、トレッド部2の子午断面において、タイヤ幅方向におけるタイヤ赤道面CLと複数のベルトプライ61,62,63,64のうちタイヤ幅方向における寸法が最も長い第2ベルトプライ62の端部との距離を、距離S、と定義する。距離Sは、タイヤ1を適用リムに装着し、規定の空気圧とし、無負荷状態のときの、タイヤ赤道面CLと、タイヤ幅方向における第2ベルトプライ62の端部との、タイヤ幅方向における距離である。
【0081】
図4に示すように、接地端Tよりもタイヤ幅方向外側のショルダー陸部23の側面34において、タイヤ周方向に複数の凹部40が設けられる。凹部40は、側面34に形成されたラグ溝である。凹部40は、タイヤ径方向に延在する。
【0082】
図4に示すように、タイヤ周方向における凹部40の寸法を、寸法U、と定義する。凹部40の寸法Uは、タイヤ1を適用リムに装着し、規定の空気圧とし、無負荷状態のときの寸法である。タイヤ周方向における凹部40の寸法は、タイヤ径方向における凹部40の寸法よりも小さい。
【0083】
図4に示すように、タイヤ周方向において隣り合う凹部40の間の寸法を、寸法V、と定義する。寸法Vは、タイヤ1を適用リムに装着し、規定の空気圧とし、無負荷状態のときの隣り合う凹部40の間隔の寸法である。寸法Vは、寸法Uよりも大きい。
【0084】
図4に示すように、ショルダー陸部23の側面34において、タイヤ周方向に複数のサイプ41が設けられる。サイプ41は、凹部40(ラグ溝)よりも溝深さが浅く、且つ、溝幅が小さい。サイプ41は、タイヤ径方向に延在する。サイプ41は、タイヤ周方向において隣り合う凹部40の間に複数設けられる。
【0085】
図4に示すように、タイヤ周方向において隣り合うサイプ41の間の寸法を、寸法W、と定義する。寸法Wは、タイヤ1を適用リムに装着し、規定の空気圧とし、無負荷状態のときの隣り合うサイプ41の間隔の寸法である。寸法Wは、タイヤ径方向におけるサイプ41の寸法よりも小さい。
【0086】
なお、ラグ溝(凹部)40とは、そのラグ溝が接地したと仮定したとき、接地した場合においても溝の開口が維持される溝をいう。サイプ41とは、そのサイプ41が接地したと仮定したとき、サイプ41の開口が維持されずに塞がる溝をいう。
【0087】
図5に示すように、タイヤ赤道線に対する第2ベルトプライ62のベルトコードの傾斜方向と第3ベルトプライ63のベルトコードの傾斜方向とは異なる。第2ベルトプライ62のベルトコードは、タイヤ周方向の一方側に向かってタイヤ幅方向の一方側に傾斜する。第3ベルトプライ63のベルトコードは、タイヤ周方向の一方側に向かってタイヤ幅方向の他方側に傾斜する。
【0088】
タイヤ赤道線に対する第2ベルトプライ62のベルトコードの傾斜角度を、角度θc、と定義する。また、タイヤ赤道線に対する第3ベルトプライ63のベルトコードの傾斜角度を、角度θd、と定義する。
【0089】
[特徴点の説明]
次に、本実施形態に係るタイヤ1の特徴点について説明する。タイヤ1は複数の特徴点を有する。各特徴点について順次説明する。
【0090】
<特徴点1>
0.80 ≦ (B+C)/A ≦ 1.15 …(1A)
の条件を満足する。より好ましくは、
0.80 ≦ (B+C)/A ≦ 1.05 …(1B)
の条件を満足する。
【0091】
タイヤ1が旋回したり縁石に乗り上げたりして、ショルダー主溝12が拡がるように変形し、ショルダー陸部23がタイヤ幅方向外側に変位した場合、値(B+C)は、溝深さBに応じて、値Aに近付くこととなる。特徴点1は、ショルダー陸部23がタイヤ幅方向外側に変位したときの、距離Aと、溝深さBと距離Cとの和との近似度合いを規定する。
【0092】
<特徴点2>
5[°] ≦ θa ≦ 50[°] …(2A)
の条件を満足する。より好ましくは、
10[°] ≦ θa ≦ 40[°] …(2B)
の条件を満足する。
【0093】
特徴点2は、ショルダー陸部23の側面34の立ち上がり度合いを規定する。
【0094】
<特徴点3>
D/C ≦ 0.80 …(3)
の条件を満足する。
【0095】
特徴点3は、距離C(接地幅の半値)の外側20[%]には周方向主溝10(ショルダー主溝12)を配置しないことを規定する。
【0096】
<特徴点4>
