特許第6728647号(P6728647)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ジェイテクトの特許一覧

<>
  • 特許6728647-搬送装置 図000002
  • 特許6728647-搬送装置 図000003
  • 特許6728647-搬送装置 図000004
  • 特許6728647-搬送装置 図000005
  • 特許6728647-搬送装置 図000006
  • 特許6728647-搬送装置 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6728647
(24)【登録日】2020年7月6日
(45)【発行日】2020年7月22日
(54)【発明の名称】搬送装置
(51)【国際特許分類】
   B23Q 7/04 20060101AFI20200713BHJP
   B23Q 7/14 20060101ALI20200713BHJP
   B25J 15/08 20060101ALI20200713BHJP
【FI】
   B23Q7/04 A
   B23Q7/14
   B25J15/08 C
【請求項の数】5
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2015-230072(P2015-230072)
(22)【出願日】2015年11月25日
(65)【公開番号】特開2017-94459(P2017-94459A)
(43)【公開日】2017年6月1日
【審査請求日】2018年10月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100130188
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 喜一
(74)【代理人】
【識別番号】100089082
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 脩
(74)【代理人】
【識別番号】100190333
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 群司
(72)【発明者】
【氏名】中村 英士
(72)【発明者】
【氏名】大木 稔
(72)【発明者】
【氏名】山崎 光洋
(72)【発明者】
【氏名】小川 史樹
【審査官】 久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】 特公平06−092054(JP,B2)
【文献】 特開2000−343372(JP,A)
【文献】 特開昭61−004641(JP,A)
【文献】 特開平10−329082(JP,A)
【文献】 特開平11−333672(JP,A)
【文献】 特開平06−064745(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 7/04
B23Q 7/14
B25J 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理位置に載置された物品に対して所定の処理を施す処理装置に用いられ、待機位置と前記処理位置との間で前記物品を搬送する搬送装置であって、
前記待機位置と前記処理位置との間を移動可能であり、先端側で前記物品を両側から挟み込む二本のアームであり、前記二本のアームの相互離間距離を変化可能に設けられ、且つ、両先端を上下方向に移動させるように前記先端側と反対側の基端側に設けられる所定の旋回軸周りに旋回可能に設けられる前記二本のアームと、
前記二本のアームの前記基端側に配置され、前記待機位置及び前記処理位置に亘って延在するガイドと、
前記ガイドと前記ガイドの延在方向に相対移動可能に係合し、前記二本のアームを前記二本のアームの前記基端側で支持するボデーと、
前記待機位置及び前記処理位置の一方に位置する前記物品を前記二本のアームの前記先端側に挟ませた状態で前記二本のアームを前記所定の旋回軸周りに旋回させて前記先端側の前記物品を持ち上げ、前記物品を持ち上げた状態で前記二本のアームを前記待機位置及び前記処理位置の他方へ移動させ、且つ、前記二本のアームを前記所定の旋回軸周りに旋回させて前記物品を下降させ、前記物品を前記待機位置及び前記処理位置の他方に載置する制御装置と
前記制御装置によって制御され、前記ボデーを前記ガイドに対して前記延在方向に相対移動させる移動駆動部と、
前記二本のアームの前記基端側に設けられるとともに、前記制御装置によって制御されて前記二本のアームの前記相互離間距離を変化させ、前記二本のアームの前記先端側で前記物品を持ち上げ可能な所定の荷重によって前記両側から前記物品を挟み込む挟持駆動部と、
前記二本のアームの前記基端側に設けられるとともに、前記制御装置によって制御され、前記挟持駆動部によって前記二本のアームが前記物品を前記所定の荷重で挟み込んだ状態において、前記二本のアームの前記両先端が上下動するよう前記二本のアームを前記所定の旋回軸周りに所定の旋回角度で旋回させ、且つ前記所定の旋回角度で旋回した後の前記二本のアームの状態を保持する旋回駆動部と、を備え、
前記二本のアームは、それぞれ前記先端側で前記物品を挟み込む各挟み込み部と、円環状に形成され、前記所定の旋回軸が設けられるとともに、前記先端側と反対側の前記各挟み込み部の基端側端部に接続される各円環部と、を備え、
前記挟持駆動部は、
軸線が前記所定の旋回軸と同軸になるよう前記二本のアームの前記各円環部を挿通して配置される第二ボルトと、
出力軸が前記第二ボルトの端部に前記第二ボルトと一体回転可能に固定され、前記制御装置の制御により前記出力軸を回転させ前記第二ボルトを前記軸線周りに回転作動させる第二モータと、
円筒状に形成され、前記第二ボルトと前記各円環部の各内周面との径方向間に、それぞれ前記軸線に対して相対回転が規制されて配置され、前記第二ボルトとの間において、それぞれ複数のボールを介して第二ボール螺子機構を形成し、前記各円環部との間においては、前記第二ボルトが回転し前記第二ボール螺子機構が作動する際、前記各円環部と一体で前記軸線方向へ移動可能となるよう前記各円環部と係合する二個のナットと、を備え、
前記旋回駆動部は、
前記各円環部によって形成され前記各円環部の外周面に歯部を備える二個のウォームホイールと、
前記二個のナットにそれぞれ固定され、前記制御装置によって制御される二個の第三モータの各出力軸にそれぞれ前記各出力軸と一体回転可能に設けられ、前記各ウォームホイールの前記歯部と噛合する二個のウォームと、を備え、
前記二本のアームの前記各円環部である前記二個のウォームホイールの前記内周面は、前記二個のナットの各外周面とそれぞれ相対回転自在に係合される、搬送装置。
【請求項2】
前記処理装置は、前記処理位置と前記待機位置との間を区画し、且つ開閉不能な側壁を備え、
前記制御装置は、
前記物品を前記待機位置及び前記処理位置の前記一方から前記他方へ移動させる際、前記二本のアームに挟ませた状態で前記二本のアームを旋回させ持ち上げた前記物品を、前記持ち上げた状態で前記二本のアームとともに前記側壁の手前側と定義される前記側壁よりも前記二本のアームの前記基端側の空間を通過させて前記他方に移動させる、請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記待機位置は、前記処理位置の両側に設けられ前記所定の処理が施される前の前記物品が待機する搬入前待機位置及び前記処理位置で前記所定の処理が施された後の前記物品が待機する搬出後待機位置であり、
前記側壁は、前記処理位置と前記搬入前待機位置との間及び前記処理位置と前記搬出後待機位置との間を区画する第一側壁及び第二側壁であり、
前記搬送装置は、
前記制御装置が、前記二本のアームを旋回させ、前記物品を下降させて前記処理位置に搬入する際、又は前記物品を持ち上げて前記処理位置から搬出する際に、前記処理位置に対する前記物品の出入口となる前記第一側壁及び前記第二側壁の間の開口に開閉可能な開閉扉を備え、
前記制御装置は、
前記搬入前待機位置に位置する前記物品を前記二本のアームに挟ませた状態で前記二本のアームを旋回させて前記物品を持ち上げ、前記物品を前記持ち上げた状態で前記物品及び前記二本のアームを、前記第一側壁の前記手前側を通過させて前記処理位置へ移動させた後、前記二本のアームを旋回させ前記開口を通過させて前記物品を下降させ前記処理位置に載置する搬入制御部と、
前記処理位置に位置する前記物品を前記二本のアームに挟ませた状態で前記二本のアームを旋回させ前記物品を持ち上げて前記開口を通過させ、前記物品を前記持ち上げた状態で前記物品及び前記二本のアームを、前記第二側壁の前記手前側を通過させて前記搬出後待機位置へ移動させた後、前記二本のアームを旋回させて前記物品を下降させ前記搬出後待機位置に載置する搬出制御部と、を備える、請求項2に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記処理装置は工作機械であり、
前記物品は、工作物である、請求項1−の何れか1項に記載の搬送装置。
【請求項5】
前記搬送装置は、
