特許第6728626号(P6728626)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6728626
(24)【登録日】2020年7月6日
(45)【発行日】2020年7月22日
(54)【発明の名称】太陽光発電モジュールの設置構造
(51)【国際特許分類】
   H02S 20/10 20140101AFI20200713BHJP
   H02S 20/30 20140101ALI20200713BHJP
【FI】
   H02S20/10 U
   H02S20/10 N
   H02S20/10 C
   H02S20/30 A
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-206707(P2015-206707)
(22)【出願日】2015年10月20日
(65)【公開番号】特開2017-79548(P2017-79548A)
(43)【公開日】2017年4月27日
【審査請求日】2018年9月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100099704
【弁理士】
【氏名又は名称】久寶 聡博
(72)【発明者】
【氏名】樫原 和男
(72)【発明者】
【氏名】山口 雅夫
(72)【発明者】
【氏名】魚岸 弘美
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 幸伸
(72)【発明者】
【氏名】川上 好弘
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 聡
(72)【発明者】
【氏名】本山 仁美
(72)【発明者】
【氏名】三浦 国春
(72)【発明者】
【氏名】玉井 礼子
【審査官】 五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−037163(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/127342(WO,A2)
【文献】 中国実用新案第202651150(CN,U)
【文献】 米国特許第04832001(US,A)
【文献】 特開2013−179250(JP,A)
【文献】 米国特許第04476854(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02S 20/00−20/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状に形成された太陽光発電モジュールを、異なる二点間に張設された引張材の材軸と板面がほぼ平行になるように該引張材に配置した太陽光発電モジュールの設置構造において、
前記太陽光発電モジュールを、該太陽光発電モジュールが前記引張材の材軸廻りに回動自在となるように該引張材に連結するとともに、前記太陽光発電モジュールを含めた重心位置が前記引張材による該太陽光発電モジュールの支点位置よりも低くなるように前記太陽光発電モジュールに錘を設置し、
前記太陽光発電モジュールであって前記引張材を挟んだ2つの部位に風荷重抵抗手段をそれぞれ設けるとともに、前記各風荷重抵抗手段を、該各風荷重抵抗手段に前記太陽光発電モジュールの板面に対し垂直でない方向からの風であって前記板面に平行でかつ前記引張材の材軸に垂直な成分が作用したとき、その作用荷重が、前記引張材に向かう方向より該引張材から遠ざかる方向で大きくなるように構成したことを特徴とする太陽光発電モジュールの設置構造。
【請求項2】
前記各風荷重抵抗手段を、前記太陽光発電モジュールの板面に垂直で前記引張材の材軸を含む面を中心とした対称配置になるように、かつ前記太陽光発電モジュールの板面に平行で該太陽光発電モジュールの厚み中心を含む面を中心とした対称配置になるように構成した請求項1記載の太陽光発電モジュールの設置構造。
【請求項3】
前記各風荷重抵抗手段を、C字状横断面の湾曲状抵抗部材をその開放側が前記引張材の側を向くように前記太陽光発電モジュールの縁部に配置して構成した請求項1又は請求項2記載の太陽光発電モジュールの設置構造。
【請求項4】