タイヤ1の子午断面において、ショルダー主溝12の底部12Bは円弧状である。底部12Bの曲率半径Rは、2.0[mm]以上である。すなわち、
2.0 ≦ R …(4A)
の条件を満足する。より好ましくは、
2.0 ≦ R ≦ 5.0 …(4B)
の条件を満足する。
【0097】
特徴点4は、ショルダー主溝12の底部12Bは角張ってなく、曲率半径Rは大きいことが好ましいことを規定する。
【0098】
<特徴点5>
2.0 ≦ E/B ≦ 5.0 …(5)
の条件を満足する。
【0099】
特徴点5は、溝深さBと距離Eとの比を規定する。
【0100】
<特徴点6>
5[°] ≦ θb ≦ 45[°] …(6A)
の条件を満足する。より好ましくは、
5[°] ≦ θb ≦ 20[°] …(6B)
の条件を満足する。
【0101】
特徴点6は、ショルダー主溝12の内面のうち、タイヤ幅方向外側の側壁部12Sbの立ち上がり度合いを規定する。
【0102】
<特徴点7>
12[mm] ≦ B ≦ 25[mm] …(7C)
の条件を満足する。より好ましくは、
15[mm] ≦ B ≦ 17[mm] …(7D)
の条件を満足する。
【0103】
特徴点7は、溝深さBの絶対値を規定する。
【0104】
<特徴点8>
0.80 ≦ F/G ≦ 1.30 …(8)
の条件を満足する。
【0105】
特徴点8は、タイヤ幅方向におけるセンター陸部21の接地面31の寸法とショルダー陸部23の接地面33の寸法との比を規定する。
【0106】
<特徴点9>
1.5 ≦ F/B ≦ 4.0 …(9)
の条件を満足する。
【0107】
特徴点9は、タイヤ幅方向におけるショルダー陸部23の接地面33の寸法と溝深さBとの比を規定する。
【0108】
<特徴点10>
J > K …(10A)
J > L …(10B)
0.05 ≦ (K−L)/(J−L) ≦ 0.85 …(10C)
の条件を満足する。
【0109】
特徴点10は、トレッド部2の接地面30のプロファイルの肩落ち量を規定する。
【0110】
<特徴点11>
1.0 ≦ N/B ≦ 1.4 …(11)
の条件を満足する。
【0111】
特徴点11は、ショルダー陸部23の接地面33と第3ベルトプライ63との距離Nとショルダー主溝12の溝深さBとの関係を規定する。
【0112】
<特徴点12>
室温(23[℃])におけるキャップトレッドゴム82のへこみに対する抵抗を示す硬度をHs、60[℃]におけるキャップトレッドゴム82の貯蔵剪断弾性率と損失剪断弾性率との比を示す損失係数をtanδ、としたとき、
60 ≦ Hs …(12A)
0.23 ≧ tanδ …(12B)
の条件を満足する。より好ましくは、
65 ≦ Hs ≦ 75 …(12C)
0.05 ≦ tanδ ≦ 0.23 …(12D)の条件を満足する。
【0113】
特徴点12は、周方向主溝10及び陸部20が形成されるトレッドゴム8のキャップトレッドゴム82の物性を規定する。
【0114】
<特徴点13>
キャップトレッドゴム82を300[%]伸ばすのに要した引張応力を示す300[%]伸長時モジュラスをMd、としたとき、
9.0[MPa] ≦ Md ≦ 17.1[MPa] …(13A)
の条件を満足する。
【0115】
また、100[℃]においてキャップトレッドゴム82を引っ張って破断させるのに要した最大引張応力を示す引張強度をTB、としたとき、
13.0[MPa] ≦ TB ≦ 23.3[MPa] …(13B)
の条件を満足する。
【0116】
また、100[℃]におけるキャップトレッドゴム82の破断時の伸び率を示す引張伸度をEB、としたとき、
444[MPa] ≦ EB ≦ 653[MPa] …(13C)
の条件を満足する。
【0117】
また、室温におけるアンダートレッドゴム81の硬度Hsは、キャップトレッドゴム82の硬度Hsよりも小さいことが好ましい。また、室温におけるサイドゴム9の硬度Hsは、キャップトレッドゴム82の硬度Hs及びアンダートレッドゴム81の硬度Hsよりも小さいことが好ましい。
【0118】
また、60[℃]におけるアンダートレッドゴム81のtanδは、キャップトレッドゴム82のtanδよりも小さいことが好ましい。また、60[℃]におけるサイドゴム9のtanδは、キャップトレッドゴム82のtanδよりも小さいことが好ましい。
【0119】
