(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
コジェネレーションシステムから電力の供給を受ける一つまたは複数の機器からなる第一設備による電力の需要特性情報と、前記コジェネレーションシステムから熱の供給を受ける一つまたは複数の機器からなる第二設備による熱の需要特性情報と、を取得する需要情報取得部と、
前記コジェネレーションシステムに設けられ、前記第一設備に電力を供給しつつ前記第二設備に熱を供給するコジェネレーション機器の稼働率に応じた性能情報を取得する性能情報取得部と、
前記コジェネレーション機器の稼働率に応じた、前記コジェネレーション機器の稼働のための燃料コストと、前記第二設備に供給される熱の不足分を補う外部熱源の稼働のための燃料コストと、前記第一設備に供給される電力の不足分を補う外部電力の購入コストと、前記コジェネレーション機器の稼働による余剰電力の売電収入との関係を示すコスト算出情報を記憶する記憶部から、前記コスト算出情報を取得するとともに、前記稼働率の初期値を取得し、当該取得した初期値に応じた前記コジェネレーション機器の性能情報と、前記電力の需要特性情報と、前記熱の需要特性情報と、前記コスト算出情報と、に基づいて、前記第一設備への電力の供給および前記第二設備への熱の供給に必要な負担の負担量を計算し、前記稼働率を前記初期値から変化させつつ前記負担量の最小値を算出する計算部と、
前記負担量が最小となる前記コジェネレーション機器を選択する機器選択部と、
を備える機器選定システム。
前記稼働率の初期値は、前記電力の需要特性情報が示す電力の需要量を過不足なく満たす稼働率と前記熱の需要特性情報が示す熱の需要量を過不足なく満たす稼働率とのうち少なくとも一方に基づく値である、
請求項1から請求項3の何れか1項に記載の機器選定システム。
前記計算部は、前記熱の需要特性情報が示す前記第二設備による熱の需要量に、前記第二設備への熱の供給における熱のロス分を加算した値を用いて前記負担量を計算する、
請求項1から請求項6の何れか1項に記載の機器選定システム。
コンピュータが、コジェネレーションシステムから電力の供給を受ける一つまたは複数の機器からなる第一設備による電力の需要特性情報と、前記コジェネレーションシステムから熱の供給を受ける一つまたは複数の機器からなる第二設備による熱の需要特性情報と、を取得し、
コンピュータが、前記コジェネレーションシステムに設けられ、前記第一設備に電力を供給しつつ前記第二設備に熱を供給するコジェネレーション機器の稼働率に応じた性能情報を取得し、
コンピュータが、前記コジェネレーション機器の稼働率に応じた、前記コジェネレーシ
ョン機器の稼働のための燃料コストと、前記第二設備に供給される熱の不足分を補う外部熱源の稼働のための燃料コストと、前記第一設備に供給される電力の不足分を補う外部電力の購入コストと、前記コジェネレーション機器の稼働による余剰電力の売電収入との関係を示すコスト算出情報を記憶する記憶部から、前記コスト算出情報を取得するとともに、前記稼働率の初期値を取得し、当該取得した初期値に応じた前記コジェネレーション機器の性能情報と、前記電力の需要特性情報と、前記熱の需要特性情報と、前記コスト算出情報と、に基づいて、前記第一設備への電力の供給および前記第二設備への熱の供給に必要な負担の負担量を計算し、前記稼働率を前記初期値から変化させつつ前記負担量の最小値を算出し、
コンピュータが、前記負担量が最小となる前記コジェネレーション機器を選択する、
機器選定方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第一の実施形態>
以下、本発明の第一の実施形態による機器選定システムを
図1〜
図5を参照して説明する。
図1は、本発明の第一の実施形態によるコジェネレーションシステムの概略図である。
コジェネレーションシステムは、コジェネレーション機器1(以下、コジェネ機器と称する)、系統電源2、ボイラ3、機器4、機器5を含んでいる。コジェネ機器1は、例えばガスタービンやガスエンジンなどである。コジェネ機器1は、電力を発電し、発電した電力を電力の供給先となる機器4へ供給する。また、コジェネ機器1は、電力の発電時に排出した熱を熱の供給先である機器5へ供給する。機器4および機器5は、例えば工場6などに設けられている。
系統電源2は、例えば発電所などの電力を生成する設備である。機器4による電力需要がコジェネ機器1から供給される電力を上回る場合、系統電源2は、機器4へ不足分の電力を供給する。
ボイラ3は、熱を生成する設備である。機器5による熱需要がコジェネ機器1の供給する熱を上回る場合、ボイラ3は、機器5へ不足分の熱を供給する。