前記制御装置の制御によって前記物品を前記二本のアームに前記挟ませた状態で前記二本のアームを旋回させ前記物品を上方に持ち上げる際、前記二本のアームの旋回角度に応じた傾斜を有して持ち上がる前記物品から前記傾斜を起因として落下するクーラントを受ける受け部材を備える、請求項に記載の搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品に対して所定の処理を施す処理装置に用いられ、処理装置の処理位置と待機位置との間で物品を搬送する搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば工作物等の物品に処理を施す処理装置(例えば工作機械の加工ステーション)に対して、物品の搬入および搬出を行なうとともに、処理装置間で工作物の搬送を行なう、例えば、特許文献1に示すような搬送装置がある。特許文献1では、複数の加工ステーションが連続して加工を行なえるよう、整列して配置された複数の加工ステーション間に複数の搬送装置100が配置される。複数の搬送装置100では、工作物Wが、上面の係合部に係合された状態で載置されるスライド装置1を備える。スライド装置1は、工作物Wの搬送(搬入および搬出)方向にスライドし、加工ステーション内まで入り込むことで、工作物Wを加工ステーション内に搬入、又は加工ステーション内から搬出する。
【0003】
このとき、スライド装置1と加工ステーションとの間における工作物Wの受け渡しには、搬送装置100が備える昇降装置を用いる。スライド装置1から加工ステーションに工作物Wを渡す際には、まず昇降装置を作動させてスライド装置1の上面(工作物Wの載置面)を上昇させ、上面を加工ステーション内における工作物Wの載置面の高さに一致させるとともに、上面に設けられた突部を工作物Wの下面に設けられた凹部と係合させる。そして、スライド装置1を工作物Wとともに加工ステーション方向にスライドさせ、工作物Wを加工ステーション内の載置位置(処理位置)まで押し込む。なお、このとき、加工ステーション内の工作物Wの載置位置における載置面は、工作物Wの下面の外周部の一部のみを受ける形状となっており、スライド装置1は工作物Wを係合したままの状態で工作物Wの受け渡し位置(載置位置)まで進入可能である。その後、昇降装置を下降させて、スライド装置1と工作物Wとの係合を解除し、工作物Wを加工ステーションの載置位置に受け渡す。
【0004】
逆に、加工ステーション側からスライド装置1に工作物Wを移動させる際には、昇降装置を作動させ、搬送装置100の上面を下降させておく。そして、スライド装置1を加工ステーション方向にスライドさせ、受け渡し位置にある工作物Wの下方にスライド装置1の上面をもぐりこませる。その後、昇降装置を上昇させて、工作物Wの下面とスライド装置1の上面とを係合状態とした上で、スライド装置1を加工ステーションから離間する方向にスライドさせる。これにより、工作物Wをスライド装置1の上面に移動させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平07−148636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような複数の搬送装置100が、整列して配置された加工ステーション間にそれぞれ配置されて搬送路を形成している。このため、搬送装置100は、加工ステーションのライン長に影響を及ぼし、ライン長は、搬送装置100を配置した数に比例して長くなる。また、特許文献1の技術では、搬送装置100と加工ステーションとの間における工作物Wの受け渡しに高価な昇降装置を用いるため、搬送装置100は高コストなものとなる。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、処理装置のライン長に影響を及ぼさず、低コストで製作可能な搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(請求項1)本発明に係る搬送装置は、処理位置に載置された物品に対して所定の処理を施す処理装置に用いられ、待機位置と前記処理位置との間で前記物品を搬送する搬送装置であって、前記待機位置と前記処理位置との間を移動可能であり、先端側で前記物品を両側から挟み込む二本のアームであり、前記二本のアームの相互離間距離を変化可能に設けられ、且つ、両先端を上下方向に移動させるように前記先端側と反対側の基端側に設けられる所定の旋回軸周りに旋回可能に設けられる前記二本のアームと、前記二本のアームの前記基端側に配置され、前記待機位置及び前記処理位置に亘って延在するガイドと、前記ガイドと前記ガイドの延在方向に相対移動可能に係合し、前記二本のアームを前記二本のアームの前記基端側で支持するボデーと、前記待機位置及び前記処理位置の一方に位置する前記物品を前記二本のアームの前記先端側に挟ませた状態で前記二本のアームを前記所定の旋回軸周りに旋回させて前記先端側の前記物品を持ち上げ、前記物品を持ち上げた状態で前記二本のアームを前記待機位置及び前記処理位置の他方へ移動させ、且つ、前記二本のアームを前記所定の旋回軸周りに旋回させて前記物品を下降させ、前記物品を前記待機位置及び前記処理位置の他方に載置する制御装置と、前記制御装置によって制御され、前記ボデーを前記ガイドに対して前記延在方向に相対移動させる移動駆動部と、前記二本のアームの前記基端側に設けられるとともに、前記制御装置によって制御されて前記二本のアームの前記相互離間距離を変化させ、前記二本のアームの前記先端側で前記物品を持ち上げ可能な所定の荷重によって前記両側から前記物品を挟み込む挟持駆動部と、前記二本のアームの前記基端側に設けられるとともに、前記制御装置によって制御され、前記挟持駆動部によって前記二本のアームが前記物品を前記所定の荷重で挟み込んだ状態において、前記二本のアームの前記両先端が上下動するよう前記二本のアームを前記所定の旋回軸周りに所定の旋回角度で旋回させ、且つ前記所定の旋回角度で旋回した後の前記二本のアームの状態を保持する旋回駆動部と、を備え、前記二本のアームは、それぞれ前記先端側で前記物品を挟み込む各挟み込み部と、円環状に形成され、前記所定の旋回軸が設けられるとともに、前記先端側と反対側の前記各挟み込み部の基端側端部に接続される各円環部と、を備え、前記挟持駆動部は、軸線が前記所定の旋回軸と同軸になるよう前記二本のアームの前記各円環部を挿通して配置される第二ボルトと、出力軸が前記第二ボルトの端部に前記第二ボルトと一体回転可能に固定され、前記制御装置の制御により前記出力軸を回転させ前記第二ボルトを前記軸線周りに回転作動させる第二モータと、円筒状に形成され、前記第二ボルトと前記各円環部の各内周面との径方向間に、それぞれ前記軸線に対して相対回転が規制されて配置され、前記第二ボルトとの間において、それぞれ複数のボールを介して第二ボール螺子機構を形成し、前記各円環部との間においては、前記第二ボルトが回転し前記第二ボール螺子機構が作動する際、前記各円環部と一体で前記軸線方向へ移動可能となるよう前記各円環部と係合する二個のナットと、を備え、前記旋回駆動部は、前記各円環部によって形成され前記各円環部の外周面に歯部を備える二個のウォームホイールと、前記二個のナットにそれぞれ固定され、前記制御装置によって制御される二個の第三モータの各出力軸にそれぞれ前記各出力軸と一体回転可能に設けられ、前記各ウォームホイールの前記歯部と噛合する二個のウォームと、を備え、前記二本のアームの前記各円環部である前記二個のウォームホイールの前記内周面は、前記二個のナットの各外周面とそれぞれ相対回転自在に係合される。
【0009】
請求項1の発明によれば、搬送装置は、複数のアームによって待機位置及び処理位置の一方の物品を挟み込み、その後、複数のアームの旋回によって物品を空中に持ち上げる。次に、物品を持ち上げた状態で他方に向かって移動させ、移動後に複数のアームの旋回によって物品を下降させて物品を待機位置及び処理位置の他方に載置する。このため、例えば、処理装置を複数整列させてラインを形成し、搬送装置によって処理装置間に物品を搬送する場合、各処理装置(例えば、加工ステーション)の間にスライド装置やコンベヤ等を設けて搬送路を形成する必要はなくライン長に影響を及ぼすことはない。従ってライン長の短いコンパクトなラインが構成できる。
【0010】
また、本発明の搬送装置では、複数のアームの旋回作動が、従来技術における昇降装置の昇降作動の機能を代用することができる。つまり、複数のアームの旋回作動が、物品と、待機位置、及び処理位置との間を離間させる機能を有する。このように、アームの旋回作動という極めて簡易な構成及び作動によって、昇降装置の代用ができるので、その分、搬送装置を低コストで製作できる。また、物品と、待機位置、及び処理位置との間を離間させて搬送するので、物品と載置位置の上面とが擦れ合う虞がない。これにより、搬送時において、物品の底面に傷がつくことを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態における生産ラインおよび搬送装置の平面図である。
図2】実施形態における生産ラインおよび搬送装置の正面図である。
図3図1に示す搬送装置の平面拡大図である。
図4図2に示す搬送装置の正面拡大図である。
図5図4のV−V矢視断面図である。