前記各風荷重抵抗手段を、前記太陽光発電モジュールの板面に対する垂直位置から前記引張材の側に傾斜させた形で該太陽光発電モジュールの各面にそれぞれ取り付けられた一対の平板状抵抗部材で構成した請求項1又は請求項2記載の太陽光発電モジュールの設置構造。
【請求項5】
前記各風荷重抵抗手段を、前記太陽光発電モジュールの板面と平行であって前記引張材に向かって延びる角度から該角度を基準としたときに前記板面と180゜未満となる角度までの範囲内で回動可能となるように前記太陽光発電モジュールの板面のそれぞれに取り付けられた一対の可動平板状抵抗部材で構成した請求項1又は請求項2記載の太陽光発電モジュールの設置構造。
【請求項6】
前記角度範囲の上限を前記板面に対し90゜より大きい角度とした請求項5記載の太陽光発電モジュールの設置構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異なる二点間に張設された引張材に太陽光発電モジュールを設置する場合に適用される太陽光発電モジュールの設置構造に関する。
【背景技術】
【0002】
化石燃料や原子力に代わる代替エネルギーとして、バイオマス、風力発電、地熱発電、燃料電池、太陽熱発電などが開発されているが、太陽光発電は、エネルギー密度が低い等の観点で火力発電や原子力発電に及ばないものの、設置場所の制約が少なく、電力が必要とされる場所に簡易に設置することができるという優位性を持つ。
【0003】
太陽光発電設備は、太陽光を電力に変換する太陽光発電モジュール、該太陽光発電モジュールからの直流電力を交流に変換するパワーコンディショナーなどの機器で構成されるが、最近では、パワーコンディショナーに代えて、太陽光発電モジュールごとにマイクロインバータと呼ばれる交流変換装置を取り付けるケースも増えてきており、設置場所のさらなる拡大及びそれに伴う導入促進が期待されている。
【0004】
ここで、太陽光発電モジュールは、架台を介してビルの屋上や地盤面などに設置されるが、架台を設計製作するにあたっては、太陽光発電モジュールの自重をはじめ、風荷重などを考慮してその材質や断面寸法等が決定される。
【0005】
一方、太陽光発電モジュールを地面やビルの屋上ではなく、支柱間に架け渡されたケーブルに取り付けて該ケーブルに吊持させる提案もなされている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015−37163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
太陽光発電モジュールを上述したようにケーブルに吊持させる形式で設置した場合、従来のように地面やビルの屋上を設置面として確保する必要がないので、スペース利用の観点では有利となる反面、風荷重による太陽光発電モジュールの損傷あるいはケーブルの破断といった事態が起きないよう対策を講じなければならない。
【0008】
しかしながら、従来においては、十分な風対策が講じられているとは言えず、風によって太陽光発電モジュールが損傷し、あるいは太陽光発電モジュールを吊持するケーブルやワイヤーが破断するといった事態の発生が懸念されていた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、風に対する安全性や強度を十分に高めることが可能な太陽光発電モジュールの設置構造を提供することを目的とする。
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係る太陽光発電モジュールの設置構造は請求項1に記載したように、板状に形成された太陽光発電モジュールを、異なる二点間に張設された引張材の材軸と板面がほぼ平行になるように該引張材に配置した太陽光発電モジュールの設置構造において、
前記太陽光発電モジュールを、該太陽光発電モジュールが前記引張材の材軸廻りに回動自在となるように該引張材に連結するとともに、前記太陽光発電モジュールを含めた重心位置が前記引張材による該太陽光発電モジュールの支点位置よりも低くなるように前記太陽光発電モジュールに錘を設置し、
前記太陽光発電モジュールであって前記引張材を挟んだ2つの部位に風荷重抵抗手段をそれぞれ設けるとともに、前記各風荷重抵抗手段を、該各風荷重抵抗手段に前記太陽光発電モジュールの板面に対し垂直でない方向からの風であって前記板面に平行でかつ前記引張材の材軸に垂直な成分が作用したとき、その作用荷重が、前記引張材に向かう方向より該引張材から遠ざかる方向で大きくなるように構成したものである。
