【実施例】
【0046】
以下に、本発明の各実施例および各比較例に用いた材料を示す。なお、文中で「部」とあるのは、特に断りのない限り質量基準であり。また、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0047】
(実施例1)
基材として厚さ140μmの上質紙を使用し、一方の面に溶融押し出し法により厚さ30μmのポリエチレン樹脂層1を形成した。
【0048】
次に、基材のポリエチレン樹脂層1側とは反対側の面と、厚さ40μmの、発泡エチレンテレフタレートフィルムの片面にスキン層を設けた断熱層の、スキン層を設けていない面との間に、ポリエチレン樹脂を溶融押し出ししてポリエチレン樹脂層2を形成し、サンドラミ方式にて貼り合わせた。また溶融押し出ししたポリエチレン樹脂層2の厚さは15μmとなるように形成した。
【0049】
発泡ポリエチレンテレフタレートフィルムのスキン層側に、下引き層塗布液−1を、乾燥後の厚さが0.5μmとなるように塗布、乾燥することで、下引き層を形成した。更にその下引き層の上に、染料受容層塗布液−1を、乾燥後の厚さが2μmとなるように塗布、乾燥することで、染料受容層を形成し、実施例1の熱転写受像シートを得た。
【0050】
<下引き層塗布液−1>
塩化ビニル共重合体エマルション 20.0部
(ビニブラン278、日信化学工業(株)製、Tg33℃)
ポリビニルピロリドン 20.0部
(ピッツコール K−90、第一工業製薬(株)製)
トリプロピレングリコールモノメチルエーテル 4.0部
純水 56.0部
これが下引き層塗布液−1の組成である。
【0051】
<染料受容層塗布液−1>
塩化ビニル−アクリル共重合体エマルション 71.0部
(ビニブラン747、日信化学工業(株)製)
多官能性アジリジン化合物 2.2部
(ケミタイトPZ−33、日本触媒(株)製)
ポリエーテル変性シリコーン 1.2部
(X−22−4515、信越化学工業(株)製)
純水 25.6部
これが染料受容層塗布液−1の組成である。
【0052】
(実施例2〜8、比較例1〜5)
実施例1で作製した熱転写受像シートにおいて、染料受容層を表1記載の材料、配合比にした以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜8、比較例1〜5の熱転写受像シートを得た。なお、各染料受容層塗布液は固形分25%で調製した。実施例2〜8、比較例1〜5の染料受容層塗布液について、実施例1の染料受容層塗布液−1との違いを以下に記載する。
【0053】
(実施例2)
ビニル系共重合体エマルションとして、塩化ビニル−アクリル共重合体エマルション(
ビニブラン743、日信化学工業(株)製、塩化ビニル:アクリル=70:30)を使用した。
【0054】
(実施例3)
ビニル系共重合体エマルションとして、塩化ビニル−アクリル共重合体エマルション(ビニブラン900、日信化学工業(株)製、塩化ビニル:アクリル=90:10)を使用した。
【0055】
(実施例4)
実施例1のポリエーテル変性シリコーンの添加量を全固形分比で1部とした。
【0056】
(実施例5)
実施例1のポリエーテル変性シリコーンの添加量を全固形分比で20部とした。
【0057】
(実施例6)
実施例1の多官能性アジリジン化合物中のアジリジン環含有量が、ビニル系エマルション中のカルボキシ基の含有量に対して0.2モル当量となるよう、多官能性アジリジン化合物の添加量を調整した。
【0058】
(実施例7)
実施例1の多官能性アジリジン化合物中のアジリジン環含有量がビニル系エマルション中のカルボキシ基の含有量に対して1.6モル当量となるよう、多官能性アジリジン化合物の添加量を調整した。
【0059】
(実施例8)
実施例1のビニル系共重合体エマルションとして、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体エマルション(ビニブラン603、日信化学工業(株)製)を使用した。
【0060】
(比較例1)
実施例1のビニル系共重合体エマルションをポリ塩化ビニルエマルション(ビニブラン985、日信化学工業(株)製)に変更した。
【0061】
(比較例2)
実施例1の多官能性アジリジン化合物を未含有とした。
【0062】
(比較例3)
実施例1の多官能性アジリジン化合物を多官能性オキサゾリン化合物(エポクロスK−3030E、日本触媒(株)製)に変更した。
【0063】
(比較例4)
実施例1のポリエーテル変性シリコーンをKF−945(信越化学工業(株)製、HLB=4)に変更した。
【0064】
(比較例5)
実施例1のポリエーテル変性シリコーンをKF−644(信越化学工業(株)製、HLB=11)に変更した。
【0065】
<熱転写記録媒体の作製>
基材として、4.5μmの片面易接着処理付きポリエチレンテレフタレートフィルムを使用し、その非易接着処理面に下記組成の耐熱滑性層塗布液を、乾燥後の塗布量が1.0
g/m
2となるように塗布、乾燥し、耐熱滑性層付き基材を得た。次に、耐熱滑性層付き基材の易接着処理面に、下記組成のプライマー層および熱転写層塗布液を、乾燥後の塗布量が1.0g/m
2となるように塗布、乾燥して熱転写層を形成し、熱転写記録媒体を得た。
【0066】
<耐熱滑性層塗布液>
シリコーン系アクリルグラフトポリマー 50.0部