図6】搬送装置の作動のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の搬送装置を具体化した実施形態について図面を参照して説明する。搬送装置は、物品に対して処理を施す処理装置に用いられる。つまり、搬送装置は、物品に対して処理を施す処理装置に物品を搬入する、又は処理装置から物品を搬出する装置である。なお、実施形態においては、処理装置は工作機械である。そして、このときにおける所定の処理としては、物品である工作物Wに対して加工処理を行なう態様を例示する。また、搬送装置は、複数の工作機械により構成される生産ラインに用いられるものとする。
【0013】
(1.生産ライン10および搬送装置31の全体構成)
生産ライン10及び搬送装置31の全体構成について、図面を参照して説明する。図1に示すように、生産ライン10は、3台の工作機械11〜13(処理装置)と、1台の搬送装置31とを備える。工作機械11〜13は、同種の工作機械である。工作機械11〜13は、各工作機械内(以降、機内とのみ称する)に設定される各処理位置Ppに載置される工作物W(本発明の「物品」に相当する)を、それぞれ図略のクランプ装置でクランプする。そして、工作機械11〜13は、処理位置Ppに載置された工作物Wに対して切削加工などの加工処理を施す。3台の工作機械11〜13は、相互に所定の間隔を空け、各処理位置Ppが概ね直線状に整列して設置され生産ライン10を構成する。
【0014】
3台の工作機械11〜13のうち生産ライン10の最上流側(図1において右側)に設置された工作機械を第一工作機械11とする。また、第一工作機械11に対して、生産ライン10の下流側に向かって、順に設置された2台の工作機械を第二工作機械12及び第三工作機械13とする。第一工作機械11は、ベッド21に対してX軸方向(図1の左右方向)に移動可能なコラム22を有する。コラム22の前面には、当該コラム22に対してY軸方向(図1の奥行方向)に移動可能なサドル23が設けられる。サドル23の前面には、当該サドル23に対してZ軸方向(図1の上下方向)に移動可能な回転主軸24を備える。また、回転工具25が回転主軸24に保持される。第二工作機械12及び第三工作機械13も、第一工作機械11と同様の構成を備える。なお、X軸、Y軸及びZ軸方向は、図1及び図2中に示すとおりである。
【0015】
各工作機械11〜13は、各処理位置Ppに固定される工作物Wに対し、加工処理を行なう。具体的には、コラム22やサドル23などを作動させ、回転する回転工具25を工作物Wに対して相対移動させることにより、工作物Wを加工する。各工作機械11〜13の各処理位置Ppには、搬送装置31が、順次、上流側から工作物Wを搬送する。
【0016】
なお、本実施形態において「処理位置Pp」とは、各工作機械11〜13の機内において、搬送装置31による工作物Wの受け渡しがされる位置をいう。しかし、「処理位置Pp」は、搬送装置31による工作物Wの受け渡しがされる位置であるだけではない。本実施形態においては、「処理位置Pp」は、各工作機械11〜13が、工作物Wの加工を行なう位置でもある。
【0017】
しかし、この態様には限らない。つまり、各工作機械11〜13の機内において、「処理位置Pp」に、搬送装置31が載置した工作物Wを、所定の搬送手段で機内の所定の位置に移動させてもよい。そして、工作物Wを、機内の所定の位置に移動させたのちに工作物Wをクランプし位置決め固定した状態で、工作物Wの加工処理を行なってもよい。なお、この場合、「処理位置Pp」とは異なる位置で加工処理が行なわれた工作物Wは、加工処理後、所定の搬送手段によって「処理位置Pp」に再び移動されたのち搬送装置31によって搬出されることになる。
【0018】
図1図2に示すように、各工作機械11〜13の処理位置PpのX軸方向両側(図1図2における左右方向)には、搬入前待機位置Pwb(待機位置Pwに相当)及び搬出後待機位置Pwa(待機位置Pwに相当)が設けられる。搬入前待機位置Pwbは、各工作機械11〜13によって加工処理がされる処理前の工作物W(物品)が待機する待機位置である。本実施形態においては、各搬入前待機位置Pwbは、各工作機械11〜13の各処理位置Ppに対して生産ライン10の上流側(図1において右側)にそれぞれ設けられる。
【0019】
また、搬出後待機位置Pwaは、各工作機械11〜13によって加工処理が施された後の工作物Wが、処理位置Ppから搬出され待機する待機位置である。本実施形態においては、搬出後待機位置Pwaは、各処理位置Ppに対し、生産ライン10の下流側(図1において左側)にそれぞれ設けられる。なお、図1,2に示すように、第一工作機械11の搬出後待機位置Pwaは、第二工作機械12の搬入前待機位置Pwbと兼用される。
【0020】
同様に、第二工作機械12の搬出後待機位置Pwaは、第三工作機械13の搬入前待機位置Pwbと兼用される。各搬入前待機位置Pwb、及び各搬出後待機位置Pwaは、4台の支持台16の上面16aに設けられる。各支持台16の上面16aは、各処理位置Ppの上面高さと同一高さとなるよう形成されることが好ましい(図2参照)。
【0021】
また、図1,2に示すように、各工作機械11〜13は、処理位置PpのX軸方向両側、即ち、搬入前待機位置Pwbと処理位置Ppとの間、及び処理位置Ppと搬出後待機位置Pwaとの間に、搬入前待機位置Pwbと処理位置Pp、及び処理位置Ppと搬出後待機位置Pwaとを区画する開閉不能な固定の側壁をそれぞれ備える。
【0022】
搬入前待機位置Pwbと処理位置Ppとの間に形成される側壁は、第一側壁14である。処理位置Ppと搬出後待機位置Pwaとの間に形成される側壁は、第二側壁15である。第一側壁14及び第二側壁15は、各工作機械11〜13の各処理位置Ppにおいて各工作物Wの加工処理を実施する場合に、切粉等の異物が飛散することを防止する機能を備える。詳細には、各工作物Wの加工処理時に切粉等の異物が、搬入前待機位置Pwb及び搬出後待機位置Pwa方向に向かって飛散し、搬入前待機位置Pwb及び搬出後待機位置Pwaに載置される工作物Wに付着することを良好に防止する。
【0023】
(2.搬送装置)
次に、搬送装置31について説明する。図1図4に示すように、搬送装置31は、ガイド35と、搬送ユニット40と、受部材50と、開閉扉60と、制御装置70と、を備える。後に詳述する搬送ユニット40の各駆動部は、制御装置70に接続される。制御装置70から各駆動部への指令によって、搬送ユニット40は、各搬入前待機位置Pwb(待機位置)、各処理位置Pp及び各搬出後待機位置Pwa(待機位置)の間をガイド35に案内されて移動し、工作物Wを各位置Pwb、Pp、Pwaに搬送(搬入、搬出)する。なお、図1図2においては、搬送装置31のアーム46,46が、工作機械11の処理位置Ppに載置された工作物Wを両側から挟みこんでいる状態を一例として示している。
【0024】
ガイド35は、例えば鉄等の金属部材によって形成される一本の長軸部材である。ガイド35は、各工作機械11〜13のZ軸方向前方(図1において下方)において、工作機械11〜13の整列方向と平行になるよう延在し配置される。ガイド35は、各工作機械11〜13の各処理位置PpからZ軸方向に所定の距離を有している。また、ガイド35は、第一工作機械11の搬入前待機位置Pwbから第三工作機械13の搬出後待機位置Pwaまでの範囲に亘って直線状に形成される。
【0025】
ガイド35は、例えば、ガイド35の下面から延在する図略の脚部が、各工作機械11〜13のベッド21の前方又は側方の面に固定される。ただし、この態様に限らず、ガイド35はどのように固定されてもよい。以降の説明において、特別な断りなく、単に「ガイド35の延在方向」とのみ記載した場合、図1図2に示すように、直線状に設けられたガイド35の延在方向(図1図2における左右)を言うものとする。
【0026】
図3図4に示すように、搬送ユニット40は、ボデー42と、移動駆動部43と、挟持駆動部45と、2本(複数に相当)のアーム46,46と、旋回駆動部47と、を備える。搬送ユニット40は、ボデー42が、ガイド35(図1参照)と係合することによってガイド35の延在方向に案内される。
【0027】
ボデー42は、搬送ユニット40のベース部である。ボデー42は、例えば、アルミや鉄等の金属によって形成される。ただし、例示した材料はあくまで一例であって、限定されるものではない。ボデー42は、概ね直方体形状に形成される。図3図4に示すように、ボデー42は、直方体の側面42aにおける長辺42a1がガイド35の延在方向と概ね平行になるよう配置される。なお、ボデー42の形状についても、あくまで一例を示したのみであって、どのような形状でもよい。
【0028】
また、図3図4に示すように、ボデー42は、ガイド35と平行な貫通孔42bを備える。貫通孔42bは、ボデー42の側面のうちガイド35の延在方向と直交し、相互に背向する側面42c及び側面42dの間を貫通する。貫通孔42bの内周面には、後述する第一ボール螺子機構BS1の雌ねじ42b1が形成される。また、ボデー42は、下面42eにガイド35と相対移動可能に係合する溝42fを備える。溝42fは、貫通孔42bの下方(図2図4において)で、且つ貫通孔42bと平行に形成される。
【0029】