また、アンダートレッドゴム81の300[%]伸長時モジュラスMdは、キャップトレッドゴム82の300[%]伸長時モジュラスMdと同等である又はキャップトレッドゴム82の300[%]伸長時モジュラスMdよりも小さいことが好ましい。また、サイドゴム9の300[%]伸長時モジュラスMdは、キャップトレッドゴム82の300[%]伸長時モジュラスMdよりも小さいことが好ましい。
【0120】
また、100[℃]におけるアンダートレッドゴム81の引張強度TBは、キャップトレッドゴム82の引張強度TBよりも小さいことが好ましい。また、100[℃]におけるサイドゴム9の引張強度TBは、キャップトレッドゴム82の引張強度TBよりも小さいことが好ましい。
【0121】
また、100[℃]におけるアンダートレッドゴム81の引張伸度EBは、キャップトレッドゴム82の引張伸度EBよりも小さいことが好ましい。また、100[℃]におけるサイドゴム9の引張伸度EBは、アンダートレッドゴム81の引張伸度EBと同等であることが好ましい。
【0122】
キャップトレッドゴム82、アンダートレッドゴム81、及びサイドゴム9それぞれの室温における硬度Hs、300[%]伸長時モジュラスMd、100[℃]における引張強度TB、100[℃]における引張伸度EB、及び60[℃]におけるtanδの好ましい数値は、以下の[表1]の通りである。すなわち、[表1]は、特徴点12及び特徴点13をまとめたものである。なお、[表1]の括弧内の数値は、実際に作成したタイヤ1における数値を示す。
【0124】
<特徴点14>
第1ベルトプライ61において、50[mm]当たりに配置されるベルトコードの数をBP1、としたとき、
15[本] ≦ BP1 ≦25[本] …(14)
の条件を満足する。
【0125】
<特徴点15>
新品時におけるベルトプライ61,62,63,64それぞれのベルトゴムを100[%]伸ばすのに要した引張応力を示す100[%]伸張時モジュラスをMbp、としたとき、
5.5[MPa] ≦ Mbp …(15)
の条件を満足する。
【0126】
<特徴点16>
0.70 ≦ C/H ≦ 0.90 …(16)
の条件を満足する。
【0127】
特徴点16は、接地幅の半分の値と総幅の半分の値との比を規定する。
【0128】
<特徴点17>
45[°] ≦ θc ≦ 70[°] …(17A)
45[°] ≦ θd ≦ 70[°] …(17B)
の条件を満足する。なお、上述したように、第2ベルトプライ62のベルトコードの傾斜方向と第3ベルトプライ63のベルトコードの傾斜方向とは、異なる。
【0129】
第1ベルトプライ61のベルトコードは、第2ベルトプライ62のベルトコードと同一方向に傾斜する。すなわち、第1ベルトプライ61と第2ベルトプライ62とは、第1ベルトプライ61のベルトコードと第2ベルトプライ62のベルトコードとが同一方向に傾斜するように積層される。タイヤ赤道線に対する第1ベルトプライ61のベルトコードの傾斜角度をθe、としたとき、
45[°] ≦ θe ≦ 70[°] …(17C)
の条件を満足する。
【0130】
<特徴点18>
1.0 ≦ F/U …(18)
の条件を満足する。
【0131】
特徴点18は、タイヤ幅方向におけるショルダー陸部23の接地面33の寸法と、ショルダー陸部23の側面34に設けられた凹部40の寸法との比を規定する。
【0132】
<特徴点19>
0.10 ≦ U/V ≦ 0.60 …(19)
の条件を満足する。
【0133】
特徴点19は、ショルダー陸部23の側面34に設けられた凹部40の寸法と、凹部40の間隔の寸法との比を規定する。
【0134】
<特徴点20>
5[mm] ≦ U ≦20[mm] …(20)
の条件を満足する。
【0135】
特徴点20は、凹部40の寸法の絶対値を規定する。
【0136】
<特徴点21>
3 ≦ F/W ≦ 10 …(21)
の条件を満足する。
【0137】
特徴点21は、タイヤ幅方向におけるショルダー陸部23の接地面33の寸法と、ショルダー陸部23の側面34に設けられたサイプ41の間隔の寸法との比を規定する。
【0138】
<特徴点22>
0.10 ≦ M/B ≦ 0.75 …(22)
の条件を満足する。
【0139】
特徴点22は、ショルダー主溝12の直下のトレッドゴム8の距離Mと溝深さBとの比を規定する。