(東亜合成(株)US−350)
メチルエチルケトン 50.0部
以上が耐熱滑性層塗布液の組成である。
【0067】
<プライマー層塗布液>
ポリビニルアルコール 2.5部
イソプロピルアルコール 30.0部
純水 67.5部
以上がプライマー層塗布液の組成である。
【0068】
<熱転写層塗布液>
C.I.ソルベントブル−36 2.5部
C.I.ソルベントブル−63 2.5部
ポリビニルアセタール樹脂 5.0部
トルエン 45.0部
メチルエチルケトン 45.0部
以上が耐熱滑性層塗布液の組成である。
【0069】
<印画時離型性評価>
実施例1〜8、比較例1〜5の熱転写受像紙シート、熱転写記録媒体、および評価用サーマルプリンタを23℃80%RH環境下で2時間調湿した。熱転写受像シート、および熱転写記録媒体を使用し、印画速度が2.0msec/line、解像度が300×300DPIの評価用サーマルプリンタにて255階調を均等に16分割したグラデーション画像を23℃80%RH環境下で印画した。印画物の評価は、以下の基準にて評価を行った。評価結果を表1に示す。なお、評価結果は1〜12Stepの低中階調部、および13〜16Stepの高階調部に別けて記載した。
【0070】
○:異常転写の発生が認められないレベル
△:異常転写の発生は認められないが、線状の剥離痕が僅かに認められるレベル
×:異常転写の発生が認められるレベル
なお、△以上が実用上の問題ないレベルである。
【0071】
<印画濃度評価>
調湿、および印画環境を23℃50%RHに変更した以外は、印画時離型性評価と同様にして印画を行った。得られた印画物の最高反射濃度(16Step)をX−rite528にて測定した。また、測定結果を以下の基準にて評価した。測定結果と評価結果を表1に示す。
【0072】
○:最高反射濃度が2.05以上であるレベル
△:最高反射濃度が2.00以上2.05未満であるレベル
×:最高反射濃度が2.00未満であるレベル
なお、△以上が実用上の問題ないレベルである。
【0073】
<印画欠点評価>
評価画像を255階調のベタ画像とした以外は、印画濃度評価と同様にして印画を行った。印画欠点はJIS P 8208に基づき測定し、以下の基準にて評価を行った。
【0074】
○:0.3mm2以上の印画欠点が認められない
×:0.3mm2以上の印画欠点が認められる
評価対象を表1に、評価結果を表2に示す。
【0075】
表1に示す結果から分かるように、基材シート上に少なくとも断熱層、下引き層、染料受容層を順次積層形成し、前記染料受容層がカルボキシ基、および/またはアセチル基を含有するビニル系エマルションと、HLBが5〜10のポリエーテル変性シリコーンと、多官能性アジリジン化合物を含む実施例1〜5の熱転写受像シートは、多湿環境で印画した場合でも印画時の離型性に優れ、かつ印画欠点がなく、高い反射濃度を付与しており、本発明による効果が確認された。
【0076】
塩化ビニル−アクリル共重合体エマルションの塩化ビニル化合物とアクリル化合物の比率を塩化ビニル:アクリル=30:70とした実施例2では、実用上の問題ない範囲で最高反射濃度の低下が確認された。一方、塩化ビニル−アクリル共重合体エマルションの塩化ビニル化合物とアクリル化合物の比率を塩化ビニル:アクリル=90:10とした実施例3では、実用上の問題ない範囲で印画時離型性の低下が確認された。
【0077】
また、ポリエーテル変性シリコーンの添加量を全固形分比で1部とした実施例4においても、実用上の問題ない範囲で印画時離型性の低下が確認された。一方、ポリエーテル変性シリコーンの添加量を全固形分比で20部とした実施例5では、実用上の問題ない範囲で印画欠点が確認された。多官能性アジリジン化合物中のアジリジン環含有量が、ビニル系エマルション中のカルボキシ基の含有量に対して0.2モル当量となるよう、多官能性アジリジン化合物の添加量を調整した実施例6では、実用上の問題ない範囲で印画時離型性の低下が確認された。
【0078】
一方、多官能性アジリジン化合物中のアジリジン環含有量が、ビニル系エマルション中のカルボキシ基の含有量に対して1.6モル当量となるよう、多官能性アジリジン化合物の添加量を調整した実施例7では、実用上の問題ない範囲で最高反射濃度の低下が確認された。また、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体エマルションを用いた実施例8においても、実用上の問題ない範囲で最高反射濃度の低下が確認された。
【0079】
これに対して、比較例1の熱転写受像シートは、バインダ樹脂として、アクリル化合物を含有しないポリ塩化ビニルエマルションを使用したことで、異常転写の発生が確認された。比較例2の熱転写受像シートは、多官能性アジリジン化合物を未含有としたことで、高階調部に異常転写の発生が確認された。比較例3の熱転写受像シートは、常温下での架橋反応率が低い多官能性オキサゾリン化合物を使用したことで、高階調部に異常転写の発生が確認された。比較例4の熱転写受像シートは、HLB=4のポリエーテル変性シリコーンを使用したことで、印画物に実用不可能な大きさの点欠陥が確認された。比較例5の熱転写受像シートは、HLB=11のポリエーテル変性シリコーンを使用したことで、低中階調部に異常転写が確認された。
【0080】
【表1】
【0081】
【表2】