また、ボデー42は、上面42gに、2箇所の突部42h,42hを備える。突部42h,42hは、ガイド35の延在方向に所定の距離だけ離間して突設される。突部42h,42hは、後に詳述する第二ボール螺子機構BS2を介して2本のアーム46,46を支持する。詳細には、図3図4に示すように、2本のアーム46,46の基端側の基端部46a1,46a1が、後に詳述する挟持駆動部45を構成する第二ボール螺子機構BS2の第二ボルト45aに複数のボール(図略)及びナット45c,45dを介して相対回転可能に支持される。
【0030】
溝42f及びガイド35は、2本のアーム46,46の基端部46a1,46a1側近傍に配置される(図1参照)。突部42h,42hには、同軸で、且つ軸線がガイド35の延在方向と平行な貫通孔42h1,42h1が設けられる。貫通孔42h1,42h1には、ボールベアリングBBの外輪が嵌め込まれ、前述した第二ボール螺子機構BS2の第二ボルト45aが、両端をボールベアリングBBの内輪に挿通され回転可能に支持される。
【0031】
移動駆動部43は、ガイド35に対して、ボデー42をガイド35の延在方向に相対移動させる駆動部である。移動駆動部43の構造はどのようなものでもよいが、一例として、第一ボール螺子機構BS1と、第一モータ43bと、ガイド35に対するボデー42の相対位置を検出する変位センサ43cと、を備える構成が例示できる。この場合、第一ボール螺子機構BS1は、前述したボデー42内に形成された雌ねじ42b1と、雌ねじ42b1に螺合される第一ボルト43aと、雌ねじ42b1と第一ボルト43aとの間に介在する複数のボール(図略)とを備える。
【0032】
図1図2に示すように、第一モータ43bは、ボデー42以外の、例えば、ガイド35の端部に固定される。第一モータ43bは、サーボモータである。第一モータ43bは、入出力端子が制御装置70に電気的に接続される(図1参照)。第一モータ43bは、制御装置70の指令によって第一モータ43bの図略の出力軸の回転角が制御される。第一モータ43bの出力軸は、ボデー42から突出する第一ボルト43aの端部に固定され、出力軸と第一ボルト43aとは一体回転する。
【0033】
変位センサ43cは、ボデー42の端面に固定される。変位センサ43cは、ガイド35に対するボデー42の延在方向における相対位置を検出する。変位センサ43cは、制御装置70に接続される。変位センサ43cが検出するデータは、制御装置70に送信される。これにより、ガイド35の延在方向におけるボデー42の位置、即ち、ガイド35に対する搬送ユニット40の相対位置が把握できる。
【0034】
搬送ユニット40の相対位置と所望の位置との間に差が有る場合には、制御装置70が、変位センサ43cが検出したデータに基づき差を埋めるための補正値を演算する。そして、制御装置70は、補正値に応じた指令値を第一モータ43bに送信し、第一モータ43bを作動させて、搬送ユニット40の位置が所望の位置となるようフィードバック制御する。なお、変位センサ43cは、渦電流式、光学式、超音波式、接触式等どのような方式のものを用いてもよい。
【0035】
挟持駆動部45は、対になった2本のアーム46,46の相互離間距離を変化させ、アーム46,46の先端部46a2、46a2側で、工作物Wを持ち上げ可能な所定の荷重Pで挟み込ませる駆動部である。挟持駆動部45の構造は、どのようなものでもよいが、一例として、前述した第二ボール螺子機構BS2と、第二モータ45bと、を備える構造が例示できる(図3図4参照)。
【0036】
第二ボール螺子機構BS2は、第二ボルト45aと第二モータ45bと2個のナット45c,45dとを備える。第二ボルト45aは、両端に設けられたベアリング支持部45a1,45a1と、ベアリング支持部45a1,45a1の間に形成された第一、第二雄ねじ45a2,45a3と、を備える。第一、第二雄ねじ45a2,45a3は、雄ねじの回転方向が逆となるようそれぞれ形成される。第一、第二雄ねじ45a2,45a3は、ほぼ同じ長さで形成される。第一、第二雄ねじ45a2,45a3の間には、雄ねじが形成されていない非ねじ部分を有し、この非ねじ部分を第二ボルト45aの中央部と称す。また、ベアリング支持部45a1,45a1は、ボールベアリングBBを介して突部42h,42hに相対回転可能となるよう支持される。
【0037】
第二モータ45bは、サーボモータであり、入出力端子が制御装置70に電気的に接続される。そして、制御装置70の指令によって、第二モータ45bの出力軸(図略)の回転が制御される。第二モータ45bは、図3図4に示す様に、ボデー42の一方の突部42hの側面に固定される。第二モータ45bの出力軸(図略)は、一方の突部42hから雄ねじ部の中央部と反対方向に突出する第二ボルト45aの一方の端部に固定され、第二モータ45bの出力軸と第二ボルト45aとは一体回転する。
【0038】
図3図4に示すように、2個のナット45c,45dは、内周が第一、第二雄ねじ45a2,45a3に螺合された状態で、所定の手段(図略)により回転を規制される。このような状態で、第二ボルト45aが軸線周りに回転されると、2個のナット45c,45dは、互いに接近するか若しくは互いに離間する方向に移動するようナット45c,45dの各雌ネジが形成される。また、2個のナット45c,45dは、第二ボルト45aの軸線方向両側に鍔部45c1,45c1及び鍔部45d1、45d1を備える。2個のナット45c,45dは、常に第二ボルト45aの中央部からそれぞれ等距離に配置されることが望ましい。
【0039】
図3図4に示すように、2個のアーム46,46は、それぞれ挟み込み部46a,46aと、円環部46b,46bと、を備える。挟み込み部46a,46aは、長尺角柱状部材である。前述したように、挟み込み部46a,46aにおけるボデー42側の基端側端部を基端部46a1,46a1と称し、基端部46a1,46a1の反対側であり、挟み込み部46a,46aの先端側を先端部46a2,46a2と称す。
【0040】
挟み込み部46a,46aの板厚及び形状は、先端部46a2,46a2で、工作物Wを両側から所定の荷重Pで挟み込んだ後、挟み込んだ状態のままアーム46,46を第二ボルト45aの軸線(旋回軸線に相当)周りに旋回させ、工作物Wを片持ち状態で上方に持ち上げても、挟み込み部46a、46aが撓まない剛性(強度)を備えて形成される。その形状等は事前に計算、及び実験により決定される。なお、このとき、工作物Wが、挟み込み部46a、46aから滑り落ちないよう、挟み込み部46a、46aの先端部46a2,46a2に高摩擦材G,Gを貼付することにより、工作物Wと先端部46a2,46a2との間に高摩擦材G,Gを介在させてもよい。
【0041】
円環部46b,46bは、円環状に形成され、挟み込み部46a,46aの基端部46a1,46a1に接続される。円環部46b,46bは、挟持駆動部45の第二ボルト45aの雄ねじ45a2、45a3に螺合する2個のナット45c,45dの円筒状の外周面に対し、内周面が相対回転自在に係合する。このとき、第二ボルト45aの軸線(旋回軸線)方向における円環部46b,46bの幅H1と、ナット45c,45dの外周面の軸線(旋回軸線)方向における幅、即ちナット45c,45dの鍔部45c1,45c1の内側の間、及び鍔部45d1、45d1の内側の間の幅H2とは、H2>H1の関係を有する。これにより、アーム46,46の円環部46b,46bは、ナット45c,45dの外周面に対して相対回転自在となる。
【0042】
なお、図5に示すように、本実施形態においては、円環部46b,46bが回転可能な旋回角度、即ち、アーム46,46が回転可能な旋回角度は、図略のストッパにより、Rmin〜Rmaxまでの範囲に規制される。Rminは、アーム46,46の先端部46a2,46a2が、工作物Wの搬入時における搬入前待機位置Pwb、又は工作物Wの搬出時における処理位置Ppに、それぞれ載置された工作物Wの挟み込みを可能とするアーム46,46の旋回方向における位置である。また、Rmaxは、Rmin位置からアーム46,46が旋回軸周りに所定の旋回角度α°だけ旋回した位置である。
【0043】
そして、ナット45c,45dの回転が規制された状態で、第二ボルト45aが回転すると、ナット45c,45dが、第二ボルト45aに対して、軸線方向の何れかの方向に移動される。これにより、各ナット45c,45dの鍔部45c1,45c1及び鍔部45d1,45d1は、各アーム46,46の円環部46b,46bの側面を各ナット45c,45dの移動方向に押圧する。そして、各ナット45c,45dは、各アーム46,46を当該移動方向に移動させる。このとき、各ナット45c,45dは、常に第二ボルト45aの軸線方向において相互に逆方向に移動する。このため、アーム46,46は、第二ボルト45aの軸線周りの回転方向に応じて相互離間距離が小さくなるか、若しくは大きくなるよう移動する。
【0044】
アーム46,46の先端部46a2,46a2によって工作物Wを挟み込みたいときには、アーム46,46の相互離間距離が小さくなるような回転方向に、第二ボルト45aを回転させる。また、アーム46,46の先端部46a2,46a2によって挟み込んでいた工作物Wの挟み込みを解除したいときには、アーム46,46の相互離間距離が拡がるような回転方向に第二ボルト45aを回転させる。