【0011】
また、本発明に係る太陽光発電モジュールの設置構造は、前記各風荷重抵抗手段を、前記太陽光発電モジュールの板面に垂直で前記引張材の材軸を含む面を中心とした対称配置になるように、かつ前記太陽光発電モジュールの板面に平行で該太陽光発電モジュールの厚み中心を含む面を中心とした対称配置になるように構成したものである。
また、本発明に係る太陽光発電モジュールの設置構造は、前記各風荷重抵抗手段を、C字状横断面の湾曲状抵抗部材をその開放側が前記引張材の側を向くように前記太陽光発電モジュールの縁部に配置して構成したものである。
【0012】
また、本発明に係る太陽光発電モジュールの設置構造は、前記各風荷重抵抗手段を、前記太陽光発電モジュールの板面に対する垂直位置から前記引張材の側に傾斜させた形で該太陽光発電モジュールの各面にそれぞれ取り付けられた一対の平板状抵抗部材で構成したものである。
【0013】
また、本発明に係る太陽光発電モジュールの設置構造は、前記各風荷重抵抗手段を、前記太陽光発電モジュールの板面と平行であって前記引張材に向かって延びる角度から該角度を基準としたときに前記板面と180゜未満となる角度までの範囲内で回動可能となるように前記太陽光発電モジュールの板面のそれぞれに取り付けられた一対の可動平板状抵抗部材で構成したものである。
【0014】
また、本発明に係る太陽光発電モジュールの設置構造は、前記角度範囲の上限を前記板面に対し90゜より大きい角度としたものである。
【0015】
本発明に係る太陽光発電モジュールの設置構造においては、板状の太陽光発電モジュールを引張材に配置するにあたり、該太陽光発電モジュールが引張材の材軸廻りに回動自在となるように該引張材に連結するとともに、太陽光発電モジュールを含めた重心位置が、引張材による該太陽光発電モジュールの支点位置よりも低くなるように太陽光発電モジュールに錘を設置する一方、太陽光発電モジュールの板面に対し垂直でない方向からの風であって該板面に平行でかつ引張材の材軸に垂直な成分を受けたとき、その作用荷重が、引張材に向かう方向より該引張材から遠ざかる方向で大きくなるように、太陽光発電モジュールであって引張材を挟んだ2つの部位に風荷重抵抗手段をそれぞれ設けてある。
【0016】
このようにすると、無風時においては、太陽光発電モジュールに設置された錘の作用により、太陽光発電モジュールは、引張材の材軸廻りに対して所定の角度位置でバランスし、その状態で姿勢を保持する。
【0017】
一方、一定の風が吹いて、太陽光発電モジュールの板面に平行でかつ引張材の材軸に垂直な成分の風が2つの部位に設けられた風荷重抵抗手段にそれぞれ作用したとき、該各風荷重抵抗手段は、引張材に向かう方向より該引張材から遠ざかる方向で作用荷重が大きくなるように構成してあるので、風下側に位置する風荷重抵抗手段により多くの風荷重が作用する。
【0018】
そのため、太陽光発電モジュールは、風下側に位置する風荷重抵抗手段が、より風下に近い側へと移動する方向に回転し、その結果、角度が付いている場合には風向きと平行になる方向に向かう。
【0019】
したがって、太陽光発電モジュールに作用する風荷重が低減するとともに、それに伴って引張材に生ずる引張力も減少し、かくして風荷重に対する太陽光発電モジュールや引張材の設計条件が緩和され、太陽光発電モジュールの設置コストを大幅に引き下げることが可能となる。
【0020】
太陽光発電モジュールは、太陽電池パネル、太陽電池モジュールとも呼ばれているものであって、市販のものを適宜採用することが可能であり、矩形板状をなすものが典型例となる。
【0021】
引張材は、ケーブル、ワイヤー等で呼称される部材を包摂する。また、引張材は、任意の材料で構成することが可能であって、例えばPC鋼線やPC鋼より線で構成することができる。なお、引張材の張設方向は、必ずしも水平である必要はないし、二点間でたわみが形成された状態でもかまわない。
【0022】
引張材が張設される二点をどのように形成するかは任意であり、例えば、互いに離隔配置された2つの塔状構造物の各頂点とすることができるし、川や谷を挟む2つの山の山頂あるいは山腹とすることも可能である。
【0023】
