【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、風に対する安全性や強度を十分に高めることが可能な太陽光発電モジュールの設置構造を提供することを目的とする。
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係る太陽光発電モジュールの設置構造は請求項1に記載したように、板状に形成された太陽光発電モジュールを、異なる二点間に張設された引張材の材軸と板面がほぼ平行になるように該引張材に配置した太陽光発電モジュールの設置構造において、
前記太陽光発電モジュールを、該太陽光発電モジュールが前記引張材の材軸廻りに回動自在となるように該引張材に連結するとともに、前記太陽光発電モジュールを含めた重心位置が前記引張材による該太陽光発電モジュールの支点位置よりも低くなるように前記太陽光発電モジュールに錘を設置し、
前記太陽光発電モジュールであって前記引張材を挟んだ2つの部位に風荷重抵抗手段をそれぞれ設けるとともに、前記各風荷重抵抗手段を、該各風荷重抵抗手段に前記太陽光発電モジュールの板面に対し垂直でない方向からの風であって前記板面に平行でかつ前記引張材の材軸に垂直な成分
が作用したとき、その作用荷重が、前記引張材に向かう方向より該引張材から遠ざかる方向で大きくなるように
構成したものである。
【0011】
また、本発明に係る太陽光発電モジュールの設置構造は、前記各風荷重抵抗手段を、前記太陽光発電モジュールの板面に垂直で前記引張材の材軸を含む面を中心とした対称配置になるように、かつ前記太陽光発電モジュールの板面に平行で該太陽光発電モジュールの厚み中心を含む面を中心とした対称配置になるように構成したものである。
また、本発明に係る太陽光発電モジュールの設置構造は、前記各風荷重抵抗手段を、C字状横断面の湾曲状抵抗部材をその開放側が前記引張材の側を向くように前記太陽光発電モジュールの縁部に配置して構成したものである。
【0012】
また、本発明に係る太陽光発電モジュールの設置構造は、前記各風荷重抵抗手段を、前記太陽光発電モジュールの板面に対する垂直位置から前記引張材の側に傾斜させた形で該太陽光発電モジュールの各面にそれぞれ取り付けられた一対の平板状抵抗部材で構成したものである。
【0013】
また、本発明に係る太陽光発電モジュールの設置構造は、前記各風荷重抵抗手段を、
前記太陽光発電モジュールの板面と平行であって前記引張材に向かって延びる角度から該角度を基準としたときに前記板面と180゜未満となる角度までの範囲内で回動可能となるように前記太陽光発電モジュールの
板面のそれぞれに取り付けられた一対の可動平板状抵抗部材で構成したものである。
【0014】
また、本発明に係る太陽光発電モジュールの設置構造は、前記角度範囲の上限を前記板面に対し90゜より大きい角度としたものである。
【0015】
本発明に係る太陽光発電モジュールの設置構造においては、板状の太陽光発電モジュールを引張材に配置するにあたり、該太陽光発電モジュールが引張材の材軸廻りに回動自在となるように該引張材に連結するとともに、太陽光発電モジュールを含めた重心位置が、引張材による該太陽光発電モジュールの支点位置よりも低くなるように太陽光発電モジュールに錘を設置する一方、太陽光発電モジュールの板面に対し垂直でない方向からの風であって該板面に平行でかつ引張材の材軸に垂直な成分を受けたとき、その作用荷重が、引張材に向かう方向より該引張材から遠ざかる方向で大きくなるように、太陽光発電モジュールであって引張材を挟んだ2つの部位に風荷重抵抗手段をそれぞれ設けてある。
【0016】
このようにすると、無風時においては、太陽光発電モジュールに設置された錘の作用により、太陽光発電モジュールは、引張材の材軸廻りに対して所定の角度位置でバランスし、その状態で姿勢を保持する。
【0017】
一方、一定の風が吹いて、太陽光発電モジュールの板面に平行でかつ引張材の材軸に垂直な成分の風が2つの部位に設けられた風荷重抵抗手段にそれぞれ作用したとき、該各風荷重抵抗手段は、引張材に向かう方向より該引張材から遠ざかる方向で作用荷重が大きくなるように構成してあるので、風下側に位置する風荷重抵抗手段により多くの風荷重が作用する。
【0018】