【0013】
機器4の電力需要、機器5の熱需要、どの程度コジェネ機器1に電力および熱の需要を負担させるかによって、どのコジェネ機器1をコジェネレーションシステムに導入するかは異なってくる。本実施形態による機器選定システムは、コジェネ機器1、系統電源2、ボイラ3の稼働に要するコストをコジェネ機器1の稼働率xの関数で表し、収束計算により熱や電力の需要を考慮しつつコストを最小にする稼働率を計算する。
【0014】
図2は、本発明の第一の実施形態による機器選定システムのブロック図である。
図2に示す通り、機器選定システム10は、入力受付部11、需要情報取得部12、性能情報取得部13、稼働率決定部14、計算部15、機器選択部16、出力部17、記憶部18を備えている。機器選定システム10は、例えばCPU(Central Processing Unit)を備えたPC(パーソナルコンピュータ)やサーバ装置である。機器選定システム10は、ディスプレイ、キーボード、マウスなどと接続されている。
【0015】
入力受付部11は、ユーザが不図示のキーボードやマウスなどを用いて行った操作の操作情報を受け付ける。
需要情報取得部12は、コジェネ機器1から電力の供給を受ける一つまたは複数の機器からなる第一設備(設備4)による電力の需要特性情報と、前記コジェネレーションシステムから熱の供給を受ける一つまたは複数の機器からなる第二設備(設備5)による熱の需要特性情報と、を取得する。
性能情報取得部13は、第一設備に電力を供給しつつ第二設備に熱を供給するコジェネ機器1の稼働率に応じた性能情報を取得する。
稼働率決定部14は、入力受付部11が受け付けた稼働率の決定に必要な情報に基づいて、コジェネ機器1の稼働率の初期値を決定する。
計算部15は、稼働率決定部14が決定した稼働率の初期値を用いて、コジェネレーション機器の稼働率に応じた性能情報と、第一設備による電力の需要特性情報と、第二設備による熱の需要特性情報と、に基づいて、第一設備への電力の供給および第二設備への熱の供給に必要な負担の負担量を計算する。計算部15は、その計算において稼働率を初期値から微小変化させつつ負担量の最小値を収束計算する。
機器選択部16は、負担量が最小となるコジェネ機器1を選択する。
出力部17は、ユーザに必要な種々の情報をディスプレイに出力する。
記憶部18は、コジェネ機器1が電力を供給する機器4の電力需要を示す電力の需要特性情報、コジェネ機器1が熱を供給する機器5の熱需要を示す熱の需要特性情報、コジェネ機器1の性能情報など種々の情報を記憶している。
これら、入力受付部11、需要情報取得部12、性能情報取得部13、稼働率決定部14、計算部15、機器選択部16、出力部17は、機器選定システム10の備えるCPUが記憶部18からプログラムを読み出し実行することで備わる機能である。
【0016】
図3は、本発明の第一の実施形態による電力および熱の需要特性情報の一例である。
図3(a)は、コジェネ機器1が電力を供給する機器4の電力需要を示す電力の需要特性情報の一例である。
図3(a)の縦軸は電力の需要量、横軸は時間である。
図3(a)は、例えば、1日における電力需要の変動を示している。グラフ2Aは、コジェネ機器1によって供給される電力の大きさを示す。もし、コジェネ機器1がグラフ2Aの示す大きさの電力を供給し続けるとすると、時刻TA1においては、コジェネ機器1によって供給される電力だけでは不足し、時刻TA2においては、コジェネ機器1によって供給される電力は余ることになる。時刻TA1においては不足分を系統電源2から供給し、時刻TA2においては余った電力を捨てたり、蓄電設備があれば蓄電したり、または売却する運用を行う。
【0017】
図3(b)は、コジェネ機器1が熱を供給する機器5の熱需要を示す熱需要特性の一例である。
図3(b)の縦軸は熱の需要量、横軸は時間である。
図3(b)は、例えば、1日における熱需要の変動を示している。グラフ2Bは、コジェネ機器1によって供給される熱の大きさを示す。もし、コジェネ機器1がグラフ2Bの示す大きさの熱を供給し続けるとすると、時刻TB1においては、コジェネ機器1によって供給される熱だけでは不足し、時刻TB2においては、コジェネ機器1によって供給される熱は余ることになる。時刻TB1においてはボイラ3を稼働して熱を供給し、時刻TB2においては余った熱を捨てる運用を行う。
記憶部18は、
図3(a)、
図3(b)で例示した電力および熱の需要特性情報(需要特性を示す曲線や関数)を例えば15年分記憶している。後述するように計算部15は、電力と熱の需要に応じてコジェネ機器選定のための計算を行う。
【0018】
図4は、本発明の第一の実施形態によるコジェネレーション機器の性能特性の一例である。