【0045】
詳細には、アーム46,46の先端部46a2,46a2によって工作物Wを挟み込みたいときには、予め設定した電流値で第二モータ45bを制御し、アーム46,46の相互離間距離を小さくなるよう変化させ所定の荷重Pで工作物Wの挟み込みを行なう。なお、2本のアーム46,46の挟み込みによって、工作物Wを持ち上げ可能とする所定の荷重Pとそのときの電流値との関係は、事前の評価によって求めておく。また、このとき、工作物Wを持ち上げ可能とするために必要となる、アームの剛性(強度)や、工作物Wとアーム46,46との接触面の摩擦係数等の設計諸元が全て満足されていることが必要条件であることはいうまでもない。
【0046】
なお、上記において、アーム46,46の円環部46b,46bは、ナット45c,45dの外周面に対して、どのように組みつけてもよい。例えば、ナット45c,及び45dの各鍔部45c1,45c1、及び45d1,45d1の少なくとも片側の鍔部45c1、及び45d1を取り外し、アーム46,46の円環部46b,46bを、取り外した鍔部45c1、及び45d1側から挿入した後、取り外した鍔部45c1、及び45c1を再度組付けるようにしてもよい。
【0047】
旋回駆動部47は、挟持駆動部45の作動によって、2本のアーム46,46が、先端部46a2,46a2で工作物Wを所定の荷重Pで挟み込んだ状態において、先端部46a2、46a2が上下動するよう作動させる駆動部である。つまり、旋回駆動部47は、2本のアーム46,46を、基端部46a1,46a1側に設けられる第二ボルト45aの軸線(所定の旋回軸に相当)周りに、所定の旋回角度α°で旋回させる駆動部である。また、旋回駆動部47は、所定の旋回角度α°で旋回し、工作物Wを持ち上げたアーム46,46の状態を保持する機能も備える。旋回駆動部47は、どのようなものでもよいが、一例として、ウォームギヤ47aと、第三モータ47bと、を備える構造を例示できる。
【0048】
旋回駆動部47は、アーム46,46にそれぞれ設けられる。旋回駆動部47のウォームギヤ47a,47aは、ウォーム47a1,47a1と、ウォームホイール47a2,47a2とを備える。ウォームホイール47a2,47a2は、アーム46,46の円環部46b,46bと兼用である。つまり、円環部46b,46b(ウォームホイール47a2,47a2)の外周面にウォームホイール47a2,47a2の歯部47a3,47a3が形成される。
【0049】
ウォーム47a1,47a1は、第三モータ47b,47bの出力軸先端に設けられ、ウォーム47a1,47a1の歯部とウォームホイール47a2,47a2の歯部47a3,47a3と、が噛合する。第三モータ47b,47bは、例えば、第二ボール螺子機構BS2が備えるナット45c,45dの鍔部45c1,45c1及び鍔部45d1,45d1にそれぞれ固定される。第三モータ47b,47bは、サーボモータであり、入出力端子が制御装置70に電気的に接続される。第三モータ47b,47bは、両者が同期するよう制御される。
【0050】
制御装置70の指令によって、第三モータ47b,47bの出力軸(図略)の回転が同期して制御されると、ウォーム47a1,47a1が回転され、ウォーム47a1,47a1が噛合するウォームホイール47a2,47a2の歯部47a3,47a3を相対回転させて、旋回軸周りにアーム46,46を持ち上げる方向、又はアーム46,46を下降させる方向に旋回させる。なお、このウォームホイール機構は、ギヤ比が大きいため、アーム46,46側から逆入力があってもウォーム47a1,47a1は逆回転されにくい構造である。このため、ウォームホイール機構は、アーム46,46を持ち上げた状態で好適に保持する。
【0051】
受部材50は、工作物Wから流下(落下)するクーラントを受ける部材である。詳細には、受部材50は、図3図5に示すように、制御装置70の制御によって工作物Wを2本のアーム46,46に挟ませた状態で旋回軸周りに旋回させ、工作物Wを上方に持ち上げる途中において、工作物Wから落下するクーラントを受ける部材である。なお、このとき工作物Wは、2本のアーム46,46の旋回角度に応じた傾斜を有して持ち上がり、クーラントは、当該傾斜を起因として工作物Wから落下する。
【0052】
受部材50は、上方が開口した容器であればどのようなものでもよい。受部材50は、ボデー42の図3図5に示す位置に配置される。受部材50を配置する詳細な位置については、事前の評価によって決定すればよい。受部材50の下面には、受部材50内に貯留されるクーラントを図略のオイルタンクまで誘導するパイプが設けられる。なお、クーラントは、工作物Wが加工処理される際に、加工処理部に供給される切削油である。受部材50は、2本のアーム46,46の一方に取り付けてもよい。また、受部材50は、なくてもよい。
【0053】
図1図2に示すように、開閉扉60は、処理位置Ppに対する工作物Wの出入口となる第一側壁14及び第二側壁15の間の開口に設けられる開閉可能な扉である。開閉扉60は、工作物Wの処理位置Ppへの搬入時、及び処理位置Ppからの搬出時に開閉する。開閉扉60は、制御装置70によって制御される図略のエアシリンダの作動によって開閉される。
【0054】
具体的には、開閉扉60は、工作物Wの搬入時において、所定の旋回角度α°だけ持ち上げられ、その状態を保持されたアーム46,46が、挟み込んだ工作物Wを処理位置Ppに載置するため下降させる際に開く。また、開閉扉60は、アーム46,46が、工作物Wを処理位置Ppに載置後、アーム46,46が、単体で持ち上げ方向に旋回し開口を通って退避した後に閉じる。さらに、開閉扉60は、処理位置Ppにおける工作物Wの加工処理の終了後に、工作物Wを処理位置Ppから搬出するため、アーム46,46が旋回し開口を通って処理位置Ppに向かって下降する際に開く。
【0055】
なお、本実施形態では、開閉扉60は、下方に降下することで開口が開き、上昇することで開口が閉じる構成を備える。ただし、この態様には限らずどうように開閉してもよい。例えば、開閉扉60は、左右何れかの方向に移動することで開口が開き、開き側と逆方向への移動によって開口が閉じる構成でもよい。
【0056】
図6に示すように、制御装置70は、搬入制御部71と、搬出制御部72とを備える。搬入制御部71は、搬入前待機位置Pwb(待機位置、一方に相当)に載置される工作物W(物品)を、処理位置Pp(他方に相当)へ搬入(移動)する搬入工程を制御する制御部である。また、搬出制御部72は、処理位置Pp(一方に相当)に位置する加工処理後の工作物W(物品)を、搬出後待機位置Pwa(待機位置、他方に相当)へ搬出(移動)する搬出工程を制御する制御部である。搬入制御部71及び搬出制御部72は、ともに共用する移動制御部73と、挟持制御部74と、旋回制御部75と、を備える。また、搬入制御部71及び搬出制御部72は、ともに開閉扉60の開閉を制御する開閉制御部(図略)も備える。
【0057】
移動制御部73は、移動駆動部43を制御し、搬送ユニット40のボデー42をガイド35に対して、延在方向に相対移動させる。移動制御部73は、ボデー42を、搬入前待機位置Pwb、処理位置Pp、搬出後待機位置Pwaと対向する位置に移動させる。
挟持制御部74は、挟持駆動部45を制御し、対になった2本のアーム46,46の相互離間距離を変化させ、工作物Wを挟み込む、又は工作物Wの挟み込みを解除する。
【0058】
旋回制御部75は、旋回駆動部47を制御し、2本のアーム46,46を旋回軸周りで旋回させ、アーム46,46の先端部を、Rmin位置とRmax位置との間で昇降させる。前述したように、Rminは、アーム46,46が、工作物Wの搬入時における搬入前待機位置Pwb、又は工作物Wの搬出時における処理位置Ppにおいて、それぞれ載置された工作物Wの挟み込みが可能なアーム46,46の旋回方向における位置(角度)である。
【0059】
Rmin位置では、これ以上、旋回角度が小さくならないよう所定の手段によってアーム46,46の旋回(回転)が規制される。また、Rmaxは、Rminから所定の旋回角度α°だけ旋回した位置(角度)である。本実施形態では、所定の旋回角度α°は、例えば、90deg以下の角度である。Rmax位置についても、これ以上旋回角度が大きくならないよう所定の手段によって旋回(回転)が規制される。ただし、Rmin位置、及びRmax位置において、旋回に対する規制はなくてもよい。
【0060】
なお、上記において、所定の旋回角度α°とは、工作物Wが、アーム46,46によって持ち上げられた状態で、ガイド35の延在方向に移動する際、アーム46,46及び工作物Wを、第一側壁14、第二側壁15の手前側(図1において下側、図5において左側)である第一側壁14、第二側壁15よりもアーム46,46(複数のアーム)の基端側の空間を通過可能とする旋回角度であり、事前の検討に基づき予め設定される角度である。
【0061】
(3.搬送装置の作動)