【0140】
<特徴点23>
0.75 ≦ S/A ≦ 0.95 …(23)
の条件を満足する。
【0141】
特徴点23は、第2ベルトプライ62の幅の半分の値と距離Aとの比を規定する。
【0142】
<特徴点24>
タイヤ幅方向におけるベルト層6の端部は、ショルダー主溝12よりもタイヤ幅方向内側又はタイヤ幅方向外側に配置される。すなわち、ベルトプライ61,62,63,64の端部は、ショルダー主溝12の直下に配置されない。本実施形態において、タイヤ幅方向における第4ベルトプライ64の端部は、ショルダー主溝12のタイヤ幅方向内側の開口端部12Kaよりもタイヤ幅方向内側に配置される。タイヤ幅方向における第1,第2,第3ベルトプライ61,62,63の端部は、ショルダー主溝12のタイヤ幅方向外側の開口端部12Kbよりもタイヤ幅方向外側に配置される。
【0143】
[作用及び効果]
本実施形態によれば、上述の特徴点1から特徴点24のうち、少なくとも特徴点1を満足することにより、タイヤ1が車両に装着された状態で旋回したり縁石に乗り上げたりした場合において、ショルダー陸部23が過度に変形することが抑制される。
【0144】
本発明者は、評価試験用タイヤとして、上述の特徴点を満足するタイヤと満足しないタイヤとを作成し、その評価試験用タイヤを車両に装着して、縁石に乗り上げさせる評価試験を実施した。
図6は、評価試験を説明するための模式図である。
図6に示すように、車両に装着された評価試験用タイヤの車両外側のショルダー陸部23を縁石に乗り上げさせた。各評価試験用タイヤについて、車両外側のショルダー陸部23を縁石に乗り上げさせたときのショルダー陸部23の変形量を測定した。
図6に示すように、タイヤの構造によっては、ショルダー陸部23がめくれるように変形し、ショルダー陸部23の接地面33が反り返る現象が発生する。ショルダー陸部23の変形量として、縁石の上面と反り返った接地面33の接地端Tとの鉛直方向の距離SHを測定した。なお、縁石の上面は水平面と実質的に平行である。以下の説明においては、縁石の上面と反り返った接地面33の接地端Tとの鉛直方向の距離SHを、反り返り量SH、と称する。
【0145】
反り返り量SHが大きいことは、ショルダー陸部23が過度に変形していることを意味する。反り返り量SHが大きいと、ショルダー主溝12の内面に亀裂が発生したり、ショルダー陸部23が破損したり、リブティアと呼ばれる現象が発生したりする可能性が高くなる。リブティアとは、外力の作用によりトレッドゴム8の一部がもげたり破損したりする現象をいう。反り返り量SHが小さいほど、ショルダー主溝12の内面の亀裂の発生抑制、ショルダー陸部23の破損抑制、及びリブティアの発生抑制の観点から好ましい。
【0146】
図7は、各評価試験用タイヤについての反り返り量SHの試験結果を示す。
図7のグラフの横軸は、特徴点1の数値を示す。
図7のグラフの縦軸は、反り返り量SHを示す。反り返り量SHが6[mm]よりも大きい場合、ショルダー主溝12の内面の亀裂、ショルダー陸部23の破損、及びリブティアの発生のリスクが高まる。反り返り量SHが6[mm]以下の場合、ショルダー主溝12の内面の亀裂の発生抑制、ショルダー陸部23の破損抑制、及びリブティアの発生抑制の効果が期待できる。
【0147】
図7に示すように、従来例に係るタイヤは、特徴点1の条件を満足せず、(B+C)/Aの値が1.15よりも大きい。実施例A,B,C,D,Eに係るタイヤは、特徴点1の条件を満足する。従来例に係るタイヤの反り返り量SHは、6[mm]よりも大きい。実施例A,B,C,D,Eに係るタイヤの反り返り量SHは、6[mm]以下である。
【0148】
図6を参照して説明したように、タイヤ1が旋回したり縁石に乗り上げたりして、ショルダー主溝12が拡がるように変形すると、ショルダー主溝12の内面が縁石の上面に接触し、ショルダー陸部23がタイヤ幅方向外側(車両外側)に変位する現象が発生する。溝深さBが深過ぎたり、距離C(接地幅の半値)が大き過ぎたり、距離Aが小さ過ぎたりして、(B+C)/Aの値が大きくなると、ショルダー陸部23が反り返り易くなると考えられる。本発明者は、(B+C)/Aの値を1.15以下とすることにより、ショルダー陸部23の反り返りを抑制できるという知見を得た。