図4(a)は、コジェネ機器1が出力する電力および熱の出力効率の特性を示している。
図4(a)の縦軸は効率、横軸は稼働率である。
グラフ31は、コジェネ機器1の稼働率に応じた熱の出力効率を示している。図が示すようにコジェネ機器1による熱の出力効率は、コジェネ機器1の稼働率が高くなるにつれ上昇する。
グラフ32は、コジェネ機器1の稼働率に応じた電力の出力効率を示している。図が示すようにコジェネ機器1による電力の出力効率は、コジェネ機器1の稼働率に関わらずほぼ一定である。より正確には、稼働率が高くなるにつれ若干低下する傾向がある。
【0019】
図4(b)は、コジェネ機器1の全出力と稼働率との関係(燃料効率)を示している。
図4(b)の縦軸は出力、横軸は稼働率である。
グラフ33は、コジェネ機器1の稼働率に応じたコジェネ機器1の全出力(電力出力と熱出力の和)を示している。図が示すようにコジェネ機器1の出力は、コジェネ機器1の稼働率が高くなるにつれ上昇する。
記憶部18は、複数のコジェネ機器1のそれぞれについて定められた
図4(a)、
図4(b)で例示した電力および熱の出力効率とコジェネ機器1の稼働率の関数(グラフ31やグラフ32)、コジェネ機器1の全出力と稼働率の関数(グラフ33)を記憶している。これら複数のコジェネ機器1とは、コジェネレーションシステムへ導入する候補となるコジェネ機器1である。
【0020】
ここで、コジェネ機器1が出力する熱の出力は、以下の式で表すことができる。
W
heat_cogene(x) = W
fuel(x) × η
heat_cogene(x) ・・・・(1)
W
heat_cogene(x)はコジェネ機器1が出力する熱、W
fuel(x)はコジェネ機器1の全出力、η
heat_cogene(x)は熱の出力効率である。W
fuel(x)はグラフ33によって、η
heat_cogene(x)はグラフ31によって求めることができる。
【0021】
また、コジェネ機器1が出力する電力は、以下の式で表すことができる。
W
elec_cogene(x) = W
fuel(x) × η
elec_cogene(x) ・・・・(2)
W
elec_cogene(x)はコジェネ機器1が出力する電力、W
fuel(x)はコジェネ機器1の全出力、η
elec_cogene(x)は電力の出力効率である。W
fuel(x)はグラフ33によって、η
elec_cogene(x)はグラフ32によって求めることができる。
式(1)、式(2)により、コジェネ機器1が出力する電力および熱は、コジェネ機器1の稼働率の関数で表すことができることがわかる。これらの式と
図3で例示した電力および熱の需要特性から、あるコジェネ機器1について、電力または熱の需要を満たすような稼働率xを求めることができる。例えば、式(2)の左辺に
図3(a)が示すある1時間における電力の需要量を代入することで、その1時間の電力需要を満たすコジェネ機器1の稼働率を求めることができる。また、求めた稼働率を式(1)に代入することで、その1時間においてコジェネ機器1が出力する熱を計算することができる。また計算したコジェネ機器1による熱の出力と
図3(b)が示す当該1時間における熱の需要量とを比較すれば熱の需要量を過不足なく満たすかどうかを判定することができる。このように電力の需要をまかなうようにコジェネ機器1の稼働率を決定する方式を「電主」という。
一方、式(1)の左辺に
図3(b)が示すある1時間における熱の需要量を代入して、その1時間における熱の需要量を過不足なく満たすようなコジェネ機器1の稼働率を決定する方式を「熱主」という。
【0022】
一般に、発電機器の熱の出力効率(η
heat_cogene(x))は、電力の出力効率(η
elec_cogene(x))に比べ高いことが多い(例えば、熱の出力効率が50%、電力の出力効率が30%など)。従って電主によって稼働率を決定すると熱が余る傾向にあり、逆に熱主によって稼働率を決定すると電力が不足する傾向がある。不足した電力は例えば電源系統2から供給して補う。このときのコストは、コジェネ機器1の稼働に必要な燃料のコストと電源系統2から供給した分の電気料金の和となる。一方、コジェネ機器1による熱の出力量が熱の需要量を下回る場合、足りない分はボイラ3を稼働させることで補う。このときのコストは、コジェネ機器1の稼働に必要な燃料のコストとボイラ3の稼働に必要な燃料のコストの和となる。このようにコジェネレーションシステムに導入するコジェネ機器1を選定する際に、例えばコストがなるべく低くなるようなコジェネ機器1を選定するのであれば、コジェネ機器1に関するコストだけではなく、電源系統2から購入する電力のコストやボイラ3のコストなどを考慮する必要がある。