次に、生産ライン10における搬送装置31の作動について図6のフローチャートに基づき説明する。作動の説明の前提として、加工処理が行なわれていない工作物Wが、第一工作機械11の搬入前待機位置Pwbに載置され準備されているものとする。第一工作機械11の搬入前待機位置Pwbへの工作物Wの載置は、作業者によって行なわれてもよいし、別の搬送装置によって行なわれてもよい。このとき、開閉扉60は開放されている。また、アーム46,46は、旋回軸周りに旋回し、所定の旋回角度α°分だけ持ち上がった状態(図5の二点鎖線参照)で停止している。このような状態から、加工開始のため、生産ライン10及び搬送装置31の起動スイッチがONされるとする。
【0062】
(3−1.搬入工程)
本実施形態における搬入工程では、第一工作機械11の搬入前待機位置Pwb(このとき、待機位置であり一方に相当)に載置される工作物Wを、第一工作機械11の処理位置Ppに搬入する。このため、ステップS10では、まず旋回制御部75(搬入制御部71)が、旋回駆動部47,47の第三モータ47b,47bの回転を制御し、ウォーム47a1,47a1が、第三モータ47b,47bの回転軸周りに回転される。これにより、ウォーム47a1,47a1に噛合する歯部47a3,47a3を備えるウォームホイール47a2,47a2(円環部46b,46b)が、旋回軸(第二ボルト45aの軸線に一致)周りに回転される。そして、アーム46,46が、前述したRmin位置で図略のストッパに接触するまで旋回し下降する(図5参照)。
【0063】
ステップS20では、挟持制御部74(搬入制御部71)が、挟持駆動部45の第二モータ45bを制御し、第二ボール螺子機構BS2を作動させる。これにより、下降した状態のアーム46,46の相互離間距離を接近(変化)させ、搬入前待機位置Pwbに載置される工作物Wを両側から所定の荷重Pで挟み込む。このとき、所定の荷重Pは、第二モータ45bに付与する電流値によって制御する。なお、このとき、工作物Wの両側面とアーム46,46の先端部46a2、46a2との間には、例えばゴム材で形成された高摩擦材G,Gを介在させてもよい。これにより、工作物Wが、挟み込み部46a、46aから滑り落ちることが抑制される。
【0064】
ステップS30では、旋回制御部75(搬入制御部71)が、工作物Wを、アーム46,46に所定の荷重Pで挟ませた状態で、ステップS10とは、逆回転方向に旋回駆動部47,47の第三モータ47b,47bの回転を制御する。これにより、アーム46,46を旋回軸周りに所定の旋回角度α°だけ旋回させ持ち上げる。このとき、所定の旋回角度α°だけ旋回され持ち上げられた工作物Wは、図5に示すように、第一側壁14との間に隙間tを有する。このため、工作物Wは、アーム46,46によって持ち上げられた状態で、ガイド35の延在方向に移動する際、アーム46,46とともに第一側壁14に接触しないで移動可能となる。
【0065】
ステップS40では、移動制御部73(搬入制御部71)が、工作物Wが持ち上げられた状態で、移動駆動部43の第一モータ43bを制御し、第一ボール螺子機構BS1を作動させる。これにより、搬送ユニット40のボデー42が、ガイド35に対して、ガイド35の延在方向(図1左方)に相対移動され、アーム46,46及び工作物Wを、ガイド35の延在方向における処理位置Pp(他方に相当)に対応する位置まで移動させる。
【0066】
このように、搬入前待機位置Pwbと処理位置Ppとの間には、工作物Wを加工するときに、切削屑等を周囲に飛散させないための固定の第一側壁14があるにも拘らず、工作物Wは、アーム46,46の旋回作動によって、第一側壁14との接触を回避し、搬入前待機位置Pwb側から処理位置Pp側まで移動することができる。このとき、ガイド35の延在方向への移動量は第一モータ43bの回転角度に基づき演算し、演算結果に基づいて制御する。
【0067】
ステップS50では、旋回制御部75(搬入制御部71)が、ウォーム47a1,47a1を回転作動させて、アーム46,46を旋回軸周りに旋回させ、工作物Wを下降させる。即ち、工作物Wを、第一側壁14及び第二側壁15の間の開口を通過させて処理位置Pp(他方に相当)に載置可能な位置(高さ)まで下降させたのち処理位置Ppに載置する。このとき、開口に設けられた開閉扉60は、制御装置70によって制御され、開いた状態が維持されている。
【0068】
ステップS60では、工作物Wが処理位置Pp(他方に相当)に載置されたのち、挟持制御部74(搬入制御部71)が、挟持駆動部45の第二モータ45bを、挟み込み時とは逆回転となるよう回転制御する。これにより、アーム46,46の相互離間距離を拡げてアーム46,46による工作物Wの挟み込みを解除する。
【0069】
ステップS70では、旋回制御部75(搬入制御部71)が、工作物Wを挟まない状態のアーム46,46を、旋回軸周りに所定の旋回角度α°だけ旋回させて持ち上げる制御を行なう。こうすることで、工作物Wが、処理位置Ppにおいて加工処理される際、アーム46,46が加工処理の妨げになることを確実に防止できる。なお、本実施形態では、このように、アーム46,46を所定の旋回角度α°だけ持ち上げることによって工作物Wに対する加工処理が確実に行なえるようにした。しかし、この態様には限らない。加工処理の妨げになることさえ防止できれば、持ち上げる角度はα°には限定されず、何度でもよい。
【0070】
ステップS80では、アーム46,46が、開口より外方に出たのち、制御装置70の制御によって開閉扉60が閉じられる。そして、第一工作機械11によって、工作物Wがクランプされて位置決め固定された後、回転工具25により工作物Wの加工処理が行なわれる。このとき、回転工具25及び工作物Wに対しては、冷却機能及び潤滑機能を備えるクーラントが供給されながら加工処理が行なわれる。そして、工作物Wの加工処理終了後、ステップS90で、制御装置70の制御によって開閉扉60が開かれる。
【0071】
(3-2.搬出工程)
搬出工程について説明する。ステップS100では、旋回制御部75(搬出制御部72)が、旋回駆動部47を制御し、再び、アーム46,46を旋回させ、処理位置PpにおけるRmin位置まで下降させる。
ステップS110では、挟持制御部74(搬出制御部72)が、ステップS20と同様の制御を行なう。つまり、挟持制御部74の制御により、処理位置Pp(このとき、搬出制御部72においては一方に相当する)に載置される加工処理後の工作物Wを両側から所定の荷重Pで挟み込む。
【0072】
ステップS120では、旋回制御部75(搬出制御部72)が、ステップS30と同様の制御を行なう。つまり、旋回制御部75の制御により、アーム46,46が工作物Wを所定の荷重Pで挟んだ状態で、アーム46,46を旋回軸周りに所定の旋回角度α°だけ旋回させ持ち上げる。なお、このとき、主に工作物Wの上面には、加工処理時に使用されたクーラントが溜まっている場合がある。
【0073】
このため、アーム46,46及び工作物Wを旋回軸周りに所定の旋回角度α°だけ旋回させ持ち上げる際の持ち上げ途中においては、主に工作物Wの上面に溜まっているクーラントは、アーム46,46の傾斜に応じて生じる工作物Wの傾斜に応じて落下する。しかし、搬送装置31は、クーラントが、落下するであろうと予測される位置(図3図5参照)に、上部が開口する受部材50を備える。よって、落下するクーラントは、受部材50の上部の開口から良好に回収され、受部材50が備える配管によってオイルタンク(図略)に効率的に集められる。
【0074】
ステップS130では、移動制御部73(搬出制御部72)が、ステップS40と同様の制御を行なう。つまり、移動制御部73の制御によって、工作物Wを所定の旋回角度α°だけ旋回させて持ち上げた状態で、アーム46,46及び工作物Wが第二側壁15に接触しないよう、ガイド35の延在方向における処理位置Ppに対応する位置から搬出後待機位置Pwaに対応する位置まで移動させる。このとき、ガイド35の延在方向への移動量は第一モータ43bの回転角度に基づき演算し、演算結果に基づいて制御する。
【0075】
ステップS140では、旋回制御部75(搬出制御部72)が、ステップS50と同様の制御を行ない、工作物Wを下降させる。つまり、旋回制御部75の制御によって、工作物Wを旋回させ搬出後待機位置Pwa(待機位置、搬出制御部72においては他方に相当)に載置可能な高さまで下降させたのち搬出後待機位置Pwaに載置する。
【0076】
ステップS150では、工作物Wが搬出後待機位置Pwa(他方に相当)へ載置されたのち、挟持制御部74(搬出制御部72)が、ステップS60と同様の制御を行なう。つまり、挟持制御部74の制御によって、第二ボール螺子機構BS2を作動させ、アーム46,46の相互離間距離を拡げてアーム46,46による工作物Wの挟み込みを解除する。
【0077】
その後、アーム46,46は、ステップS150が終了した状態で待機していてもよい。また、旋回制御部75の制御によって、アーム46,46を、所定の旋回角度α°まで持ち上げた状態として待機してもよい。さらには、ステップS150において、アーム46,46による工作物Wの挟み込みを解除せず、第二工作機械12に対して、直ぐに工作物Wが供給できるようにしていてもよい。
【0078】