【0149】
実施例A,B,Cに係るタイヤは、特徴点1の条件を満足し、特徴点2から特徴点24の条件を満足しないタイヤである。実施例A,B,Cから分かるように、(B+C)/Aの値が小さいほど、反り返り量SHは小さい。
【0150】
実施例Dは、特徴点1、特徴点2、及び特徴点3の条件を満足するタイヤである。実施例Bに係るタイヤの(B+C)/Aの値と、実施例Dに係るタイヤの(B+C)/Aの値とは、ほぼ等しい。実施例Dに係るタイヤの反り返り量SHは、実施例Bに係るタイヤの反り返り量SHよりも小さい。
【0151】
特徴点2は、ショルダー陸部23の側面34の立ち上がり度合いを規定する。特徴点3は、距離C(接地幅の半値)の外側20[%]にはショルダー主溝12を配置しないことを規定する。特徴点2及び特徴点3である、
5[°] ≦ θa ≦ 50[°] …(2A)
D/C ≦ 0.80 …(3)
の条件を満足することにより、タイヤの反り返り量SHを抑制することができる。
【0152】
実施例Eは、特徴点1、特徴点2、特徴点3、特徴点4、特徴点5、特徴点6、特徴点7、特徴点12、及び特徴点13の条件を満足するタイヤである。実施例Bに係るタイヤの(B+C)/Aの値と、実施例Dに係るタイヤの(B+C)/Aの値と、実施例Eに係るタイヤの(B+C)/Aの値とは、ほぼ等しい。実施例Eに係るタイヤの反り返り量SHは、実施例Bに係るタイヤの反り返り量SH及び実施例Dに係るタイヤの反り返り量SHよりも小さい。
【0153】
特徴点4の条件が満足されることにより、ショルダー陸部23の反り返りが抑制されるとともに、ショルダー主溝12の底部12Bにおいて亀裂が発生することが抑制され、リブティアの発生が抑制される。
【0154】
また、特徴点5の条件が満足されることにより、タイヤの旋回において、ショルダー陸部23が反り返ることが抑制され、操縦安定性能が向上する。E/Bの値が5.0よりも大きいと、ショルダー陸部23の剛性がセンター陸部21の剛性よりも大きくなり、ステアリングに対する車両の挙動リニアリティ―が悪化する。E/Bの値が2.0よりも小さいと、ショルダー陸部23の剛性が極端に低下し、タイヤ1の旋回において、ショルダー陸部23が反り返る可能性が高くなる。ショルダー陸部23が反り返ることにより、タイヤ1の旋回における操縦安定性能が低下する。
【0155】
また、特徴点6の条件が満足されることにより、ショルダー主溝12の内面に亀裂が発生したり、リブティアが発生したりすることが抑制される。
【0156】
また、特徴点7の条件が満足されることによっても、ショルダー主溝12の内面に亀裂が発生したり、リブティアが発生したりすることが抑制される。
【0157】
また、特徴点12,13の条件が満足されるように、キャップトレッドゴム82、アンダートレッドゴム81、及びサイドゴム9の物性を決定することにより、ショルダー陸部23の反り返りが抑制され、ショルダー主溝12の内面に亀裂が発生したり、ショルダー陸部23が破損したり、リブティアが発生したりすることが抑制される。
【0158】
また、本実施形態によれば、特徴点1及び特徴点23である、
0.80 ≦ (B+C)/A ≦ 1.15 …(1A)
0.75 ≦ S/A ≦ 0.95 …(23)
の条件を満足することにより、トレッドゴム8の破損を防止するとともに、コーナーリング時における接地面積の低下を抑止し、轍ワンダリング性能を向上することができる。轍ワンダリング性能とは、轍ワンダリング性能とは、車両に装着されたタイヤが、轍がある路面を走行したとき、ふらつくことなく、十分な走行安定性が得られる性能をいう。
【0159】
(B+C)/Aの値が大きいことは、溝深さBが大きく、ショルダー陸部23が変形又は変位し易いことを意味する。(B+C)/Aの値が小さいことは、溝深さBが小さく、ショルダー陸部23が変形又は変位し難いことを意味する。(B+C)/Aの値が1.15よりも大きい場合、タイヤ1の走行においてショルダー陸部23が過度に動き、上述したように、ショルダー陸部23が反り返る現象が発生する可能性が高くなる。その結果、例えばコーナーリング時においてタイヤ1の接地面積が低下し、車両に装着されたタイヤ1の操縦安定性能が低下する。(B+C)/Aの値が0.80よりも小さい場合、タイヤ1の走行においてショルダー陸部23の動きが拘束され過ぎるため、この場合においても、タイヤ1の操縦安定性能が低下する。