次に
図5のフローチャートを用いて、コジェネ機器1の選定処理の一例について説明する。
【0023】
図5は、本発明の第一の実施形態による機器選定システムの処理の一例を示すフローチャートである。
前提として記憶部18には、電力の供給先である機器4の15年分の電力の需要特性情報、熱の供給先である機器5の15年分の熱の需要特性情報、導入候補となる複数の発電設備の稼働率に応じた電力効率、稼働率に応じた熱効率、稼働率に応じた出力を規定するテーブルや関数などが格納されているものとする。また、最もコストを低減できるコジェネ機器1を選定する場合を例に説明を行う。
まず、機器選定システム10に対してユーザが機器選定処理の開始指示操作を行う。すると入力受付部11がその指示操作を受け付け、機器選定処理を開始する。まず、出力部17がユーザにコジェネ機器1の稼働率の決定に必要な情報の入力を促す表示を出力する。例えば、出力部17が「電主」、「熱主」、「電主と熱主の平均」、「電主の70%」などの選択肢を提示してユーザがその中から選択してもよい。ユーザが稼働率の初期値を決定できる情報を入力すると、入力受付部11がその入力を受け付ける(ステップS1)。入力受付部11は、受け付けた情報を稼働率決定部14へ出力する。
次に需要情報取得部12が所定期間(15年分)にわたる熱の需要特性情報、電力の需要特性情報を記憶部18から読み出して取得する(ステップS2)。次に性能情報取得部13がコジェネ機器1の性能情報(稼働率に応じた電力の出力効率、稼働率に応じた熱の出力効率、稼働率に応じた全出力)を記憶部18から読み出して取得する(ステップS3)。
【0024】
次に稼働率決定部14は、15年分の電力および熱の需要特性情報のうち最初の1時間における電力および熱の需要量の情報を抽出して取得する(ステップS4)。ここで取得したある1時間(hour_1)における熱の需要量をW
heat_demand(year,month,day,hour_1)、電力の需要量をW
elec_demand(year,month,day,hour_1)とする。
【0025】
次に稼働率決定部14は、稼働率を決定する(ステップS5)。例えば、ユーザが「電主」を選択した場合、稼働率決定部14は、式(2)の左辺にW
elec_demand(year,month,day,hour_1)を代入し、稼働率xを決定する。また、例えば、ユーザが「熱主」を選択した場合、稼働率決定部14は、式(1)の左辺にW
heat_demand(year,month,day,hour_1)を代入し、稼働率xを決定する。また、例えば、ユーザが「電主と熱主の平均」を選択した場合、稼働率決定部14は、式(2)の左辺にW
elec_demand(year,month,day,hour_1)を代入して計算した稼働率x1と式(1)の左辺にW
heat_demand(year,month,day,hour_1)を代入して計算した稼働率x2の平均値を計算し、その平均値を稼働率xに決定する。また、例えば、ユーザが「電主の70%」を選択した場合、稼働率決定部14は、式(2)の左辺にW
elec_demand(year,month,day,hour_1)×0.7を代入し、稼働率xを決定(仮決定)する。稼働率決定部14は、決定した稼働率xを計算部15に出力する。「電主の70%」の選択肢は、上述のように一般的に熱効率の方が高く電主によって稼働率を決定すると熱が余る場合が多く、その熱が無駄になってしまうことから、小規模なコジェネ機器を導入して電力の足りない分を系統電源2から補う運用を行う場合を想定した選択肢である。なお、「70%」は一例であり、ステップS1で機器4による電力需要量および機器5による熱需要量に応じて異なった値を設定できるようにしてもよい。なお、このステップS5における稼働率xの決定とは、稼働率の仮決定である。後述するように、本実施形態では、仮決定した稼働率xを初期値として、稼働率をΔxずつ繰り返し変化させ、最終的にコストを最小にすることができる稼働率及びそのときの最小コストを求める。
【0026】
次に、計算部15がコジェネ機器1を稼働率xで稼働した場合のコストを算出する。まず、計算部15は、熱供給の計算を行う(ステップS6)。具体的には、計算部15は、W
heat_demand(year,month,day,hour_1)と式(1)によって求めたW
heat_cogene(x)とを比較する。W
heat_demand(year,month,day,hour_1)≦W
heat_cogene(x)の場合、コジェネ機器1による排熱で機器4による熱の需要をまかなうことができるので、計算部15はボイラ3の稼働は必要ないと判定する。W