なお、生産ライン10におけるステップS150以降においては、搬送装置31が、第二工作機械12に対して、上記ステップS10〜ステップS150までの処理と同様の処理を行なう。このとき、搬送装置31においては、第一工作機械11における搬出後待機位置Pwaと第二工作機械12における搬入前待機位置Pwbとは同じものであり共用する。また、第三工作機械13についても、同様であり、第二工作機械12での上記ステップS10〜ステップS150までの処理が終了したのち、搬送装置31が、上記ステップS10〜ステップS150までの処理と同様の処理を行なう。このときにおいても、第二工作機械12における搬出後待機位置Pwaと第三工作機械13における搬入前待機位置Pwbとは同じものであり共用する。
【0079】
しかし、この態様に限らず、第一工作機械11又は第二工作機械12における搬出後待機位置Pwaと第二工作機械12又は第三工作機械13における搬入前待機位置Pwbとは、共用するのではなく別々に設けてもよい。この場合、第一工作機械11又は第二工作機械12における搬出後待機位置Pwaと第二工作機械12又は第三工作機械13における搬入前待機位置Pwbとの間を作業者が手で移動させてもよい。更には、別の搬送装置によって工作物Wを搬送してもよい。
【0080】
(4.実施形態による効果)
上記実施形態によれば、搬送装置31は、処理位置Ppに載置された工作物W(物品)に対して加工(所定の処理)を施す工作機械11〜13(処理装置)に用いられ、搬入前待機位置Pwb(待機位置、一方)と処理位置Pp(他方)との間、又は処理位置Pp(一方)と搬出後待機位置Pwa(他方)との間で工作物W(物品)を搬送する搬送装置である。
【0081】
搬送装置31は、待機位置(搬入前待機位置Pwb又は搬出後待機位置Pwa)と処理位置Ppとの間を移動可能であり、先端側の先端部46a2,46a2で工作物W(物品)を両側から挟み込む2本(複数)のアーム46,46であり、2本(複数)のアーム46,46の相互離間距離を変化可能に設けられ、且つ、先端部の46a2,46a2を上下方向に移動させるように、基端側の基端部46a1,46a1を旋回可能に設けられる2本(複数)のアーム46,46を備える。
【0082】
また、搬送装置31は、一方である搬入前待機位置Pwb(待機位置)又は処理位置Ppに位置する工作物W(物品)を2本(複数)のアーム46,46に挟ませた状態で2本(複数)のアーム46,46を旋回させて工作物W(物品)を持ち上げ、工作物W(物品)を持ち上げた状態で2本(複数)のアーム46,46を、他方である処理位置Pp又は搬出後待機位置Pwa(待機位置)へ移動し、且つ、2本(複数)のアーム46,46を旋回させて工作物Wを下降させ、工作物Wを、他方である処理位置Pp又は搬出後待機位置Pwa(待機位置)に、載置する制御装置70を備える。
【0083】
このように、搬送装置31は、2本(複数)のアーム46,46によって、搬入前待機位置Pwb(待機位置)又は処理位置Ppに載置される工作物W(物品)を挟み込み、その後、2本(複数)のアーム46,46の旋回によって工作物Wを空中に持ち上げ、工作物Wを持ち上げた状態で他方である処理位置Pp又は、搬出後待機位置Pwa(待機位置)に向かって移動する。そして、移動後に2本(複数)のアーム46,46を旋回させ、工作物Wを下降させる。その後、工作物Wを他方である処理位置Pp又は搬出後待機位置Pwa(待機位置)に載置する。
【0084】
これにより、例えば、工作機械(処理装置)を複数整列させてラインを形成し、搬送装置31によって各工作機械間で工作物Wを搬送する場合、各工作機械の間にスライド装置やコンベヤ等を設けて搬送路を形成する必要はなくライン長に影響を及ぼすことはない。従ってライン長の短いコンパクトなラインを構成できる。
【0085】
また、搬送装置31は、2本(複数)のアーム46,46の旋回作動が、従来技術における昇降装置の昇降作動の機能を代用する。つまり、従来技術においては、例えば、工作物Wを搬入前待機位置Pwb(待機位置)と処理位置Ppとの間で移動させるには、工作物Wを水平方向に移動させる際に必要となる工作物Wとスライド装置との係合及び解除を昇降装置の昇降作動を用いて行なう必要がある。
【0086】
しかし、本実施形態においては、工作物Wを水平方向に移動させることなく、アーム46,46が挟み込んだ工作物Wを、アーム46,46の旋回作動によって持ち上げ搬送する。このため、工作物Wとスライド装置との係合は不要となり、よって、昇降装置も不要となる。このように、アーム46,46の旋回作動という極めて簡易な構成及び作動によって、高価な昇降装置の代用ができるので、その分、搬送装置31を低コストで製作できる。また、工作物Wと、搬入前待機位置Pwb(待機位置)及び処理位置Ppとの間を接触させた状態でずらすことなく、相互に離間した状態で搬送するので、工作物Wと、処理位置Pp又は搬出後待機位置Pwa(待機位置)の上面とは擦れ合わない。これにより、工作物Wの搬送時において、工作物Wの物品の底面に傷がつくことを防止することができる。
【0087】
また、上記実施形態によれば、工作機械11〜13(処理装置)は、処理位置Ppと搬入前待機位置Pwbとの間、及び処理位置Ppと搬出後待機位置Pwa(待機位置)との間をそれぞれ区画し、且つ開閉不能な固定の第一側壁14、及び第二側壁15を備える。そして、制御装置70は、工作物Wを、一方である搬入前待機位置Pwb(待機位置)又は処理位置Pp(処理位置)から、他方である処理位置Pp(処理位置)又は搬出後待機位置Pwa(待機位置)へ移動させる際、2本のアーム46,46に挟ませた状態で2本のアーム46,46を旋回させ工作物Wを持ち上げた状態とする。
【0088】
また、制御装置70は、工作物Wを持ち上げた状態の2本のアーム46,46とともに第一側壁14,及び第二側壁15の手前側と定義される側壁よりも2本のアーム46,46の基端側の空間を通過させて他方に移動させる。これにより、第一側壁14,及び第二側壁15を高価な可動式にしなくても、工作物Wを処理位置Ppと搬入前待機位置Pwbとの間、及び処理位置Ppと搬出後待機位置Pwa(待機位置)との間で移動可能にできるので、工作機械11〜13(処理装置)を低コストで製作できる。
【0089】
また、上記実施形態によれば、待機位置は、処理位置Ppの両側に設けられ、所定の処理が施される前の工作物Wが待機する搬入前待機位置Pwb、及び処理位置Ppで所定の加工処理が施された後の工作物Wが待機する搬出後待機位置Pwaである。また、側壁は、処理位置Ppと搬入前待機位置Pwbとの間及び処理位置Ppと搬出後待機位置Pwaとの間を区画する第一側壁14及び第二側壁15である。
【0090】
また、搬送装置31は、2本のアーム46,46を旋回させて工作物Wを下降させ処理位置Ppに搬入する際、又は工作物Wを持ち上げて処理位置Ppから搬出する際に、処理位置Ppに対する工作物Wの出入口となる第一側壁14及び第二側壁15の間の開口に開閉可能な開閉扉を備える。
【0091】
また、制御装置70は、搬入前待機位置Pwbに位置する工作物Wを2本のアーム46,46に挟ませた状態で、アーム46,46を旋回させて工作物Wを持ち上げ、工作物Wを持ち上げた状態で、工作物W及び2本のアーム46,46を、第一側壁14の手前側を通過させて処理位置Ppへ移動させ、2本のアーム46,46を旋回させ、開口を通過させて工作物Wを下降させ、処理位置Ppに載置する搬入制御部71を備える。
【0092】
また、制御装置70は、処理位置Ppに位置する工作物Wを2本のアーム46,46に挟ませた状態で2本のアーム46,46を旋回させ、工作物Wを持ち上げて開口を通過させる。そして工作物Wを持ち上げた状態で、工作物W及び2本のアーム46,46を、第二側壁15の手前側を通過させて搬出後待機位置Pwaに対応する位置へ移動させた後、2本のアーム46,46を旋回させて工作物Wを下降させ搬出後待機位置Pwaに載置する搬出制御部72を備える。このように、搬入制御部71及び搬出制御部72によって、工作物Wが、処理位置Ppと搬入前待機位置Pwbとの間、及び処理位置Ppと搬出後待機位置Pwa(待機位置)との間で自動搬送可能となる。これにより、作業者が工作物Wの加工に関わる工数が低減される。
【0093】
また、上記実施形態によれば、搬送装置31は、2本のアーム46,46の基端側に配置され第三工作機械13の搬出後待機位置Pwaと第一工作機械11の搬入前待機位置Pwbとの間に亘って延在するガイド35を備える。搬送装置31は、ガイド35とガイド35の延在方向に相対移動可能に係合し、2本のアーム46,46を2本のアーム46,46の基端側で支持するボデー42を備える。また、搬送装置31は、制御装置70によって制御され、ボデー42をガイド35に対して延在方向に相対移動させる移動駆動部43を備える。
【0094】
また、搬送装置31は、制御装置70によって制御され、2本(複数)のアーム46,46の相互離間距離を変化させて、2本(複数)のアーム46,46の先端側で工作物Wを持ち上げ可能な所定の荷重Pによって、両側から工作物Wを挟み込む挟持駆動部45を備える。さらに、搬送装置31は、制御装置70によって制御され、挟持駆動部45によって、2本のアーム46,46が工作物Wを所定の荷重Pで挟み込んだ状態において、2本のアーム46,46の先端が上下動するよう2本のアーム46,46を2本のアーム46,46の基端側に設けられる所定の旋回軸周りに所定の旋回角度α°で旋回させ、且つ所定の旋回角度α°で旋回した後の2本のアーム46,46の状態を保持する旋回駆動部47と、を備える。