錘は、重力バランサーとして機能するものであって、太陽光発電モジュールを含めた重心位置が引張材による該太陽光発電モジュールの支点位置よりも低くなるように太陽光発電モジュールに設置される限り、具体的な構成は任意であるが、風の影響をできるだけ受けずなおかつ姿勢安定性の高い構成とするのが望ましく、例えば質量密度の高い金属材料で形成し、トラス材を介して太陽光発電モジュールの下方に吊持する構成を採用することができる。
【0024】
錘は、無風時の太陽光発電モジュールの姿勢が任意の角度(仰角)となるように該太陽光発電モジュールに設置するのが望ましく、かかる構成によれば、太陽高度を考慮した発電効率の向上を図ることが可能となる。
【0025】
本発明では、太陽光発電モジュールの板面に対し垂直に吹き付ける風は対象外であるが、このような風が長時間吹き続ける状況を想定する必要性は高くないため、現実面ではほとんど問題とならない。
【0026】
また、本発明の風荷重抵抗手段は、風向きが逆転して風上と風下が入れ替わったり、斜め上からの風が斜め下からの風に変わった場合であっても、その作用が維持されるよう、引張材を中心とした左右対称構造あるいはそれに近い構造でかつ太陽光発電モジュールの板面を中心とした上下対称構造あるいはそれに近い構造とする必要があるが、このような対称構造とすることにより、太陽光発電モジュールの板面に垂直な風荷重成分は、引張材の両側で相殺し合って太陽光発電モジュールの回転には影響しないし、引張材と平行な風荷重成分については、太陽光発電モジュールの回転にそもそも寄与しない。
【0027】
そのため、風荷重抵抗手段は、太陽光発電モジュールの板面に平行でかつ引張材の材軸に垂直な成分だけを考慮すれば足りる。
【0028】
風荷重抵抗手段は、引張材に向かう方向より該引張材から遠ざかる方向で作用荷重が大きくなるように構成される限り、その具体的構成は任意であり、例えば、C字状横断面の湾曲状抵抗部材をその開放側が引張材の側を向くように太陽光発電モジュールの縁部に配置して構成することができるし、太陽光発電モジュールの板面に対する垂直位置から引張材の側に傾斜させた形で該太陽光発電モジュールの各面にそれぞれ配置された一対の平板状抵抗部材で構成することも可能である。
【0029】
さらには、引張材の側で板面と平行に延びる角度から該角度を基準としたときに前記板面と180゜未満となる角度までの範囲内で回動可能となるように、太陽光発電モジュールの各面にそれぞれ取り付けられた一対の可動平板状抵抗部材で構成することも可能であり、かかる構成によれば、風上側の風荷重抵抗手段に作用する風荷重が実質的にゼロとなるため、太陽光発電モジュールの姿勢を風向きに合わせやすくなる。
【0030】
特に、上述した角度範囲の上限を前記板面に対し90゜より大きい角度としたならば、風下側の風荷重抵抗手段に作用する荷重が過大になるのを避けることができるため、風荷重抵抗手段の損傷を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本実施形態に係る太陽光発電モジュールの設置構造1を示した図であり、(a)は全体側面図、(b)は太陽光発電モジュール6及びその関連構成の斜視図。
図2】太陽光発電モジュール6をケーブル3の材軸方向から見た側面図であり、(a)は全体側面図、(b)は支持点と重心の各位置に着目した詳細側面図。
図3】太陽光発電モジュール6を構成する風荷重抵抗手段としての湾曲状抵抗部材7をケーブル3の材軸方向から見た側面図。
図4】太陽光発電モジュールの設置構造1の作用を示した説明図。
図5】錘9に関する変形例をケーブル3の材軸方向から見た側面図。
図6】風荷重抵抗手段を一対の平板状抵抗部材61,61で構成した変形例をケーブル3の材軸方向から見た側面図。
図7】風荷重抵抗手段を一対の可動平板状抵抗部材71,71で構成した変形例をケーブル3の材軸方向から見た側面図。
図8】風荷重抵抗手段を一対の可動平板状抵抗部材81,81で構成した別の変形例をケーブル3の材軸方向から見た側面図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明に係る太陽光発電モジュールの設置構造の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0033】