heat_demand(year,month,day,hour_1)>W
heat_cogene(x)の場合、コジェネ機器1による排熱では機器4による熱の需要をまかなうことができないので、計算部15はボイラ3の稼働が必要であると判定する。また、この場合、計算部15は、ボイラ3による熱の出力量(W
boiler)を以下の式で計算する。
W
boiler = W
heat_demand(year,month,day,hour_1)−W
heat_cogene(x)・・・(3)
【0027】
次に、計算部15は、電力供給の計算を行う(ステップS7)。具体的には、計算部15は、W
elec_demand(year,month,day,hour_1)と式(2)によって求めたW
elec_cogene(x)とを比較する。W
elec_demand(year,month,day,hour_1)≦W
elec_cogene(x)の場合、コジェネ機器1による電力で機器5による電力の需要をまかなうことができるので、計算部15は電力系統2から電力を供給する必要はないと判定する。W
elec_demand(year,month,day,hour_1)>W
elec_cogene(x)の場合、コジェネ機器1による電力では機器5による電力の需要をまかなうことができないので、計算部15は電力系統2からの電力の供給が必要であると判定する。また、計算部15は、電力系統2から供給する電力(W
系統)を以下の式で計算する。
W
系統 = W
elec_demand(year,month,day,hour_1)−W
elec_cogene(x)・・・(4)
【0028】
次に、計算部15は、1時間当たりのコストの計算を行う(ステップS8)。コストの計算は稼働率xの関数として与えられ、例えば以下の式で行うことができる。
1時間当たりのコスト = コジェネ機器稼働のための燃料コスト(x)+ ボイラ3の稼働のための燃料コスト(x)+ 系統電力コスト − 売電収入 ・・・(5)
ボイラ3の稼働が必要ない場合は、「ボイラ3の稼働のための燃料コスト(x)」の項は0である。また、系統電源2から電力を購入する必要が無い場合は、「系統電力コスト」の項は0である。また、コジェネ機器1による発電電力が余る場合であっても、その電力を売却できない場合は、「売電収入」の項は0である。
記憶部18は、式(5)で例示した1時間当たりのコスト算出用の稼働率xの関数f
A(x)を記憶しており、計算部15は、式(5)で例示したコスト算出用の関数f
A(x)を記憶部18より読み出す。なお、関数f
A(x)は、xの非線形関数として与えられることがわかっている。
【0029】
次に、計算部15は、関数f
A(x)に稼働率xを代入して、稼働率xでの1時間当たりのコストを算出する。次に計算部15は、計算した1時間当たりのコストが最小かどうかを判定する(ステップS9)。コストが最小とは、稼働率xの値を微小変化させたときに収束する最小の値のことである。例えば、計算部15は、前回計算したコストと今回計算したコストとの差が所定の範囲内であれば、稼働率x付近でのコストの値が収束し、計算した1時間当たりのコストが最小であると判定する。計算部15は、前回計算したコストと今回計算したコストとの乖離が所定の値以上であれば、計算した1時間当たりのコストが最小ではないと判定する。また、例えば、1回目の計算(稼働率xを関数f
A(x)に代入して求めた1時間当たりのコスト)では、求めたコストが最小かどうか不明なので、計算部15は、計算した1時間当たりのコストが最小ではないと判定する。つまり、計算部15は、仮決定した稼働率xの値を変化させて、稼働率xに近い稼働率においてコストが最小となるときの稼働率x+Δxを求める。
【0030】
計算した1時間当たりのコストが最小ではないと判定した場合(ステップS9;No)、計算部15は、稼働率xを修正する(ステップS10)。例えば、計算部15は、稼働率xを微小変化させて稼働率をx+Δxとする。あるいは、計算部15は、例えば、稼働率x=100(%)の場合、稼働率をx−Δxとする。そして、計算部15は、ステップS6からの処理を再度行う。
【0031】