【0095】
このように、ガイド35に案内されてボデー42が延在方向に移動し、搬入前待機位置Pwb、処理位置Pp、及び搬出後待機位置Pwaに移動するので、ボデー42(アーム46,46及び工作物W)は、搬入前待機位置Pwb、処理位置Pp、及び搬出後待機位置Pwaに精度よく短時間で到達できる。
【0096】
また、上記実施形態によれば、処理装置は工作機械であり、物品は、工作物Wである。このように、ライン長が長くなりがちな工作物Wを加工する工作機械に対して、本発明を適用することにより、ライン長の短縮に対して非常に高い効果が望める。
【0097】
また、上記実施形態によれば、搬送装置31は、制御装置70の制御によって工作物Wを2本のアーム46,46に挟ませた状態で2本のアーム46,46を旋回させ工作物Wを上方に持ち上げる際に、2本のアーム46,46の旋回角度に応じた傾斜を有して持ち上がる工作物Wから、傾斜を起因として落下するクーラントを受ける受部材50を備える。これにより、クーラントを効率よく回収できるので、クーラント収集のための他のクーラント受け部や配管等を設ける必要がなく低コスト化に寄与することができる。
【0098】
(5.その他)
なお、上記実施形態においては、3台の工作機械11〜13に対して、搬送装置は、1台のみを設けるものとして説明した。しかし、この態様には限らない。搬送装置は、各工作機械11〜13にそれぞれ対応させて設け3台としてもよい。このようにすることで、搬送装置は、各工作機械11〜13に対応する作業を、同時に行なうことができるので効率的である。また、搬送装置は2台、若しくは4台以上でもよい。このとき、搬送装置にそれぞれ対応する工作機械も搬送装置の台数に応じた台数とする。
【0099】
また、上記実施形態において、搬送装置31の移動駆動部43は、第一ボール螺子機構BS1によって駆動するものとして説明したが、この態様には限らない。移動駆動部43は、どのような機構で駆動されてもよく、例えば、リニアモータによって駆動する方式のものでもよい。また、ボデー42側にラックを形成し、ラックと噛合するピニオンをモータによって回転作動させて、ボデー42をガイド35の延在方向に移動させるようにしてもよい。
【0100】
また、上記実施形態においては、移動駆動部43は、変位センサ43cを有しているものとして説明したが、この態様には限らない。移動駆動部43は、変位センサ43cを有していなくてもよい。この場合、変位センサ43cのデータに基づく移動量のフィードバック制御ができないが、フィードバック制御しなくても相応の効果は得られる。
【0101】
また、上記実施形態においては、搬送装置31のガイド35は直線状に形成されるものとして説明したが、搬送ユニット40のボデー42が、搬入前待機位置Pwbと処理位置Ppとの間及び処理位置Ppと搬出後待機位置Pwaとの間を移動可能であれば直線である必要はない。
【0102】
また、上記実施形態において、搬送装置31の旋回駆動部47では、ウォームギヤ機構を用いてアーム46,46を旋回させた。しかし、この態様には限らない。旋回駆動部47では、エアシリンダを制御してアーム46,46を旋回させてもよい。具体的には、アーム46,46の環状部に突設する舌部を設ける。そしてエアシリンダのロッドを伸長させる制御を行ない、伸長したロッドをアーム46,46の舌部に当接させて、アーム46,46を旋回軸周りに所定の旋回角度α°だけ旋回させればよい。アーム46,46の旋回を解除したいときには、伸長したロッドを縮め、アーム46,46を所定の機構によって逆回転させればよい。これによっても、相応の効果は得られる。
【0103】
また、上記実施形態において、搬送装置31の挟持駆動部45は、第二ボール螺子機構BS2を用い、第二モータ45bを制御することによって、2本のアーム46,46が相互に逆方向に同時に移動するよう構成した。しかし、この態様には限らない。アーム46,46は、それぞれ独立した駆動機構を有し、それぞれ別々の制御部によって駆動されてもよい。
【0104】
また、上記実施形態においては、工作機械11〜13(処理装置)は、処理位置Ppと搬入前待機位置Pwbとの間、及び処理位置Ppと搬出後待機位置Pwa(待機位置)との間に固定の第一側壁14、及び第二側壁15を備えた。そして、制御装置70は、工作物Wを一方である搬入前待機位置Pwb(待機位置)又は処理位置Pp(処理位置)から、他方である処理位置Pp(処理位置)又は搬出後待機位置Pwa(待機位置)へ移動させる際、2本のアーム46,46に挟ませた状態で2本のアーム46,46を旋回させ、工作物Wを持ち上げた状態で2本のアーム46,46とともに第一、第二側壁14,15の手前側の空間を通過させて他方に移動させた。
【0105】
しかし、この態様には限らない。工作機械11〜13(処理装置)は、固定の第一側壁14、及び第二側壁15を備えていなくてもよい。第一側壁14、及び第二側壁15の代わりに、工作物Wが移動するときに開閉する開閉扉を設けてもよい。また、側壁自体廃止してもよい。これらの場合、工作物Wを一方(の位置)から他方(の位置)に移動させる際、第一側壁14、第二側壁15を避ける必要がない。このため、アーム46,46は、旋回軸周りに少しだけ旋回させて工作物Wを少しだけ持ち上げればよい。これによっても、昇降装置は必要ないため、従来技術に対して昇降装置を廃止する効果は十分得られる。
【0106】
また、上記実施形態において、搬送装置31は、各工作機械11〜13の搬入前待機位置Pwb(待機位置)と処理位置Pp(処理位置)との間、及び処理位置Pp(処理位置)と搬出後待機位置Pwa(待機位置)との間で工作物Wを搬送するものとして説明した。しかし、この態様には限らない。搬送装置は、処理位置Ppと搬入前待機位置Pwbとの間、及び処理位置Ppと搬出後待機位置Pwaとの間の何れか一方のみの搬送を行なうだけでもよい。
【0107】
また、上記実施形態においては、搬送装置31は、処理位置Ppに載置された工作物W(物品)に対して切削加工(所定の処理)を施す工作機械11〜13(処理装置)に用いられた。しかしこの態様には限らない。処理装置は、めっき処理機でもよいし、研削機でもよい。また、その他どのような処理装置でもよい。
【0108】
また、上記実施形態において、搬送装置31は、各工作機械11〜13の搬入前待機位置Pwb(待機位置)と処理位置Pp(処理位置)との間、及び処理位置Pp(処理位置)と搬出後待機位置Pwa(待機位置)との間で工作物Wを搬送するものとして説明した。しかし、この態様には限らない。搬送装置は、各工作機械11〜13の各処理位置Pp間で工作物Wを搬送してもよい。つまり、搬送装置は、例えば、第一工作機械11の処理位置Ppにて加工処理が終了したら、第一工作機械11の処理位置Ppから第二工作機械12の処理位置Ppに工作物Wを搬送してもよい。また、例えば、第二工作機械12の処理位置Ppにて加工処理が終了したら、第二工作機械12の処理位置Ppから第三工作機械13の処理位置Ppに工作物Wを搬送してもよい。
【0109】
なお、この場合、加工処理が行なわれている何れかの工作機械の処理位置が本発明の「処理位置Pp」に相当する。また、「処理位置Pp」の上流側で隣接する工作機械の処理位置Ppが本発明の「搬入前待機位置Pwb(待機位置)」に相当する。また、「処理位置Pp」の下流側で隣接する工作機械の処理位置Ppが本発明の「搬出後待機位置Pwa(待機位置)」に相当する。これによっても、効果は得られる。
【0110】
また、上記実施形態において、搬送装置31のアーム46は、工作物Wの両側に一ずつ設けられ、工作物Wを所定の挟み込み荷重Pによって挟みこんだ。しかしこの態様には限らない。所定の挟み込み荷重Pによって、工作物Wの挟み込みが可能であれば、アーム46は何本であってもよい。例えば、アーム46が、工作物Wの両側に二本ずつ設けられていてもよい。また、例えば、アーム46が、工作物Wの側面の一方側に二本設けられ、他方側に一本だけ設けられていてもよい。なお、この組み合わせはあくまで一例を例示したものであり、アーム46は、これら以外の組み合わせで設けられてもよい。
【符号の説明】
【0111】
10・・・生産ライン、 11〜13・・・処理装置(第一〜第三工作機械)、 14・・・側壁(第一側壁)、 15・・・側壁(第二側壁)、 16・・・支持台、 16a・・・上面、 31・・・搬送装置、 35・・・ガイド、 40・・・搬送ユニット、 42・・・ボデー、 42b・・・貫通孔、 42f・・・溝、 42h・・・突部、43・・・移動駆動部、 45・・・挟持駆動部、 46・・・アーム、 46a1・・・基端部、 46a2・・・先端部、 46b・・・円環部、 47・・・旋回駆動部、 50・・・受部材、 60・・・開閉扉、 70・・・制御装置、 71・・・搬入制御部、 72・・・搬出制御部、 73・・・移動制御部、 74・・・挟持制御部、 75・・・旋回制御部、 BS1・・・第一ボール螺子機構、 BS2・・・第二ボール螺子機構、 P・・・荷重、 Pp・・・処理位置、 Pw・・・待機位置、 Pwa・・・搬出後待機位置、 Pwb・・・搬入前待機位置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6