【0160】
また、特徴点23の条件が満足されることにより、轍ワンダリング性能が向上する。S/Aの値が大きいことは、ベルト層6によりトレッド部2の剛性が高くなることを意味する。S/Aの値が小さいことは、トレッド部2の剛性が低いことを意味する。S/Aの値が0.95よりも大きいと、トレッド部2の剛性、特にショルダー陸部23の剛性が極端に高くなり、ショルダー陸部23が轍と接触したとき、ショルダー陸部23に大きな反発力が与えられ、その結果、タイヤ1は轍を円滑に乗り越えることが困難となる。S/Aの値が0.75よりも小さいと、トレッド部2の剛性、特にショルダー陸部23の剛性が極端に低くなり、タイヤ1が轍を乗り越えるとき、十分なコーナーリングフォースを得ることができない。特徴点23の条件を満足することにより、轍ワンダリング性能が向上し、タイヤ1は轍がある路面を安定して走行することができる。
【0161】
また、本実施形態によれば、特徴点18である、
1.0 ≦ F/U …(18)
の条件を満足する。特徴点18の条件が満足されることにより、ショルダー陸部23の反り返りが抑制される。凹部40の寸法Uが大きく、F/Uの値が1.0よりも小さいことは、ショルダー陸部23の剛性が低下することを意味する。その結果、タイヤ1の旋回において、ショルダー陸部23が反り返り易くなる。また、凹部40の寸法Uが大きい場合、タイヤ1の旋回において、ショルダー陸部23が反り返り、接地面積が低下するので、十分なコーナーリングフォースを得られなくなる。特徴点18の条件が満足されることにより、タイヤ1の旋回におけるショルダー陸部23の反り返りが抑制され、走行安定性及び乗心地が改善される。
【0162】
また、本実施形態によれば、特徴点21である、
3 ≦ F/W ≦ 10 …(21)
の条件を満足する。F/Wの値が10よりも大きい場合、ショルダー陸部23の剛性が極端に低下し、タイヤ1が轍を乗り越えるとき、コーナーリングフォースを十分に確保できない。F/Wの値が3よりも小さい場合、ショルダー陸部23の剛性が極端に高くなり、ショルダー陸部23が轍と接触したとき、ショルダー陸部23に大きな反発力が与えられ、その結果、タイヤ1は轍を円滑に乗り越えることが困難となる。特徴点21の条件を満足することにより、タイヤ1は轍がある路面を安定して走行することができる。
【0163】
また、特徴点21の条件が満足されることによっても、タイヤ1の旋回又は縁石乗り上げにおいて、ショルダー陸部23の変形が抑制され、ショルダー陸部23が反り返ることが抑制される。
【0164】
また、本実施形態によれば、特徴点16である、
0.70 ≦ C/H ≦ 0.90 …(16)
の条件を満足する。特徴点16の条件を満足せずに、C/Hの値が0.90よりも大きい場合、距離H(総幅の半分の値)と距離C(接地幅の半分の値)とが近似し、タイヤ1の総幅とトレッドゴム8の幅とが近似することとなる。その結果、タイヤ1の直進安定性が低下し、轍がある路面をタイヤ1は安定して走行することが困難となる。C/Hの値が0.70よりも大きい場合、タイヤ1の総幅に対する接地幅が極端に小さいこととなる。その結果、コーナーリングにおいてトレッドゴム8が変形した場合、タイヤ幅方向におけるトレッドゴム8の接触面30とサイド部3の表面との変位量が大きくなる。この場合、タイヤ1は轍を円滑に乗り越えることができなくなる。特徴点16を満足することにより、タイヤ1は轍がある路面を安定して走行することができる。
【0165】
また、特徴点1の条件を満足することにより、ショルダー陸部23が縁石に接触しても、トレッドゴム8がもげたり欠けたりすることが抑制される。(B+C)/Aの値が1.15よりも大きいと、ショルダー陸部23が動き易くなり、ショルダー陸部23が縁石に接触した場合、もげ易い。(B+C)/Aの値が0.80よりも小さいと、ショルダー陸部23の接地圧が高くなり、ショルダー陸部23が縁石に接触した場合、欠け易い。特徴点1の条件を満足することにより、ショルダー陸部23が縁石に接触しても、トレッドゴム8がもげたり欠けたりすることが抑制される。
【0166】