このようにして、稼働率を微小変化させながら1時間当たりのコストを複数回計算し、計算したコストが最小の値に収束すると、計算部15は、仮決定した稼働率xに近い稼働率における1時間当たりの最小コストが計算できたと判定する。計算した1時間当たりのコストが最小であると判定すると(ステップS9;Yes)、計算部15は、例えば前回と今回の最小コストのうち小さい方を最小コスト、そのときの稼働率x+Δxを求めるべき稼働率として決定し、最小コストと稼働率を記憶部18に記録する(ステップS11)。なお、所定の回数計算を繰り返してもコストが収束しない場合、現在計算対象としているコジェネ機器1については、ステップS1で入力した条件における最小コストなしとして、再度、ユーザに条件の入力を求めてもよい。あるいは、ステップS5で決定した稼働率を所定の値(Δxより大きな値)だけ変化させ、ステップS5以降の処理を繰り返してもよい。
【0032】
次に、計算部15は、未計算期間が存在するか否かを判定する(ステップS12)。例えば、最小コストの計算を開始して1回目のときは、15年分の最初の1時間分の計算を行っただけであるので計算部15は、未計算期間が存在すると判定する。未計算期間が存在する場合、需要情報取得部12は、次の1時間の熱および電力の需要情報を取得する(ステップS4)。そして機器選定システム10は、ステップS4からステップS11の処理を繰り返す。15年間の全てについて1時間ごとに最小コストと最小コストを満たす稼働率xを計算し終えたら、計算部15は所定期間(15年間)における総コストを計算する(ステップS13)。具体的には、計算部15は、記憶部18に記録した1時間ごとの最小コストを15年分集計する。また、計算部15は、最小コストを集計した値に現在計算対象としているコジェネ機器1の初期導入コストを加算して総コストとする。計算部15は、コジェネ機器1の識別情報と計算した総コストを対応付けて記憶部18に記録する。
【0033】
次に計算部15は、未計算コジェネ機器が存在するか否かを判定する(ステップS14)。未計算コジェネ機器とは、ステップS13での総コストの計算を行っていないコジェネ機器1のことである。未計算コジェネ機器が存在する場合、次に計算対象とするコジェネ機器1を選択し、そのコジェネ機器1の性能情報を読み出してステップS3からの処理を繰り返す。このようにして計算部15は、全てのコジェネ機器1の総コストを計算し、コジェネ機器1の識別情報と総コストを対応付けて記憶部18に記録する。
【0034】
全てのコジェネ機器1について総コストを記録すると、計算部15は、機器選択部16に総コストが最小となる機器のコジェネ機器1の選択を指示する。機器選択部16は、記憶部18からコジェネ機器1ごとの総コストを読み出して、総コストが最小となるコジェネ機器を選択する(ステップS15)。機器選択部16は、選択したコジェネ機器1の識別情報と総コストを出力部17に出力する。出力部17は、取得したコジェネ機器1の識別情報と総コストとを機器選定システム10に接続されたディスプレイに出力する。なお、出力部17は、選択したコジェネ機器1についての1時間ごとの稼働率を出力するようにしてもよい。
【0035】
なお、ステップS8〜ステップ9における1時間当たりの最小コストの算出は、例えば、次のようにして行ってもよい。
例えば、計算部15は、目標コストを取得して記憶部18より読み出したコスト算出用の関数f
A(x)と目標コストの交点を求める。換言すれば、コスト算出用の関数f
Aの値が目標コストとなる場合の以下の方程式の解xを求める。
目標コスト = f
A(x) ・・・(6)
【0036】
ここで、目標コストは、例えば、当該1時間当たりのW
elec_demand(year,month,day,hour_1)の大きさに対応付けて予め記憶部18に格納されていてもよい。あるいは、ユーザが任意に入力できる値であってもよい。
まず、計算部15は式(6)の方程式がいくつの実数解を持つかを検討する。解の個数は、例えば判別式によって求めることができる。解の個数が0または複数の場合、計算部15は目標コストの値を微小変化させ、解の個数が1となるように調整する。例えば、式(6)が2次方程式「y=x
2+ax+b」である場合、解の個数が0であれば目標コストを上げ、解の個数が2であれば目標コストを下げるように調整すると解の個数を1とすることができる。解の個数が1となる調整後の目標コストは、当該1時間におけるステップS1で指定した稼働率における最小コストである。
【0037】
次に計算部15は、稼働率xを微小変化させてx+Δxとして(ステップS10)、ステップS6からのコスト計算を再度行う。今回の計算においても解の個数が1となるような調整を行い、稼働率x+Δxにおける最小コストを求める。ここで、前回計算した最小コスト(解が1個になるような調整後の目標コスト)と今回計算した最小コストとの乖離が所定の範囲内に収束すれば、例えば前回と今回の最小コストのうち小さい方を最終的な最小コスト、そのときの解x´を最小コストとなる稼働率xとして決定し、最小コストと稼働率xを記憶部18に記録する(ステップS11)。計算部15は、最小コストが決定するまでΔxを微小変化させて続けて計算を繰り返し行う。