そのため、太陽光発電モジュールは、風下側に位置する風荷重抵抗手段が、より風下に近い側へと移動する方向に回転し、その結果、角度が付いている場合には風向きと平行になる方向に向かう。
【0019】
したがって、太陽光発電モジュールに作用する風荷重が低減するとともに、それに伴って引張材に生ずる引張力も減少し、かくして風荷重に対する太陽光発電モジュールや引張材の設計条件が緩和され、太陽光発電モジュールの設置コストを大幅に引き下げることが可能となる。
【0020】
太陽光発電モジュールは、太陽電池パネル、太陽電池モジュールとも呼ばれているものであって、市販のものを適宜採用することが可能であり、矩形板状をなすものが典型例となる。
【0021】
引張材は、ケーブル、ワイヤー等で呼称される部材を包摂する。また、引張材は、任意の材料で構成することが可能であって、例えばPC鋼線やPC鋼より線で構成することができる。なお、引張材の張設方向は、必ずしも水平である必要はないし、二点間でたわみが形成された状態でもかまわない。
【0022】
引張材が張設される二点をどのように形成するかは任意であり、例えば、互いに離隔配置された2つの塔状構造物の各頂点とすることができるし、川や谷を挟む2つの山の山頂あるいは山腹とすることも可能である。
【0023】
錘は、重力バランサーとして機能するものであって、太陽光発電モジュールを含めた重心位置が引張材による該太陽光発電モジュールの支点位置よりも低くなるように太陽光発電モジュールに設置される限り、具体的な構成は任意であるが、風の影響をできるだけ受けずなおかつ姿勢安定性の高い構成とするのが望ましく、例えば質量密度の高い金属材料で形成し、トラス材を介して太陽光発電モジュールの下方に吊持する構成を採用することができる。
【0024】
錘は、無風時の太陽光発電モジュールの姿勢が任意の角度(仰角)となるように該太陽光発電モジュールに設置するのが望ましく、かかる構成によれば、太陽高度を考慮した発電効率の向上を図ることが可能となる。
【0025】
本発明では、太陽光発電モジュールの板面に対し垂直に吹き付ける風は対象外であるが、このような風が長時間吹き続ける状況を想定する必要性は高くないため、現実面ではほとんど問題とならない。
【0026】
また、本発明の風荷重抵抗手段は、風向きが逆転して風上と風下が入れ替わったり、斜め上からの風が斜め下からの風に変わった場合であっても、その作用が維持されるよう、引張材を中心とした左右対称構造あるいはそれに近い構造でかつ太陽光発電モジュールの板面を中心とした上下対称構造あるいはそれに近い構造とする必要があるが、このような対称構造とすることにより、太陽光発電モジュールの板面に垂直な風荷重成分は、引張材の両側で相殺し合って太陽光発電モジュールの回転には影響しないし、引張材と平行な風荷重成分については、太陽光発電モジュールの回転にそもそも寄与しない。
【0027】
そのため、風荷重抵抗手段は、太陽光発電モジュールの板面に平行でかつ引張材の材軸に垂直な成分だけを考慮すれば足りる。
【0028】
風荷重抵抗手段は、引張材に向かう方向より該引張材から遠ざかる方向で作用荷重が大きくなるように構成される限り、その具体的構成は任意であり、例えば、C字状横断面の湾曲状抵抗部材をその開放側が引張材の側を向くように太陽光発電モジュールの縁部に配置して構成することができるし、太陽光発電モジュールの板面に対する垂直位置から引張材の側に傾斜させた形で該太陽光発電モジュールの各面にそれぞれ配置された一対の平板状抵抗部材で構成することも可能である。
【0029】
さらには、引張材の側で板面と平行に延びる角度から該角度を基準としたときに前記板面と180゜未満となる角度までの範囲内で回動可能となるように、太陽光発電モジュールの各面にそれぞれ取り付けられた一対の可動平板状抵抗部材で構成することも可能であり、かかる構成によれば、風上側の風荷重抵抗手段に作用する風荷重が実質的にゼロとなるため、太陽光発電モジュールの姿勢を風向きに合わせやすくなる。
【0030】
特に、上述した角度範囲の上限を前記板面に対し90゜より大きい角度としたならば、風下側の風荷重抵抗手段に作用する荷重が過大になるのを避けることができるため、風荷重抵抗手段の損傷を防止することが可能となる。