図1(a)は、本実施形態に係る太陽光発電モジュールの設置構造1を示した全体側面図である。同図でわかるように、太陽光発電モジュールの設置構造1は、異なる二点間に立設された塔状構造物2,2の各頂部に引張材としてのケーブル3を張設してその両端をアンカー4,4を介して地盤5に定着するとともに、ケーブル3に沿って列状となるように該ケーブルに太陽光発電モジュール6を複数配置して構成してある。
【0034】
太陽光発電モジュール6は、塔状構造物2,2を例えば川や谷を挟む形で立設し、それらを跨ぐようにケーブル3を張設することで、川や谷の上方空間をそれらの設置スペースとして有効利用することが可能である。
【0035】
太陽光発電モジュール6は、太陽光発電モジュールをはじめ、太陽電池パネル、太陽電池モジュール等の名称で市販されているものを適宜用いればよい。
【0036】
ケーブル3は、複数の太陽光発電モジュール6を含む総重量にもよるが、例えばPC鋼より線で構成することで、必要な引張強度を余裕をもって確保することが可能である。
【0037】
太陽光発電モジュール6は同図(b)に示す通り、全体が矩形板状をなし、ケーブル3の材軸と板面がほぼ平行になるように、かつケーブル3の材軸廻りに回動自在となるように該ケーブルに連結してあるとともに、ケーブル3の材軸と平行でかつ該ケーブルを挟む2つの縁部、同図では2つの短手側縁部を本発明の2つの部位とし、該各短手側縁部に風荷重抵抗手段としての湾曲状抵抗部材7をそれぞれ取り付けてある。
【0038】
一方、太陽光発電モジュール6の下方にはトラス材8を介して錘9を吊持してある。
【0039】
錘9は図2(a)に示すように、太陽光発電モジュール6を含めた重心位置Gがケーブル3による該太陽光発電モジュールの支点位置Rよりも低くなるように、その重量を適宜設定してあり、ケーブル3の材軸廻りに沿った所定の角度位置で太陽光発電モジュール6をバランスさせ、その姿勢を保持することができるようになっている。
【0040】
錘9は、風の影響をできるだけ受けずなおかつ姿勢安定性の高い構成とするのが望ましく、例えば質量密度の高い金属材料で構成するのがよい。
【0041】
なお、太陽光発電モジュール6の下面には同図(b)に示すように、スリーブ21が溶接されたベースプレート22を取り付けてあり、該スリーブにケーブル3を挿通する形で該ケーブルに連結することにより、太陽光発電モジュール6をケーブル3の材軸廻りに回動自在とすることができるようになっている。
【0042】
スリーブ21は図1(b)で示したように、太陽光発電モジュール6の長手側縁部を越えて若干寸法だけ延設させてあり、隣り合う太陽光発電モジュール6,6の回動動作が互いに干渉しないようになっている。
【0043】
湾曲状抵抗部材7は図1,2に示したように横断面がC字状をなし、その開放側がケーブル3の側を向くように太陽光発電モジュール6に配置してあるが、かかる湾曲状抵抗部材7は図3に示すように、太陽光発電モジュール6の板面に対して垂直でない方向からの風であって、その板面に平行でかつケーブル3の材軸に垂直な成分の風を受けたとき、その作用荷重が、ケーブル3に向かう方向((a)に描かれた細い実線の矢印)より、該ケーブルから遠ざかる方向((b)に描かれた細い実線の矢印)で大きくなるように構成してあり、同図(a)、(b)では、太い矢印の長さとして示してある。
【0044】
ここで、同図(b)の太い矢印のうち、実線で表示された矢印は、太陽光発電モジュール6に対して斜め右上から吹き付ける風による風荷重の作用方向及び作用位置を、破線で表示された矢印は、太陽光発電モジュール6に対して斜め右下から吹き付ける風による風荷重の作用方向及び作用位置をそれぞれ示す。
【0045】
湾曲状抵抗部材7は、太陽光発電モジュール6の各短手側縁部から取付け用アーム(図示せず)を板面に平行な方向に延設してその先端に固着するなど、任意の方法で該各短手側縁部に取り付けることができるが、太陽光発電モジュール6に対して斜め方向から吹き付ける風が、湾曲状抵抗部材7のうち、その吹付け側に突設する部分に確実に作用するよう、換言すればその反対側に突設する部分に作用しないよう、図3に示すように、太陽光発電モジュール6の各短手側縁部との間に風の通過を阻止する遮断部材31を設けておくのが望ましい。
【0046】