【0038】
本実施形態によれば、ユーザは、電主、熱主などの運転形態を指定するだけで、指定した運転形態で稼働させた場合における電力および熱の需要を満たすことのできる最小コストのコジェネ機器1を選定することができる。また、ユーザは、選定したコジェネ機器1を総コストが最小となるように稼働させた場合の稼働パターン(例えば1時間ごとの稼働率)を把握することができる。
【0039】
なお、
図5のフローチャートでは、コストが最小となるようなコジェネ機器1の選択方法を例に説明を行ったがコストに代えて入力するエネルギーや環境負荷を最小にすることができるコジェネ機器1を選択するようにしてもよい。
入力エネルギーは、発電機器の稼働に必要な燃料のエネルギーの量、系統電源2から供給する電力の生産に要するエネルギーの量、ボイラ3の稼働に必要な燃料のエネルギーの和である。稼働率xからコジェネ機器1に必要な燃料を算出することができる。また、式(3)によってボイラ3の出力を計算すると、その出力に対応する燃料の消費量を求めることができる。同様に式(4)から系統電源2から供給する電力を算出すると、その出力に対応する燃料の消費量を求めることができる。さらにコジェネ機器1などに必要な燃料消費量を求めることにより、コジェネ機器1などに必要な入力エネルギーは、それぞれの燃料消費量をエネルギー換算することで求めることができる。記憶部18は、これらコジェネ機器1などの燃料消費量と入力エネルギーの換算テーブルや1時間当たりの入力エネルギーを求める稼働率xの非線形関数f
Bを記憶しているものとする。計算部15は、この関数f
Bを用いて1時間ごとの入力エネルギーを計算し、所定の目標入力エネルギー、稼働率xを微小変化させながら、入力エネルギーの最小値とそのときの稼働率xを求める。計算部15は、この計算を15年分繰り返し、ある一つのコジェネ機器1についての総入力エネルギーを計算する。また、計算部15は、全てのコジェネ機器1について15年分の総入力エネルギーを計算して、計算結果を記憶部18に記録する。機器選択部16は、総入力エネルギーが最小となるコジェネ機器1を選択する。これにより、ユーザは、コジェネ機器1の稼働に必要な燃料などを最小にするコジェネ機器1と稼働パターンを把握することができる。
【0040】
また、機器選択部16が環境負荷を最小にするコジェネ機器1を選択するように構成してもよい。環境負荷は、例えば、コジェネ機器1、系統電源2、ボイラ3が排出するCO
2の排出量によって判定することができる。入力エネルギーの場合と同様に、コジェネ機器1の稼働率xを初期入力することにより、コジェネ機器1、系統電源2、ボイラ3の燃料消費量を計算することができる。さらに記憶部18がそれぞれの燃料について燃料消費量とCO
2排出量を換算するテーブルや1時間当たりのCO
2排出量を求める稼働率xの非線形関数f
Cを記憶しているものとする。計算部15は、この関数f
Cを用いて1時間ごとのCO
2排出量を計算し、所定の目標CO
2排出量、稼働率xを微小変化させながら、CO
2排出量の最小値とそのときの稼働率xを求める。計算部15は、この計算を15年分繰り返し、ある一つのコジェネ機器1についての総CO
2排出量を計算する。また、計算部15は、全てのコジェネ機器1について15年分の総CO
2排出量を計算して、計算結果を記憶部18に記録する。機器選択部16は、総CO
2排出量が最小となるコジェネ機器1を選択する。これにより、ユーザは、コジェネ機器1の稼働によって生じるCO
2排出量(環境負荷)を最小にするコジェネ機器1と稼働パターンを把握することができる。
【0041】
<第二の実施形態>
以下、本発明の第二の実施形態による機器選定システムを
図6〜
図7を参照して説明する。
図6は、本発明の第二の実施形態による機器選定システムのブロック図である。
図6で示すように、本実施形態による機器選定システム10は、損失情報取得部19を備えている。また、記憶部18は、機器4へ供給する際の電力のロス、機器5へ供給する際の熱のロスを示す情報をさらに記憶している。第二の実施形態による機器選定システム10のその他の構成は、第一の実施形態と同様である。
損失情報取得部19は、記憶部18が記憶する時間ごとの電力ロス情報および時間ごとの熱のロス情報を取得する。電力のロスとは、例えば機器4の待機電力である。また、熱のロスとは、コジェネ機器1から機器5へ熱を供給する配管などの設備で生じる。熱のロスには、例えば、配管からの放熱に伴い配管内蒸気が凝縮・ドレン化しスチームトラップから排出されるロス、スチープトラップにて捕捉されたドレンが排出される際に配管内蒸気が同時に漏洩するロス、蒸気配管、バルブ、フランジ等を含む配管系統に物理的損傷等があり、蒸気が漏洩するロスなどがある。