また、特徴点2の条件を満足することにより、ショルダー陸部23が縁石に接触しても、トレッドゴム8がもげたり欠けたりすることが更に効果的に抑制される。角度θaが50[°]よりも大きいと、ショルダー陸部23の接地圧が高くなり、ショルダー陸部23が縁石に接触した場合、欠け易い。角度θaが5[°]よりも小さいと、ショルダー陸部23が動き易くなり、ショルダー陸部23が縁石に接触した場合、もげ易い。特徴点2の条件を満足することにより、ショルダー陸部23が縁石に接触しても、トレッドゴム8がもげたり欠けたりすることが更に効果的に抑制される。
【0167】
また、特徴点3の条件を満足することにより、距離Cの外側20[%]にはショルダー主溝12が配置されないので、ショルダー陸部23の過度な動きが抑制される。
【0168】
また、特徴点22の条件を満足することにより、耐摩耗性能の低下を抑制しつつ、転がり抵抗を低減することができる。M/Bの値が大きいことは、ショルダー主溝12の直下に存在するトレッドゴム8の体積が過多であることを意味する。M/Bの値が小さいことは、ショルダー主溝12の直下に存在するトレッドゴム8の体積が過少であることを意味する。M/Bの値が0.75よりも大きい場合、タイヤ1の走行においてトレッドゴム8の発熱が阻害される。その結果、タイヤ1の転がり抵抗が悪化する。M/Bの値が0.10よりも小さい場合、トレッド部2の耐摩耗性能が低下し、トレッド部2の摩耗末期にベルト層6が露出してしまう可能性が高くなる。特徴点22の条件を満足することにより、耐摩耗性能の低下を抑制しつつ、転がり抵抗を低減することができる。
【0169】
また、本実施形態によれば、特徴点22の条件を満足する。M/Bの値が大きいことは、ショルダー主溝12の直下に存在するトレッドゴム8の体積が過多であることを意味する。M/Bの値が小さいことは、ショルダー主溝12の直下に存在するトレッドゴム8の体積が過少であることを意味する。M/Bの値が0.75よりも大きい場合、タイヤ1の走行においてトレッドゴム8の発熱が阻害される。その結果、タイヤ1の転がり抵抗が悪化する。M/Bの値が0.10よりも小さい場合、トレッド部2の耐摩耗性能が低下し、トレッド部2の摩耗末期にベルト層6が露出してしまう可能性が高くなる。特徴点22の条件を満足することにより、耐摩耗性能の低下を抑制しつつ、転がり抵抗を低減することができる。
【0170】
また、本実施形態によれば、特徴点12の条件を満足する。硬度Hsが60よりも小さいと、タイヤ1の走行においてトレッドゴム8(キャップトレッドゴム82)が過度に動くこととなり、その結果、タイヤ1の転がり抵抗が増大する。tanδが0.23よりも大きいと、タイヤ1の転がり抵抗が増大する。特徴点12の条件を満足することにより、タイヤ1の転がり抵抗を低減することができる。
【0171】
また、特徴点8の条件が満足されることにより、センター陸部21を含むトレッド部2のセンター部と、ショルダー陸部23を含むトレッド部2のショルダー部との剛性差が小さくなるので、ショルダー部に偏摩耗が発生することが抑制される。F/Gの値が1.30よりも大きい場合、ショルダー部の剛性が過大となり、耐ショルダー偏摩耗性能が低下する。F/Gの値が0.80よりも小さい場合、ショルダー部の剛性が過小となり、この場合においても、耐ショルダー偏摩耗性能が低下する。
【0172】
また、特徴点9の条件が満足されることによっても、耐ショルダー偏摩耗性能の低下を抑制することができる。F/Bの値が4.0よりも大きい場合、ショルダー陸部23の剛性が過大となり、耐ショルダー偏摩耗性能が低下する。F/Bの値が1.5よりも小さい場合、ショルダー部の剛性が過小となり、この場合においても、耐ショルダー偏摩耗性能が低下する。
【0173】
また、特徴点10の条件が満足されることによっても、耐ショルダー偏摩耗性能の低下を抑制することができる。(K−L)/(J−L)の値が0.85よりも大きい場合、ショルダー部の剛性が過小となり、耐ショルダー偏摩耗性能が低下する。(K−L)/(J−L)の値が0.05よりも小さい場合、ショルダー部の剛性が過大となり、この場合においても、耐ショルダー偏摩耗性能が低下する。
【0174】