本実施形態に係る太陽光発電モジュールの設置構造1においては、太陽光発電モジュール6をケーブル3に配置するにあたり、該太陽光発電モジュールがケーブル3の材軸廻りに回動自在となるように該ケーブルに連結するとともに、太陽光発電モジュール6を含めた重心位置Gが、ケーブル3による該太陽光発電モジュールの支点位置Rよりも低くなるように、太陽光発電モジュール6に錘9を設置する一方、太陽光発電モジュール6の板面に対し垂直でない方向からの風であって該板面に平行でかつケーブル3の材軸に垂直な成分を受けたとき、その作用荷重が、ケーブル3に向かう方向より該ケーブルから遠ざかる方向で大きくなるように、太陽光発電モジュール6の各短手側縁部に湾曲状抵抗部材7をそれぞれ設けてある。
【0047】
このようにすると、無風時においては、太陽光発電モジュール6に設置された錘9の作用により、太陽光発電モジュール6は、ケーブル3の材軸廻りに対して所定の角度位置でバランスし、その状態で姿勢を保持する(図2(a)参照)。
【0048】
一方、一定の風が吹いて、太陽光発電モジュール6の板面に平行でかつケーブル3の材軸に垂直な成分の風が湾曲状抵抗部材7,7にそれぞれ作用したとき、該各湾曲状抵抗部材は、ケーブル3に向かう方向より該ケーブルから遠ざかる方向で作用荷重が大きくなるように構成してあるので、図4(a)に示すように、風下側に位置する湾曲状抵抗部材7、同図では右側の湾曲状抵抗部材7により多くの風荷重が作用する。
【0049】
そして、同図のように太陽光発電モジュール6に対して斜め左下から吹き付ける風の場合、該太陽光発電モジュールの板面に平行な成分の風荷重は、湾曲状抵抗部材7の下方突設部分に作用するとともに、その作用位置が支点位置Rから偏心距離eだけ離隔することから、同図矢印方向の回転モーメントが太陽光発電モジュール6に作用し、太陽光発電モジュール6は同図(b)に示すように、風下側に位置する湾曲状抵抗部材7、同図では右側に位置する湾曲状抵抗部材7が、より風下に近い側へと移動する方向に回転し、その結果、角度が付いている場合には風向きと平行になる方向に向かう。
【0050】
なお、このときの太陽光発電モジュール6の姿勢は錘9との兼ね合いで決定され、錘9が重くなるほど、また重心位置Gが下がるほど、湾曲状抵抗部材7による姿勢変化割合が小さくなって、風荷重の低減度合いが小さくなるため、無風状態の安定姿勢を考慮しつつ、風荷重ができるだけ低減されるように錘9の構成を決定するのが望ましい。
【0051】
以上説明したように、本実施形態に係る太陽光発電モジュールの設置構造1によれば、湾曲状抵抗部材7の作用により、太陽光発電モジュール6が回転して風向きと平行になる方向に向かうので、太陽光発電モジュール6に作用する風荷重が低減するとともに、それに伴ってケーブル3に生ずる引張力も減少し、かくして風荷重に対する太陽光発電モジュール6やケーブル3の設計条件が緩和され、太陽光発電モジュール6の設置コストを大幅に引き下げることが可能となる。
【0052】
また、ケーブル3に生ずる引張力が減少することから、該ケーブルを張設する二点間距離を大きくすることが可能となり、川や谷を跨いだ太陽光発電モジュール6の設置がより実現しやすくなる。
【0053】
本実施形態では特に言及しなかったが、無風時の太陽光発電モジュール6の姿勢は、図5に示すようにトラス材8の長さを調整することで、任意の角度(仰角)に調整することが可能であり、太陽高度を考慮した発電効率の向上を図ることができる。
【0054】
また、本実施形態では、ケーブル3をスリーブ21に挿通するように構成したが、かかるスリーブ21を例えば半筒状部材の組み合わせで構成した場合、ケーブル3からの太陽光発電モジュール3の取り外し、ひいては該太陽光発電モジュールの保守点検が容易となる。
【0055】
また、本実施形態では、本発明の風荷重抵抗手段を湾曲状抵抗部材7で構成したが、これに代えて、図6に示すように太陽光発電モジュール6の板面に背中合わせに取り付けられてなる一対の平板状抵抗部材61,61で構成してもよい。
【0056】
平板状抵抗部材61,61は、太陽光発電モジュール6の板面に対する垂直位置からケーブル3の側に傾斜させた形で該太陽光発電モジュールの各面に背中合わせに取り付けてあるが、その作用効果は上述した実施形態と概ね同様であり、その説明についてはここでは省略する。また、本変形例においても、錘9及びトラス材8を上述した実施形態と同様に配置する必要があるが、便宜上、図6からはこれらを省略する。
【0057】
また、本発明の風荷重抵抗手段を、湾曲状抵抗部材7に代えて図7(a)に示すように、太陽光発電モジュール6の板面に対して回動可能となるように、該太陽光発電モジュールの各面にそれぞれ取り付けられた一対の可動平板状抵抗部材71,71で構成してもよい。