【0042】
図7は、本発明の第二の実施形態による電力および熱の需要特性の一例である。
図7(a)のグラフ34は、コジェネ機器1が電力を供給する機器4の電力需要と機器4における電力ロスの和を示している。グラフ35は、機器4における電力ロスを示している。
図7(a)の縦軸は電力の需要量と電力ロスの和、横軸は時間である。
図7(b)のグラフ36は、コジェネ機器1が電力を供給する機器5の熱需要と機器5における熱ロスの和を示すグラフの一例である。グラフ37は、機器5における熱ロスを示している。
図7(b)の縦軸は熱の需要量と熱ロスの和、横軸は時間である。
記憶部18は、
図7(a)、7(b)で例示した関数やそれらに対応するテーブルなどを記憶している。
【0043】
本実施形態では、需要情報取得部12が電力および熱の需要情報を記憶部18から読み出す。また、損失情報取得部19が電力および熱のロス情報を記憶部18から読み出す。電力ロスをW
elec_loss(year,month,day,hour_1)、熱ロスをW
heat_loss(year,month,day,hour_1)とする。「電主」に基づいて初期稼働率xを求める場合、稼働率決定部14は、W
elec_demand(year,month,day,hour_1)+W
elec_loss(year,month,day,hour_1) = W
elec_cogene(x)より稼働率xを計算する。同様に「熱主」に基づいて初期稼働率xを求める場合、稼働率決定部14は、W
heat_demand(year,month,day,hour_1)+W
heat_loss(year,month,day,hour_1) = W
heat_cogene(x)より稼働率xを計算する。また、計算部15は、式(3)においてW
elec_demand(year,month,day,hour_1)の代わりにW
elec_demand(year,month,day,hour_1)+W
elec_loss(year,month,day,hour_1)を用いてW
系統を計算し、式(4)においてW
heat_demand(year,month,day,hour_1)の代わりにW
heat_demand(year,month,day,hour_1)+W
heat_loss(year,month,day,hour_1)を用いてW
boilerを計算する。第二の実施形態では、計算部15はこれらの値を用いて
図5で例示したフローチャートと同様の機器選定処理を行う。
【0044】
本実施形態によれば、電力ロスや熱ロスを考慮したコジェネ機器1の選定が可能になる。特に15年の長期に渡ってコジェネ機器1を運用することを考えるとこれら電力や熱のロスを真の電力および熱の需要量に加えて計算することは有意義である。
また、電力ロスは、機器4によって異なる。15年の間に機器4を新たな機器に交換するようなことがあれば交換後の電力ロスも変化する。例えば、15年の間には待機電力が削減された機器と交換することが可能になるかもしれない。記憶部18が新たな機器についての電力ロス情報を記憶していれば、機器4の交換後に必要なより正確な電力に基づいてコジェネ機器1の選定を行うことができる。機器5の熱ロスについても同様である。また、熱ロスについては機器5の交換だけでなく、コジェネ機器1と機器5を結ぶ配管系等のメンテネンスによって熱ロスの低減を図ることができる。記憶部18がメンテナンスの頻度やメンテナンス作業の内容に応じた熱ロス情報を記憶していれば、機器5の配管系等のメンテナンス計画を考慮した熱ロス分を含む熱需要に基づいてコジェネ機器1の選択を行うことができる。
【0045】
なお、上述の機器選定システム10は内部にコンピュータを有している。そして、上述した機器選定システム10の各処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしてもよい。
【0046】
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0047】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。また、この発明の技術範囲は上記の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば、本実施形態の機器選定システム10は、1台のコンピュータにより実現されてもよいし、2台以上のコンピュータを有線または無線で接続し、これら複数のコンピュータにより実現されてもよい。