また、特徴点11の条件が満足されることにより、ベルト層6の耐久性が向上する。N/Bの値が1.4よりも大きいことは、ショルダー陸部23のキャップトレッドゴム82の体積が過大であることを意味する。キャップトレッドゴム82の体積が過大である場合、キャップトレッドゴム82の発熱が阻害され、その結果、ベルト層6の耐久性が悪化する。N/Bの値が1.0よりも小さいことは、ショルダー陸部23のキャップトレッドゴム82の厚みが過小であることを意味する。キャップトレッドゴム82の厚みが過小である場合、トレッド部2の摩耗末期においてベルト層6の端部が露出し、その結果、ベルト層6の耐久性が悪化する。
【0175】
また、特徴点14の条件が満足されることにより、タイヤ1が路面の段差を通過したときにおける突き上げ感が抑制される。これにより、乗心地の改善がもたらされる。
【0176】
また、特徴点17の条件が満足されることによっても、乗心地が改善される。また、ベルト層6の耐久性が向上する。
【0177】
また、特徴点19の条件が満足されることによっても、タイヤ1の旋回又は縁石乗り上げにおいて、ショルダー陸部23の変形が抑制され、ショルダー陸部23が反り返ることが抑制される。
【0178】
[実施例]
上述した、特徴点1、特徴点23、特徴点18、特徴点21、及び特徴点16の条件を満足するタイヤと満足しないタイヤとについて、操縦安定性能についての評価試験を行った。タイヤサイズ295/80R22.5の評価試験用タイヤにJATMA規定の最高内圧を付与し、その評価試験用タイヤを大型バス車両に装着し、轍がある乾燥路面のテストコースにおいて時速40[km]で走行させ、テストドライバーによるフィーリング評価を実施した。大型バス車両に装着された状態において、評価試験用タイヤには、JATMA規定の最大荷重の70[%]に相当する荷重が付与される。特徴点1、特徴点18、特徴点21、及び特徴点16の条件を満足していない従来例3に係るタイヤを基準(100)とした指数評価を行った。この評価は、数値が大きいほど好ましい。
【0179】
評価試験の結果を
図8に示す。従来例1は、特徴点1、特徴点23、特徴点18、特徴点21、及び特徴点16の条件を全ての満足していないタイヤである。従来例2は、特徴点23、特徴点18、特徴点21、及び特徴点16の条件を満足していないタイヤである。
【0180】
実施例1,2,3は、特徴点1及び特徴点23の条件を満足し、特徴点18、特徴点21、及び特徴点16の条件を満足しないタイヤである。
【0181】
実施例4,5,6,9は、特徴点1、特徴点23、及び特徴点18の条件を満足し、特徴点21、及び特徴点16の条件を満足しないタイヤである。
【0182】
実施例7,8,10は、特徴点1、特徴点23、特徴点18、及び特徴点21の条件を満足し、特徴点16の条件を満足しないタイヤである。
【0183】
実施例11は、特徴点1、特徴点23、特徴点18、特徴点21、及び特徴点16の条件を全て満足するタイヤである。
【0184】
図8に示すように、特徴点1、特徴点23、特徴点18、特徴点21、及び特徴点16のうち、満足する特徴点が増えるほど、操縦安定性能が向上することが確認できる。
【0185】
[他の実施形態]
図9は、ショルダー陸部23の変形例を示す斜視図である。
図10は、
図9に示すショルダー陸部23の側面図である。上述の実施形態においては、ショルダー陸部23は、連続陸部であるリブであった。本実施形態においては、ショルダー陸部23の接地面33に、凹部40と接続されるラグ溝42が設けられる。ラグ溝42が設けられることにより、ショルダー陸部23は、断続陸部であるブロック列となる。なお、本実施形態においては、側面34にサイプ(41)が設けられていないが、設けられてもよい。
【0186】
図10に示すように、ラグ溝42の溝深さを、溝深さX、と定義する。ラグ溝42の溝深さXとは、タイヤ径方向におけるラグ溝42の開口端部とラグ溝42の底部との距離である。
【0187】
また、タイヤ周方向に設けられた凹部40の数を、数Y、と定義する。
【0188】
<特徴点25>
2[mm] ≦ X ≦ 28[mm] …(25)
の条件を満足する。
【0189】
<特徴点26>
35 ≦ Y ≦60 …(26)
の条件を満足する。
【0190】
本実施形態においても、トレッドゴム8の破損を防止し、コーナーリング時における接地面積の低下を抑止し、轍ワンダリング性能を向上することができるタイヤ1を提供することができる。