【0058】
ここで、太陽光発電モジュール6の各短手側縁部にはストッパー72を取り付けてあり、可動平板状抵抗部材71の回動範囲を、ケーブル3の側で太陽光発電モジュール6の板面と平行に延びる角度から該角度を基準としたときに該板面と概ね90゜程度なる範囲に制限するようになっている。
【0059】
かかる構成において図7(b)に示す風が吹くと、風上側、同図では左側の可動平板状抵抗部材71,71は、太陽光発電モジュール6の板面に平行でかつケーブル3の材軸に垂直な成分の風を受けてケーブル3の側に倒れ、該板面と平行になるため、風荷重はほとんど作用しない。
【0060】
一方、風下側、同図では右側の可動平板状抵抗部材71,71は、下方に位置する可動平板状抵抗部材71が上述の風を受けて太陽光発電モジュール6の板面と概ね90゜になる角度まで回動して該角度位置で風荷重が作用するとともに、該回動位置では、風の作用位置が、支点位置Rから偏心距離eだけ離隔することから、同図矢印方向の回転モーメントが太陽光発電モジュール6に作用し、太陽光発電モジュール6は同図(c)に示すように、風下側に位置する可動平板状抵抗部材71が、より風下に近い側へと移動する方向に回転し、その結果、角度が付いている場合には風向きと平行になる方向に向かう。
【0061】
そのため、上述した実施形態と同様の効果を奏するほか、風上側での可動平板状抵抗部材71,71に作用する風荷重が実質的にゼロとなるため、太陽光発電モジュール6の姿勢を風向きに合わせやすくなる。
【0062】
特に、ストッパー72を調整することにより、上述した角度範囲の上限を、太陽光発電モジュール6の板面に対して90゜より大きい角度、例えば図8(a)に示すように120゜程度に設定したならば、風下側の可動平板状抵抗部材81に作用する風荷重を同図(b)に示すように小さくすることができるため、該可動平板状抵抗部材の損傷を未然に防止することが可能となる。
【0063】
ここで、このときの太陽光発電モジュール6の姿勢は、上述の実施形態で説明したと同様、錘9との兼ね合いで決定され、錘9が重くなるほど、また重心位置Gが下がるほど、可動平板状抵抗部材81,81による姿勢変化割合が小さくなって、風荷重の低減度合いが小さくなるため、無風状態の安定姿勢を考慮しつつ、風荷重ができるだけ低減されるように錘9の構成を決定するのが望ましい。
【0064】
また、上述した変形例では、可動平板状抵抗部材71,71や可動平板状抵抗部材81,81が、太陽光発電モジュール6の各面でそれぞれ独立に起伏するものとしたが、かかる構成に代えて、可動平板状抵抗部材71,71の起伏動作が太陽光発電モジュール6の両面で連動するように該可動平板状抵抗部材を構成し、あるいは可動平板状抵抗部材81,81の起伏動作が太陽光発電モジュール6の両面で連動するように該可動平板状抵抗部材を構成してもかまわない。
【0065】
可動平板状抵抗部材71,71や可動平板状抵抗部材81,81の起伏動作が太陽光発電モジュール6の各面で独立して行われる構成の場合においては、風向きのゆらぎ、すなわち、図7図8で言えば太陽光発電モジュール6に対して斜め左下から吹き上げたり、斜め左上から吹き降ろしたりといった風向きの小変動に対し、あらたに風圧を受ける側の可動平板状抵抗部材71や可動平板状抵抗部材81の起立動作が遅れる懸念があるが、上述した連動構成としておけば、風上側では、太陽光発電モジュール6の両面で可動平板状抵抗部材71,71や可動平板状抵抗部材81,81が常時倒伏し、風下側では同じくその両面で常時起立する状態となるため、風向きのゆらぎに対する動作の遅れを懸念する必要がなくなる。
【0066】
なお、これらの変形例についても、錘9及びトラス材8を上述した実施形態と同様に配置する必要があるが、便宜上、図7及び図8からはこれらを省略する。
【符号の説明】
【0067】
1 太陽光発電モジュールの設置構造
3 ケーブル(引張材)
6 太陽光発電モジュール
7 湾曲状抵抗部材(風荷重抵抗手段)
9 錘
61 平板状抵抗部材(風荷重抵抗手段)
71 可動平板状抵抗部材(風荷重抵抗手段)
81 可動平板状抵抗部材(風荷重抵抗手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8